梅原「危険な賭けだぜ、そりゃあ……大将…」
純一「うん、わかってる」
梅原「それでも、やろうっていうのかよ」
純一「……うん、僕はしたいんだ」
梅原「……そうか、なら俺は止めやしねえ、いや! むしろ応援してやんよぉ!
お前さんの勇志ッ! 後の武勇伝として語り継いでやろうではないかぁ!」
純一「ありがとう…! そういってくれるのはお前ぐらいだよ…!」
梅原「つぅーわけで、これがいわゆるBL本ってやつだぜ?」がさっ…
純一「おう、用意が良いな……というか、梅原……どうしてこれを…?」
梅原「他意は無い。まったくもってない、間違って買っちまっただけだ」
純一「そ、そうか……なら、ありがたくもらっておくぞ!」
梅原「おうよっ! んじゃ、後で聞かせておくれなぁー!」だっだっだ
純一「……」ふりふり
純一(さて、ここから開始しようか……ふふっ、楽しみでしょうがないよ)
純一(──この、〝変態紳士〟または〝ポンプ小屋のガーゴイル〟とまで歌われた僕が…)
純一(BL本を所持しているとなると……はたして、女の子はどのような反応を示すだろうか)
純一「──誰しもが、驚くに違いない……くくっ」
純一「では、開始だ!」
二年廊下
純一「……」キョロキョロ
純一(ふむ、この辺かな。もう少し待ってれば見知った顔も見えてくるはずだ)
純一(お、きたきた…!)
棚町「…」すたすた
純一(薫だァ……標的はあのモジャに決定だね!)
純一(さて、さりげなく前方を歩きつつ………)すっ
棚町「……」
純一(ここだっ!)
ぱさっ
棚町「…ん?」
純一(そして素知らぬ顔で歩き去っていく……)すたすた…
棚町「ちょっとちょっと、そこの人~! 何か落としたわよ~」すたすた
純一(どうやら僕って気付いてないようだな……ここは、あえてのスルーだ!)
棚町「…? 聞こえなかったのかしら、どれ、拾ってあげましょかねー」すた…ひょい
純一(拾った!)
棚町「………」
純一(ど、どんな反応をしてる!? ちょっと振り向いてみよう…)ちらっ
棚町「………」じっ
純一(なんだかじっと本を見つめてる……)
棚町「………」
棚町「………」ちら
純一(あ、こっち見た)
棚町「……」
純一「……」ドキドキ…
棚町「……」にやっ
純一(笑った!?)
棚町「………すぅ…」
純一(ん? あれ、なんだか大きく息を吸いこんでるような───)
棚町「──純一ぃいいいい!! この本ッッッ! アンタおとしてなぁあああああああああいい!!!???」
純一「うぁあああああああああ!!! ばかばかばかばか!! やめろばかぁあーーーー!!!」だだっ
棚町「さっきぃいい~! アンタからこれむぐっ!」
純一(ばかぁ! 薫のばかぁ! なに大きな声出してんだ!)ヒソヒソ!
棚町「むっぐぐ! むぐぅー! むっふっふっふ!」
純一「笑うな!」
純一「というかっ…お、おまっ……なにしてくれてんだよぉ!」
棚町「むふっ」
純一「笑いごとじゃないよ! ほ、他の人にばれたらどうすんだよ!」
棚町「……むっふふー?」
純一「えーと、なんて?」ぱっ
棚町「ぷはっ、アンタのじゃないの? これ?」ひょい
純一「ま、まぁ…僕のだけどさ…」
棚町「じゃあ、いいじゃーないのよぉー!」
純一「だーから大きな声を出すなって! 薫!」
棚町「いっひひ、アンタが落とすからいけないんでしょ? うん?」
純一「そ、そうだけど…っ! これは、僕が望んだ結果とは違くてだな…!」
棚町「じゃーなによ、アンタは何がしたかったワケ?」
純一「そ、それは……」
棚町「もしかして、もしかすると、このアタシを試したわけじゃないわよね? 純一ぃ?」
純一「……断じて違う!」
棚町「その間は何よ、その間は。……はぁー、アンタって本当にしょうもないことするわねほんっと」
棚町「アンタの顔を見た瞬間から、一発でわかったわよ。もうちょっと頑張りなさい、
このアタシを騙すんだったら、もっと根気の入ったドッキリを用意しなさいよっ」
純一「うぐっ……」
棚町「単純なのよ、アンタの考えそうなことっていったらね」
純一「……確かに、薫相手だと分が悪かったかも」
棚町「わかればよろしっ、そうね~……こんな本で騙そうって言うんだったら~…」
棚町「公共の場で、もっと梅原君とイチャイチャしてるんだったら騙されてたかも」
純一「……どうして梅原が出てくるんだよ」
棚町「え、なんとなくだけど? まぁーアンタらって仲良いじゃない?
それなら「あー、あの二人ならそうかも」って思うわねアタシも」
純一「……ふむ」
棚町「いや、本気で悩まれても困るんだけど…」
純一「と、とにかくだな! その本は返してもらうぞ!」ばっ
棚町「別に要らないわよ、そんなの」
純一「ふぅー……あーあ、薫なんて相手にしなきゃよかったよ、まったく」
棚町「んなっ! なんて言い草なのかしら!」
純一「普段は乗り良くしなさいよ、とか言ってるくせに……こういうときはノリが悪いもんなぁ~」
棚町「…言ったわね、純一」
純一「ああ、言ったさ」
棚町「……」
純一「……」
「──えっと、二人して……廊下で何やってるの?」
棚町「あ、恵子!」
純一「あ、田中さん!」
田中「え? うん…私だけど…?」
純一「いやね、ちょっと聞いてよ。薫の奴がさ~」
田中「う、うん」
棚町「……」
棚町「あ、良いこと思いついたっ」
純一「髪の毛があんな奴なのに、ん? どうした薫?」
田中「…?」
棚町「んっふふ、ねぇ……恵子ぉ」すっ
田中「あ、うん…? どうしたのかお──……きゃあ!?」
純一「…ッ!?」
田中「ちょ、あっ……か、薫っ…!? なに急に抱きついて……んっ」
棚町「……ねぇ、いいでしょ? 昨日の夜の、つ・づ・き…」すりすり…
純一「き、昨日の……夜の!? 続き!? た、田中さんどういうことそれ!?」
田中「し、知らないよぉ!? な、なんなの一体…!?」
棚町「知らないふりしないでよ……恵子、昨日はあんなに…ね?」フゥー
田中「っっっ……」ぞくぞくっ
純一「っ…!」フンスフンス!
棚町「ねぇ、恵子ってば……お互いにヨワイ所、教え合った仲じゃない…」
田中「っ……っ…」ぴくっぴくっ
純一「ッ……!」フンフンフンフン!
棚町「それなのに、どうして恥ずかしがるのよ……もっと、たくさん弄り合いしたいのに」つんつん
田中「…───」ぶくぶく…
純一「………」パァアアアア!
棚町「───……ん?」
田中「コポコポ…」
純一「────」(トリップ中)
棚町「……」
棚町「……」ポリポリ…
棚町「うん! とりあえず、恵子だけ教室に連れて行くわねー!」ズリズリ…
田中「こぽっ───」
がらり…ぴしゃっ
純一「────」
純一「────」
きーんこーんかーんこーん
高橋「──授業、授業っと……あら?」
純一「───」
高橋「えっと、橘くん? 廊下につっ立ってなにしてるの?」
純一「────」
高橋「こらー、聞こえてないのー?」ふりふり
純一「────」
高橋「? ……って、なにを持ってるの? あ、また学校には関係ない雑誌なんて持って来て!」ばっ
高橋「これも没収ですよっ! 放課後になって、職員室にとり……くる…よう…………」
高橋「…………」
純一「──……ハッ!?」
純一「し、しまった! 妄想が炸裂して変にトリップをっ…やべ、もう授業始まって───」
高橋「………」
純一「」
純一(ど、どどっどおどどどどおして高橋先生がっ!?──いや、授業が始まってるからいるのは当たり前かっ!)
純一(それよりも本! 雑誌が先生の手に! BL本が!)
高橋「…たち、ばなくん……」
純一「は、はいっ! そ、それはですね先生! なんというかその! えーっと、あの!」
高橋「……君は、女の子に興味ないのかしら」
純一「えっ!? えーと、その、もちろん! ありますとも! だ、だからそれは何というか!」
高橋「……でもこれは、いわゆる男の子と…男の子が……」
純一「い、いわなくていいです! 先生! 高橋先生!」
高橋「あ、うんっ……えっと、はい……そうよね…別に先生が説明しなくても…うん…」
純一(むぐぁー! どうしよう! 高橋先生に見せるのは想定外だよ!)
純一(どうしよう……僕になにができる!? このままじゃ、このままじゃ…!)
「……」すたすた…
純一「……!?」
純一(え!? だ、誰だ…? 前方の廊下から歩いてくる人物は…!?)
「……」
「……───」
すたすた…… すっ…
梅原「………」どん!!
純一(梅原だァー!?)
純一(お、おまっ! 何で授業始まってんのにまだ廊下にいるの!?
普通に遅刻してるよね!? なにしてるんだよ! 遅刻するなよ!)
梅原「……っ?」びくぅ
純一(あ、気がついた───梅原! 今はこっちに来るな!
今来ると確実になんか絶対に僕とお前の関係を、先生に疑われる気がするぞ!)
梅原「………てへっ」ペロッ
純一(てへっ、じゃねーよ!? 大将、お前も遅れて怒られてんのか? みたいな感じで
おちゃらけてるんじゃないよ! 馬鹿、本当に馬鹿! 違うよ、もっと大変なことになってるよこっちは!?)
梅原「……?」
純一(おっ? 気がついたか? そうだよ、さっき言っただろ作戦が悪い方向に言ってるんだよ!
だから変に疑われる前に! 授業をサボってでもどっかに行くんだ!)
純一(今ならまだ間に合う! 高橋先生が振り向かない限り、お前の姿は確認できてないから!)
梅原「……」
純一(だからお願いだ! 梅原! 読んでくれ空気を! 出来るできるお前になら出来るから!)
梅原「…」ぐっ
純一(おっ…? 親指を立てた? わかってくれたのか? さ、流石だ…流石だよ梅原…)
梅原「……」カチャカチャ…
純一(お前は出来る奴だって──って何でズボン脱いでるの!? なにやっちゃってるの!?)
梅原「……」カチャ…
梅原「……」すっ
純一(ズボン脱いじゃってなに仁王立ち決めてるの!? 意味わかんないそれ僕意味分からない!)
梅原「……」
梅原「よっ! 大将っ!」
純一「どうして僕の名前を呼ぶんだその状態でぇーーー!!!」
高橋「えっ──……っ!?」びくぅ!
梅原「ん、おおう。麻耶ちゃん先生も居たんすか、こりゃ失敬!」
純一「失敬じゃないよ! なにやってるんだよ梅原!」
梅原「え?」
純一「もう僕の心配とか無意味なぐらいにアウトだから!
梅原自体で限りなく黒だよ! 変態的な意味で!」
梅原「い、いや、俺はただな……」
純一「なんだよ!? ここからお前はどうにか挽回できる説明が出来るのか!?」
梅原「説明っていうかよ…その、見てくれればわかると思うんだが…」すっ
純一「え…?」
梅原「わかるか? 太ももの内側、でっかいのあるだろ?」
純一「こ、これって……痣?」
梅原「おうよ、いやー…さっきよ? お前さんと別れた後に人にぶつかっちまってな。
相手は怪我ひとつなく無事だったんだけどよ、俺の方が重傷でな…」
純一(あ、良く見れば体操服着てる……)
梅原「んでもって保健室に行ってたんだが、授業には出ていいって言われたもんでさ。
こうやって遅れながらも来たわけなんだが……」
梅原「…その、なんだ。やっぱズボン脱ぎながら来たのは、ちっと非常識だったか?」
純一「あ、あったりまえだよ! ばか! いきなり脱ぎ始めたからびっくりしたぞこっちは!?」
梅原「お、おう。そうか……俺はてっきり、お前さんが遅刻の理由を見せやがれ!
なんて目で訴えてんのかと思って…」
純一「なわけないだろ!」ばしっ
梅原「あてっ! いてて……」
純一「あっ……だ、大丈夫か? 傷に響いた?」
梅原「いや…大丈夫だ、変に心配するな。男がこれぐらいの痛みで苦しんでどうするってんだよ…いてて…」
純一「うっ…この辺が痛むのか…?」さすり…
梅原「ん、あ……その辺、だな…くそ、なんつーとこ怪我するかね俺も…」
純一「無理するなよ…」
梅原「おう…」
高橋「……」ドキドキ…
純一「本当に授業に出ていいって言われたのかよ…見てるこっちが痛そうだぞこれ…」
梅原「…」
純一「また、無理言って出てきたんじゃないのか? お前ってそういうところあるだろ」
梅原「んだから、心配すんなっての。大将、俺は平気だ」
純一「お前はそうかも知れない、だけど、僕はそうとは思えないんだよ」
梅原「…大将……」
高橋「……」キュン
高橋「っ!? ……っ!?」ドキドキ…
純一「…あんまり無理するな、怪我してばっかりの僕が言えることじゃないけどさ」
梅原「本当だぜ、大将。お前さんこそ、身体には気をつけろよ?
変に無茶しやがるんだからよ、いいか? お前さんの身体は一人のものじゃないんだぜ?」
純一「…うん、そうだね」
高橋「……」キュンキュン
高橋「っ!?」
純一「とりあえず……そうだな、様子見ということにしておこう」
梅原「へーきだっていってんだろ」
純一「駄目だよ、今日の放課後までに痛がる様子が無かったら僕も認めるけど……」
純一「……それでも、お前が心配なんだ僕は」
梅原「はぁ…わかったよ、んじゃそうしとけ心配性の奴め」
高橋「………」
純一「言われなくてもそうするよ。……って、ああっ!?」
梅原「どぅわぁ!? な、なんだ急に大声あげてっ」
純一「そ、そうだった!? あ、あのあの先生!?」
高橋「………」ぽやー
純一「……先生?」
高橋「ハッ!?」
高橋「な、ななななんでひゅかっ!?」
純一「えっ?! あ、その…! なんていうかですね、その雑誌のことですが…!」
梅原「……? んなっ!? お、おおおおまっ……橘っ!?」
純一「と、とにかく梅原は黙ってろ! ……そのですね、それは僕の物ではなくて──」
高橋「~~~~っ……せ、先生はっ!」
純一「は、はいっ!?」
高橋「……そ、その……男の子同士の……ですね…」チョンチョン…
純一「はい…?」
高橋「~~~~っ……仲がっ…いい、のは…素晴らしいと、思います…」クルクル…
純一「えーっと……ありがとう、ございます。で、いいんですかねこれ…?」
梅原「わ、わからん」
高橋「で、ですからっ……先生がとやかくいう必要は無いと思うのだけど、
やっぱりねっ……こういった本を持ってくるのは、いけないことだと…先生は思うの…」もじっ…
純一「ぼ、僕もそう思います!」
高橋「……ほ、本当に? そう思ってる?」ちらっ
純一「当たり前です! それに、それは僕がもってきたんではなく…!」
高橋「……ごにょごにょ……生徒の恋愛の自由は…もにょ……教える身として……ぐにゅ…」もんもん
純一「せ、先生…? 聞いてますか…?」
高橋「……ですが、誤った道に突き進む子を……もごもご…」
純一「………」
梅原(お、おい……大将…これはどういうことなんだよ?)ひそひそ
純一「…わかったら苦労しないよ、僕はてっきり怒られるもんだと思ってたけど…」
梅原(というか、なんで麻耶ちゃんがあのBL本を持ってんだ?)
純一「そ、それは……僕の不手際のせいというか、なんていうか…」
高橋「……」じっ…
純一「っ! せ、先生? なにか…?」
高橋「っ……なんでもないのよ…うん…」じっ…
梅原「そ、そうっすか…?」
高橋「……うん」じっ…
純一(な、なんだか先生の顔……心なしか赤くないか?)
梅原(た、確かにな……いや、だが変につっついたら爆発しても困るしな)
純一(うん…ここは流れに任せて、区切りをつけよう)
純一「先生!」
高橋「は、はいっ!」びくっ
純一「そ、そのっ…その本は放課後になれば、返して下さるんですね?」
高橋「この本……う、うんっ! 返すわっ……返してほしいの?」
純一「うっ…えっと、やっぱりですね、その…」
高足「………」
純一「っ……」
純一(や、やっぱり返してもらわない方がいいんじゃないかっ…?)ひそひそ
梅原(いや、返してもらわないと俺が困る…)
純一(はっ!? な、なんで?)
梅原(……だって、兄貴の本だから)
純一「!?」
高橋「──……わかりました、では放課後に取りに来なさい…こほんっ」
純一「えっ……あ、はい」
高橋「しかし、ひとつだけ条件がありますっ」
純一「条件、ですか?」
高橋「……その、ですね…」ちらっ
梅原「っ?」
高橋「っ……~~~~……う、梅原君と一緒に! 取りくること……が、その…」
高橋「じょ、条件ですっ」ぷいっ
純一「梅原と一緒に…?」
梅原「お、俺もっすか…?」
高橋「そ、そうよっ? どうやらこの雑誌は、梅原君も……関係、してるみたいじゃない」ちらり
純一「は、はあ…」
高橋「ですからっ! 放課後ね!? わかった!? わかったら返事!」
純一&梅原「は、はいィ!」
イーモバイルなんで、id変わっちまってます
>>1です、今起きました
高橋「で、ではこの雑誌は先生が預かっておきます……」そそくさ
純一(懐にしまった!? ……いや、他人の目に触れることが無いから良いけど…)
高橋「こ、こほんっ」
高橋「それじゃあ、授業始めますからねっ! 二人とも、早く教室に戻りないさい!」
純一「は、はーい……」
梅原「う、ういーっす……」
がらり…
純一(なんだか、色々とやってしまったような気がしてならない)
梅原(俺にとっちゃ、全てが巻き込まれた気がしてなならないぞ)
純一(なんか、すまんな梅原──)ぐいっ
純一「──ん……? 誰だ、僕の袖を引っ張るのは…」
絢辻「……」じっ
純一「あ、絢辻さん…?」
絢辻「……」
純一「……えっと、どうしたの? 急に袖引っ張って…あはは」
絢辻「授業が、五分も遅れてるの」ぼそっ
純一「うっ…そ、そうだね……うん、なんていうか…その、ごめんなさい…」
絢辻「………」
純一「出来れば僕も遅れさせたくはなかったんだけど…」
絢辻「………」
純一「不出来な僕は、簡潔に話し合いを付けることが…」
絢辻「………」
純一「……ごめん、何を手伝えば許してくれるかな?」
絢辻「昼休み、委員会の書類の整理」
純一「……了解、昼ごはんは?」
絢辻「パンを買っておいてあげたわ、一緒に食べましょう」
純一「用意が良いね……わかったよ、頑張ります」
絢辻「…くす、聞きわけの良い橘くん、私は好きよ」ニコリ
純一「ありがとうございます……」
絢辻「じゃあ、昼休みに」ぱっ
純一「はい……」すたすた…
梅原(……絢辻さん、何て言った大将?)ひそ
純一(……下僕になれ、と)すたすた…
梅原(は?)
純一(わからなくていいよ、うん…)がた… すとん
純一「……はぁ、疲れた…」
ちょんちょん
純一「……なんだよ、薫。そこ、田中さんの席だろ」
棚町「いっひひ、アンタ、なにやっちゃってたの?」
純一「それよりも僕の答えに答えろよ…」ちらっ
棚町「いーのよ、恵子だって承知の上なんだから」
純一「本当にか…?」きょろきょろ…
純一「あ、薫の席に居た」
田中「!」
田中「あはは…」ふりふり
純一「……可哀そうに田中さん…」ふりふり
棚町「それよりもっ! アンタは高橋せんせーと何話しこんでたのよっ?
まさかまさかー? あれあれって感じ? ん? んっ?」
純一「席を変わってでも聞きたいことってそれかお前は…」
棚町「面白そうな匂いがぷんぷんっするのよね~」
純一「ぐっ…こっちはだなぁっ? なんにも面白いことなんて──」
がらり
「えー、あー、高橋先生の授業はここか?」
純一「──あ、あれ?」
絢辻「はい、そうですが……」がた…
絢辻「なにか、問題でも起こったんですか?」
「絢辻か、ああ、ちょっとな…」
「…実は高橋先生が先ほど、廊下に倒れているのが発見されてな」
純一「ええっ!?」がたっ
クラス一同「…っええ!?」
絢辻「…えっと、病状というか、先生の容態は…?」
「いや、どうやら高熱を出されてるようで……今は保健室のベットに寝かせている感じだ。
保健室の先生が言うには大したことは無いとおっしゃられていたがな…」
「まあ、後で先生方で病院に連れて行くつもりだ、なので、この時限目は自習で頼む」
絢辻「自習ですか…」
「心配するのも分かるが、たぶん大丈夫だということなので……おっと、そうだ、橘はいるか?」
純一「えっ? あ、はい…! 僕ですけど…?」
「おお、居たか。実はだな…高橋先生が気を失う前に、これを───」
純一「ッ──梅原!!」
梅原「おうよッ…!」ばしんっ
「んなっ!? な、なんだっ!?」
梅原「あ、あははっー! いやいや、先生! これは大事なもんでしてね~」
「だとしても急に奪う奴があるか…っ!?」
梅原「そこんところ、許して下さいよぉ~……ね? ね?」
生徒①「おいおい、なんだよ梅原~! なに隠してんだよっ!」
マサ「そうだぞぉ! 水癖ぇだろ! 見せろ見せろ!」
ケン「橘もなにグルになってんだ!? 仏の橘が泣いてるぜぇ!?」
純一「い、いや! そんな気になるもんじゃなくて……!」
梅原「そ、そうだぜ!? んな大したもんじゃねーってこれは!」
絢辻「──静かにしないさい」
クラス一同「っ……」しーん
絢辻「…今日は高橋先生がいません。
その言う時こそ皆は規則に沿った模範的な生徒に徹するのが常識じゃないかしら」
マサ「うぐっ……確かに、麻耶ちゃん先生は今は大変な目にあってんのに…」
ケン「俺らが、こうやって騒いでるのは……どうかと思うよな…」
純一(す、凄い! 一気にクラスのみんながまとまって行く……流石だ絢辻さん!)
絢辻「わかってくれたかしら、うん…だから皆?
今からの時間は、それぞれ考えて自習をすること。いいかしら?」
クラス一同「はーい」
梅原「す、すまねぇ……絢辻さん。迷惑かけちまって…」
絢辻「いいのよ、それよりも梅原君も早く席について自習をしなさい」
梅原「ういっす…」
絢辻「というわけですので、先生。職員室に戻られても大丈夫ですよ」
「あ、ああ……わかった。それでは、これで──…梅原、後で職員室に来るように」
梅原「え、ええー…」
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