ナレーションP「如月千早の朝は早い」 (11)
「平成の歌姫」
午前四時、マンションの階段を走って降りてくる音がする。
密着取材の条件は、ディレクターがハンディーカメラを使って、一人で撮影すること。
アイドルとしては異例な条件も、彼女の仕事内容を見れば、それは納得の行くかもしれない。
「おはようございます」
ジャージ姿のこの人こそ、
如月千早、十五歳。
職業、アイドル。
「ぼくらはちーについてーよこいちれつですたーとぉきったああああ♪」
プロフェッショナル 仕事の流儀
「いつもこんなに早いんですか」
早朝とは思えない、その快活な表情。
「ええ、プロとして、できる限り長く働こうとするのは当然のことなので」
ストレッチをしながら、その表情に曇りの色はない。
まだ日も昇らないうちから、彼女の一日ははじまる。
「ここからランニングしますけれど」
「はい」
「それ(撮影)、大丈夫ですか?」
「あ、はい、大丈夫です」
「いつもどのくらい走るんですか?」
「大体8kmになるよう、コースを決めています」
「8kmも走るんですか?」
「はい」
ストレッチを終え、走り出す如月千早を、慌てて追いかける。
「(時間は)どのくらい?」
「今日のように曇っていて、涼しい日には、45分走ります」
「辛くないんですか?」
「当然なので」
当然だ、この言葉は、如月千早の考えるアイドル像を強く反映している。
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