魔法少女隊R-TYPEs―The trifles tales― (299)

注意書き

・これはR-TYPEシリーズ(STG、SLG設定含む)と魔法少女まどか☆マギカのクロスSSとなります。
・その上、以前書いていた作品の続編となりますので、ここから読んでもまず話がわかりません。
・かなりオリジナル設定の塊で、そもそも年代自体がR寄りになってます。
・そのくせバイドはもういません。バイド注意報は解除されました。
・まどかちゃんは絶賛行方不明中です。
・恐らく、そこまで長い話にはならない事でしょう。

前作
魔法少女隊R-TYPEs
魔法少女隊R-TYPEs FINAL
魔法少女隊R-TYPEs FINAL2~ティロ・フィナーレの野望~

Pixivの方にも纏めています。手っ取り早く本文だけ追いたい方はこちらへ。
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SS-wiki
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ネタバレwiki
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かつて、大きな争いがありました。

文明を発達させ、太陽系全体に版図を広げていた人類の前に、それは突然に現れました。

絶対的な敵意と、圧倒的な力を持って、全てを喰らい、冒す。人類の天敵。

それは"バイド"と呼ばれ、人類とバイドとの戦いは、幾度となく繰り返されてきました。

終わる事のない、激しい戦いの果て。数多の犠牲を積み上げた、その果てに。

全ての人類が抱いた絶望が、そして希望が生み出した奇跡によって

人類は、遂にバイドとの戦いに勝利するのでした。

恐るべき侵略者の魔の手は潰え、宇宙に再び平和が戻りました。

けれど、そんな平和を望まない者がいました。

再び、この宇宙に戦乱を巻き起こそうとする者がいました。

彼らの魔の手が、宇宙を暗く染め上げていきました。

けれど、そんな暗がりに沈む宇宙に、一際強く輝く少女達の姿がありました。

残酷な運命に翻弄され、幾度となく死線を越え、死すらも越えて、彼女達は戦い続けました。

そして今も、また。彼女達は新たな戦いに身を投じようとしていました。


――これは、そんな少女達の物語。

――――ほんのささいな、取るに足らない物語。

土星-木星間に点在する採掘基地。その一つであるミーティア14
そこに隣接するように建設された、採掘労働者のための居住コロニー、ぺタクラフト。

そこに近づく一隻の巡航艦の姿があった。
その艦の名は地球連合軍第三方面軍所属、マーナガルム級十三番艦"オケアノス"。

「こちらオケアノス。ペタクラフト応答せよ、補給の為、そちらに寄航させて頂きたい。詳細については先の書類に送付した通りだ」

「……確かに受領した。定刻一四○○に、三番宇宙港に入港されたし」

「了解した。迅速な対応に感謝する」

手短に入港の手続きを終え、オケアノスの艦長は静かに息を吐き出した。


「こうも易々と事が運ぶとはな……さて、後は時を待つだけだが」

そう言って、静かに彼はほくそ笑む。
とは言えそれも無理からぬ話ではあったのだ。いかにペタクラフトが居住コロニーとて、そこは採掘基地に隣接している。
太陽系全体で緊張が高まりつつある昨今、豊富な資源の一部はそのまま自衛のための武力へと化していた。
いかな最新鋭の巡航艦といえども、単艦で相手取るには荷が勝ちすぎる相手である。
それをよく理解しているからこそ、ペタクラフトは速やかにオケアノスを受け入れたのだった。




だが、その胸中に姦計を秘め男は笑う。果たしてその胸に秘する策とは何なのか。
一時の平和を謳歌していたペタクラフトに、今再び嵐の気配が近づきつつあった。

ミーティア14、第七採掘作業場。
この作業場は、ソルモナジウムを初めとした各種金属を採掘する他の場所とは異なる役割を持っていた。

惑星内部に発生している小規模な異相次元。
その内部に侵入し、通常空間では採掘する事の出来ない希少金属、エーテリウムを採掘する。
そのための入り口となる場所が、この第七採掘作業場なのある。

異相次元内での採掘ということもあり、この場所での作業は熟練の技術が要され
ミーティア14の中でもこの場所における採掘作業に従事できるのは、極々一部の者に限られていた。
それでもここ数ヶ月は、ミーティア14のエーテリウムの産出量は右肩上がりに増加しており、景気がよければ人も集まるということなのだろう。
ミーティア14及びペタクラフトは、先の第一次太陽系戦争以前を上回るほどの活気に溢れていた。

そして今日もまた、一機の作業艇が異相次元からの帰還を果たした。積載限界ギリギリにまで、エーテリウムを詰め込んで。

「よう、調子はどうだ、サヤカ?」
「別に、いつも通りさ。ギリギリまで詰め込んできたよ。……燃料的に、もう一回位なら潜れそうだけど、どうする?」
管制塔のオペレーターが、帰還した作業艇に軽い口調で話しかけた。
サヤカ――美樹さやかは、機体の状態を示すモニターを一瞥すると、そう言葉を返すのだった。

「いいや、そろそろ上がってくれ、サヤカ。他の奴等にも仕事を残しておいてやってくれ」
「ん、りょーかい。それじゃあ帰投するよ」
パーソナルカラーの水色に塗られた作業艇が踵を返し、帰路を辿り始めた。


――ミーティア14・上級採掘作業員。
かつて魔法少女隊の一員であったはずの彼女に、今与えられている役割がこれだった。

「さてと、ただいま」

採掘したエーテリウムを格納し、そそくさと自分の仕事を終えて、さやかはペタクラフトへと戻っていた。
そしてすぐさま家路を辿り、たどり着いたのは二階建ての一軒屋。

異相次元での採掘技術を持った上級作業員である。その住居は、通常の作業員のそれと比べれば随分と豪華なものであった。
そんな家のドアを開き、さやかは家の中に呼びかけた。けれど、その声に応えるものは誰も居ない。
さやかは小さく息を吐き出すと、そのまま家の中へと入っていった。

静まり返った家の中、勝手知ったる我が家を歩き、寝室へ。そこには既に先客がいた。
ベッドにその身を投げ出して、長い真紅の髪を思うがままに散らばらせた、一人の少女が静かにその身を横たえていた。

身じろぎ一つせず、まるで死んでいるかのように少女は眠る。
さやかはそんな少女の側に近寄ると、物憂げに一つ吐息を漏らした。
その表情には、憂いとも哀しみともとれぬ、複雑な色が浮かんでいた。
不意にさやかはその手を伸ばすと、横たわる少女の頬にその手を近づけた。
まるで触れる事を怖がっているかのように、その手は震えながら、ゆっくりと少女の下へと近づいていった。

刹那、突如として湧き上がったそれがさやかの眼前を覆い
同時に何か重いものがさやかにぶつかり、その身体をベッドに押し倒してしまった。

「うぁっ……って、杏子?」
「へへ、おかえり、さやかっ」
衝撃から立ち直ったさやかの視界には、見慣れた少女の笑顔が広がっていた。
彼女の相棒にして、最早家族とも言ってもいい存在――佐倉杏子の笑顔だった。

「あ、あんた……何してんのさ、もう」
「さやかを驚かせてやろうと思ってさー、どーよ、びっくりした?」
驚き半分、呆れ半分といった表情のさやかに向けて、杏子はにっかりと笑みを浮かべ、頬を緩ませ問いかけた。
そんな顔を見ていると、元気な杏子の姿を見ていると、怒る気力も失せてくる。
仕方ないな、とでも言うようにさやかは小さく息を吐き出すと、跳ね上げられて二人を包む布団ごと跳ね返るように起き上がり
今度は逆に杏子を押し倒し、その身をベッドに横たわらせた。

「ええ、ええ。驚きましたとも。あんたがやったら洒落にならないっての」
さやかは杏子の背に手を回し、杏子もそんなさやかを受け止めて、腰の辺りに手をやって。
ベッドサイドの灯りが照らす、少し薄暗い部屋の中。二人でベッドに身を投げ出して、抱きしめ合って。

「……はは、悪い。流石にちょっと、冗談にしちゃあ性質が悪すぎたな」
「そうだよ……ばか」
そう囁く杏子に、拗ねたように顔を背けて頬を膨らませるさやか。

「そう拗ねんなって……ほんと、悪かったからさ。なあ、さやかぁ」
もちろん、こうして身を預けてくれている以上、本心から拗ねているわけではないのを杏子は知っている。
だからこそ、囁く言葉はどこか甘えるようで。

「ったくもう、本当に心配したんだからね。二度としないでよ、こんなの」
「……ああ、わかってるよ」
それでようやくさやかも拗ねるのをやめたのか、膨れた頬からぷぅと息を吐き出して、杏子に顔を向け、静かに瞼を閉ざした。

「……ん」
「え、おい、さやか?」
僅かに顎を上げ、唇を突き出すようにして。何かを待っているような様子のさやか。
杏子はそんなさやかの行動の意図を測りかね、不思議そうに声を漏らす。

「だから、んっ!」
もう一度、さやかはそんな仕草を強調する。今度こそそれは、杏子に正しく伝わったのだろう。
「……ああ、そっか。悪い」
杏子は照れくさそうに小さく笑って、そしてそっと目を伏せて。




灯りが消えて、暗がりに沈む部屋の中、二人のシルエットが溶ける様に重なった。

「さ、てと。それじゃあさやか、今日はどっかに食いに行こうぜ」
ベッドサイドに二人で腰掛けて、余韻に朱に染まる顔を隠すように俯いて杏子が言う。

「って、あんたご飯は作っててくれなかった訳?仕事のない方が家事をするって、ちゃんと決めてたじゃない」
「悪い悪い、実はついさっきまでほんとに寝ちゃっててさー、さやかが帰ってきたので目が覚めたんだよなー。あはは」
「笑ってる場合かっ!……ったくもう、仕方ないな。それじゃあ今日は外食ね」
「じゃああそこにしようぜ。そろそろあいつらにも会っときたいだろ」
「そうだね、そろそろ何か面白い話も聞けるかもしれないし」
そうと決まれば行動は早い。杏子はすっと立ち上がり、赤みの残る頬をぱしりと軽く叩いて。
さやかは上着を脱ぎ捨てて、外出用のジャケットを羽織って。

「じゃ、行きますか」
どちらともなくそう言って、連れ合いだって住処を後にするのだった。

前作が完結して、1年と半年は過ぎたでしょうか。
今更感も溢れています、他に手をつけるべきものもあったりもします。
そんな状況で、この作品の続編に手を出すというのはいかがなものか、今でも迷っているところはあります。

けれど、新編を都合4回ほども見てしまって、いろいろと盛り上がった気持ちはやっぱり何らかの形で吐き出してやらなければなりません。
結局どうにも私には、それに値するものがこういう形でしかやれそうにもありません。

そう言うわけで、この物語も新たなスタートを切る事となりました。
バイドのいないこの世界で、少女達はいかに生き、いかに戦い抜いていくのか。
取るに足らないお話ではありますが、もしどなたか見てくださる方がおられましたら、どうぞよろしくお願いします。

更新自体は、以前のような阿呆みたいなペースという訳には行かないでしょうが
それでもまあ、精一杯にはやっていくつもりです。

では、本日はこれにて。

お、続編か。これは期待!

まだまだ最初ですが、いきなり舞台は遠い宇宙の彼方です。
まあ続編ですので、初見の方は是非とも前作をご覧ください。
阿呆みたいに長いので、気長にご覧いただけると幸いです。

こんなどうしようもなく長いもの、誰もまとめないでしょうから自分でまとめちゃったりもしましたしね。

では、今日も続きと行きましょう。

レストラン、『レパ・マチュカ』.

ペタクラフトでほぼ唯一と言ってもいいレストランである。
元よりペタクラフトは採掘作業者のための居住コロニーである。
言ってしまえばそれは炭鉱夫の住処のようなもの、食事処と言っても、あるのは酒場紛いの所ばかりであった。
そんな中、半年ほど前に突如として開店したこのレパ・マチュカは、物珍しさに惹かれて集まってきた者達を
確かな味とうら若きの少女が給仕をするという二つの魅力でもってがっちりとその心を捉え
今ではすっかりペタクラフトの名物店となっていた。

「いやー、相変わらずすごい繁盛してるねえ」

賑やかな喧騒が店の外まで響いてくる。それに耳を傾けながら、楽しそうにさやかが言えば。

「こりゃあ大分忙しそうだな、あたしらも入れるといいけど……うぅ、腹減ったぁ」

大分頼りなくなった腹具合には店外に漂う料理の匂いですら耐えかねるのか、空きっ腹を抱えて杏子が答えた。

「ま、大丈夫でしょ。さ、行こう行こう」

からんと扉を開き、二人は店内へと入っていった。

「ああ、いらっしゃいお客さん。だが、悪いが今は満席なんだ。おまけに今日は予約でいっぱいいっぱい
 キミ達に空けられる席はない。悪いが、他所をあたってくれないかな」

出迎えたのは、黒いコートのような給仕服を着た少女。
一応客に対する礼儀は通す、と言ったところなのだろうが、その口ぶりは随分とぞんざいだった。
だが、そんな少女の表情は二人の客の顔を見た途端に一変した。

「……なんだ、キミ達か」

少女はさも意外、とでも言う風に、僅かに目を見開いた。

「やっほー、キリカ。久しぶり」

「すげぇ盛況だな、っていうか、その服はなんだよ」

呉キリカ。
彼女も同じくかつての魔法少女隊の一員であり、今はレパ・マチュカの名物給仕の一人であった。


「これは勿論私のユニフォームさ。魔法少女の時の衣装を流用してみたんだ、どうかな、結構似合ってるだろう?」

そう言って、キリカは衣装を見せ付けるようにくるりとその場で小さく回って見せた。

「はは、確かに結構似合ってるかも。っていうか、よく見ると他の子達も結構色んな格好してるよね。
 ……かなーり際どい子とかもいるんですけど」

店内の様子を見透かして、思わずさやかが苦笑した。
一体いつの間にこんな事になったのか、一月ほど前に来た時には、まだ普通にウェイトレス姿だったような気はしたのだが
なんて思い返しながら。

「最近、近場にライバル店が出来てね。負けてられないというわけで
 私達も個性を出す事にしたのさ。お陰でここは盛況そのものだよ」

「それはそれで、変なトラブルとか増えそうなんだけど」

「まあ、それはそれでうまくやっているさ。心配はいらないよ」

様々な場所から人が集まっているペタクラフトである。中にはガラの悪い者も居る。
そんな場所で、少女達がこんな姿で給仕をしているのである。無論大小を問わずトラブルは絶えない。
しかし、どうやらこの給仕を行う少女達。皆只者ではないらしい。
てきぱきと困ったお客を処理しつつ、そつなく給仕をこなす姿もまた、レパ・マチュカの新たな名物となりつつあるのだった。


「まあ、それはさておき。キミ達もここに食べに来たんだろう。キミ達の頼みだ、イヤとは言わないさ。それに話す事も色々とあるからね」

話も一区切りついたところで、キリカは身を翻し、二人を店の奥へと案内した。

「奥の個室を使おう。そこで色々話をするとしよう」

「さっすがキリカ、話が分かるねー」

「ちょっと気分いいよな、こういうのも」

後に続く二人。キッチンの横を通りながら、キリカが大忙しのキッチンに向けて叫んだ。

「タチハナさん。いつもの客がきたから私は奥で相手をしているよ。そっちは任せたからね」

「なっ、キリカ!?おい、ちょっと待て……あぁ、クソっ!」

タチハナと呼ばれた人物は、突然のキリカの行動に驚き混じりに毒づいた。
とは言え、それを止める事はしなかった。止めてはいけない理由を知っていたからだ。
そして後に残されたのは、大忙しの度合いを更に増した店内。
永い戦いになりそうだ、と。タチハナは袖を捲るのだった。

「はいお待たせ、カルボナーラとチキンのトマトクリームフォンデュ、焼き立てパンを添えて、だ」

案内された個室の中で、テーブルを囲んで待つ二人の元に、キリカが料理を携え現れた。

「お、待ってましたー!」

「待ちくたびれたぜ、おかげであたしはもう腹ペコだよ」

「そう言わないでくれ、向こうも忙しくてね、これでも超特急で仕上げさせたんだからさ」

どうやらキリカも自分の食事を用意してきたらしく、同じくテーブルについて。

「ちょっと悪い事しちゃったかな」

「そう思うなら、次からは予約を入れてくれたまえ。そうしたら、もうちょっとまともに歓迎するさ」

「そうだな、まあそれはさておき……さっさと食おうぜ、話もいろいろあるんだろ?」

話をするというよりも、早く食べたいという欲望を顔いっぱいに浮かべて、杏子が椅子を揺らして言う。

「はいはい、それじゃあ」

「「「いただきます」」」

三つ、声が重なった。

「ふー、食った食った。やっぱりたまにはいいもん食わないとな」

「おっとー、それはいつもあたしが作ってるのが美味しくない、って事なのかなー?」

腹もくちくなって、満足げに言葉を吐き出した杏子にさやかがちくりと噛み付いた。

「い、いやっ!そんなんじゃねーって。さやかの料理が美味しいのは、あたしが誰よりよくわかってるからさぁ」

「そんな事言って、いっつも買い食いばっかりしてるの知ってるんだからね。
 ほんとは物足りないなー、とかって思ってるんじゃないの?」

「だからそれは……」

なんだかややこしい事になりそうな空気を。

「はいはい、ごちそうさま。痴話喧嘩はその辺にしておいてくれ」

ぱんぱん、と軽く手を打ちキリカが遮った。
そんなキリカはどこか不機嫌そうに見える。無理もない。彼女の想い人は遠く離れた宇宙の彼方に居る。
会えない寂しさは深々と積もっているというのに、目の前でこんなしょうもない痴話喧嘩を見せられては
当然面白いものでもないわけで。

「本題に入ろう。……今日の昼頃、ほむらから連絡があった」

「っ!?」

キリカの言葉に、ややこしい空気は一気に霧散した。

「ほむらから?……そっか、戻ってきたのか」

安心したような、それでいて少し不安を帯びた表情で、さやかは小さく呟いた。

暁美ほむら。
第3次バイドミッションの英雄、『スゥ=スラスター』のクローンとして生み出され、逃避と放浪と戦いの果て、魔法少女となった少女。
今の彼女は優秀なパイロットとしての腕を活かし、経歴を隠して惑星間を駆ける運び屋を営んでいる。
そしてその長い仕事をようやく終え、仲間の待つペタクラフトへと帰還を果たそうとしていたのだった。


「それで、ほむらは他に何か言ってたか?」

「いや、短い時間だったからね、大した事は話してない。ただ……今のところ、木星近辺に動きは見られないとの事だ」

「そっか……しかしまあ、こっちに来て半年は経つけど、なんだかんだで平和だよねえ、ここは」

今のところ、地球連合軍は木星圏までをその支配下に置いた後、不気味な沈黙を保っている。
故にグランゼーラ革命軍もまた、表立った行動は見せていない。
一時の平穏に過ぎないと思っていたその平和は、人々の予想を超え、半年以上の長きに渡って保たれ続けていた。
故に多くの人々は、それがこのまま続くものなのではないかとすら思い込んでしまっていた。

けれど、彼女達は違った。

「でも、連中は必ずどこかで仕掛けてくる。……地球至上主義だかなんだかしらないけど
 あんな面倒なもんを掲げてる連中が、そう易々と諦めるはずがない」

地球圏に蔓延る地球至上主義という思想。
太陽系を巻き込むこの戦争の大きな要因であるそれを知る杏子は、決して油断も慢心もしていない。

「それについては、一つほむらが気になる事を言っていたよ」

キリカの言葉に、二人の表情はさらに険を強めた。

「ペタクラフトに、地球軍の巡航艦が入港したらしい。数は一隻らしいし、さほど心配する事ではないとは言っていけどね」

「たった一隻、ねえ。確かにそれなら大丈夫かな?」

「まあ、連中が派手に動き出したってなら、グランゼーラも動き出すだろうしな。……とは言え、警戒するに越した事はねぇ、か」

「ま、とりあえずは明日帰ってくるっていうほむらを迎える事を考えようよ、そうだ、明日はここでぱーっと宴会でも開くってのはどう?」

重くなってしまった空気を払うように、努めて明るくさやかが切り出した。

「お、いいなそれ。ほむらの奴も疲れてるだろうし、ぱーっと労ってやろうぜ!」

たちまち杏子が同意して。

「また随分急な話をしたものだね。……まあいいさ、積もる話もあることだし、一席設ける事にしよう」

また明日は忙しくなりそうだな、と苦笑しつつも、キリカもその提案を受け入れた。
それからはひたすら他愛ない話を繰り広げて、結局閉店の時間まで少女達は姦しく過ごすのだった。

所変わってペタクラフトの宇宙港。
オケアノスの艦長は、秘密裏にペタクラフトの指導者との通信による面会を行っていた。

「用件は以上だ、早急な回答を希望する」

画面の向こうの男は、艦長に向けてむき出しの敵意を隠そうともせずに言葉を返す。

「我々は地球連合軍にも、グランゼーラ革命軍にも属さず中立を保っている。貴方方の支配下に下るつもりはない」

そう、艦長がペタクラフトの領主に向けて告げた内容は、ペタクラフト及びミーティア14に地球連合軍への帰順を促すものだった。
ペタクラフトは現在、地球連合軍及びグランゼーラ革命軍のどちらにも属さず中立を保ち、双方に資源の輸出を行っている。
そしてその中立という立場に甘える事無く、自衛のための戦力の保持にも余念はない。
仮にどちらかの勢力がペタクラフトの占領を目論んだとしても、もう片方の勢力による妨害は必須。
ペタクラフト自体が保有する戦力も侮れないものがある以上、そう易々とは手は出せまい。
そういう確信を持っているからこそ、ペタクラフトの指導者であるその男は頑なな態度を崩す事はなかった。

「できれば素直に我々に下ってもらいたいものだな。そうすれば、我々としても無用な争いはしなくてすむ」

「お言葉はありがたいがね、そういう脅迫は、せめてもう少し頭数を揃えてから言って欲しいものだ」

口調は静かだが、画面ごしに冷たい火花が散ってでもいるかのように空気は冷たく張り詰めている。
結局議論は平行線を辿り、半ば喧嘩別れのような形で通信は打ち切られてしまった。



「……まあ、ここまでは想定内だ。では、このオケアノスの真の力、ご覧頂こう」

男が小さく指を鳴らすと、オケアノスの艦内に無数の駆動音が響き渡った。

本日はここまで、という事で。
皆それぞれの新しい生活を過ごしていたようですが、物語が始まれば、否応なくあるべき場所へと戻っていくのです。

>>11-15
皆様方には、大変長らくお待たせいたしました。
途中でダラの方のネタで書いて見ようかと思い立ったはいいものの、ダラの方の資料不足に敢え無く断念。

……って言ってたら、出やがりましたね。『ダライアスオデッセイ』
こいつが出ちゃったからには、もしかしたらその内そっちもやるかもしれません。
けれどひとまず今は、皆さんのご期待に答えられるように頑張っていくつもりです。

>>1>>25を見て何故か「で、無視と」を思い出した

銀髪のオリキャラ……スゥさんもどき……うっ、頭が

宇宙の風だかになる前の話かな?

惑星内部に発生している小規模な異相次元ねぇ。要は不思議のダンジョンか?

メリークリスマス。
一昨年のクリスマスもこんな話を書きながらつらつらとやっていた事を思い出しました。
まだまだ話が転がりだすには遠いですが、ちょっとずつでも投下です。

「いや~、今日も楽しかったねぇ」

結局閉店時間までたっぷりとっぷりと話し込み、家に戻ったさやかと杏子。

「そうだな、久しぶりに話したけど、相変わらず忙しそうだったな」

腹から込み上げてくる心地よい満腹感と、足元からじわじわと広がる心地よい疲労感。
それに身を任せて、荷物も乱雑に放り投げ、二人でベッドに身を預けて。

「こんなとこに来ちゃった時には、最初はどうなるもんかと思ったんだけどね。なんだかんだで住めば都、って奴かな」

ベッドの上で背を伸ばし、心地よさそうに伸びをしながらさやかが言えば。

「……毎日ほどほどに働いて、楽しく平和に暮らして、だ。悪くないもんだな、こういうのも」

しみじみと感慨深げに杏子が答える。こんな平凡な日々は、杏子にとっては遥か昔に失ってしまったもの。
そして今それを手にしてみれば、それはとてもありふれていて。そしてひどく尊いものだった。

「まさか、こんな平和に日々を過ごす事ができるなんてさ、正直欠片も想像してなかったよ。
 あたしはずっと、戦って戦って生き続けるものだと思ってた」

心地よさに任せて目を閉じれば、優しい眠気が込み上げてくる。杏子はどこかふわふわとした口調で、感慨深げに呟いた。
閉ざした瞼の裏に浮かぶ、戦い続けた日々の影。
ある日全てを失って、英雄に出会い、共に過ごしそれに憧れ、それを目指し。
戦い続けて仲間と出会い、命を尽くし、死すらも越えて戦い続けた長く激しい戦いの記憶だった。
それは間違いなく辛い戦いの日々だった。けれど同時に、誇るべき仲間と共に駆け抜けた、鮮烈で強烈な青春の記憶でもあったのだ。

「そうだね……あたしもまさか、あんたと一緒にこんなとこにまで来るなんて、思っても見なかったよ」

思いに耽る杏子の隣に、さやかがそっと寄り添って。

「でもさ、あたしはよかったって思ってるんだ。こうやって少しでも長く、あんたと一緒にいられるんだから」

そう言って、ささやかに儚げにさやかは笑う。

「あたしはちょっと怖いくらいだ。……こんなに幸せで、平和でいいのかね」

隣で寄り添うさやかに、自分からも身を寄せて、少し震えた声で言う杏子を、さやかはそっと抱きしめて。

「いいんだよ。だってさ、あたしらは今まであんなに必死に戦い続けてきたんだよ?このくらいのご褒美はあったっていいでしょ?」

「ご褒美か……はは、確かにそりゃそうかもな。それにしたって出来すぎてる。まるで奇跡か魔法みたいだ」

「もしかしたら、本当にそうかもよ?……だってこの世には、奇跡も魔法もあるんだから」

魔法少女の名を宿す、無数の少女達がその身に宿した本物の魔法。
その影に潜む凄惨な末路さえ、無数の犠牲まで飲み込んで戦い続けた人類が、一人の少女の願いによって、最後に掴んだ本当の奇跡。
その全てを踏み越えて、少女達は今ここにいる。だからこそ言える。この世界には、奇跡も魔法もあるのだと。
それを知っているからこそ、二人は互いに顔を見合わせて。おかしそうにくすくすと笑った。


それから、こつんと額を合わせて。顔が触れ合いそうなほどに近づけて。

「……こんな日常が、ずっと続いたらいいのにな」

どちらともなくそう言った。

それは、この幸せな魔法を解く言葉だったのだろう。
静かに二人の身体が重なろうとしたその刹那、遠くから聞こえる爆発音と振動が、二人の部屋を揺るがした。

何かが起こった。起こってしまった。それを確信し、二人は一度顔を見合わせて、それからどちらともなく笑って。

「……解けたな。魔法」

「どうかな、まだただの事故かもよ?」

二人は同時に身を起こし、立ち上がり。

「「じゃあ、行くかっ!」」

その日、ペタクラフトの宇宙港は赤々と立ち上る炎に包まれていた。
消火活動が行われているが、巻き上がる炎はそんなささやかな抵抗を嘲笑うように荒れ狂っている。
断続的に爆発音が響き、噴き出す炎が周囲に飛び火していた。

「一体、何がどうなってやがるんだ」

必死の消火活動も空しく、宇宙港から上がる火の手は激しさを増すばかり。
宇宙港はペタクラフトの最重要施設である。消火設備も万全であるはずなのだ。
だが、宇宙港は今火中に沈み、通信に対しても一切の反応がなかった。
不可解な状況に、消火活動にあたる自警団の隊員が忌々しげに吐き捨てた。



「クソっ!何なんだあいつらはっ!!」

炎渦巻く宇宙港、その比較的被害の少ない一角で、僅かに生き延びた警備兵達が叫んでいた。
否、叫ぶばかりではなく、眼前の炎に銃口を向けて、狂ったように引き金を引き続けていた。
放たれる無数のレーザーは、人や宇宙港の内壁程度ならば容易く貫通するほどの威力を持っている。
故にそれは何にも妨げられる事無く、炎の向こうに消えていく。

だが、そのレーザーの雨をくぐり、炎の渦すらも厭わずに、ゆっくりと迫ってくる何かがあった。
突如として現れたその何かは、宇宙港のシステムに侵入し警備システムを寸断した。
その後破壊活動を開始し、ものの1時間足らずで宇宙港全体を火の海へと変えてしまった。
謎の敵の襲撃に浮き足立ち、警備兵達も次々と打ち倒されていく。
そして今、最後に残された彼らの元にもそれは現れたのだった。

「く、来るなぁっ!!」

迫る敵に向けて、無数のレーザーが突き刺さる。
だが、それはすべて敵の表面を照らすばかりで、その行動を止めるには至らなかった。

「人間……なのか、こいつは」

現れたそれは、人の形をしていた。けれど炎を、レーザーすらも無効化しているその異様、ただの人間であるはずがない。
そう、それは人ではない。合金のフレームによって作られた身体を、特殊素材で作られた合成皮膚で覆った、人の姿をした機械。
人間を越えた膂力と耐久性を持つ、地球軍が新たに生み出した、拠点制圧用人型無人兵器。

「ミニオンは順調に働いてくれているようだな」

ミニオンと呼んだ無人兵器が宇宙港を順調に制圧し、その様子が次々にオケアノスにモニターされている。
その様子を満足げに眺めながら、男は静かに呟いた。
そう、オケアノスはただの巡航艦ではなかった。
その腹の内に無数のミニオンを抱え、その全てを操作し、支配する指令船でもあったのだ。

いかにペタクラフトが大量の戦力を保有していたとして、それらは全て外から来る脅威に対してのもの。
内側からの敵に対しては、そこまで重きを置いていなかった。
故に今、ペタクラフトはその戦力の要というべき宇宙港を制圧され、完全に沈黙した。

ペタクラフトを制圧するだけながら、戦力を多く向ければそれで事足りる。
だが、そうすれば間違いなくグランゼーラも介入を開始する。
それを避けるためには、グランゼーラに行動を察知されないような少数で、介入する暇も与えないほどに迅速に、ペタクラフトを制圧する必要があった。

そして今、その条件は整った。

「ミニオン部隊は無事に宇宙港の制圧に成功したようだ。では、作戦を第二段階に移すとしよう」

ミーティア14周辺宙域、小惑星帯に隠れていた地球軍の特務小隊
ペイルストーム隊が無力化されたペタクラフトを制圧せんがため、行動を開始した。

「艦長、我々の進路上に艦影があります。……どうやら民間の輸送機のようです。ペタクラフトに向かっているのでしょう」

「我々の姿を見られては面倒だ。それに時間も惜しい、蹴散らせ」

ペイルストーム隊の旗艦、フレースヴェルグ級が接触軌道に入っていた民間の輸送機に向けてその矛先を向ける。
恐らくその輸送機も、自分が攻撃されようとしている事に気付いたのだろう。逃げるような軌道を取り始めたが、もう遅い。
圧倒的な力で敵を蹂躙する。その行為にえもいわれぬ愉悦を感じながら、ペイルストーム隊の指揮官は攻撃の指示を出すのだった。


「こんなところに地球軍の駆逐艦。そして、有無を言わさず攻撃してくるという事は……そう言うことね」

その輸送機を操る人物は、何かを察した様子でそう呟いた。
けれどその時にはもう、フレースヴェルグ級の放った追尾ミサイルがに迫っていた。回避など、到底敵うべくもなく。

爆炎の中に没した輸送機を一瞥し、再びフレースヴェルグ級はペタクラフトへの進路を取った。
だが、その爆炎を突っ切り、何かがフレースヴェルグ級へと接近した。


「何だ……まさか、これは!?」

「さやかちゃん登場っ!」

「続けて杏子ちゃん登場っ!……って、このノリほんとに必要か?」

「何言ってんの、非常時だからこそいつもどおり、ノリよく元気に、でしょ?」

なんて言い合いをしながら、元気に扉を蹴り開けた二人を迎えたのは。

「やっと来たか、相変わらず騒がしい奴等だ」

レパ・マチュカの料理長にして店長、タチハナであった。

「や、タチハナさん。さっきぶり」

「とにかく中に入れ、話はそれからだ」

「それで、状況はどうなってるの?」

開口一番さやかが切り出すと。

「はっきり言って詳しい事は殆どわからん。ただ、火元が宇宙港からだってのはわかった。
 お陰で宇宙港に配属されてた部隊は全員文字通りの立ち往生、今のところ、ペタクラフトは完全に沈黙しちまってる」

「って事は……この状況を連中が見逃すはずもねえ。っていうか多分、この騒ぎ自体連中の仕業って事だろうね」

これが地球連合軍による侵略だというのなら、手をこまねいている暇はない。
すぐにでも行動に移るべきなのだが、状況が分からないのでは動きようがない。

「ああ、キミ達も来たんだね」

そこへ、店の奥からキリカがその姿を現した。

「キリカ、そっちの準備はどうなってるの?」

「重役出勤してきたキミ達とは違って、こっちの準備は万全さ。いつだって出られる。キミ達も、さっさと準備を済ませてくるといい」

そう言ってまたすぐに、忙しそうにキリカは店の奥へと引っ込んでいく。
どうやら状況はかなり切迫しているらしく、店の奥からは多くの人々が動き回っている気配が伝わってきた。

「タチハナさん。あたし達の機体の用意はどうなってるかな?」

「整備は欠かしてない、あんたらが乗り込んで最後の調整を済ませれば、すぐに出せるはずだ」

「そっか、じゃあ行こう、杏子」

「ああ」

戦うための力はある、こんな時の為に、周到に用意しておいたのだから。
今こそその力を使う時だと、さやかと杏子は店の奥へと進んでいく。だが、そんな二人をタチハナは呼び止めて。

「まだ何が起こってるのかもわかってないんだ。迂闊に飛び出せば、それこそかえって問題になりかねないぞ」

地球連合軍の攻撃である事はほぼ間違いないといえど、確証があるわけではない。
この状況で、グランゼーラが本格的に行動を起こせば、それこそ地球連合軍にペタクラフトに介入する理由を作ることになりかねない。
なにより、秘密裏に部隊を潜入させていたとなれば、ペタクラフトからの心証自体も良くはならないはずだろう。
だからこそ、状況がはっきりと分かるまでは待つべきだと、タチハナは二人に告げた。

そんな言葉にさやかは一つ頷いて、それから。

「タチハナさんのいう事もわかるよ。でも、今現に宇宙港が燃えてて、沢山の被害が出てるのは事実なんだ。
 そして、それを止められる力は多分、ここにしかない」

迷いなく、真っ直ぐにタチハナの顔を見据えて言うさやか。そんなさやかの隣で、若干呆れた様子で杏子が言葉を次ぐ。

「ま、こいつのこういう性分はもう病気みたいなもんさ。
 それに、ここまでやられて手をこまねいてるのは正直あたしも気に食わない。だから、ここは行かせてもらうよ」

有無を言わさぬ立場である。グランゼーラ内部での魔法少女隊の立ち位置も、どちらかといえばこのような状況に近い。
こうと決めてしまえば聞かないのだ。
それはつまり、それだけの信頼を置かれるだけの戦果と実力を誇っている、という事でもあるのだが。

「わかったわかった。好きにしろ。じゃあお前らは宇宙港の方に行ってみてくれ。
 生身じゃどうにも近づけないが、お前らならやりようはあるはずだろう」

ついに根負けした様子で、タチハナも二人の行動を黙認する。

「任されたっ!」

「まあ、任せな!」

二人は握った拳を力強く掲げてタチハナに応えると、店の奥に秘密裏に作られた格納庫へと向かうのだった。

「そろそろ頃合だろう。とどめにかかるとしよう」

無数のミニオンを操る指令船であるオケアノスは、高性能AIが搭載され、高度に自動化された艦であった。
それ故に、この艦はこの男一人の手によって操られている。
そして艦としての機能を維持する為のスペースを除く、全ての余剰空間に無数のミニオンが詰め込まれていた。
故に、宇宙港を完全に掌握して尚、その戦力には余力を残していた。
これならば、ペイルストーム隊の到着を待つ事無く、ペタクラフトを制圧する事すら不可能ではないと思われた。

だからこそ、オケアノスはその機関を起動させた。
最新式の波動エンジンが唸りを上げ、艦全体が目を覚まし、その身を戦うための力と変えていく。
オケアノスの武装の中でも最大の威力を持つ艦首砲、ヴァーン砲Ⅲ型に、恐るべき破壊の力が蓄えられていく。
本来であればそれを静止するための警備システムも、警備兵達も、その悉くが既に沈黙している。
故にオケアノスは、何にも妨害される事無く艦首砲のチャージを終え、それを撃ち放った。

暗がりの空を立ち上る炎が赤々と染める。そんなペタクラフトの空を、一筋の閃光が貫いた。
その閃光は、宇宙港の外壁を食い破り、コロニー内壁さえもを撃ち貫く。
その一撃によって生じた膨大な熱量が、そして内壁に空いた穴から漏れ出す空気が渦を巻き
灼熱の突風がコロニー内に吹き荒れる。その風に焼かれ、巻かれ。被害は拡大の一途を辿る。
すぐさまコロニーの自動補修システムが外壁の損傷を修復し始めるが、そんな抵抗を嘲笑うかの様に
炎に沈む宇宙港からオケアノスが悠々とその身を現したのだった。

炎の海を離れ、巻き起こる灼熱の風さえも涼しげに受け止めながら
オケアノスはペタクラフト内を悠然と周回し、まるで自らがもたらした被害を確かめるように、その有様を睥睨した。


「ペタクラフトの宇宙港は、我々が完全に制圧した」

そして、立て続けに巻き起こる爆音に負けぬ程の大声量でもって、呼びかけた。

「そして今尚、我々はこのペタクラフトを破壊するに足るだけの力がある」

その言葉を裏付けるかの如く、上空からペタクラフトにミニオンを投下する。
投下されたミニオン達は、逃げ惑う人々の頭上に降り注ぎ、そして襲いかかる。あるいは建物に突入し、破壊の限りを尽くしている。
灼熱と破壊、そして死が織り成す狂宴の舞台と化したペタクラフトに、男の哄笑が響く。

「我らは地球連合軍。我らの要求は一つだ」

溢れんばかりの狂気を、一切隠す事無くその言に乗せ。その有様は、さながら天上から裁きを下す、破壊の神のようで。




「――悉く、死ね」




いよいよ開戦です。

>>26
あまり自己主張が激しすぎるのも考え物でしょうね。

>>27
続編なんで、まあ。その辺もちゃんと出ますよ。
きっと、ええ。

>>28
全てが終わった後の話になります。
ですので、現在の太陽系にはスゥちゃんもいないという事になります。
大分寂しい具合になってますが、まあなんとかやっていきましょう。

>>30
そもそもエーテリウム自体、異相次元内でしか採取できない代物です。
そう言うのを一体どうやって安定供給してるんだか、と考えると。大体こんな感じになるのではないかな、と思います。
ゲーム中では特に変わりはありませんが、きっと異相空間を飛行するのは、通常空間のそれとは大分勝手が違うのでしょう。
そういう色々諸々な都合を含めて、こんな感じの話となりました。
流石にモンスターとかは出てこないと思います、当分は。

いやいや、大変な相手を敵に回してしまったよ。君達は

乙!

まどマギのサントラとRのサントラを交互に聞きながら、テンションを上げて書いてます。
というわけで、今日もお昼更新なのです。

「まさか連中が、ここまでの強攻策を仕掛けてくるなんて……これじゃあ対策もクソもあったもんじゃない!」

非情な宣告と、有無を言わさぬ侵攻がペタクラフト全土を揺さぶる。レパ・マチュカもまた同様であった。
反撃の手立てはあるとはいえ、これだけ急な攻撃に対して、万全の体勢で望めるはずもなく。
忌々しく吐き捨てたタチハナの元にすら、侵略者の魔の手は伸びていた。
轟音と共に、天井を突き破りミニオンが落下してきたのだ。

「げほ、ごほっ……クソっ、今度は何なんだ!?」

濛々と沸き立つ粉塵の向こうに、人影が見える。
油断無くそれを睨みつけているタチハナの眼前で、ミニオンがその姿を現した。
人の姿をした、けれど明らかな異貌を持った機械兵士。
拠点制圧及び、白兵戦の役目を持つそれは、言うなれば人間を殺すための機械であるとも言えた。

その異貌を見て取るや、すぐさまタチハナは懐から銃を引き抜き撃ち放った。
その手際たるや、常日頃作っている料理の手際と同じように手馴れていた。
それもそのはず、彼もまたグランゼーラ革命軍によって、魔法少女隊と共にペタクラフトに差し向けられた兵士だったのだから。
所属が炊事班とは言え、最低限の武器の扱い方位は身に着けていたのだ。

だが、当然そんなささやかな火力では、迫り来るミニオンを打倒するには至らない。
急所と思しき頭部と心臓部に、立て続けに放たれたレーザーは、ミニオンの表皮を僅かに赤く染めただけで
その動きを止める事はできなかった。
驚愕に顔を歪めるタチハナの眼前で、耳障りな駆動音と共にミニオンは跳躍し、タチハナ目掛けて襲い掛かった。

「う、うわあああぁぁっ!?」

「やらせるかぁぁっ!!」

間一髪、割り込んだのは黒いシルエット。
空中でミニオンの鋼の体躯を蹴り飛ばし、その反動でタチハナの隣に着地した、呉キリカの姿だった。

「危ないところだったね、タチハナさん」

「ああ、助かった。って……向こうは大丈夫なのか、キリカ?」

「どうにもこっちの方が拙そうだったからね、外の事は二人に任せる事にした。
 タチハナさんも、ここは私に任せて、先に脱出の準備を進めておいてくれ」

「任せると言っても、あんなバケモン相手に一人でどうにかできるのか?」

事実、先のキリカの一撃すらも、ミニオンにさしたる損傷を与える事は出来なかったようで。
吹き飛ばされて崩れた瓦礫の中から再びミニオンは立ち上がると
より優先すべき相手と認識したキリカへとその無機質な顔を向けていた。

「人並みの心配ならいらないよ。何せ私は――」

不敵な様子でキリカが答える。
けれどそんな言葉を遮って、腕部に内臓去れていたブレードを展開し、ミニオンがまさしく人外の速度でキリカに迫る。

「――魔法少女、だからね」

刹那、黒い閃光が走る。
一瞬の後、ずるりと胴体が真ん中から切り裂かれ、そのまま二つに分かれて崩れ落ちたミニオンと
振りぬいたその手に漆黒のカギ爪を携えたキリカの姿があった。

時間遅延という魔法と、合金すら切り裂く鋭いカギ爪。
それこそが、魔法少女としてのキリカが持つ力だった。

「なるほどな……確かにこれは、さっさと脱出の準備を済ませたほうがよさそうだ」

だが、そのミニオンもただではやられなかったのだろう。
機能停止の直前に放たれた信号を受信したミニオン達が、一体、また一体とレパ・マチュカへと接近していた。
その状況を見て取って、最早一刻の猶予もない事をタチハナも悟る。

「そう言う事だ!ここは私が食い止める、そっちは任せたよっ!」

迫り来る無数のミニオンを油断無く睨み付けながら、キリカは両の手に漆黒のカギ爪を宿らせる。

「……すまんが任せる。お前も頃合を見て合流してくれっ!」

こんな少女に殿を任せる事になるなんて、その事実に若干の抵抗や苛立ちを感じはするものの。
それでもタチハナは、脱出の準備を進める為に店の奥へと駆け込んでいった。

「生身でやりあうのは久々だね。……さっさと用意を済ませてくれればいいが、長引くと面倒そうだ」

魔法もまた、無限に使える力ではない。
使えば使うだけ魔力を消費し、魔法少女の証であるソウルジェムに穢れが溜まる。
穢れが溜まりきってしまえば、魔法少女は魔女という、人類の敵に成り果ててしまう。
もっともこの状況では、魔法が使えなくなるほどに消耗すれば、魔女になるより早く息絶える事にはなるだろう。
そんな洒落にならない想像に、思わず苦笑めいて。

「織莉子の予知は当たった。つまり、こいつらを片付ければ、帰れるんだ。
 ああ……うん。これはちょっと、張り切らなくてはいけないね」

美国織莉子。キリカの想い人にして、彼女もまた魔法少女隊の一員である。
未来予知の力を持つ魔法少女である彼女は、その力の特異性、有用性から
グランゼーラ革命軍の本拠地である軍事基地、グリトニルを離れる事ができずにいた。
けれどその力をもってしても、この広大な太陽系に起こる全ての事象を正確に予知する事などはとても叶わない。
距離が開けばそれだけ、導かれる予知にもぶれが生じていた。
それ故に、地球連合軍によるペタクラフト襲撃を予知しながらも、その正確な時期を特定する事はできなかった。
だからこそ、ペタクラフトにも警戒されにくいであろう魔法少女隊を秘密裏に派遣し、時を待っていたのだ。

そして今、時は来た。


「さあさあ!微塵に刻まれたい奴からかかって来るがいいっ!」

愛しい人の姿を想う。再会の時が近い事を実感する。それだけで、身体に力が漲ってくる。
戦いの先にある未来を見据え、けれども目の前の敵を見過ごす事もなく
キリカはその全身に闘志と戦意を滾らせて、迫り来るミニオンの群れへと突入していった。

「まさか、直接艦を乗り入れてくるとは思わなかったな。……こいつは、ちょっと拙いな」

レパ・マチュカの地下格納庫。そこに収められていた3機のR戦闘機。
その内の一機のコクピットの中で、機体の最終調整を済ませながら杏子が一つ毒づいた。

R戦闘機。
かつての人類の天敵、バイドを倒さんが為に生み出された人類の叡智と狂気の結晶。
けれど今、ふるうべき敵を失ったその力は、人類同士の戦いの為に使われていた。
もっとも、無人兵器を主軸とした地球連合軍では、最早R戦闘機を運用する部隊はそう多くなく。
グランゼーラ革命軍が、既存のR戦闘機に独自の技術を加え、発展させた物を主戦力として運用していた。

「今のところは大人しくしてるみたいだけど、あんなのに暴れられたら、ペタクラフト自体が持たないよ。何とかして止めないと」

同じく機体の最終調整をしていたさやかの声にも焦りが混じっていた。
いずれ事が起こると知っていたからこそ、準備は怠ってこなかった。
けれど、ここまで状況が急変する事は予想外だったのだ。
この格納庫には、R戦闘機を保持するための最低限の設備しか用意されていない。
日々の整備は欠かしては来なかったのだろうが、それでも出撃する為にはいくつかの起動シークエンスを経る必要があった。
その間にも、ペタクラフトの被害は拡大していく。それがどうにももどかしく、さやかの焦燥を煽った。

「下手に攻撃して、コロニーの中で墜落でもされたらそれだけで大惨事だ。今の内に、方法を考えておかないとな」

「となると、推進部を潰すか、それとも武装を全部叩き落すか、ってところかな。……それも、かなり迅速に」

言葉にするだけならば、それはそこまで難しくないようにも聞こえた。
実際のところ、二人の腕を持ってすれば、巡航艦一つを撃破する事はそう難しくはない。
搭載されている無人兵器も、今ペタクラフトを襲撃している小型のものであれば、R戦闘機の敵にはなりえない。
だからこそ、敵艦を撃破するだけならば何の問題もないのだ。
その上で、時間をかければ全ての武装を破壊して、敵艦を丸裸にする事すら不可能ではない。
ただ、やはりどうしてもそれには時間がかかってしまう。R戦闘機が出てきたとなれば、敵艦も反撃をしてくるだろう。
そうなれば、どの道被害は避けられない。

「一撃で奴の動きを止めなけりゃならない、おまけに撃墜もしちゃいけない。こいつは難題だな」

そもそもにして、ここまで敵艦の進入を許してしまった時点で勝負は半ば付いているようなものなのだ。
形勢の決まった勝負を、ここからひっくり返そうとするのならば。
それはまさしく、奇跡か魔法でも起こして見なければどうにもならない。

「そんな無理難題をどうにかしちゃう方法、あるよ」

「何か思いついたのか、さやか?」

「まあね。でも、これはこれで一発勝負。外したら最悪の泥仕合になる。覚悟、できてる?」

そんなさやかの言葉に、杏子は不敵な笑みを浮かべ。

「誰に言ってんだよ、それ。さやかこそ、腕は鈍っちゃいないだろうね?」

「まさか、そんなわけないでしょ。……じゃあ、奴等に見せてやりましょうか」

そんな相変わらずな様子がまた頼もしくて、さやかも同じような笑みを浮かべて。

「あたし達の実力を、ね」

「制圧は順調に進行中。全く持って他愛ない」

ペタクラフトの上空を悠々と旋回し、時折ミニオンを投下しながら、男は状況をそう分析した。
モニターに示されたペタクラフトの概略図が、次々に制圧完了を示す色に染まっていく様を、満足げに眺めながら。
けれど、そんな男の視線がある一点で止まった。
周囲のエリアの制圧は完了しているというのに、そのエリアだけが未だに制圧を完了していない。
詳細を調べてみれば、そのエリア内において何故か、ミニオンの撃破報告が次々に上げられていた。
全体の制圧状況から見れば、それは些細な出来事に過ぎない。けれど、男は完璧主義者であった。
事態を究明するべく、そのエリアに展開しているミニオンの視覚情報を表示させた。

「これは……」

そこに映っていたのは、半ば廃墟と化したレパ・マチュカ。
そこで地下へと続く扉を守るように立ち塞がり、襲い来るミニオンの群れを次々に斬り捌いていくキリカの姿だった。
その姿も、振るう力も明らかに普通の人間のそれではない。ミニオンを相手に、これだけ一方的な戦いを見せるその力は。

「そうか、我々と同じように、お前達もここに手を伸ばしていたという訳だ」

科学と異なる法則に基づく、魔法と呼ばれる力。それを振るう魔法少女。
それらは今現在、地球連合軍内では運用されていない。となればそれを振るう者が何者であるかは明白で。

「よかろう。そのささやかな抵抗に敬意を表し、私が自ら貴様を裁いてやろう」

けれど、そう。そんなささやかな抵抗も、この艦の威力の前ではまるで無意味。
キリカが防戦を繰り広げるそのエリアごと、艦砲射撃で消し飛ばしてしまえばそれで片がつく。

「消し飛べ。――っ!?」

口角を吊り上げ嗜虐的な笑みを浮かべ、男は容赦なく砲撃を叩き込んだ。
否――叩き込もうとした。けれど、オケアノスの真下から湧き上がった二条の閃光が、それを遮るのだった。

では、今日はひとまずここまでという事で。
今年中には1話は終わらせておきたいものですね。

>>44
遂に彼女達も反撃開始です。
果たして敵を撃破する事が出来るのか、ペタクラフトを守れるのか。
乞うご期待、と言ったところです。

あれ?そういやぁ、もうさやかと杏子は魔法少女じゃなくなってたんじゃあ……なかったっけ?

乙!
結構な組織なんだし、開発・研究系の娘に魔法少女用の外骨格装備とか、作られててもおかしくなさそうなもんだけど……あるのかな?

ちょっとだけ調子が戻ってきたような気がします。
では、今日も投下行きましょう。

飛び出した二条の閃光。それは二機のR戦闘機。
赤いカラーリングを施された、佐倉杏子の愛機。デコイ作成機能を持つR-9AD3―キングス・マインド。

そしてもう一機は、青いカラーリングを施された美樹さやかの乗機。
先の大戦において乗機を失っていたさやかの駆る機体は、グランゼーラ革命軍の主力生産機の一つ。
エクリプスシリーズの発展型にして、機動性とショートレンジにおける戦闘に特化した機体。
Tw-T03ff―エクリプス・フォルテッシモ。

キングス・マインドとフォルテッシモは、地下の格納庫を発進し、オケアノスを下部から強襲した。
互いに交錯するような軌道を描き、その最中、キングス・マインドは無数のデコイを展開した。

「馬鹿なッ!R戦闘機だとぉっ?!」

突然の強襲。グランゼーラの介入があったとは言え、まかさコロニー内部にR戦闘機を隠していたとは
それは男にとっても予想外であったようで、その表情が驚愕に染まる。
元よりオケアノスは、通常の巡航艦というよりもミニオン部隊を運用するための試験艦としての意味合いが強い。
それ故に、機能の多くはAIによって自動化されている。だが、それでさえも熟練の人間の腕には遠く及ばない。
本来であれば突然の敵襲に即座に対応するであろうはずの対空砲火も、死角となる真下からの強襲に対し
完全に反応が遅れてしまっていた。

「舐めるなっ!貴様らの仲間ごと消し飛ばしてくれるっ!」

敵襲によって中断していた砲撃を再開。照準はレパ・マチュカに。そして今尚宙を舞うR戦闘機群に向けて。
全砲門を同時に解放し、ペタクラフトごと徹底的に破壊し尽そうとしていた。

だが、さやかはそれに先んじた。

「動くなっ!……波動砲で艦橋を狙ってる。少しでも変なそぶりを見せたら、こいつを叩き込むよ」

無数のデコイで敵艦を霍乱し、その間隙を突いてフォルテッシモが敵艦中枢、艦橋部へと接近していた。
波動砲は既にチャージ済み。エクリプスシリーズ同様の炸裂波動砲は、その炸裂の位置をある程度操る事が可能である。
だからこそ、直接敵艦の艦橋を破壊する事すらも不可能ではないのである。

「く……っ」

いかにオケアノスの持つ力が強大であれど、それを操るのはたった一人。
艦橋を直接潰されてしまえば、ミニオン達の制御すらも不可能になってしまう。
艦橋を抑える事ができればどうにかなるだろうというさやか達の推測は、彼女達の予想以上に功を奏していた。

「ふざけた真似してくれやがって。さっさと降伏して、このイカれた兵器を止めな」

杏子もまた、無数のデコイと共にオケアノスを包囲している。
デコイはそのまま波動砲として撃ち放つ事も可能である。これだけの数を同時に放射すれば、オケアノスとて無事ではすまない。
不利を悟り、男はミニオンに停止命令を送った。

「……ふう。どうやら、上は無事にやり遂げてくれたようだね」

頭上の様子と、行動を停止したミニオンの群れを交互に眺め、キリカは安堵の吐息を漏らした。

「とは言え、いつまでも大人しくしてるとも思えない。急ごう」

それでも油断は禁物。油断が最悪の事態を招く事を、彼女はいやと言うほどよく知っている。
周囲に展開していたミニオンを一通り斬り伏せて、キリカは店内へと戻っていった。



奇襲は成功。情勢は一気に傾いた――かに思われた。

「なるほど、流石はグランゼーラ。大した手並みだ。だが……本当にこれで勝ったつもりか」

「はっ、その状況でよく吼えるもんだね。それとも心中覚悟であたしらとやるかい?」

「確かに、勝ち目は薄いだろうな。……私一人ならばな」

男の言葉に、二人の表情が強張った。

「私は露払いでしかないのだよ。間もなくここに、連合軍の精鋭部隊、ペイルストーム隊が到着する」

元より足並みを揃えていれば、こんな無様な姿を晒す事も無かったのだが、その事実には目を瞑る。
男の言葉通り、ペイルストーム隊は地球連合軍の中でも指折りの精鋭揃いである。
たった二機の敵を相手に、敗れるはずが無い。

「例え仮にここで私を倒したとしても、最早お前達に先はない。尻尾を巻いて逃げるなら今の内だ。……いや、もう遅いな」

余裕を取り戻し、男は声高に言ってのける。その言葉の途中で、ペイルストーム隊からの連絡が入る。
間違いなくこれで状況は決した。そう確信し、男はあえてその通信を、二人にも聞こえるように拡散させた。

「――こちらペイルストーム隊!所属不明機に遭遇。攻撃を受けているっ!」

「機関部に被弾……だ、駄目だ、これ以上は持たないーっ!!」

飛び込んで来たのは、増援の到着を知らせる声で、堂々の凱旋を告げる声でもなく。
絶体絶命の危機に際して上げられて、悲痛な悲鳴ばかりだった。



「――は?」

男の表情は驚愕を通り越し、呆けたようにその口を半開きにしていた。

「なんだかよくわからないけど、どうやらあてが外れたみたいだね」

一体何が起こっているのやら、状況が分からず二人も半ば呆然としていた。
ただ分かるのは、敵があてにしていた増援とやらは、何者かによって返り討ちにされてしまったらしい。
となれば、完全に状況は覆ったも同然。そんな二人の元に、新たな通信が飛び込んで来た。

「コロニーに迫っていた地球連合軍の部隊は撃退したわ。そちらの状況はどうなっているのかしら」

その声に、姿に。二人は即座に状況を察した。

「なるほどな……助かったぜ、ほむらっ!」

そう、その通信の主は暁美ほむらだった。
先にフレースヴェルグ級が攻撃を仕掛けた輸送機、それはほむらの駆るものだった。
そしてその輸送機自体、ただの輸送機などではない。
バイド戦役の後、狂気の科学者集団がその叡智の限りを尽くして作り上げた、最終最強のR戦闘機。
R-102―ファラウェル・ギフトが偽装した姿であった。

フレースヴェルグ級の攻撃を受ける直前、ファラウェル・ギフトは外装をパージ。
その恐るべき戦闘能力と、かつての英雄に近しいほむらの卓越した操縦技術をもって
精鋭部隊であるはずのペイルストーム隊を完全に圧倒、これを撃退せしめていたのだった。

「形勢逆転、だね。もう一度だけ聞くよ、大人しく降伏しなさい」

「ぐ……ぬぅぅ」

全ての手立てを断たれ、男は怒りと屈辱に身を震わせる。
けれど、やはり打つ手は無い。仮にミニオンを再起動させたとしても、R戦闘機が相手ではたかが知れている。
そこにオケアノスが加わったとしても、結果は同じである。

どうしようもない状況を悟り、がっくりと項垂れたまま、男は力なく答えるのだった。

「……分かった、投降する」


こうして、ペタクラフトの戦いは終わった。
ミニオンによる破壊活動が収まれば、直に宇宙港の消火活動も再開されることだろう。
被害は決して少なくはない。多くの人命も失われた。
それでも、ペタクラフトはひとまずの平穏を取り戻したのだった。

短め更新ですが今日はこんな所で。
恐らくこの分なら、今年中に1話は終わらせる事ができそうです。

>>54
確かにその二人は、今や魔法少女ではありません。
けれど魔法少女隊の一員であり、優秀なR戦闘機乗りである事に変わりはありません。
というか、ペタクラフトに潜入する以上、生身の身体がない事には始まらなかったわけでもあります。

>>55
魔法少女、及び魔法に関する研究資料の多くは、バイド戦役の終結後の動乱の最中に失われました。
生命線ともいえる、穢れを除去する装置自体はどうにか持ち出す事はできたようですが
相手が少女という事もあって、あんまり非人道的な開発はできなかったようです。
そうでなくとも、魔法少女隊は革命軍内でもかなりスタンドアローンな立場を取っています。
数自体も、全体から見れば少数。地球連合軍との決戦を控える革命軍に、すでに十分な戦力をもつ魔法少女隊に
そこまでのものを用意するだけのリソースはなかったようですね。

乙!
偽装かぁ。装着式だから一回きりだろうけど、最初にマミさんを殺った奴を思い出すな……

後、勘違いさせてしまった様で
固有魔法で開発・研究に携わる魔法少女とかが居たら、そういう色々なものを作ったりしてないかな~?
って感じの意味でございました

叛逆見てないから知らんけど、なぎさだとかって出んの?

今SSでも、新しいオリジナル機体は作られるのかな?

どうにか1話は終わりました。
今年、最後の投下です。

戦い終わって夜が明けて、ペタクラフト内部で荒れ狂っていた炎もその勢いを失っていった。
それでも、ペタクラフトに刻まれた傷は決して小さなものではない。
その傷跡が完全に癒えるまでには、再びペタクラフトが本来の機能を取り戻すまでには、少なくない時間がかかることだろう。
そして、コロニーが負った損傷ならば直す事はできるが、この戦いによって失われた命は決して取り返せない。
これだけの痛みを、犠牲を産んでも尚、戦いは続く。むしろまだ、始まってすらいないのだ。



ペタクラフト行政区画内、執務棟内会議室にて。

オケアノスとの戦いの後、さやか達は投降したオケアノスの武装を解除し、その艦長を拘束した。
たった一人でこの艦を、そしてミニオン達を操っていたという事実には若干の驚きを禁じえないものの
そんな艦の有様は、かつての魔法少女達の旗艦、キュゥべえによって操られていた艦。
ティーパーティーの事を思い出させるようで、なにやら懐かしいような気分にもなっていた。

そしてその後、ペタクラフト内に展開していたミニオンを掃討し、人命救助にも尽力した。
全てが一段落した時には、ペタクラフトの夜はもう明けていた。
そんなところへ、ペタクラフトの指導者からの使者が現れた。
どうやら、今回の一件の詳細について聞かせてもらいたいとの事らしく
さやか達は徹夜明けの疲れた身体を引き摺って行政区画へと向かうのだった。
その頃ほむらは一人、防衛能力を失ったペタクラフトの周辺宙域の警護を行っていた。

「すまない、お待たせした」

大きな円卓を囲んで、さやかと杏子、キリカとタチハナが座っていたところにペタクラフトの指導者が現れた。
背丈も高くがっちりとした体格で、厳つい顔の男だった。
その姿だけ見れば、単なる街のリーダーという風には見えなかった。

「私はカーティスだ。君達は……グランゼーラの者達、なのか?」

カーティスと名乗った男は、怪訝そうにさやか達を眺めた。
無理もない、この場に居るのは少女が三人、大人が一人。
そしてその大人すらも、店内での用事を済ませている最中で事件に巻き込まれ、未だにコック服のままである。
どうみても、先ほどまで地球連合軍との戦いを繰り広げていたようなものには見えなかった。

「概ねそんなところだね。ここで事が起こるという情報を仕入れてね、前々からそれを迎え撃つ準備をしていたんだ」

まずはキリカが口火を切った。
その言葉に、カーティスは更に怪訝そうに顔を顰めて。

「聞くところによると、君達は半年近く前からペタクラフトに店を開いていたそうじゃないか。
 そんな以前から、奴等の動きを掴んでいたというのかね?」

どうやら今までの間に、カーティスも彼女達についての情報を集めていたらしく。
もしそうだとすれば、地球連合軍の攻撃に対してもっと何かやりようはあったのではないかとも思えた。
もしやすると、あえて先に手を出させ、グランゼーラが本格的にペタクラフトに侵攻する口実を作ろうとしているのではないかとすらも勘繰っていた。

「それには答えられない。でも、あいつら等がここまでの強硬手段を取るとは思わなかったから
 私達の初動もかなり遅れてたのは事実だよ。もっと早く動けてたら、こんな事にはならなかったんだけど」

さやかが言葉を継いだ。その表情には、隠しきれない後悔が滲んでいた。
グランゼーラからしてみれば、この状況は好機でもある。
地球連合軍の侵略があった以上、今まで通りの中立の立場は取りにくい。
グランゼーラにしてみれば、ここで恩を売ってその後の交渉を有利に進める事すらもできるはず。
だが、目の前で身を切られるような後悔に顔を歪めている少女の姿には、そんな計算高さはまるで見られなかった。
それが余りにも不可解すぎて。

「本当に君達のような子供が奴等と戦っていたのか?正直なところ、君達は軍人のようにも見えない」

「まあ、あたしらはちょっと事情が特別だからね。……でもまあ、それについてここで詳しく喋るつもりはないよ」

当然の疑問であろう。けれど杏子はそれをばっさりと切り捨てて。
どうにも空転する話に、ついに耐えかねたようにタチハナが口を開いた。

「私達は地球連合軍を止めるためにここに来ました。結局被害が出てしまったのは残念ですが
 それでもこれで私達の任務は終わり。私達はこのままペタクラフトを離れるつもりです」

地球連合軍との戦いが終わった以上、ペタクラフトに留まる理由はない。
結果を報告し、後の事は後詰の部隊に任せることになるだろう。
ようやく長い任務が終わって、仮初の生活にも終わりが告げられることになる。
その事実に、タチハナは安堵と共に若干の寂しさを感じてもいた。

「話は分かった。……だが、我々は一応中立の立場を取っている訳でね
 秘密裏にグランゼーラが作戦行動を取っていたとなると、それを見過ごす訳にも行かないな」

けれどそんなタチハナの安堵とは裏腹に、円卓上には不穏な空気が漂い始めた。

「じゃあ、どうするんだい?」

キリカは不敵に目を光らせる。少なくともキリカには、まだ戦う備えがある。

「……そう怖い顔をするな。別に、君達をここでどうこうするつもりはない。
 少なくとも君達がペタクラフトの恩人である事に変わりはないからな」

「そうそうその通りだね、恩人は大事にしなくてはいけないよ」

「だからお前はあまり口を挟むな。面倒な事になるから」

なぜだか得意げなキリカをタチハナが嗜めた。

「ただ、この一件を公表すれば双方にとって大きな火種になる事は間違いない。そうなる事を望むのならば話は別だがね」

そうなれば、再び地球連合軍とグランゼーラ革命軍との間で本格的な戦争が始まりかねない。
恐らくは地球連合軍でさえ、それは避けたいところだったのだろう。
そうでなければ、どうしてこのような策を弄すものか。
そしてそれは当然、グランゼーラにとっても同じだった。

いずれ戦いが起こるであろう事は必至。それでも十分な準備を済ませた上で望みたい。
それが双方いずれにとっても正直なところであったのだろう。

「君達はこの後、グランゼーラに戻るのだろう?ならば伝えて欲しい。
 グランゼーラがペタクラフトを制圧しようとするのならば、我々はこの事実を公表する。
 本格的に事を構える覚悟があるのならば来るがいい、とね」

「……なるほど。あくまでペタクラフトは中立を保つ、と。そう言うことですか」

「そう言うことだ」

都合のいい話を、と内心でタチハナは毒づいた。
けれど、タチハナ達もまたグランゼーラの本隊であるという訳ではない。
現時点で強攻策を取るわけにも行かないというのも事実であった

「ですが、地球連合軍がいつまでも中立という立場を許すと思いますか?今回の事で、連中のやり口は分かったでしょう?」

「ああ、確かに連中は信用できない。だが、これで連中も懲りたはずだ。すぐに何かを仕掛けてくるとは思えない」

重苦しい沈黙が立ち込める。けれど、このままでは埒も明かない。
口火を切ったのはタチハナだった。

「……では、一度グランゼーラに戻り、そちらの意思を伝える事にしましょう」

「そうしてくれると助かる。早々に宇宙港は空けさせよう、他に必要なものがあれば揃えさせるが?」

どうやら話はまとまったようで、タチハナは若干疲れた表情で息を吐き出すと。

「寝床と食事をいただけますか。こちらで用意していたものは、全部灰になってしまいましたから」

いい加減さっさと休みたい。そんな思いを滲みに滲ませた要求を告げるのだった。

会議は終わり、杏子達は早々に会議室を後にした。
最後に部屋を出ようとしたさやかを、カーティスが呼び止めた。

「えっと……何かありました?」

答えたさやかの表情には、戦いが終わった事への安堵と、生まれてしまった犠牲への後悔と。
そしてどうにも拭いきれない、徹夜明けの眠気が浮かんでいた。

「……君達がいてくれなければ、もっと多くの犠牲が生まれていた事だろう。君達のお陰で助かった。本当に……ありがとう」

そう言って、カーティスは深々と頭を下げた。
その言葉は、どれだけさやかを救い得ただろうか。
それでもさやかは、なけなしの元気を振り絞って笑みを浮かべると。

「私はただ、こんな酷い事をする奴等が許せなかっただけだよ。だって私は……正義の味方だからさ」

その瞳は、その言葉の裏に隠れる欺瞞を知っている。
正義など、それを掲げるものによって如何様にでも変わってしまうという事を。
それを知りながら、それでも自分の信じる正義をひたむきに貫こうとする姿勢は
大人になってしまったカーティスにとっては、既に失ってしまった情熱でもあって。

それだけを言い残し、部屋を後にするさやかの姿は少しだけ羨ましく眩しくもあった。

そして、出立の日。
これまた秘密裏に隠していた脱出艇に3機のR戦闘機を格納し、決して少なくない見送りを受けながらさやか達はペタクラフトを後にした。
ペタクラフトの住人達は見ていたのだ、恐るべき侵略者に果敢に立ち向かう魔法少女隊の雄姿を。
戦いが終わった後も、必至になって救助活動にあたる少女達の姿を。
騙されていたという事実は決して拭い去れないけれど、それでもさやか達はペタクラフトの住人達の信頼を勝ち得ていたのだった。



「……楽しかったね、ここでの生活も」

遠ざかっていくペタクラフトを眺めつつ、さやかがしみじみと呟いた。

「悪くはなかったけど、私は早く帰りたくてうずうずしていたよ。織莉子が待っているからね」

答えるキリカは相変わらずで。

「まあ、実際のところ長い休暇みたいなものだったしな。……悪くはなかったよ」

杏子もまた、少なからぬ感傷を篭めて。

「俺は毎日忙しい日ばかりだったがな。……まあ、帰ってもやる事はそこまで変わりそうもないが」

口ではそう言っていたが、タチハナも悪しからず思っていたのだろう。
その口調には、どこか寂しげな色が見て取れた。

四者四様の反応に、ちょっとだけおかしそうにさやかは笑って、そして。

「まあ、何はなくとも帰ろうじゃない。私達のホーム、グリトニルへ」

力強く、そう宣言するのだった。


魔法少女隊R-TYPEs―The trifles tales― 第一話
                        『Time to Awaken』
                           ―終―

【次回予告】

「今日こそ勝たせてもらうわよ、英雄さんっ!」

宇宙はまだ、仮初の平和に微睡んでいます。

「お帰り、キョーコっ!」

けれどそんな微睡みの中、牙を研ぎ、戦いの時を待っている人達がいます。

「結局あては外れたわけだ。で、どーすんだよ?」

それはこの太陽系を二分する、とても大きな力。

「だから、そんなの認められるわけがないでしょーがっ!!」

「一つ、いい案があります」

その名は――

次回、魔法少女隊R-TYPEs―The trifles tales― 第二話
                              『Granzella』

これは、グリトニルで時を待つ、革命戦士達の日常です。





今年の投下は以上となります。
再び始まってしまった物語は、どんな風に転がるやら、まだまだ未定ではありますが
気長に付き合っていただけると幸いです。

>>64
もともとR戦闘機に偽装を施して、輸送船としてほむらは運び屋の仕事をしていたわけです。
その帰りに出くわしてしまったのが、ペイルストーム隊の不幸だったのでしょうね。
そしてファントム・セルはまたなかなか面倒な相手でしたね。

今のところグランゼーラでは、魔法少女隊はほぼ実働部隊となっているのが現状でしょうか。
元々が皆普通の少女ですし、固有魔法は覚醒していないものが大半です。

>>65
さて、どうなる事やらと言ったところですが。
もし仮に出てきたとしても、原作どおりの立ち位置にはならないとは思います。
そもそも設定からして違う世界なわけですし。

>>66
勿論出していく予定です。ご期待ください。

では、よいお年を。

やー、やっぱり素敵だなぁ彼女達は
乙、良いお年を~

乙!
あー、固有魔法無しの代わりに低リスクって仕組みだったのすっかり忘れてたわ~ww終盤が結構マジカルバリバリだったからかな?

良いお年を!

良い次回予告だ

あけおめことよろー

乙。
杏子は相変わらずのキングス・マインド乗りか。
設定上は良い機体なんだけどなぁ・・・

新年明けましておめでとうございます。

今年こそ、グランゼーラから何かいい話の一つでも聞ければいいのですが
果たしてどうなります事やら、です。

では、新年最初の昼投下、行きましょう。

グランゼーラ革命軍。
先の地球連合軍と太陽系同盟軍との戦いである、後に第一次太陽系戦争と呼ばれる戦乱の最中に蜂起し
木星以降の太陽系を支配下に置く一大軍事組織である。

そのグランゼーラの拠点である、太陽系最外周に位置する軍事基地グリトニル。
長距離ワープ装置を備え、外宇宙への出口の役目も果たしていたこの場所は
かつてのバイド戦役の時から常に激しい戦いの部隊となり続けていた。
そして今も、新たな戦いの時を待つ革命戦士達が、この場所で虎視眈々と牙を研いでいた。

魔法少女達もまた、このグリトニルにて次なる戦いの時を待ち続けていた。

閃光煌く宇宙空間。その中で、激しくぶつかり合う二機のR戦闘機の姿があった。
かたや後期改修型のTw-T03――エクリプス3。
そしてもう一方は、一際目立つ巨大な砲身と、左右に攻撃支援ユニットであるポッドを携えた新型軌道戦闘機。
OFD-2――フェニックス。

通常カラーのエクリプス3に対して、フェニックスは燃え上がる炎にも似た、オレンジがかった黄色のカラーリングを施されていた。
そんな二機が、持てる力の限りを尽くして激しい戦闘を繰り広げていた。

フェニックスは専用に開発されたフォースから放たれたレーザーと
オールレンジに攻撃可能なポッドによってエクリプス3に矢継ぎ早に攻撃を仕掛けている。
フォースの無いエクリプス3では手数に劣る、しかしそれでも高い機動性と卓越した技量によって、その攻撃の悉くを回避、迎撃していた。
だが、さしものエクリプス3もそれだけの攻撃を浴びせられ、攻めあぐねていた。

どちらも切り札である波動砲は既に最大にまでチャージされている。一進一退の攻防の趨勢を傾けるものは、その波動砲であろう。
そうどちらの機体も認識していた。だからこそ、静かに慎重に機を伺いあっていた。

「このままじゃあ埒が明かないわね……でも、今日こそ勝たせてもらうわよ、英雄さんっ!」

フェニックスを駆るのは、魔法少女隊のリーダーにして自身もまた優秀なR戦闘機乗りである、巴マミ。
そして彼女が対峙しているのは、かつての英雄にして戦友、暁美ほむら。
仲間であるはずの二人だが、ぶつけ合う闘志は本物で。その攻撃には互いに一切の躊躇がなかった。

互いに必殺の機を待ちながら、激しく宇宙を駆け巡る。
接近するミサイルをポッドが叩き潰し、その隙を縫って接近するエクリプス3を、フェニックスはフォースレーザーで牽制する。
放たれた赤いレーザーの塊は、一定距離を進むと炸裂し、周囲に羽状の弾幕をばら撒き更にエクリプス3の行動を阻害した。
だが相手もさるもの、いままでの交戦でフェニックスの攻撃範囲を既に呼んでいたのだろう。
ばら撒かれる弾幕の間をすり抜け、続けざまに放たれた次弾が炸裂するよりも速く、フェニックスに肉薄した。

「くっ!……退きなさいっ!!」

咄嗟にマミは波動砲の引き金を引く。放たれたのはかつての乗機同様、照射時間と攻撃範囲に優れた持続式圧縮波動砲だった。
敵機の急接近に際しても、これならば対応できるはず。けれどそう、それは相手が英雄でなければの話。
波動砲の発射を察したエクリプス3は進路を急転させ、半ば錐揉みするかのようにして波動砲の射線から逃げ遂せていた。

全ての武装を撃ち尽くし無防備となったフェニックスに向け、エクリプス3は悠々と照準を合わせ、衝撃波動砲を放つ。
だが、その刹那。全くの予想外の方向から飛来した閃光が、エクリプス3を飲み込んだ。
その閃光は、まさしくフェニックスの放った持続式圧縮波動砲のそれで。
全くの予想外の方向からの奇襲にはさしもの英雄も対応できず、辛うじて直撃だけは避けたものの
深刻なダメージを受けてしまっていた。

「新型ポッドの力、見てもらえたかしら?さあ、今度こそお終いよっ!」

奇襲の成功を確信し、マミの声も誇らしげに弾んだ。
そう、フェニックスに搭載されたポッドもまた、専用に新規開発されたものだったのだ。

そもそもグランゼーラの技術開発は、今まで地球連合軍が積み上げてきたR戦闘機の研究開発の系譜をそのまま受け継いでいる。
と言うのも、かつて地球連合軍がその兵器体系をR戦闘機から無人兵器を主体としたものに変更し
R戦闘機の開発に携わっていた異端の科学者集団、TEAM R-TYPEが解散される事が決まった際
一部の研究者がグランゼーラ革命軍に亡命していた事が原因である。

これによりグランゼーラ革命軍も、かつての地球連合軍同様のR戦闘機の運用と
更なる開発を行う事が可能となり、どうにか双方の戦力は拮抗する形となったのである。

勿論グランゼーラ革命軍の元では、旧日のTEAM R-TYPEのような非道な実験や
積極的にバイドを利用した兵器の開発などは行えず、その進化速度自体はいくらか減じはしたものの
今尚Rの系譜は受け継がれ続けていたのである。

そんな新生TEAM R-TYPEが生み出した新型ポッドは、通常のポッドとしての機能に加え
一部のレーザーや波動砲を反射し敵を攻撃する機能を備えた、リフレクト・ポッドというべきものだったのである。

そんな新兵器による奇襲を成功させたフェニックスであったが、それでもまだ油断は出来ない。
相手は英雄、例えどれだけ手負いでも、否、手負いだからこそ警戒しなければならないのだ。
その英雄の手強さを、マミは誰よりも身近で見ていたのだから。

そして勝利の女神は、そうして最後まで油断せず戦う者に微笑むのだった。

「やっと勝てたわ……最新鋭の機体を使ってだから、ちょっと卑怯かもしれないけど」

まるで溶けるように消えていく宇宙空間と、代わりに現れた部屋の景色を眺めながら、マミは感慨深げに呟いた。

そう、これはシミュレーションだったのだ。とは言え相手はほむらの戦闘パターンを元に作られたAI。
身体を持たない魔法少女達が住み暮らす仮想空間内で行われるシミュレーションは
通常のシミュレーションよりもさらに高度な処理が可能となる。
そんな精度の高いシミュレーションが対戦相手として生み出したほむらのAIは
グランゼーラが所有する全パイロットデータの中でも最高レベルの難易度を誇る相手であった。

「リーダーぶってる手前、いつまでも負けっぱなしっていうのはよくなかったものね。これで、ほむらが帰ってきたら胸を張って報告ができそうだわ」

ほむらが帰ってくるまでに、このAI相手に勝利を収めてみせるというのが、マミが密かに心に決めていた目標だった。
そしてそれを果たした今、途端に彼女の帰りが待ち遠しく思えてしまった。

「……あら、これは?」

そんな彼女の元に届けられたメッセージ、それは。

「そう、帰ってくるのね。……これでまた、忙しくなりそうだわ」

ペタクラフトに派遣された部隊が、無事任務を終えて帰還するという報告だった。
その報せを受け、マミは今一度気を引き締めると、初めての仲間であった彼女達の顔を思い浮かべ
彼女達の帰還がもたらすであろう騒動を思うと、思わず小さく苦笑を浮かべるのだった。

いよいよ二話がスタートです。

今回はグランゼーラ革命軍における魔法少女達にスポットを当てていくお話となります。

>>77
ありがとうございます。
正直再開したときはちゃんと書いていけるかどうか不安もありましたが、割と何とかなりそうです。

>>78
本編の方とは完全にかけ離れてますが、それなりに生き生きと頑張ってます。
もちろん、大変なのはこれからなのでしょうけどね。

>>79
今でも大半の魔法少女はそうですし、仮に魔法が使えるとしても、緊急時以外に使うことは無いでしょうね。
前作終盤の大盤振る舞いは、そういう決戦の場でしたからまあ仕方なかったのでしょう。

>>80
ありがとうございます。
こんな感じの次回予告の方が、何かと作りやすかったので今後もこんな風にしていこうかと思います。

>>81
今年もどうぞよろしくお願いします。

>>82
このお話の中では十分強機体です。
無数のデコイを手足のように動かせる、杏子ちゃんの腕前あっての事ですがね。

乙!
まずは仲間の集結からかな?その先からはどんな苦難が待ち受けるのか……

オリキャラは増し増しでいくのん?俺的にはそれでも大歓迎だけど
あと沙々にゃんとかいうのは?

乙~
勝てたと言ってもAIか……ってかそれ報告されてもほむほむ複雑じゃね?ww


ポッドだけど早速新機能御披露か

あれ?しょっぱ出ってフラグ臭くね?

そういや生身も消失してたんだっけな……

グランゼーラを書くと必然的にRTT2の話をやらなくちゃいけない罠。

持ってないけどね!高くて手が出ませんよ。
そんな事を言いつつ何故か今更TF6でデュエリストデビューを果たしました。
サンダーフォースVIじゃありませんよ。ええ、違いますとも。

では、投下です。

グリトニルは巨大な軍事基地である。それ故に、その保有する設備は多岐に渡る。
無数の艦やR戦闘機を収容するドックや、兵員の住まいとなる居住区、兵器や技術の開発を行う開発区と言ったものの他に
リフレッシュのための娯楽施設や公園なども備えている。

だが、そんなグリトニルの中で一際異彩を放っている施設が、この礼拝堂だった。
神を信じる者がグリトニルにいないという訳ではない。
むしろ、奇跡によって宇宙がバイドの手から救われた事実を目の当たりにした者達である。
人智を超える存在が実在している事を、今更に声高に否定する者は居ない。
異彩を放っているのは、その礼拝堂のありようなのである。

そこには常に、黙して祈る一人の少女の姿があった。
そしてその少女を中心に頂いて、巨大な機械が無数のケーブルに接続されて鎮座していた。
祈る少女の名は美国織莉子。
そしてその機械は、太陽系各地からデータを集積し蓄積する超巨大データベース。
織莉子の魔法である未来予知を、太陽系規模で遂行するために生み出された補助装置。
通称“知恵のリンゴ”であった。

知恵のリンゴには、グランゼーラが集積した全てのデータがリアルタイムに送信されている。
そのデータを元に、織莉子は未来予知を行っている。
未来予知の魔法は、あらゆる場面において非常に有効に機能する。
とは言え織莉子自身の能力だけでは、近い未来の個人レベルの予知を行うのが精々だった。
そんな予知を、知恵のリンゴは遠い未来の、更に戦術、戦略レベルの予知にまで増幅させる事に成功していた。
それでも予知した内容が実際に起こる正確な時期を特定するには至らず
どうしてもタイムラグは生じてしまうのだが、その恩恵はやはり絶大だった。

だからこそ、織莉子は食事や睡眠、最低限の用事を済ませる以外の時間は常にこの礼拝堂で、知恵のリンゴの中で予知を続けていた。



(まだ、この宇宙は混迷に沈んでいる)

装置の中で跪き、組んだ手を高く掲げて。まるで神にでも祈るかのような姿勢で、織莉子は未来を視続ける。
純白のドレスのような衣装を纏い、神に殉じる教徒の様にひたすらに祈り続けるような姿は
一枚の絵画のような、どこか荘厳な雰囲気さえも感じさせる。
そしてそんな荘厳な姿が、異形の機械にあたかも飲み込まれてるかの様な有様は酷くアンバランスで
どこか背徳的でさえもある光景だった。

(この宇宙の運命を決するであろうその“時”を、私は早く識らなければならない)

そして今、織莉子には一つの大きな懸念があった。
それは何時起こるのか、何処で起こるのかさえわからない、遥かに遠い予知。
けれどそれが起こってしまえば、それは太陽系の運命を左右する、重大な事態となる。
そんな物を放っておく訳には行かない。けれど、今はまだそれが何であるのかすらも視えていない。

もしかするとそれは、遥か未来で起こる破滅の未来なのかもしれない。だとすればそれは杞憂に過ぎない。
けれど、だからと言って軽視していい筈も無く、織莉子は今持てる力の限りを尽くしてその未来を視通そうとしていた。

「……駄目、ね」

不意に織莉子は目を開き、溜め息交じりに呟いた。

「少し休みましょう。……でも、その前に」

立ち上がり、ずっと跪いていた身体を解すように小さく伸びをして。
もう一つの懸念に意識を向けて、そっと瞳を閉じた。

もう一つの懸念。それはキリカの事だった。
キリカが織莉子を大切な人だと慕うように、織莉子もまたキリカを想っていた。
だからこそ、この長い離別は中々に寂しく、辛くもあった。

「あの元気な姿が見られないから、なのかしらね……なんだか調子が出ないのは」

自嘲交じりな呟きと笑み。
キリカの、そして彼女と共にペタクラフトに向かった者達の実力は信用している。
けれどもし、キリカの身に何かがあったのだとしたら。そんな思考はやはり頭の片隅に積み重なっていた。
もしキリカの未来を視た時に、死すべき定めが視えてしまったのだとしたら。
その運命を知らせる事も、覆す事も出来ない程に、ペタクラフトは遠いのだ。
そんな内心の恐怖をひた隠しにして、織莉子はキリカの未来に眼を向けた。

「まあ……これは」

視えたのは、一時の平和を取り戻したペタクラフトの姿。
そしてそんな予知を裏付けるかのように、キリカ達が任務を完了したという知らせ飛び込んで来た。

「帰ってくるのね、キリカ……よかった」

装置の壁に身を預けて、心から安堵の表情を浮かべる織莉子。閉ざされたその瞼の端から、小さな雫が零れた。
その雫が落ちて、弾けたその瞬間。

「―――っ?!」

ほんの一瞬、だが鮮明なビジョンが織莉子の視界に飛び込んで来た。
織莉子は弾かれたように目を開き、胸元を抑えて息を荒げた。
そして、垣間見た光景を思い浮かべながら、震える声で呟くのだった。




「星を動かす、歯車――」

一方その頃、グランゼーラ革命軍の最高司令官ハルパーは
革命軍の創設以前からの旧友であり、今は木星―土星間に存在するグランゼーラの前線基地
ゲイルロズを預かるイージス大将との通信を行っていた。

「無事に連中はそっちに送り届けたぞ。明日にゃあそっちに着くだろう」

「そうか、彼女達は無事にやってくれたようで何よりだよ」

ゲイルロズとグリトニルの間には、広大な宇宙空間が横たわっている。
故に、通常の通信波での通信では、そのタイムラグはとてつもない時間になってしまう。
そこで、ゲイルロズとグリトニルの間に双方間の短距離ワープ装置を設置し
通信波をワープ空間を介して送信する事で、ほぼラグの無い双方向通信を可能としていた。

そしてその短距離ワープ装置は、ゲイルロズに帰還した魔法少女隊を、グリトニルへと送り出すのにも使われていた。
短距離ワープ装置の使用には、複雑な調整や膨大なエネルギーを必要とする。
その為大量の物資を輸送するためには使えず、一小隊程度を輸送するのが精々だった。
それでもその短距離ワープ装置によって、彼女達はわざわざ宇宙の海を渡る事無く
即座にグリトニルへの帰還を果たす事が可能となっていた。

「確かに連中の介入は防げた、だがな、俺達の目的も達成できたとは言えない」

「どういう事だい、イージス?」

「連中の攻撃で、コロニーが大きなダメージを受けてるらしい。
 そいつを建て直すまでは、あそこから物資を調達するってのは、どうにも無理そうだ」

やはりグランゼーラの上層部にも、今回の件をきっかけに、ペタクラフトを支配下に治めようという目論みはあったらしい。
その目論見も泡と消え、アテが外れたとイージスは毒づいた。

「それは確かに問題だな。ミーティア14からの供給が途絶えるとなると、資源の確保が難しくなる」

「そっちはいいさ、まだ回りの採掘基地からかき集めてくりゃあいいんだからな。だが、こっちはそうも行かねぇ。
 地球連合軍の連中が睨みを利かせてやがるからな、そいつを牽制するためにも、どうしてももっと戦力が必要になる」

特にゲイルロズの周辺宙域は最前線である。直接的な戦闘こそ殆ど無いものの、水面下で常に情勢は変化し続けている。
少しでも多くの戦力や資源を必要とするのは当然の事だった。

「これは放っては置けないな……わかった。彼女達が戻り次第、資源の確保について軍議を行う事にしよう。
 その時には、君も出席してくれるね?」

「……分かった。こっちの方でもいくつか案を考えて置く事にする」

彼女達の帰還が、グランゼーラにも静かに波紋を広げていく。
それが再びこの宇宙を揺るがすほどのものになる事を、この時はまだ誰も知る由もなかったのだ。

本日はここまで。

>>90
全てはこれからの話ではありますが、間違いなく困難な状況が待ち受けている事でしょう。

>>91
もう既にちょこちょことオリキャラは出ていますように、これからも出てくる事でしょう。
既に話は彼女達魔法少女だけの話ではないのですから。
沙々にゃんは好きなキャラですよ。あの小悪党ぶりが。
出せるものなら出したいとこですが、既に若干似たような奴が出てるんですよね、ええ。

>>92
少なくとも、仲間が強くなった事を素直に祝福するくらいの度量はあるはずです。
けれど相手は結局AI、本物相手とは間違いなく勝手は違う事でしょう。

>>93
折角なので早速お披露目させてもらいました。
今後もこんな感じでちょくちょく新しい機体や機能を登場させていきたい所です。
バイド兵器はもうなくなっちゃいましたがね。……今のところ。

>>94
今のところ魔法少女隊の中でちゃんとした生身の身体を持っているのは
さや杏おりキリコンビとほむらちゃんくらいのもので、他は皆身体を失っている状態ですね。

まさか続編がくるとは・・・しかもリアルタイムで・・・乙です。
前作は何回も読させていただきました。続編が来て狂気乱舞中です。
無理をなさらずに頑張ってください!

今のところとか、ちょくちょくバイド関連で雲行きが怪しい雰囲気が出てる気がするんですが?(汗

織莉子さんずっと同じ格好なん?wwそれなんて拷問ww

歯車?まぁ多分ワルさんではないんだろうな

乙ー
戦力なぁ……如何ともしがたいねぇ

AIは前回の戦争終結時点のデータだろうから
それに勝てるくらいにはなっててもらわないと困るよね

追撃の投下で更に勢いは加速した。

では行きます。

「しっかしまあ、こっちにくる時にも思ったが、とんでもない装置だよな」

ゲイルロズより短距離ワープ装置を介し、グリトニル周辺宙域に到着。
そのままグリトニルに進路を取る艦上で、杏子はしみじみとそう呟いた。

ワープ自体は、グリトニルに長距離ワープ装置が設置されている事からも不可能な技術ではない。
しかしその技術を、太陽系内の短距離ワープ装置へと転用してしまうとは。
今はまだ輸送艦一隻程度の質量を転送させることしか出来ないが、この技術が発達すれば
太陽系内のパワーバランスは一気に傾く事だろう。
それ故に、この短距離ワープ装置はグランゼーラの中でも最高機密とされていた。

「……ワープ、ねぇ」

変わる事ない宇宙の暗黒をぼんやりと眺めながら、もう一度呟く杏子の声には何かを懐かしむような響きが混じっていた。

「なーにしんみりしてるのさ、杏子」

そんな杏子の視界に飛び込んで来たのは、ドリンクのボトルを両手に抱えて現れたさやかの姿だった。

「別に、ただワープってすげぇもんだなって、そう思ってただけさ」

「あー、確かに。行きの時もそうだったけど、やっぱり直に目の当たりにすると驚くよね、あれは」

ボトルの片方を杏子に投げ渡して、さやかは隣に腰掛けた。そして、一緒に宇宙を眺めていた。
幾許かの静寂の後、口をついて出てしまった言葉は。

「思い出すしちゃうよね」
「思い出すよなぁ」

二人の声が重なって、それから呆気に取られたように目を見開いて見つめ合って。
一拍の後、二人は弾けるように笑い出した。ひとしきり笑って、それがようやく収まった頃。

「ま、忘れられるわけないよな」

目尻に浮かんだ涙を払って、杏子が。

「当たり前でしょ、絶対に忘れるもんですか」

弾けた笑みの後に、ほんの僅かに寂しさを滲ませて、さやかが。

「さやかはあたしよりもずっと付き合いも長かったんだもんな。……今頃どうしてるんだろうな、まどかは」

「………まどか」

鹿目まどか。
さやかにとっては親友で、杏子にとっては仲間であった少女。
バイドに、そしてもう一つの人類の敵となり果てたインキュベーターによって
全人類に振りまかれた絶望を覆し、生み出された希望を束ね、バイド戦役に勝利をもたらした最強最大の魔法少女。
彼女が生み出した魔法こそが今行われたワープと同様のものであり
それが窮地にあったさやか達を救い、バイドとの戦いで窮地に陥っていた英雄を救った。

こうしてその魔法に近しい所業を目の当たりにする度に、どうしてもその帰らぬ友の姿を思い浮かべてしまう二人であった。
そう、鹿目まどかはこの宇宙に存在していない。
バイドとの戦いを終結させた後、英雄は帰還を果たしたものの、全ての力を使い果たした彼女は帰ることが出来なかったのだ。
故に彼女は今もまだ、ソウルジェム一つで遠い宇宙の次元の彼方を漂い続けているのだ。

「待つ事しか出来ないんだから、もどかしいなあ」

溜め息交じりにさやかが呟く。
そう、それでもさやかはまどかの帰還を諦めてはいなかった。
遥か彼方に消えたまどかを救うため、一人の少女が旅に出た。どれだけかかるのかも分からない、果てしない長い長い旅に。
それは、人の身では耐えられない過酷で孤独な旅路であり
魔法少女ではない自分では、その旅には耐えられないであろう事は分かっていた。
それでも大切な親友を自ら迎えに行けない事は、どうしようもない心残りだった。

「信じて待つしかないんだろうな」

ボトルの中身を喉を鳴らして飲みながら、杏子が答えた。
まどかを迎えに行った少女は世界を救った英雄であり、暁美ほむらと同じく第三次バイドミッションの英雄
スゥ=スラスターのクローン体である。
その実力は間違いなく折り紙つきなのだろうが、直接親交があった訳でもなく
実際の所は今一つ信用しきれないという気持ちも間違いなく心の片隅には存在していた。

「……だろうね。よし、湿っぽいのはここまで!」

とは言え、何時までもしんみりとし続けてばかりいるのもらしくない。
ぱしりと一つ頬を手で打つと、努めて明るくさやかは言い放ち。

「ようやくグリトニルに戻れるんだからさ、何か明るい話題を考えようよ。あー、帰ったら何しようかなぁ。
そうだ、まずはご飯食べに行こうよ。中華とか」

自炊するのも悪くはないし、レパ・マチュカの料理も絶品だった。とは言えやはりレパートリーは限られる。
特に中華はすっかりご無沙汰だったなと思い出してみると、口の中に唾が溜まり始めるさやかであった。

「お、いいねそれ。……でも、とりあえずは報告と顔見せだろ。随分長いこと開けてたしな」

「そうだねえ、久しぶりにマミさんやゆまちゃん、アイリさんにも会いに行かなくちゃね」

残してきた仲間達の事を思う。もうすぐその顔が見られるのだと思うと、懐かしさが込み上げてくる。
けれどそんな感傷を断ち切るように、艦内放送でタチハナの声が響き渡った。

「杏子、お前に来客だ。格納庫に居るから会いに行ってやれ」

「来客だぁ?……一体何だってんだ?」

「杏子を名指し、ってのもちょっと気になるね。とりあえず行ってみる?」

「ま、何かする事があるわけでもないしな。行くか」

格納庫に到着した二人の眼前には、杏子のキングス・マインド
さやかとキリカのフォルテッシモだけではなく、もう一つの機体が存在していた。
黒と赤でカラーリングされたどこか獰猛さを感じさせる機体の下部には、一本のアンカークローが装着されている。
R-13A――ケルベロスを初めとするR-13シリーズのデータを元に再開発された新機体、RR-13A――ティンダロスである。

「ティンダロス……って事は、これは」

「そうだよ、キョーコっ!」

ティンダロスから聞こえてきたのは、元気で明るい少女の声。
その声は、杏子にとっては忘れられない声だった。

「お前……ゆまかっ!?」

声の主は千歳ゆま。
彼女もかつての英雄であり、プロトタイプの魔法少女でもあった。
サタニック・ラプソディを鎮圧せしめた彼女だったが、その乗機であるケルベロスと共に暗黒の森に囚われてしまう。
そんな彼女を救ったのは、他ならぬ杏子であった。
それ故にゆまは、杏子をとても慕っていた。どうやら今回も、帰還の報告を聞いて待ちきれずに迎えに来てしまったのだった。

「うんっ!ゆまだよっ!お帰り、キョーコっ!」

「一体どうしたんだよ、こんな所まで迎えに来たのか、ゆま?」

「うん、そうだよ。キョーコが帰ってくるって聞いて待ちきれなくて、来ちゃったの!
 あ、でもちゃんと基地のみんなには許可を取ってあるから、だいじょーぶだよ!」

どうやら根回しもばっちりらしく、ゆまに生身の身体があれば、きっとえっへんと胸を張っていたことだろう。

「んな事しなくても、明日にはそっちに着いたんだぞ?」

「分かってるけど……どーしても待ちきれなかったんだもん。キョーコに早く会いたかったの。いっぱいお話したい事もあるんだ!」

「おーおー、杏子ちゃんってばすっかり人気者ですねえ。……ほら、折角こんな可愛い子が迎えに来てくれたんだもの、ちゃんと歓迎してあげなさいよ、杏子」

そんな二人の様子を微笑ましげにというよりも、ニヤニヤと見つめながらさやかが口を挟む。

「さやかぁ……ったく、わかったよ」

そんなさやかの様子に杏子は情けなく声を上げると、観念したようにティンダロスに近づくと、その表面をこつんと小突いて。

「わざわざ来てくれてありがとな、ゆま」

「……うん、お帰り。キョーコ」

杏子を誘うようにティンダロスのキャノピーが開き、タラップが迫り出した。
誘われるままに杏子はティンダロスの内部へと乗り込んでいった。

中では色々と、積もる話をしているのだろう。邪魔をするのは野暮というもの。
さやかはティンダロスに背を向け、格納庫を後にした。

「……今は譲ってあげるけど、後でちゃんと埋め合わせはしてもらうからね、杏子」

最後に一度振り向いて、小さくそう呟くのあった。

なんだかやけに専ブラが止まります。
なんだこれは、どうすればよいのだ。

>>104
前作からのご愛顧ありがとうございます。
今作も結構いい感じに筆が乗ってきてるので、このままやっていけるような気がします。
うっかり蛇足にならないように、しっかり頑張って行きたいものです。

>>105
ハハハ、何を言っているんですか。
バイドはやっつけましたし、もう居ないんですよ。
まあフォース技術自体は健在なんですけどね。

>>106
魔法少女の姿ですからね、魔力を使うと自然とこの姿になるようです。

>>107
結局前作にはワルプルさんは出てきませんでしたからね。
もしかしたら出るかも知れませんが、今更魔女もないでしょう。

>>108
元々地球連合軍の主力は無人兵器ですので、戦力の拡充は容易です。
対するグランゼーラは、パイロットの育成にも時間とお金がかかることを考えると
やはり不利は否めないのではないでしょうか。

>>109
それでも並大抵のパイロットでは歯が立たないほどの強敵である事は確かです。
AIという事で、見知らぬ武装への反応が遅れたという面もあるのかもしれませんが。


まどっちを探してるのは、憎悪の争いから生まれた煉獄の炎に焼かれて
荒々しき無垢となり、病院に来たまどかの愛で覚醒したスゥクローンちゃんの方だったか

しかし、ほむほむが三人とかそれなんてヘヴン?って状態だったのにスゥさんだけ最期は……

あのオリキャラが出てくるなら、これからもっとほむほむ出てくると思うけど?

俺が求めているほむほむは、そんな感情の無い兵器なんかじゃない!

しかしティンダロスの猟犬の姿で擦り寄られるとか……

短め更新ですが、ゴーです。

暗がりの中で、一人の少女がベッドの上でその身を横たえていた。
流れる銀糸をベッドに散らばらせて、その上に肢体を投げ出していた。
その身を覆うのは、部屋を占める暗闇よりもなお暗い天鵞絨のナイトドレスだけで
露になった肌はまるでそれ自体がぼんやりと光を帯びているかのように白く艶やかに、闇の中に一点の光を放っていた。

「ん……ふ、ぅ」

眠っているのだろう。女性らしい膨らみを湛えた胸は、静かに上下していた。
少女が僅かに身じろぎするたびに艶やかな銀糸が流れて零れ
まるで一つの美術品にも近いその美貌を、艶かしく変化させていた。
邪魔するものなど何もない暗闇と静寂に、まさしくそれを司る女神であるかのように
存在していた彼女の眠りを妨げたのは、小さな乱入者だった。

「……眠っているのかい、カーリー?」

その声が聞こえた瞬間に、閉ざされていた少女の瞳がぱちりと開いた。
その瞳はピジョンブラッドのように赤く、カーリーと呼ばれた少女はその瞳を左右に巡らせ
その声の主を見つけると身を起こし、ベッドサイドのパネルに手を伸ばし、明かりを灯した。

光を取り戻した部屋の中、ベッドの上に立っていた者は。

「どうやら、私とした事が少しうたた寝をしていたようだわ。……それで何の用かしら、インキュベーター?」

魔法少女を生み出す者、かつて人類に寄り添い、敵対し、今は地球連合軍の元に身を寄せる異星の徒。
キュゥべえことインキュベーターであった。

「いくつか知らせる事がある。良い報せと悪い報せがあるけど、どちらから聞きたいかな?」

「……では、良い方から」

僅かな沈黙の後、身体に絡まる銀糸を払って僅かに残った寝癖を撫で付けながら、カーリーが問う。

「ミニオンの稼動試験が終了したよ、対人、拠点制圧の用途に用いるのならば、十分な働きを見せてくれたよ」

「それは結構な事ね。この分なら、ミニオンの量産を始めていいかもしれませんわね」

ミニオンの生産ラインの確立と稼動に必要な資源や時間、必要とされるミニオンの物量を即座に脳内で試算しながら
また一つ思い通りに事が運んだ事にカーリーは嬉しそうに唇の端を歪めた。

「じゃあ今度は悪い報せだ。ミニオンの稼動試験を行ったペタクラフトには、すでにグランゼーラが手を伸ばしていた」

けれど、続けての報せは彼女にとっても予想外の物であったようで、その表情がすぐさま不機嫌そうに顰められた。

「グランゼーラが?……そんな情報は、何も聞いてはいませんでしたわよ?どういう事かしら」

声の語勢も強く、問い詰めるようにキュゥべえに詰め寄った。

「動いていたのは正規の部隊ではなかった。グランゼーラの中でもとびきりのイレギュラーだ」

その答えは、彼女が予想していた中でも最悪の答えだったのだろう。
その目が見開かれ、内心の怒りを表すかのように堅く拳が握り締めて。

「……魔法、少女隊ね」

「その通り。ペタクラフトを襲撃したオケアノスは鹵獲され、後詰めに送り込んだペイルストーム隊もまた
 彼女達に撃退されたという報告が入ってきたよ」

「―――っ!」

予想以上の事態。彼女にとって最も忌むべき、そして怒るべき事。それは自分の予想が、思惑が覆される事であった。
だからこそ、言葉も無く震える彼女はその美貌も霞むほどの憤怒に震えていた。

「神出鬼没にして大胆不敵、そしてあのバイド戦役を生き延びた精鋭揃いの魔法少女達だ。
 敵に回すとこれほど厄介な相手もいないだろうね」

「貴方がそれを言うかしら?元はと言えば、貴方が作った物ですのよ?」

「魔法少女の大半は、既に君達が作ったものになっている筈だ、ボクに当たられても困るよ」

そう、地球連合軍はバイド戦役当時において既に魔法少女を生み出すシステムを確立させていた。
現在魔法少女隊と呼ばれる者の殆ども、地球連合軍の徴兵によって生み出された者である事を考えると
キュゥべえの反論ももっともではあった。

けれどその言葉は更に彼女の神経を逆撫でしてしまったらしい。
射殺すような視線で睨みつけられたキュゥべえは、逃れるようにけれどその実飄々と、ベッドから飛び降りるのだった。

「どちらの陣営にも、優れた力は必要よ。だからこそその為に、TEAM R-TYPEの研究資料をグランゼーラに流しもしましたわ。
 駒が強ければ強い程、盤上は白熱してくれるはずですもの」

そう、彼女の望みは更なる戦い。その果てにある人類の進化。
かつてはバイドという人類の天敵が居て、それを倒すために全てをつぎ込み人類は突き進んできた。
そしてその暴走とも暴挙とも言える行為が、人類の技術力や戦力を飛躍的に向上させてきたのは明白であった。
その流れを断たぬために、彼女は地球至上主義という思想を作り上げ、太陽系に戦乱の芽を振りまき続けている。
全ては争いを絶やさぬ為に、人類を進化させ続けるために。

「けれど、こうも盤上のルールを無視して動く駒があるのは考え物ですわ。
 ディザスターレポートの件と言い、彼女達は少しやり過ぎですもの」

その謀略の一部として、災害を装い各惑星やコロニーを攻撃していた災害型波動砲搭載機、R-9WZ――ディザスターレポート。
それを鹵獲し、暗躍を暴いたのも魔法少女隊だったのだ。
彼女の目論見を次々に粉砕していく魔法少女隊。
最初こそ彼女もその力を評価していたが、こうも続くと腹に据えかねるのだろう。

「ここまでやられると、いささか目障りだわ。そろそろ彼女達にはご退場願うとしましょう」

「何か策でもあるのかい?」

どうやら怒りの矛先が自分に向かう事はないらしい。そう悟ったキュゥべえが、ベッドの下から顔を覗かせ問いかけた。
本来感情を持たないキュゥべえが、怒りという感情とその機微を捉える事が出来たのは
彼もまた怒りという感情を知っているからだったのだろう。

同胞を、使命を、全てを奪ったバイドに対する憎悪と怒り。
それがかつてのキュゥべえを衝き動かしていたのだから。

「ええ、そろそろ状況を次に移す頃合でもあるわ。まとめて片付けてしまいましょう。
 ……ところでインキュベーター?」

「何だい?」

「剣は何本動かせるかしら?」

「実戦に耐えられるのは、今のところ10体程度と言ったところだね」

カーリーはその答えに、満足そうに唇を歪めると。

「十分ね。……では、私手ずから哀れな魔法少女達に引導を渡して差し上げましょう」

自信気に、高らかにそう宣言するのだった。

いよいよ色々開戦の気配も近づいてきます。
どう足掻いても今後はオリキャラが多めになってきてしまいそうですね。

>>119
スゥクローンであり、スゥちゃんでもあります。
オリジナルとの差はスゥちゃんとスゥさんで分ける事にでもしましょうか。

そしてそんなオリジナルさんですが、生きてはいますよ。生きては。

>>120
という訳でとうとうそのオリキャラがご登場なされました。
最後にちょっと含ませる為にそれっぽい要素をブチ込んだキャラですが
まさか本格的に動かす羽目になろうとは……。

>>121
とりあえずまっとうなほむらちゃんはほむらちゃんしかいないので、今のところはそんなほむらちゃんをお楽しみください。
まだ今までではかなり出番が少ない子ですが、きっと出番はあるはずです。

>>122
暗黒の森から地獄を越えて、こんなところまで追いかけてきてくれましたからね。
ちなみに型番のRRはリファイン・Rの略で、旧来のR戦闘機をグランゼーラ仕様に再開発しようという
リファイン・Rプロジェクトによって生み出された機体に付けられる型番という設定を勝手に広げております。


しかし、スゥさんは業を解き放とうと願ったのに、また業が……
如何なスゥかーちゃんでもそんなに抱えきれないでしょう

インド王を渡すのかー

↑出たな妖怪>>1モドキ!

ところで、オリキャラさんの見た目が白レンだったりアイリさんだったりもこたんだったり目が赤い水銀燈だったり安定しないんだけどどうしたら良いの?

何か唐突に、泡立つコーラの様な波動砲を出すペプシなデザインのR戦闘機なんてものが浮かんだ

「災害型波動砲」なんかすごくWKTKする響きだなぁ。
何か撃ったら砲の前方が台風になる様なの想像してしまった。
リープタイプみたいなトンデモ宇宙船好きだからすごく期待。

けど>>1モドキは気をつけんと。いっぺん某幼スレで1の代弁してしまってえらく受けてしまったし。
現行持ってる時は色々気をつけよう。

ディザスターレポートの災害波動砲は、
R-TYPE FINALで出て来たときは隕石みたいなのが飛んできてたな、確か
設定上は隕石に限らないらしいが

皆さん、外はすごい雪です。
全然外が見えないので家に閉じこもって執筆する事にしました。

では、投下しましょう。

「そんな事、認められるわけがないでしょうがっ!!」

ダン、と両手を円卓に叩きつけながら、さやかは叫んだ。
怒気を孕みに孕んだその声に、円卓を囲む人々の間にざわめきが走った。

そこはグリトニルの中央会議室。
ペタクラフトの一件を受け、今後の行動方針を定める為の会議が行われていた。
円卓を囲むのはハルパー指令とその副官であるエマ中佐。イージス大将もまた通信を介した立体映像で参加していた。
その他にも、兵器開発部門のトップであるキースン少将やその副官であるカトー中佐を初めとした
グランゼーラの首脳陣が集結していた。

そんな中に、今回の事件の当事者としてさやかが
そして魔法少女隊を率いる司令官として、九条中佐も席を連ねていた。

会議の議題は、地球連合軍との決戦を控えるグランゼーラが現在抱える最大の問題、資源に確保についてであった。
木星圏以降の採掘施設の多くを支配下に治めたグランゼーラであったが
それでも中立を保ったままの物や、地球連合軍の支配下にある物もまだ存在している。
決戦に備え、更なる軍備の増強が急がれるグランゼーラだが
既存の採掘施設もこれ以上の増産を行わせるのは難しい状況であった。

ならばどうするか、真っ先に口火を切ったのはイージス大将だった。
最前線で睨み合いを続ける彼は、誰よりも戦力増強を迫られていた。
故に彼が掲げた案は、木星圏以降の地球連合軍の支配下にある全施設に奇襲を仕掛けこれを占拠し
その余勢を駆って中立の施設へも帰順を迫るというものであった。

余りにも性急な強攻策ではあるが、下手に策を弄して少しずつ切り崩していくよりも効果は高く
戦端を開くきっかけとなろうとも、敵に打撃を与えつつ自らの戦力を増強できる、悪くない一手ではあった。
それ故に、躊躇いや不安を抱く者はあれど、積極的にそれに異を唱える者はいなかった。

当のさやかを除いては、である。

「ふん、じゃあどうするってんだよ。このまま手を拱いていたって、資源は降って湧いてくるもんじゃないぞ。
 それとも、何か他に案があるってのか?」

ざわめきも静まらぬ中、イージスはその精悍な相貌を僅かに顰め、さやかを睨んで問いかけた。
立体映像ではあるが、それでもひしひしと伝わる迫力がさやかを威圧する。
思わず言葉に詰まりそうになるさやかだったが、それでくじける彼女ではなかった。

「確かに資源は必要だけど……だからって、何をしたっていいって訳じゃないでしょ!
 だってあたしらは、地球連合軍と戦う正義の味方なんだからさ!」

「正義、ってお前……ガキの喧嘩やアニメや漫画じゃねぇんだぞ。んな事言ってる場合か」

半ば呆れたようなイージスであったが、そんな二人の間にハルパーが割って入った。

「確かにイージス大将の言う通り、そろそろ我々は決断するべきなのかも知れない。
 とは言え、私は彼女の言葉がまるで的外れとは思えない」

どうにも場の空気は、イージスの案を呑む形で流れ始めている。
だが、これは安易に結論を急いでいいようなものではない。だからこそハルパーは言葉を続ける。

「私達は、地球連合軍に敗れた太陽系同盟を吸収する形でこれだけの戦力を築き上げた。
 その背景には、地球連合軍の横暴に対抗するという大義名分がある。その我々が、彼らと同じような行為を行えばどうなると思う?」

ハルパーの言葉に、議場はさらにどよめきに満たされる。
この場にいる者の中にも、かつて地球連合軍に対抗するために
各惑星及びコロニーの連合軍として組織された太陽系同盟の生き残りも存在している。
そしてそれは、グランゼーラの保有する戦力の中においても同様であった。

「間違いなく、そう言った者達からの不満や不信は出てくるだろう。
 そのリスクを考えると、強攻策が必ずしも正しいとは言いがたい。イージス大将も、それはわかっていたはずだろう?」

「……まあ、分かっちゃいるけどよ。それを押してでもやる価値はあると思うぞ、俺は」

痛いところを突かれたと、僅かに眉を顰めてイージスは答えた。

「はぁ……あー、めっちゃ緊張したぁ」

紛糾し始めた会議をよそに、さやかはほっと胸を撫で下ろした。
本来であれば、口を出さずに静かにしている場面ではあったのだが、それでも我慢できなかった。
これくらいの口出しをしたとしても、即座にそれが自分の立場を危うくする事もないだろうという、若干の打算もあったのだが。

「肝を冷やしたのはこっちだ。あんまり無茶をしてくれるな」

そんなさやかに釘を刺すように、困った顔の九条中佐が告げた。

九条中佐。本名はカズマ・ナインライブス。
先のバイド戦役の最終決戦に際し結成された、第二次バイド討伐艦隊の提督であり
バイドとの決戦に勝利し帰還した、新たな英雄である。
英雄としての未来を約束されたはずの彼であったが、地球至上主義を推し進める者達によって疎まれ左遷され
さらには半ば捨石のようにグランゼーラ討伐艦隊の提督に任じられたのであった。
当然、ここまでされて黙っている彼ではない。秘密裏にグランゼーラに連絡を取り、離反の手立てを整えていた。
そして今ではグランゼーラの一員として、曲者揃いの魔法少女隊の司令官となっていた。

とは言えグランゼーラもまた彼に全幅の信頼を寄せるわけにも行かず
かつての副官であったガザロフとは引き離れ、その彼女は現在ゲイルロズにおいて任務に就いているのであった。

「私から、一つよろしいでしょうか?」

踊る会議の只中で、一人の男が口を開いた。カトー中佐であった。

「ああ、丁度程よく議題も煮詰まっていたところだ、何かあるなら是非聞かせて欲しいな」

ハルパーに促され、カトーは一つ小さな咳払いをすると、落ち着いた調子で話を始めた。

「まずはこちらの映像をご覧ください」

それぞれのモニターに映し出されたのは、一つの小惑星だった。
地表に沿って、大きな裂け目が星全体をぐるりと一周取り巻いた、今にも二つに分かれてしまいそうにも見える星だった。

「この星は?」

「土星の小惑星の中でも、特に巨大な物の一つです。今回私の方で独自に調査を行っていた所
 この小惑星の内部に地球連合軍の基地がある事が判明しました」

カトーの言葉に、どよめきが広がった。

「何だとっ!?地球軍は、木星圏以降の基地は全て放棄したはずだ、そんな馬鹿げた話があるってのか!」

イージスもまた声を荒げる。彼にしてみれば、自分の庭に敵がいるのに気付かずにいたようなものである。
捨て置ける話ではなかった。

カトーはそんなイージスを制して言葉を続ける。

「それは間違いありません。休戦協定が結ばれた際、地球連合軍は木星以降の戦力を全て撤退させています。
 ですが、彼らは相当撤退を急いでいたのでしょうね。基地の設備の全てを撤収させるには至らなかった可能性があります」

「と、言う事は……」

「その基地の中には、手付かずのままで設備や資源が残っている可能性が高い……か」

その言葉の意味を噛み締める内に、いつしか議場を占めるどよめきも静まっていて。

「もちろん確証はありません。ですが、このまま手を拱いているよりは、打てる手は打っておくべきかと」

「確かにな。無駄足になっちまったとしても、基地として使える小惑星が見つかったってだけでも儲けものだ。
 それに今まで俺達が全く気付けなかった辺り、誰かが潜んでるって事もねぇだろう」

悪くない、とイージスが一つ頷いた。

「ここで大量の資源が確保できるなら、とりあえず当面の危機は凌げるだろう。
 その間に次善の策を考える時間くらいは作ることもできそうだね」

ハルパーが、そして他の将官達も、口々に賛同を表明した。

「となると、誰を送り込むかだ。小惑星一つ見つけるにしても、結構な手間はかかるだろうな。
 正直なところ、ゲイルロズはそっちに回す戦力の余裕はこれっぽっちもない。そっちで何とかならんか?」

「そうだな、グリトニルもそこまで戦力を常駐させているわけでもないし
 かといって他方面を手薄にする訳には行かないな……さて、どうしたものか」

実際のところ、徒労に終わるかもしれない仕事である。
それも、小惑星の探索は随分と退屈な仕事となる事だろう。進んでそんな事に手勢を割こうと言う者はいなかった。

「私としては、今回の任務は魔法少女隊が適任かと思うのですが、いかがでしょう?」

突然話を向けられて、無数の視線に射抜かれて、飛び跳ねるように身体をびくつかせて、さやかは恐る恐る口を開いた。

「え……と、あたし達、ですか?」

「ええ、貴女達ならば少数での作戦行動もお手の物でしょう。それに仮に何が起こっても対応はできるはず。
 更に普通のパイロットよりも長時間の任務遂行も容易です。全ての面から総合的に判断するに、適任はやはり貴女達かと」

カトーの口調は慇懃ではあるが、その実で有無を言わさぬ理屈が押し並べられていた。

「如何でしょう、九条中佐?」

慌てふためくさやかを尻目に、カトーは九条に問いかける。
九条は円卓上で組んでいた腕を解くと、静かに息を吐き出して。それから。

「……ひとまずこちらで検討してみましょう。近日中には返事をさせていただきます」

努めて無表情に、無感情に、そう言葉を返すのだった。

「ああいう時は、その場ですぐに決めてもロクな事にはならないものだ。とは言え、今更覆るとも思わないがね」

会議も終わり、それぞれの部署へと戻る帰り道。
魔法少女隊の預かるエリアへと向かう途中で、九条がさやかにそう告げた。

「あーあ、折角帰ってきたかと思えば、すぐお仕事ですかー」

さも不満そうにさやかがぼやく。

「それだけ腕は信用されてるって事だろうな。……どうにも、まだ信頼はされていないようだが」

むしろそれは自分の事か、とばかりに苦笑しながら九条が答えた。

「まあ、今までが長い休暇のようなものだったんだろう?それなら、その分たっぷりと働いてもらうぞ、美樹くん」

「あはは……まあ、仕方ない、か。今回は九条さんも来るんでしょう?しっかり指揮、頼みますよ?」

軍の中では上官と部下。けれど二人の間には、戦いの中で生まれた戦友としての絆があった。
それ故に、随分とフランクに言葉を交わしながら、二人は仲間達の元へと戻るのだった。

今日は専ブラのご機嫌がよいようでなによりでした。

>>130
バイドとの戦いは、いまでもこんな形で消えない傷跡を残しているようです。
自分の願いが巡り巡って自分を追い詰めてしまったのだから、彼女も報われないものです。

>>131
なんだかよくわかりませんが神の国はありませんしうるさい子安はお帰りください。

>>132
自分の信じる姿でよろしいかと。
一応年齢や体格的にはさやかや杏子よりは一回り大きい感じでしょうかね。
白レンだと流石にロリっぽ過ぎます、アイリさんよりはキツめの顔をしております。
もこたんじゃあちょっと平坦すぎましょう、銀様ほどふりふり羽羽してません。

大体こんなとこではないかと。

>>133
一応バブル波動砲はフロッグマンに既に搭載されてるんですよね。
なので、あとはカラーリングさえ変更すれば出来そうです。

>>134
普通に隕石やら竜巻やら雷やらが発生する波動砲です。
波動とは一体……。
こいつを使えばあら不思議、災害を装って気付かれる事なく敵に打撃を与えられるわけです。
ちなみにマップスは私も大好きです。ネクストシートも面白かったですしね。
今はゴーストとゴッドバードでwktkしちゃってます。

>>135
でも地震だけは起こせないんですよね、残念。
もっともこの世界の連中の事ですから、地殻にブチ込んで地震どころかプレートを崩壊させて大陸ごと沈めるような
そんなトンデモ兵器を開発しているかもしれませんね。

乙。
ディザスター・レポートを含めたR-9W系列は、
Team R-TYPEのイカレ具合を感じる機体だよなぁ。

つまり>>1のとこの雪はディザの工作……!


惑星破壊プログラムなんて積んだモリッツGとか惑星破壊波動砲なんて搭載したFINAL3面の巨大戦艦とか物騒なの多すぎである

犬耳の無い久那儀で落ち着くことになった

しかし、以前は提督といえばR-typeを思わせるものだったのに、最近はすっかり別のものになってしまったねぇ

乙です、日本列島総寒波で体調崩しそうですが暖かくして下さい

自分事ですが、今日ブック○フに行ったらR-TYPESが有ったので衝動買いしてしまいました。
しかし3950円・・・プレミア価格はどうにかならんもんですかね・・・

波動とは何か?それは万物が、自己を証明しようとする、いわば叫びの様なもの
だからそれを再現出来れば、そこにはもう”それ”が”ある”のと同じ事である

アルカナのヴァイスさんでも良いかな?

観測できれば干渉できる
干渉できれば制御もできる

のくだりのべえさんはマッド度合いがTEAM R-TYPEじみてて心地よかった
TV版はマッドさが全然物足りなかったからな

>>151
Ⅱが難しすぎた記憶しかない。

今期最初のとこの異空間ではスペ先生とかも働いてたのかな?

結局三連休も雪が降ったり止んだりで、ロクに外出も出来ずに終わりそうです。

じゃあ、投下行きましょう。

「久しぶりね、こうして皆で出撃するって言うのは」

数日の後、正式に資源惑星探索部隊として編成された魔法少女隊の面々を前に、マミは感慨深げに呟いた。
そこは電脳空間内に作られた一室。50人ほどの少女達が各々テーブルに着いていて
それらを優に収めるほどの大広間には、恐らくマミの趣味であろう、アンティークめいた趣向がいくつも凝らされていた。
天井を見上げれば、綺麗に輝くシャンデリアすら見えて。
そんな大広間に、生身を持った少女達もまたサイバーコネクトを介して参列していた。

魔法少女隊は基本的にグリトニルに常駐している、必要に応じて各地へと派遣される体にはなっているが
その実彼女達の力を必要とする任務がそうあるはずも無く、殆どの者がグリトニルにて日々を過ごしていた。
そう短くない期間に渡る、退屈とも言える任務である。
それでも久々に外に出られるとあっては、それを望む者は予想以上に多かった。

「土星周辺はグランゼーラの領域だし、目当ての場所は既に見捨てられた廃基地。危険な事なんてないとは思うけれど
 それでも油断は禁物よ」

テーブルには紅茶とケーキ。それも一人ひとりの好みに応じて味や風味も変えている。
もとよりこの電脳空間、紅茶もケーキも味覚や嗅覚への刺激を伝える電気信号の塊でしかない。
それでもその電気信号が生み出す味を研究し、現実のそれに遜色ないものにまで高めているのは
間違いなくマミの研鑽の為せる業であった。

そんな紅茶やケーキを嗜みながら、少女達は各々作戦の内容に目を通していく。
今回は小隊規模での行動となる事や、比較的長期の作戦となる事が予想される事から
巡航艦であるガルム級を旗艦とし通常航路で土星へと向かう。

そこまでの道のりだけでおおよそ一月ほどの時間がかかる事が想定される他
小惑星の探索でも最短で一月はかかるであろう事が予測されている。
つまりは、帰還のための時間を含めると最低でも三ヶ月はグリトニルを空ける事になる。

「帰ってきてすぐまた向こうにトンボ帰りとはね。ま、仕事だからしょうがないって事なんだろうけどね」

杏子は軽く苦笑を浮かべてそう言い放つと、ざっくりとフォークを突き立てたケーキを、そのままがぶりと頬張った。
もっとぼやいてやりたいという気持ちもあるけれど、さすがに皆の手前は自重したようだった。

「あら、それなら別に貴女は残ってもよかったのよ、杏子?」

そんな杏子にマミがチクリと一言。けれど当のマミ自身、杏子が残ると言い出すとは微塵も思ってはいなかった。
なぜならば。

「そ、それは……うぅ」

言葉に窮して押し黙ってしまった杏子に、マミはどこか悪戯っぽくも見える笑みを浮かべた。

「ふふ、分かってるわよ、杏子。さやかも一緒に来るのだもの、貴女が行かない訳はないわよね」

「んなっ!?さ、さやかは関係ねーだろっ!」

口ではそう言うものの、その表情は何よりも雄弁に図星を突かれた事を物語っている。
真っ赤に染まった顔では、何を言っても焼け石に水というわけだ。
そして当のさやかは今ここには居ない。先に作戦の内容をを知らされていたさやかは、今は九条達と共に別の仕事を行っていた。

「そんなに慌てなくたっていいのに、大切な人と一緒に居たいと思うのは誰だって同じなはずよ」

「そうそう、折角の恋人なんだから大事にしなくちゃね」

「今更隠し通せるわけないでしょ、あんなにベタベタいちゃいちゃしてるんだからさー」

マミの言葉に続くのは、周囲の少女達の声。
どんな境遇にあっても、こういう浮いた話は面白いものである。その反応は概ね面白がっていたり
相槌を打つようなものばかりで。それが更に杏子の羞恥を煽った。

「お前らなぁ……ったく。そう言えば、この手の話題には食いついてきそうな奴が居ないな。キリカの奴はどうしたんだ?」

もはや二人の中は羞恥の事実。今更何を言ったところでどうにもならないと、杏子も諦めたのだろう。
矛先を他所に逸らそうと、この場に居ないキリカの事を口にした。

「彼女は残るそうよ。織莉子さんはグリトニルを離れられないから、しばらくはずっと一緒に居るみたい」

「ああ、なるほどね。……ま、あいつらなら仕方ないか」

やはりグリトニルは、戦略的に見れば空振りに終わる可能性もある任務の為に
予知の魔法を持つ織莉子を向かわせるつもりはないらしい。
そしてキリカもまた、今度こそそんな織莉子と共にある事を選んだようだった。
きっと今頃、会えない日々の寂しさを存分に埋めている事だろう。

「さてと、それじゃあひとまずこれで解散にしましょう。出発は三日後、それまでに各自機体や装備の用意を済ませておいてね」

その言葉を引き金に、広間を無数の少女達の声が埋め尽くした。
会議が終われば、後は楽しいお茶会の時間。
この場所では、いくら食べても飲んでも体重を気にする必要もない。
美味しい紅茶とケーキを楽しみながら、魔法少女達のお茶会はますますの盛り上がりを見せていくのだった。

これもまた、グリトニルで繰り広げられる日常の一コマ。
新たな戦乱の気配が近づく宇宙の只中でさえ、少女達はたくましく生き抜いている。
生身の身体を失って、魂一つの存在になって尚、それでも。

少女達は知っている、本当の奇跡の存在を。
だからこそ、少女達は希望を信じているのだ。いつか平和な世界が来ると。
そんな世界で元の身体を、人としての人生を取り戻すという希望を。

これは、希望を抱き戦い続ける少女達の物語。
バイド無き世の、ほんの些細な物語なのだ。


魔法少女隊R-TYPEs―The trifles tales― 第ニ話
                         『Granzella』
                           ―終―

【次回予告】

土星の輪の只中で、魔法少女達は出会いました。

「待っていたんだ、ずっと……この日をな」

「どういう事なの、これはっ?!」

それは誰からも忘れ去られた、時の流れからさえも忘れられていた戦士達でした。

「これは俺達の誇りの問題だっ!」

「だからって、こんなの絶対おかしいよ!」

震えぶつかる魂の怒号が、星屑の海を揺るがします。

「やってくれたな……これは拙いぞ」

「俺が出る、すぐに艦を回せっ!!」

次回、魔法少女隊R-TYPEs―The trifles tales― 第三話
                            『Lost platoon』

これは、時代に忘れ去られた、悲しい戦士達の墓標です。

本当はもうちょっと色々書きたいところですが、正直キリがなくなりそうなのでここで一旦打ち切りましょう。

>>146
B系列とはまた別の狂気を感じますね。
バイド機まで行くと、もう完全に人の領域を逸脱しちゃってますというか、半分くらい連中の興味になってますが
R-9W系列は純粋に兵器としての性能を追求した機体のような感じがします。

>>147
そのうち氷の結晶みたいなフォースとか波動砲を打ってくるようなR戦闘機も出そうですね。
波動エネルギーを使って着弾地点の原子振動を停止させる凍結波動砲とかいけそうです。

>>148
相手が相手なので、破壊力を求めるのは最もなんですが。
仮にバイドの本星がわかったとして、そんなものをどうやって輸送するつもりだったんでしょうね。
巨大戦艦くらいならまだともかくですが。
なんかものすごい採掘機械とかもいましたし。

>>149
画像検索してみましたがどうもピンときませんでした。

>>150
まあ、艦これもなんかRと似たような匂いがするらしいので
もしかしたら誰かがそのうち混ぜちゃったりするんじゃないですかね。
私はそっちの提督ではありませんが。

>>151
ゆたんぽ入れて足元はばっちり温めてます。
これがあるとないじゃあ冷え込みようが全く違ってきます。

そしてRは本当に今入手困難ですね。
とりあえずTYPEsの内容ならば、箱○なりPS3でディメンションズをDLするという選択もありますが。
私は一応FINALまでは全部そろえてますが、やはりTACは全然見つかりませんしね。

>>152
ぶっちゃけ殆ど理屈の付けようのない機体もありますからね。
どんなトンデモ機体でも、波動があればおkという大分やりやすい世界な気はします。

>>153
こう言う時、自分で絵が描けると楽なんでしょうね。
私には絵心がさっぱり無いので、みなさんが思ったような姿に思っていただければよろしいかと。

>>154
TEAM R-TYPEの場合、その後更に続きそうです。
観測できれば干渉できす
鑑賞できれば制御もできる
制御できるならどこまで制御できるかチキンレースしようぜ!

その結果がR-13シリーズとかB系列だよ!

>>155
今でもたまにやりますが、本当にⅡは厳しいですね。
3面くらいでもう死にまくります。

>>156
あれはむしろMr.HELIの大冒険なんじゃないかと。
そういえばこの前ゲームセンターでHELIの実機を見ました。
ちょっと遊んでみようかと思いましたね。

そのうち波動のみのR-戦闘機なんて出たりして。デビルガンダムに対するアルティメットガンダムみたいな

いくら魔法少女でも、石じゃない子達はそんなに長期の任務は出来ないよね?

自業他得を地で行くスゥさんェ……

地面があるみたいだし、キウィたんとかの出番はあるのかな?

まどか「台詞取られた……」

九条提督は艦これの提督みたいな心境かも知れんけどね。癖のある少女達を率いて戦わせる訳だし

まぁ艦むす共がRの世界になんて飛ばされても悲劇にしかなりえんけどなww

こんなとこで政治ネタは不粋なんだがバイドの響きにマジで怖いイメージ出てきたな。

>>1のオリ波動にも期待が募るんだぜ


少女が、魔法少女達が波動だ!

プリン波動砲とか美味しそうな名前じゃね?

新歓コンパで床にぶちまけて4年間、拡散波動砲って言われたな(遠い目)

誰だっけ?格ゲーで波動砲撃ってた占い師っぽい見た目の女の人……

いろいろ忙しかったり書き出しが見つからなかったりで一週間くらい間が空いてましたね。

では、久々の投下です。




―――スピラ基地の交信記録より。

“カリスト基地よりスピラ基地へ。我々地球連合軍は、木星圏以降の戦力を全て撤収する。
 駐留部隊は直ちにスピラ基地を放棄し、カリスト基地へと帰還せよ”

“了解した。それで、我々の次の仕事場は何処になりそうなんだ?”

“……スピラ基地駐留部隊は、カリスト基地に帰還した後解散される。
 その後は火星周辺の治安維持部隊に配属されることになるだろう”

“治安維持部隊……だと?なぜ前線じゃない!?”

“それが上層部の判断だ。繰り返す、貴官の部隊は直ちにスピラ基地を放棄し、カリスト基地へと帰還せよ”

“ふざけるな、おい――”

通信途絶により終了。 A.D.2172.03.07

“カリスト基地よりスピラ基地へ、これは最終通告だ。速やかに基地を放棄し帰還せよ”

“これ以上遅れれば、貴官らは敵中に取り残される事になる。そうなればこの通信すら出来なくなる。速やかに帰還されたし”

“……断る”

“何だと?”

“我々は戦士だ。このまま黙って無人兵器に取って代わられるくらいならば、戦って死ぬ事を選ぶ”

“それは認められない、直ちに帰還せよ”

“ふざけるな、クソ喰らえ、だ”

通信途絶により終了。 A.D.2172.04.09



――以降、通信記録なし。

薄暗い灯りが照らす部屋の中で、一人の男が携帯端末を握り締めていた。
精悍なその相貌も、今はいくらか痩せとやつれが混じっているようにも見えた。

彼の名はイヴァン。かつてはここスピラ基地の駐留部隊の隊長であった。
けれど、地球連合軍がスピラ基地を放棄した。彼はその命令に背き、部下達と共に今尚スピラ基地にとどまり続けていた。
故に、彼らにはもう地球連合軍における軍籍はない。

「あの時大人しく戻っていれば、こんな事にもならなかったのかもな」

地球連合軍との間に最後に交わした通信記録、それをもう一度聞きなおしながら、自嘲気味にイヴァンは呟いた。
それは今更言っても詮の無い事で、当然受け入れられるものでは無かった事をわかっていても、それでも。


彼は、そして彼の部下達は、皆生粋の戦士達だった。
彼らはかつての英雄達のように、一騎当千を誇る兵であったわけではない。それでも彼らは常に戦い続けていた。
バイド戦役において、そして第一次太陽系戦争においても、彼らは常に最前線に立ち激戦の中を生き延びていた。
たたき上げで身に着けた、戦士としての自分自身と誇りを持つ彼らには
地球連合軍が下した命令は到底受け入れられるものではなかったのだ。

仮に大人しく戻ったところで、待っているのは治安維持任務。持てる力を振るう相手など
どこぞの不逞の輩やささやかな反乱分子程度のものである。
そもそもにして、主力を無人兵器へと移行させつつある地球連合軍の中において
R戦闘機を主戦力とした部隊はもはやそう多くは無い。
数少ないその部隊も、次々に無人兵器に取って代わられている。
いずれ自分達もそうなるのだと考えると、やはりそれは到底受け入れられなかった。

「……ああ、そうさ。あの時はああするしかなかったんだ」

それが分かりきっているからこそ、イヴァンもそう呟くと握り締めていた携帯端末を放り投げた。

地球連合軍との連絡が途絶え、スピラ基地が孤立無援の状態となってから、既に9ヶ月余りの時間が過ぎていた。
それだけの長い時間を、イヴァンとその部下達はこの小さな基地の中で過ごしていたのだ。
当初こそ、反乱分子を始末するための部隊が差し向けられるかという期待もあった。
地球連合軍とグランゼーラ革命軍が開戦すれば、その混乱を縫って戦果を上げてやろうという野心もあった。
けれど宇宙は仮初の平和を保ち続けており、故に彼らもまた、時間が止まったかのように沈黙を保ち続ける事を余儀なくされていた。

スピラ基地は、小規模とは言え基地である。必要な施設や資材は揃っていた。
けれど、外部からの補給なしでこれだけの長期間に渡って稼動し続ける事を想定はしていない。
故に今、食料、水、そして電力。その全てが逼迫し、彼らには既に限界が迫っていた。
彼らが望むのは戦士としての戦い、そしてその先の死。だからこそ、こんな所で人知れず朽ち果てるのは耐え難く
かといってこの状況を変える術を持ち合わせてはいなかった。

地球連合軍に下れば、軍法会議にかけられ極刑に処される事だろう。
かといって、グランゼーラに下る事をよしとする者もまた、彼らの中にはいなかった。

戦士としての自分がじりじりと磨耗し、死に絶えていくのを感じながらも、彼らはただ日々を過ごす事しか出来なかった。
そう、その時までは。

「隊長、聞いてくれ、緊急事態だっ!」

その声は彼の部下の者で、焦燥と驚愕、そしてどこか狂喜じみた響きさえ帯びた声だった

「どうした、何があった?」

「アイポッドに反応があった。この基地に艦が接近しているっ!」

「何だと!?……何処の艦だ?」

「まだ距離があるから、そこまでは分からない。だが……あれは軍艦だ」

一体どういう事かと、イヴァンは疑問を抱え込む。
何故今更になって、こんな見捨てられた基地に軍艦が近づいているのか。
だが、そんな疑問を抱いていたのは一瞬、すぐにイヴァンはその口元を歪めて。

「くく……そうだ、どういう事情かは分からんが、わざわざこんな所にまでやってきてくれたんだ。歓迎しようじゃないか……盛大にな」

「そう言うと思ったからな、動ける奴には声をかけておいた。出撃の準備はできてる……隊長、指示を」

イヴァンは、久しく忘れていた獰猛な笑みを浮かべてそれに答えた。

「往くぞ……お前達ッ!」

という訳で、忘れられた戦士達の戦いが始まります。

>>166
物質でありながら波動としての性質を持ち、あらゆる存在に伝播するR戦闘機。
物理および相対論的に殲滅する事は極めて困難でしょうね。

……おいこれバイドじゃね?

>>167
生身の肉体を持つ子では、長期間の任務は難しいでしょう。
補給がなければ、ですが。
今回は魔法少女達の拠点としての機能を持たせた艦をちゃんと同伴させてます。
十分に任務を遂行する事はできる事でしょう。

>>168
とことんまで報われないのが彼女です。
いずれ誰かに救われる事があればいいのですがね。

>>169
かつかつでやってるグランゼーラです、一応輸送機の流用機も生産していたりもします。
それを駆る魔法少女が居るかどうかは別の話ですが。

>>170
割と本編の台詞を流用する所もあったりします。
前編でもそういうシーンは割とありましたしね。

>>171
それでもグリトニルで長いこと一緒に戦い続けた仲間です。
正直なところ、グランゼーラの軍人達よりは気心が知れているんじゃないでしょうか。

>>172
あんな世界に飛ばされると、誰だって悲劇にしかなりませんな。

>>173
怖いながらも惹かれる何かを持っている、それがバイドの魅力だと思います。

>>174
色々オリジナル兵器は作っていくつもりです。
その解説も、その内どこかでやれたらいいものですね。

>>175
機体と一つになる的な話なら、前にそれっぽい事をやったりもしましたね。

>>176
スイーツ波動砲とか作れそうです。
チャージ量によって味や見た目が変わると。
まあ味を確かめる前に死にそうですけどね。

>>177
ぜひともそのまま突き抜ける最強を目指してください。

>>179-181
ちょっとよくわからないですね。
格ゲーは門外漢だし、このSSは相変わらずキボウ満載になるはずですし。
STGはSTGでキワモノイロモノいっぱいありますからねえ。

後が無い(と思っている)戦士ってのは怖いだろうな


戦士さん達が幻想入りしてたらどんな話になるんだろうな

格ゲーのもSTGのもどっちもアイレムので、箒ブーメランが『魔法警備隊ガンホーキ』で、どう見ても波動砲が『パーフェクトソルジャー』のアラビアン・ムーンさんだろ
パフェソルに関しては……フォースで地球が北斗
怖いわー、マジ怖いわー

春香(アイマス)さん&早苗(東方)さん「「スイーツと聞いて」」


まぁ宇宙からしてみれば、微生物が争ってる程度の事なんだろうが

俺が知ってる中で最もイカレてると思うSTGは……ずんずん教の野望だな。間違いなく

RはむしろDODシリーズとでもクロスしてやれよww絶望×絶望=カオスなキボウ になるかも知れないぞww

つーか幻想郷へ送るならスゥさんをだな。あっこは疲れた存在の為の場所なんよ

スイーツ波動砲を喰らったバイドのイメージ
「おっ、うまアッー! ジュッ

ではでは、今日もお昼投下なのです。

「これをどう見る、アイリ少尉」

ガルム級の艦内、ブリーフィングルームにて。九条はそれを見つめながら問いかけた。

「間違いなく地球連合軍のアイポッドですね。それも、整備されていた跡や、データを送信した形跡もあります」

九条の隣に立っていた、金髪をツインテールに結んだ小柄な少女がそれに答えた。
彼女の名前はアイリ・ヒューゲル。かつての彼の副官であったガザロフに代わり、九条の副官として配属されたのが彼女であった。
軍人というには余りにも若い彼女であったが、彼女の祖父は高名な戦術家であり
彼女自身もまた優れた才能を持ち、その手腕を買われてグランゼーラ革命軍へと入隊していた。

そんな彼女が、九条の元に配属された目的は明白である。
バイド戦役の英雄であり、数多の戦いを勝ち抜いてきた九条の力を、グランゼーラは信用しつつも恐れていたのだろう。
そんな彼のお目付け役として、アイリは副官の任を命じられていたのである。

……というのは建前だけの話。
まだ少女といえる年であったアイリと、同じく少女にして戦場に身を置く魔法少女達である。
すぐさま打ち解けてしまい、九条本人の意志はさておき、魔法少女達にとっては親しみを持てる良い上官となっていたのであった。

「という事は、この情報を受信した者が居るという事か」

その事実が何を意味するのかを悟り、九条は僅かに顔をしかめた。
事の起こりは、九条率いる魔法少女隊が目的の廃基地のあるであろう宙域に到着してすぐの事である。
周囲に無数に存在する小惑星の中に、データの送受信を行っている物が見つかったのである。
不審に思い確保してみると、それは小惑星に偽装された偵察衛星。通称アイポッドであった。

しかもそれはまだ機能を維持しており、間違いなくこの宙域に侵入したガルム級の姿を捉え、どこかへと送信した記録が残されていた。
そして、このタイプのアイポッドはそう遠くまで情報を送信できない。
だとすれば間違いなく、そう遠くないどこかにこのアイポッドを設置し、情報を送受信している何かが存在する。
更に土星の輪の中という地理的条件を考慮すれば、考えられるものは自ずと限られて来る。

「私達が探している基地の機能は、まだ生きている可能性はかなり高い、って事です」

半ば確信を篭めて、アイリはそう言い放った。

「やれやれ、退屈な任務かと思いきや、どうやらそうでもなくなりそうだ」

やはりそうなるだろうな、と九条は肩を竦めた。

「まずは状況を整理しよう。あの基地は、本当に外部とのやり取りはなかったのか?」

「それは間違いないです。少なくとも地球連合軍が木星圏以降の戦力を撤収させてからは、外部との接触は一切ありません」

「という事は、ほぼ9ヶ月余りの間、あの基地は孤立無援のままだったという訳だ」

「一般的な基地の機能から考えて、9ヶ月無補給というのは……かなり厳しいですね。
 仮に誰かが潜んでいたとしても、それがまともな戦力として数えられるかどうかは、ちょっと怪しい感じです」

勿論、第三者が見捨てられたこの基地を見つけて利用しているという線もありますが、とアイリは最後に付け加えた。
何れにせよ確かな事は、この基地の資源を当てにしていたグランゼーラの目論見は、概ね外れてしまったという事だけだろう。
だとすれば、このままその事実を報告し、続く指示を待つという手も考えられなくは無い。

「一旦ゲイルロズに連絡を取って、指示を待つという手もあると思いますけど、どうします、提督?」

そんな九条の思慮を知ってか知らずか、アイリも同じ提案をした。

「……それでは子供の使いだよ。やはり、ある程度は調査を進める必要はあるだろう」

けれど、九条の答えは違っていた。
ゲイルロズとて、こんな所に割ける戦力の余裕はない。
それに、今ここに居るのは精鋭揃いの魔法少女隊である。大抵の事であれば対処はできるはず。
元よりグランゼーラも、ある程度の不測の事態を見越して魔法少女隊を選んでいるのかもしれない。
だとすれば、やはりある程度の結果は残しておかなくてはならない。

魔法少女隊自体はともあれ、九条自体はまだグランゼーラにおいてさほどの成果を挙げている訳ではない。
英雄としての勇名も、グランゼーラ内部においてはそれほど役に立つ訳でもない。
地球連合軍からの離反という形でグランゼーラに下った九条にとっては、周囲からの心証を良くする為にも
やはり目に見える形の成果は必要だった。

「ただ、やはり気になるな……」

「何が気になるんです、提督?」

「何故ここに人が居るのか、という事だ。現に他の地球連合軍の部隊は既に撤収している。どう考えても、ここに兵を残しておく理由はない」

「何か特別な任務があったのかも知れませんけど……それにしたって、今まで無補給じゃあ、とてもじゃないけどまともに戦えませんよ」

「だろうね。……となると、基地の機能を利用できるような第三者が存在するか、それとも」

「……撤収命令を無視して、基地に留まっているものがいるか、ですよね」

その可能性自体は、アイリも思い至っている事ではあった。
けれど、他の部隊を全て撤収させた今、この基地だけをそうまでして守り続ける事は
あまりにも戦略的価値に乏しく、その可能性は早々に除外してしまっていた。

「その可能性も無くはないだろうな。だが……もしそうなら、厄介な事になるかもしれない」

「厄介な事、ですか?」

「……追い詰められた者は、何をするか分からないという事さ」

「だとしても、相手は消耗しきっている筈です、万が一にも負ける事は無いはずですよ」

アイリには、そんな九条の危惧は不可解でならなかった。
仮に九条の危惧するとおりの状況であったとして、こちらは精鋭部隊、あちらは消耗しきった敵ばかり。
装備の精度も段違いだろう。負ける要素は皆無のはずだった。

「果たしてどうだろうな。この期に及んで撤収命令を無視し、かといってグランゼーラに下る事もなく
 あの基地を守り続けている者が居たとして、彼らを突き動かしているものはなんだと思う?」

「……地球連合軍のやり方に対する不信があった、っていう感じでしょうか?」

「それだけじゃないさ。それならグランゼーラに下ればいい。けれど、彼らにはそうできない理由もあった」

そう言って、九条は目を伏せ押し黙ってしまう。

「私には分かりません、一体どんな理由があったんでしょう?」

「こういう事を言うのはガラじゃあないが……恐らくそれは、誇りの問題だ」

「誇り……ですか?」

怪訝そうにアイリが問う。いかに優秀な才能を持っているとは言え、軍人としての経験に乏しいアイリには
戦士としての意地や矜持と言う物は、まだ理解しがたい感情なのだろう。
恐らくそう言った感情については、魔法少女達の方が良くわかっているくらいだろうと九条は思っていた。

「何にせよ、杞憂に終わればそれでいい。だが、もし本当にそうなった時の備えだけはしておくに越した事はない」

「わかりました。それじゃあ、出撃前のブリーフィングまでには具体的なプランを考えておきますね」

そんな九条のただならぬ様子には、アイリもまた何かしらの感じるところはあるのだろう。
幾分か表情を堅くして、すぐそこまで迫っている敵基地を攻略するため、思索を巡らせ始めるのだった。

英雄は英雄を、そして戦士は戦士を知る、といったところでしょうか。

>>191
何をしでかすか分からないそんな存在を、九条提督も相応に警戒しているようです。
何せ、追い詰められた人間の底力と言うものを嫌と言うほど知っている訳ですからね。

>>192
それはそれで一波乱も二波乱もありそうです。
が、結局なんだかんだで争いの芽にでもなるんじゃあないでしょうかね。

>>193
もうここも半分くらいアイレムゲーマーの溜まり場になってますね。
まあ、それはそれでいいのですが。
しかし、なんだかそっちの格ゲーの話はどこかで聞いたことがある気がします。

>>194
とりあえず片方はゼノグラにお帰りください。

>>195
実際宇宙の規模からすれば、太陽系の片隅でドンパチやっているだけの戦いなんて些細なものです。
人類がバイドに敗北して、その後バイドが際限なく増殖に増殖を重ねて初めて、宇宙の危機といえる状況になる事でしょう。

だからこそこのお話は、何処までいってもほんの些細な物語なのです。

>>196
調べてみました。

ま た セ ガ か

セガガガのあれとか色々頭おかしいですよ、あそこ。
今更だけど。

>>197
現実の戦闘機にやられるドラゴンでどうR戦闘機とかバイドに立ち向かえって言うんですかー、やだー
流石にファンタジー寄りの世界とはちょっと相性が悪そうなんですよね、これ。

>>198
あの人の場合、案外向こうでも悠々自適に暮らしてそうです。

>>199
バイドにも味覚がある事着目し、味覚刺激によるダメージを与える事を目的としたスイーツ波動砲。
同じコンセプトで開発された、スパイシー波動砲やソルティ波動砲なんかも出来そうです。

乙!
シュールストレミングなんかだと、むしろバイドが集りそうだな

金髪、ツインテ、魔法
ダメだフェイトにしかならんww

もしスゥさんがあっこの地底に行ってさとりんと弾幕する事になったら…………幻想郷が悪夢郷に?

予告の台詞だと、何だか苦戦してる感じがするしねぇ

ここのはどこぞのなのはとのクロスよりは大分柔らかいよね

スイーツ的には、春香さんを帰す世界はキサラギじゃないのか?ww


ヘタしたら九条提督も暴徒してたかも知れない訳だしな

では、今日も投下と行きましょう。

小惑星帯を駆けるR戦闘機による小隊。
マミのフェニックスを先頭に、杏子のキングスマインド、さやかのフォルテッシモ、ゆまのティンダロスが編隊を組んでいる。
歴戦の猛者ばかりで編成されたこの小隊は、一つの小隊の戦力としては間違いなく、魔法少女隊の中でも
グランゼーラの中でも最高のものである。

アイリが立てた作戦は、総勢50名50機のの魔法少女隊をそれぞれ5名ずつ10の小隊に分け
マミが自ら率いる部隊を基地への突入部隊とし、残り9の小隊を3小隊ずつ、時間差で別々の方向から突入させるというものだった。
基地がもぬけの空、もしくはそこにいるのが地球連合軍の残党ではなければ先に送った部隊だけでも十分に対応できる。
しかし、もし仮に本当に敵が居るのだとすれば、相手の土俵で戦う事の不利は否めない。
それ故基地に残存する勢力が抵抗の意志を見せた場合、突入部隊は散り散りに撤退し
小惑星帯に敵をおびき寄せ、それを分散させた部隊で各個撃破する。

小惑星帯内部にはガルム級は突入する事は出来ないため、実際の戦闘は魔法少女隊に一任される。
各小隊の行動は、それぞれの小隊長の判断に委ねられる事になる。
作戦というにはいささか頼りない向きもあるが、余りに未知数のこの状況では綿密な計画を立てるよりも
状況に即応できる魔法少女達の判断に任せた方がいいという事なのだろう。
それでも不利な状況に追い詰められた場合の避難経路や
いざという時の艦砲射撃による支援要請の手はずはしっかりと整えられていた。

「でも、本当にあるのかしら……見捨てられた基地に、兵士が生き残っているだなんて」

「何も無い、孤立無援の基地の中で九ヶ月……でしょ、流石にちょっと想像できないよね」

アイリと九条から告げられた言葉の内容にも、マミとさやかは半信半疑な様子であった。

「本当に居たとして、一体どんな気持ちで過ごしてるんだろうね……正直想像もつかないって」

「……きっと、とっても辛いし寂しいはずだよ。ゆまだって……そうだったもん」

そんなさやかの呟きに答えたゆまの声は、僅かな影を帯びた声だった。

「ゆまちゃん……」

心配そうにマミが声をかけた。
そう、かつて暗黒の森の虜囚となり、長らくの時を眠り続けていたゆまは知っている。
たった一人、暗黒の森で7年の時を過ごしたゆまの孤独は、彼らが抱くそれよりも尚深いのかも知れない。

「大丈夫だよ、マミおねえちゃん。……ゆまはもう一人じゃないもん、みんなが一緒だから」

けれど、そんな孤独も全て過去。今のゆまには共に戦う仲間が居る、戦う理由も覚悟もある。
それを誰よりも良く知っているからこそ、ゆまはそう言って元気に答えて見せるのだった。

「……まあ、それだけじゃあないと思うけどな」

それまで沈黙を保ち続けてきた杏子が、そこで口を開いた。

「もし、本当にあそこに兵士達が残ってるんだとしたら……多分、そいつらは」

目を伏せて、静かに吐息を吐き出すと、杏子は。

「死に場所を探してるんだろうさ……多分な」

その言葉に、皆が一様に息を呑む。それを尻目に杏子は言葉を続けた。

「きっとあいつらは、戦い続けていたんだろうさ。バイドと、そして多分グランゼーラとも。
 それがいきなり用済みって言われて、とっとと戻って来いって言われてさ、我慢なんてできるはずが無い。
 自分はまだ戦える。それを証明するために、自分がまだ戦士である内に戦って死のう。そう思ってるんじゃねぇか、ってさ」

その言葉を最後に、重苦しい沈黙が流れ出した。
そんな沈黙を断ち切るのは、やはり。

「また懐かしい台詞だねぇ。一体何処の誰かさんでしたっけ、そんな事言って黄昏じみてたのはさ」

どこか飄々と、皮肉るようなさやかの言葉だった。

「わかってるっての。さやかやみんなに出会ってなかったら、きっとあたしもそうなってたよ。そんな意味じゃあ、これから会いに行くのはもしかしたらそうなってたかもしれない自分、って奴なのかな」

杏子は過去に思いを馳せる。
かつての英雄、ジェイド・ロスと分かれた後の事。取り残された自分に、一緒に連れて行ってくれなかったロスに
戦う事のできない自分に、全てに絶望していた事を。
だからこそ、バイドへの憎しみが消えない内に、まだ自分が自分でいられる内に戦いの中で死のうとそう思っていた。

(そんなあたしを救い上げてくれたのが、さやか……あんただ。今更言えやしないけど……感謝してもしきれないよ)

軽く口元を歪めて杏子は笑みを浮かべ、それから小惑星帯の奥へと視線を向け、それを見据えて。

(だからこそ、期待してるのかもな。……もしかしたらさやかなら、ってさ)

流石に虫が良すぎるな、と自嘲気味に苦笑した。

「さあ、そろそろ目的の基地に到着するわ。みんな、気を付けていきましょう」

「わかってますよ、マミさん」

「ああ、任せろ」

「任せてよ、おねえちゃんっ!」

マミの声に皆が答え、小隊は速度を上げて突入を開始するのだった。

目標の小惑星、地球連合軍がスピラと呼ぶその小惑星に到着したマミ達は
星の表面を大きく一周する巨大な地割れに沿って、小惑星上をぐるりと一周した。
しかし、スピラからは一切の反応はなく、マミ達はそのまま地割れの内部へと侵入を開始した。
侵入を開始して間もなく、地割れの内部に明らかな人工物が発見され、詳しく調査を進めると
それが間違いなく地球連合軍の基地への入り口である事が明らかになった。
その基地は、スピラ内部にくまなく張り巡らされているようで、詳細な調査には人手が必要となる。
そのため、小惑星帯に散らばっていた各小隊に集合の号令がかけられた。

しかしこの期に及んでも基地からは一切の反応はない。
これだけ大掛かりな事をした割には、なんともあっけない状況である。
果たして杞憂だったのだろうか、それを確かめるべく生身の体を持ったさやかと杏子の二人が
先んじて基地内部の調査へと向かうのだった。

「電力が落ちてるし、空調も効いてないみたいだ。……本当に、こんな所に誰かがいるのかな」

灯りも酸素も、それどころか重力すらない暗い基地の中
パイロットスーツに備え付けられたライトの灯りを頼りに二人はその歩を進めていた。
基地の電力が落ちているため、端末を介して内部構造を入手する事も叶わない。
仕方なく二人は、手持ちの端末を用いてマッピングを行いながら進んでいた。
だが、どれだけ奥に進んでも、いくつもの部屋を越えても尚、二人の前には誰一人として現れる事はなかった。
とは言え、それでもやはり歩き回れば見えてくるものもあるようで。

「……もぬけの空、ってやつかな。流石にちょっと拍子抜け?」

「いや、どうやらそうでもなさそうだぜ。ここの内壁を見てみろ、ここだけ継ぎでも当てたみたいになってる」

「あ、ほんとだ。ってことは、誰かがここを修理した人が居るって事だよね」

「多分、な。それも割と最近だ……間違いなく、ここには誰かが居たはずだ」

だとしたら、何故基地の中はこうも静まり返っているのだろうか。

「もしかして、あたしらが来るのにびびって逃げちゃった、とか?」

「かもね。ここを使ってた連中は、捨てられた基地を見つけて利用してただけなのかも知れない」

「だとすると、ちょっと悪い事しちゃったかな」

「どうせ不法に占拠してたんだ、気にする事じゃないって」

「……それもそっか。じゃあどうする、とりあえず一旦戻る?」

「そうだな、とりあえず一旦戻って報告するか」

端末に標された経路を頼りに、帰路を辿ろうとした二人の前に。

「おーっとぉ、そうは行かんな」

それは、現れた。

開戦まではもう一手間って所でしょうか。

>>208
そもそも宇宙の真空で臭いも何もあるのかて感じではありますが。
連中なら平気で取り込んでくれることでしょう。

>>209
ところがどっこいアイリさんはRTT2の登場キャラクターです。

>>210-212
いい具合にキリもついたので、そう言う話はこの辺にしておきましょう。

>>213
相手は必死ですから、きっと苦戦もする事でしょう。

>>214
いろいろ影響を受けそうで、そっちはまだ拝んでないのですが
こっちはまだ割とライトな方だと思います。
なにせ書いてる私がご都合主義者なもので。

>>215
実はあんまりアイマスとかACには詳しくなかったりします。

>>216
なんだかんだでそこまで無茶はしない人なんですけどね、九条提督は。
割と打算的ですし、勝算のない賭けはあまりやりたがらないようです。

おーっとぉ
でVIPRPGのマシンゴーレムだかを思い出したww

>>216
暴徒鎮圧は防衛隊時代の任務で慣れてます! 俺に任せて下さい!

しかし台詞だけでこんなに簡単にあらすじやれちゃうって凄いねー

スゥ「私ってまた水槽だったりする訳?ホルマリン漬けの解剖カエルかってのよ」

スゥクローンズもどっかの妹達みたいに解放されて、少しずつ個性が出てきたりしたら素敵なんだけどな~

ちょっと困ったことになりました。
まあ、それは投下した後で言うことにしましょう。

「っ!!」

二人の行動は素早かった。
左右に分かれて背後の通路に飛び込み身を隠すと、半身を覗かせ銃口を声のする方へと向けた。

「おいおい、随分といい動きしてやがるなぁ」

銃口を向けた暗がりからゆっくりと姿を現したのは
パイロットスーツではなく一般作業用のノーマルスーツを着込んだ男の姿だった。
見たところ、武器のような物を持っているような様子はない。
そればかりではなく、その男は本来あるべき右腕を失っているようで
ひらひらと頼りなくノーマルスーツの右腕が、無重力に揺れていた。

「その動き、どう見たって只者じゃあない。だってぇのに、声は女子供のそれと来た。何者だよ、お前ら」

不思議そうに問いかけながら、ふらふらと男は近づいてくる。

「それ以上近寄るんじゃねぇっ!……それを聞きたいのはこっちの方だっての
 お前は一体何なんだ。なんだってこんな所に居やがるんだ」

銃口を向けたまま杏子が鋭く叫んだ。そして杏子もまた問いかける。
男は動きを止めたが、答えを返そうとはしなかった。
張り詰めていく空気の中、静寂だけがその場に立ち込めていた。

一方その頃、土星の輪の外側で待機していたガルム級のブリッジでは。

「今の所、基地に目立った動きは見られない……か」

外から見れば雄大な土星の輪も、間近で見ればただの小惑星の群れに過ぎない。
その群れを眺めながら、九条は静かに状況を見守っていた。

「突入開始から1時間、後続の部隊も基地への突入を開始したようです」

「そうか……ということは、状況が動くとすればそろそろか」

そんな九条の言葉を裏付けるかのように、ガルム級のオペレーターが声を上げた。

「提督っ!小惑星帯内部より、無数の機体の反応があります!これは……魔法少女隊の物ではありません」

「来たかっ!」

「後詰の部隊も基地に釣られて突入したか。よし……仕掛けるぞっ!」

機は熟した。小惑星帯に無数に並ぶ小惑星、その内部に潜んでいたイヴァンが突撃の号令をあげた。
彼らはいつか敵との戦いが起こる時に備え、機体を小惑星に偽装する装備を開発していた。
そうする事で敵をやり過ごす事も、不意を突いて襲い掛かる事もできる。

そして今、基地に迫る魔法少女隊をやり過ごしたイヴァン率いるスピラ駐留部隊は
偽装を解除し小惑星帯を脱出、一気にガルム級を制圧しようとした。

打つ手を与えぬ電光石火の攻撃で一気に敵の旗艦を落とす。
これで敵の退路を断ち、浮足立って戻って来る敵を、自分たちのフィールドである小惑星帯内部で迎え撃つ。
例えどれだけ窮しようとも、死に場を求めるような戦いであっても、自暴自棄に戦うつもりは毛頭ない。
戦うからには力の限りを、知略の限りを尽くす。それが戦士としての誇りであり、美学でもあった。

その思考を完全に戦士のそれへと変える間際
基地に迫る敵を足止めするため、たった一人基地に残った仲間の事を想う。
きっともう二度と見ることはないであろうその顔を、名を、瞼の裏に焼きつけて。

「往くぞ……これが俺達の戦争だ!」

言葉と同時に次々に小惑星への偽装を解除し、次々にR戦闘機が小惑星帯の外へと飛び出していく。
総数24のR戦闘機が、青い光の尾を引いてガルム級へと殺到した。

「総数24、急速に本艦に接近しています」

「やはり来ましたね、提督」

そう、けれど戦士はまた戦士を知る。
九条もまた、小惑星帯に近付いたガルム級が敵の奇襲を受ける事を想定していた。

「敵の数を見るに、恐らくほとんどの戦力をこっちに向けてるんだと思います。
 ……やっぱり、もう少し残しておいた方がよかったんじゃないですか?」

けれど、それでもアイリの声には不安が混じった。
今この艦を守るのは、たった1機のR戦闘機だけなのだ、あれだけの敵を相手に艦を守り通す事などできるのか。

「確かにそう思うのも無理はない。だが……これくらいはやってもらわなくてはね。
 とにかく敵が来た以上、本艦は後退しつつ近する敵を迎撃する」

だがその実、九条はさほど心配はしていなかった。確かにこの艦を守るのはたった1機でしかない。
けれどその1機こそは、魔法少女隊の、ひいてはグランゼーラの最大戦力なのだから。

「守りは任せるよ……英雄殿」

かつての英雄の言葉に。

「ええ、任せてもらうわ。……英雄さん」

同じくかつての英雄、暁美ほむらはそう答えるのだった。

で、ちょっと困ったことなのですが。

執筆に使っていたPCがぶっ壊れました。
今はとりあえずかけた分だけなんとか投下できましたが、今後の投下はかなり厳しくなりそうです。
書き貯めはちまちまやっていくと思いますが、投下の頻度自体はかなり落ち込みそうです。

>>225
しゃべるゴーレムというと、やっぱりきくたけリプレイが出てきます。
そんな卓ゲーマーです。

>>227
霧が濃くなってきましたね。
とりあえずアトリームに帰れ。

>>229
実際この辺の話を書いていたの自体相当前の事ですから
私自身、いろいろと振り返りながら今も書いていたりします。

>>230
はてさてどうでしょうねえ。何といっても今や彼女もソウルジェムですし。

>>231
今現在彼女のクローン達がどうなっているかは、その内明らかになってくれる事でしょう。

エタってから言うのもなんだけど
マテパクロススレの1と酉一緒だけど同一人物ってことでOK?
違ったら申し訳ないんだけど何の報告もなしにあっち落ちたからさ

スゥさん……過労でぶっ倒れた母親みたいになっちゃって
しかも今作られてるお子さんは、正しく親の心子知らずだし……

ドモン・カッシュのお父さんみたいな状態になってたりして?そうなら哀しくも美しいだろうが……

まさかまどかの願いまでもがこんな形で応報してくるとはなぁ

みなさん、大変長らくお待たせいたしました。
PCの復帰にえらい時間を食ったり、復旧したと思って戻ってみたら板が落っこちてたりと
随分長いことこの場を空ける事になってしまいましたが、なんとか復帰できました。

では、今日も相変わらず投下と行きましょう。

戦端は開かれ、それはすぐさま少女達にも知るところとなる。
ガルム級からの通信を受け、魔法少女達は一小隊を基地に残し、残った部隊は全て小惑星帯からの離脱を始めた。
その旨を告げる通信が、基地に侵入した二人の下にも届けられた。

「どうやら、こっちは盛大な囮だったって事らしいな」

「まんまと引っかかっちゃった、って感じだね、これは」

視線は目の前の男から逸らさず、目配せだけを交わして二人は呟いた。
とは言えそれは予想の範疇、十分に対応できる範囲の事ではある。

「どうやら、外じゃいよいよおっ始まったらしいな。察しの通り、ここはもぬけの殻って奴さ」

「やっぱりそうかよ、道理で何もなかったわけだぜ」

「せこい真似してくれるよね、ほんとさ」

その男の言葉を信じるわけではないが、敵の目的が旗艦の制圧であるのなら
囮となった基地を空にしているのにも納得はいく。
仮に基地に伏兵を残していたとしても、対応できるだけの最低限の戦力は残している。
だとすれば、これ以上ここに留まる理由は乏しい。

「さやか、あたしらも戻るぞ」

「そうだね、でもその前に……」

二人は示し合わせたかのように、同時に男を睨み付け。双方の銃口を突きつけながら迫る。

「それで、わざわざ残ったあんたが何をするつもりかは知らないけどね、大人しく投降するならそれでよし、
 そうじゃねぇなら、手荒に行かせてもらうよ」

当然、目の前の男を放置しておく事もできなかった。
この基地の事情を知るためには、捕虜とする意味は十分にある。
仮に抵抗されたとして、その時には少なくとも杏子は引き金を引く事を躊躇うつもりはなかった。

「投降はしない。それに、大人しくやられてやるつもりもないなぁ」

「へぇ、じゃあどうするつもりだよ?」

杏子の言葉に、男は自嘲めいた笑みを浮かべて呟くのだった。

「……ヤキが回ったもんだ。まさか、こんなガキが道連れたぁな」

「あんた、まさかっ!?」

さやかが驚愕の声を上げるのとほぼ同時に、基地を大きな振動が襲った。

「そうさ!基地の自爆装置を作動させた、もうちょっと道連れは多い方が有難いんだが……まあいいさ」

その振動に弾き飛ばされ、あらぬ方へと漂いながら、狂気じみた笑みを浮かべて男は哄笑する。

「っくそ!やってくれやがって、さっさと逃げるぞ、さやかっ!」

踵を返し、すぐさま脱出を開始しようとした杏子だったが、傍らのさやかは動かなかった。
さやかは、暗がりの向こうに消えていく男の姿を睨んでいた。何かを堪えるように、静かに身を震わせて。

「なんで……こんな事までしなくちゃならないのさ」

人類同士で戦わなければならない事への、戦う意味を失って尚戦いと死を望む者への
言い知れない思いとやるせなさがさやかの胸中にこみ上げた。

けれど、今は感傷に浸っている場合ではない。
歯をぎしりと鳴らし、今にもはちきれそうな何かをぐっと堪えるように身を震わせて。
それからさやかは、杏子の後を追うのだった。

「――一緒に、死んでくれや。なあ……ははは、あはははははっっッ!!」

そんな二人の背を追うように、男の最期の声が響き渡っていた。

「崩壊が思ったより早い、こいつは……急がないとやばいぞっ!」

(この力を、同じ人間相手に振るう時が来るなんて……ね)

ファラウェル・ギフトを駆り、迫り来る敵部隊を見据えるほむらの心中には、僅かな逡巡が生じていた。
R-102、ファラウェル・ギフト。かつてのバイド戦役の、最終決戦の最中。
ラストダンサーとカーテンコールが融合して生まれた最強のR戦闘機。
R-101、グランドフィナーレを徹底的に解析し、その性能を可能な限り再現する事に成功した機体である。
スペックだけでみれば、間違いなくこの太陽系において並び立つものはない。

人類が、バイドという最悪の悪魔を倒すために生み出した、ありとあらゆる力の結晶。
そうであったはずの力が今、同じ人類へと向けられている。
その事実に、やはりどうしようもなく逡巡めいたものをほむらは感じてしまうのだった。

だが、状況はほむらに躊躇う事を許さない。
ここで敵の侵攻を許してしまえば、ガルム級が危機に晒されてしまう。
それだけは、絶対に避けなければならなかった。

彼我の距離が交戦圏内にまで近づいた事を知り、ほむらは幾度も繰り返してきたその思索を打ち捨てた。
残されたのは、英雄の名を冠するに値する力を持った、戦士としての思考だけだった。

「まずは敵の頭を叩く。これで――っ!」

「敵機接近っ!数は……一です、他に反応はありません」

ガルム級へと迫る敵部隊も、迎撃のため接近するほむらの反応を察知した。

「たった一機だぁ、悪あがきのつもりか?」

「一機でも油断はするな。ライ、フォッケ、アレン、三人で敵を迎撃しろ。俺達はそのまま先行する」

軽口を窘めながら、イヴァンは部隊に指示を出す。
その指示を受けて、編隊飛行を続けていた部隊から、三機が飛び出し先行した。
それらはいずれもR-11S2、ノーチェイサーの後期改修型である。
本来であれば市街地など、障害物の多い環境での運用を想定された都市警戒仕様機の最終型であるはずのノーチェイサーだが
その耐G機構の優秀さが高く評価された事から、ある程度の機動力を確保しつつ加速性能と最高速度に優れた機体として改修を受けたものも存在していた。
もっとも、耐G機構の転用により加速性能及び最高速度を向上させた機体として
十分な成果を挙げたある試作機の存在がなければ、このような改修も行われなかったであろう事は、今となっては誰も知る由もない事であった。

「ここからは各自散開して敵旗艦を攻撃する。敵艦からの砲撃に注意しろっ!」

三機が先行したのを見届け、イヴァンは部下達に散開の指示を出す。
結果的には、これが彼らにとって幸いとなった。

「こちらフォッケ、敵機より高エネルギー反応を検知、まさか、これは……っ」

先行した機体からの通信は、酷く切迫したもので。その声が届いた直後。
彼方から飛来した閃光が、散開を始めたばかりの部隊の中央を打ち抜くのだった。

「一撃で……部隊の三割が壊滅だと」

その一撃に巻き込まれ、回避をし損ねた者達が光の中へと消えていく。
残留する波動粒子から、それが波動砲による攻撃である事はすぐに分かった。
その威力及び範囲、放出パターンから推測されたその攻撃の正体は、誰かの悲鳴じみた声によって告げられた。



「――ギガ波動砲だッ!!」

ギガ波動砲。それは一部の戦略兵器を除けば最大の攻撃範囲と威力を持つ、究極の波動砲であった。
全てのR戦闘機の力を集約したグランドフィナーレの能力を再現させたファラウェル・ギフトは
ギガ波動砲ですらも当然のようにその力の一つとしていたのだ。

「ギガ波動砲搭載機……なんだってそんなもんがこんなところに」

バイドとの戦いを終えた今、ギガ波動砲の持つ力は一機の戦闘機が持つものとしては明らかに過剰な代物だった。
それ故に、その力を持つ機体は全て封印されたはずなのだ。
本来ありえないはずのものに遭遇し、その威力をまざまざと見せ付けられ、彼らの心に恐怖が蘇る。
死の恐怖とも違う、人智の及ばない、恐るべき敵と対峙する事への根源的な恐怖だった。
それは、かつてバイドと対峙した時に感じたものとよく似ていた。

だからこそ、人はそれを振り払い尚も戦う事ができるのだ。

「……大した歓迎ぶりじゃないか、こんな辺境の一部隊相手に、とんでもないものを引っ張り出してきやがった」

浮き足だった部下達を鼓舞するため、イヴァンは檄を飛ばす。

「地獄への道連れには、これ以上ない相手だとは思わないか、なぁ?」

そして何より、その言葉自体がイヴァンの本心に他ならない。

「へへ……っ、そう、だな。どこのどいつか知らねぇが、相手にとって不足はねぇ!」

「勝っても負けてもこいつで最後だ、それなら、精一杯暴れさせてもらいましょう」

返ってくる言葉の中には、まだ震えの抜けないものもある。恐らく虚勢の類も多い事だろう。だが、それで十分なのだ。
虚勢でも何でも、自分を奮い立たせて戦いに飛び込む事さえできてしまえば、後はもう何も気にする事などはない。
ただただ戦場の狂気に身を任せて、どちらかが尽き果てるまで戦い続けるしかないのだから。

「こうなった以上、旗艦を狙うのはやめだ。まずはギガ波動砲搭載機を叩く、往くぞっ!!」

「了解っ!」

勢いを取り戻し、再びR戦闘機郡が動き出す。
それを迎え撃つほむらと九条達、基地を離脱し、旗艦を狙う敵の追撃を開始した魔法少女達。
そして、基地からの脱出を図るさやかと杏子。

スピラ基地を巡る戦いは、今まさにその火蓋が切られようとしていた。



そして、その背後で蠢くものも――また。

前にマクロスとのクロスでR-TYPE戦闘機がVFよりはやいとなってたが実際どうなんだ
それ書いてた人VF-25がマッハ5しか出せないから負けると書いてたけどそれ以前の機体でマッハ20より上の速度だしてた機体あるし信用できないな
実際どっちが早い

「……そう、いよいよ始まったのね。では、私達も頃合を見て動く事にしましょう」

宇宙空間に浮かぶ、漆黒の艦の中。そのブリッジで、優雅な仕草で紅茶を嗜みながら、カーリーはそう呟いた。
そこは戦いの舞台となったスピラ基地からいくらか離れた宙域で、そこは間違いなくグランゼーラの勢力圏内である。
だが、そんな事などまるで気にしていないかのように、カーリーの仕草や言動には多分の余裕が含まれていた。

この艦は単独での亜空間航行が可能な上にく、艦全体を覆うジャミング機能を有する隠密行動を目的とした艦であった。
これによって木製―土星間に幾重にも張り巡らされたグランゼーラの警戒網をすり抜けており、彼女はその艦の性能に絶対の信頼を寄せていた。
もっとも、地球連合軍の持つジャミング技術は革命軍のそれに劣っており、ジャミングの維持に大規模な設備を必要とした事で、燃料効率の悪化を招き
長時間の作戦行動は不可能という代物ではあったのだが、それでも、木製―土星間の往復程度の任務には十分である。
故に彼女はこの艦を駆り、剣を携え手ずから魔法少女達を討つ為に、この戦場へと赴いていたのだった。

正式採用が決定すれば、ヴィーダル級と名付けられる事が決まっている漆黒の艦上で、彼女は時を待っていた。
忘れられた戦士達と、魔法少女隊。いずれ劣らぬつわもの揃いの戦いが決着する、その時を。

「大人しく帰してくれるわけはないとは思ったけれど……随分と盛大に歓迎してくれるものね」

全方位から迫り来る弾幕の雨をすり抜けながらマミが言い放つ。
小惑星帯からの離脱を図る魔法少女隊。だがそんな彼女達を行かせまいと、小惑星帯そのものが牙を剥いた。
比較的軌道の安定している小惑星に設置された無数の固定砲台が、そして小惑星そのものが、恐るべき罠となって魔法少女達に襲い掛かったのである。
もちろん魔法少女達もそれを警戒していなかったわけではなく、不意を突かれる事はなかったが、行く手を阻む小惑星を破壊しながらではどうしても手間がかかる。
脱出に手間取れば、それだけ旗艦が危機に晒される事になる。少なからぬ焦りが少女達を苛んでいた。

「こんなところで手間取ってられないんですよぉ……こんのぉっ!」

業を煮やして、一人の少女が強行突破を図った。
攻撃によって僅かに開いた弾幕の隙間に、無理やり機体を捻じ込んだ。

「一人で突出しちゃ駄目よ、沙々さん。一旦下がって!」

沙々と呼んだ少女の猛進を咎めるマミだったが、やはりその忠告は遅きに失していた。

「大丈夫ですよぉ、このくらい。って、うわわぁっ!?」

弾幕をすり抜けた沙々の駆るエクリプス。それを取り囲むように小惑星が飛来した。
エクリプスを中心に、互いに引き寄せあいながら包囲を狭める小惑星。回避運動を行った直後の沙々には、それを回避する術はなかった。

「させないよっ!!」

そんな少女を救ったのは、横合いから割り込んできたティンダロスだった。
機体下部に装着されたアンカークローを射出。小惑星に食いつかせ、クローを通じて直接ライトニング波動砲を叩き込み、小惑星を破壊するのだった。

「うぅぅ、助かりましたよ、ゆまちゃん」

「油断しちゃだめだよ、こんな所で死ぬなんて、絶対だめなんだから」

一命を取り留めた沙々にそう言って、ゆまは再び飛び去った。
少なくともゆまにとっては、この程度の罠はものの数ではない。だからこそ、他の仲間の援護を行う為に奔走していたのだった。

「やっぱり、まだまだダメですねぇ。……とにかく今は、生き延びる事だけ考えなくちゃですよぉ」

沙々もまた物憂げに一つそう呟いて。自分が生き延びるための戦いを再開するのだった。


沙々は魔法少女隊の前身である、グリトニル防衛部隊出身の魔法少女ではない。
かつて魔法少女隊が月に存在する地球連合軍の軍事施設、ルナベース6を強襲した際に回収された魔法少女の一人である。
その際に回収された魔法少女のほとんどは革命軍への協力を拒み
現在は前線を離れた保養施設において、仮想空間内での生活を営んでいる。
だが、ごく僅かではあったが地球連合軍と戦う事を望んだ魔法少女がいた。沙々も、そんな魔法少女の一人であった。
もちろん、戦う事を望んだとは言え経験不足は否めない。今この場においても、それが露見する結果となってしまった事を沙々は苦々しくも感じているのだった。

それでも全体として見れば、優れた練度を誇る魔法少女隊である。
多少の損害は見受けられたが、それでも誰一人犠牲になる事なく小惑星帯の脱出に成功するのだった。

ひとまず今回はここまでです。
続きはまた後日にでも。

>>240
色々とお察し下さいとしか言えません、この辺は。

>>241
まったくもって報われないスゥさんです。
今もどこかでひっそりと生かされ続けている事でしょう。

>>242
まともに身体が残っているなら、そういう状態になっているのかもしれませんね。
なにせ魔法少女になった訳ですから、本体はソウルジェムなのです、はい。

>>243
結局いつでももっとも強く恐ろしいのは、魔法や奇跡などではなく
人の業という奴なのかもしれません。

>>253
マクロス系はあまり詳しくないのでわかりません。
が、間違いなく製造者の変態度合いではR戦闘機の圧勝でしょう。



二転三転。さぁ、どうなるか……

しかし沙々やん居たんだな。被験体みたいだから願いも何もないだろうけど、不安になるなぁ

さて、今日も続けて行きましょう。

「おおぉぉぉッ!!」

入り乱れ、激しく交錯しあうR戦闘機郡。片やスピラ基地駐留部隊。そしてそれを単機で迎え撃つ、ほむらが駆るファラウェル・ギフト。
全ての性能において圧倒的な優位を誇るファラウェル・ギフトを相手に、イヴァン達が取ったのは徹底的な包囲戦法だった。
部隊の中でも少数精鋭を選別し、直接ほむらと対峙させる。
残ったものはほむらの突出を遮るように周囲を旋回し、隙を狙って攻撃を仕掛けていた。

開戦直後、その混乱を狙って旗艦への突破を図った機体は即座にほむらに目をつけられ、執拗な攻撃を受けて沈黙した。
その際、ほむらも少なからぬ損傷を受けはしたが、ラストダンサーから引き継いだ高い継戦能力を持つファラウェル・ギフトは、未だにその戦闘能力を失ってはいなかった。

そして今もまた、無数に放たれた波動とレーザーの雨を、常軌を逸した機動で回避し続けていた。
さしものほむらも、これだけ徹底した包囲を受ければ、反撃に転じる余裕は皆無。だが問題はなかった。
ここで耐え続けていれば、必ず仲間が救援に駆けつけてくれるはずなのだから。


「隊長っ!後方から高速で接近する反応があります。数は20!」

「くっ……随分と早いな、大した連中だ」

「あの一機ですらこんだけてこずってるってのに、まだ来やがるのかっ!」

そしてついに、小惑星帯を離脱した魔法少女隊の反応を偵察機が捉えた。じきに交戦圏内へと突入してくる事だろう。
状況は絶望的。もはや、逆転の可能性はゼロ。
全ての望みが絶たれた事を察して、イヴァンは一つ深い吐息を漏らした。

「………ここまで、だな」

「隊長?」

「ここまでだ、もう俺達に勝ち目はない。……これ以上、無駄に犠牲を出す必要はない」

「お前、何言ってんだっ!それじゃあ俺達が今まで何のために……」

当然、ここまでイヴァンと共に戦ってきた者達が、それをすんなり受け入れる訳がない。
恐らく彼もまた、その答えを知っていたのだろう。

「だが、これほどの相手と戦う機会はこれを逃せば二度とあるまい。命の捨て場所としては、これ以上のものはないさ」

後方に、魔法少女隊の機影が映った。投降するのならば今が最後のチャンスだろう。
今を伸ばせば乱戦となり、この戦いは止める事ができなくなる。

「最早これ以上戦いを続ける理由も、意味もない。
 それでも俺は戦う、戦士として死ぬためにだ。お前達が同じ死に方を望むのなら……ついて来い!」

元より望んでいたものは、死んだようにただ生きる事よりも、戦いの果て華々しく散る事。
それを与えられる最良の機会が、最高の相手が今目の前にいる。
だとしたら、もはや迷う理由は何もなかった。そしてそれは、ここまでついて来た者達にとっても同じ事だったのだろう。

イヴァンの声に、続いたのは怒号。
死を賭し死に臨み、そして今死を望んだ戦士達は、文字通りの死に物狂いで前後を塞ぐ魔法少女隊に挑みかかっていくのだった。

「ったく、とんだ無駄足だったよ。さっさと戻ろうぜ、さやか」

決死の脱出行の末、崩壊する基地から辛くも脱出を果たしたさやか杏子は、先行した部隊との合流を果たすため、小惑星帯の脱出を開始した。
だが、その矢先。

「……あたし、やっぱり我慢できないよ」

身の内にふつふつと積もる憤り。今にも弾け飛びそうなそれを抑えるように、静かに身を震わせながらさやかは呟いた。

「一体、何が我慢できないってんだ?さやか」

そんなさやかの心情を知ってか知らずか、杏子は静かに問いかけた。

「あの人、まるで死にたがってるみたいだった。多分今戦ってる人達もそうなんだろうね。
 ……そんなの、あたしは許せないんだ」

「まあ、さやかならそう言うだろうとは思ってたよ。……でも、あたしらに今更何ができる。
 きっともう戦いは始まってる、始まっちまえば、それを止めるのはそう容易な事じゃないぞ」

「分かってるよそんな事っ!でも、どうしてもやりきれないのよ。あんな風に、自分の命を粗末にするような真似
 目の前で見せつけられちゃったらさ」

さやかとて、何も知らない子供ではない。
敵が我が身を省みないような戦い方をしているのなら、それは間違いなく手強い相手となる事も
下手を打てば、自分の仲間が死ぬ事にもなりかねない事は分かっていた。
それでも、そんな風に命を捨てようとしている彼らが許せなくて、けれどそれを止める術も見つけられなくて、板挟みにされた心は揺れていた。

「……で、何か策はあるのか。戦いのど真ん中に飛び込んでいくんだ、考えなしに突っ込むなんてバカのやる事だぜ」

「正直言って、何も思いつかない。下手撃って、取り返しのつかない事になっちゃったらって考えたら……
 どうしていいのか分からなくなっちゃってさ」

実際のところ、さやか自身でさえどうしていいのか分からなかったのだろう。
ただただどうしようもない憤りが込み上げてきて、どうにかなってしまいそうで。
けれど何もできなくて、そんな矛盾した感情が、さやかの中に渦巻いている。

けれど、そんなさやかに投げかけられた言葉は、当のさやかですら予想だにしない言葉だった。

「そっか。よし、じゃあとりあえず行こうぜ。それからどうするかは、その時になって考えてみればいいだろ」

事も無げに、杏子はさらりとそう言ってのけた。その言葉のあまりの気楽ぶりに、かえってさやかの方が慌ててしまって。

「な……あ、あんた自分の言ってる事が分かってんの!?それって、今さっきあんたが言ったバカのやる事って奴だよ」

「知ってるさ。でも、さやかはどうにかしたいって思ってるんだろ。なら、どうにかしてみようぜ
 無駄だったとしても、何もしないよりはよっぽどマシだろ」

「……おっかしいな。あたしの知ってる杏子は、こういう時にはあたしを止めるもんだとばっかり思ってたんだけど」

「止めないさ。お前がそうしたいなら、あたしは止めない。何処までだってお前の味方をしてやる」

「え、ちょっと杏子っ!?」

唐突に告げられた言葉に、さやかは戸惑ってしまった。そんな戸惑いを尻目に、杏子は更に言葉を続けた。

「本当は、もうちょっと早く言ってやりたかった。でも、なかなか機会がなくてね。
 ……さやか、あたしはいつでもお前の味方だ。例えどんだけ無茶な事でも
 あんたがそうした言ってならどこまでだって付き合ってやる。……そう決めたんだ」

茶化すでもなく誤魔化すでもなく、真っ直ぐ真摯に告げられた杏子の告白に、さやかは一瞬我を忘れて酷く赤面した。
それでもすぐに我に帰ると、もう一度確かめるように尋ねるのだった。

「そんな風に言ってもらえるのは、正直めちゃくちゃ嬉しいよ。
 でも……あたしがこれからやろうとしてる事はすっごく無茶な事だし、あたしの我侭でしかないんだよ。
 それでもついてきてくれるの……杏子?」

杏子はその言葉をしっかり受け止めて、大きく一度息を吸い込んで。静かな落ち着いた声で言葉を返すのだった。

「……それでも、あたしはお前と一緒に行く」

僅かな沈黙が二人の間に流れて、そして。

「ありがとう、杏子……じゃあ、行こうっ!」

「ああ、そうと決まれば急がないとなっ!」

二人の機体が灯を宿し、比翼の鳥のように連れあいながら、激戦の地へと向かうのだった。



「にしても、よくこんな自分でバカって言うような話に乗ってきたよね、杏子も」

「ま、お前がバカだって事くらい、とっくにお見通しって事さ」

「なっ!?言ったなぁ~、杏子っ!!」

仲睦まじく、じゃれあいながら。

ひとまず今日はここまでで。

>>258
原作の立ち位置が立ち位置なので、出そうかどうかは若干迷いました。
が、出てきたからには頑張ってもらいましょう。
いい意味か悪い意味かはわかりませんが、頑張ってもらうつもりです。

さやか……どーするつもりなんだか

????「戦いなんてくだらねぇ! 俺の歌を聴け!」

>>267
あんたは現行でクロスあるだろーが!
でもバイドにそれ通じたらすげえな

ここのQBに厨二臭い二つ名をやろう。それは”静かなるオディオ孕みし魔法の使者”だ

後ろでは星が 大 爆 発 なのに楽しそうだなww>仲睦まじく、じゃれあいながら。

ようやく少しずつこっちにも春の足音が近づいてきました。
でもこの時期の雨は普通に冷たくてしんどいですね。

では、今日の投下と行きましょう。

「……はい、先程作戦開始の連絡が入りました。恐らく戦闘が始まっている頃でしょう」

ゲイルロズに併設される形で建造された兵器開発基地、ギャルプⅡ。
元は地球連合軍のバイド兵器開発基地であったこの基地では、グランゼーラに接収された今でも
バイド兵器の開発こそ停止されたが、その設備を利用し兵器開発が続けられていた。
そんなギャルプⅡ内部の執務室で、カトー中佐はモニター越しに通信を行っていた。

「そう。ではそろそろ私達も動き出すにはいい頃合ねかしら」

返ってきたのは女の声、歳の頃は若く、下手をすれば少女とも取れる声だった。

「貴方はとてもよい働きをしてくれましたわ、これで間違いなく、彼女達に引導を渡す事ができるでしょう」

その声の主は酷く機嫌がいいようで、声にまで喜色が滲んでいた。
一方その声を受けるカトーの表情は、まるで呆けてでもいるかのような無表情だった。

「次の指令は追って知らせますわ。それまでは、引き続き従順な役を演じて待っていなさい……わかりましたわね?」

「……はい、お任せください」

応える声も抑揚のないもので、まるで何者かに操られてでもいるかのように、カトーは静かに頷くのだった。

「さあ、それでは幕を開けましょう。長らく宇宙を賑わせた、魔法少女隊の最後の演目を」

声は高らかにそう宣言し、そして――。

「面白い話だ、是非とも私にもお聞かせ願いたいな」

執務室の扉が開くと同時に、その声が部屋の中へと転がりこんだ。

「あら、貴方は……?」

その闖入者に声が問う。
一方のカトーと言えば、この非常時にも関わらず振り向こうともせず、呆然とモニターを眺めているばかりだった。

部屋の中へと部下を引き連れ現れたのは、ギャルプⅡの最高責任者にして
カトーの直属の上司である、キースン少将だった。
今までの会話の内容も既に把握していたのだろう、物腰こそ柔らかであるが
カトーを見るキースンの視線は冷ややかなもので。

「度重なる私的な秘匿回線の使用、ある程度察しは付いていたが……悪い予想は当たるものだね」

キースンは、この状況において尚動く事のないカトーを一瞥し。
それから興味深げにキースンを見つめるモニター越しの女性の姿を睨みつけると。

「グランゼーラ革命軍兵器開発部門最高責任者、キースン少将だ。初めまして、お嬢さん。
 せめてお名前くらいはお聞かせ願えますか?」

口調は努めて柔らかに、けれどその下には警戒心と敵意をありありと滲ませながら
モニター越しの女性に向けてキースンが言った。

「ええ、初めまして。キースン少将。私の名はカーリー。
 詳しい事は申し上げられませんが……勿論、貴方達の敵ですわ」

酷く楽しげにカーリーはそう応えると、優雅に一つ会釈して見せた。

彼女は地球至上主義を、ひいては地球連合軍そのものを影で操る黒幕のような存在である。
そしてその手は、グランゼーラの内部にまでも及んでいたのだ。
グランゼーラの指導者の一人であるキースンの腹心、カトーは地球連合軍と内通していた。
この状況を見るに、それは最早火を見るよりも明らかだった。

キースンがその事実を知るに至ったのは、先の資源の確保を議題とした会議の時であった。
その時にカトーが提示した、地球連合軍が捨てた基地からの資源の回収という案である。
だがキースンはこの時、この基地の存在を知らされてすらいなかったのだ。
その場ですぐに問いただす事もできた。だがキースンはそれをせず、カトーの独断の裏に潜む意図を探った。
その目論見は見事に当たり、今こうして内通の現場に居合わせる事に成功したのである。

とは言え、腹心と思っていた部下が敵と内通していたのである。表情にこそ出さないが、その衝撃は小さくない。

「そうですか……という事は、基地の話も資源の話も全ては罠だった、という事でしょうか?」

「察しが早くて助かりますわ。そう、彼女達は少々やりすぎました。だから、ここでご退場頂く事にしましたの」

続く言葉に、最早一刻の猶予もない事を知る。
今この瞬間にも、魔法少女隊が窮地に陥っているのかもしれないのだ。
確かに魔法少女隊は、グランゼーラの中でも異色中の異色である。
それでもその戦力は折り紙つきで、それを失う事はグランゼーラにとって大きな損失である事は
キースンも十分に理解していた。

「カトー中佐を捕らえなさい。それと、至急イージス大将にもこの事を伝えてください」

元より隠すつもりは無かったのだろうが、必要な情報は引き出す事ができた。
最早これ以上、彼女との話に付き合う理由はなかった。
すぐさまカトーを捕らえようと、キースンの部下達が部屋の中に踏み込んだ。

「……どうやらここまでのようね。ご苦労様、貴方の役目はここまでよ、よくやってくれました」

それを見て、カーリーはカトーにそう囁いた。
その言葉こそが引き金だったのだろう、カトーは急に身を翻すと懐から銃を取り出した。

「動かないで下さい、抵抗しても無駄です!」

その動きを見て、すぐさま周りの部下達も銃口をカトーに突きつけた。
だが、そんな動きすら意に介さず、カトーはその銃口を自らの喉元に突きつけ、最大出力のままその引き金を引いた。

一瞬の閃光と、いくつかの呻き声が響いて。その全てが収まった後には。
首から上の全てを失い倒れ伏す、カトーの死骸だけが遺されていた。



「くく、くくっ……あはははははっ!!」

その様を見届けて、カーリーは高らかに哄笑し。

「さあ、それでは私も舞台がありますので、これでお暇しますわ。
 またいずれ相見える時まで……ごきげんよう。あはは、あはははははっ!」

その言葉だけを残して、モニターに映った映像が掻き消えてしまった。

「まったく……随分と手際のいい事です」

腹心の裏切りと喪失に、胃の奥から嫌なものがこみ上げて来るのをぐっと堪えて、キースンは部下に指示を出した。

「事態は一刻を争います。貴方達はカトー中佐の遺体を回収してください。
 彼の様子は尋常ではありませんでした、何らかの処置を受けていた可能性があります。
 私はこのままイージス大将の元に向かいます、何か分かれば連絡してください」

それでも今は、やるべき事をやらなければならない。悲嘆に暮れている暇はない。
キースンは部下達にそういい残し、一人足早にイージスの下へと向かうのだった。

というわけで、全て掌の上、という事でした。
果たして彼女達はこの局面を無事切り抜ける事ができるのか、待て次号という事で。

>>266
具体的なことは何も考えてはいないようです。
それでもなんとかしようとして、なんとかするのが彼女だったりもします。

>>267
そう言えば7だけは全話見てました。
相当ぶっ飛んでましたが、とても面白い作品でしたね。

>>268
言葉は通じなくとも、歌が通じる事もあるかもしれません。
そんな事をしていると、その内歌うバイドとかも出てきそうですが。

>>269
そんな大仰な名前が似合っていたのも今は昔。
今のあいつは完全に抜け殻のような存在です。
それでもただ無為に生きるのは堪えるのか、拾ってもらった義理からか、彼女に協力しているわけです。

>>270
ほぼ無人の小惑星ですしね。
同じような星は土星の輪の中には山ほどあるのです、きっと。

乙!
保護されたっつー娘達の平和な仮想世界も見てみたいもんだな

さて、では今日も投下と行きましょう。

スピラ駐留部隊と魔法少女隊との戦端が開かれてより幾許かの時が流れた。
当然と言うべきか、数で勝る魔法少女隊が始終有利に戦況を進めていた。
だが、それでもまだ決着は付いていない。スピラ駐留部隊もまた死力を尽くして抵抗を続けていた。

あくまで魔法少女隊にとって、この作戦は数ある任務の内の一つに過ぎない。
それ故に当然、こんな所で命を落とすつもりはない。
それに対して、スピラ駐留部隊はまさしく死に物狂いでかかってきている。最早命などいらないとばかりの猛進ぶりである。
当然魔法少女隊とて、油断や慢心があるわけではない。それでも気迫の差は歴然だった。

更にもう一つ、この戦況を一方的なものとさせない理由があった。それはフォースの存在である。
魔法少女隊はグランゼーラに所属する以上、バイド兵器であるフォースを用いる事はない。
人工フォースの研究、製造も進められているが、それも未だ十分な数が揃っているとも言いがたかった。
一方スピラ基地は、孤立無援の状況にあってもR戦闘機及びフォースを維持していた。
フォース無しでも戦えるR戦闘機の開発を進めているグランゼーラとは言え
やはりフォースを持つ機体を相手どるとあっては、若干の不利は否めなかった。

これらの要因が重なり合って、戦況は半ば硬直していた。
勿論魔法少女隊にはその状況を打破する術を持ち合わせている。最強のR戦闘機を駆るかつての英雄、ほむらである。

だが、それすらも。

「ぐ……まだだ、この程度で……終われるものかぁぁっ!!」

イヴァンがたった一人でその動きを抑えていた。
その唇から血を吐きながら、それでもその気迫を衰えさせる事なく戦闘を続けている。
ほむらが相手だというのに、それでもどうにか食い下がっているのである。

相手が相手である、意地や根性でどうにかなるものではない。
イヴァンは、自らの機体のザイオング慣性制御装置のリミッターを解除していたのである。
これにより、彼の機体は通常のR戦闘機以上の機動性を得た。
それは十分にほむらに太刀打ちし得るものだった。だがその代償は、刻一刻とイヴァンの身体を蝕んでいた。

「どこまでも追い縋ってくる……厄介ね」

その執念には、流石のほむらも些か気圧されているようではあった。
とは言え我が身を犠牲にするこの攻勢が、いつまでも持つわけもない。
今しばらく相手の攻撃をいなし続けていれば、やがて自滅する事は必須であった。

そしてそれは、他の魔法少女達も同じ事である。いかに気迫で圧倒していたとは言え、そこは歴戦の魔法少女達である。
互いに連携しあい、被害を最小限に食い止めつつ確実に一機、また一機とスピラ駐留部隊の数を減らしていくのだった。
これ以上の敵の増援はありえない。だとすれば、今もっとも重要な事は決着を急ぐ事よりも、可能な限り被害を抑えて勝利する事なのだ。
だからこそ、戦況は硬直の具合を見せつつも、じわりじわりとその趨勢を魔法少女隊の元へと傾けつつあった。

何かしら不慮の出来事でもない限り、このままじわじわと趨勢は傾き続け
どこかで堰を切ったように決着へと雪崩れ込んで行く事だろう。

そしてその機会が、意外にも早く訪れた。

弾幕を放ちながらフォースが迫り、その軌道の隙を塞ぐようにして
イヴァンが駆るR-9DV2、ノーザン・ライツから無数の光子バルカン弾が放たれた。

密度を上げて、最早面というべき体を為して迫る弾幕をぎりぎりまで引き付けて、僅かな隙間を見つけてすり抜ける。
そこでほむらは機体を180度旋回し、引き戻されようとしていたフォースに向けて、低チャージのギガ波動砲を叩き込んだ。
ギガ波動砲とて、低チャージではフォースの機能を停止させるには不十分。
それでも打ち付けられた高エネルギーの波動粒子が、コントロールロッドに伝えられるはずの命令を一時的に阻害した。

それにより背後から迫るフォースの動きを止め、更に再び反転。
せめてもの迎撃にと放たれたレールガンは意にも介さずすり抜けて、二機が姿が交差する。

直後、ノーザン・ライツの後部で小規模の爆発が発生した。

「推進部をやられた……くそ、まだだッ!」

たちまちの内にノーザン・ライツのコクピットに、無数の警報が発生する。
推進部に被弾、機動性の低下。致命的な情報が次々に伝えられる。
だがイヴァンは、破損した推進部への出力をカットし
残った推進部に全ての出力をバイパスする事で尚も戦闘を続行しようと足掻き続けた。

だが当然、その隙を見逃すほむらではない。
動きが鈍ったノーザン・ライツにとどめを刺すべく、双発のミサイルが放たれた。
推進部をやられたノーザン・ライツではそれが避けられるはずもなく。
間違いなくそれは着弾し、その機体を爆炎の中に沈めるはずだった。

だが、それは一筋の青い閃光によって遮られた。
その青い光はまず一基のミサイルを貫き炸裂させ。
さらにそのまま軌道を変え、もう一基のミサイルまでもを寸断するのだった。

「ちょっと待ったぁぁぁっ!!」

それはさやかの駆るフォルテッシモが放ったレーザーで
アンカーフォースが放つターミネイトγに似た性質を持つ、XPSレーザーFであった。

「さやか!?一体どういうつもり?」

さやかの到着自体は予想できたものの、その行為は不可解で、ほむらは言葉を荒げてさやかに問い詰めた。

「ごめん、ほむら。でも、やっぱりあたしはこのまま黙って戦うなんてできないんだ」

「さやか、貴女一体何を考えているの。……いいえ、やっぱり聞くまでもないわ」

「あー……やっぱり分かっちゃう?」

「お前は分かりやすい奴だからな、そりゃあ付き合いの長いほむらなら分かるだろ」

そんなさやかと共に、杏子も姿を現して。

「無事でなによりよ、二人とも。……それで、この状況をどう収めるつもりなのかしら、さやか?」

正直なところほむらとて、人間同士の戦いに少なからぬ躊躇いがなかったわけではない。
それがさやかであれば尚更であろう事は分かっていた。
それでも、ここまで直接的に手を出してくるとは思っていなかったようで
驚き半ば呆れつつ、ほむらはさやかの言葉を待った。

「えっと……実を言うと、何も考えてないんだ。……でも、とりあえず話はしてみるつもり、何とかしてみるよ」

そしてそのさやかの答えに、ほむらはさらに呆れの度合いを増して、それでも。

「そういう事なら話は早いわ。そこにいるのが敵のリーダーよ。
 ……話が通じるとは思えないけれど、試してみたらどうかしら」

「おっと、そりゃラッキー。早速行ってみようじゃないの」

それでも結局止めはせず、ノーザン・ライツの元へと向かうさやかを呆れと不安の入り混じった表情で見送るのだった。




魔法少女隊R-TYPEs―The trifles tales― 第三話
                        『Lost platoon』
                           ―終―

【次回予告】

策謀が渦巻き、閃光煌く宇宙空間で、彼女の戦いが始まりました。

「ガキがっ!寝言を言うなっ!」

「何度だって言ってやる!私は、絶対に諦めてなんてやらない!」

意地と誇りと、幼く強く、真っ直ぐな思いが激突します。

「ならば、どうすればよかったというんだ!答えられるのか、貴様にっ!!」

「……まったく、どこかの誰かさんを見てるようで、嫌気が差してくるね」

けれど、一つの戦いの終結は、また新たな戦いの序章でしかありませんでした。

「初めまして、そして……さようなら」

「っ!回頭急げ、奴の射線から離れろっ!」

振り下ろされた残酷な刃の前に、一つ、また一つと命の灯が消えるのでした。

「リミッターを外すわ、許可を」

「何だと……こいつらは」

次回、魔法少女隊R-TYPEs―The trifles tales― 第四話
                            『blades of fury』

これは、数多の魂を刈り取る、呪いを帯びた剣です。

一旦ここで一区切り、といった感じでしょうか。
次回からはいよいよ色々とお話も動き出すはずです。

>>277
少なくとも不自由な暮らしはしていないはずです。
とは言え、電脳上の世界だけでの自由ではありますが。
もしかしたら、その内そこにも話が向くこともあるかもしれませんね。

一応生存報告を、色々ありまして執筆してられる状況じゃありませんでした。
今も割と切羽詰ってはいますが、少しずつ余裕は出てきているので、近い内には再開したいかと思います。

では、本日はこれにて。

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