斎藤「マーくんと身体が入れ替わったままシーズン後半戦」 (67)

ズバンッ!

審判「ストライクーー!!バッターアウト!!」

斎藤「ッシャァ!!」

実況「最後は三振で締めた斎藤!交流戦が終わってからもこの人の気迫あるピッチングは変わりありません!!」

斎藤と俺の身体が入れ替わったまま

シーズンは後半戦を迎えた

俺は斎藤の身体のまま、今日も試合を完封勝利で収める

大嶋「斎藤さん!ナイスピッチングです!」

斎藤「ああ、お前のホームランのお陰で勝てたよ」

栗山(これで10勝目か…一体何があったんだ斎藤……)

栗山(以前はあんなに気迫溢れるピッチングをするような奴じゃなかったが)

田中は斎藤の身体に入れ替わってからも

気迫のピッチングを続け、ここまで10勝4敗という成績を収めている

一方……

ククッ

スパンッ

実況「空振りーーーーー!!田中のスライダーに空を切った!!」

田中「ふぅ…」

田中の身体に入れ替わった斎藤も前半こそ失速はしたものの

交流戦中盤でエンジンがかかり、7勝目をあげた

大嶋「斎藤さん!今勝利数3位ですよ!!」

斎藤「え、そうだったのか」

大嶋「成績表見てないんすか!?」

斎藤「あんまりそういうのはシーズン中見ないんだよ」

大嶋「2位が11勝の金子投手です」

斎藤「1位は?」

大嶋「明日、斎藤さんと投げ合う予定の……」

2009甲子園を沸かせた怪物左腕

菊池「シイッ…!!」

ヒュンッ

バンッ!

ブルペン捕手「ナイスボー!」

現在、パリーグ勝利数トップ12勝をマークしている西武菊池


防御率も1点台後半と抜群の安定感を誇っている

去年は途中、怪我で戦線離脱をしたが

今年は開幕から投げ続け、チームの若きエースとしてフル稼働

―試合前日―

大嶋「えっ!?明日は大谷を先発に!?」

黒木「ああ…今朝、監督から急に言われてな…斎藤から急遽、大谷に変更することにしたんだ」

黒木「斎藤、お前は明後日にスライドだ」

斎藤「分かりました」

大嶋「全く…また話題性のために変更するなんて…」

新舘「それではスポーツコーナーにいってみましょう」

新舘「工藤さんお願いします」

工藤「はい!今日は去年から覚醒を遂げたある選手の映像を見てもらおうと思います」

……



去年、この男は突如覚醒を遂げた

西武の若き投手、菊池

今季既に12勝をマークしパリーグ投手勝利数のトップを走り続けている

工藤「何が彼を変えたかというと、ずばり緩急なんですよね」

ビシュッ

ククッ

工藤「これです!これなんですよ」

工藤「彼のスタイルに1つの武器が加わったことによってここまで上り詰めることになったんです」

去年、工藤が菊池を取材した時に

彼はこう言っていた

野球のゲームで新しい武器のヒントを得た…と

MAX150km近いストレートを最大限に生かせる最高の球種

工藤「このチェンジアップです」


以前までチェンジアップを試合中に使うことはほとんどなかった

しかし、右への変化球だけでは打たれるということに気づきチェンジアップを習得

結果それが急成長の理由となった

工藤「普段から150近いストレートを投げている彼が120~30km台のチェンジアップを投げることで緩急をつけることができました」

工藤「打者は当然、緩急に慣れず三振をすることが多いです」

工藤「奪三振が急に増えたのもそうだと思いますね」

工藤「制球力も伸びてますし、明日の大谷選手との投げ合いが楽しみですね」

新舘「ありがとうございます」

試合当日


1 中 秋山
2 二 鬼崎
3 指 森
4 遊 浅村
5 一 中村
6 左 栗山
7 右 坂田
8 捕 炭谷
9 三 渡辺直
投手 菊池

実況「さぁ、間もなくプレイボールです!」

解説「今日から1軍に上がったばかりの森選手も出るんですねぇ」

実況「そうです!2軍で好成績を残した森が即スタメンとなっております!」

栗山「とんでもない打線だ…」

黒木「片岡、ヘルマンが抜けても厚みは変わりませんね…」

栗山「翔平いけるか?」

大谷「いつも通り抑えるだけです」

大嶋「へっ、相変わらず頼もしいな」

斎藤「最後まで投げ切ってこい」

大谷「ええ…今日は斎藤先輩の出番はありませんよ」

実況「1回の表!西武からの攻撃!大谷が今マウンドに向かいます!!!!」

アナウンサー「1番…センター秋山」

ワァァァァァ

解説「非常にミート力の高い選手ですね」

実況「ええ、足も速いのでここは塁に出したくないところ!」

大嶋(よーし…まずは全力のストレートでこい!)

大谷は大嶋のサインに頷き第1球目を投じた

ビシュッ

秋山「…(ピクッ」

ズバンッ

審判「ストライクーーーーー!!」

実況「1球目外角高めに決まりました!!154kmです!!」

解説「素晴らしいスピードですね、まさか1球目から154kmを出すなんて」

実況「エース投手でも中々、出せるスピードではありませんからね!」

大嶋(よーし、良い球だ…)

小谷野(ホントに2年目かよ、大した投手だぜ)

稲葉(今日も調子は良さそうだな…大谷くん)

誰もが大谷の1球目を見てそう確信した

これなら重量打線の西武を抑え込めると……

カァーンッ

大谷「…!!」

実況「あっああっと!!秋山!真ん中高めに入ったカーブを捉えセンター前ヒットォ!」

解説「甘いボールでしたねぇ」

実況「ええ、フルカウントでストライクを取りにきたんでしょうか」

解説「その取りにきたカーブを見事に弾き返されましたね」

秋山「……」

ジリッ

大谷はセットポジションから2番鬼崎に対して1球目を投じる

ビシュッ

タッタッタ

それと同時に秋山が1塁ベースからスタート

大嶋「…チッ!!盗塁かよ…!!!!」

しかし、鬼崎はバットを振る

カァーンッ

栗山「…ヒットエンドラン!?」

鬼崎の打った打球は綺麗に1,2塁間を破った

ライトの西川が処理した頃には秋山は既に3塁に滑り込んでいた

実況「ああああっと!!これでノーアウト1,3塁!!!」

解説「1回からいきなり仕掛けてきましたねぇ」

実況「これもベンチからのサインなんでしょうか?」

解説「いえ、今のは選手自身が判断したプレーだと思いますよ」

実況「これが今年の西武の強みなんでしょうね!!」

斎藤「くっ…いきなりピンチだぞ大谷……」

アナウンサー「3番・・・指名打者…森」

ワアアアアアアアアアアアアア

西武ファンの声援が一段と強くなる

今日1軍に上がり即スタメンの高卒スラッガー森

森「森です!よろしくお願いしまーーーーーーーす!!!」

大嶋「お、おう」

大嶋(なんだこいつ…俺とキャラ似てるしよ……)

森「あぁ~、楽しみだなぁ…160km投げる投手の球打てるなんて…!」

森は打席内で目を輝かせている

大谷は額の汗を拭い、1度ロージンバックを手に乗せ気持ちを落ち着かせる

大谷「フゥッ…」

黒木「そうだ…相手はまだルーキーだ……落ち着いて投げれば抑えれる」

大嶋(さぁ…この元気の良いルーキーをまず何で料理するよ)

大谷(…)

大嶋(ストレート…投げたがりそうだな…)

大嶋はストレートのサインを大谷に出した

ビシュッ

実況「森に対して第1球を投げました!!」

森「…おおお…!!!」

ズバンッ

審判「ストライクーーーーーー!!!」

157km

実況「で、出ましたァ!!大谷今日最速の157kmを叩き込んだ!!」

斎藤「よし…!!ナイスボール!!」

解説「今のは手が出なかったようですねぇ…」

実況「低めにいっぱい!素晴らしいストレートです!」

しかし、打席の森は笑顔を絶やさない

森「すっげ…藤浪さんと同じくらいのスピードに感じるぜ…!」

大嶋(なにへらへらしてんだ…次はスライダーで…)

大谷「…(コクリ」

ビシュッ

実況「インコースに投げました!!」

インコースを突くスライダーを投じる

大嶋(振って来た・・・!これならどん詰まり…!)

パキィーーーンッ

森は差し込んできたスライダーをいとも簡単に打ち返した

大嶋「…!?」

ドスッ

審判「ファーーール」

一瞬、観客席がどよめいた

あと数センチ…フェアゾーン内に入らなかった

森の打った打球はライトのファールゾーンに

森「くっそ~、ちょっと詰まっちまったなぁ」

斎藤「窮屈そうな体勢からあそこまで飛ばしたのか…」

黒木「甲子園ではパワーよりも彼はミート力の高さを注目されていた」

黒木「大谷のスライダーをミートしたのも彼の才能の1つだろう」

森「狙い打ち~」

大嶋(クソッ…ルーキーの癖に何てやつだ……)

大嶋(このチャンスの場面を楽しんでやがる…俺なら縮こまっちまうのに…)

大谷「…」

大嶋(リードはどうすればいいんだ…大谷の力を引き出すには…)

大嶋(正直、リードの才能なんて全くない俺が大谷の足を引っ張ってるんじゃ…)

ビシュッ

実況「森に対して第3球目を投げました!!」

ピクッ

ズバンッ

審判「ボール!!」

解説「今の高めの釣り球、良く手を出さずに我慢しましたねぇ」

実況「選球眼も良いようですね!ルーキーとは思えません!」

大嶋(高め…手出さなかったか……)

大谷「…」

大嶋(もう1度カーブでも投げてボールにするか)

大谷(もう1度、ストレートでお願いします)

大嶋(ダメだ!いくらルーキーでもストレートばっかりじゃダメだ!)

大嶋は大谷のストレートを拒否しカーブを要求

大谷は頷かず4球目となるスライダーを投げ込んだ

ビシュッ

ククッ

森「…きた!!!!」

森は低めに沈むカーブを身体を溜めライトに引っ張る

パキーンンッ

※ 4球目となるカーブを投げ込んだ

斎藤「……!!!!」

実況「ライトの西川バック!!!打球は大きい!!!!」

解決「これはどうでしょうねぇ…!!」

球場全体が森の打った打球の行方を目で追う

フェンスの手前いっぱいで西川が捕球

パシッ

犠牲距離の飛距離としては十分

3塁ランナーの秋山は捕球を確認しスタートを切りホームに生還

実況「ルーキー森!!犠牲フライで1点を大谷が取りましたァァァ!!」

解説「結果的に犠牲フライで済みましたが…素晴らしい打者ですね」

大嶋「お、俺のサインの所為で……」

続くバッターは4番ショートの浅村

実況「重量打線!!まだまだ強打者達が並んでいます!!!」

カキーンッ

実況「浅村の打球は右中間真っ二つ!!!!」

大谷の初球を捉え長打コース

2塁にいた鬼崎は楽々とホームに生還、浅村は2塁へ

実況「浅村の2塁打で1点追加!!1回の表で既に2点を先制ーーー!!!」

初回に2点を取られた大谷だがその後のバッターは味方の守備にも助けられ

何とか2失点で切り抜けた

実況「現在パリーグ投手勝利数1位の菊池がマウンドへ!」

解説「非常に楽しみですねぇ、どんなピッチングを見せてくれるんでしょうか」

菊池「フゥッ」

炭谷「いつも通り緩急つけたピッチングな」

菊池「はい!今日もよろしくお願いします」

サウスポー菊池、綺麗な投球フォームから第1球を投げる

ビシュッ

ズバンッ

148km

審判「ストライクッ!!!」

実況「1球目!外角低めに菊池もハイスピードストレートを叩き込みました!!」

解説「ホントに外角いっぱいいっぱいですよ、制球力が良くなりましたねぇ」

陽「今のがストライクか…厳しいナ…」

審判「…(ジロッ」

陽「ハハハ、なんでもないですヨ」

斎藤「ノビの良いストレートだな。全くお辞儀してない。」

大谷「尊敬する先輩の1人ですから」

大嶋(菊池か…あいつも甲子園では怪物投手として騒がれてたんだよな…)

大嶋(これが才能……か)

小谷野「陽!!さっさと出塁しろよぉ~!!!」

ズバンッ

審判「ボール!」

実況「1球外してボール!カウントは1-1!」

カァーンッ

審判「ファーーール!!」

実況「打球はバックネット裏に!高めのストレートをファールにしました陽!!」

陽(すごいストレート…手が痺れるヨ…)

解説「追い込んでますから、菊池選手有利のカウントですよ」

炭谷(よーし、ここであの球だ)

菊池(はい…!)

菊池振りかぶって第4球目を陽に対して投げる

ビシュッ

陽(ストレートの腕の振り…!!打てる…!!!)

140km後半のストレートにヤマを張っていた陽

しかし

ストンッ

陽「・・・・・エ・・・?」

菊池の投げた球はゆっくりと落ちた

陽は違った球がきたために空振り

128km

審判「ストライクーーーー!!!バッターァウッ!!!」

実況「空振り三振ーーーー!!菊池!決め球はチェンジアップでした!!」

解説「緩急をつけられて、陽選手は全くタイミングが合ってませんでしたね」

実況「これが菊池の特徴です!!」

実況「緩急をつけたピッチングで打者を翻弄します!!」

解説「無駄なボール球も少ないですし、決め球があるのは良い事ですね」

大谷「ボール球が少ないですね」

斎藤「そこが今のお前と違うところだ、菊池選手の制球力は高い」

稲葉「投手有利のカウントだと尚更投げやすい…」

アナウンサー「2番・・・ショート大引」

菊池(俺は1度プロで地獄を見た、もう2度と落ちる訳にはいかない…)

実況「これが菊池の特徴です!!」

実況「緩急をつけたピッチングで打者を翻弄します!!」

解説「無駄なボール球も少ないですし、決め球があるのは良い事ですね」

大谷「ボール球が少ないですね」

斎藤「そこが今のお前と違うところだ、菊池選手の制球力は高い」

稲葉「投手有利のカウントだと尚更投げやすい…」

アナウンサー「2番・・・ショート大引」

菊池(俺は1度プロで地獄を見た、もう2度と落ちる訳にはいかない…)

大引「……っ」

カァーンッ

大引は内角のストレートに差し込まれフライをあげる

菊池「オーライ!」

パシッ

実況「ピッチャーフライで2アウト!」

続く3番稲葉も…

稲葉「……チェンジアップ……!」

ビシュンッ!!

ズバンッ!

審判「ストライクーーーー!!バッターアウト!!」

実況「あーーー!!稲葉外角のストレートを見逃し三振!!」

解説「チェンジアップを待っていたんでしょうねぇ…」

稲葉「くっ…俺にはストレートか…!」

実況「菊池!1回の裏を三者凡退で抑える素晴らしい立ち上がりです!!」

斎藤「大谷、これ以上の失点はきついぞ」

大谷「分かってます、僕ももう取らせるつもりはありませんから」

栗山「さすが翔平だ!!翔平!!!!」

大谷はその後も何度もピンチを迎えるが

最速のストレートを駆使し西武打線を抑えていく

アナウンサー「4回の表…ライオンズの攻撃は指名打者…森」

ワァァァァァァァァァア

実況「森!今日2回目の打席です!!」

森「次こそはスタンドだ…!」

大谷、森へ対して第1球を投げる

カァーーーンッ

実況「!!!森!!!2打席は初球から振っていきました!!」

解説「3塁側へのファールで助かりましたね…思い切りがホントにいいですよ」

大嶋「あぶねぇ~…ストレートに振り遅れず対応してきやがった…)

大谷(ストレートにも対応してきては…いる)

森「152kmかぁー、まだまだスピード出そうだし楽しみだなぁ」

大嶋(こいつ…)

大嶋(斎藤、悪い…俺のリードじゃこのルーキーを抑えることは出来そうにねぇ…)

実況「おっと…大嶋がタイムを取り1度マウンドに」

解説「サインの確認でしょうかねぇ?」

大谷「どうしたんですか」

大嶋「いや、すまん…エンドランも見破れなくて俺の所為でピンチを招いて…」

大谷「いえ…打たれてしまえば全て投手の責任ですから」

大嶋「そうじゃねぇ!俺がキャッチャーじゃお前の力を最大限に引き出してやれそうにないんだ!!」

大谷「…?」

大嶋「今年に入ってからここまで試合で使ってもらってるけどよ…」

大嶋「ここまで来れたのってほとんど斎藤先輩のお陰なんだよ」

大嶋「あの人が俺と一緒に這い上がろうって声かけてくれて…」

黒木「おい…!あいつ等は一体何を話してるんだ!」

たまらず黒木投手コーチが飛び出ようとすると

斎藤「もう少し、様子を見ておきましょう。きっと何かあるんです。」

栗山「そうだな…翔平を信じよう」

大嶋「悪い…先輩の俺が情けないこと言っちまって…」

大嶋「お前は才能に溢れてる選手なんだ、俺の所為で足引っ張られてちゃ…」

大谷「言いに来たことはそれだけですか?」

大嶋「な、なんだよ!それだけって!」

大谷「サインの確認かと思えば…自分の弱さをさらけ出して何が言いたいんですか」

大嶋「何って…」

大谷「僕は、大嶋先輩がここまで来れたのは実力があるからだと思ってますから」

大嶋「…!」

大谷「実力の無い人に僕は球を受けてもらいたくはありません」

大嶋「大谷……」

大谷「大嶋先輩に何度も助けられてます」

大嶋「俺が……?」

大谷「チームの皆さんも大嶋先輩がチームに欠かせないって分かってますよ」

大谷「1回のサインに頷かなかったのは大嶋先輩のカーブのサインに不満があったからです」

大谷「すみません、それは謝ります。」

大谷「だから、もう少し僕を信じてください…僕も大嶋先輩を信じて投げますから」

大嶋「……」

大谷「斎藤先輩だってきっと僕以上に大嶋先輩を必要としてますよ」

大谷「…それだけです」

審判「ハリーアップ!」

大嶋は慌てて元の位置に駈け出した

大嶋(俺ってやつは・・・!なんてバカなんだ!!!)

実況「ようやく大嶋がタイムを終えて戻ります」

大嶋(あいつのストレートを信じずに俺は…!)

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