淡「ライバルは宮永咲」(862)
菫「取材?」
淡「えぇ、雑誌の特集記事なんです。金の卵にフォーカス!IHに咲いた新星二人を独占取材!という題で」
菫「……まぁ題目はどうでもいいとして、それで長野に?」
淡「向こうで行うらしいです。清澄高校は長野にありますから」
菫「長野ね、わざわざ行くようなところとも思えないが」
淡「咲ちゃんに会える機会なので」
菫「清澄の大将か、興味があるのか」
淡「同い年で唯一私と対等レベルの相手でした。興味が湧かないほうが変ですよ」
菫「まぁそうだな。この白糸台にも大星以上となると照くらい、か」
淡「名門のくせに、って感じですよね」
菫「……あまり迂闊なことは言うな、ただでさえ大星をよく思わない部員もいるのだからな」
淡「どうでもいいですよ。先輩方が引退して、私がここで一番なんですから。じゃあこの日は部活休みますので」
照「……」
~長野駅~
淡「到着、長野駅。……明日が待ちきれなくて、つい一日早く来てしまった」
淡「長野、嗚呼長野。想像より随分ましだけど、この自然豊かな街並みが、私に相応しい花を咲かせたのか」キョロキョロ
淡「そう思うとこの普通な景色も感慨深い」ウンウン
淡「勢いだけで来てしまったけどこれからどうしようか」
淡「待ち合わせは明日の11時に長野駅だけど、どう時間をつぶせばいいのかな」
淡「清澄に行こうにも場所がわかんないしなー、調べてくればよかった」ウロウロ
淡「こういうときはとりあえず喫茶店にでも……ってあの着物姿の人はまさか……すみませーん!」
咏「……んー?私?」
淡「よかった、本物の三尋木プロだ、やっぱり私はツイてるなー。あ、いまお時間よろしいですか?」
咏「おう、誰かと思えば見覚えあるねー。白糸台、チーム虎姫の一年生、泡姫ちゃん」
淡「淡です、大星淡。なんですか泡姫って、ものすごい嫌な響きですよ」
咏「ジョークジョーク。不躾者どおし仲良くしようじゃん」イッヒッヒ
咏「こんなところで何してるんだい?取材は明日じゃなかったっけ?」
淡「気が急いちゃって。ちょっと早く来ちゃいましたよ」
咏「そう?じゃあ暇なんだ」
淡「そうなんですよ。だからちょっと相手してくださいよ。どうせ暇なんですよね?」
咏「それは出来ないなー。小規模なものだけどさー、私、今大会の途中だし」パタパタ
淡「またまたー、すぐバレる嘘を。大会途中のプロが何をアホみたいにこんなところブラブラしてるんですか」
咏「残念だけど本当なんだよねー、私も泡姫ちゃんと遊んでみたいんだけどさー。ほらこれ、参加証ね」
淡「大星です……っと、うわ、マジもんだ」
咏「私もそこまで暇じゃあないんだよ。明日の予定を長野に合わせてくれたのはありがたいね」パタパタ
淡「明日?何かあるんです?」
咏「雑誌の取材。IHの総説みたいなもの頼まれててさ、以前は私の仕事じゃなかったんだけどねー。泡姫ちゃんも取材だっけ?」
淡「そーですけど。あぁ、今回って三尋木プロに合わせた日程だったんですか」ガッカリ
咏「と、言うと?」
淡「私が長野に行きたいって言ったから融通聞かせてくれたのかなーって」
咏「甘いねー、人を動かしたけりゃ実績と実力を積まないと。泡姫ちゃんはまだ一年生、先は長いよ」ニヤニヤ
淡「だから大星です。もちろん実績は得ていくつもりですからご心配なく」
咏「ほほう、どんな風に?」
淡「これです」バサッ
咏「雑誌?おおう、私が表紙のやつじゃん。泡姫ちゃんは私のファンかいね?」
淡「流石に怒りますよ?ここに挙げられた自称最強雀士の方々には将来私の踏み台になってもらおうかと」
咏「あっはっは。いいねー、そういう向上心は大好きだよ。どっかの誰かと違ってね」
淡「そうやって笑っていられるのも今のうちですよ。数年後には私を見上げることになりますので」
咏「うんうん、気に入ったよ。じゃあそろそろ時間がマズイんで。……これ、渡しとくね。また明日、淡ちゃん」フリフリ
淡「だから大h……苗字で呼んでくれた方が更にありがたいです」
咏「おーう、考えとくねー」スタスタ
淡「……なんだろこれ。名刺と、メモ?……寝床に困ったら連絡するように、か。なんだ、良い人じゃん」
~清澄高校~
久(IHが終わって、清澄高校麻雀部も少し様子が変った)
久(受験を控えた私は、学生議会の仕事もあるため、麻雀部は引退して、部長はまこに任せた)
久(引退したとはいっても、時間が見つかった時は積極的に顔を出してはいるけど)
久(IH決勝戦での敗退はなかなかの影響を部に与え、任せたといってもまこ一人には少々荷が勝っている)
久(まず、敗退をきっかけに和が東京に引っ越すことになったのが大きな痛手となった)
久(その前後でどうにも咲と和で意思の齟齬があったのか、二人は喧嘩別れに近い形となってしまったようで)
久(咲といえば、目標であり夢であった、再び家族一緒に暮らすということが叶わなかったことも彼女を落胆させた)
久(お姉さんとは無事に和解出来たのは救いだけど、両親の間での亀裂は咲の想像以上のものだったらしい)
久(一時的に理想の家族を繕おうが直ぐに瓦解することは目に見えている、それならばという判断だそうだ)
久(家庭の問題は複雑だ。それは私もよくわかっている。だから、私には何も出来なかった)
久(もう一つの変化は、優希と須賀君が本格的に付き合い始めたこと)
久(決勝戦の手痛い敗北で優希が落ち込んでたところを須賀君が慰めたことがきっかけと聞いた)
久(付き合うこと、それ自体は結構だ。部内恋愛を禁止しているわけでもない)
久(なにより明るい話題は歓迎したかったのだけど)
須賀「おーい、ジュースいれたぞー」
優希「ナイスだじぇ京太郎!特別に私の近くに座ることを許そうではないか」
須賀「はいはい。ほらよ、っと」グイッ
優希「な、な、な……何をする!?」ジタバタ
須賀「いいだろ?たまにはさ」
優希、須賀「イチャイチャ、キャッキャッ」
咲「……」
久(まこの言うところだと、これくらいはまだ抑えているほうらしいけど)
久(少しは場所を弁えるか空気を読んでほしいわね。咲はよく読書を続けられるわね)
須賀「イチャイチャ」優希「キャッキャッ」
咲「…………」ペラ
久「咲、ひさしぶりに私と打たない?まこはまだ来てないけどちょうど四人いることだし」
咲「……」チラッ
優希「ひっ……」ビクビク
須賀「えっと、部ty……竹井先輩、ちょっと俺たち用事思い出したんで、先、帰っていいっすかね……?」
久「え?」
須賀「じゃ、じゃあそういうことで。ほら、優希行くぞ」
優希「あ……うん」
久「ちょっと須賀君?あぁ、いっちゃった。どうしたのかしらね」
咲「……私が居るかららしいですよ」
久「咲が居るからって……」
咲「私と卓を囲むと、決勝を思い出してどうにもならないらしいです」
久「あ、そうなの?悪いことしたか、でも部活自体には来るのね」
咲「なるべく私の傍にいる時間を作って克服のきっかけにしたいそうですよ」
久「それでか。矛盾しているようなしていないような……毎日あれ見て疲れない?」
咲「傍に居る分は構わないんです。ただ、ああいう風に怖がられると、さすがに気分は沈みますね」
久「……そうね。仲間なんだもの、仕方ないとはいえ早く優希には元通り元気になってほしいわね」
咲「そうですね、夏休みが終わるころまでには」
久「あれ?すると咲はIH以来麻雀は打ってないってことになるのかしら」
咲「部室では打ってないです。ただ染谷先輩がそれなりに雀荘に連れて行ってくれて」
久「そっか。……麻雀は楽しい?」
咲「楽しいですよ、それは変わらなかったです」
まこ「面倒なことになってしまったわい」バタン
久「あら、遅かったわね。どうしたのかしら」
まこ「これじゃ。まったく、ワシらに何の話もなく決めおってからに」パサッ
久「どれどれ……雑誌の取材協力について、ね」
咲「取材って、もしかして麻雀部がうけるんですか?」
まこ「そうじゃ、朝学校に呼び出されたと思ったら準備するように言われてのう」
咲「へぇ、部長は大変なんですね」
久「……これ、大変なのは咲のほうよ」
咲「へ?」
まこ「取材対象はな、麻雀部というよりも咲個人についてなんじゃよ」
久「しかも、日程は明日の午後。学生議会にもこんな話届いてなかったわ」
まこ「学校の宣伝になる好い機会だ何だと言われてのう、勝手に決められていたようじゃ」
咲「あの、私個人って……?」
久「この書類を見るに、咲と白糸台の大星淡とで記事を組むみたいなの」
咲「む、無理ですよ!なんとか断れないんですか?」
久「……いや、この土壇場で断るよりは受けたほうがいいかもしれないわ」
咲「なんでです!?」
久「あまりマスコミ関係に悪印象を与えるのは後々に響くわ。咲のように少し特殊だと特にね」
久「幸い、場所は清澄高校で行うらしいから、少しはフォローするわ」
咲「フォローってなんですか」
久「答えにくかったり、NGな質問が来たら合図を頂戴。遠慮してもらうようにそれとなく頼んでみるから」
咲「なんか曖昧じゃないですか……だいたい私、取材なんて受けたことなくて……変なこと言っちゃったらどうしよう……」オロオロ
久(……こんなときに取材慣れした和がいてくれたら助かるんだけどなぁ)
久「一応記事になる前に、最低限の確認はさせてもらえるようお願いはしてみるわ。気になる箇所はカットしてくれるかも」
咲「ほ、本当ですか?」
久「……善処するわ」
咲「そんなぁ……」
~翌日~
淡「こんにちわー」
久「いらっしゃい、今日はよろしくね。といっても相手は私じゃないんだけど」
淡「あ、どうも。それより咲ちゃん久しぶりー!IH以来かぁ、今日は楽しみにしてたんだ、よろしくね」
久(東京でも生意気そうな雰囲気だしてたけど、やっぱり若干失礼な子よね)
記者「おはようございます。麻雀todayの○○です、こちらは部下の××。本日は部室の方をお貸しいただき有難うございます」
久「お構いなく。学生議会長の竹井久です。今日はよろしくお願いします」
咏「いやーどうもどうも」パタパタ
久「三尋木プロ?どうして貴女がここに?」
咏「ん、さっき私もそこで取材があってね。ついでだから見学しに来ただけ。別にいいっしょ?」
久「まぁ、断る理由もないんで」
咏「おっけおっけー」
記者「ではさっそく取材のほうに移らせていただいてよろしいですか?」
久「どうぞ、こちらに席をご用意していますので」
~数十分後~
久「当たり障りの無い話題が続いているとはいえ、意外となんとかなっているものね」ヒソヒソ
久「咲も始めは緊張が見えてたけど、今はもうなかなかリラックスしてるじゃない」ヒソヒソ
まこ「そうじゃな。これくらい和やかな雰囲気なら優希と京太郎のやつも呼んでも問題なかったのう」ヒソヒソ
久「あら、姿が見えないと思ったらそうだったの?」ヒソヒソ
まこ「白糸台の大将といえば咲と同等以上じゃろ?万一厄介な影響があるとたまらんけぇ」ヒソヒソ
記者「なるほど。大星選手は入部当初からその才能を先輩方から認められていたと」
淡「そうなんですよー。鋭すぎる爪は隠すのも一苦労なんです」
淡「3連覇をした照先輩なんか、練習相手にも少し苦労してたけど私が白糸台に来て助かった、なんて言われちゃって」テレテレ
咲「……」ムッ
記者「照選手ならではの話ですね。一方、清澄高校麻雀部は部員数が少なく、問題もあるでしょうか」
淡「あ!それ私も気になります。団体戦の登録とか大丈夫なの?」
咲「あ、えっと……今は女子は三人で男子が一人ですね。新しい人が入ってこない限りは団体戦は難しいです」
淡「えー…、じゃあまさか、春季大会には清澄は団体に出ないの?」
咲「今のところは予定はないかな」
淡「そんなの駄目だよ!とっとと部員集めて五人揃えないと許さないから」
咲「無茶言わないでよ」
淡「無茶じゃない。次の大会こそは団体で咲ちゃんときちんとやりあうって決めてあるんだから!」
咲「そんなこと言われても困るよ」
記者「まあまあ。団体でなくても、宮永選手と大星選手なら個人戦で十分に代表どうしになれるんじゃないですか?」
淡「それだけじゃ物足りないですよ。個人はもちろんにしても団体でもやらなくちゃ」
記者「大星選手は宮永選手に対して高い意識をしていらっしゃいますね」
淡「もちろんですよ。同い年でここまで私と戦える人なんて咲ちゃんが初めてなんですから」
記者「なるほど。では逆に宮永選手にお聞きしますが、大星選手に対する印象はどうですか?」
咲「強くてすごいなぁ、というのと、なんか親近感みたいなものがありました」
記者「親近感?」
咲「はい。なんか麻雀打つときの雰囲気が自分と似てるなぁって」
記者「雰囲気ですか」
淡「あ、それは私も感じますよ。なんか同類だなって」
記者「お互いに似たものを感じている、と。実に良いライバル関係といえますね」
淡「え?」
記者「……どうかしましたか?」
淡「すみません。記者さんに比べて私は少し言葉に疎いようで」アハハ
記者「はあ……」
淡「ライバル関係というのはここではどのような意味で使われたのかと」
咲「……」ヘー
記者「?普通の意味で、勝敗を競い合う実力の拮抗した両者の関係、といったところでしょうか」
咲「……あ、じゃあ違いますよ。淡ちゃんとはライバル関係ではないですね」
淡「まぁそうなりますね。確かに同じステージに立つ稀有な相手だとはお互い認識していますけど」
咲「現時点ではハッキリしていますからね」
咲、淡「私のほうが上だってことは」
決着を…つけようか……!
咲「……」フン
淡「……なんか、気のせいかな?変な言葉が聞こえたような」
咲「淡ちゃんも?私もなんだよね」
淡「なんだ、びっくりした。じゃあゆっくり確認しよっか」
咲「そうだね。シビアな問題だから気をつけないとね」
咲、淡「私のほうが強いよね?」
咲「……」ゴッ
淡「……」ゴッ
淡「確認するよ?今年のIH団体優勝高はどこだったっけ?特に優勝チームの大将と言えばそれはもう、ね?」
咲「あぁ、いたね。決勝では大将まで回らなくて楽ばっかりしてた人だから忘れちゃってたよ」
淡「その分個人戦ではめまぐるしい活躍をしてたから十分じゃないかな?」
咲「そうだっけ?私、その子と直接やった気がするけど、普通にトップ取れたよ?」
淡「麻雀は総合値でみないとね。長野代表の最終的な最高順位は4位だっけ?白糸台のその人は確か3位だったような」
咲「最終戦で暫定1~4位の卓に入れてもらえなかったあの人ね。どこか空虚な3位だったのはよく覚えてるよ」
咲、淡「……」ゴゴゴ
久「ちょっと、どういうことなのこれ」ヒソヒソ
まこ「わしに聞かれても困るけぇ」ヒソヒソ
久「咲ってあそこまで負けず嫌いだったっけ?」ヒソヒソ
まこ「あの大星ちゅうんは宮永照の一番弟子やっという噂が原因かもしれんのう。咲は若干シスコンの気があるからの」ヒソヒソ
久「所詮噂じゃない。逆に生意気な一年大将で疎まれてるって噂もあるのよ?」ヒソヒソ
まこ「ついさっきまでは仲良さげに話しとったのにのう」ヒソヒソ
久「お互い譲れない何かがあるのかしら」ヒソヒソ
咏「お二人さん」チョイチョイ
久「っ!……ああ三尋木プロ、何ですか」
咏「話を聞いてると、あの嶺上ちゃんは普段はそこまで勝負にストイックじゃないってことかい?」
久「そうですよ。基本的には麻雀を楽しむことのほうが好きな子です」
咏「勝ちには拘らない」
久「強い目標があるとその限りではなくて、IHでは白糸台と戦うことを強く願ってまして」
咏「近場に標的があったほうが燃える子かねー、おっけーありがとー」
三尋木プロが一番好きですhttp://i.imgur.com/5XET5.jpg
淡「いるよねー、少ない人数の弱小校でエースはって実力を勘違いする人って」
咲「強豪校で先輩のおかげなのに団体戦を自分の手柄のように話す人とかね」
咏「はいはい、ここで言い争っても終わらないよー」
淡「三尋木プロ、確かIHの総説したんですよね?この分からず屋に言ってやって下さいよ。一年最強が誰かってのを」
咲「そうですよ、この勘違いした人に教えてあげてくださいよ。白糸台の強さは副将までにあるって」
咏「まあまあ、私の意見なんかよりよっぽど簡単な決め方があるじゃん」
咏「幸いにもここは麻雀部の部室なんだからさ、そこにある卓で決めるのが一番じゃね?知らんけど」
咲「あ、そうでしたね。何も言い争う必要なんかなかったです。対話に相応しいものがあるんですから」
淡「なるほど。実際にこの場で叩き潰されたら、いくらニブチンの咲ちゃんでも理解してくれるかな」ゴッ
咲「相手はどうするんです?私とそこのそれは確定として」ゴッ
咏「あんまり二人と差があってもあれでしょ?一人は私が入るよ、あと一人は」チラッ
久(やば)サッ
まこ(……?)
咏「うん、今意図的に目を合わせなかったそっちの子ね」
久「い、いやー、私じゃちょっと場違いかなーって。麻雀部は引退した身だし」
咏「大丈夫。あそこで咄嗟に目を逸らすんじゃなくて、目を合わせないことが出来てるなら十分だね」
久「ここは後輩の育成のためにも、まこに」
咏「ぐちぐち言わずにパパッとやろうか。時間がもったいないしねー」
淡「そうですよ、早くしてください」
咲「お願いしますね、竹井先輩」
久(……この状態の咲に魔物一人、トッププロ一人、……いきなりで組まれていい面子じゃないわよ)
咏「どうしても断るってんなら強制しないけど、後々困ることになるかもねー。いや知らんけど」
久(価値の薄いはったり。私はプロ志望でもないし、でもまあこれ、逃げたらカッコ悪いなぁ)
久「わかったわ、ちゃちゃっと済ませちゃいましょ。勝負のルールは?」
淡「半荘一回、個人戦ルールにしましょう。どうせ私が勝つんだから長々やってもしょうがないし」
久「了解、咲もそれでいい?」
咲「大丈夫です」
記者「これ、牌譜とってもよろしいでしょうか」
咏「私は構わねーけど?」
淡「いいじゃないですか、記事にしちゃってくださいよ。宮永咲、大星淡の強さに涙って感じで」
咲「淡ちゃんって相当な自信家だよね。その自信はどこから湧いてくるの?」
淡「どこからって、両方とも表のコインを投げて裏が出ることを心配する人がいるのかな?」
咲「そっか。まあ自信を持つのはいいんだけど、あんまり露骨に態度に出すのは、少しみっともないよね」
淡「そう?取材中でも思ったけど、どっかのシスコンさんよりはましじゃないかな」
咲「…………淡ちゃんとは仲良くなれそうになくて、少し残念だよ」
淡「仲良くって、咲ちゃんの身の程でよく言えるね。手下にならしてあげてもいいんだけど、靴でも磨く?」
咲「そろそろ黙っておいたほうがいいよ。その口から恥を垂れ流しているのは、見るに忍びないから」
淡「……へー?」
咲「……」
咏「はいはい、とっとと場決めするよー」
東・久 南・咲 西・咏 北・淡
久(起家ね……配牌は、三色が狙えるわね。まぁここは素直に……って)
咲(……)ゴゴゴ
淡(……)ゴゴゴ
久(初っ端から凄い気迫じゃない。……の割にはプレッシャーが弱いような?)
咏(高校一年生にして見事な支配力、と感心したいところだけど、やっぱり若いねー)
咏(互いに対面を意識しすぎて支配の異方性、指向性が出すぎてる)
咏(おかげで私と清澄の会長に対しての支配の影響がほぼ皆無なんだよねー)
咏(長野予選の子供ちゃんと同じミス。嶺上ちゃんはそれを利用してたはずなんだけどね。やっぱ頭に血が上ってるのかな)
咏(ま、ミスはする方が悪いってことで、少し遊ばせてもらおっかなー)
孕村さんとのカツ丼戦とは段違いなクオリティ
~南三局~
久.12900 咲.26300 咏.32500 淡.28300
久「あ……それロン、5200」パタッ
咏「ん、5200ね」チャラ
久(また……か。私の点が削られたら適度に和了らせて貰ってる感覚)
久(咲と大星淡は相変わらず二人で異空間を形成してるけど、場のコントロールは完全に三尋木プロが握ってる……?)
久(やっぱ半端じゃないわ。トッププロ、か。靖子もこんなの相手によくやるわね)
淡(ラス親。咲ちゃんとの点差は2000か。差は無いに等しい、和了られたらそれでほぼ終わり)
淡(咲ちゃんにはカンもある。テンパイ気配のないところから一気に持ってかれる可能性が常にある)
淡(させない。テンパイは当然、カン材も渡すわけにはいかない)ゴッ
咲(2000点、キリが良い点差。手作りよりも速度を重視、カンさえ出来ればそこで終わるし)
咲(ゴミ手以外は許容される状況、隙が無いならカンに拘る必要もない)
咲(それは淡ちゃんだって十分承知。止めてみてよ、止められるものなら)ゴッ
~南四局~
久.18100 咲.26300 咏.27300 淡.28300
淡(張った、5面待ち。リーチは論外だとして、まぁ出アガリを期待できる面子でもないけど、十分ツモに期待できる)
淡(あれ?咲ちゃん重視であんまり気にしてなかったけど、私っていまトップ目じゃん)タンッ
淡(……三尋木プロにも勝っちゃうかー。我ながら、自分の才能が怖い)ニヤニヤ
咲(淡ちゃんが張った。……というか、この手で和了ったら西入する、か)
咲「ポン」
咲(まあいっか。ここは次順にカンして和了っとこう)タンッ
咏「ツモ、満貫」パタッ
咲、淡「……え?」
咏「ほら、4000、2000早くだして」
淡「はい……って満貫親被り……まさか点数」チラッ
久.16100 咲.24300 咏.35300 淡.24300
淡「ちょっと何してるんですか!?」ガタッ
咏「んー、どうかしたー?」
淡「どうもこうもないですよ!空気読んでくださいよ!何よりにもよって満貫なんて和了ってんですか!」
咏「なんで?トップとれる手和了らない訳ないじゃん?」
淡「いやいやいや!勝負!私と咲ちゃんの勝負!台無しじゃないですか!?何点数合わせちゃってるんですか!?」
咏「あー、気付かなかったわー、ごめんね」ヘラヘラ
淡(くっ……この人は)イラッ
咲「ぷっ……くく」
淡「咲ちゃんは咲ちゃんで何笑ってんの?勝負がうやむやになってんだよ!?」
咲「うやむや?何言ってるの?勝負なら私の勝ちだよ」
淡「はぁ?どう見たって同点じゃない?」
咲「あれ?知らないの?同点の場合は上家取りだよ?開局時の東南西北で順位が優先されるの」
淡「はぁ?そんなの大会ルールに」
咏「あれ?そうだったっけ?」
記者「えっと、基本的にはそうですね」
この弄ばれてる感
正直たまりません
咏(あー、そうなんだー、知らなかったなー)
咲「ね?だから私の勝ち」ニヤニヤ
淡「……納得いかない!全っ然納得いかない!!理不尽!だって同点じゃん!同点じゃん!」
淡「やり直し!もう一回やらなきゃ気が済まない!やり直し!」ギャアギャア
咲「えぇー……なんか駄々こねてる人がいますけど」
咏(ちょっと予定外かなー、もうちょっと遊ぼうかと思ううんだけど)
咏「うーん、もう一回やる?嶺上ちゃんも勝ち負けをもっとはっきりさせときたいでしょ?」
咲「そうですね、勝ちは勝ちですけど、このままだと延々と愚痴愚痴言い訳されそうで」
淡「当たり前だよ!だって負けてないもん!ほら、とっとと場決めする!」ガチャガチャ
咲「え?」
淡「ほら、場決めしないと始まんないでしょ!?」
咲「なんか仕切ろうとしてるけど、私は別にやらなくてもいいんだよ?勝ってるんだし」
淡「なっ……!」
咲「でも、淡ちゃんがどうしてもやりたいって言うんなら、打ってもいいんだけど」
淡「打ちたい、打ちたいから早く場決め!」
咲「えー、態度悪いなー」
淡「ぐっ……この……っ」ググッ
咲「で、淡ちゃんはどうしたかったんだっけ?」
淡「……打ちたいです。打たせてください!」プルプル
咲「しょうがないなー、じゃ、場決めしよっか。あ、先にとっていいよ」
淡(くっ……なんで私がこんな屈辱を……負けてない、負けてないのに……)プルプル
淡(馬鹿にしてやる。私が勝ったら、今日という日がトラウマになるくらいに馬鹿にしてやる……っ!)
咏(同点が駄目だとするとどーすっかなー、どっちが勝った方がより相手がムキになるか、かな)
久(……またやるのね)
涙目あわあわ可愛い
~終局~
トップ.咲 二着.咏 三着.久 ラス.淡
淡「……」プルプル
淡「……」プルプル
咲「…………ぷっ、くく……あは、……あははははは!!」
咲「あはははははは!ぷ、くくっ!はー……お腹いたい……あははは!」バンバン
淡「笑うな!」
咲「はぁ、はぁ……ごめんごめん。あんまりに可笑しいもんだから」
淡「何がおかしい!」
咲「だって淡ちゃん、あんなに息巻いてたのに、……くくっ、ラスなんだもん。ちょっとびっくりしちゃうよ」
淡「もう一回!次は、次は絶対に負けないんだから!お願いします!」ドゲザァ
咲「ちょっとちょっと、そんな、顔をあげてよ。白糸台の大将ともあろう人が、そんなことしちゃ駄目だよ?」ニコニコ
淡「お願いします、もう一度だけお願いします!」
こういう話読みきりで読んでみたいな
三尋木プロ容赦ないなwww
淡(ふざけてる!こんなのふざけてる!おかしい……私が勝たなきゃおかしい!)
淡(何かの間違いにきまってる。だってそうだ、私のほうが強いのに、負けるなんておかしい)
淡(おかしいおかしいおかしい!おかしい!)
咲「ほらほら、場決めするよー?」
淡(そんな風に見下ろせるのも今だけだ。30分後にはどん底の気分を味あわせてやる)キッ
咲「うわ、そんな怖い目すると折角の綺麗な顔が歪んじゃうよ?」
淡(……こんなに泣かしてやりたいと思った人間は咲ちゃんが初めてだよ)
淡(他のことなんか知らない。ただ今、咲ちゃんを超える力を……!)ゴゴッ
咏(おぉ、雰囲気変わったねー、ちょっとは良い感じになってきたよー)
久「まこ、交代よろしくね」
まこ「おいおい、いいんか?」
久「まぁ基本的に蚊帳の外だから、交代しても問題ないでしょ。後のためにも経験積んどきなさい」
~終局~
トップ.淡 二着.咏 三着.咲 ラス.まこ
咲(負け、た……?さっきまでと別人のようだった……)
咏(特にフォローもなしにトップだったね。さあ嶺上ちゃんはどう思うかな)
淡「あーあ、なんか拍子抜けだなーがっかりしちゃうよー」ニヤニヤ
咲「……どういう意味かな」
淡「あれ?言わないとわかんない?」
咲「いや、いいよ」
淡「しょうがないなー、じゃあ教えてあげよっかなー」
咲「いらないって」イラッ
淡「咲ちゃんって麻雀弱いんだなー、もう劇的に弱いよね。初心者と打ってるかと思っちゃったんだけど」
咲「……偶然でしょ?だいたい結果なら2勝1敗で私の」
淡「はい、負け惜しみ入りましたー!こ、れ、は、ひ、ど、い。聞いちゃおっかなー、悪いかなー、でも気になるしなー」
咲「……何?」イラッ
淡「ねえ、今どんな気持ち?」
∩___∩
__ _,, -ー ,, / ⌒ ⌒ 丶| 今、どんな気持ち?
(/ "つ`..,: (●) (●) 丶 ねぇ、どんな気持ち?
:/ :::::i:. ミ (_●_ ) |
:i ─::!,, ハッ ミ 、 |∪| 、彡____
ヽ.....::::::::: ::::ij(_::● ハッ / ヽノ ___/
r " .r ミノ~. ハッ 〉 /\ 丶
:|::| ::::| :::i ゚。  ̄ \ 丶
:`.| ::::| :::|_: /⌒_)
:.,' ::( :::}: } ヘ /
:i `.-‐" J´ ((
煽りが芸術的すぎるwwwww
咲「……」プイッ
淡「あーあー、顔そむけないで。ほら、こっち見てこっち。ねえ、今どんな気持ちなの?」
淡「咲ちゃーん?そっちには誰もいませんよー?あ、もしかしてお姉ちゃん探してるの?悔しいよー、お姉ちゃーんって?」
咲「……泡姫のくせに」ボソッ
淡「……は?今、なんて言ったよ?」
咲「別になにもー」
淡「よりにもよってシスコン咲ちゃんに言われたくない言葉が聞こえたんだけど」
咲「何も。たった一勝で、偶然の結果で、そこまで勝ち誇れる人に言うことなんて無いし」
淡「私もさ、咲ちゃんが素直に負けを認めてくれさえすれば、こんなことしないよ?」
咲「私が勝ってるから」
淡「私が勝ってるじゃん」
咲「私の勝ちだから」
淡「だから私だって」
咏「や、私じゃね?」
記者「あの、これ……キリがないような気がしますが?」
咏「そう?私もキリがないとは思ってるけど、いいんじゃね?傍から見てると面白いし」
部下「○○さん、そろそろ切り上げないと、次の約束が」
記者「そうね。あの、すみません、私たち次の予定があるので」
咏「いいよいいよ。面白い記事に期待しとくからね」
記者「はい。ではこの辺で失礼します。清澄高校の方も、今日はありがとうございました」
久「あ、記事のほうだけど、あんまり変なことは」
記者「はい、大丈夫です。では」
久(……本当に大丈夫かしらね。二人の方は)チラッ
淡「じゃあさっさと卓についてよ。今度こそはっきりさせてあげるよ」
咲「いいよ。淡ちゃんには残念だけど、もう二度と油断しないからね。」
淡「よく言うよ。三尋木プロと……あと……えー、二人とも早く場決めしますよ」
まこ「染谷まこじゃ。そういえば自己紹介しとらんかったのう」
咏「じゃあ打とうかー。二人が納得出来るかまでは知らんけど、なるべく付き合うよー?」
と、ここでなんとアラサー乱入
打つだけ打って讃えあって仲良くなるんだな
~数時間後~
咲「ツモ、1300、2600。やっぱり私の勝ちだね」
淡「はいはい次いくよ」ピッ
~25分後~
淡「ツモ、2600オール!私の勝ち!私の方が強い!」
咲「じゃあ次の半荘ね」ピッ
~30分後~
咲「ツモ、2000、4000。はい、私の勝ち」
淡「はい次」ピッ
久「ちょっと、そろそろやばい時間なんじゃない?大星さん東京でしょ?」
淡「関係ないですね」
咏「おおー、もうそんな時間か。じゃあここまでにしよっか」
淡「ちょっと、勝手に決めないでくれます!?」
咏「いやー、流石にこの調子じゃ今日中に片をつけるの無理じゃね?」
咲「じゃあどうするんです?私の勝ちでいいと思いますけど」
咏「まぁまぁ、この状況でどっちが勝ってもどーせ納得しないから、とりあえず後日に持ち越しってことで」
咏「近いうちに上手い案を考えとくからさ。今日はここまででいいんじゃね?」
淡「私の方が合計収支良かった」
咲「私の方がトップ回数多かったけど?」
淡「負け惜しみ」
咲「どっちが」
咏「いちゃつくのもいいけど今日はお開きねー。淡ちゃんは駅まで送ってくよ、靖子ちゃんに車借りてるから」パタパタ
淡「ふん、覚えておきなよ。最強の高校生は私なんだからね」ベー
咲「だから止めておいたほうがいいよ。私にも勝てない子がそういう大言を吐くのは」
咏「んじゃーね、今日は邪魔したね」
久「いえ、久しぶりに元気な咲をみれてよかったですよ」
まこ「また機会があったらその時は」
咏「うんうん、近いうちにねー」
久(近いうちにまた来る気……?)
このひよっ子どもにトッププロの実力を思い知らせてやってください
1週間後、咲と淡をまとめてとばすアラフォーの姿が・・・
~車中~
咏「今日はどうだったー?」
淡「車、運転出来たんですね」
咏「ん、まあ一応ねー。こういうときに便利だから」
淡「咲ちゃんなんですけど、率直にどう思います?」
咏「……才能あるよ。あれでブランクあるなんてねー。淡ちゃんには悪いけど、期待値は一番かなー」
淡「私より強いってことですか」
咏「わかんねー。今は同じくらいじゃね?」
淡「今は、ってどういう意味で」
咏「あの子が麻雀を続けて、淡ちゃんが普通に白糸台で過ごしているようだったら差がつくかもね、知らんけど」
淡「私が、負けるって言いたいんですか」
咏「私が見る限りではってことかな」
>>125
アラサーだよ!
淡「……」
咏「……」
淡「納得できない。私の方が強いに決まってる、私の方が強くなれるに決まってる」
咏「そう?」
淡「根拠、あるんでしょうね」
咏「ま、淡ちゃんが納得する理由と言えば、環境の差かねー」
淡「環境って、私は白糸台に居るんですよ?少し遠征すれば臨海だってある。環境だったら私の方が」
咏「一般から強豪選手ならそれでいいんじゃね?ただ、君らのような選手になると話が変わるかな」
咏「場の支配っていうのはさ、強力だよ。一度支配した場ではもう負けないからねー」
咏「その分、同タイプの相手だと、どちらの支配がより強力かって話になるんだけど」
咏「淡ちゃんは宮永照の居ない白糸台でそれを育てないといけない訳じゃん?」
淡「そんなの、咲ちゃんだって同じじゃないですか」
衣か
咏「それはどうかなー、長野には龍門渕がある。靖子ちゃんに聞いて私も調べたけど、あそこは凄いよ」
咏「天江衣に龍門渕透華、条件はあるにしても場の支配に関してはともに超高校級」
咏「長野に居る嶺上ちゃんは、その気になればいつでもその子らと切磋琢磨出来るってとこかねー」
咏「あくまでも、私の見解って感じだけどさー、このアドバンテージはなかなかじゃね?」
淡「……」
咏「あとさー、やっぱ長野にはなんかあるね。宮永姉妹に龍門渕、原村和も長野。長野にユースチームでも作ったら面白いんじゃね?」
淡「全然面白くない。私に負けろって言いたいんですよね、そうに違いないです」
咏「いやーそんなことないけど」
淡「咲ちゃんと私の勝敗は後々決めようだなんて言っておいて!長引くほど私には不利なことばっかりじゃないですか!」
咏「落ち着きなって。それはさ、あくまで現状の場合。条件を対等にすればよくね?」
淡「対等ってどうやって!」
咏「長野に転校すればいいじゃん」
~数日後~白糸台高校~
咏「っつーことでさ、私としては淡ちゃんは長野行きにさせてあげたいなーって」
監督「急な来訪かと思えば、用件も急ですね」
咏「親御さんもなかなか理解ある人でね、それで淡が強くなれるならって、結構快諾だったよ?」
監督「いいですよ。本人が望んでいるなら、止めるべくもありません」
咏「あれ?てっきり引き止められるものかと思ったけど」
監督「……実力的には大星が抜けるのは痛いですけど、一人の才能のために他を潰すのは本意ではありません」
監督「私の指導が足りないと言えばそれまでですが、あの子はチームに不和をもたらします」
監督「今までは宮永が居たためにブレーキをかけていたようですが、部活動の無断欠席を始め、最近の行動は目に余ります」
監督「お話を聞く限りでは、大星は長野に行った方が、結果的には本人にも白糸台にもよく働くと判断します」
咏「そう?じゃあまあそういうことなら遠慮なく、じゃねー」パタパタ
監督「一つ、いいですか?なぜ大星に肩入れするようなことを?」
咏「若い芽は伸ばさないとね、そろそろ日本が世界を狙っても良い頃でしょ。新生白糸台にも期待してるよー」
~翌日~東京駅~
照「大星」
淡「あ、照先輩じゃないですか。どうしたんですこんなところで」
照「監督から聞いた。清澄に行くんだって?」
淡「そうですけど、それが何か?」
照「随分急な話だね、その荷物はもう向こうに行くってこと?」
淡「そうですよ、もう引退した先輩には私がどうしようと関係ないんじゃないですかね」
照「関係ある。清澄には咲がいる」
淡「……まさか、先輩までシスコンとか言い出すんじゃないですよね?」
照「そんなことはない。ただ誰だって妹の不幸は見たくない」
淡「それで?私に妹さんと仲良し小好しやれって話ですか?残念ですけどそんなつもり一切ありませんから」
照「嫌いなら嫌いでいい、無理に仲良くしろとは言わない」
照「ただ、私たちみたいに、咲を裏切るようなことをしないでくれればいい」
淡「なんですかそれ」
照「言いたいことはそれだけ。じゃあね、大星がプロに行くならまたその時に会おう」
淡(なんだったんだろう)
普通に良いお姉ちゃんしてるてるてる久しぶりに見た
~数日後~清澄高校~
まこ「……っちゅうことで、入部希望の大星なんじゃけど」
咲「反対です」
まこ(まぁそうじゃろうな……)
淡「咲ちゃんにそんな権力ないと思うなー」
咲「反対です」
まこ「しかし、この少人数じゃ、入部してくれるぶんにはありがたいんじゃが」
咲「反対です」
まこ「優希に京太郎はどう思う?」
京太郎「お、俺ですか?うー……まあ、いいんじゃないですかね。対局も組みやすくなりそうですし」
優希「そ、そうだじぇ。咲ちゃんの練習相手に相応しいと思うじょ!」
淡「はーい、3対1の多数決で入部決定。皆よろしくねー」
まこ「待て待て。まだわしの意見を言うとらんじゃろうに」
淡「えぇー……もしかして反対するんですか?」
まこ「そうじゃありゃせんわ。まぁこのままやと咲の不満は残ったままになるからのう。一つ条件を付けたいんじゃ」
淡「条件?あぁ咲ちゃんを凹ませて愚痴らせないようにするってことですか?」
まこ「その異常な敵対心はどうにかならせんのかったく……条件いうんは、優希にもう一度麻雀の自信を回復させてほしい、じゃ」
優希「じぇ!?」
淡「?どういうことですか?」
まこ「話すと長いんじゃが……」
~説明中~
まこ「っちゅうことで、白糸台にはそういう問題は無かったんか?そういう時にどう対処したかをしりたくてのう」
淡「うーん、自信なくして辞める人はいましたけどね。私は興味ないんで放置してました」
咲「……役立たずじゃん」ボソッ
淡「何かなー、窓があいてるのかな?時々不快な虫の羽音が聞こえるんだけど」
まこ「いちいち話を脱線させんといてくれんか?で、良い案があるといいんじゃが……」
淡「任せてくださいよ。そこの麻雀だけの照コンちゃんとは違いますから」
咲「また口ばっかり、信用しない方が良いですよ。この喋る金の鯱ほこは」
淡「少し準備の時間くださいね。あと咲ちゃんは吠え面かく準備をお願いね」
淡(……三尋木プロに相談しよ)
東京に行った原村さんが、白糸行って咲と対決するとか胸アツ
>>154
フルボッコだろ……
~一週間後~
淡「皆さん集まっていただいたようで」
まこ「急に1泊二日の合宿とはのぅ。料金も徴収せんで大丈夫なんかい?」
久「悪いわね、私も呼んでもらっちゃって」
淡「大丈夫ですよ。全部タダですから」
咲「えっ……私三千円ほど取られたんだけど」
淡「さぁ出発しましょうか!車は既にあちらに用意してるんで、ちゃちゃっと乗り込んでください!」
咲「ちょっと」グイッ
淡「いたた……何かな」
咲「お金返して」
淡「はいはい、これでいいでしょ」パサッ
咲「……一枚足りない」
淡「は?ちゃんと三枚あるじゃん」
咲「犯罪者なんだから罰金込みに決まってるよ」
淡「あーあー!がめついがめつい!これだから庶民は」
久「馬鹿やってないで、行くわよ」
咲の方が黒く見えるwww
あわあわはお嬢様なのか
~龍門渕邸~
淡「はい着きましたよ」
優希「おぉ!どこかと思えば豪邸龍門渕!」
京太郎「あー、だからタダなんすね」
淡「ふふ、今日は優希ちゃんのために特別ゲストもお招きしてますからね」
久「ゲスト?」
淡「予定ではもう着いてると思うんですけど、えーっと……あ、あの人かな」
優希「お、おぉぉ……!?」
煌「皆さんお揃いのようで、すばらです」
優希「先輩……なんでこんなところにいるんだじぇ!?」
煌「そちらの大星さんのご招待で、里帰りも兼ねて、交通費を負担してくれるとのことで、あやかることにしました」
久「交通費って、九州からでしょ?半端な額じゃないわよ」
淡「私のような高尚な雀士には裏に立派なスポンサーがついてますからね。なんのコネもなく粋がる人もいますけど」チラッ
咲「部長、やっぱりこの人だめですよ。いつか、というか近いうちに問題起こしますよ」
まこ「まぁまぁ、とりあえずこの合宿が終わるまでは判断は保留じゃろ」
淡「ということで、久しぶりの再会もあることですし、夕方までは自由行動にしましょう」
淡「龍門渕の方々にも話はつけてあるので、必要無いとは思いますが、何か困ったら各自この呼び鈴鳴らして下さい」
淡「執事の方がすぐに駆けつけるようです。じゃあ解散ということで」
須賀「優希、お前はどうする?」
優希「今日は、せっかくだから先輩といるじぇ」
須賀「そうか、じゃあ俺はハギヨシさんのところにでも挨拶してくるかな」
優希「より上手いタコスの作り方を学んでくるといい!」
須賀「お前もあんまりその人に迷惑かけるなよ。じゃあよろしくお願いします」
煌「お気づかい、すばらです」
久「まこはどうするの?」
まこ「うーん、そうじゃのう。こんな豪邸に来る機会は滅多にないんじゃ、色々見て回るつもりじゃ」
久「じゃあ私も一緒していいかしら」
淡「あれあれー?なんか誰からも誘われてない人が居るような……」チラッ
咲「私、こういう時は一人で読書してるから。みんなもそれを知ってるから誘わなかったの」
淡「あぁ……ひどい、こうしてぼっちは出来上がっていくんだ」
咲「淡ちゃんこそ大丈夫?せっかく色々用意してるのに誘われなかったよね。なんか、残念だよね」
淡「私は幹事だから。こういう時にも羽目を外しちゃいけないから。一人の方が好都合だから」
咲「そう、じゃあ私は本読むから邪魔しないでね」
淡「何いってんの?」
咲「何って、自由行動なんでしょ?自由にさせてもらうんだけど」
淡「は?一年ごときが自由行動とか笑わせないでくれる?これだから弱小校の天狗は困る」
淡「咲ちゃんは今から雑用してもらうに決まってるでしょ」
咲「何それ?聞いてないし、なんで私だけなの?京ちゃんや優希ちゃんも一年生なんだけど」
淡「聞いてないも何も、言うまでもない常識でしょ?それに今日の主役に雑用なんかさせるわけないじゃん」
咲「主役は優希ちゃんじゃないの?京ちゃんも特別扱い?何?もしかして京ちゃんに気があるの?」
淡「うわぁ……咲ちゃんはこれだから困る。すぐに恋愛恋愛、好きな本は携帯小説ですかー?」
咲「馬鹿にしないでくれるかな。だいたい本の種類に優劣つける時点で歪んでると思うけど」
淡「あれ?図星を突かれて困っちゃったかな。本にはどう見たって優劣あるでしょ」
咲「普段あまり本を読みもしない子が言っても説得力全く無いよね」
淡「はいはい、ちょっとその本見せてよ。どーせ下らない三文恋愛小説なんでしょ」グッ
咲「ちょっと、もっと丁寧に扱ってくれないかな。常識だよ?それとも本の価値もわからない淡ちゃんには難しいことかな?」
淡「ふん、こんな分厚いもの持ち歩くなんてどうかしてるよ。何これ?『利己的な遺伝子』?利己的な宮永姉妹に改題したら?」
IPS細胞?
咲「満足した?じゃあ返してもらっていいかな?」
淡「返してほしかったらここにある荷物、部屋に運んでもらうよ。雑用係なんだから」
咲「……淡ちゃんも一年生だよね?もちろん、言うまでもなく、率先して雑用をこなすんだよね?」
淡「私幹事だから」
咲「なにそれ?そんなことで逃げるつもり?新入りのくせに、ちょっと偉そうだよね」
淡「咲ちゃんが何を言っても、ここでは私が一番偉いんだよ?幹事なんだから」
咲「幹事の意味を履き違えてないかな。いうなれば一番下っ端だと思うんだけど」
淡「誰がこの企画を出したと思ってるの?」
咲「三尋木プロでしょ?私が何も知らないと思った。淡ちゃんの浅い考えなんて誰でも見通せるよ」
淡「なっ……」
咲「麻雀の時みたいな浅い引っ掛けだよね。あの待ち、ほんと見え見えだから」
淡「これと麻雀は関係ないでしょ?」
一緒に徹夜して寝不足になろうよ!
咲「わからない?普段の軽い頭が麻雀にも出てるって言ってるんだよ?」
咲「お姉ちゃんの近くにいてそんなことも教えてもらってないの?本当にそんなので大丈夫なの?なんか逆に心配になっちゃうよ」
淡「出た、伝家の宝刀お姉ちゃん。口を開けば二言目にはお姉ちゃんお姉ちゃん」
淡「せっかくだから教えてあげるけど、それ、本当に止めた方がいいよ?ほらみて、鳥肌立っちゃった」
咲「鳥肌?うーん、もとの肌が汚くてよくわからないや」
淡「……どうしても相いれないよね。怒りを通り越して少しびっくりしたなー」
咲「私もそう思うな。やっぱり淡ちゃん、清澄の麻雀部に向いてないよ。今からでも入るの止めたら?」
淡「私が入って、咲ちゃんが辞めたほうが麻雀部のためになると思うの。だって私の方が強いじゃん?」
咲「強いのは私でしょ」
淡「私だっての。何?勝負する?」
咲「いいよ、やろうよ。自分から負けにくるなんてね」
理想的なライバル関係じゃないか
~夕方~
久「いやー、見れば見るほど高級な調度品ばかりだったわね」
まこ「わしらにはそのほとんどが価値すら分からんかったけどのう」
透華「おーほっほほほ!私の審美眼、もっと褒めてもよろしいのですよ」
一「透華はオークション好きだよね。落とせば目立てるから」
久「でもオークションなんて、お金かかるでしょ。親はよく許してくれるわね」
透華「お父様も私を信頼していらっしゃるのですわ。良いものを仕入れてくると」
一「なんでも教育の一環らしいよ。帝王学には芸術の理解も含まれるんだって」
久「帝王学ねぇ……あ、集合場所はこの部屋ね」
まこ「優希たちはもうおるってことはわしらが最後か」
優希「咲ちゃんたちがいないじぇ」
まこ「あぁ、何をやっとるんじゃろうかあの二人は」
咲「遅れました」ボロッ
淡「少し早いけど夕食にしましょう」ボロッ
久(……この薄汚れた姿に突っ込んだ方がいいのかしら)
透華「何ですのそのみっともない姿!?」
咲「淡ちゃんが強情なので」
淡「咲ちゃんがしつこいので」
透華「そんなことは聞いていませんわ!何をしてそんな姿になったかと、そこを聞いてるんですわ!」
咲「運比べで、四つ葉のクローバーを探していて、私が先に見つけたんだけど」
淡「私なんか五つ葉見つけたのに咲ちゃんが早さ比べにこだわって」
咲「そういうルールだったじゃん」
淡「四つ葉と五つ葉じゃ価値が全然違うから」
咲「それでやり直しっていうのを繰り返してたら」
淡「あ、優希ちゃん。これ、私が作った花冠ね」
咲「優希ちゃん、これ私の花冠ね。ねえ、どっちが綺麗に出来てると思う?」
優希「えっと……」
優希(どっちもあんまり良くない出来だじぇ……)
すばら先輩過労死するんじゃね?
煌「どれどれ……なるほど、中々にすばらですね」
煌「私、花冠に関しては一日の長がありますが、これはすばらな出来ですよ」
優希「先輩……よかったらあげるじぇ」
煌「すばら!」
淡「花田さんなら分かりますよね。私の方が圧倒的にすばらしいって」
煌「少々お時間を……比べるとなればしかと評価しなくては」
透華「そんなことはどうでもよろしくてよ!ハギヨシ」
ハギヨシ「ここに」
透華「この二人をシャワールームに案内を。そんな土まみれの恰好で食卓に入るのは断固として許しませんわ」
ハギヨシ「ただちに」
咲「ちょっと待ってください、花田さんの結果を聞いてからでも」
透華「問答無用ですわ。花田さんも、この二人に審査の結果を伝える必要なくてよ」
煌「すばら」
淡「ちょっと、そんな!私の努力は!?」
~食卓~
衣「とーか!咲が来ていると聞いたぞ!」
透華「衣、ようやく起きましたのね」
衣「今宵は満月だ!夜の帳から日のいずるまで遊ぶつもりだぞ!……咲はどこに居る?」
透華「もうすぐ来ますわ」
咲「お待たせしました」
淡「全く咲ちゃんのせいで予定が狂って困りますね」
衣「咲、待っておったぞ。……お主は、東京で見たぞ、白糸台の大将だな」
淡「そうだけど、この子供が天江さん?」
衣「こどもじゃない、ころもだ!」
淡「うーん、そんな強そうに見えないけどなぁー」
透華「衣を甘く見ない方がよろしくてよ」
咲「少なくても淡ちゃんよりは段違いに強いからね」
咲 淡、衣、すばらとか
夢の共演だな
淡「私より?じゃあ咲ちゃんなんか今すぐにでも胃の中のもの全部吐き出してのた打ち回ってなきゃおかしいよね」
透華「食事前に低俗な表現は慎んでもらいますわよ」
衣「今日のご飯はなんだ?」
ハギヨシ「今日のメインはハンバーグになっております」
衣「ハンバーグ!今日は良き日だ、咲に白糸台の大将、後で衣とたくさん遊ぼう!」
淡(三尋木プロも言ってたし、記録もそうなんだけど、今はとても強者には見えないなぁ)
淡「もちろん、天江さんと打つことが今回の大きな目的なんだから」
優希「……まさか、私が三人の卓に入るのか」
淡「入りたいなら入っていいけど?」
優希「いや、遠慮しとくじぇ」
淡「まぁ四人目は花田さんだから。優希ちゃんは花田さんを応援してあげてね」
衣「花田とは誰だ?」
淡「ん?あの人だよ、全国にも出場してるし、天江さんを退屈させないとは思うけど」
見てるだけでも寿命が縮むレベル
煌「ご紹介、すばらです。新道寺の花田煌です。よろしくお願いしますね」
衣「……んー、覚えてはいないが、よろしくだ!衣は天江衣だ」
煌「噂は聞いていますよ。とてもすばらな腕前をお持ちだとか」
衣「覚悟しておくといい、衣は強いぞ。辛くなったら透華に代わってもらえ」
煌「なんの、私は辛いからと言って勝負を投げだしたことはありませんよ」
衣「白糸台の大将の紹介だ。今日は期待している」
透華「さぁ、顔合わせも済んだことですし、食事にしましょうか。好きなように席について下さいまし」
衣「衣は咲の隣だ!」
~夜~
透華「さて、そちらのご希望通り、卓は用意いたしましたわ」
淡「ありがとうございます。へぇー、良い卓に椅子だなぁ。流石は龍門渕」
透華「ギャラリーは同じ部屋にいてよろしいんですの?」
淡「まぁ、こんな仲間内の対局に神経質になってもしょうがないし、壁役なんて誰もやらないでしょ」
淡「疑わしいといったら咲ちゃんくらいだし」
咲「そういう発想を出す淡ちゃんが一番怪しいよね」
衣「衣は構わないぞ」
淡「まぁ基本は大会ルールでね。ただし私と咲ちゃんには特別ルール」
咲「特別ルール?」
淡「そう、順位の他にもう一つ優劣をつける。どちらがより多く花田さんの点数を削ったか」
煌「すばら!?」
すばら先輩とばっちりwwwwww
淡「花田さんはハコらないことが絶対の売りって聞いてます」
煌「売りにしているわけではありませんけどね」
淡「今回の対局は優希ちゃんを勇気づける意味合いもあります」
淡「私はどんな理由だろうと咲ちゃんに負ける気はサラサラないですので、もちろん花田さんを狙います」
淡「咲ちゃんにそんな技術があるかどうかは知りませんが、まぁ、弱いなりに考えて花田さんを狙うでしょう」
淡「私たち二人に狙われて、花田さんがどこまで耐えるか。先輩のその姿を見て優希ちゃんも何か感じてくれるでしょう」
優希「先輩……」
煌「任せてください。この花田煌、今夜は箱割れしないことを優希に誓いましょう」
衣「待て、衣もその特別ルールに入るぞ!」
咲「衣ちゃん?」
衣「衣も花田から削った点でも比べたい!」
リンチ宣言入りましたー
淡「まぁ、花田さんがいいならば構いませんけど」
衣「花田、衣もやりたい!」
煌「すばらです。どうせやることは変わりません。どんと来てください」
衣「そうか!ふふ、順位でも削りでも衣が一番になるぞ!」
久(なるほどね、淡との競い合いが絡めば必然的に咲も本気になる)
久(変に空気を読んだ咲の手加減が優希がばれるよりはまし、ということなんでしょうけど)
久(大丈夫なのかしら。花田さんが飛ぶことのほうが優希にはショックが大きいと思うのだけど)
淡「まぁ簡単な付け足しのルールだけど、咲ちゃんはもちろん受けるよね。逃げるっていうなら別だけど」
咲「……ごめんね、優希ちゃん」
優希「咲ちゃん……?」
咲「私、淡ちゃんにだけは負けたくないんだ。だから、花田さんを削ることに躊躇しないから」ゴッ
>煌「すばらです。どうせやることは変わりません。どんと来てください」
器の大きさもおっぱいの大きさも一番だな
この中では
煌(すばら!……流石は宮永照の血縁、王者に勝るとも劣らない迫力)
淡「やる気になってくれてよかったよ。腑抜けてる咲ちゃんじゃ相手にもならなくて退屈だったろうから」ゴッ
煌(常勝白糸台の大将、その圧倒的気迫……すばらです)
衣「月は満ち、一点の曇りもない夜だ。衣が敗れる理由もない」ゴッ
煌(昨年度IH最多得点記録保持者……実績に違わぬ濃密な気配、すばら)
煌(大星さんから連絡をいただいた時は耳を疑いましたよ。あの優希が麻雀を怖がるなどと)
煌(私が打ちきることで、優希がまた元のように強くなれるのならば)
煌(この勝負、負けるわけにはいきませんよ!)
かける言葉が見つからない
~南一局~
煌.700 咲.30200 淡.33300 衣.35800
煌「すばら……」
煌(よもや東場だけでここまで削られるとは……あと四局、これはなかなかに厳しいかなー)
煌(親は私、連荘して親が長引くのも危険ですが、この点数で四局乗り切るのも至難)
煌(和了っておきたい……ここは点数に如何なく和了ることが必要)
煌「ポン」
淡(仕掛けてきた、か。いままで守りに徹していたのにね。まぁこの状況だし当然か)
衣(花田に危険な気配はない、手は安め、テンパイまでもまだ遠い気配、意識を割くに値せず)
咲(素の点数では負けてる。花田さんのサポートにもまだ遠い、勝つためにはまず淡ちゃんだ)
淡(この感じ、咲ちゃん、私を狙いに来てるね。させないよ)
淡(手が異常に進みにくいのは咲ちゃんじゃなく、おそらく天江さんの支配)
淡(下手に動いても駄目。ここはまだ様子見かな)
~五分後~
咲「カン」
煌「ポン」
煌(これで今日初めてのテンパイ。白のみの安手ですが、このテンパイは大きいですよ)
衣(咲の捨て牌を鳴いてテンパイ、2000程度か)
衣「白糸台の大将。一つ聞き忘れていた」
淡「……何?」
衣「考えていなかったが、花田に点を取られた場合、削り換算の計算はどうなる?」
淡「んー、まあ取られた分だけマイナスでいいんじゃない?下手な計算いれると面倒だしね」
衣「そうか」タンッ
煌「っ!!それロン!2000」
淡(差し込んだ?なんのために?)
優希「先輩が和了ったじぇ!」
衣(全局の咲の狙いはおそらく花田への差し込み)
衣(そのくらいさせておけばよくても、咲の考え通りに場を進めるのは危険)
衣(こういった点数のやり取りに最も優れているのは咲だ)
衣(多少の損はあろうとも咲のイメージ通りに行動しないことが肝要)
淡(って考えてるのかなぁ。まぁさっきのは咲ちゃんからの差し込みを止めるにはそれくらいだと思うけど)
淡(どちらにせよ咲ちゃんの悪あがきくらい好きにさせてあげればいいのに)
淡(別に誰が振り込もうと結果は同じなんだから。その点私はもう次局のこと考えてるからね)
淡(花田さん削りはいったん保留して、今の狙いは天江さん一択。無駄振り込みしたケチはすぐにはとれませんので)
煌(これで2700点、焼き鳥回避で一応の格好はついてますが、次はどうしたものでしょうか)
完全にあの声で脳内再生される
この>>1は書き慣れてるな
~南一局~一本場~
咲「ロン、1000は1300です」
煌「すばら!」
淡(間に合わなかった、少し欲張っちゃったかな。もう少し安めでも良かったかも)
衣(咲、もう少し花田に点数を与えるかと思っていたが、ここで流すのか)
~南二局~
咲「ロン、1000点です」
煌「すばら」
煌(これで残りは400点ですか、あと二局といえどまたもや本格的にやばいですね)
~南三局~
咲「あっ」ガシャン
淡「え?」
咲「ごめんなさい、山を崩しちゃって、満貫払いですね」
淡(チョンボ……こんなところでチョンボをして何の意味が)
淡(前二局で絞った点を花田さんに返すため?)
淡(そりゃ花田さんが半荘中二回もテンパることなんて絶望的に低いことだけど)
淡(……無意味にしか見えない。狙ってここまで回りくどいことをするならさっさと花田さんをとばすなりしたほうが早い)
淡(もちろん私と天江さんが同卓している限りはそんなことさせるつもりは皆無だけど)
久(咲の一見不可解な行動。プラマイゼロを作ってきたときと似ているわね)
久(もっとも以前はそれなりに自然な形でそれを成してきたわけだけど)
久(同卓している面子がこのレベルな以上、誰から見ても不自然な形にせざるを得なかった?)
久(でもここでそんな点数調整が必要とも思えないわ、勝つための何か、かしら)
衣(以前ののかに咲の点数調整能力について聞いたことがある)
衣(衣も皆を楽しませようと削り具合を調整することはあるが、咲のそれは群を抜いていると)
衣(この南場での点数移動はほとんど咲が損をしただけだ)
衣(現時点で花田を最も削っているのは衣。次に白糸台の大将)
衣(この現状で咲が削り点でトップに立つには、花田を飛ばすほどの役が必要)
~南三局~
咲「ツモ、2000、4000です」
淡(意図的なチョンボの後に満貫和了り。咲ちゃん、随分と好き勝手に動いてるね)
淡(私を馬鹿にするようなその態度、気に食わないよ)
淡(この世の中には、やっちゃいけないことがあるってことを教えてあげる)
~南四局~
淡(ふん。この場が咲ちゃんの思惑通りに動くと思ったら大間違いだよ!)
淡「ていっ!」ガシャーン
衣「……なんだと!?」ガタッ
咲「……え?」ポカーン
淡(思い知った?私のこの行動は読めなかったはず!)
衣「白糸台の大将、正気か?」
淡「ふふっ、ざまぁないんじゃない?咲ちゃんのふざけた計画はこれで台無しでしょ?」
咲「あ、……うん、まあそうなんだけど……いいの?」
淡「何が?」
衣「何を考えている!?親のチョンボは4000オールだ」
淡「それくらい知ってるって。咲ちゃんにも出来たこと。たかが12000くらいすぐに取り返すよ」
淡(ここで華麗に和了って決める。この場の一番はこの大星淡だってことを)
衣(気付いてないのか?そんな無法、なんの準備もなしに行うことの危険性を)
衣(咲にとって点数調整は得意分野。ののかの話では幼いころから行ってきた自然な行為)
衣(だからこそまかり通る。意図的な点数減らしによって場の支配は揺るがない)
衣(だがこの白糸台の大将は違う。点数を支配することで勝利を拾ってきた者ではない)
衣(衣と同じ、圧倒的な場の支配で相手を蹂躙していく型のはず)
衣(この流れでその愚行。自ら場の支配を手放したようなものだ。衣が風越相手に犯したミス)
衣(……違う。気付けないのも当たり前だ。自身の感覚、支配に対する絶対的な自信)
衣(そして生半可な相手にはそれでも通用してしまったという事実)
衣(その経験と自信が思考に霧をかける。白糸台の大将はここで終わりだ)
淡(あれ?ひどい配牌だ……)
咲(あぁー……なんか気が引けるなぁっていつもなら思うんだけど)
咲(淡ちゃんだしね。全然心が痛まない、むしろやる気が出てくるよ)
煌(すばらです!この配牌、親のチョンボから流れが回ってきましたようですね)
煌(ホンイツチートイが見えますよ。ここは言うまでもなく攻めの気持ちです)
淡(うーん、ここから手作りするとなるとチャンタにホンイツ絡めかなぁ)
衣(如何にせん、トップで終わらすには早上がりを目指すよりも咲の動向が鍵)
~数順後~
咲「カン」
煌(すばら!カンドラが乗りましたよ!リーチをかけずともハネ満の手)
煌(箱割れを避けるためには振り込み、待ちの変えを考慮してもここはダマでいくのが最善)
煌(しかし、私は今、後輩の気持ちを背負ってここにいるのです)
煌(IHの時の役目とは違う。今は優希に決意を見せるとき!)
煌「優希、見ていてください」
優希「先輩……?」
煌「振り込むこと、負けることを恐れるのも大切なことです。しかし」
煌「もっとも恐れるべきは負けるという幻想に囚われた自分自身」
煌「強大な相手の前に、勝つという意識を持ち続けることがすばらなのです!」
優希「先輩!」
煌「リーチ!」ターンッ
衣「ロン、3900」
煌「すばらっ!!」
煌.500 咲.36500 淡.21300 衣.41700
淡「ま、負け……た?この私が?」
衣「わーい!二つとも衣の勝ちだぁ!」
透華「当然ですわ!清澄といい白糸台といいチョンボで場を汚すなどなんともあさましい行為!」
透華「そのような輩に衣が負けるはずもありませんわ!」オーホホホ
優希「先輩!流石だじぇ!おかげで目が覚めたじぇ」
煌「優希……では、もう麻雀に怯えることはないのですね」
優希「当然!花田煌の後輩が、そんな臆病風に悩まされることなどあってはならないじぇ!」
優希「うー、そう思うとなんかウズウズするじょ。私も麻雀が打ちたいじぇ」
煌「では私と打ちましょう。久しぶりに優希と卓を囲みたいものです」
久「私も入っていいかしら?」
まこ「ワシも入れてもらおうかいのう」
優希「どんとくるがいいじぇ!」
ハギヨシ「ではこちらに。卓の用意はできておりますので」
淡(負けてない負けてない。これはあくまで優希ちゃんの自信を取り戻すための余興)
淡(いうなればワザと!私がワザとチョンボしたおかげで花田さんは飛ばずに、優希ちゃんに元気が戻ってきた)
淡(そう、実質私の勝ち!)
淡「で、私の実質的勝利で終わったんだけど、まだ続ける?」
咲「淡ちゃん頭大丈夫かな?削りでも得点でも三人中最下位だよ?」
淡「は?何言ってるの?あの元気な優希ちゃんを見たでしょ?完全に復活、つまり私の勝利」
咲「そういう屁理屈とかってさ、自分で言ってて悲しくなってこないのかな?」
淡「いやいや、咲ちゃんこそね、そうやって目前の勝ち負けしか捉えられないなんて、器が知れるよ?」
咲「衣ちゃんが和了って、涙目で茫然としてた子の台詞とはとても思えないね」
淡「涙目?誰が?咲ちゃん本の読みすぎで目が悪くなっちゃったのかな」
咲「そう、じゃあ今度は泣き声を出すまで追いつめてあげないとね」
淡「あー駄目駄目。そんな出来もしないこと、聞いててこっちが恥ずかしい」
咲「じゃあとっとと卓につこうか」
衣「衣も入るぞ!まだ月は夜を照らしだしたばかりだ!まだまだ遊び足りない」
淡「どうぞどうぞ。これで三人、あと一人は」
透華「私が入りますわ」ヒュオッ
咲(あ、冷たくなってる。リベンジの良い機会だね)
咲「是非お願いします」
~午前五時~
衣「……むぅ」ウトウト
ハギヨシ「衣様、お身体は大丈夫ですか?」
衣「月も、落ちた……衣は、眠たいぞ……」ウトウト
咲(衣ちゃん、限界そうだなぁ……というか私ももう凄く眠い)ウツラウツラ
透華「……」ヒュオ……ボッ……ヒュオ……ボッ
咲(龍門渕さんも、冷たくなったり熱くなったりでこれもう限界でしょ…)ウトウト
咲「さすがに、お開きにしません?これ以上は……色々と支障が出るよう、な」
ハギヨシ「そうですね。お嬢様方のお身体に障ります」
淡「えー!まだもう少しやれるって!あと40で私の逆転なのに!」
咲(なんで淡ちゃんは無駄に元気なの?頭弱いの?)
咲「ハギヨシさん……淡ちゃんに何か落ち着く飲み物を……」
ハギヨシ「既に用意しております」サッ
淡「ん?何これ?」
ハギヨシ「特製ココアです。頭がすっきりしますよ」
淡「ふーん、じゃあこれ飲んでちょっと休憩したら続きね……あ、これおいしいね」
淡「あれ?急に眠く……どうして?」コックリコックリ
ハギヨシ「知らない間に疲れが溜まっていたのかもしれませんね。少し横になられては?」
淡「む……そうなのかな?じゃあちょっとだけ横に」ウトウト
ハギヨシ「寝所の準備は隣の部屋に。お嬢様方と宮永様も是非こちらへ」
衣「うむ……衣は、もう眠るぞ」
透華「……」ボボボッ……ヒュオ
咲(オーバーヒートしてる?……大丈夫かな)
咲「ありがとう、ございます」
咲(まあいいや……もう眠いし)
~昼過ぎ~
透華「ん……んん、」パチクリ
透華「……ここは?ハギヨシ!ハギヨシ!」
ハギヨシ「ここに」
透華「状況の説明を」
~説明中~
透華「……そう。ほんの薄ら、断片的に覚えてないこともないくらいには思い出せそうな感じですわ」
透華「衣は、まだ寝かせておきましょうか」
透華「ハギヨシ、こちらの二人を起こしておいてくださらない?私は少しシャワーを浴びてきますわ」
ハギヨシ「承知しました」
透華「起きたら隣の部屋に待たせておいて、少し話があるので」
~15時過ぎ~
久「あら、もうお話は終わったの?」
淡「一応は、はぁ……咲ちゃんのせいで怒られちゃったじゃん」
咲「……そこで私のせいだけに出来る無神経さだけは逆に尊敬しちゃうよ。私にはとてもできない」
淡「だいたい、ちょっと夜更かしさせた程度で普通あんなに怒る?」
咲「それに加えて色々あったからじゃない?チョンボとか、あと廊下とか結構土で汚れてたみたいだよ」
淡「それも咲ちゃんのせいじゃん」
咲「うん、淡ちゃんは私にも怒られたいのかな?」
淡「やめてよ。咲ちゃん程度が怒っても何も怖くないよ?むしろ滑稽なんだけど」
咲「そうだね、淡ちゃんの滑稽な顔を見てると真剣に怒る方が馬鹿らしいよ」
久「ほら、もう花田さんが出発する時間なんだから、ちゃんとお礼言わないと」
淡「あぁそうでしたね。わざわざ九州から出てきてくれたんでした」
咲「優希ちゃんはあの後どうでした?」
まこ「すっかり元通りじゃけぇ。あとで咲とも打ちたいというとったわ」
咲「そうですか、よかった」
淡「……」ジーッ
咲「……何かな?」
淡「あれ?私に対するお礼の言葉が聞こえないんだけど?」
咲「お礼?淡ちゃんって何かしたっけ?」
淡「あーもう!どこまで頭が弱いのかな咲ちゃんは!そもそもの話、この企画は私のおかげでしょ」
咲「そういえばそうだったね」
淡「ね。だから私に感謝しないと、崇め奉らないといけないでしょ?ほらとりあえず三つ指ついて感謝を示して」
咲「このことを考えてくれた三尋木プロには感謝しないとね。三尋木プロにはね。ただの伝言役はどうでもいいや」
咲「あとやっぱり一番の功労者は花田さんだよね。今度何か贈り物でもしようかな」
淡「ちょっと、何か勘違いしてるけど?私が三尋木プロに話さなかったらそもそもこの話なかったんだけど?」
久「そうね。咲、一応淡にもお礼しときなさい」
咲「そんな!?」
久「私たちからもお礼するわ。どうもありがとうね」
まこ「今回は助かったわ、ありがとう。入部の件は歓迎するけえの」
淡「はっ!完全勝利!完膚なきまでの勝利!ほら、そこの負け犬咲ちゃん?何か言うことは?」
咲「そんな……そんな……」
淡「ほら早く、負け犬咲ちゃんは往生際まで悪いのかな?」
咲「くっ…………ありがと」ボソッ
淡「え?聞こえなーい。はっきり言わないとさー、何十回でも言ってもらうよ?」
咲「ありがとう!これで満足でしょ!」
淡「いやいや、頭を下げてもらわないと。生涯、淡様を敬いますは?」
咲「……あんまり調子に乗らないでね」
淡「きゃー怖い怖い。こういう逆恨みほど厄介で無様なものってないよね」
咲「撤回する!私はこんな人にお礼なんて言ってない!」
淡「うわぁーどんどん無様具合が増していってる。見るに忍びないってこういうことだったんだ。勉強になるなぁ
咲「部長!もうこんなの放っておいてさっさと花田さんたちのところに行きましょうよ」
まこ「そうじゃのう、そろそろ時間だし行くとするか」
淡「あー逃げた逃げた。悲壮感漂ってるなぁ、敗残兵みたい」
~龍門渕邸正門~
久「みんな、忘れ物はないわね」
優希「完璧だじぇ!」
久「それじゃあ龍門渕さん、昨日今日とお世話になったわ。迷惑も多くかけて悪かったわ」
透華「いえ、構いませんわ。後で聞いたら衣も大層はしゃいでいたようで、少し二人には言いすぎましたわ」
淡「天江さんはまだ寝ていますか」
透華「えぇ、一度寝たらなかなか起きてこなくて困りますわ。何か伝言でも?」
淡「はい、また今d」
咲「昨日はとっても楽しかったよ。また一緒に遊ぼうって、お願いできますか?」
透華「承知しましたわ。では道中お気をつけて」
運転手「ではまずは長野駅でよろしいですか?」
久「ええ、お願いできるかしら」
運転手「了解しました」
煌「わざわざ駅まで寄ってもらって、いいんですかね?」
久「何言ってるのよ、私たちは皆貴女に感謝しきれないくらい感謝してるの。代表してお礼を言うわ、本当にありがとう」
煌「すばら!麻雀を打っただけで、私は特に何もしていませんよ。優希が立ち直れたのは優希自身にすばらな心があったからでしょう」
優希「やはり先輩は私の尊敬する先輩だじぇ!今度新道寺にありったけのタコスを送るじぇ!」
煌「すばらです!皆喜んでくれるでしょう」
まこ「流石にタコスは送れんじゃろ。途中でぐちゃぐちゃになるわ」
優希「そうなのか?くー、ならば私はこの気持ちをどのようにして伝えれば」
煌「まぁなんにせよ、すばらですよ。優希のその気持ちが何よりもすばらです」
~長野駅~
煌「では、次に会う時は大会で、敵同士になりますね」
優希「勝負するときはいくら先輩でも手加減しないじぇ?」
煌「そうですよ。試合に私情を持ち込み実力が出ないのはすばらじゃありませんからね」
優希「私たちと当たる前に負けたら許さないんだじょ!」
煌「もちろん負けませんとも。新道寺女子は今年も来年も、ずっとずっと強いですよ」
優希「約束だじぇ!」
煌「約束です。……ではもう時間のようですね」
久「わざわざ遠いところまでありがとうね。はい、道中お腹がすいたらこれでも食べて」
煌「これは、おやきですね」
久「ええ、お土産とも言えないけど」
煌「そんなことありません。是非味わっていただかせてもらいます。では」
優希「約束だじぇ!また絶対一緒に麻雀を打つんだから!」
煌「すばらですよ!」
眠いし切りもいいからここで一旦切る
後は煮るなり焼くなり好きにして
~夏休み最終日~清澄高校~
まこ「今日で夏休みも終わりじゃのう」タン
咲「色々なことがありましたね」タン
優希「あぁー明日から学校が始まると思うと憂鬱だじぇー」タン
須賀「優希は成績やばいからな。マジで留年の可能性あるんじゃないか?」タン
優希「京太郎!無粋なことを考えさせるんじゃないじぇ!」
咲「ツモです、2000、3900」
まこ「うぇ……」
須賀「あぁー!また咲がトップかぁー」
優希「咲ちゃんはIH終わってからまた一段と強くなってないか?」
咲「うーん、自分ではよく分からないかな」
久「おーっす。どう調子は?」
まこ「今日も来たんか?」
久「何よー、別にいいじゃない」
まこ「受験の方は大丈夫なんやろね」
久「まぁなんとかなるでしょ」
久「それよりさ、皆に見せたいものがあるのよね」
まこ「あぁ、昨日電話でいっとったあれか」
久「そうそう、じゃあ入ってきて」
淡「こんにちわー」
優希「おぉー、清澄の制服じゃないか!」
淡「そうそう、昨日夜にやっと届いたのんだ。どうかな?」
優希「うーん、……アリだじぇ!」
淡「そう?やっぱり新品はノリが違うなって思うんだけど」
須賀「良い感じですよ!こうピッ、としてて」
まこ「ほーう、今までは白糸台の制服だったからのう。なんとも新鮮味があるのう」
淡「ですよねー。こう、制服を着ると、より一層清澄に来たんだって実感しますよ」
咲「……似合わないね」
淡「はい空気読めない発言入りましたー」
咲「だって、流石にこれは……みんな、本当のことを言ってあげても良い時ってあると思うよ?」
淡「この圧倒的着こなしを見て第一声がそれなんだから、センスの無さが伺えちゃうよね」
咲「家に鏡は無かったのかな?これはやばい、って焦ったほうがいいくらい不自然だよ」
淡「咲ちゃんの野暮ったい感覚からだったらそう感じちゃうかもねー」
咲「その恰好が似合うって感覚ならこっちからお断りかな」
淡「あーあー、いいのかなーそんなこと言っちゃって、今麻雀部みんなのセンス否定したこと分かってる?」
咲「お世辞かどうかも分からないの?どれだけ単純な思考回路なんだろ、小学生だってもっと行間を読むよ?」
淡「お世辞って……自分に不都合なことは全部受け入れない、社会不適合者ちゃんと一緒にしないでね?」
まこ「キリがないからその辺でな。制服が届いたっちゅうことは、いよいよ明日から正式な清澄高校の一員か」
優希「そうだじぇ。淡いちゃん、クラスはどうなっているか聞いているのか?」
淡「それが聞いてないんだよね。文理選択の希望聞かれたくらいで、どうせなら優希ちゃんと一緒のクラスがいいなー」
優希「おう!うちに来たら盛大に歓迎してやるじぇ!」
須賀「いやいや、俺のクラスに来てくれた方が」
優希「犬!ご主人さま以外に色目を使うでない!」
咲「そうだよ。京ちゃんと一緒ってことは私のクラスでしょ。それだけは勘弁してほしいな」
淡「こっちのほうからお断りだけど?」
まこ「そういえば、淡は勉強の方は出来るんかい?」
久「その点は大丈夫なんじゃない?白糸台って結構優秀なところって聞くわよ」
淡「そうですよー。白糸台は学業も優秀じゃなくちゃいけませんからね。私の場合は全く問題ありませんでしたけど」
淡「まぁ、麻雀しか取り柄がないような咲ちゃんには厳しいかなー。麻雀の腕も厳しいけど」
まこ「ほなら、優希のような補習、追試の心配は無いちゅうことか」
優希「テスト中にタコスを食す権利さえあれば……」
久「一応、文理選択はどちらに出したのかしら?」
淡「私、プロ志望なんであんまり関係は無いんですけど、とりあえず文系にしときました。一応、英語とか得意なんで」
咲「ちょっと、文系選択とかしないでよ。同じクラスになったら困るんだけど」
淡「うわ、あまりに眼中に無かったから忘れてた。しまったなぁ、理系にしとくべきだったか」
まこ「まぁまぁ、文理でクラスが別れるのは2年からじゃけぇ、たいして問題にならんじゃろ」
優希「数学が得意ならコツを教えて貰いたかったじぇ」
淡「数学も人並みには出来るよ。よかったら教えてあげよっか」
優希「本当か!?救世主が現れたじぇ!」
淡「そういえば、さっき私にいちゃもんつけてきた人がいたけど、その人は勉強の方はどうなのかなー」チラッ
咲「似合わない制服着て浮かれてるような人に心配されるようなことは無いんじゃないかな」
須賀「咲はまぁ、中の中ってくらいの成績だったっけな」
淡「中の中って……顔だけじゃなくて、おつむの方も地味なんだね」
咲「そんなことないから、現代文とか学年の中でも良い方だから」
淡「現代文!あははははっ!」
咲「……何笑ってるのかな」
淡「現代文が得意です、とか完全に勉強出来ない人の負け惜しみじゃん。それを得意げな顔で言われたら……笑うしかないよね?」
咲「いるよねこういう人。発言の上っ面しかとれなくて恥ずかしい勘違いしちゃうタイプの人」
淡「いやでもさ、聞きたいんだけど、現代文って誰でも出来るじゃん?得意とか、不得意とか、そういう科目じゃないよね?」
淡「それをさ、得意ですっていうのはさ、特技は呼吸することです、とか言っちゃうのと変わらなくないかな」
淡「むしろ、そういう微妙な雰囲気にしちゃう残念回答を拾ってあげた私に感謝してもいいんじゃない?」
咲「的外れな主張ご苦労さま。そういう考えしてる人ほど現実見えてないよね。実際に現代文ってかなり差が出る科目なんですけど?」
久「そうね、このまま続けても水掛け論になりそうだから、実際に競争してみる?」
まこ「おい、そういうこと言うと」
咲「勝負ですか、いいですね。淡ちゃんみたいな人って、はっきりと現実見せないといつまでも妄想の中ではしゃぐだけですから」
淡「何言ってるのかな。いいよ、咲ちゃんのささやかな現代文プライドもここで叩き折ってあげるよ」
まこ「……言わんこっちゃない」
久「いいじゃない、面白そうよ?勝負の内容だけど、今ちょうどここに共通一次試験の過去問集があるのよ」
久「適当な年度を選んで現代文の問題を解きあいましょう。時間は、大問二つだから、そうね、50分でいいかしら」
淡「共通一次ってたしか選択式の回答方法でしたっけ?」
久「そうよ、隣に今は誰も使ってない部屋があるから、二人はそこで解いてもらうわ。私たちはその間麻雀でも打って待ってるから」
須賀「試験官とかいなくていいんすか?」
久「お互いがお互いにこれ以上ないほど不正行為は監視しあうでしょ?問題ないわよ」
咲「年度はどうします?」
久「優希は何年度がいいと思う?」
優希「99!」
久「じゃあ99年度にしましょう。他に質問はある?」
淡「あぁ、お手数ですが、咲ちゃんへの慰めの言葉を考えてあげておいて下さい。泣き喚かられると敵いませんので」
咲「タオルを用意しておいた方がいいですね。淡ちゃんって慰めたところで泣きやみそうにないですから」
久「特にないわね。じゃあ99年の問題をコピーしてくるから少し待ってて」
須賀「どっちが勝つと思います」ヒソヒソ
まこ「順当に見れば咲に違いないんじゃが、正直あそこまで自信に溢れてると淡も本当に成績優秀かもしれんのう」ヒソヒソ
淡「さて、あと一時間程度で咲ちゃんの拠り所が粉々に粉砕されるわけだけど、気分はどうかな?」
咲「粉々に粉砕?もうこの時点で淡ちゃんに勝ち目がないことが分かっちゃったんだけど、なんかもはや残念だよ」
~数分後~試験会場~
久「じゃあここにタイマー置いておくから、50分経過したらアラームが鳴るわ」
久「で、この紙が解答用紙ね。本来はマークシートだけどまぁいいでしょ。じゃあ問題用紙配るわね」
久「いくわよ……始め。じゃあ私たちは部室にいるから、終わったら部屋にきてちょうだい」
~部室~
久「やってからで思ったんだけど、選択式の問題はまずかったかしら」
まこ「そうか?現代文の記述式なんてあの二人が互いの採点に納得するとは思えんが」
久「うーん、普通なら選択問題でいいんだけどね、あの二人って麻雀の時、勘が異様に冴えるじゃない」
まこ「まさか、当てずっぽうでやって全問正解するなんてこと流石にないじゃろ」
優希「全国の受験生に対する冒涜だじぇ」
久「まぁそうならいいんだけどね」
~試験会場~
淡(……二つまでは絞れるんだけどなぁ)
咲(……この文章読んだことあるなぁ)
~部室~
久「……そろそろかしらね」
咲「終わりました」ガチャリ
淡「……」
久「お疲れ様、じゃあ早いとこ採点しちゃいましょうか。解答を見せてね」
~数分後~
久「点数出たわよ」
咲「……どうでした?」
久「意外と素直な結果ね。93対62で咲の勝ちだわ」
咲「そうですか。まあ当然なんですけど……」
まこ「なんじゃ、勝ったちゅうのに浮かない顔じゃのう」
淡「ずるい」
咲「……やっぱり」
淡「ずるいずるい!だいたい咲ちゃんの得意科目で勝負すること自体ずるいじゃん!私だって英語なら絶対に負けないし!」
咲「あのさ、時間終了前くらいかずっとグチグチ言ってたけど、淡ちゃんも承諾した上での勝負だったよね?」
淡「嵌められた。1対1じゃなかった。久さんが私に不得意科目で勝負せざるを得ないように誘導するから。気付いたら1対2だった」
久「え、私のせいになるの?」
淡「だから英語。英国の合計点なら負けない。私が勝つに決まってる」
咲「英語では絶対に勝負しないから」
淡「……逃げる気?」
咲「淡ちゃんが勝手にどう思っても構わないけど私は英語では勝負しないから。国語ならいつでも受けてあげるよ」
淡「何それ?勝てる勝負しかしないって言うの?」
咲「今回勝負したのは、淡ちゃんが現代文を馬鹿にしたからだよ。気分はどうかな?馬鹿にしたものに足元すくわれて」
淡「……国語なら受けるんだね」
咲「そうだけど?」
淡「じゃあ二時間後、もう一回勝負。私はその間違う場所で少し勉強する」
咲「二時間?それで何が変わるのかな?」
淡「いいから!二時間後だから!約束だから!」ダッ
咲「いいよ。淡ちゃんの気が済むまで相手してあげるよ」
~2時間後~
久「えーっと、じゃあ第二回現代文勝負ということで、優希」
優希「02!」
久「では02年度の問題を使うわ。ルールは前回と同じでいいわね?」
咲「ええ」
淡「もう絶対に負けないから」
久「じゃあ始めるわよ?」
淡(02年……大丈夫、答えは全部暗記してる)
~1時間後~
久「では結果発表するんだけど……えー……」
咲「どうかしました?」
久「えっとね、90対100で淡の勝ちだわ」
咲「なっ……!そんな、たった二時間で……ここまで」
淡「スー……ハー……スー……ハー……」
優希「淡ちゃん、何してるんだじぇ?」
淡「ん?いやぁ、ちょっと試してみたんだけど……やっぱりさ、深呼吸をする方が現代文解くより難易度高いなぁって」
淡「まぁそれすらも出来ない子がいるようだけど……」チラッ
咲「そんな……あり得ないよ……」
淡「咲ちゃーん、そういえば咲ちゃんの趣味ってなんだっけ?読書?でも読書が趣味な人がこんな簡単な問題解けない訳ないよね?ね?」
咲「……」
淡「ほら、顔上げて。咲ちゃんのために、この大星淡が勉強のコツを教えてあげるから」
咲「……何?」
淡「才能……かな」ドヤァ
咲「……私帰る」
淡「えーまだ早いよー!ちょっと咲ちゃーん、イジケないでよー。麻雀打とう麻雀。ほら、咲ちゃんの好きな麻雀だよー?」グイグイ
咲「離して、私帰るから」
淡「だって私、今日まだ一回も打ってないんだよ?」グイグイ
咲「優希ちゃんたちと打てばいいじゃん」
淡「一局だけでいいからさー、打ってこうよー」グイグイ
咲「だから帰るって!じゃあね!」バタン
優希「行っちゃったじぇ」
淡「あれ?そんなにやり過ぎた気はないんだけどなぁ。いつもなら麻雀する流れだったんだけど」
まこ「まぁ今回はしょうがないじゃろ。運や機嫌が悪いこともあるじゃろうし」
須賀「どうでしょうね。大抵のことは寝て起きたら機嫌が直りそうですけど」
優希「咲ちゃんは繊細なんだじぇ。京太郎と一緒にするでない」
淡「うーん……」
久「淡、ちょっといいかしら」
淡「なんです?」
久「ホワイトボードにさっきの大問1-2の漢字問題を書いてみたけど、解いてくれる?」
淡「?……2番じゃないですか」
久「ホントに?」
淡「はい」
久「これ、実際の問題の2番と3番を入れ替えてあるんだけど」
淡「え?」
久「なんで間違えるのかしらね」
淡「それは、えっと……み、見間違えちゃって。入れ替えてるとか思ってないですし」
久「咲も薄々感づいていたのかもね。淡が不正したことを」
淡「ふ、不正じゃないです!勉強ですよ、ちょっとベクトル変えただけであって!」
久「まぁ、いつもなら発想の転換ってことでいいかもしれなかったけど、今回は種目が悪かったわね」
淡「種目が悪いって、単なるテストじゃないですか」
久「咲が好きな分野だったことが運の尽きね。麻雀で置き換えて考えてみればいいわ」
久「バレなきゃイカサマじゃないと言っても、平で真剣に打ってる所でイカサマされていい気分はしないわ」
久「正々堂々ぶつかって来てくれるって思っていた相手だと特にね」
久「あなただって、勝ちさえすればそれでいいって思ってたわけじゃないでしょ?」
淡「あの……ちょっと、外でます」ダッ
まこ「なんじゃ、カンニングしとったんか」
久「悪気はなかったでしょうね。ちょっと色々と噛み合わなかっただけで」
淡「咲ちゃん!」
咲「……何?」
淡「こんなつもりじゃなかったの!」
咲「……」
淡「対局前の軽い前座っていうか、余興っていうか、ホント、その程度だと思ってて!」
淡「だからその、なんでもありかなって、そういう暗黙の了解があったのかなって、闇討ち不意打ち上等だと思ってて」
淡「咲ちゃんの雰囲気が読み取れ切れてなくて、そこは本当に、その、ごめん……」
咲「うん……ごめんね、私も、ちょっとムキになってたよ。淡ちゃんがそういう子だってのは分かってたはずだったんだけどね」
淡「じゃあ!……私、咲ちゃんを裏切った訳じゃないよね!?」
咲「え……?うん、まあそうだと思うよ」
淡「じゃあ、照先輩には内密ということで」
咲「……お姉ちゃんがどうかしたの?」
淡「いや、実は……」
~説明後~
咲「そっか……お姉ちゃん、そんなこと言ってたんだ」アハハ
淡「そうなんだ……だから、私が咲ちゃんを裏切った、みたいな話が耳に入るとまずいって言うか」
淡「もちろん雀士として敵対するくらいは全然構わないんだけど、私も負けるつもりは無いんだけど」
淡「あの人、なんか、とんでもないことしでかしそうな空気があるっていうか、直接武力行使してきそうっていうか」
咲「え……っ、お姉ちゃんって白糸台でそんな人だったの?」ウワァ…
淡「私も、誰かを殴ったりしてるところを直接は見てないんだけど、オーラが違うっていうか」
咲「そ、そうなんだ……」
淡「だから、その、このことは秘密にしていおいてほしいなって。まぁ、裏切ったわけじゃないけどね!」
咲「大丈夫だよ。ありがとうね」
淡「うん、じゃあ仕切りなおしにどっかでちょっと打とっか。雰囲気のいい雀荘探しておいたんだ」
咲「そうだね」
咲(裏切る、か……和ちゃん……)
裏で気に入らない後輩とかにコークスクリュー腹パンとかしててもおかしくないよな
>>759
照「ロン」ドスッ
後輩「ごはっ…!?」
~回想~
咲「引っ越すって……?どういう、こと……?」
和「あの、皆さんには黙っていたのですが、父と、そういう約束をしていて」
和「全国で優勝出来なければ、麻雀を止め東京で勉学に専念する、と」
咲「何、それ……そんなこと、私……全然知らなかったよ?」
和「……言っていませんでしたので」
咲「どうして……?どうしてそんな大切なこと!教えてくれなかったの!?」
和「言えば、負担になると思いました。咲さんにはそんなこと、考えてほしくなかったので」
咲「なにそれ……そんなの、こっちのほうがよっぽど嫌だよ……っ!」
咲「全部終わって、知らないところで決まってて……もう、どうにもならなくなった時に、初めて聞かされて……」
咲「これじゃあ一緒だよ……お母さんたちと、なにも変わらない……!」
咲「信じてたのに……友達だって、親友だって……ひどいよ……っ!」
和「私だって、言いたかったです。咲さんに……打ち明けたかった」
咲「じゃあ、……なんで?」
和「同じです。言えば、咲さんの負担になると」
咲「それが、ひどいってことだよ……私のこと、信じてくれてない……!」
和「そんなことありません!私は!」
咲「知らない方がいい、知ると負担になる、……だから、私は蚊帳の外なの?」
咲「私のこと、弱いって決めつけて、……大事なことは何も教えてくれない?」
和「咲さん……」
咲「ねえ……私は、どこまで、和ちゃんを信じていいのかな……?」
和「咲さん……!」
咲「ごめんね……?私もう、和ちゃんが信じられないや」
~回想終わり~
咲「……ねぇ、淡ちゃん。一ついいかな?」
淡「いいよ、どうしたの?」
咲「私のこと、どう思ってる?」
淡「……認めたくは無いけど、暫定ライバルってとこかな。いや、実際は私の方が強いんだけどね」
咲「ライバル……じゃあ、もし私が、麻雀が打てなくなったり、弱くなったりしたら?」
淡「……質問は一つじゃなかったの?」
咲「ごめんね?」
淡「まぁいいけど。咲ちゃんが麻雀打てなくなったら、ね。……たぶん、他の誰かを探すかな。私並みに強い人を。あとあんまり怖くない人を」
咲「私は用なしになるのかな?」
淡「そりゃそうでしょ。麻雀打てない咲ちゃんって、そこら辺の自称文学少女と何が違うのかな?正直言って、魅力無いよね」
咲「はっきり言うね。じゃあ私が強いままだったら?」
淡「叩きのめすまで付きまとうかな」
咲「……迷惑だね」
淡「じゃあとっとと認めたら?淡様には敵いません、って言って牌を置いてくれるなら私は咲ちゃんの前から消えるよ」
咲「そんなこと、私が認めると思う?」
淡「無駄に頑固だからね。だからこうやって叩きのめそうとしてるんだけど」
咲「最後に一つ。私が、淡ちゃんが全然敵わないほどに、ずっとずっと強くなったらどうする」
淡「あり得ないね」
咲「もしも、だよ」
淡「もしももあり得ない。私は宇宙一の雀士になるんだから」
咲「なんかその台詞、馬鹿みたいだよ」
淡「事実なんだからしょうがないでしょ?」
咲「宇宙一になったら他の雀士はみんな弱いってこと?」
淡「当たり前じゃん。なんたって宇宙一なんだから」
咲「じゃあ淡ちゃん、ひとりぼっちになっちゃうね」
淡「最強は常に孤高なの」
咲「淋しいでしょ」
淡「…じゃあ、私が宇宙一になった時……もしも……いや、ほんと万が一、億が一、京が一なんだけどね」
咲「うん」
淡「その時に、あり得ないけど、咲ちゃんが宇宙二位だったら、……私に挑戦する権利をあげる」
咲「ぷっ……くく、あははは!なにそれ?」
淡「うるさい!あり得ないことだからいいの!」
咲「そうだね、あり得ないよ」
淡「……うん」
咲「淡ちゃんがこのまま順調に強くなっていって、そうだね、宇宙二位になったとするよ?」
淡「まぁ、それは過程としてならあり得るかな」
咲「その時の宇宙一位は私だからね。私が淡ちゃんに挑戦するんじゃなくて、淡ちゃんが私に挑戦するんだよ」
淡「はっ!あり得ないでしょ。咲ちゃんなんかがそこまでいくと思う?よくて日本4位が関の山かな」
咲「淡ちゃんの予想はよく外れるから」
淡「咲ちゃんほどじゃないよ、っと、着いたよ。この雀荘なんだけど」
咲「ここ、染谷先輩の家の雀荘だよ」
淡「そうなの?まぁ打てればどうでもいいでしょ」
咲「そうだね」
淡「よーし、今日こそ咲ちゃんに圧倒的実力差を思い知らせてあげるからね!」
咲「こっちの台詞だよ。もう一回土下座させてあげようか?」
淡「その前に咲ちゃんがイジケて帰っちゃうかもね」
咲「なんにせよ私が勝つから」
淡「私の方が強いのに?」
咲「私だよ」
淡「私だっての」
咲、淡「絶対に私が勝つ!!」
おわり
とりあえず終わり
学校生活とか対三尋木小鍛治プロとか和と和解とか世界戦とか
誰か続けて
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