トナカイ「メニー・クリスマス!」(35)
トナカイ「こんにちは、みなさん」
トナカイ「僕は全国の良い子たちにプレゼントを配るトナカイです」
トナカイ「時々いい年をした大人が『プレゼントほしい』とか抜かしますが、冗談じゃない」
トナカイ「頑張った自分にご褒美? ブランド品? は? 恋人がほしいだと?」
トナカイ「身の程を知れ!」
トナカイ「……コホン、この度先代のサンタ・クロースが引退しましてね」
トナカイ「そもそも一人で世界を回るってのが無謀だったんですが、『サンタ』の資格が厳しくて一人しかいなかったんですよ」
トナカイ「やれ恰幅がどうの、ひげがどうの、鼻がどうのと条件がいちいち厳しいんですよね」
トナカイ「そんな条件にただ一人当てはまった先代が引退するってんで、後釜を探したんですが……」
トナカイ「まあ、いないわけですよ、そんな都合のいい『サンタ』像なんて」
トナカイ「だもんで慌てた上のお偉いさんたちが、トチ狂いましてね」
トナカイ「慣れないだろうから人手も必要だってことで、条件をめちゃくちゃ緩くしたんですよ」
トナカイ「そしたら変なのがやたら集まりましてね」
トナカイ「今年のクリスマスがどうなるのか……」
トナカイ「今から不安です」
【サンタ・ローズ】
トナカイ「あそこでムチを振り回しているのはサンタ・ローズさんです」
トナカイ「ドSのふりをしていますが、実はいじめられるのも好きらしいです」
ローズ「おほほほほ! おほほほほ!」ピシィピシィ
トナカイ「あそこで叩かれているのは僕の古い友人です……」
ローズ「おほほほほ! おほほほほ! この豚め!」ピシィピシィ
トナカイ「見なかったことにしましょう」
スパァン!!
トナカイ「ああ、ローズウィップ出ちゃった」
【サンタ・クロス】
トナカイ「あそこで神父さんの格好をしているのは、サンタ・クロスさんです」
トナカイ「クロスって……十字架ですよね」
トナカイ「まあキリスト教のお祭りだし、間違ってないんでしょうけど……」
トナカイ「迷える子羊にプレゼントを? みたいな?」
クロス「エロイムエッサイムエロイムエッサイムエロイムエッサイムエロイムエッサイムエロイムエッサイムエロイムエッサイム」
トナカイ「いつも呪文みたいなのを唱えてるので、ちょっと近づきたくないです」
クロス「エロイムエッサイムエロイムエッサイムエロイムエッサイムエロイムエッサイムエロイムエッサイムエロイムエッサイム」
トナカイ「あとなんか、過去に多くの人を死に至らしめたとかで、心に重い十字架を背負ってるとかなんとか」
クロス「エロイムエッサイムエロイムエッサイムエロイムエッサイムエロイムエッサイムエロイムエッサイムエロイムエッサイム」
トナカイ「よくわかりません」
【ケンタ・クロース】
トナカイ「立派なおひげ」
トナカイ「穏やかな表情」
トナカイ「間違いなくこの人が次のサンタでよかったですよねえ」
トナカイ「……」
トナカイ「フライドチキン屋の前によく立っている人ですね」
トナカイ「……」
トナカイ「ただこの人、喋らないんですよねえ」
トナカイ「……」
【バギ・クロス】
トナカイ「あの山の上の方で回転しているのはバギ・クロスさんです」
トナカイ「強風のため、これ以上近づけません」
バギ「……」ビュオオオオオオ
トナカイ「プレゼントの包装紙が破れてしまうので、当日までは、あそこにいてもらわないと……」
バギ「……」ビュオオオオオオ
トナカイ「頑丈なプレゼントの配達だけ、お願いすることになると思います」
トナカイ「G-SH○CKとか、ゲー○キューブとか、ね」
【サンタ・エロス】
トナカイ「常にエロい顔で子どもに近づこうとする、真性の変態のサンタ・エロスさんです」
トナカイ「頭の中は淫乱な妄想でいっぱいだそうです」
トナカイ「つまり淫妄(インモウ)ですね」
エロス「淫妄(インモウ)でいっぱいだよぉ……」ハァハァ
トナカイ「子どもの夢を壊すためにもってこいです」
トナカイ「サンタを信じなくなる10歳くらいの少年少女にぶつけてみましょうか」
エロス「10歳の少女……大好物なり」ハァハァ
トナカイ「利害が一致したところで次に行きましょう」
【三択・ロース】
三択「ででん♪ 問題:『ロース』の語源となったものは次のうちどれ?」
トナカイ「出た出た出ましたよ、三択おじさん」
三択「1.ローストに適した部位、という意味」
三択「2.バラ色の肉、という意味」
三択「3.薄くスライスするのに適した部位、という意味」
トナカイ「はぁ……」
三択「チッチッチッチッチッ……」
トナカイ「1番のロースト」
三択「……っ」
三択「……正解」チッ
トナカイ「舌打ちしたよこの人」
【四択・ロース】
四択「ででん♪ 問題:『ロース』の語源となったものは次のうちどれ?」
トナカイ「問題さっきと同じじゃないですか!?」
四択「1.ローストに適した部位、という意味」
四択「2.バラ色の肉、という……」
トナカイ「1番のローストでしょ!」
四択「…………」チッ
四択「……正解」ペッペッ
トナカイ「唾吐いたよこの人っ! 信じられん!」
【神託のノーズ】
トナカイ「もうね、この人ね、っていうか『人』って呼んでいいものかもあやふやですが」
トナカイ「突然サンタ候補だっつって連れて来られた人見てみたら『鼻』ですからね」
トナカイ「神に託された鼻ってどういうことだよおい!」
ノーズ「ごちゃごちゃうるせえぞ青二才」
トナカイ「鼻に『青二才』呼ばわりされる覚えはありませんよ!」
ノーズ「おれだって四足歩行動物風情に『鼻』呼ばわりされる覚えはねえよ!」
トナカイ「どう見てもただの鼻じゃねえか!」
トナカイ「割とでかい鼻だよ! それ以外の何物でもないよ!」
トナカイ「ほら! もう! また鼻水出てますから! 拭いて!」
ノーズ「おれのこれは、心の汗だっつんてんだろうが!」
トナカイ「全然きれいに聞こえませんよそれ!」
ノーズ「鼻炎なんだよ悪いかコノヤロー!」
トナカイ「神託じゃねえのかよ! なんで鼻炎なんかかかってんだよ!」
トナカイ「ていうかどうやって喋ってんだよ!」
トナカイ「あと鼻毛! はみ出てるから整えてって言ったじゃないですか!」
ノーズ「……」
トナカイ「ねえ!」
ノーズ「おれだって……おれだって好きで鼻に生まれたんじゃねえんだよ……」
トナカイ「ご、ごめん……」
【食卓のロース】
トナカイ「ああ、なんかいい匂いがすると思ったら、食卓のロースさんじゃないですか♪」
トナカイ「肉汁が滴ってて、美味しそう♪」
トナカイ「僕自身、草食動物にも関わらず、彼を目の前にすると涎が……」ジュルリ
トナカイ「まあね、仕事は、まあ、あれですけどね」
トナカイ「『私がプレゼントよ♪』みたいな」
トナカイ「『熱いうちに食べて♪』みたいな」
トナカイ「運ばれる方、みたいな」
トナカイ「……」
トナカイ「ほんと、なんで選ばれたんですかね、この人」ジュルリ
【神秘のソース】
トナカイ「これこれ、このサンタ秘伝の神秘のソースをロースにかけて、ね」
トナカイ「じゅわっと湯気が上がって、まあ、美味しそう♪」
トナカイ「じっくりコトコト煮込んだハーブと玉ねぎの甘い匂い♪」
トナカイ「肉と相性抜群ですね、ええ、間違いない!」
トナカイ「……」
トナカイ「……人!」
トナカイ「変人でもいいからせめて人を寄こせ!」
【おっさん宅の小坊主】
トナカイ「人だけど! 人だけどさあ!」
トナカイ「さっきからどんどん名前が遠ざかってませんか、ねえ!」
トナカイ「誰んとこの子だって!? おっさん? 誰?」
小坊主「おいお前うるせーぞ、このモフモフ毛玉!」
トナカイ「キイィィ! 生意気なガキ!」
小坊主「ホワイトレバー寄こせ!」
トナカイ「ガウシカじゃねーよ!」
小坊主「壁に飾るぞコノヤロー!」
トナカイ「そんな悪ガキんとこにはサンタ来ねえぞ! バーカバーカ!」
小坊主「サンタなんているわけねーだろバーカ」
トナカイ「キイィィ! こんなやつ誰が呼んだの!?」
【サンダル坊主】
トナカイ「名前は近くなったけどね!? それでもこの真冬にサンダルってどうよ!?」
坊主「うるせーぞ、風邪引けバカ」
トナカイ「こっちのセリフだよ!」
坊主「子どもは風の子なんだよ! 寒さなんて感じねーんだよ!」
トナカイ「う、うん、まあそういう子、嫌いじゃないけど……」
トナカイ「クリスマスには暖かい手袋をあげようね」
坊主「い、いらねーし」
トナカイ「照れちゃって、可愛いじゃないですか」
坊主「う、うるせー、しもやけになれバカ」
トナカイ「こっちのセリフだよ!」
【三百・ノーズ】
トナカイ「増えとるぅぅぅぅうう!!」
トナカイ「鼻めっちゃ増えとるぅぅぅうう!!」
ノーズ「うるせーぞコノヤロー」
トナカイ「仲間か! 仲間呼んだのか!?」
ノーズ「おれたちは三百で一体! 一心同体!」
トナカイ「パーツ足りてないよ!? 鼻ばっかダブってるよ!?」
【三重苦・坊主】
トナカイ「チビ、デブ、ハゲの坊主って!?」
トナカイ「ハゲの坊主ってつまりお坊さんじゃん!」
トナカイ「ちっちゃくてふくよかなお坊さんじゃん!」
坊主「……」チリーン
トナカイ「高僧じゃん!?」
トナカイ「仏教混ざってきてるけど大丈夫でしょうか? どっか喧嘩になりませんか?」
【汁ダク・ローズ】
トナカイ「あれ、どうしたんですかローズさん」
トナカイ「なんかヌルヌルですよ、ローズさん」
ローズ「汚されちゃった……」カァァ
トナカイ「白いヌルヌルでいっぱいですよ、ローズさん」
ローズ「お嫁にいけない……」カァァ
トナカイ「普段ムチふるってても、お嫁に行きたいとか考えてたんですね」
トナカイ「意外……」
トナカイ「さてさて、変人揃いのサンタ勢ですが、このたびトナカイもたくさん派遣されてきたんですよね」
トナカイ「サンタにはトナカイがつきものですからね」
トナカイ「僕はまあ、トナカイのとりまとめみたいな立場なんですよ、ええ」
トナカイ「トナカイもたくさん必要だってことで、とりあえずかき集めてみました感が半端ないですね」
トナカイ「お、あそこにいるのは……」
【モナカイ】
トナカイ「おや、あそこで男に媚を売っているのはモナカイさんですね」
トナカイ「相変わらず男好きのするセクシーなポーズで誘ってますね」
トナカイ「特に相手のいる男性が好きだとか」
トナカイ「エロスさんと組ませると面白そうですね」
モナカイ「お金を持ってる男にしか興味はないわよ!」
トナカイ「……」
トナカイ「仕事にならなさそうですね」
【ヨナカイ】
トナカイ「お、氷の上でくるくる回っているのはヨナカイさんですね」
トナカイ「滑るのがうまいですねえ」
トナカイ「ちょっくら僕も……」
ツルッ
トナカイ「お、お、お、これは……」
ツルツルッ
ヨナカイ「わあ、モフモフ可愛いネー」モフモフ
トナカイ「わ、ちょ、バランスが」
ヨナカイ「ハハー」クルクル
トナカイ「いやあああ! 目が回る!」
……
トナカイ「……ヨナカイさんにはバギクロスさんと組んでもらいましょうかね」
トナカイ「くるくる回る同士、気が合いそうです」
【マナカイ・カナカイ】
トナカイ「双子のマナカイさんとカナカイさんです」
トナカイ「いやあ、ちょっと見ただけでは違いがわからないくらい似てますね」
マナカイ「幽体離脱~」
トナカイ「マナカイさんはそんなこと言わない!!」
カナカイ「幽体離脱~」
トナカイ「カナカイさんもそんなこと言わないから!」
トナカイ「ていうか実体ないのかよ!!」
【パナカイ】
トナカイ「あそこの真っ白なトナカイさんは、パナカイさんですね」
トナカイ「見た目はきれいなんですけど中身は電波です」
パナカイ「@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@」
トナカイ「?」
パナカイ「スカラー派を感じる……」
パナカイ「@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@」
トナカイ「意味が分かりませんね」
トナカイ「ていうか、意味わかる人、いるんでしょうか」
【レナカイ】
レナカイ「あの子に贈るプレゼントは何にしようかな? かな?」
トナカイ「お、レナカイさんですね」
トナカイ「ちゃんとお仕事をしていますね」
レナカイ「はぅっ! これ可愛いよぉ~!」ギュッ
トナカイ「お持ち帰りは禁止ですよう」
トナカイ「ケンタ・クロースさんとペアにしましょうかね」
レナカイ「はぅぅっ! ケンタ君可愛いよぉ~! お持ち帰……」
トナカイ「お持ち帰りは禁止ですよ」
レナカイ「嘘だッ!!!!」
トナカイ「ほんとだよ」
【オトナカイ】
オトナカイ「やあ、クリスマスの準備は順調かな?」
トナカイ「おや、オトナカイさん」
トナカイ「スーツでびしっと決めているのは彼だけです」
オトナカイ「全国の子どもたちを悲しませたくないからね、僕に手伝えることがあったら言ってくれ」
トナカイ「心が広いですね、大人だ!」
オトナカイ「心だけじゃなく、股間もビッグサイズさ」ニコッ
トナカイ「流れるように笑顔で下ネタを振ってきた! 大人だ!」
オトナカイ「おっと、ネクタイがゆがんでいた、失敬」
トナカイ「むき出しの股間よりも身だしなみを気にしてる! 大人だ!」
【仲居】
トナカイ「旅館で仕事しててくださいよ!」
トナカイ「ソリ引いて飛べるんですか!?」
【中居】
トナカイ「おとなしく司会してなさいよ!」
トナカイ「三重苦・坊主さんと組ませますよ!?」
【Mカイ】
トナカイ「もう君はいいからローズさんに叩かれてなさい」
Mカイ「ブヒィ」
トナカイ「あれ、こうやって見ると『向井』さんに見えますね」
Mカイ「ブヒィ」
トナカイ「僕に向井というM男の知り合いはいませんからね、ええ」
トナカイ「人違いです、きっと」
トナカイ「さて、大変なメンバーですが、まあ何とかクリスマスを乗り切りましょう」
トナカイ「……不安しか、ありませんね」
トナカイ「では、みなさんに素敵な夜を」
トナカイ「メニー・クリスマス!」
三億・ノーズ「おいトナカイ、行くぞ、何ぐずぐずやってんだ」
トナカイ「増えとるうぅぅぅうう!!」
三億・ノーズ「おれたちは三億で一心同体!」
トナカイ「もうあんたらだけで仕事しろよ!!」
★おしまい★
クリスマスなんてのはね!
子どものための祭なんですよ!
∧__∧
( ・ω・) ありがとうございました
ハ∨/^ヽ またどこかで
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i)、_;|*く; ノ
|!: ::.".T~
ハ、___|
"""~""""""~"""~"""~"
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