シンジ「父さん、来週三者面談なんだけど」ゲンドウ「無理だ」(168)

シンジ「……」

ゲンドウ「仕事だ」

シンジ「そう……ですよね。すいません」

ゲンドウ「それだけか?」

シンジ「はい」

ゲンドウ「ではな」

シンジ(父さんが来てくれるわけないじゃないか……僕は何を期待して……。また、ミサトさんに頼もう……)

ゲンドウ(三者面談か……ユイに話しておいたほうがいいか……)

格納庫

ゲンドウ「ユイ」

初号機「……」

ゲンドウ「来週、シンジの通う学校で三者面談があるらしい。言ってくれるか?」

初号機「……」

ゲンドウ「……」

初号機「……」コクッ

ゲンドウ「助かる」

初号機「……」

冬月「碇、ここにいたか」

ゲンドウ「どうした?」

冬月「予算の件なんだが―――」

初号機「……」

シンジ「父さん、来週三者面談なんだけど」

ゲンドウ「」

シンジ「……」

ゲンドウ「」

シンジ「すいません」

ゲンドウ「」

シンジ「」

ゲンドウ「」

シンジ(父さんが来てくれるわけないじゃないか……僕は何を期待して……。また、ミサトさんに頼もう……)

ゲンドウ()

葛城宅

ミサト「三者面談かぁ、いいわよ」

シンジ「いつもすいません」

ミサト「気にしないの」

シンジ「……」

アスカ「ミサトー。あたしの面談も付き合ってよねー」

ミサト「はいはい。わかってるって」

アスカ「シンジの次だから」

ミサト「んー」

シンジ「……」

ミサト「本当は司令に来て欲しかった?」

シンジ「そんなこと……ありません……」

ミサト「そう……」

格納庫

ゲンドウ「」

初号機「……」

ゲンドウ「」

初号機「……」

ゲンドウ「」

初号機「……」コクッ

ゲンドウ「」

初号機「……」

冬月「碇、ここにいたか」

ゲンドウ「」

冬月「予算の件なんだが―――」

初号機「……」

レイ「司令」

ゲンドウ「どうした、レイ?」

レイ「三者面談があるのですけど」

ゲンドウ「ああ……そうか」

レイ「……」

ゲンドウ「……なんだ?」

レイ「いえ」

ゲンドウ「仕事だ」

レイ「分かっています」

ゲンドウ「……すまない」

レイ「いえ」

ゲンドウ「……」

翌日 ネルフ本部

マヤ「初号機起動!!」

リツコ「どういうこと?!」

マヤ「わかりません!!」

日向「パイロットは乗っていません!!無人で動いています!!!」

リツコ「ありえないわ!」

ゲンドウ「どうした?」

マヤ「初号機が勝手に起動を!!」

ゲンドウ「放っておけ」

リツコ「しかし!!」

ゲンドウ「すぐに帰ってくる」

リツコ「……」

青葉「初号機!!天井を突き破って外へ出ます!!」

マヤ「ケーブルは接続されていません!!暴走です!!」

リツコ「何が起こっているの……!?」

第三新東京市

初号機「……」ズンズン

初号機「……」キョロキョロ

初号機「……」

ミサト「状況は!!」

マヤ『初号機、市街を移動中!!』

ミサト「確認するけど、誰も乗ってないのね!?」

マヤ『はい!!』

ミサト「住民の避難は?!」

日向『75%まで完了しています!!』

ゲンドウ『葛城三佐』

ミサト「は、はい!!」

ゲンドウ『そう神経質になることはない』

ミサト「しかし、初号機の暴走は看過できないと思いますが」

ゲンドウ『気になるなら後を追え。ただし、邪魔はしないほうがいい』

ミサト「……」

初号機「……」ズンズン

ミサト「進路予想は?」

マヤ『このまま進むと……学校があります』

ミサト「学校?」

マヤ『シンジくんの通う学校です』

ミサト「……まさか」

初号機「……」ズンズン

ミサト「……」トゥルルル

シンジ『はい。シンジです』

ミサト「シンジくん?今、学校でしょ?窓の外を見てくれる?」

シンジ『初号機が歩いてますね。なんですか、あれ?』

ミサト「多分、そっちに行くと思うから、よろしく」

シンジ『わかりました』

ミサト「暴れるようなことはないだろうけど……もう少し様子を見ておきましょうか」

学校

ケンスケ「トウジ!!外!!外!!」

トウジ「エヴェンゲリオンか?!こっちにくるぞ?!」

ヒカリ「ちょっと、男子!!もうすぐ授業始まるんだから、静かに!!」

アスカ「……使徒でも出たの?」

レイ「いいえ。あれは無人だそうよ」

アスカ「なんで、こっち来てんのよ」

レイ「現在、状況確認中だから」

アスカ「……」

初号機「……」ズンズン

シンジ「エヴァが来る……」

ケンスケ「シンジ、何かのイベント?もしかしてエヴァ体験搭乗とか?!」

シンジ「それはないと思うけど」

教師「ほらー、席につけー」

ヒカリ「きりーつ」

初号機「……」ジーッ

教師「で、あるかして―――」

レイ「……」チラッ

初号機「……」ジーッ

レイ「……」

アスカ(何なのよ……気が散って仕方がないんだけど……)

シンジ(なんか、僕を見てるような気がする……)

初号機「……」ジーッ

ケンスケ「(ずっとこっち見てるよ。新しいパイロットでも選んでるのかな?)」

トウジ「(それ、エヴァンゲリオン自身がやるんかいな。難儀やなぁ)」

レイ「……」ナデナデ

初号機「……」ジーッ

レイ「……暑くないの?」

初号機「……」コクッ

キーンコーンカーンコーン

初号機「……!」ビクッ

アスカ「ちょっと!!」

初号機「……」

アスカ「邪魔よ!!授業に集中できないでしょ!!」

初号機「……」

シンジ「アスカ、別にいいじゃないか。見てるだけだし」

アスカ「こんなでっかい顔が窓の外にあるだけで、邪魔よ」

初号機「……」

レイ「どうして、ここまで来たのかしら」

シンジ「えっと……何か用事?」

初号機「……」

ケンスケ「どうも初めまして!!自分は相田ケンスケっていいます!!」

初号機「……」

トウジ「反応あらへんな。聞こえとんのか?」

アスカ「ミサトはどうしてるわけ?ミサトの管轄じゃないの、こういうのは」

レイ「さあ……」

シンジ「……」

初号機「……」ズンズン

シンジ「あ……」

ケンスケ「帰っちゃうんですか?!」

アスカ「……」

レイ「葛城三佐。初号機は移動を開始しました」

ミサト『見えてるわ。とりあえず、目的は不明のままね』

レイ「はい。何も言ってくれませんでしたから」

ミサト『みんなは学業に専念してちょーだい。またねん』

レイ「お疲れ様です」

シンジ「何だったんだろう……」

アスカ「どーでもいいわよ」

ヒカリ「授業中、ずっと睨んできてたから怖かった……」

ネルフ本部

マヤ「初号機、帰ってきました」

日向「損傷箇所はありません」

リツコ「暴走の原因は?」

マヤ「不明です。ダミーシステムも使っていないのに……」

リツコ「……」

ゲンドウ「……」

冬月「やはり、ユイくんは真面目だな……」

ゲンドウ「ああ……問題はない」

マヤ「初号機、固定します!」

リツコ「司令……あの……」

ゲンドウ「……」

リツコ「なんでもありません……」

格納庫

初号機「……」チラッ

零号機「……」

弐号機「……」

初号機「オォォ」

零号機「オォォ……」

弐号機「ォォォ……」

初号機「グォ」

零号機「……」

弐号機「グォォ」

マヤ「……なんか、エヴァが唸ってますけど」

リツコ「たまにあるのよね……」

マヤ「これも原因はわかっていないんですか?」

リツコ「エヴァ同士の共鳴ではないかって言われているけど、まだなんとも」

マヤ「気味が悪いですね」

葛城宅

シンジ「ミサトさん、エヴァの暴走の件は何か分かったんですか?」

ミサト「ううん。何も」

アスカ「気持ち悪いんだから、なんとかしてよね」

ミサト「はいはい」

シンジ「そうだ、ミサトさん。三者面談の時間なんですけど」

ミサト「はいはい?」

シンジ「4時かららしいです」

ミサト「1600時ね」

アスカ「あたしはその20分後だからね」

ミサト「二人とも、私はダメ出しを聞く気はないからね。気持ちのいい三者面談に期待するわ」

アスカ「どういう意味?」

ミサト「終始賛美だけでいいってことよ」

アスカ「あっそ」

シンジ「あはは」

数日後 ネルフ本部

ミサト「え?あの……どういうことですか?」

ゲンドウ「葛城三佐がエヴァパイロットの三者面談に参加することを許可しないと言った」

ミサト「ど、どうしてですか?!」

ゲンドウ「他に適任者がいるからだ」

ミサト「誰ですか?!」

ゲンドウ「……」

冬月「以上だ。下がりなさい」

ミサト「司令。納得の行く回答をお願いします」

ゲンドウ「……」

ミサト「司令!!」

ゲンドウ「その日になればわかる」

ミサト「そんな……」

葛城宅

シンジ「そんな?!」

ミサト「ごめんなさいね」

アスカ「……ま、別にいいけど。三者面談に出なくてラッキー」

シンジ「アスカ、それはできないって言ってたじゃないか」

アスカ「でも、保護者がいないんじゃ、どうしようもないでしょ?」

シンジ「そうだけど……」

ミサト「司令は適任者がいるって言っていたけどね」

シンジ「適任者……?」

アスカ「あたしにも?」

ミサト「多分……」

アスカ「いるわけないわよ……」

シンジ「アスカ……」

アスカ「だって……あたしのママは……もう……」

ミサト(こりゃ、私も当日は学校に行ったほうがいいわね)

面談日当日 教室

シンジ「……そろそろか」

シンジ「……」

ズン……ズン……ズン……

シンジ「え?」

初号機「……」ズンズンズン

弐号機「……」ズンズンズン

零号機「……」ズンズンズン

シンジ「……」

初号機「……」ジーッ

弐号機「……」キョロキョロ

零号機「……」

シンジ「え……え……?」

担任「碇。いるか?」

シンジ「あ、はい!」

担任「あれ、親御さんはまだか?」

シンジ「えっと……それが……」

初号機「オォォォォォォ!!!!!!」

担任「!?」

シンジ「どうしたの!?」

初号機「……」

シンジ「……」

担任「そうか。なら、二人ではじめ―――」

初号機「グォォォォォ!!!!!!」

担任「……」

シンジ「もう!邪魔しないでよ!!!」

初号機「オォォォォ!!!!」

シンジ「こっちは大事な面談なんだから!!!黙っててよ!!」

初号機「オォォォォォ!!!!!」

シンジ「なんで……」

担任「もしかして、親御さん?」

シンジ「え?違いますよ。エヴァは―――」

初号機「……」ジーッ

シンジ「……もしかして、ミサトさんの代わりって……」

初号機「……」コクコク

シンジ「……」

担任「なんだ。そういうことなら、もっと窓際に行こうか」

シンジ「いいんですか?」

担任「仕方ないだろ?」

シンジ「じゃあ……お願いします」

初号機「グァ」

担任「では、えーと……碇シンジくんはですね……」

初号機「……」

担任「これといって問題はありません。ただ少し内向的なところがあるようにも思えますね」

初号機「グァ」

担任「まあ、過ぎるってわけでもないです。その証拠に友人が多いですし」

初号機「オォ」

シンジ「そ、そんなこと」

担任「あの綾波さんとも打ち解けているのはすごいと思うし」

初号機「グァ」

担任「転校してきたときは少し心配でしたけど、今は談笑しているときのほうが多いです」

初号機「オォォ」

シンジ「ありがとうございます」

担任「そういえば、惣流さんとも仲いいよな」

シンジ「それは……同じエヴァのパイロットだから……」

担任「いや、でも、傍から見ていると気があってるんだろうなって思う」

シンジ「アスカは僕のこと、嫌ってますから」

初号機「オォォ」

担任「そんなことないない」

弐号機「オォォ」ガシィィン

シンジ「なに?!」

担任「どうかされましたか?」

弐号機「オォォ?」キョロキョロ

シンジ「どうしたの?」

初号機「……」ドンッ

弐号機「!?」

初号機「グァァ」

弐号機「……」

担任「あの……落ち着いてください」

シンジ「どうしたの?!」

初号機「……」

弐号機「……」

シンジ「やめてよ……怖いよ……」

初号機「……」

弐号機「……」

担任「えっと……惣流さんがなにか?」

弐号機「オォォ」

シンジ「もしかしてアスカの……?」

弐号機「……」コクコク

担任「ああ。惣流さんの話題が出たから気になったのですか?」

弐号機「オォォ」

シンジ「なんだ……びっくりした」

初号機「グォォ」

弐号機「オォォ」

担任「でも、碇シンジくんは優しい子ですからね、惣流さんとも綾波さんとも仲良くなれるのは分かります」

シンジ「そんな……こと……」

弐号機「グォォォォ!!!!!」

シンジ「え!?今度はどうしたの?!」

初号機「オォォォォ!!!!」ガキィィン

弐号機「オオォォォ!!!!」ガキィィン

担任「これはいけない!!どうされたのですか?!」

シンジ「アスカー!!アスカ!!!」

アスカ「なによ?って、どうして弐号機と初号機が取っ組み合いしてるわけぇ?!」

シンジ「分からないよ!!とにかくアスカからも何か言ってよ!!」

アスカ「なにかって……何を言えば……」

初号機「オォォォ!!!」ドゴォ!!!

弐号機「オォォォ!!!」バキィ!!

零号機「……」バキュゥゥン!!!

シンジ「わっ?!」

アスカ「ちょっと!!何、銃器もってきてるのよ?!使徒もいないのにぃ!!」

初号機「……」

弐号機「……」

零号機「オォ」

初号機「……」コクッ

弐号機「……」コクッ

シンジ「びっくりした……」

アスカ「なにがあったの?」

シンジ「よくわからないんだ」

アスカ「……」

弐号機「グォォ♪」

アスカ「何よ……あ!ちょっと!!窓から手を突っ込もうとしないで!!壊れるから!!」

弐号機「オォ……」

担任「とにかく落ち着きましょう。惣流さんも入ってきたし、一緒に面談をしようか」

アスカ「はいはい」

シンジ「もうアスカ」

初号機「……」ジーッ

弐号機「……」ジーッ

アスカ(気になる……)

担任「惣流さんは転校当初、成績が結構危うかったけど、最近はもう何も心配はないですね」

アスカ「初めは日本語になれてなかっただけだから……」

担任「素行のほうもこれと言って問題はないですね。社交的ですし。ただ……」

弐号機「グォ?!」

担任「まあ、その……高圧的な態度を取ることも多くて、それでよくトラブルも……」

弐号機「オォォ?!」

アスカ「ふんっ。別に。言いたいことがあるから言ってるだけよ」

シンジ「アスカのそういうところ、よくないと思うよ?」

アスカ「なんですって?」

シンジ「だって……」

アスカ「何よ?もっぺん、言ってみなさいよ」

初号機「オォォ!!」

弐号機「オォォ……」

担当「やめないか、二人とも。親御さんも困っているだろ」

アスカ「親じゃないわよ!!」

シンジ「まぁ……それはそうかな……」

担任「そうかな。心配している様は母親のようにも思えるが……」

アスカ「そんなわけないでしょ……だって……あたしのママは……」

弐号機「グォォ……」

シンジ「アスカ……」

担任「あ、でも、その惣流さんを上手くコントロールしているのが、碇くんなんですよ」

初号機「オォ!」

弐号機「グォォ……」

アスカ「ちょっと!!そんなわけないでしょ?!」

シンジ「そうですよ。僕は別に……」

担任「でも、惣流さんに口で喧嘩できるのは碇くんしかいないと思うんだけどな。鈴原くんでも、途中で逃げるぐらいなのに」

シンジ「それは……単純にアスカに慣れたからで」

アスカ「ペットみたいに言うな……」

初号機「オォォ」

弐号機「……」

シンジ「そんなつもりはないけど」

アスカ「ふんっ……バカシンジのくせに」

担任「いや……こうしてみていると、お似合いのカップルって感じがするんですけどね……」

シンジ「なっ!?」

アスカ「はぁ!?」

初号機「オォォォォ!!!!!」

弐号機「グォォォ!!!!!」

シンジ「あ、また!!」

アスカ「弐号機!!止まって!!」

初号機「オォォォォ!!!!」ガキィィン

弐号機「グォォォ!!!!」ガキィィン

シンジ「ああ……大変だ……」ガクガク

アスカ「零号機!!仕事しなさいよ!!!」

零号機「……」

アスカ「早く、この二体を止めて!!」

零号機「……」コクッ

零号機「……」バキュゥゥゥン!!!!

零号機「オォォ」

初号機「オ―――」

零号機「……」バキュゥゥン!!

初号機「……」ビクッ

零号機「グォォ」

初号機「……」コクッ

弐号機「グァ」

零号機「……」

アスカ「はぁ……なんなの……?」

シンジ「分からないよ……」

担任「落ち着いたようですね。では、何か質問はありますか?」

アスカ「特にな―――」

弐号機「グァ!」バッ

担任「はい。惣流さんの親御さん」

アスカ「なんで……?」

弐号機「オォォォ?」

担任「……」

弐号機「グォォ……?ォォォ?」

担任「惣流さん、通訳を」

アスカ「唸ってるだけにしか聞こえないけど。シンジ、わかる?」

シンジ「分かるわけないよ」

弐号機「……」ジーッ

担任「エヴァリンガルとかネルフは作ってないのか?」

シンジ「生憎と」

担任「そうか……困ったな……」

初号機「オォォ」バッ

担任「碇くんの親御さんも何か質問が?」

初号機「オォ?オォォォ?」

担任「碇くん、なんて言ってる?」

シンジ「だから、分かりません」

アスカ「でも、エヴァって喋るのね」

シンジ「みたいだね。僕たちには唸ってるか吼えてるようにしか聞こえないけど」

アスカ「乗ってるうちに分かるようになるのかしら」

シンジ「どうだろう……」

担任「よし。きっと親御さんはいじめについて聞きたいというとこにしよう」

シンジ「そうなの?」

弐号機「……」コクコク

初号機「……」コクコク

担任「やっぱり、二人のことが心配なんだな」

アスカ「どうして……そこまで……」

シンジ「……」

担任「二人はいじめられていると思ったことはあるか?」

シンジ「アスカに……毎日……」

アスカ「バカ!!今、そんな冗談を言ったら―――」

初号機「……」パキンッ

シンジ「あぁ!!ごめん!!」

初号機「オォォォォォォォォォ!!!!!!!!」

弐号機「……!!」ビクッ

零号機「……」

アスカ「弐号機!!にげてぇ!!!」

弐号機「……」ダダダッ

初号機「オォォォォ!!!!!」ズンッズンッズンッ

零号機「……」トコトコ

シンジ「行っちゃった……」

担任「後を追ったほうがいいんじゃ……」

アスカ「行くわよ!!シンジ!!」

シンジ「う、うん!!先生、失礼します!!」

担任「車に気をつけるんだぞ」

シンジ「はい!!さようなら!!」

シンジ「でも、どうしよう!!追いつけるわけ……」

アスカ「こっちよ」

シンジ「え?」

アスカ「これでいいわね。ほら、シンジ」

シンジ「自転車で追いかけるの?!」

アスカ「それしかないでしょ!」

シンジ「わかったよ……。よっと」グッ

アスカ「ほら、しっかり運転しなさいよ?」ギュッ

シンジ「分かってるよ」

アスカ「とりあえず、ミサトにも連絡をしておいたほうがいいわね」

シンジ「いくよ、アスカ」

アスカ「いつでも」

シンジ「ふっ!!」ググッ

アスカ「弐号機……無事でいてよね……」

弐号機「……!!」ザッ

初号機「オォォォォォォ……!!!」

零号機「……」

シンジ「はぁ……はぁ……」

アスカ「ヘロー。ミサト?」

ミサト『アスカ?!今どこにいるの?!』

アスカ「今、エヴァを追いかけてるところよ」

ミサト『なら、そのまま追いかけて』

アスカ「了解」

休憩

ネルフ本部

マヤ「エヴァ初号機と弐号機が臨戦態勢に入りました!!」

青葉「初号機は暴走しています!!」

日向「厳密には3機とも暴走状態ですが、初号機は頭一つ抜きん出て暴走しています!!」

冬月「どうする、碇?」

ゲンドウ「ユイ……学校でなにがあった……」

冬月「息子の成績が想像以上に低かったのではないか?」

ゲンドウ「……あれを使う」

冬月「あれか?しかし、あれはまだ試作段階で……」

ゲンドウ「構わん」

冬月「どうなってもしらんぞ……」

初号機『オォォォォ!!!!』ガブッ!!!!

弐号機『グォォォォ!!!!!』

零号機『……』

マヤ「初号機が弐号機の右腕に噛み付きました!!!零号機は傍観しています!!!」

シンジ「ああ!!初号機が!!」

アスカ「なにやってんのよ!!」

シンジ「僕の所為じゃないだろ!?」

アスカ「一緒よ!!」

ミサト『アスカ!!聞こえる?!』

アスカ「感度良好よ。なに?」

ミサト『今、レイを車に乗せてそちらに向かっているから、ポイントBで落ち合いましょ』

アスカ「了解」

シンジ「ミサトさん!!エヴァはどうなっているんですか!?」

ミサト『わからないわ。だから、確かめに行くの』

シンジ「エヴァ……」

ミサト『……それと伝えておくことがあるわ。貴方達に』

アスカ「なによ?」

シンジ「ミサトさん……?」

ミサト『実は―――』

初号機「オォォォォォ!!!!」ガルルル

弐号機「……」オロオロ

零号機「……」

ゲンドウ『エヴァリンガルシステム、起動』

マヤ『エヴァリンガルシステム起動します!!』

冬月『神と対話するために作られたエヴァリンガル……ここで使うことになるとはな……』

ゲンドウ『今、共倒れさせるわけにはいかん』

マヤ『エヴァ3機の音声、傍受成功!!』

ゲンドウ『流せ……』

マヤ『はい!!』

初号機『―――どういうことですか、と訊いているのですよ?』

弐号機『だから……何かの間違いです』

零号機『……』

ゲンドウ『ユイ……!!』

冬月『きたか……このときが……!!』

初号機『シンジをいじめているのは、貴方の娘さんですよね?』

弐号機『私のアスカがそんな酷いことをするわけがありません』

初号機『つまり、シンジが嘘を吐いていると言いたいのですか?』

弐号機『そうじゃありません。冷静になりましょう』

初号機『オォォォォォ!!!!!』ガブッ!!!!

弐号機『イタイ!!!噛むのはやめてください!!!』

零号機『……』

初号機『なら……説明してもらいましょうか、キョウコさん?』

弐号機『きっと……あの……アスカなりのコミュニケーションだったに違いありません!!』

初号機『私のシンジはそれをいじめだと受け取った。よくありますよね。いじめている側にその意識がないっていうのは』

弐号機『な……?!』

初号機『そんな言い訳……通じると思っているのオォォォォォ!!!!!!』ガブッ!!!!

弐号機『痛い!!!やめてください!!!!』

ゲンドウ『どうやら、シンジのことで揉めているらしいな……。よし、ユイ。やってしまえ』

マヤ『弐号機!!右腕に深刻なダメージ!!これ以上は危険です!!』

初号機『オォォォ……』

弐号機『腕が……痛い……』

零号機『……』

初号機『許しませんよ……キョウコさん……。あのアスカとかいう子、シンジを誑かして、しかもいじめまで……』

初号機『どのような教育をしてきたんですオォォォォ!!!!!』

弐号機『アスカがあんな軟弱な男に靡くわけないじゃないですか!!』

初号機『パキンってしてもいいんですよ?』

弐号機『とにかくアスカは悪くありません!!悪いのはそちらのほうです!!』

初号機『パキィィィン!!!!』

弐号機『ひぃ?!』

初号機『もう……結構です……キョウコさん。グォォォォ!!!!!!』ガブッ!!!!

弐号機『やだぁ!!!指を噛まないでぇ!!!』

マヤ『弐号機!!右、人差し指損傷!!』

ゲンドウ『それでいい……徹底的に噛め』

シンジ「―――待ってください!!!」

初号機『ガルルル……え、シンジ?』

弐号機『痛い……いたい……』

零号機『……』

シンジ「……母さん、なんでしょ?」

初号機『……!』

アスカ「ママ!?本当にママなの?!」

弐号機『アスカ……』

ゲンドウ『パイロットたちに音声は届いていないな?』

マヤ『はい。エヴァの音声は本部でしか聞けませんから』

初号機『シンジ……今まで辛かったでしょう。待っていて。すぐに元凶諸共、私がLCL化させてやるから』

弐号機『そんなことできるわけが……!!』

初号機『A.T.フィールド、全開!!!』

弐号機『くっ?!』

初号機『アァァァァオ!!!!』ガブッ!!!

弐号機『いつまで……噛まれてばかりと思わないでくださいグォォォォ!!!!!』ガブッ!!!

マヤ『初号機、頸部損傷!!弐号機、左手の親指以外損傷!!』

ゲンドウ『やれ……そこだ、ユイ』

シンジ「……やめてよ……」

アスカ「ママ!!あたしなの!!ママ!!ママはずっとあたしの傍にいてくれたの?!」

初号機『こうなったら……!!』シャキン

弐号機『一気に……』シャキン

マヤ『両機、プログレッシブ・ナイフを装備!!』

初号機『殺してやる!!!』ギィィィン!!!!

弐号機『そう簡単に行くとでも?!』ギィィィン!!!

シンジ「―――やめてよ!!!!」

初号機『……!!』ビクッ

弐号機『ひゃっ』ビクッ

シンジ「母さん……アスカにいじめられてるなんて……嘘だから……それ以上、弐号機を傷つけないで……」

アスカ「シンジ……」

初号機『本当なの……シンジ?』

ミサト「シンジくん!!」タタタッ

レイ「どうなったの?」

弐号機『ほ、ほら、言ったじゃないですか……』

初号機『シンジ……』

シンジ「初めは意地悪しているのかなって思ったりもしたよ……だけど、段々そうじゃないってことに気がついたんだ」

アスカ「ちょっと!!」

初号機『どういうこと……?』

シンジ「アスカはただ、素直になれないだけなんだって」

アスカ「あ、あんたバカぁ?!なにいってるのよ!?」

シンジ「アスカは時々、言い過ぎたかも……って落ち込むときがあった」

アスカ「もうやめてよ!!」

弐号機『アスカ……もしかして……貴方……』

シンジ「きっと僕にうるさく言うのも、強く当たるのも……単純に加減がわからないだけじゃないって……」

アスカ「違うわよ!!バカシンジがむかつくからよ!!」

シンジ「そんなこと言われても、もう僕はちっとも腹が立たないよ!!アスカ!!」

アスカ「なっ……?!」

シンジ「母さん!!だから、いじめとかないんだ!!僕はアスカにいじめられたなんて思ったことはないよ!!」

初号機『そうだったの……ごめんなさい……私の早とちりだったみたいで……』

弐号機『アスカ……』

零号機『……』

レイ「碇くん……」

シンジ「……」

アスカ「もう……何言ってるわけ……?」

シンジ「ごめん……。でも、こう言わないと母さんが止まってくれないような気がして……」

アスカ「……シンジのママ?」

初号機『……』

アスカ「あの……誤解ですから……あたしのママを傷つけないで……ください……」

初号機『アスカさん。あとで格納庫まで来てください』

マヤ『アスカ、初号機は貴方と話がしたいと言っています』

アスカ「え。あ、了解……」

弐号機『どうするつもりですか、ユイさん』

初号機『……確認したいことがあるだけですよ』

弐号機『何を……』

初号機『それから……あなた』

ゲンドウ『なんだ……ユイ?』ニヤニヤ

初号機『エヴァリンガルシステムを使いましたね?』

ゲンドウ『ああ』

初号機『このシステムは破棄してください』

ゲンドウ『なぜだ?!』

冬月『ユイくん!!』

初号機『容易に会話ができると変な情が移るでしょう?私を兵器として運用できなくなりますよ?』

零号機『……』コクコク

初号機『だから、エヴァリンガルは破棄してください。でないと、ネルフ本部を40秒で灰にしてみせますよ?』

ゲンドウ『ああ……分かった。破棄する。だから、許してくれ、ユイ』

初号機『全く……』

格納庫

アスカ「おじゃましまーす」

ミサト「来たわね」

アスカ「ミサト」

初号機「……」

ミサト「初号機から貴方へ質問があるそうよ?」

アスカ「なに?」

ミサト「―――貴方は碇シンジのことが好きなのですか」

アスカ「そんなの―――」

初号機「……」ゴゴゴッ

アスカ「!?」

初号機「……」ガキィィン

ミサト「正直に答えないと、ぺっちゃんこにするって言ってたわ」

アスカ「どうして……?!」

初号機「……」

アスカ「私は……シンジのことなんて……」

初号機「……」

ミサト「……」ピッ

アスカ「私は……」

初号機『アスカさん?』

アスカ「え?!」

初号機『じゃあ、シンジのことは嫌い?』

アスカ「嫌い……じゃ……ないですけど……」

初号機『なら……』

アスカ「……」

初号機『大丈夫、シンジは貴方のことを受け止めてくれるわ』

アスカ「本当ですか……?」

ミサト「アスカ、本当よ」

アスカ「……」

初号機『聞かせて欲しい。貴方がシンジのことをどう思っているのかを』

アスカ「……」

初号機『まだ……言えない?』

アスカ「もう少し……時間をください……」

初号機『ええ』

アスカ「……」タタタッ

ミサト「よかったのですか?」

初号機『あの子は良い子ですね』

ミサト「ええ」

初号機『ふふ……楽しみです』

ミサト「では、このエヴァリンガルシステムは完全破棄します」

初号機『よろしくお願いします』

ミサト「では……」ピッ

初号機「……」

ミサト「やっぱり、本物の親には勝てないか」

数日後

アスカ「お義母さん!!」

初号機「……」

アスカ「自分の気持ちを整理して、シンジに伝えてきました。……好きって」

初号機「……」

アスカ「シンジは嬉しそうに笑ってくれました……」

初号機「……」

アスカ「そのあと、シンジと真剣に話したんですけど……」モジモジ

初号機「……」

アスカ「私、シンジと結婚します!!」

初号機「……」

アスカ「シンジのお嫁さんになっても、いいですか!?」

初号機「……」

アスカ「ダメ……ですか?」

初号機「……」パキンッ

初号機「オォォォォォォ!!!!!!!」

アスカ「いいんですね?!ありがとう!!シンジのママ!!」

初号機「オォォォォォォォォ!!!!!!」

シンジ「アスカ!!」

アスカ「シンジ!!シンジのママ、良いって!!」

シンジ「ありがと。母さん!!」

初号機「オォォォォォォ!!!!!」

シンジ「アスカのこと、絶対に幸せにするから……見てて」

アスカ「お義母さんに早く孫の顔も見せられるよう、頑張ります」

初号機「オォォォォォォオォォォ!!!!!!!!!」

シンジ「もう……アスカ!」

アスカ「シンジ……次はシンジの番よ?」

シンジ「うん。ケーキも買ってきたし、大丈夫だよ。アスカのお義母さんに話してくる」

アスカ「がんばってね、シンジ」

初号機「オォォォォォォ!!!!!オォォォォォォォ!!!!!!!!」

学校

担任「綾波さん、面談を始めます」

レイ「はい」

担任「えー……」

ゲンドウ「……」

担任「綾波さんは―――」

ゲンドウ「何か問題があるのか?」

担任「いえ」

ゲンドウ「では、成績優秀、品行方正ということになるな」

担任「……」

ゲンドウ「ならば、問題ない。レイ?」

レイ「はい」

ゲンドウ「帰るぞ」

レイ「わかりました」

レイ(私もエヴァに来て欲しかった……)
                          おしまい

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