憧「遅まきながらシズが思春期になった」(155)

穏乃「…」

憧「おーっす。シズー」

穏乃「あ、アコ。おはよ」

憧「?どしたの?」

穏乃「いや、別に…」

憧「別にってことないでしょ。いつもより全然元気ないじゃん」

穏乃「そんなことないって…」

憧「シズ。また変なもんでも拾って食べたんじゃないでしょうね?」

穏乃「そんなことっ!…してないって」

穏乃「もうっ」

憧「…」

穏乃「…」

穏乃「あの…さ」

憧「んー?」

穏乃「いやその…何ていうか…」

憧「?今日なんか変だよシズ」

穏乃「…ねぇアコ!」

憧「ちょ!顔が近いって」

穏乃「アコを友達と見込んで相談があるんだけど…」

憧「……なに?」

穏乃「…うちの制服ってどこで買えるのかな」

憧「はっ?」

穏乃「だから…その…制服///」

憧「はっ?」

穏乃「だからっ!…常時ジャージって、考えてみたらめちゃ変じゃん」

穏乃「それでさ…制服にしようかなぁって思ったんだけど、家のどこにもなくて…」

穏乃「欲しい…」

憧「…」

憧「なぜいまさら。もうシズはそれが制服みたいなもんじゃん。気にすることないって」

穏乃「わたしが気になるんだってば!」

憧「なに年頃の乙女みたいなこと言ってるの」

穏乃「乙女だよ!欲しい欲しい制服欲しいよー!」

憧「いや知らんし」

憧「まあでもまじめな話学校の事務にでも言わないといけないんじゃないの?」

憧「ていうか制服もう一つなんてできるのかしら、ハルちゃんにでも相談したら?」

穏乃「そっか。阿知賀のレジェンドだもんね。何か出来るかも!よーし!」

穏乃「じゃあ私先に学校行くからー!」ドドドドド

憧「ってシズ!…はや。もう、一緒に行きたかったのに」

麻雀部

穏乃「ダメでした」

~~~~~

赤土「制服?」

穏乃「そうなんです!家探したけどなくて、もしかしたらお母さん捨てちゃったのかも」

穏乃「その、出来れば早目に普通の格好がしたいんですけど…どうにかなりますか?」

赤土「……いや知らんし」

~~~~~~

穏乃「ってな感じでさ」

玄「そうなんだぁ」

憧「ていうか在学中に制服なくすほうがおかしいんだって。前は持ってたじゃん」

穏乃「おっかしいんだよなぁ。ちゃんとしまっておいたつもりだったのに」

灼「どこかに忘れてきたとか?」

穏乃「あー。市民プールのロッカーかも…」

憧「それ、もしそうだとしたらどんな格好で帰ったのよ」

穏乃「あー、なんかすっきりしない!一局やろうよー」

灼「面子はいつけど」

玄「お姉ちゃん、少し遅れてくるみたいだから」

憧「それならとりあえず軽く打ちますか」

穏乃「よーし!」

ツモ!

穏乃「うわードラだ。流石玄さんドラだー」

あ、ロン!

灼「流石、『阿知賀のドラゴンロード』の名は伊達じゃない」

ツモ!!

憧「すごい、ドラドラドラァ。流石ドラと友達」

玄「えへへ、そんなことないって」

穏乃「すごいですよ!『ドラゴンロード』の名は嘘じゃないって感じです!」

玄「えへ、そう?」

憧「『ドラゴンロード』の火力なら先鋒戦はまずもらったわね」

玄「えへ」

灼「『ドラゴンロード』の二つ名を全国にしらしめるにはもってこいの舞台」

玄「ん…」

ヨーシジャアモウイッキョク

コンドハドラニマケナイゾー

東三局

玄(この手…)

玄「リ、リーチ!」ドラギリリーチ!

穏乃「えっ」

憧「えっ」

灼「えっ」

穏乃「ちょ、待ったりでしょ?この局」

憧「ありあり、ありだって」

灼「それ、ドラだよ?

玄「えっ!あ、ああうん。でも切ればリーチだし、必ずまた会えるから」ドヤァ

玄「それに、何かドラゴンロードって…ちょっと恥ずかしい、かも///」

穏憧灼「「「???」」」

玄「全国中継でそう呼ばれるって考えると、ちょっと」

玄「普通に打とう、かなって…あは」

玄「私にだけ二つ名ついてるってのも///」

玄「テレビに映るならしっかり映りたいから。これからはドラは普通に切ってくよ」

憧「それじゃあ別に玄さんが先鋒じゃなくても…」ボソッ

穏乃「わかります!玄さん!なんで今まで拘ってたんだろって気づくことありますよね!」

玄「うん///何か思い返すと結構恥ずかしいかも」

灼「…」

灼「ま、まあそれも玄の打ち方だと思うよ」スルスル

穏乃「あれれー!灼さん手袋どうしたんですか!手袋!」

灼「!えっ?手袋って?」

灼「えっどういうこと?手袋が何を指すのかよくわかんないんだけど」

穏乃「えー!だっていつもつけてたじゃないですか」

穏乃「こう!バッと引いてグワッと振りかぶってドバッと投げるアレ」

穏乃「あれは手袋ないと出来ないじゃないですか!」

憧「てかさっきまで着けてなかったっけ?」

灼「っ!」

憧「この局始まる前キュッって締めてたと思うんだけど」

灼「とっ!とにかく!その手袋ってのが何かわかんないんだけど!」

灼「もう、その、ボーリングみたいなポーズは…やめる///」

灼「何であんなキメポーズにしちゃたんだろ…」ボソボソ

玄「?」

憧「まあ私はいいんだけど」

憧「ジャージはいない、『ドラゴンロード』はいない、ボーリングはいない」

憧「これじゃあ他所からどこの高校かわかんないじゃない」

穏乃「そんなこと言ったって…いや宥さんがいる!」

灼「!そう、まだ赤ドラ使いが」

玄「おねえちゃんの寒がりはどこにもないうちの特徴!ガチャ

宥「こ、こんにちわ~」ブルブル

宥「お、おおお遅くなっってて、ごめんねぇぇぇ」ブルブル

穏乃「…」

憧「…」

灼「…」

玄「おねえちゃん、聞こえてたのかもしれないけど。寒いときは厚着してていいんだよ」

宥「だだだだってぇ~」ガクガクブルブル

宥「私だってこんな季節に厚着してるの変に見られてるのしってるんだかたらららぁ」

宥「もう、あああ厚着は、し、しません!」

玄「おねえちゃん…」

穏乃「宥さん、どうするんだろ」

憧「明日寝込んでるに」

灼「一票」

玄「リーチ!!」

灼「あっそのドラ、ロン」スハダデス

宥「う、ん」ウツラウツラ

憧「ちょ!宥ねえ!寝ないで寝ないで」

穏乃「ああー制服どうしよう…」

赤土「…どういうことだ」

赤土「ははは!いやーお前達も若いなぁ!」

灼「からかわないでよ」

赤土「いやいや、むしろ懐かしいよ。私にもそういうことが気になる頃があったなぁって」

憧「ハルちゃんも?」

赤土「そうだぞ?私はなぁ、皆青いランドセルなのに一人だけ黒くてヤだったなぁ」

玄「なんか私たちのとは違うような」

穏乃「晴絵さん…レジェンド、レジェンドは!?」

赤土「え?」

憧「確かに、十代ならまだしも二十代になってなおそう呼ばれている気分は!」

赤土「な、なんだよそんなこと。そりゃ私だって少しは気にしてるさ」

宥「そ、そうだったんですかぁ…?」

赤土「そりゃそんなレジェンドレジェンド呼ばれてればな」

灼「ハルちゃん、すこし意外かも」

赤土「おいおい、私だって遠慮ぐらいするさ」

赤土「そんな私だけがいつまでもレジェンドなんて、そんな」

赤土「そんなカッコイイ呼ばれ方してたら…さ」

赤土「ちょっと申し訳ないだろ」

「「「……」」」

そんな頃全国では

竜華「怜、麻雀なんて打ってええんか?」

怜「ん、竜華。今日は調子も良えし、お医者さんも無理せんのやったら良えって」

フナQ「まあ全国まで日数もありませんし、調整程度に練習は良えことです」

竜華「無理したらあかんよ?」

セーラ「先鋒なんやからな!任せトルデ!」

怜「…それなんやけどな」

竜華「えっキャラをやめるって」

セーラ「怜、病気なおったんかー!」

怜「病気はキャラやないからな!」

怜「そっちやなくて、その…『見える』とか『見えないとか』を…」

フナQ「やめるいいますと、使わんってことですか?」

怜「そうやない。もっとこう、技っぽのをやめて、論理的なもんにしたいんや」

泉「『読み』とかですか?」

怜「ん。せやな、思い返せば麻雀に何であんな技みたいなの使ってたんやろ」

フナQ「まあ男女問わず中高生に見られる傾向ですわ」

竜華「それやったらこれからは『トリプル』やなくて?」

怜「ずばり、『個人的経験の洞察と傾向から見る打ち筋の予測と対策』って名づけたわ」

フナQ「論理的かつ合理的な判断ですな」

奈良県

バイバーイ

穏乃「あぁー制服欲しいなぁ」

憧「まだそんなこと言って、もう一回家探したら?」

穏乃「もう絶対ないって。何回も探したもん」

穏乃「私の制服はいったいどこにー!」

憧「いつからないとか、覚えてないの?」

穏乃「うーん。プール行ったり川入ったりアコんち行ったりラーメン屋行ったり」

穏乃「制服着てた記憶はあるんだけど、順番がめちゃくちゃでいつが最後かわかんない」

憧「川とかラーメンとか、あんたそんな制服もっかい着たいわけ?」

穏乃「アコにはわかんないよ、オシャレも出来ないこの気持ち…」

憧「オシャレって…ん?てかシズ制服でうち来たことあったっけ?」

穏乃「うん。いつだったか学校帰りに」

憧「シズの制服…うちで…」

憧「っ!!」

穏乃「んー?どしたのアコ」

憧「!いやいや、何でもない!」

穏乃「?アコ、もしなんか恥ずかしいことだったら早目にやめといた方がいいよ」

穏乃「傷が広がる前に」

憧「う、うん。そうする」

穏乃「あー全国までにみつけないと」

憧「あーじゃあシズ、私は今日ようじがあるからここでかえるね」

穏乃「えー何ちゃって制服でもいいから見に行こうっていったのに」

憧「それはまた、明日にでも。いや、明日には制服も見つかってるかもしれないけど」

穏乃「へ?」

憧「とにかく今日はもう無理だから、早くうちに帰らせてー!」ドドドドド

穏乃「ちょ!アコ…はや。なんだよー一緒に帰りたかったのに」

憧「ただいまー!」

憧「忘れてた、忘れてた、忘れてたー!」

憧「…やっぱり。さてどうしよう」

憧「この額に飾られたシズの制服…」

憧「……ってかキモい!!キモい!キモい!!」ジタバタ

憧「ありえないありえないって!!何やってたんだろ私!!」ジタバタ

憧「思い返せば数ヶ月前…」

~~回想・始~~

穏乃「アコー!遊ぼー!」

憧「いいわよ」

~~回想・終~~

憧「…何があったのかは覚えてないけど、とにかく気づいたとき部屋にシズの制服があった」

憧「私は、当たり前のようにそれを額に閉まった。汚すなんてもってのほかだし」

憧「…てか、制服があるってことはその日シズはどうやって帰ったんだろ」

憧「いややめとこ。何か別の問題が出てきそう」

憧「私も完全に忘れてたし。てか部屋のインテリアの一つになってた」

憧「けど…確かに壁のこの部分に制服が一つあるだけで部屋のバランスが綺麗になってるのよね」

憧「何かスポーツ選手のユニフォーム飾ってるみたいだし」

憧「いや、むしろこれはここから動かさないほうがいいんじゃないかって思えてきた」

憧「いやだって、うん、バランスとコーディネイト的にも」

憧「どこか威風堂々とした姿にも見えるし…いやでもそもそもこれはシズのもので」

憧「いやでも部屋にあったってことは考えようによっては置いていったとも…」

翌朝

穏乃「おっはよー!」

憧「おはようシズ」

穏乃「ねえ制服どっかで見た?」

憧「ううん。やっぱ私の家にはなかったわ」

穏乃「そっかー。どこいっちゃたんだろうなぁ」

憧「仕方ないし、買うしかないんじゃないの?」

穏乃「今日他の先生にも聞いてみようかな」

憧「てか、やっぱジャージはいやなわけ?」

穏乃「いやっていうか。全国放送される訳じゃん?そこに一人ジャージってのは…いやかも」

憧「何か玄もそんなこと言ってたけど、そんなに恥ずかしいことかな」

穏乃「そりゃ恥ずかしいって!」

憧「でも私はシズのジャージ姿好きだよ?」

穏乃「って別にアコが好きとかじゃなくて私が恥ずかしいんだって!」

憧「私はジャージ姿で勝つシズが見たいってこと」

穏乃「はあ!?な、なんだよそれ!」

憧「だってシズは部活のときいつもジャージじゃん」

憧「制服欲しいって言う前はずっとそれで練習してたでしょ?」

穏乃「う、うん。まあ」

憧「ジャージ姿はさ、シズが頑張ってきたっていう証拠だよ」

憧「小さい頃からずっと。シズのジャージ姿を見てきたんだなって私は思うよ」

穏乃「アコ…」

憧「だから、だからこそ、全国の舞台にシズにはその姿で立って欲しい」

憧「それで、勝って欲しい…かな」

憧「って何かめちゃくちゃ変な事言ってたねわた「アコーー!」ダキッ

穏乃「ごめんアコ!私が間違ってたよー!」

憧「ちょ、痛い!首が痛いって!!」

穏乃「あっごめん。でもさっきのアコの話、私わかったよ」

穏乃「このジャージは私の努力の証拠。この姿を誇らなきゃ、私は私を誇れないんだって!」

穏乃「制服も、まあ欲しいけど。でも全国はこれで出る。これで出なきゃいけないんだ!」

憧「シズ…」

穏乃「アコ、一緒に部活行こう!」

憧「うん!」

憧(こうして私はよくわからない話で友人を納得させ制服を手に入れた)

そして全国

玄「じゃあ、行って来るよ」

穏乃「がんばれー玄さん!」

憧「頼んだよ!玄!」

玄「お任せあれ!ドラも柔軟に切って勝つから!」

竜華「頑張りーや!怜!」

セーラ「先鋒頼むデェ!」

泉「けどこの阿知賀の先鋒…」

フナQ「ドラ使いかとも思ったんやけど、どうやらそうでもないみだいです」

怜「ほな、傾向を頼りに普通に打ってくるわ」

玄「…」

怜「…」

煌「…」

煌(ちなみに、『すばら』とかは高校生にもなって恥ずかしいので言いませんからね)

照「…」ギュルルルル

照「ロン。5800」ギュルルルルルル

玄「は、はい///」

煌「…」

照「どうだ?腕が回るたびに打点が上がっていくんだ。カッコイイだろ?」ギュルルルルルルr

怜「…ップ」

照「ちなみにお前達の力は『照魔鏡』で見抜いている」

玄「////」

煌「ふぅ高校生にもなって」ボソッ

怜「…ップークスクス」

憧「そんな玄が普通に打って普通に負けてる…」

赤土「白糸台の宮永照。やはりあいつは『化け物』か…」

宥「…玄ひゃんがんばってぇ」プルプル

灼「他の2校も普通に上がれてないなんて」

穏乃「これが…全国!」

穏乃「…」

憧「シズ、大丈夫よ。あんたは自分と、自分がやってきたこと信じて」

穏乃「…しぃ」

憧「?何か言ったシズ?」

穏乃「やっぱ……やっぱり欲しいよー!!制服!!」

穏乃「他所の高校凄い普通の人だもん!白糸台みたいに一人浮きトップになりたくないよー!」

穏乃「何か恥ずかしい!!ジャージが努力の証とか言ってたのが恥ずかしい!!」

憧「おい!!」


阿知賀編episode of normal  おわり

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