ヘレン「貴女、面白いわね」
時子「(この女いつの間に……というか何、この妙なプレッシャーは……!
……震えているというの、この私が?)」
ヘレン「……」パチンッ
時子「!!」ビクッ
ヘレン「世界レベルの豚丼を一つ」
時子「ヴェッ!?」
ヘレン「ダンサブルなものを期待しているわ」
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時子「(豚丼、世界レベル……!? この女、一体何を言って……?)」アセアセ
ヘレン「……どうしたの? 早く準備に取り掛かりなさい? それとも、後は盛り付けるだけなのかしら?
そう……なら、貴女もどうやら、世界レベルのようね」クスッ
時子「(だから世界レベルって何よ!?)」
ヘレン「つまり、そういうことよ」
時子「(意味わかんないわよ!? というか、私今、声に出した……?)」
ヘレン「~♪」
時子「(鼻唄を歌い出した……なんという余裕……!これが……世界レベル……!)」
時子「(――はっ!? 飲まれては駄目よ、時子……!このまま圧されるなんてこと許されない……!
常に勝者であり、絶対の女王であるこの私が、こんな訳の分からない頭のおかしな女なんかにぃ……!)」ギリッ
時子「――フンッ。豚の料理を造るのは別に構わないけれど、でも残念ね。此処には豚がいないわ」
ヘレン「? 後は盛り付けるだけなのでしょう?」
時子「そんなわけないでしょ!? 何処にいついかなるときも豚丼をオーダーされてパッと用意できるほど準備の良い女が居るのよ!?」
ヘレン「葵」パチンッ
葵「何っちゃ?」
時子「!? こ、この女も、いつの間に……!?」
ヘレン「豚丼……は、今食べると彼女の作った物が入らなくなるわね……豚角煮を一切れ、いや二切れ」
葵「はいはーい。丁度今日持って来たの温めるよ」
時子「都合良いわね……」
ヘレン「一切れは、私からの貴女への歓迎の徴。ウェルカムニューシンデレラ」パチッ
時子「あ、ありが、とう……」
ヘレン「――さて、では、葵が豚の角煮を温め直している間に――」
ヘレン「豚丼を、用意してもらおうかしら」
時子「いやだから材料ないわよ!!」
ヘレン「貴女、それでよく自分が世界レベルだなんて名乗れたものね」
時子「名乗ってないわよ!貴女が勝手に貼ったレッテルでしょ!?」
ヘレン「材料がない……それなら」チラッ
かな子「私、三村かな子って言います♪ くるみちゃん、よろしくね♪」
くるみ「こ、こちらこそよろしくお願いしましゅっ!」ゴチンッ
DMJ「(こ、こいつ……!?)」
愛梨「わわっ、大丈夫!?」
くるみ「うぅ……痛いよぉ……」グスッ
かな子「大丈夫だよ~痛くないよ~――こんなときは甘い物食べてリフレッシュしよう!さ、召し上がれ♪」
くるみ「美味しそうなケーキ……い、良いんですかぁ?」
愛梨「どうぞ♪ たくさんあるからね!」
くるみ「うわぁ~、いただきまぁす♪」
ヘレン「豚がいないなら捕まえて来なさい」モグモグ
時子「貴女酷い事するわね……勝手にケーキ取るなんて……」
かな子「財前さんもどうぞ♪ たくさんありますから!」
時子「私は別に……だからいつの間に……」
ヘレン「かな子。勝手に餌付けしては駄目よ。彼女にはこれから私の豚丼を作るという役目があるの。
それを無視してティータイムに入るのは、彼女のアイドルとしてプライドを傷つけることになるわ」モグモウ
かな子「そうだったんですか? ごめんなさい……」
時子「いやそんなわけないでしょう? もうちょっとよく常識を考えて? ね? お願いだから!」
時子「買ってきたわよ!!」ゼェゼェ
ヘレン「ご苦労様。キッチンはあっちよ。今葵が居るから、勝手は彼女に訊きなさい。
それから、貴女があまりにも遅いものだから、歓迎にと用意した一切れ、
冷めてしまうと思って食べたわ。プレゼントは、最高の状態ではなければ意味がない。私の持論よ」
時子「あっそ!!」ハァハァ
ヘレン「それじゃぁ、世界レベルの豚丼、期待しているわね」
時子「(もう良い。もう全部どうでも良い。豚丼とか、世界レベルとか、瞬間移動するアイドルとか……どうでもいい!!)」
時子「(あのアホな女の胃袋が破裂するまで煮え湯を飲ませて飲ませて飲ませ尽くしてやる!!
そしてもう二度とこの時子さまに逆らえないようにどいつもこいつも躾けてやるわ!!
――覚悟しなさい!! アーハッハッハッ!!)」
葵「時子さんのブタさんエプロン可愛いっちゃ!」
時子「出来たわよ!!」バタンッ
ヘレン「ご苦労様」
こずえ「待ってたのぉー……」パチパチ
幸子「ようやくですか。このボクをこんなに待たせるなんて……さぞやその豚丼は絶品なんでしょうね。
そしてそれを食べるボクは――さぞかし可愛いでしょうね!!」ドヤァ
飛鳥「豚丼……か。久しくなかった感覚だね」フッ
音葉「果たして、どんな調和を奏でてくれるのか……」
アーニャ「ダー……楽しみです」
輝子「ヒャッハー!」
茜「私ご飯大盛りで!!!」
光「一杯食べることは良いことだ!!」
時子「人数分用意してくるわ!!」バタンッ
時子「お待たせ――ってあ、あれ……他の子達は?」
ヘレン「外よ」
時子「なんで……折角用意したのに……」
ヘレン「私が食べるわ」
時子「は?」
ヘレン「……いただきます」パキンッ
そして世界レベルの女は豚丼を食べ始めた。――私が、練りからしをこれでもかと入れた物を。
角煮は手製じゃない。コンビニで買ったものだ。ごはんも炊き立てじゃない。コンビニのパックご飯を温め直しただけだ。
その即興糞豚丼を、彼女を食べる彼女は――とても、ダンサブルだった。
ヘレン「辛味が良いアクセントになってるわね」
こんなに辛い物、他の味なんて解かるわけないのに。
時子「……ごめんなさい」
ヘレン「そうね。これは世界レベルの豚丼ではない……」
時子「ごめんなさい……」
ヘレン「いいえ、貴女もまた、世界レベルだと勘違いした私が悪かったの」
時子「ごめんなさい」
ヘレン「……」
ヘレン「なら、今度は世界レベルの豚丼を頼むわね」バチコーン☆
時子「……はい!」
そうして即興糞豚丼を残して世界レベルの女は事務所を出て行った。去り際まで、ダンサブル……。
のあ「……」
時子「えっ、誰」
のあ「……残飯処理班です」ブワッ
二人で泣きながら食べた豚丼は、辛子の味しかしなかった。
この後財前時子が豚丼アイドルとして大成功したのは私の語るべき話ではないだろう。
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財前さんと特技の豚の料理って見たら真っ先にヘレンが浮かんだ
のあさんごめんねみくにゃんにゃんにゃんしていいから許してにゃん☆
このSSまとめへのコメント
懐かしい