江ノ島「つまらないね」 (43)
ダンガンロンパSSです。
江ノ島と戦刃の誕生日記念ということで書いていました。江ノ島視点で書かれています。
なお若干キャラ崩壊してます。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1387841208
――誕生記念日などとは言いますが、私が生を受けたことの何に私は慶祝すれば良いのでしょう?果たして私は祝福されるべき人間なのでしょうか?無垢に祝われている日というのは、存外に少ないものです。騒ぎたいのなら勝手にしてもらいたいものだけれど。しかし周りの人間は、そんなこと微塵も気にしていないようです。ああ、つまらない。
「さむっ」
私の起床は、間抜けな一言と共にやってくる。まだ重たい瞼を擦って布団を抜け出すと、朝の厳しい冷気が全身を襲う。私はしぶしぶ布団を捲る。枕元の時計は、九時を少し過ぎたところを指していた。布団に戻ろうとする衝動を幾度か抑え込み、私はカーテンを勢い良く開ける。
「まぶしっ」
調子はずれな声が再び漏れる。しかし、私は恥を覚えない。もちろん、自覚していない訳ではない。ただ、この状況での私の恥の証人は、ただ私一人だけなのだ。窓の外に見る寡黙な朝日だけが、私の頬を撫でていた。
部屋には柔らかな日射しが広がっていた。私は不安定な足取りでテーブルへと向かう。何度か身震いをしながら、私はマグカップにインスタントコーヒーを入れる。眠気を催しつつ、コーヒーの湯気を鼻に含む。しかし、私はそれをすぐには喫しない。
「もう一眠りしよっかな……」
ぽつりと呟きを漏らしながら、マドラースプーンでコーヒーに渦を描く。希望ヶ峰学園の冬休みは退屈だった。それもその筈で、僅かな帰省期間を与えられた本科生が、貴重な年の瀬を故郷で過ごそうと考えない訳がない。ひどい飽き性を患う私だ。この生活に無聊を託つことにさえ、飽き飽きしていたのは言うまでもない。
そんな下らない思慮が私の眠気を誘引した。思慮し始めてから眠気の起るまでに、ほとんど時間は無かったように思われる。深い沼から黒い影を引き揚げるように、ただ緩やかに誘発は行われ、完結していた。そこに偶然性などは無い。なるほどまるで初めから、二つの運動は何かで結びつけられていたようだった。
「よし、寝る。寝ちゃおう、あたし」
独り言に続いて、深いあくびが口から零れ出る。宣言通り布団に潜ろうと私は席を立つ。ところが、たった一つの物音のために純粋な私の決意は妨害され、拒絶されたのだった。甲高い電子音が部屋に木霊する。溜息を吐く私は、常々考える一つのことを思っていた。
私の意志と達成との間にはだかる障害は、この世には余りにも多過ぎる。……コーヒーは誰の口に含まれる訳でもなく、ただスプーンの刺さったまま湯気をたてていた。
「……誰だろ」
私は推測を始める。まず思い至ったのは、最も親睦の深い級友だった。思惟は帰郷期間という特殊な前提を孕んでいるため、造作無く名前を絞り込むことができた。泊り込みでの船上博打に耽るギャンブラーや、単車で列島縦断を試みる暴走族のように、帰省でなくとも寮を離れる生徒は多い。
「霧切に石丸、不二咲……あとは残姉か」
私は右手で指折り数えるのだが、折られたのは薬指までだった。それほどに少ないのかと思うと、胸にはうら寂しさが募る。私は私の右の手を凝視していた。こうしてみると、折られることの無かった小指が、さながら意思を持ち、私の孤独の代理をしているように感じられた。
「うん、別にいいよー。あ、メイクと着替えしてくるからちょっと待ってて」
「……メイクしてなかったんだ、ごめんねぇ」
細い呟きが聞こえた。私は応じない。と言うのも、私は既にドアを閉める動作にかかっていたのだ。無礼とはいえ、私とて病で臥るのは芳しくない。私はドアノブを引く。みるみる内に彼の顔は現実の光景から免れ、雪崩れ込んでいた冷気が遮断される。かくしてドアは再び私と彼との間に懸隔をもたらしたのだった。
仄暗い廊下を渡って、私は部屋へと戻った。私の視線は部屋を往復した後に、テーブルへとあった。卓上のマグカップの湯気は揺らめいて、あたかも烽火のように、その存在を再び私へと報せた。私はついにコーヒーを口に含んだ。
せめて改行しようぜ…
>>10
改行したほうがいいですかね?
あまりSSの書き方に馴染みが無いので……
>>2のレスから順に改行を施していきます。
つまらない作品ですが、何卒お付き合いよろしくお願い致します。
――誕生記念日などとは言いますが、私が生を受けたことの何に私は慶祝すれば良いのでしょう?
果たして私は祝福されるべき人間なのでしょうか?
無垢に祝われている日というのは、存外に少ないものです。
騒ぎたいのなら勝手にしてもらいたいものだけれど。
しかし周りの人間は、そんなこと微塵も気にしていないようです。
ああ、つまらない。
「……さむっ」
私の起床は、間抜けな一言と共にやってくる。
まだ重たい瞼を擦って布団を抜け出すと、朝の厳しい冷気が全身を襲う。
枕元の時計は、九時を少し過ぎたところを指していた。
布団に戻ろうとする衝動を幾度か抑え込み、私はカーテンを勢い良く開ける。
「まぶしっ」
調子はずれな声が再び漏れる。
しかし、私は恥を覚えない。
もちろん、自覚していない訳ではない。
ただ、この状況での私の恥の証人は、ただ私一人だけなのだ。
窓の外に見る寡黙な朝日だけが、私の頬を撫でていた。
部屋には柔らかな日射しが広がっていた。
私は不安定な足取りでテーブルへと向かう。
何度か身震いをしながら、私はマグカップにインスタントコーヒーを入れる。
眠気を催しつつ、コーヒーの湯気を鼻に含む。
しかし、私はそれをすぐには喫しない。
「もう一眠りしよっかな……」
ぽつりと呟きを漏らしながら、マドラースプーンでコーヒーに渦を描く。
希望ヶ峰学園の冬休みは退屈だった。
それもその筈で、僅かな帰省期間を与えられた本科生が、貴重な年の瀬を故郷で過ごそうと考えない訳がない。
ひどい飽き性を患う私だ。この生活に無聊を託つことにさえ、飽き飽きしていたのは言うまでもない。
そんな下らない思慮が私の眠気を誘引した。
思慮し始めてから眠気の起るまでに、ほとんど時間は無かったように思われる。
深い沼から黒い影を引き揚げるように、ただ緩やかに誘発は行われ、完結していた。
そこに偶然性などは無い。なるほどまるで初めから、二つの運動は何かで結びつけられていたようだった。
「よし、寝る。寝ちゃおう、あたし」
独り言に続いて、深いあくびが口から零れ出る。
宣言通り布団に潜ろうと私は席を立つ。
ところが、たった一つの物音のために純粋な私の決意は妨害され、拒絶されたのだった。
甲高い電子音が部屋に木霊する。
溜息を吐く私は、常々考える一つのことを思っていた。
私の意志と達成との間にはだかる障害は、この世には余りにも多過ぎる。
……コーヒーは誰の口に含まれる訳でもなく、ただスプーンの刺さったまま湯気をたてていた。
「……誰だろ」
私は推測を始める。
まず思い至ったのは、最も親睦の深い級友だった。
思惟は帰郷期間という特殊な前提を孕んでいるため、造作無く名前を絞り込むことができた。
泊り込みでの船上博打に耽るギャンブラーや、単車で列島縦断を試みる暴走族のように、帰省でなくとも寮を離れる生徒は多い。
「霧切に石丸、不二咲……あとは残姉か」
私は右手で指折り数えるのだが、折られたのは薬指までだった。
それほどに少ないのかと思うと、胸にはうら寂しさが募る。
私は私の右の手を凝視していた。
こうしてみると、折られることの無かった小指が、さながら意思を持ち、私の孤独を代理しているように感じられた。
そんなことを慮りつつ、私はドアを僅かに開ける。
押し込まれるようにして、外気が部屋へ流入する。
真冬の空に揉まれ冷え切ったそれは、決して厚着ではない私の体を震わせた。
しかしその間にも双眸は、感覚器としての本旨を外してはいなかった。
私は不二咲千尋の姿を認識していた。
ただでさえ背の低い彼が厚地の外套を羽織る姿に、私はどこか滑稽さを感じたのだった。
「えっと、おはよう江ノ島さん。ちょっといいかなぁ……?」
「うん、別にいいよー。あ、メイクと着替えしてくるからちょっと待ってて」
「……メイクしてなかったんだ、ごめんねぇ」
細い呟きが聞こえた。私は応じない。
と言うのも、私は既にドアを閉める動作にかかっていたのだ。
無礼とはいえ、私とて病で臥るのは芳しくない。
私はドアノブを引く。
みるみる内に彼の顔は現実の光景から免れ、雪崩れ込んでいた冷気が遮断される。
かくしてドアは再び私と彼との間に懸隔をもたらしたのだった。
仄暗い廊下を渡って、私は部屋へと戻った。
私の視線は部屋を往復した後に、テーブルへとあった。
卓上のマグカップの湯気は揺らめいて、あたかも烽火のように、その存在を再び私へと報せた。
私はついにコーヒーを口に含んだ。
「よし、防寒対策も完璧な上にオシャレ! さっすが私様!」
化粧を済ませて着替えることに、私はほとんど時間を必要としなかった。
というのも、私生活では最低限の化粧しかしないのだ。
何の肩書も無しには私は、身だしなみに不熱心だと周囲から敬遠されたかもしれない。
しかし今の私には、超高校級のギャルという肩書があった。
その名目で希望ヶ峰学園に入学した以上、私がどれだけ乱雑に化粧を施していようが、私の化粧への不熱心に疑念を持つものなどいない。
私は再び玄関へと向かった。
この時には、あくびを噛み殺すことも少なくっていた。
靴を履き終えたところで私の動きは止まった。
私は耳を澄ませた。
こと特徴的な不二咲の声が、ドアを一枚挟んで私の元へと届くのに、それほど声を張る必要性は無かった。
「いま江ノ島さんが準備してるんだぁ。もちろん、上手くいってるよ。うん、それじゃあねぇ」
私の聞いたのはそれだけだった。
息を殺して待ってみても、ドアの先は一貫して沈黙していた。
私は私の悪計が看破されたのかと考えた。
しかし、この推論には不可避的な陥穽があった。
私がそのような失態を犯す筈も無かった。
ところがこの陥穽は、私を憂慮させるに事足りた。
私が最も危惧した事態が、今起こっているかも知れないのだ。
忌々しい姉の二つ名を私は呟く。
そしてドアを開けた。
「待たせたな不二咲ちゃーん」
「ううん、全然待ってないよ。さすがは江ノ島さんだねぇ、早過ぎてびっくりしちゃったよ」
不二咲はぎこちない微笑を私へと向けた。
彼が焦りを隠すように、私も顔色を窺う様子を隠した。
私と不二咲とは、互いに仮面を被っていた。
率直に見えて屈折した意思が交差する事は決して無いのだ。
これほどに醜悪な友情が他にあるだろうか。
不二咲に案内されるようにして、私は寄宿舎の最上階へと向った。
不二咲は私を一つの部屋に通した。
彼は後で呼ぶとだけ言い残し、私を残したまま、すぐに部屋を後にする。
部屋には先客がいた。
と言っても、特に驚くべきものは無かった。
ただ、戦刃むくろその人が、落ち着かない様子で私を見つめていた。
「残姉ぇ」
「盾子ちゃん……」
仕事のため中断します。
続きは夜になりそうです。
今日中に完結させたいとは思っているのですが……
仕事終えて帰宅しました。
書き方の件ですが、取り敢えず改行ありで続けてみようと思います。
彼女はしばらく、私の名を復唱していた。
私には、それが過ちに対して向けられたもののように思えてならなかった。
彼女が赦しを乞うているように見えたのだ。
私は募る苛立ちを黙殺し、姉へと問いを投げる。
「むくろちゃん、なんか喋った?」
「ううん……そんなこと、ない」
予想した通りの応答に、私は重い溜息を漏らす。
彼女が真の残念なのは、その自覚の無いことだった。
ながい間、私と姉は沈黙していた。
彼女は折に触れて言葉を口にしようとしたが、私がそれを制した。
不二咲が再び私達の前に現れたのは、私が部屋へ通されてから二十分ほどしてからだった。
「遅くなってごめんねぇ、ちょっと手間取っちゃって……。それじゃあ二人とも、ボクに着いてきて」
不二咲に導かれるようにして、私と姉は部屋を後にした。
私達は、先程の部屋からそれほど離れていない扉の前へと案内された。
不二咲はそのドアを開けるのを、やたら渋った。
私は隣に並ぶ姉の顔を窺った。
彼女もまた、不安げな面持ちで私を見つめていた。
「行くよ。江ノ島さん、戦刃さん」
覚悟は決まっていた。
私達を迎えたのは――
「江ノ島さん、戦刃さん、誕生日おめでとう!」
そんな声とクラッカーの破裂音だった。
うーんギリギリ間に合わなかったですねえ……仕方ないのでだらだら書いていきます
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