「八つ後に逢いましょう」(13)

狐巫女「………うむぅ」

神主「どした?」

狐巫女「いやな?相変わらずしけた神社だのぉここは」

神主「仮にも巫女が言う言葉じゃないと思うが」

狐巫女「だって分社並みに小さいし、と言うより住居のおまけではないかこの神社」

神主「そこは一応気になっているんだ、言うな」

狐巫女「…しけた神社だのぉ、おまけに何を祭っているか分からん」

神主「俺も分からん」

狐巫女「お前も分からんって…一応ここの神主だろうが」

神主「いやさ、どうやら代々ここの神社を注いできたらしくてな」

狐巫女「受け継がれるうちに何を祭っていたか分からなくなったと、由々しきことだの」

神主「でもさ、なんか曾曾爺ちゃんは有名らしいんだよね」

狐巫女「やけに遠いな、直系の祖先もそこまで行くと別人だが」

神主「う…なんかその曾曾爺ちゃんが凄い事をして、褒美が何がいいかって聞かれたら」

狐巫女「ここか」

神主「うん、『この神社を取り潰すことの無いよう』だってさ」

狐巫女「おかしな奴がいたもんじゃの、お前みたいなやつではないか」

神主「ぬかせ」

狐巫女「まあ良い、いかにそれが変人であろうと関係ない事じゃが」

神主「…あのさ」

狐巫女「あん?」

神主「今の自分の立場分かってる?」

狐巫女「居候かつ神主手伝いじゃろ?」

神主「分かってるならいいんだけどさ…」

狐巫女「その程度はわきまえておる」

神主「よーしよし、自分の胸に手を当ててもう一度今の言葉を復唱してみろ」

狐巫女「どうした?」

神主「まず飯をお代わりする」

狐巫女「まさかお代わりするなと、無慈悲な」

神主「そこまではいい、そこまではいいんだ」

狐巫女「では何がいけない」

神主「なんで何倍もお代わりしてその度に堂々と茶碗を出すんだよ、厚かましすぎるだろうが」

狐巫女「食べ足りないのだ」

神主「『居候、三杯目にはそっと出し』って言葉を知らないのか?」

狐巫女「知っているとも、その続きも知っている」

神主「ああん?」

狐巫女「『八杯目にはにゅっと出し』面の皮の重要性について教えてくれるな」

神主「ちっとはわきまえろよ…」

狐巫女「第一な神主よ、そんな飯一杯が生死を分ける程度に生活が困窮している訳でもあるまい」

神主「ま、まあな」

狐巫女「ましてや神社の規模に相応しくないぐらい収入があるのだぞ?貧乏とは程遠いだろうが」

神主「そりゃ親父とか爺ちゃんも色々やってて国から貰ってたらしいし…」

狐巫女「そんな目くじら立てんでもいいだろうが」

神主「金じゃなくてお前の態度が問題だって言っているのよ」

狐巫女「居候は居候らしくか…一理あるな」

神主「なんでそんな偉そうなのかな」

狐巫女「いや、働かずして飯が食えると言うのが理想なのだが」

神主「そんな事始めたら即刻叩き出すからな」

狐巫女「慈悲を下さい」

神主「行動次第で」

狐巫女「しかしだ、こんな美少女が居ても揺れ動かんとは…男色か?」フリフリ

神主「アホ言うな」

狐巫女「しかし見た所同世代の女子に対しては反応が見られん」

神主「気に入った奴がいないだけだ」

狐巫女「大層な眼鏡な事だ、さぞそのお眼鏡にかかるのは難しいだろうな」

神主「茶化すな、ついでにホモじゃないぞ?」

狐巫女「まあ私は男色でも別に構わんよ、昔はよく居たからな」

神主「…うわぁ」

狐巫女「冗談はさておき、そこまで無反応だとこちらとしても心配なのだがな」

神主「お前は関係ないだろ」

狐巫女「ただのお節介だ、これでも人間は嫌と言うほど見てきたからな」

神主「俺と同じようなのも居ただろう」

狐巫女「沢山居たがどいつもこいつも最後は寂しそうに死んでいったぞ」

神主「……」

狐巫女「そうなりたくないならまあ、考えておけ?」

神主「…おう」

狐巫女「よろしい」

神主「なあ」

狐巫女「おん?」

神主「やけに馴れ馴れしいけどさ、まだ出会って一週間だぞ俺ら」

狐巫女「一週間も同じ屋根の下で居れば馴れ馴れしくもなる」

神主「誤解を招く言い方をするな」

狐巫女「事実を述べたまでだが」

神主「うぐぅ」

狐巫女「まあ、感謝はしておるよ」

神主「飯にか?」

狐巫女「それもあるが…あのまま捨て置かれていればのたれ死んで居ただろうからな」

神主「ああ、中々やばそうだった」

狐巫女「主に腹が減ってな」

神主「やっぱり飯じゃねえか」

狐巫女「いやさ、やっぱり飯と言うのは大事だな?」

神主「否定はしない」

狐巫女「それにあれだ、殺風景な男の台所に一輪の花をだな」

神主「…花?」

狐巫女「首を傾げるでない、美味いと言って食っておろうが」

神主「まあ確かに、美味いな」

狐巫女「そうであろうそうであろう」

神主「だが片づけしないし」

狐巫女「まあ上手いものを食わせてやるのだ、対価みたいなものだ」

神主「どうしてああなったか分からんほど荒れ放題だが」

狐巫女「…ふんふーん」

神主「おいはぐらかすな」ユッサユッサ

狐巫女「私は何も知らないわ―、知らないわー」

神主「くそっ、本当に記憶喪失なのかお前は」

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