ちなつ「明日はあかりちゃんの誕生日…」(113)

明日は、私の親友、あかりちゃんの誕生日だ。
いつも笑顔なあかりちゃん。あかりちゃんの笑顔は、見る度に、なんだか元気になる。
だから、誕生日くらいは、あかりちゃんを自分の手で笑顔にしてあげたい。

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スレ立て代行なので残りは同じトリップの人に引き継ぐよ

代行ありです。初投稿ですが、よろしくお願いします。

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そう考えた私は、思い切って先輩たちに相談してみた。

すると、先輩たちもごらく部で何かしてあげたいと思っていたらしく、明日の放課後、パーティーをすることになった。

京子「じゃぁ、私が装飾担当で、結衣は料理担当ね。それで、ちなつちゃんは…」

ちなつ「…私、ケーキ作ります」

結京「えっ」

ちなつ「えっ?」

結衣「いや、ちなつちゃんは…」

一瞬、結衣先輩の顔が引きつった気がしたけど、私はとびきりのスマイルで応えた。

ちなつ「大丈夫です、気持ちを込めて作りますよ!」

京子「んーまぁいっか!じゃぁちなつちゃんお願いね!」

ちなつ「まぁいっかってなんですか!見ててくださいよ、京子先輩!」

結衣(あちゃー…)

こうして、私はケーキ作りを任されることになった。

ほしゅ

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ちなつ「あかりちゃんて、何が好きなんだろ」

家にケーキの材料が無かったので、あかりちゃんの誕生日の前日である今日は、ごらく部の活動を休んで。

先輩たちには申し訳ないと思いつつ、学校の帰りにそのままスーパーへと駆け込んだ。

そう言えば、私はあかりちゃんの好きな食べ物を知らない。

と言うか、あかりちゃんは何が出てもだいたい美味しいって言って、にこにこしながら食べてしまう。

この前、私がクッキーを作った時も、面白い味だねと笑ってくれた。

ちなつ「あかりちゃんが好きそうなもの…」

ケーキ用のスポンジと生クリームまでカゴに入れたところで、手が止まってしまった。

あかりちゃん、嫌いなものとかあるのかな。

もしケーキの具材に嫌いなものがあったら、あかりちゃんを笑顔にしてあげられないかもしれない。

ちなつ「…結衣先輩に聞いてみようかな」

一瞬そう考えたけど、家に帰っていては時間が無い。学校で、さりげなく聞いておくべきだった。

ちなつ「どうしよう…これじゃぁ」

少し弱気になったけど、すぐに気持ちを奮い立たせる。

ちなつ「頑張って選ぼう。そしたら、あかりちゃんだって笑顔になってくれるはず…」

結局、みかんの缶詰にキウイ、そして安売りしていたマンゴーを買って、家に帰ることにした。

ちなつ「上手く出来ないなぁ…」

帰宅後。鞄を放り投げて、早々にケーキ作りを始めた…までは良かったのだけど。

今までケーキなんて作ったことが無かったので、レシピ本を睨みながら試行錯誤。でも、簡単には行かない。

ちなつ「キウイとみかんって、あんまり相性良くないかも…」

適当に、と言う訳では無いけど、我ながらよく分からないチョイスをしたと思う。

もう少し、組み合わせとかを考えるべきだった。

ちなつ「ふぁぁ…ちょっと休憩」


椅子に座った瞬間、急に睡魔が襲ってきた。

ちなつ「だめ…まだ出来てないもん…」

自分の気持ちとは裏腹に、意識は遠のいて行った。

ちなつ「…んぅ」

目を覚ますと、リビングのソファに寝ていた。よく見ると、毛布もかぶせてある。

ちなつ「誰だろ…」

お姉ちゃんが運んでくれたのかな。そんなことを思いながら、トイレに行こうとキッチンを横切るとき。

ふとあるものが目に留まった。

ちなつ「あっ…ケーキ…!」

一気に目が覚めた。

ちなつ「これはまずい…」

起きてから1時間経っても、デコレーションが上手く出来ない。もう、段々と空が明るくなり始めている。

ちなつ「ここがこうで…こうして…」

焦る気持ちに反して、ホイップは自分の思う様に仕上がらない。

なんとか激闘を制し、自分の思い通りのケーキが出来上がったのは、朝5時を回った時だった。

ともこ「…なつ…きて…ちなつ…ちなつ!起きて!」

ちなつ「ぅん…今何時?」

ともこ「もう8時!遅刻するわよ!」

ちなつ「えぇっ!?」

ハッと目を覚ますと、お姉ちゃんが心配そうな顔をして立っていた。

時計を見ると、8時少し前。ヤバい、安心したらまたソファで寝ちゃってたんだ。

ともこ「ちなつ、朝ごはんどうする?」


ちなつ「いらないっ!行ってきます!!」

授業の用意だけ整えて、ケーキの入った袋を持って。

私は一目散に家を飛び出した。

向日葵「赤座さん、お誕生日おめでとうですわ」

あかり「あ、向日葵ちゃん!えへへ、ありがとう!」

ちょっと遅れて教室に入ると、ちょうど向日葵ちゃんがあかりちゃんにプレゼントを渡しているところだった。

あかり「あ、ちなつちゃん。おはよぉ!」

向日葵「吉川さん、おはようですわ」

ちなつ「うん、二人ともおはよ」

ケーキは、放課後のパーティーの時まで秘密にしておくことになっていたので、

あかりちゃんにバレないように、そっと机の下に忍ばせた。

授業が終わり、放課後。

あかり「ちなつちゃん。あかり、ちょっと生徒会室に用があるから、先行ってて!」

ちなつ「分かった。じゃぁまたあとでね」

あかりちゃんが教室を出て行くのを見届けて、私は急いで部室へ向かった。

ちなつ「こんにちは、京子先輩」

京子「おぉ、ちなちゅー!待ってたよ会いたかったよー!!あかりは、生徒会室行った?」

ちなつ「ちなちゅ言うな…あかりちゃんは、生徒会室に行きましたよ。なんで知ってるんですか?」

京子「装飾が間に合いそうに無いから、あかりに生徒会へのおつかいを頼んだのだよ」

ちなつ「あぁ、そういう…結衣先輩は?」

京子「ちょっと買い出しにねー」

はぁ、京子先輩と二人かぁ。でも、結衣先輩もすぐに帰って来るだろう。

京子先輩は楽しそうに装飾を続けてるし、自分も少しは手伝わないと。

ちなつ「京子先輩、何かすることありますか?」

京子「そうだねぇ…じゃ、ケーキを用意してくれる?」

ちなつ「まだ早いんじゃないですか?」

京子「いや、すぐ結衣も帰って来るだろうしね」

京子「あかりはもう少し掛かるだろうけど、先にどんなものか見ておきたいし…」

ちなつ「しょうがないですね…じゃぁ、出しますよ。よく見てくださいね!」

本当はあかりちゃんの前でサプライズで出したかったけど。

京子先輩も順序を考えているんだろうし、仕方なく出すことにした。

ちなつ「京子先輩、ほら。これがちなつ特製、マンゴーキウイみかんケー…」

京子「…あれ?ちなつちゃん、これ…なに?」

空気が凍った。

なぜか、箱の中にあったのは

ケーキでは無かったのだ。

結衣「京子、今戻ったよ…あ、ちなつちゃん来てたんだ」

ちなつ「…」

京子「…あ、うんおかえり」

結衣「どうしたんだ?押し黙っちゃって」

京子「いやぁそれが…」

ちなつ「えっ…なんで…?」
ケーキだと思ってずっと持っていた袋。中の箱もケーキを入れてきた箱…に似ている。

でも、その中身は、明らかに違っていた。

結衣「えっと…ちなつちゃんが持ってるのは…?」

京子「ボクシンググローブだね」

結衣「ボクシンググローブ…」

京子「ちなつちゃん、これは…?」

先輩たちが、不思議そうな顔で私を見てくる。

でも、自分でも何がどうしたのかさっぱり理解できない。

ただ。

一つ分かっているのは。

ケーキを家に置いてきた…と言うこと。

ちなつ「あの…私…ケーキ取ってきますっっ」

京子「あ、ちなつちゃ──」

私はまた、一目散に走り出していた。

なんで間違えたんだろう。ケーキは、机の上に置いておいた筈なのに。

ぱっと浮かぶのは、お姉ちゃんだ。

きっと、中身がケーキだと知って、冷蔵庫に入れてくれたのだろう。

だからって、なんでボクシンググローブが置いてあったのかは、良く分からないけど。

ちなつ「はぁっ…はぁっ…」

いつも通ってる道なのに、なんだか遠く感じる。

もう、あかりちゃんも部室に来て、パーティーは私の帰りを待つのみだろう。早く戻らないと。

家が見えた。ダッシュで門をくぐり、ドアを開ける…。

ちなつ「…あれ、開かない」

普段はこの時間なら、お姉ちゃんがいるはず…。

でも、いないなら仕方ない。すぐに鍵を探す。

ちなつ「えっと鍵、鍵は…あれ…?いつもここに入れてるのに…」

いくら探しても、鍵が見つからない。鞄の中にも、制服のポケットにも、無い。

ちなつ「うそ…なんでよ…」

一気に絶望感が襲ってきた。

鍵も無い、家には誰もいない、ケーキは冷蔵庫の中。先輩たちにも連絡出来ない。

おまけに、さっきから嫌な感じだと思っていた空から、急に大粒の雨まで降り出した。

勿論、傘なんてものは持っていない。

私は、玄関先にガクっと膝をついた。

もう、うなだれるしかない。

大雨の中走って学校に戻っても良かったけど、何も持たずに戻って、先輩たちと、あかりちゃんと、どんな顔で会えばいいのだろう。

みんな、楽しみにしているはずなのに。そう思うと、足が動かなかった。

ちなつ「私…いつもあかりちゃんにちょっと冷たかったからかな…だから…神様が怒ったのかな」

自然と涙がこみ上げてくる。雨は、ますます強くなってきた。

ちなつ「私じゃ…あかりちゃんを笑顔にしてあげられないのかな」

ちなつ「途中から入ってきた私じゃ、幼馴染の先輩たちみたいに、あかりちゃんを笑顔にしてあげることは…出来ないのかな…」

すいません、24日中に上げられませんでしたorz

日付跨いでしまいましたが、書き溜めもあるので、消化試合と行きたいと思います。

見て頂いてる方、ありがとうございます!

思い浮かぶのは、結衣先輩や京子先輩に向けられる、あかりちゃんの笑顔。

いつも太陽の様に眩しくて、温かい。そんな、あかりちゃんの笑顔。

ちなつ「うっ…ぐすっ…あかりちゃん…ごめんね…ごめんね…うぅっ…」

そこから、記憶がぷっつりと途絶えた。

???「ち…ちゃん…な…ちゃん…」

???「ちな…起き…い…ちなつ…」

ちなつ「ん…え…?お姉ちゃん…と…あかり…ちゃん…?」

ふと気が付くと、周りに大勢の人がいた。

よく見るとそれは、お姉ちゃんに先輩たち、そして…あかりちゃんだった。

あかり「ちなつちゃん!そんなとこで寝てたら風邪引くよ!」

ともこ「ほらちなつ、早く起きなさい!」

京子「ちなつちゃん、大丈夫?」

結衣「帰ってこないから来てみたら、こんなところで寝てるから…」

ちなつ「あ…すいません…私、私…」

書きためあるのに焦らしてるんですか?

あぁ、泣き疲れて寝ちゃってたんだ。

でも…お姉ちゃんはともかく、ごらく部のみんなはなんでここに…?

ともこ「お姉ちゃんが帰ってきたらね、中学校の方からあかりちゃんたちが来るのが見えたの」

ともこ「だから、ちなつは家にいるんだろうなと思って招き入れたら、ここで寝てたから…驚いたわ。こんなところで、どうしたの?」

>>72 作業並行してるので、すんません;;

ちなつ「私…ケーキを取りに帰ってきたの…でもね、鍵忘れちゃって…雨も降ってきちゃって…」

ともこ「そう…とりあえず、みんな家に上がって」

結京あか「「「お邪魔します」」」

ちなつ「…」

お姉ちゃんは、私たちをリビングに通して、ホットミルクを入れてくれた。

そして、またちょっと用事があるからと、出かけていった。

結衣「ちなつちゃん、落ち着いた?」

ちなつ「はい、なんとか…あの、先輩。ご迷惑をお掛けしました…」

京子「驚いたよーなかなか帰って来ないから迎えに来てみたら、玄関先で寝てるんだもん。目には泣いた跡あるし…」

結衣「そうそう。あかりはめっちゃ慌ててるしさ」

あかり「そ、そりゃそうだよぉ。玄関先なんかで寝てたら、風邪引いちゃうかもしれないし…」

ちなつ「あかりちゃん、心配してくれてありがとね。それと…」

私は、あかりちゃんの方に向き直った。

結衣「そうそう。あかりはめっちゃ慌ててるしさ」

あかり「そ、そりゃそうだよぉ。玄関先なんかで寝てたら、風邪引いちゃうかもしれないし…」

ちなつ「あかりちゃん、心配してくれてありがとね。それと…」

私は、あかりちゃんの方に向き直った。

ダブった…すんませんorz

ちなつ「せっかくのパーティー…せっかくの誕生日なのに…私のせいでつまんないものにしちゃって、ごめんなさい」

あかり「ううん、ちなつちゃん。気にしないで良いよ。気持ちだけで、嬉しいから」

あかりちゃんは、優しく微笑んだ。胸が痛い。

ちなつ「私に…そんなこと言われる資格なんて無いよ…」

あかり「なんでそう思うの?」

あかりちゃんは、心配そうに私の顔を覗き込んだ。また、胸が痛む。

ちなつ「だって…あかりちゃんに迷惑ばっか掛けちゃったから…」

ちなつ「私じゃ、あかりちゃんのことを笑顔にしてあげられないから…」

ちなつ「私ね、あかりちゃんの笑顔に、凄くたくさん元気をもらってるの。でも、私はあかりちゃんに何もしてあげられてないよね。」

ちなつ「今日だって、せっかくのパーティーを台無しにしちゃったし…。ほんとは、あかりちゃんを笑顔にしてあげたかった」

ちなつ「ケーキを作って、あかりちゃんの笑顔を見たかった」

ちなつ「でも、やっぱり私はあかりちゃんを笑顔にしてあげることは出来ないんだなって、そう思った」

ちなつ「先輩たちと一緒にいるあかりちゃん、凄く楽しそうだから」

ちなつ「私には、あの中には入れないなって…」

私は、ふぅっと息をついた。

その時。

あかり「そんなことない!!」

ビクっと、体が震えた。あかりちゃんが、怒りに満ちた様な目で、こちらを見ている。

こんなあかりちゃん、初めて見た。

あかり「あかりはね…確かに、京子ちゃんや結衣ちゃんと一緒にいるのが、とっても楽しいよ」

あかり「でもね、それと同じくらい」

あかり「ちなつちゃんと一緒にいるもの楽しいの」


あかり「あかり、ちなつちゃんに、たくさん笑顔をもらったよ」

あかり「たくさん、元気をもらったよ」

あかり「たくさん…楽しいを、もらったんだよ!」

結衣「確かに、ちなつちゃんと一緒にいるときのあかりは、私たちといるときとはまた違って…なんというか、凄く楽しそうだよな」

京子「やっぱり、同い年ってのは手強いんだよね」

あかり「あのっ!あかり、京子ちゃんや結衣ちゃんといる時もすっごく楽しいよ?」

あかり「で、でもね?ちなつちゃんといるのも楽しいし…」

結衣「あはは、わかったわかった。でもさ…」

京子「うん、少なくともね…」

あかり「あかりは、ちなつちゃんにたくさん笑顔にしてもらってるよ!」

あかりちゃん、結衣先輩も京子先輩も。

私に向かって、今までで一番素敵な笑顔を見せてくれた。

ちなつ「…あかりちゃん、結衣先輩、京子先輩」

ちなつ「…ありがとうございますっ!」

いつの間にか雨が上がり、夕陽が窓から差し込んできた。

結衣「改めて…」

結京ちな「「「あかり(ちゃん)、誕生日おめでとう!!」

あかり「わぁい、みんなありがとう!あかり、こんなに幸せでいいのかなぁ?」

ちなつ「当然でしょ。それに、あかりちゃんは笑顔が一番だよ」

結衣「ほんとにね」

京子「言うねーちなつちゃんも」

すっかり陽も落ちちゃったけど、私の家で、改めてあかりちゃんの誕生日パーティーをやることにした。

勿論、私の作ったケーキを囲んで。

あかり「ちなつちゃん」

ちなつ「なぁに?」

あかり「あのね…えっとね?」

あかり「ケーキありがとう。あかり、ちなつちゃんのこと大好き!」

ちなつ「んもうっ、あかりちゃんたら!」

ちなつ「…」

ちなつ「お誕生日、おめでと」

おわり

投稿に時間が掛かりすいません。また、最後まで見て頂いた方、ありがとうございました。

最後に、あかり誕生日おめでとう!

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