P「春香たちが中国の池で溺れたってぇ!?」(234)

いち

春香「…………」ズーーン

春香「うぅ……帰って来たはいいけど…………どうしよう……」

春香「…………気をつければ大丈夫かなぁ……」

春香「……大丈夫…………かなぁ…………」

春香「はぁあ…………なんでこんなことに……」ズーーン

―――

P「……春香たち、今日は遅いですね」

小鳥「まぁ昨日まで旅行でしたし……まだ、疲れが残ってるのかもしれないですね」

P「うーん……」

小鳥「……あ、噂をすれば、みたいですよ?」


ガチャ


春香「お、おはよーございまーす!」

P「おお春香、おかえり!」

小鳥「お帰りなさい、春香ちゃん。中国旅行、どうだった?」

春香「あは、あははは……そりゃあもちろん楽しかったですよ!」

P「そうかそうかぁ、そりゃよかった」

小鳥「他の人たちはまだかしら?」

春香「そ、そうですねぇ…………二人とも、だいぶ疲れちゃってたみたいですよぉ……」

P「ふーん……大変だったんだなぁ」

春香「そ、そんなことより……!お土産ですよ、お土産!」

春香「事務所のみんなに、中国お菓子と、中国人形の置き物、買ってきたんです」

小鳥「あらぁ、可愛いじゃない。……ありがとう、春香ちゃん」

P「へぇ~こっちがお菓子か。……向こうのお菓子ってどんな味なんだろうなぁ」

小鳥「食べてみますか?……私たちだけ最初に食べちゃっていいかしら?春香ちゃん」

春香「どうぞどうぞ!いっぱいあるんで遠慮しないで下さい!」

小鳥「そう。それじゃあお茶でも用意して……」

P「……あ、小鳥さん。俺は水あるんでいいですよ」

春香「小鳥さん、私手伝いますよ………………うわぁ!?」コケッ


ドンガラガッシャーン

―――

?「……まさか……今時、水撒きのおばちゃんの水にかかるなんて……ね」

?「漫画じゃあるまいし……ははは」

?「……どうしようかしら。今からでも家に戻って…………」

?「うーん……この距離だと765プロのほうが近いけど……」


「あ、あのぉ……」

?「ん?誰ですか……」

?「………………あ」

あずさ「……?あれ、ええとぉ……どこかでお会いしましたっけ?」

?「え、いえ!?……し、知り合いに似てたので……ははは」

?「な、何か御用でしたか?」

あずさ「はい。……あの、765プロに行く途中で迷ってしまって」

あずさ「……初対面で変に思われるかもしれませんが……あなただったら知ってるんじゃないかって……」

あずさ「なんとなくそう思ったので……。765プロ、ご存知でしたでしょうか?」

?「え、ええ……」

(……一緒について案内したほうがいいわね。あずささんだし)

?「すぐ近くですから……こっちですよ」

あずさ「あぁ……私なんかのために、わざわざありがとうございます」

?「えーと……こっちですよ、ほら」


ギュッ


あずさ「!?」ボッ

?「……?どうかしましたか?」

あずさ「え!?い、いえ……なんでも……」

あずさ「なんでも……ありません…………///」

?「……?まぁいいや。手、離さないで下さいね」

あずさ「は、はぃ……///」

(なんだか初めて会った気がしないわ……)

(それに、とても大きくて安心する背中……)

(声も落ち着いていて、心が落ち着くみたい……)

(ひょっとして…………いいえ、きっとそうだわ……!)

(この人が私の……)

(運命の人!)

?「…………!?」ゾワワワワ

?「ひ……!?ど、どうかしましたか!?」

あずさ「……い、いぇ……少し考え事を……///」

(…………素敵な男の人……)

(その……)

(眼鏡の奥で光る瞳も、とっても綺麗です)



律子(……ひいいぃ!?背中のあずささんから謎の悪寒をぉ……)

律子(ど、どうしてこんなことにぃ……)

―――

男律子「こ、ここですよ……765プロ」

あずさ「はい。ありがとうございます……///」

男律子「そ、それはどうも……」

あずさ「あの~、もしよろしければ……お礼にお茶でも、どうでしょうか」

男律子「は、はは……そうですねぇ……」


ガシャーン!!


男律子「!?」

あずさ「えぇ!?な、何事でしょうか!?」

?「……ふん。この程度で我を御したつもりか、木偶が」

男律子「あの声……まさか…………!」


ガシャーン!!


男律子「ヤバ……。あ、あずささんは事務所から離れて!私が見てきますから!」

あずさ「え!?わ、わかりました……」

男律子「そ、それじゃ!」

ダッ

あずさ「…………あら?」

あずさ「私……あの人に名前教えたかしら?」

―――

ガチャ!

男律子「は、春香!?」

閣下「……おぉ、そなたか。今、無礼な振る舞いをするこやつ等に仕置きをしていたところじゃ」

小鳥「ひ、ひいいぃ……」

P「だ、誰!?ていうかこれは何、夢!?夢なら早く覚めて!」

男律子「お、落ち着いて下さいプロデューサー……」

男律子「……ハァ。…………給湯室、借りますね」

閣下「なんじゃ終いか。せっかく灸を据えてやろうと思っておったのに」

男律子「……いいから春香、こっち来て」

―――

P「春香たちが中国の池で溺れたってぇ!?」

律子「しーーーーっ!向こうにあずささん居るんですから!」

小鳥「で、でも……なんでこんなことに……」

春香「す、すみませんでした。実は私のせいなんです……」


―――


ガイド「お客さんたち、ここが『呪泉郷』ね。入ると大変あるから、近づくだけで済ますよろし」

律子「昔は修行場だったらしいけど、今は直通バスもあるのね~」

ガイド「はは、でもここ、観光名所の中でも特に危険。お客さんたち変わり者ね」

春香「えへへ……面白そうだったんで」

律子「まったくもう。美希なんてバスの中から今までグッスリよ?」

美希「んにゃ……あふぅ。池ばっかりでつまんないの」

春香「ほら美希、こっちこっち」

ガイド「お客さぁ~ん、くれぐれも入っちゃダメあるよぉー?」

律子「ふ~ん……池によって効果がまったく違うのね」

美希「看板中国語だけど……漢字だからミキにもわかるのっ」

律子「ほぉ~、じゃあここの泉の名前は?」

美希「えーとここは……阿……阿…………読めないの」

律子「もうちょっと勉強が必要ね」

美希「む~……」


ドンガラガッシャーン


律子「!?」

美希「え!?」

ガイド「アイヤー、お客さん言わんこっちゃない!」

ガイド「そこの泉は『閣下溺泉』!」

ガイド「その昔、『閣下』と呼ばれた高名な女傑が溺れ死んだ、悲劇的伝説のある泉ね!」

美希「ぐーしあ、にーちゅあん……?」

律子「で、でも……あくまで伝説でしょ!?それよりも春香を助けないと!」

タッタッタ

律子「春香、だいじょ

グイッ

律子「え!?」


ポーン

ヒュー……

ドボーン!


閣下「……ふん。貴様のような下等な小娘に助けてもらうほど、朦朧しておらぬわ」

美希「り、律子!……春香……本当に春香なの…………?」

ガイド「た、ただの伝説なんかじゃないあるね!」

ガイド「閣下溺泉……その伝説以来、この泉で溺れた者は……」

ガイド「水を被ると、閣下と同じ性格になってしまうね!」

男律子「うぇ~、ゲホゲホ……いきなりなんだって言うのよ春香……」

美希「!?り……律子ぉ!?」

男律子「……何よ美希、何をそんなに…………」

男律子「……え、私?」

ガイド「アイヤー!こっちのお客さんは『男溺泉』に入ってしまったあるか!?」

ガイド「その泉で溺れた者……水を被ると男になってしまうね!」

男律子「お、おと……おと、こ……?」

ペタッ

男律子「む、胸が……ない………………胸板は厚いけど」

ムニュ

男律子「ひぃぃ……あ、『ある』!?無いはずのものが…………有る!?」

美希「そ、そんな……!」

美希「は、春香酷いの!今すぐ律子を元に戻すの!」

ドゲシッ

閣下「喧しい」

ドッボーン

美希「……」

美希「……マーオ?」

男律子「み、美希が猫に……」

ガイド「そこの泉は『猫溺泉』!溺れた者、水を被ると猫になってしまうね!」

閣下「ふんっ、愉快な姿ではないか」

猫美希「……フシャー!」

閣下「なんじゃ?毛を逆立ておって。……踏み潰してほしいのか?」

男律子「が、ガイドさん……元に戻す方法は無いんですか!?」

ガイド「うむ……呪泉郷で溺れて水を被り、姿形変わった者たち……」

ガイド「お湯を被ることで、元の姿に戻ること可能ある」

男律子「お湯……」

ガイド「私たちいつもいる詰め所行けば、お湯手に入るね」

男律子「わ、わかりました。すぐ持ってきます!」

バシャ!バシャ!

春香「……あううぅ…………」

美希「……!?や、いや!?ミキ、なんで裸なの!?」

律子「わああぁ~!が、ガイドさんすいません、向こう向いててください!」

ガイド「あ、アイヤ、わかったね」

…………

律子「猫になると服も脱げちゃうから……元に戻るときは要注意ね」

美希「うぅ~……濡れててベタベタするから着にくいのぉ……」

春香「こ、怖かった……意識はあるのに自分でも自分を止められなくて……」

ガイド(後ろ向き)「お客さん落ちた閣下溺泉、意識をはっきり持たないと閣下の人格暴走してしまうね」

ガイド「精神力強い人、元の人格持ったまま、高圧的になるだけで済むね」

律子「……だけで済む、っていうほど軽い症状でもないわね、それでも」

ガイド「大丈夫、お客さんみたいにそこまで精神力強くない人でも、覚悟して水浴びれば、人格暴走しないある」

ガイド「さっきみたいに不意に変身すると、閣下の人格強く出てしまうよろし」

春香「……ていうか、元に戻りたいんですけど…………」

律子「……ハッ!そ、そうですよガイドさん」

律子「私は男の人が溺れた泉に入った……」

律子「てことは……女の人が溺れた泉も存在するんじゃないですか!?」

美希「そっか!そこに入れば、水をかぶって女の人になるから……元通りなの!」

ガイド「……お客さん、中々鋭いあるね」

ガイド「『娘溺泉』、確かに存在するね」

春香「じゃ、じゃあ……そこに行けば……!」

ガイド「でも今は無理あるよ」

律子「な、なんで!?」

ガイド「この呪泉郷、季節によって泉が枯れたり、逆に大量に湧き出たりするときがあるね」

ガイド「娘溺泉は今がちょうど枯渇期にあるから……泉は枯れてて使えないある」

春香「そ、そんな……!」

律子「いつごろ……戻るんでしょうか」

ガイド「それぞれの泉によっても変わるある。今だったら3ヵ月後くらいにはまた湧き出るね」

美希「さ、3ヶ月……そんな長い間、中国にいられないの……」

―――

P「……で、結局どうしたんだよ」

律子「しょうがないので……こちらの事務所の電話番号を伝えて……」

律子「娘溺泉がまた湧き出たら、その時に連絡をもらうことにしました」

小鳥「ってことは……あと3ヶ月は、みんなこのまま……」

春香「あうぅ~……本当にすみません……」

小鳥「ぷ、プロデューサーさん……どうしますか?」

P「うーーーん…………」

律子「この話は、今のところ私と春香と美希」

律子「あと今話した小鳥さんとプロデューサー以外には伝えてません」

律子「可能ならば……変身体質は隠したまま過ごしたいんですが……」

P「……まぁ律子はな。にわか雨とか、……その、今朝の漫画みたいな出来事とか……」

P「そういうのさえ無ければ、多分大丈夫だろう」

P「…………問題は春香と美希だよ」

春香「……あ、あはははは…………」

律子「そうなんですよ……不意に水を被らなきゃそこまで暴走しない、とは言っても……」

小鳥「日常で水を被る機会なんてないものね……」

P「それこそ、今朝の春香みたいな状況じゃないと」

春香「な、なるべく……なるべく、気をつけます!」

P「……水を被ることになったら、いち早く覚悟して変身してくれ」

春香(被ること前提ですかぁ…………酷い、プロデューサーさん)

律子「……あと美希もですよ」

律子「美希もそういう危なっかしいところがありますけど……」

律子「あの子はそれ以上に、変身体質を忘れて行動する可能性があります」

P「う……確かに」

小鳥「ためらいなくプールに飛び込みそうですよね……」

律子「そんで水面に飛び込む直前に思い出すタイプです」


P・小鳥「ウンウン」


春香(……そもそも美希ってば遅いなぁ。何してるんだろう……)

きらりん「Pちゃん…」
P「ブヒィ」

コンコン

あずさ「あの、みなさーん?」

P「はい、何でしょう?あずささん」

あずさ「いえ、あの……事務所の前に、猫ちゃんがいて……」

あずさ「私が近づくと逃げちゃうんですけど……事務所から離れようとしないんです」

律子「…………毛並みは?」

あずさ「毛並みですか?……黄色と茶色と、ライムグリーンの三毛猫ちゃんでした」

あずさ「うふふ、珍しい色の猫ちゃんですよね」

小鳥「…………」

P「…………もしかして……」

律子「もしかしなくてもそうです。……今、連れてきます」

―――

猫美希「マーオ、マーオ」

小鳥「か、可愛い!!可愛すぎるわ美希ちゃん!!」

P「これが……本当に美希なのか」

春香「……あ、お湯が用意できたみたいですよ」

P「やれやれ……」

P「おーし、美希。今元に戻してやるぞー」

トポポ

猫美希「ンニ゛ャ!?」

サッ

バシャ

P「あれ?」

小鳥「み、美希ちゃん、なんで避けちゃうの!?」

律子「人の話聞いてましたか!?」

律子「服着てないから、いま元に戻ったら裸になっちゃうでしょうが!」

P「…………あ、そうか。ごめん」

小鳥「でも……じゃあどうしましょう」

律子「ジャージなら更衣室に行けばありますよ。……あとプロデューサー殿はここから出て!」

P「そ、そうですね!」

ホカホカ

美希「うぅ~……律子、さん。ありがとうなの」

律子「どういたしまして。……いつまで素っ裸でいるの。ほら、早く着替えて」

美希「はーい」

春香「……美希はこれから、事務所に着替え置いておいたほうがいいかもね」

美希「うん、そうするの」

小鳥「ていうか、なんで猫のまま事務所に来ちゃったの?」

美希「えーとね……ここに来る途中で、男の人が二人、何かけんかしてたの」

春香「それで?」

美希「けんかの理由はわかんなかったけど……おさげ髪の人が、バンダナ巻いた人に水をバシャーってやってて……」

美希「物凄い勢いで振り回してて、美希もそれに当たっちゃったの」

律子「何それ……よくわからん喧嘩ねー。あんたも災難だわ」

美希「ホントなの!猫ちゃんのまま文句言おうとしたけど……気付いたらどこかに行っちゃってたの!」

春香「それで、事情を知ってる私たちが居ると思って事務所に……」

美希「あはっ☆そーゆーことだよ」

律子「でも何もあずささんから逃げんでもいいでしょうに」

美希「それは……やっぱり、律子、さんとか春香とか……」

美希「ちゃんと知ってる人以外には、絶対知られたくないから……」

小鳥「えぇ~……あんなに可愛いのに……」

律子「……小鳥さんは置いといて……まぁあずささんなら受け入れてくれるでしょうけど……」

律子「何かの間違いで亜美真美の耳に入ったりしたら……」

春香「」コクコクコク

小鳥「そっか……じゃあ事情を知ってる人は、最小限にとどめておくべきってことね」

律子「はい、おねがいします」

美希「あ……ミキ、変身してからずっと道に置きっぱなしだから……服、拾ってくるね」

律子「気をつけなさいよー」

―――

あずさ「あぁ、今朝のあの人はどこへ行ってしまったんでしょう……」

あずさ「私の……運命の人……///」ポッ

―――

律子「……!?」ゾワワワワ

春香「律子さんどうしたんですか?」

律子「い、いや……何か……あってはならない感情を受信してしまったような……」

春香「?」

―――

タッタッタ

美希「あ、ミキの服みーっけ!」

美希「む~……やっぱり道におきっぱだったから汚れてる……ハァ、しょうがないの」


ザッバーン


美希「……ん?」



猫「ニィニィ……」

美希「あれ、猫さんだ。溺れてるのかな……助けるの!」

美希「……ハッ!?」

美希「あ、危ないところだったの……水に入ったらまた……」

美希「えーーと…………うーん…………」

美希「……んもー!しょうがないの!」

タッタッタ……

美希「猫さん大丈夫!?こ……この服に掴まるの!」

猫「……マオ?……ンニャー」

タシッ

グイッ

美希「ふぅ~……これで一安心なの……」

美希「でも服が…………ううん!猫さんが助かったんだから……これでいいの!」

猫「ンニャー、マーオ♪」

美希「慰めてくれるの?ありがとう、猫さん……白くて可愛いね」

猫「ンナーゴ♪」

―――

律子「……じゃあそういう訳で…………」

春香「しばらく律子さんは竜宮と……私と美希のプロデュースも兼任する……」

春香「い、いいんですか?それってすごく大変なんじゃ……」

律子「知らないところで閣下になられる方が大変だわ」

春香「そ、それはそうですけどぉ……」

律子「幸い、私の場合は水被っても男になるだけよ」

律子「お湯被って元に戻るのにも、特に支障はないわ」

律子「でもアンタらはもし水被ったら、とんでもないことになるでしょうが」

春香「は、はいぃ……」

律子「3ヶ月間、これもプロデュース業の修行だと思って、何とかするわよ」

春香「す、すみません……」

律子「……んもー、元気出しなさいよぉ春香」

律子「中国に居る間……とりあえず閣下の状態でも、私なら打ち解けられるようにはなったんだし」

律子「私がついてれば、そんな大事にはならないはずよ」

―――

翌日

春香「今日は室内でのゲーム番組の収録……ですね、律子さん」

律子「一応、昨日のうちに『水着グラビア』とかの仕事は全部キャンセルしといたわ」

律子「竜宮は伊織に任せて、美希は事務所でレッスン……小鳥さん付きでね」

春香「ふぅ……大丈夫でしょうか」

律子「大丈夫じゃなきゃ困るわよ。……しばらくは、これで何とかなりそうね」

春香「はい……と、とにかく……水だけは被らないようにします!」

律子「……期待して見守ってるわ」


―――


天の声「ここまでの得点……女性アイドルチームが340Pt、男性アイドルチームが360Pt」

天の声「非常に接戦であります。……次の対決は、『激烈山手線ゲーム』!!」


ワーワーパチパチ

天の声「ルールは通常の山手線ゲームですが……」

天の声「両チームの方々の頭上には、巨大な風船があります」

天の声「制限時間をオーバーして、風船を割ったチームが負けとなります」


天の声「さぁ、風船が膨らむプレッシャーに耐えられるか……最初のテーマは『少年サンデーの連載漫画』です!」


―――

律子「あの風船の中ってまさか……」

律子「いや、まさか……ねぇ?」

―――

春香「えぇと、名探偵コナン……は言ったし……『犬夜叉』!」

ピンポーン

冬馬「……『神のみぞ知るセカイ』」

ピンポーン

―――

律子「まさか……ねぇ?」

天の声「さぁ、いよいよ4周目に入りましたー」

春香「えーとえーとえーと……タキシード銀……は言ったから……えーと……」

春香「あれー、なんだっけなぁ……ま、まずいまずい……!」

冬馬「……ハッ、もう終わりだな」


ドパーンッ!


春香(……!来る!)

ザバーッ


杏「うぇ~……びしょ濡れだよおい……」

愛「あ、あはは……春香さん、ドンマイです!」

天の声「ああーっと!特性、水入り巨大風船の餌食となったのは、女性アイドルチームだったぁ!」

―――

律子「はぁあ~……やっぱりかぁ……どうしようかしら……」

律子「……とりあえずお湯は用意しておきましょう」

―――

冬馬「ふっふっふ……天海春香、そのずぶぬれ姿がお前にはお似合いだよ」

愛「そ、そんなことないですよ!……ね、春香さん!?」

閣下「……」

閣下「……ククク……童が随分と吠えるではないか」

愛「……は、春香さん!?」

閣下「よかろう。お主の汚辱に塗れた顔が見とうなったわ」

冬馬「……は?なんだお前急に……どうした?」

閣下「ククククク……」

杏「おい……お前、こんな時に邪気眼してどーするんだよ」

閣下「喧しい。……小娘ども、貴様らも協力しなければただでは済まさんぞ?」

愛「はい!なんかよくわかんないですけど、わかりました!」

―――

律子「……暴走はしてないみたいね。…………あとはお湯をかけるタイミングだけど……」

律子「このスタジオの給湯室ってどこよ……」

天の声「最後の対決は『激烈もぐら叩き』~!」

天の声「制限時間内に叩いたもぐらの数が、そのままポイントとなります」

天の声「なお、女性アイドルチームには女性用ハンデとして―――」


閣下「おい小娘ども。お前たちは始まったらすぐに後ろに下がっておれ」

愛「えっ!?」

杏「はぁ~?動かなくていいんならいいけど……お前一人でどうする気だよ?」

閣下「むしろお前たちが居るほうが危なくてかなわん。我一人に任せておけ」

杏「協力って言うのか?それ」

閣下「ああ……我が最大限の力を発揮できる場所を与える……それも協力の内じゃ」

愛「な、なんか……いつもと違うけど、春香さんがすごくかっこいいです!」


天の声「ではゲームスタート!」

カーン

閣下「」シュババババババババババ

冬馬「ブッー!な……なんだアイツ……速すぎるだろ!?」

―――

ガイド『閣下溺泉……実は性格だけじゃなく、閣下の身体能力もそのまま受け継ぐね』

ガイド『閣下呼ばれた女傑は、中国でその名轟かせた格闘技の達人だたよ』

ガイド『だからこそ、閣下の人格が暴走したりすると大変なことになるね』


律子「……って言ってたけど……ありゃあ確かに凄いわ」

―――

春香「」シュババババババババ

男性アイドルA「な、なんだよアレ……」

男性アイドルB「人間技じゃねえよ……」

冬馬「お、おいお前ら!何ボーッとしてんだよ!体動かせって!」



杏「うわー、えげつねー……」

愛「春香さーん!頑張ってくださーい!」

天の声「しゅ、しゅーりょー……」

天の声「た、ただいまの得点……男性アイドルチーム、240Pt……合計700Pt」

天の声「女性アイドルチーム……ご、5060Pt……合計が……5450Pt……」


ザワザワ……ザワザワ……


天の声「よ、よって……優勝は、女性アイドルチームのみなさんです!」

閣下「ふむ……やはりこの小娘の体では実力も上手く発揮できんのぉ」

閣下「ま、良しとするか」


冬馬「…………」ワナワナ

―――

冬馬「何しやがった!?おい、答えろよ!」

春香「す、すみませぇえん……」

律子「負けたからって、うちのアイドルに因縁をつけるのは止めてもらえますか?」

冬馬「ふざけるな!あんなの誰が見たって異常だろうが!」

律子「そうは言っても……事実は事実ですし、受け入れてもらうしかありませんね」

冬馬「こ、この野郎……!」

春香「す、すみません、すみません!」

冬馬「……テメェも何なんだよ。さっきまであんだけ偉そうな口たたいといて、急にぶりっ子か、おい?」

春香「い、いえ!そういうわけじゃなくて……」

春香「あれは私じゃないっていうか……私だけど私じゃないようなもので……」

冬馬「はぁ?」

律子(春香、あんまり口を滑らすとマズイわよ)

春香(は、はい……)

春香「きょ、今日はすみませんでした!」


冬馬「あ、おい待て!…………クソッ」


―――

春香「はぁ~……暴走しないで済んだけど……やっぱり変身したら気が強くなりすぎちゃうし……」

律子「上手いことコントロールできればいいんだけどねぇ……」

春香「と、とりあえず……気分を落ち着かせるために水でも……」

コケッ

春香「あ」

律子「あ……あーあ」

律子「…………またお湯借りなきゃ……」

―――

閣下「おい、そこの童」

冬馬「……まだ何か用があるのかよ」

閣下「また突っかかって来られても困るのでな。こちらから灸を据えに来てやった」

冬馬「……はぁ?お前何言って

ヒョイッ

ドサァッ!

冬馬「……は?…………え?」

閣下「……お主は地べたに這い蹲る姿がお似合いじゃな」

冬馬「……え?何で?え?」

閣下「今後、下らぬことで我に突っかかって来るでないぞ?」

グリィッ

冬馬「いぎいっ!?そ、そんなとこ踏むな……踏むなぁ!」

閣下「…………ハァ」グリグリ

閣下「返事はどうしたのじゃ?」

冬馬「ひぎぃ!あ、……ぎ、ぎいぃ……」

閣下「…………」グリグリ

閣下「つまらんな……このまま潰してしまおう」

ググッ……

冬馬「ひ、ひぃ!?や、やめます!やめますやめますぅ!」

閣下「……ふ、それでよい」

スタスタスタスタ……



冬馬「ひ、ひぃ……ひぃい……」ガクガクガクガク

翔太「……冬馬君、なんでこんなとこで寝っころがってるの?」

―――

翌日

律子「も~美希……なんでこう、事務所に来るだけで猫になっちゃうのよ……」

猫美希「マーオ……」


トポポポポ


美希「ふぅ……今日もけんかにまきこまれちゃったの」

律子「はぁ」

美希「なんかすごくハワイアンな人がいて……竹刀持った人とけんかしてたの」

美希「ハワイアンな人が椰子の実の形した爆弾みたいなの投げたら、水道管が破裂しちゃって……」

律子「……ここってそんなに治安悪かったかしら」

美希「道に落ちちゃったから……また服、取ってくるの」

律子「私も一緒に行くわ、美希」

美希「いいの?」

律子「そんな危ない人がいるとこに、美希一人で行かせられないわよ」

美希「律子……うん、ありがとうなの!」

律子「さん、を付けなさい」

美希「えへへ……」

―――


ガァー、ガァー!

美希「あ、カモさんだ」

律子「あれはアヒルよ。……ってメガネしてるわね。どこかのペットかしら」

美希「あ、でも行っちゃったみたい」

律子「……治安が悪いと言うか……変な人や動物が多い町なのねぇ」

―――

美希「あれ、事務所の前に誰かいるよ?」

律子「ほんとだわ……あれ?昨日の番組のスタジオで見たわね」

美希「知ってる人なの?」

律子「いや……顔は見たけど、スタッフさんだったかどうかは……」

―――

律子「は、春香を格闘大会に出場させるぅ~!?」

ディレ「は!私、『強いアイドル』を探して全国津々浦々を巡っております」

ディレ「『アイドル・バトル・アルティメイト』のディレクターでございます」

律子「アイドル・バトル・アルティメイト……IBUのディレクターが直々に……」

美希(……律子、さん。それってそんなにスゴイ大会なの?)

律子(……ええ。美希たちには縁が無いでしょうけど……これもアイドル・アルティメイトに並ぶ超大規模な大会よ)

律子(優勝者は……例えば、スポーツ用品ブランドのスポンサーから引く手数多だし)

律子(場合によっては、IU以上の名声を勝ち取ることも可能な大会よ)

ディレ「今や可愛いだけのアイドルでは古い!これからは『可愛くて強い』アイドルが求められる時代」

ディレ「そこで、有望なアイドルを見つけ、大会に出場させたいと考えていた折に……」

ディレ「昨日の春香さんの超人的な運動神経に、目をつけさせていただきました!」

ディレ「ぜひとも、春香さんにも参加していただいて、IBUを盛り上げて欲しいのです!」

美希(……だってよ、律子、さん)

律子(そう、ねぇ…………)

律子「…………」

律子「春香が参加するかどうか、は置いておいて……」

律子「それで言えば……うちの菊地真、なんかはどうでしょうか?」

ディレ「ああ、菊地さん!いいですねぇ。今回お伺いした一番の目的は春香さんだったんですが……」

ディレ「実は、菊地さんにも参加してもらおうとは考えていたんですよ」

律子「あ、そうだったんですか」

ディレ「はい~。元々は別の日に伺う予定だったんですが……」

ディレ「昨日のアレを見せられて、いてもたってもいられなくなりましてねぇ」

律子「ふーむ……」

ディレ「……どうでしょうか?」

律子「……とりあえず、時間を下さい。本人たちにも確認して、それからご連絡差し上げます」

―――

真「IBU!?もちろん出場するに決まってるじゃないか!」

律子「……ま、だろうとは思ってたわ。念のためね」

千早「私は断固反対ですっ!春香をそんな危険な大会に出場させるだなんて……!」

春香「ち、千早ちゃん……落ち着いて、ね?」

千早「これが落ち着いていられるわけないでしょ、春香!?」

千早「大体、なんで春香なんですか!?」

律子「え、えーとね……あはは……話せば色々と長くなる事情が……」

千早「はぁ、事情?」

律子「……春香、千早にだったら、大丈夫かしら?」

春香「え、あ、うん……大丈夫です律子さん」

真「……?何、何が?」

美希「あ、あは~……真君は、ミキとちょっとお買い物に出かけよ!」

真「え?今?」

美希「み、ミキ、美味しいババロアが食べたいの!……ね!」

真「わ、わかったよ美希……」

律子(よし、よくやったわ美希!後でボーナスおにぎりあげるわ!)

千早「…………どういうことなの?」

―――

千早「……冗談もいい加減に……って」

千早「律子のその姿見せられたら……言えないわね」

男律子「……飲み込みが早くて助かるわ」

千早「ご、ごめんなさい……その姿で女言葉は……プ、クク……」

男律子「……まぁ、自分でも違和感バリバリだけどさぁ」

春香「ち、千早ちゃん。そういうことなんだ……」

千早「……でも私は反対よ。水を被って強くなろうと、春香は春香だわ」

千早「私は……大事な親友に、危険な目にはあって欲しくない」

春香「千早ちゃん……」ジーン

律子「ハァ~やれやれ……」

律子「ちなみに聞くけど……春香自身は、どうなの?」

春香「私、ですか?」

律子「ええ。最終的には春香に決めてもらうしかないわけだし」

春香「私は…………」

春香「……挑戦、してみたい」グッ

千早「ちょ……春香、あなた自分が何言って……!」

春香「わかってる!わかってるよ千早ちゃん!」

春香「でも私……今まで、一番になったこととか無くて……」

春香「何のとりえも無いって思ってきたから……」

春香「たとえ変身した状態でも……一番を取れれば、何かが変わるんじゃないかって……」

春香「だから私、挑戦してみたいの!」

律子「…………」

千早「な、何考えてるのよ……春香!」

千早「もし試合中にお湯でも被って変身が解けたら……」

春香「その時はまた水を被るようにするよ。被れないで負けたら、そこまでだったんだって思うことにする」

千早「か、閣下の状態でも勝てないくらい強い人が出てきて、春香の身体に傷がついたら……」

春香「……どんな分野でも、1番を取るためにたくさん傷つくのは覚悟してるよ」

千早「そ、そんな……!」

律子「いいでしょ千早、本人がここまで言ってるんだから」

千早「……イヤ!私には納得行かない!……春香を……誰からも傷つけたくない!」

春香「千早ちゃん……」

律子「……埒があかないわね」

バシャ

千早「!?」

閣下「……いきなり何をするか」

律子「千早ちゃんを説得してください、閣下」

千早「んな!?」

閣下「ククク……小娘がよくもまぁ、厚かましいものよ」

閣下「……ま、我の余興を他人にどうこうされるのも癪だからな……」

キッ

千早「!?」ビクッ

閣下「そこの貧乳小娘、引き際を考えぬ意固地な女は死期が近づくぞ?」

閣下「……ついでに、身体の成長も阻害されるかのぅ」

千早「くっ!?……わ、私の胸のことは関係ないでしょう!?」

閣下「フフフフ……下らんことで熱くなりおって」

グイッ

千早「きゃっ!?」

閣下「良いか?我が負けることなど断じて有り得ぬ。その身体に証拠を刻み付けてやっても良いのだぞ?」

千早「ひ……」

閣下「クク、この程度で身体を鳴かせおって……」

千早「や、いやぁ……」ジワァ

閣下「どうじゃ?我に従うか?」

千早「……」コクコク

閣下「……ふ、他愛も無い」


トポポポ

律子「じゃ、春香も出場決定で」

春香「ご、ごめんね、千早ちゃん……」

千早「…………」

千早(さっき、春香に……閣下に、急に見つめられたとき……)

千早(そして、力ずくで説き伏せられていたとき……)

千早(なんか、こう……)

千早(……新しい扉が……開いたような…………///)

―――

響「おー、IBUの特集やってるぞー」

伊織「優勝候補の特集で……真っ先に春香が取り上げられるなんて……」

亜美「うぅ~ん、最近のはるるんってちょっと怖いときあるもんねー……」

響「そうだなぁ。春香があんなに運動神経良いなんて知らなかったぞ」

伊織「……あの春香がねぇ…………」

亜美「千早おねーちゃんも最近怖いよね」

響「……春香が怖いときだけ、異常に近づくんだよなぁ……」

伊織「あの春香が千早を組み伏せるのも驚いたけど……」

響「……うん、千早がわざとそうなるために近づいてるように、見えるんだよなぁ……」

響「……お、961プロも参戦表明だってさ」

亜美「あそこに強い女の人なんていたっけ?」

伊織「……『シャンプー』?聞いたことないわね」

亜美「うわぁー!でもすっごく綺麗だよ!」

響「ほんとだなぁ。しかも強いって……どれくらい強いんだ?」


アナ『シャンプーさん、IBUの意気込みのほどは?』

シャンプー『私、アイドルのことはよくわからないけど……強い人間居たら倒す。それだけのことね』


伊織「キツそうな性格してるわねー」

亜美「いおりんがそれ言っちゃうんだ」

伊織「……どういうことよ」

―――

真『どれだけ出来るかはわからないですけど……ベストを尽くします!』


亜美「まこちんかっこい~」

伊織「真も優勝候補の一角なのねぇ」


MC『えーでは来るべき大会に向けて、ここでルールのおさらいをしておきましょう』


①大会はトーナメント方式で争われる

②顔面・頭部への攻撃はNG、ボディーは可

③武器は使用可能だが、刃物と銃火器系はNG

④ダウンして10カウント以内に立ち上がれない場合はKO

⑤KOで勝負が付かない場合は判定へ

⑥KO・判定、どちらの場合においても、「美しさ」が最重要項目となる

⑦試合中に美しくない攻撃を行った場合、KO勝ちをした場合でも失格となる

⑧相手への有効打が少ない場合でも、試合中の振る舞いが美しい場合は判定で有利になる

伊織「見れば見るほど、とんでもないルールよねぇ……」

亜美「えーとね、『格闘流アイドルコンサート』って提唱してるんだってさ」

響「……どこにコンサートの要素があるんだ…………」

亜美「お客さんの前でやってるからじゃない?」


―――


黒井「いやぁ~シャンプーちゃん!インタビューもバッチリだったよぉ!」

シャンプー「このくらい当然ね。それより黒井社長、約束覚えてるあるか?」

黒井「もちろんだとも。シャンプーちゃんが優勝した暁には……」

黒井「中国の呪泉郷にある『男溺泉』、いくらでも汲み出してきてあげようじゃないかぁ!」

シャンプー「……それならいいね。私、絶対優勝してあげるよ」

黒井「ああ、頼んだよぉ」

シャンプー(負けられないね……!)

黒井(中国仕込みの技術は本物だ……彼女さえいれば今年のIBUは貰ったも同然だな……)

黒井(……そうだな。念には念を入れておくか)

シャンプー「……?黒井社長、どうしたね?」

黒井「いや、なんでもないよシャンプーちゃん……」ニヤリ

―――

P「ま、真ぉ!どうしたんだその足!?」

真「へ、へへ……すいません」ヒョコッ

真「なんだかフラフラ運転してる危ない車がいて……慌てて避けたんですけど……足ひねっちゃいました」

P「あ、足って……大丈夫なのか!?ちゃんと歩けるのか!?」

真「も、も~……全治2週間くらいで、ちゃんと歩けるようになれますよ」

P「そうか……よかったぁ……」

雪歩「で、でも真ちゃん……明日はIBUの大会の日なのに……」

真「しょうがないよ……運も実力のうちさ」

真「そりゃあ悔しいけど、前日に怪我するなんて……ボクの実力が足りなかったってことだよ」

雪歩「そ、そんな……!」

春香「真……」

真「春香、ボクの分も頑張ってきてくれ。頼むよ」

春香「う、うん!」

律子「…………」

美希「……?律子、さん……?」

―――

IBU当日

律子「いい?美希……何食わぬ顔で961の控え室に行って……情報を集めてくるのよ?」

猫美希「マーオ!」

律子「きっと真の怪我も黒井の仕業だわ。……ま、そうでないとしても、情報収集はしておかなくちゃね」

律子「相手の黒い情報を入手できれば良し、シャンプーの情報を集められればそれも良し!」

律子「……大丈夫ね?」

猫美希「マーオ!」

律子「よし、いい返事よ。……おかかのたっぷり入ったおにぎり、作って待ってるわ」

猫美希「フニャー!ニャンニャニャン!」

タッタッタ……

律子「……さて」

バシャッ

男律子「美希だけじゃ不安だから……私もやるだけのことはやらないとね」

―――

765プロ控え室

閣下「……足りん」

ゲシッ

千早「も、申し訳ありません閣下!」

閣下「足の指圧はもっと力を入れるようにと申したであろうが。なんだその力は、赤子か」

千早「も、もっともっとですね……!」

グイグイグイグイ

閣下「おお、そうじゃそうじゃ。非力で貧乳の割にはやりおるではないか」

千早(くっ……良い様に言われ、言い様にこき使われているというのに……)

千早(な、なんだか気持ちいい……!)

―――

961プロ控え室

猫美希「…………ンニャ」

サササッ

猫美希(……まだ誰も来てないみたいニャの)

猫美希「……ニャ?」

黒井「……何、まだ来れない?試合は1時間後だぞ!?」

黒井「出前って……大会を何だと思ってるんだ!」

黒井「本当に間に合うんだろうな……。……よし、きっちり聞いたからな」

黒井「……何?お湯を用意しておけだと?」

黒井「……まぁいい、わかった。用意させよう。遅れたら話にならんのだ……わかったな!?」

ピッ

黒井「ハァまったく……。シャンプーのヤツめ、こんな日にまで出前のバイトなど……」

黒井「しかし何故にお湯を……まぁいいか。……おい、手のあいている者、給湯室でお湯を沸かしておけ!」


猫美希「…………フニャア?」

ごめんなさい、一回寝て休みます。

大会についてもちゃんと完結させるつもりなので

昼ごろまで保守をお願いします。


すいません、何でもしますから、お願いします!

なんか眠れそうにないんでそのまま投下します

―――

MC「さあ始まりました、アイドル・バトル・アルティメイト!」

MC「最も美しく、最も強い女性は誰なのか……それが今日決定致します!」

MC「各地方・各事務所から集まった、美しさと強さを備えたアイドルたちが、リング上で繰り広げる舞の数々……」

MC「みなさんには、そんな『格闘流アイドルコンサート』を心行くまで楽しんでいってもらいたいと思います!」

ウオー、オー

閣下「……ふ」



男律子「春香、ていうか閣下……は大丈夫そうね」

男律子「さて、と……」


MC「……ルールは以上となります!」

MC「では早速一回戦から始めて行きましょう!一回戦、第一試合のカードは―――」

男律子「美希~、美希ちゃんどこかな~?」

警備員「……ん?君は関係者かね?」

男律子「はいそうですよー。ほら」

警備員「……む、『冬月律』……よし、わざわざ呼び止めてすまなかったな」

男律子「いえいえ、それでは」


男律子「ふぅ、小鳥さんに感謝しないとね……」

男律子「まぁこのテの許可証なんて、そこまで詳細な戸籍を聞かれるわけでもないものね」

男律子「美希~、お湯と着替えとおにぎり用意してきたよ~」

―――

シャンプー「シャンプー、ただいま到着ある」

黒井「まったく余計な心配をかけさせおって……」

黒井「ほれ、お湯も用意しておいたぞ」

シャンプー「わぁ、黒井社長感謝ね。……でも使わないで済むのが一番ね」

黒井「……?何のことだ?」

―――

MC「つ、強い強い!」

閣下「その程度の力で我に叶うはずが無かろうが、木偶め」

MC「わずか一瞬!わずか一瞬の出来事でありました!」

MC「ゴングとともに的確に急所を突き、一瞬で相手をリングに沈めましたぁー!」

MC「強さ、美しさ、ともに文句なし!一回戦、第七試合の勝者は765プロ所属、天海春香さんでーす!」

ワーワーパチパチ


あずさ「あらぁ、春香ちゃんは勝てたのね。よかったわぁ」

あずさ「……でも困りましたぁ……ここはどこなんでしょうか……」

あずさ「…………あら!?…………あ、あの人は……」


男律子(うーん、961の控え室前まで来たはいいけど……)

男律子(美希ってば、もう765の控え室まで帰ちゃったのかしら)

あずさ「あ、あの……!」

男律子「…………げ」

すみません、今度こそ寝ます。

保守お願いします。オナシャス




しばらくしたら再開します

あずさ「まさか……こんなところでまた会えるなんて……///」キラキラ

男律子(や、やばい……この状態の時にあずささんに会うと、なぜか悪寒が……)ゾワワワ

あずさ「すみませんが……あの時のように、また道案内をしていただけないでしょうか?」

男律子「道案内……ね。はは、は……そのくらいならお安い御用ですよ……はは」

あずさ「本当ですか?ありがとうございます……!」

ギュッ

男律子(ひ、ひー……!なぜか人肌以上の熱を手のひらから感じるぅ……)


?「どういうことなんだキミ!?説明したまえ!」

ディレ「す、すみません……!しかし、実力は確かなので……なにとぞ……」

?「強くて可愛ければ誰でもいい、というその考えは何とかしたまえ!」


男律子(……うちにスカウトに来たディレクターの声?)

男律子「……ちょっとすいません」

グイッ

あずさ「え……えぇ!?こ、こんな、こんな所で抱き寄せるだなんて……///」

男律子「……しばらくじっとしてて下さい」

あずさ「は、はいぃ……///」ドキドキドキドキ



?「いくら実力主義の大会とは言ってもな、スポンサーやマスコミの手前、素人を参加させるわけにはいかんのだよ!」

?「前日に棄権者が出たからと言ってだな……芸能事務所にも所属してない者はアイドルとは呼べんだろうが」

ディレ「そ、それなんですが会長……!一応、昨日付けで突貫的に事務所所属にはしておきました!」

会長「本当か?……どこの事務所だ?」

ディレ「えー……昨日、彼女がいきなり事務所に押しかけてきまして、参加をしたいと……」

ディレ「容姿も端麗で、実力を見たところ、優勝候補に匹敵する力の持ち主だったものですから……」

ディレ「それで急遽、各事務所に連絡をとって在籍させられるかを確認していました」

会長「前置きはいい。結局、どこ所属になったんだ?」

ディレ「ちょうどアイドルが不足していた……とのことで、876プロに。石川社長も快諾してくださいまして」

会長「ふぅ、そうか。……スカウトに熱を入れるのはいいが、余計なトラブルは避けてくれよ?」

ディレ「は、はい……。申し訳も……」

男律子(……昨日の棄権者……真のことかしら)

男律子(876プロ所属……か。昨日のことだけど……涼には連絡行ってるかしら?)

あずさ「はぁあ~……///」

あずさ(なんだか……抱きしめられていると、すごく暖かい気持ちになってしまいます~……)

あずさ(やっぱり間違いないわ……)

あずさ(この人が私の……運命の人……)

ギュッ

男律子「!?」ゾワワワワワワワワワ

バッ

あずさ「あっ…………。ど、どうして離して……」

男律子「す、すみませんでした!道案内ですよね!どこ、どこですか!?」

あずさ「あ……は、はい……」シュン

あずさ「…………765プロの控え室に……」

男律子「そーですか!765プロはこっちですよ!さあ行きましょう行きましょう!」

あずさ「…………ハァ」

―――

猫美希「マーオ!」

あずさ「あら、この前の珍しい三毛猫ちゃん!」

男律子「お、おぉ~……えーと……み……ミケ!ミケ!こんなところにいたのか!」

あずさ「ミケ……?ひょっとして、あなたの猫ちゃんなんですか……?」

男律子「そ、そーなんですよー!こんなとこにいたのかミケー!心配したぞー!」

猫美希「ニャ……フニャ」

男律子「あ、ここが765プロの控え室ですよ!それじゃ!」

スタスタスタスタ……

あずさ「え!?あ、ちょ、せ……せめてお礼の一言だけでも……」

あずさ「……行ってしまいました。あぁ……私の運命の人……」



トポポポ

美希「ふー!ニャんとかバレずに済んだの!」

律子「はい服……あと口調が猫になってるわよ」

美希「あれだけ長い間猫になってたことなんてないんだから、しょうがニャいの!」

律子「はいはい……ともかく、ご苦労様」

律子「何かわかったこと、あったかしら?」

美希「えーとね、シャンプーって人、ここに来る直前まで出前のお仕事してたみたい」

律子「…………」

律子「………………他には?」

美希「んとね……なんだかたくさん、お湯を用意してもらってたよ」

美希「でも何に使うのかはわからなかったの」

律子「お湯…………」

美希「そのくらいかなぁ」

美希「あとはシャンプーって人が、控え室ですっごい集中してて怖かったから……居れなかったの」

律子「……ん、いや十分だわ。ありがとう。……はい、おかかおにぎり」

美希「ンニャー!ありがとうなの律子……さん!」

律子(お湯…………いや、中国の出身みたいだし……ひょっとしてひょっとすると……)

シャンプー「ハッ!」

ドゴオッ


カンカンカーン

MC「み、見事に決まりました!シャンプー選手、決勝ラウンドに出場決定です!」

ワーワーパチパチ

MC「先ほどの試合で、天海春香選手はすでに決勝行きのチケットを手に入れております」

MC「そして今、2人目の椅子が埋まりました」

MC「……さぁ次の試合とその次の試合で、3人目、4人目の……」

MC「…………え!?……し、しかし……」

MC「……えー、発表いたします…………」

MC「第3試合の対戦選手の一人が、腹痛を訴え大会の棄権を表明いたしました」

ザワザワ……ザワザワ……

MC「よって本来ならば不戦勝になるのですが……」

MC「その選手が、『第4試合の二人もまとめて相手にしてやる』と仰っておりまして……」

MC「第4試合の各選手に話を伺ったところ……お二方ともこれを承諾!」

MC「さらにさらに、決勝をトーナメントではなく……」

MC「この試合同様に、3人対戦形式のバトルロワイヤルにすることを、大会側も承諾いたしましたぁー!」

ウオー!ヒューヒュー!


MC「よってこの第3試合と、この試合を勝ちあがった勝者たちとで行われる決勝戦……」

MC「3人対戦形式のバトルロワイヤル方式で、真のIBU女王を決定したいと思います!」

パチパチパチパチパチパチパチ


MC「さぁでは早速、第3試合の選手たちに登場してもらいましょう」

MC「まずはこのバトルロワイヤル方式の発案者!無名でありながら圧倒的な実力で勝ち進んできた正にダークホース!」

MC「876プロ所属―――」


―――

閣下「こやつ……やるな」

千早「……そんなに強いんですか?」

閣下「ああ。少なくとも、画面に映っておるあの2人では相手にならぬわ」

千早「あのシャンプーって人もそうだけど……この人も……」

千早「はる……閣下!その……負けないで下さいね!」

閣下「……ふ」

グイッ

千早「きゃっ!?」

閣下「お主は安心して見ておればいい。我が勝ち進む所をな」

閣下「……お主の指圧、悪くはなかったぞ」

千早「か、閣下……はい!」

あずさ「……え、えぇとぉ…………」

あずさ「控え室に来れたのはいいけど……どういうことなのかしらぁ……」

―――

美希「律子、さん。そんなに水ばっかり用意して、どうするの?」

律子「……多分だけど決勝戦……この水が、絶対に必要になるわよ」

律子「ほら、美希もペットボトルでもなんでもいいから……入れられるだけ入れなさい」

―――

MC「さぁ、長かったこの大会も、ついにこれを残すのみとなりました……」

MC「アイドル・バトル・アルティメイト……決勝戦です!」

ウオー、オォー!

MC「会場も割れんばかりの大声援に包まれております!」

MC「今回は例年とは違い、急遽バトルロワイヤル方式での、3人同時決戦となりました!」

MC「果たしてこれがどのように運命を分けるのかぁ~!」

MC「それでは早速、栄えある決勝戦の舞台に勝ちあがった、3人の美しく強いアイドルたちをご紹介いたしましょーう!」

MC「まずは961プロ所属、『シャンプー』!」


チリンチリーン

シャンプー「毎度!シャンプーお待たせある!」

MC「961プロに所属しながら、中華料理屋でもアルバイトをされている働く美人アイドル!」

MC「しかぁーし!中国仕込みの拳法の腕前は達人級だぁー!」

MC「決勝戦には、馴染みの自転車とおかもちを持参で入場!」

MC「セコンドには店の従業員仲間であり、同じく拳法の使い手、『ムース』さんが付きます!」

ムース「シャンプー!オラがついてるから優勝間違いなしだぞ!」

ギュッ

観客「は、はぁ……どうも」

シャンプー「…………はぁ。乱馬が付いてくれればよかたあるのに……」


MC「続きまして、765プロ所属……『天海春香』!」

ウオォー!ウォー!!

閣下「……なんじゃ貴様ら、我に向かって図が高いわ。そこに跪くが良い」

ハハァー!


orzorzorzorzorz


MC「可愛らしいドジッ娘アイドルが突如豹変!?期待の格闘アイドル新星の登場です!」

MC「そのギャップにやられるファンが続出!中には自分から踏んでもらおうとする奇特なファンの姿も!」

MC「可愛らしい女の子と、高圧的な女王様が内包された、まったく新しい二面性アイドルの道を切り開きました!」

MC「今回は、彼女が『女王様』の時の勝負衣装……パンキッシュゴシックで入場です!」

MC「セコンドには同じ事務所の同僚、如月千早さんが付きます!」

千早「が、がんばって……!」

閣下「……ふ、任せておれ」


MC「そして最後の選手……876プロ所属、『乙女屋乱子』選手!」

乱子「うふっ!よろしくお願いしまーす!」

MC「なんとエントリーは昨日!876プロにも昨日付けで所属!まさに新人、まさにダークホース!」

MC「しかしその強さと可愛さは折り紙つき!予選でも他を寄せ付けない圧倒的な実力を見せていました!」

MC「少々男っぽく、荒っぽい立ち回りが気になる所ですが……優勝如何に関わらず、大会後も要注目のアイドルとなるでしょう!」

MC「そして何より、このバトルロワイヤル方式の提案者!その型破りな発想力で、IBU女王の座も奪えるか!?」


MC「セコンドには、ご友人の『天道あかね』さん、そして同じ事務所の『秋月涼』さんが付きます」

涼「な、なんで僕がこんなことに……」

あかね「ごめんなさい涼くん……アイドルの振る舞いなんて、アイツ全然わからないから」

あかね「美しくない、って減点されると困るし……アドバイスだけでもお願い!」

涼「わ、わかりました……」

乱子「……へっ!問題ねぇよ。俺にかかればアイドルだろうが何だろうが、華麗にぶちのめしてやるよ」

あかね「もう……」


―――

律子「ふぅ~ん、涼のやつ……」

律子「…………」ピッ

プルルルルル……

―――

涼「ひぃ!?ね、姉ちゃん!?」

涼「あ、あかねさんちょっと失礼します!」


ピッ

涼「……なんだよぉ、律子姉ちゃん…………」

涼「えぇ!?ら、乱子さんの情報ぅ~!?」

涼「話さないと僕の正体もバラすぅ~!?ぎゃ……ぎゃおおおおおん!」

―――

ピッ

律子「ふっふっふっふっふ……」

美希「律子、悪い人みたいな笑い方してるよ」

律子「偶然にしては出来すぎね……もはや運命……かしら?」

美希「何が?」

律子「……美希、いつ猫になってもいいように、準備しておきなさい」

美希「…………なんで?」

―――

涼「ううううぅ……ご、ごめんなさい……」

あかね「ど、どうしたの涼くん、いきなり謝ってきて……」

涼「あ、あかねさん……できれば『くん』じゃなくて『ちゃん』で……」

あかね「あ、ごめんなさい。……でもすごい落ち込み方だけど…………」

涼「いえ、いいんですいいんです……」

カーン!

MC「さあ決勝戦が始まりました!」

MC「……と、どういうことだ~!?3人が3人とも、間合いを計ったまま動けません!」


乱子(シャンプー……はわかるが……この女相当……)

シャンプー(……こっちの小さい女も、こっちのリボンの女も……強い……!)

閣下(……ククククク。疼きおるわ。こやつら中々……)

―――

美希「『早乙女乱馬』……名前違うよ?乱子、じゃないの?」

律子「芸名ね、それは。本名は乱馬よ、涼から聞いたわ」

律子「大会で優勝すれば、世界中を簡単に飛びまわれるようになる……ってことで参加したらしいわ」

律子「昨日、876の事務所に挨拶に来たときに色々とあったらしくて……涼とは打ち解けたみたい」

美希「ふぅ~ん」

律子「ふっふっふ…………」

乱子「……でりゃあ!」

閣下「ふんっ」ヒラッ

ドゴォ!

MC「最初に仕掛けたのは乱子選手!そのパンチで早くもリングに穴が開いたぁー!」

シャンプー「二人いっぺんに……くたばるよろし!」

ドガッドガッ!

MC「シャンプー選手、自前の大きな球のついた棍棒を振り回します!」

閣下「……面白いではないか」

……ヒュッ!

乱子「あで!?……くっそ手前ぇ……」

MC「春香選手のけたぐりが乱子選手にクリーンヒット!流れるような美しい動きも見事です!」

乱子「ぐ……そうか、美しさも考慮しないといけないんだった」

乱子「美しさ…………よし、スピードなら負けねぇ……だから、速さで魅せる!」

ヒュッヒュッヒュッ!

閣下(……打撃か、しかも速い!)

ガガッ

閣下(む……的確に急所を狙っておる。一切の澱み無い動き……天性のものじゃな)

MC「春香選手、かろうじて防御しましたが乱子選手のスピードについていくのがやっとです」

乱子「……よし、これで技術点も稼げただろ」

ゴンッ

乱子「がっ…………!」

シャンプー「なに余所見してるか。油断大敵ね」

乱子「しゃ、シャンプーお前……」

ハラッ

乱子「……あ」

シャンプー「!?も、もしかして……乱馬?」

MC「おっと、乱子選手……どうやらショートヘアーはカツラだったようです」

MC「しかしおさげ髪も似合っています!……なぜカツラを被っていたのでしょう」

シャンプー「やっぱり……やっぱり乱馬ね!」

乱馬「……セコンドにあかねが居る時点で気付けっつーの」

ドゲッ

シャンプー「あいやっ」

ドガッ

乱馬「がっ!?」

閣下「お前たちこそ余所見をするのが好きなようじゃな……」

MC「決勝戦バトルロワイヤル、混戦の様相を見せてきましたー!」


男律子「……よし、これだけ荒れてくれば…………」


シャンプー「乱馬!ここは一時休戦ね」

乱馬「おうよ、まずはあの……生意気な女を先に叩く!」

閣下「おぉ二対一か、構わんぞ。良い余興じゃ」

乱馬「ほざけ!」

シュバッ

シャンプー「こっちもね!」

ヒュッ!

閣下「……ふん」ヒラリッ

カーン!!

乱馬「あぅ……」

シャンプー「あいや……」

MC「こ、これは一大事!結託して春香選手を追い詰めた二人でしたが、それを利用されて相打ち状態に!」

閣下「ククククク……」

乱馬「こんのやろぉ……」

シャンプー「ただじゃおかないね……」

―――

あかね「も~、乱馬もシャンプーもあの人ばっかり狙って……」

あかね「美しさも重要だってあれほど言われたのに……あのあしらわれ方じゃ……」

涼「ら、乱子さーん!もっと可愛く、可愛くですよ!そんなにしかめっ面じゃ……」


乱馬「そ、そうは言ったってよぉ……」

ムース「そこじゃーシャンプー!相手の隙をつくのじゃー!」

あずさ「は、はぁ……シャンプーさんは、あっちですよ」

ムース「……む?」

スチャ

眼鏡装着

あずさ「…………?」

ムース「……綺麗な女子」

あずさ「あ、あらあら~」

ドゴッ

ムース「か゜っ…………」


シャンプー「セコンドが試合中になにしてるね!?」

ムース「ご、誤解じゃシャンプぅー」


MC「おっと、なぜかシャンプー選手、セコンドのムースさんに鉄球棍棒を投げつけたぞぉ!?」

ムース「お、女子は危ないから下がっておれ……」

あずさ「は、はいぃ~、あなたもお気をつけて……」


千早「閣下!」

閣下「黙っておれ、気が散る!」

千早「は、はい……」

千早(……あしらってるように見えて、やっぱり二対一じゃ……)

千早(閣下……ううん、春香……負けないで!)


男律子「……そろそろ頃合かな」

男律子「閣下ー、冷たい水ですよー!これで気分をリフレッシュさせてください!」


バシャア!


MC「おや、観客席から水が撒かれましたね」

シャンプー「…………げ」

ササササッ

……パシャッ

MC「シャンプー選手、華麗に水を避けました」

MC「コンサートにはファンからの差し入れも付き物!……ということで」

MC「今大会IBUでは、使用が禁止されている刃物・銃火器を除き……」

MC「観客席からの武器等の差し入れも許可しております!」


ムース「な……!そういうことは早く言わぬか!」

ムース「シャンプー使え!」

ポーン

MC「ムースさん、自身の得意分野でもある暗器を差し入れするようです!」

シャンプー「…………」


MC「シャンプー選手これをスルー!」

MC「セコンドのムースさん泣いております!」

乱馬「あかね、何かないか!?」

あかね「そ、そんなこと急に言われても……」

乱馬「……えぇい!ムースの頭に乗ってる鉄球棍棒でいいや!貸せ!」


男律子「それもういっちょー!」


バシャア!


ムース「……グァ」

乱馬「あ、棍棒落ちた……」

MC「なんと!水を被ったとたんに、ムースさんがアヒルに様変わりしてしまいました!」


美希「あのアヒルさん……あのときの、メガネのアヒルさんなの!」

男律子「なぁーるほどねー……」

MC「信じられません……これは、これは…………」

MC「ムースさんは稀代の手品師でもあったようです!」

男律子「……ま、そう解釈されますか」

閣下「おさげ女も水を被っておったが……外れか」

閣下「となると……」


千早「か、閣下!私もなにか差し入れしたほうが……?」

閣下「武器はいらん。お前も水を撒け」

閣下「なるべく中国娘の方を狙えよ」

千早「は、はぁ……」


美希「はい千早さん、コレ」

千早「美希!?なんでここに?」

美希「細かいことは言わないのー!……あ、あとミキも手品使えるよ?」

千早「手品って……あ、……ああ、そうね……」

美希「なんでもいいから……あの人に水をかけるの!」

バシャ!

バシャ!

シャンプー「くっ!?あちらこちらからバシャバシャと……鬱陶しいね!」

ヒュオ!ヒュオ!

MC「す、すごいすごい!シャンプー選手、巧みに水をかわしていきます!」

MC「しかし何故避ける必要があるのでしょうか!?」


シャンプー「そんなの……言えるわけが…………」

ムース「ガァー!グァグァ!」

乱馬「!?シャンプー後ろだ!」

シャンプー「……ハッ!?不覚……!」


バシャア!


MC「ついに水を被ったシャンプー選手……おや、シャンプー選手の姿が見えませ


バシャア!


シャンプー「……復活ね」ホカホカ

961プロ社員「シャンプー様の言う通り、水を被った瞬間にお湯をかけましたが。こ、これでいいんでしょうか……」

黒井「なんだなんだ?よく見えなかったが…………なんでアイツは水とお湯被ったくらいで着崩れしてるんだ」

シャンプー(この女……私の身体の秘密知ってるね)

乱馬「おいコラ、シャンプー!」

シャンプー「どしたか?」

乱馬「お湯撒くならそう言えっての!こっちまでかかるとこだっただろ!」

シャンプー「きんきゅーじたい、につき、しょうがないね」


男律子「く……狙いは当たってたけど……あっちの対抗策も考えどおりだったわね」

男律子(この身体だからわかる……)

男律子(お湯を用意させていた、ということは……ひょっとしたらそれは、水を被ったときの対抗策ではないか、と言う事)

男律子(つまりシャンプーはおそらく、……私たち同様、呪泉郷に入ってしまった者!)

男律子(その考え自体は当たってたけど……そうなるとあの961お湯部隊がやっかいね)


フシャー!

961社員「うわっ!?なんだなんだ」

961社員「ね、猫だ!会場に猫が乱入して……!」

黒井「なんだぁ!?猫だと?」

961社員「そ、そのようです。お湯が次々とぶちまけられてしまって……」

黒井「なんだそれは、猫を早くつまみ出せ!……あと追加のお湯も早く持って来い!」

男律子「み……」サァー

男律子(な、なに考えてるの美希!?お湯なのよ!?もし自分にかかって変身が解けたら……!)

男律子「あーもう!いい加減にしなさい、み

あずさ「ミケちゃん!?ミケちゃんじゃないですかぁ!」

男律子「…………げげげ」

あずさ「……あ…………///」

あずさ「また……お会い、しましたね……///」

男律子(こ、こんな時にぃ……)


バシャア!

MC「シャンプー選手、また水がかかりました!」

961社員「お湯持ってるやつ……他にいないのかよ!……届くかな、それっ!」

バシャア!

シャンプー「……ギリギリセーフね」

閣下「……ふん、こちらにまで当たりそうになったわ。危ないヤツめ」


あずさ「あらあら~……びっくりしましたぁ。急に熱いお湯がかかってきてしまって……」

あずさ「あ、あなたは……大丈夫ですか///?」

あずさ「……あれ、何だかさっきよりも小さくなったような…………」

律子(……お、終わった…………)


バシャッ!


あずさ「きゃっ!?」

男律子「……水!?誰が……」

猫美希「ニィニィー!」

男律子「美希……でかした!」グッ

猫美希「フニャーニャン♪!」

黒井「何ぃ~!?お湯のストックが無くなったぁー!?」

黒井「追加分はまだか!?」

961社員「も、もう3分少々かかるようで……」

黒井「誰が熱湯を持って来いと言った!風呂の温度でいい、1分で持って来い!」


男律子「……ははは、リングの近くは危ないですからねぇ。ここまで来れば安心ですよ」

あずさ「あ、あの……その……」

男律子「そ、それじゃあ私は用事があるので、これにて……!」

あずさ「あ……ま、待ってください!私の……運命の、人……!」


MC「さぁさぁ、リング上は撒かれた水とお湯でビシャビシャだぁー!」

MC「大きな水溜りが出来ているぞぉー!?このまま動くと水がかかることは必至!」


シャンプー「ぐ……ま、まずいね……」

乱馬「どうするか……お湯も尽きたみたいだから、先にシャンプーから仕留めても……」

シャンプー「!?ら、乱馬……私を裏切るあるか!?」

ムース(どさくさで戻った)「こらぁー乱馬!シャンプーを勝たせるのじゃ!」

MC「セコンドのムースさん、半裸のまま観客に絡んでおります!」


涼「ら、乱馬さん……!」

あかね「乱馬!勝つんでしょ!?」

乱馬「…………!そうだ、勝負は時に非情でなければならない……!」

乱馬「これも中国に間単に行ける様に……男溺泉のために……」

乱馬「……許せ、シャンプー!」

ダッ

バシャア!

MC「あぁーっと、乱子選手、シャンプー選手の目の前の水溜りをそのままシャンプー選手にぃー!」


シャンプー「……万事、休す、ね…………」

バシャッ!!


MC「……おや、シャンプー選手の姿が見えません…………」

MC「き……消えた!?消えました……シャンプー選手、突如姿を見せなくなりました!?」

ザワザワ……ザワザワ……

黒井「どういうことだ!?」

961社員「こ、こちらも……何が何だか……」

閣下「…………」

閣下(我には見えておったぞ。飛沫が消えるその瞬間に、舞台から走り去る白い猫の姿が……な)

乱馬「……」


涼「ひょ、ひょっとしてシャンプーさんも……」

あかね「……そうなの。乱馬と同じ変身体質で……」


男律子「……一人目、ね。最後の仕上げは……」

猫美希「ニィー、ニィー」スリスリ

男律子「あ、美希……」

ゴツン

猫美希「フニー!?」

男律子「あんたねぇ……もし客席でお湯被ってたら……どうするつもりだったのよ」

男律子「いくら春香たちのためでも、自分が危ない目に会っちゃ意味ないじゃないの」

猫美希「フニャ……」

男律子「……ま、あんたなりに一生懸命頑張ってくれたんだろうけどね」

猫美希「ンニャ?」

男律子「フゥ……私だって……本当に本気で、心配したんだから……」

猫美希「ニャオ……フミャー♪」ペロペロ

男律子「もう、調子いいんだから……」


MC「え、えー……シャンプー選手!?いらっしゃらないんでしょうか!?」

MC「こ、このままでは……」


閣下「良いではないか、あの中国娘がいなくなろうと」

乱馬「!?」

MC「え!?」

閣下「奴が水が苦手なのかどうかは知らんが……水を被ったくらいで姿を消した」

閣下「これは紛れも無い事実じゃ。このような醜態を晒したものが美しいアイドルのはずなかろう」

閣下「……どうじゃ?我に異の有る者はおらぬのか?」


シーーン……


閣下「……ふ、明白ではないか」

閣下「そこの貴様!」

MC「は、はい!」

閣下「……試合を再開させよ」


ウオォォォォォーーーー!!!


乱馬「くそ、こいつ……」

MC「そ、それでは……決勝戦、乱子選手と春香選手の2名で、試合再開です!」



黒井「ど、どうなってるんだ!?なぜ消えたんだ!!」

961社員「こここ、こちらも何もわからないので……」

黒井「ええええぇ~い……!あの女はどこまで自分勝手なんだ……!」

961社員「……お待たせしました!お湯です!」

黒井「そんなものはもういらん!」

961社員「え……えぇ!?」

黒井「そんなことよりシャンプーを見つけろ!勝手に逃げおって……許さん!」


―――

涼「とうとう、二人で最終決戦ですか……」ゴクリ

あかね「あの春香っていう人、すごく強い……乱馬があんなに苦戦するなんて……」

涼「……まさか春香さんがあんなに強かったなんて……」

―――

ムース(シャンプーと一緒に水にかかった)「ガァー!グァグァ!ガー!!」

―――

千早「春香……お願い……!」

ズガガガガッ

閣下「ほれほれどうした、二人がかりでなければその程度か?」

乱馬「うるっせえ!わざわざシャンプー抜きでやってやるんだ……感謝しろよ!」

ガガガッ!ガガガッ!

MC「圧倒的なスピードで猛攻を見せる乱子選手!そしてそれを華麗にいなして行く春香選手!」

MC「正に見ている者たちを魅了する!そんな試合であります!」

MC「もうすぐ試合終了のゴングの鳴る時!そこまでで決着がつかなければ、判定となります」

MC「攻めの猛アピールを魅せる乱子選手か!華麗な舞いのような戦いを魅せた春香選手か!」


乱馬(くそ……美しさで言ったら、あっちが圧倒的に有利)

乱馬(判定じゃ厳しい……だから、この場で仕留める!)


閣下「なんじゃなんじゃ、我の周りをグルグルと回っていても意味がないぞ?」

乱馬「…………」

乱馬(室内でやるのは気が引けるが……もう止められねえ!)

乱馬(冷静に……冷静に……)


氷の心でステップを踏み、らせん状に動くことで「闘気の渦」を作り出す

そしてらせんの中心に来たとき、冷たい「気」で渦の中心を……打ち抜く!


ビュッ!


それによって闘気の渦は上昇気流となり……

竜巻を生み出す!


乱馬「はああああああぁぁぁぁぁぁ!」


ビュゴオオオオオオォォォォォォ!!!!


閣下「ぬ!?」

MC「な、なんだぁ!?と、突如会場に、た、た、たつたつ竜巻が……発生しました!」


あかね「あのバカ……!室内でやるなんて……」

涼「ぎゃ、ぎゃおおおおおん!」

キャー!!ヒィー!!ウワァー!!

ビュゴオオオオオォォォォ……!!


閣下「そうか、これは……女傑族に伝わる『飛竜昇天破』……」

閣下「……あやつはどこじゃ?」

乱馬「ここだよ!」

閣下「!?」

ドゴォ!

閣下「ぐ……」

乱馬「はっはー、流石のお前さんも、竜巻の中じゃ上手く動けないみたいだな」

閣下「戯け……!貴様なんぞに負けるものか」


千早「は、春香ぁー!返事して春香ぁー!」

男律子「す、すごい……」

猫美希「フニャー!!フニャー!!」

MC「竜巻の中では依然闘っているようですが……強風でまったく見ることができません!」

黒井「な、なんなのだこれは!?悪夢でも見ているのか!?」

961社員「い、いいから社長、避難してください!」

961社員「……あ、サブのお湯が竜巻に…………」

黒井「熱い!熱っ!?おい、ちょっとかかったぞ!」


―――

乱馬「これで……終わりだ!」

閣下「ほざけ……!」


バシャア!


乱馬「そりゃ!」

ビュッ!

閣下「…………!」

閣下(ま、まずい……このままでは……)

閣下(…………!)

MC「つ、ついに……竜巻が弱まってきたようです……」

シュルシュルシュルシュル……

MC「強風でまったく見えなかったリング上では、それでもなお、戦いが続いていた模様です」

MC「……ご、ご覧下さい!」

MC「リング上には……春香選手が、倒れています!」

ザワザワ……

千早「は、春香……そんな……」

MC「そしてリング上に堂々と立っているのは……!」

男乱馬「お……お……」

男乱馬「俺だー!!!俺が勝ったんだぁー!!!」


MC「……誰……なんでしょうか」

ピシッ

あかね「……終わったわ」

涼「…………これ、終わりですね」

男乱馬「…………」

男乱馬「…………………あ」


MC「ど、どういうことでしょうかー!?」

MC「竜巻が消えたと思ったら、乱子選手が居なくなり……」

MC「同じ服、同じ髪型の……『男』の選手がリング上に立っていましたぁ!」


男乱馬「やべ…………」サァー

MC「こ、これはムースさんのような手品の一種なんでしょうか……」

男乱馬「み、水……水さえあれば、言い訳も……」


あかね「あんたねぇ……竜巻で水も何もかも、ぜぇ~んぶふっ飛ばしちゃったくせに」

涼「ら、乱馬さん……もう、フォローも無理です……」


MC「こ、これはまさかまさか……乱子選手失格!性別を偽って大会出場していたため……失格です!!」

男乱馬「……お、終わった…………」ガラガラガラガラ

MC「しかし、どうすればいいのでしょうかぁー!?最後に残った乱子選手は失格となり……」

「私が……」


春香「私がいます!」


ザワッ!?

MC「た、倒れていた春香選手……まだ意識があった模様です!」

千早「春香!しっかりして、春香!」

春香「く……う、うぅ……」

MC「もはや春香選手以外はすべて失格者!ここで立ち上がり、最後の一人となれば……栄えあるIBU女王の座に輝きます!」


男乱馬(こいつ……さっき竜巻の中で俺の最後の一撃をガードして……)

男乱馬(そしたら急に、闘気が抜けたみたいに弱々しくなった……)

男乱馬(あの状態でリングに叩きつけられたっていうのに……それでも立ち上がれるのか?)


春香「私は……一番に……なる!」

春香「それが、他の人の力でも……最後だけは、自分の力で……立ち上がりたい!」

MC「お、おぉ、おおおぉ…………!」

千早「春香……!」

男乱馬「……へっ、たいしたヤツじゃねぇか」


春香「……」

春香「…………」グッ


MC「見事立ち上がり……ガッツポーズを決めました!」

MC「これにより、今年度IBU女王の座に輝いたのは……765プロ所属、天海春香さんです!」


ウオオオオオォォォォォーーーー!!!


春香「へ、へへ……私、やったよ……。ありがとうみんな……。ありがとう……閣下」

―――

千早「春香、しっかりして……春香!」

シャンプー「だーかーら、安静にすればなおるよ。大きな声だすと逆効果ね」

千早「う、すいません……」

シャンプー「私の曾祖母ちゃん秘伝の薬、コレくらいの怪我ならすぐに治せるね」

千早「あ、ありがとうございます……」



乱馬「てことは、あんたたちも……」

律子「ええ、すいませんでした。黙っていたこともそうですけど、そっちの涼から情報をもらってましたし」

涼「ひぅ~、ご、ごめんなさいー……」

あかね「りょ、涼くん気にしないで……こいつなんて、存在そのものが弱点だらけみたいなものだから」

乱馬「……どういう意味だよ寸胴」

あかね「……誰が寸胴だって?」

涼「ひぃぃぃ……お二人とも、喧嘩はやめてください……」

シャンプー「……」チラッ

美希「……?どうしたの?……あ、えとねー。ミキの名前は、星井美希、だよ」

シャンプー「星井……美希……」

シャンプー(この女、私と同じ『猫溺泉』に入ったね。しかも猫の姿で、試合を邪魔された……)

美希「に、にらまないでほしいの……ミキ、何か悪いことした?」

シャンプー(……しかし以前、川に落ちたとき……助けてもらたこと、ある)

シャンプー(…………)

シャンプー「……ま、貸し借りチャラで……死の接吻は勘弁しておいてやるね」

美希「しのせっぷん……?」


乱馬「へぇ~、じゃあ俺とまったくの逆なのか」

律子「ええ、水を被ると男になって……お湯を被ると女に戻る」

律子「……涼も含めて、男か女かわからないアイドルユニット、でも作りますか?」

涼「ひぃぃい!?」

あかね「でもシャンプーいいの?あの社長さん、すっごく怒ってたわよ」

シャンプー「……どうせ負けたらクビになる契約だったある。もうあの会社とは関係ないね」

律子「あら、そうだったの」

律子「じゃあシャンプーさん……765プロに来てみる気は無い?」

涼「んな!?」

乱馬「お、おいおいおい……」

シャンプー「765プロ……?」

律子「うちの……春香とかが所属してる事務所よ」

律子「もし961プロに居た頃にやってた活動に、少しでも興味があったなら……今度は私たちの事務所がサポートするわよ」

シャンプー「ふーん……」

シャンプー「じゃ、とりあえずこっちも」

スッ

律子「……『猫飯店』?中華料理屋かしら」

シャンプー「私の働いてる店ね。24時間、年中無休で出前お届けに行くあるよ」

律子「…………贔屓にさせてもらおうかしら」

―――

春香(こうして大会は……かなり異例の事態とか……会場の混乱とかあったけど)

春香(ともかくも……大成功で終わりました)

春香(IBUのディレクターさんという人が、私たちにたくさん仕事を持ってきてくれたり)

春香(シャンプーさんがあれ以来、よく事務所に出前を届けに来てくれたり)

春香(ちょっと今までとは違うけど……楽しい毎日が続いています)



律子「美希ぃ~……なんでそんなに猫になるのが好きなのよ」

美希「ち、違うの!今日は完全にとばっちりなの!」

美希「急にお好み焼きが目の前に降ってきて、すっごく熱かったから冷まそうとしただけなの!」

律子「お好み焼きってあーた……」

美希「ホントにホントなの~!」

春香(乱馬さんやあかねさんたちとも、よく遊びに行ったりします)

春香(特に乱馬さんは、男溺泉の情報について、律子さんからしょっちゅう話を聞きに来ます)

春香(その時はムースさんや、バンダナを巻いたお友達の人も一緒です)


P「よし春香、次は格闘技雑誌の取材だ」

春香「はい」

P「……いいのか?まだこのままでいるなんて」

P「ちゃんと自分一人の力で乗り気ならないと意味無いんじゃ……」

春香「大丈夫ですよ、プロデューサーさん!」

春香「なんだか最近は……閣下の状態の時も、楽しいかな、って思えるようになってきたんです」

P「……それはいいことなのか?」

春香「あははー……」


春香(……閣下に頼りすぎるのはよくないと思うけど……)

春香(閣下になることが出来たおかげで……あの大会のとき……私の力でも立ち上がれたんだって思うんです)

春香(だからもう少しだけ……私を変える手伝いを、してもらおうと思います)

P「よしじゃあ取材に行くから……水をお願い」

春香「……はい」

バシャ!

閣下「……ふふ…………」

閣下「あの貧弱な小娘が、あまつさえ我を利用するなどと考えるとは……面白いヤツじゃ」

P「えー……閣下?どうかしましたか?」

閣下「……なに、こっちの話だ」

閣下「では参るぞ、プロデューサー殿」

P「は、はい」



小鳥「……ドSな春香ちゃんもやっぱりいいわよねー」

千早「…………正直、結構クるものがありますね……」


あずさ「いつになったらまた会えるんでしょう……運命の人……」

律子「も、もう諦めたほうがいいかもしれないですよ、は、はは、はは……」

閣下(小娘よ……どうせ利用するなら、我の髄まで利用してみせよ)

閣下(このような面白き世界……我にとっても興味が多少はあるでな)

閣下(もうしばらくは付き合ってやるとしようか……のう、小娘)



閣下(いや…………)

閣下(天海……春香よ)






おわり


「これもうアイマスSSじゃないよね」

と言われたら、否定しきれません。申し訳ありませんでした。

伏線が張りっぱなしになってたらすみません。忘れっぽいので。


今回、保守や支援のお陰で、最後まで書ききることが出来ました。

感謝してもしきれません。







らんまで好きなキャラはシャンプーとムースです。

なので趣味でたくさん出してあげました。

嫌いなキャラは八宝斎です。パンスト太郎は好きです。



最後までごらんいただき、本当にありがとうございました。

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