『ククク、ようやく我が城が真実の姿を発現したわ』(訳:部屋の模様替え、終~わり♪)
「この手の趣味はよくわからんが、他へ越す時に影響が無いようにな……つまりあまり汚さないように」
先日、765プロに新人アイドルが加入した。
名前を『神崎蘭子』という少女だ。
九州から上京してきた彼女の下宿先は、事務所が充てがった寮やアパートではなく――…職員の家。
つまり我が自宅なのだが、幸い部屋はいくつか空いていたので生活スペースに関してはなんら影響が無い。
音無さんが一人暮らしをしているマンションに住ませても良かったのだが、普段から彼女には世話になっているのでこれ以上は迷惑をかける事が出来なかった。婚活に身を入れてほしいしね。
ともかく、新しい住人はその……ゴスロリ? 知識は無いが中世のヨーロッパ貴族でも着用を渋るような、漆黒のドレスにその身を包んでいる。
「クッ……私とした事が、生命の奔流を……(あぁ、エアコンの前にカーテンかけちゃった……orz)」
「ん? ああ、あれじゃエアコン使えないな」
蘭子は、やけに回りくどい台詞を好む。それが意図的なものなのか、教育されて身に付いたものなのかは定かではないが……会話のキャッチボールというより、彼女が壁にぶつけてどこぞに跳ね返ったボールを俺が試行錯誤をして捕球する。作業に近いものになっていた。
「我が友 P。今こそ旅立ちの時よ!(一緒に仕事いこ?)」
「……あー、わかった。先に駐車場へ向かってくれ」
蘭子にとって、アイドル人生は始まったばかり。
俺はプロデューサーとして、この子をトップアイドルにさせてあげる。言葉の壁なんて、問題ではない。……相手は同じ日本人なのだが。
――…【事務所】
P「おはようございます」
音無「あっ、おはようございますプロデューサーさん」ニコッ
蘭子「煩わしい太陽ね(おはよう!)」
音無「はい、おはようございます蘭子ちゃん」ニコッ
P「……お前さ、俺はそろそろ脳内に自動翻訳機能が付いてきたからなにを話してるのかはわかってきたけどさ」
P「他人が聞けばチンプンカンプンだと思うぞ」
蘭子「人の世……というものは。(気をつけます!)」
P「現場では注意してくれよ……」ハァ
蘭子「ククク、夜の始まりね(頑張ろ~♪)」
ガチャッ
春香『あっ、プロデューサーさんに蘭子ちゃん』
P「ああ春…」
春香「煩わしい太陽ですねっ」ニコ
P「あ、ああ……」
P「春香、その妙な言葉遣いについてだが」
春香「?」キョトン
P「遊ぶにしても事務所内だけで……な?」
春香「わかってますよ」クス
P「そ、そうか」ホッ
春香「あっ、蘭子ちゃん」
蘭子「何かしら?(ご用ですか?)」
春香「この前蘭子ちゃんが描いてたイラストなんだけど」
蘭子「え、絵……見た、の?」カァ
春香「うん……? 後ろからチラっとだけど」
春香「上手だねっ」ニコ
蘭子「わ、我が下僕 P。旅立ちの準備をしなさい(は、はやく行きましょう!)」
P「なにを急いでるんだ?」
P「あと、イラスト描くのか。今度よかったら見せてくれ」ニコ
蘭子「ぁ……」カアァ
蘭子「く……クッ、心の臓が…(は、はずかしいよ~)」
P「?」
"陶器のような肌"という言葉がある。
陶器といえば表面がザラザラしたものを真っ先に想像するが、なるほど。確かに血が通ってないように見えるほど白く、絹のような……という比喩も似合いそうなほど、神崎蘭子の御腕は綺麗である。
身体全体を覆う服装で、露出している部分は少ないが……髪型のせいか、見える白いうなじが醸し出すのは色気より妖艶な美しさだ。
切れ長の目も相まって、掛け値なしの美少女なのだが――…
「さぁ狩りの時間よ(仕事いこ?)」
この口調がひどく、勿体無いと感じる。
これも彼女の魅力の一つだと割り切って、伸び伸びとさせるのが正しいのならプロデューサーとして、俺は好きにさせたいと思う。
ドレスの色と同じ、漆黒の日傘を咲かせながら蘭子は歩く。
「プロデューサー……今日も、その、よろしく…」
彼女の歩む道の先に、トップアイドルという終着地点が待っていることを……強く望んだ。
――…
P「蘭子、突然だが俺は他の現場に向かう」
蘭子「ぇ?」
P「戻ってくるまで事務所に待機してくれないか?」
蘭子「ぁ……プロデュー…」
P「そういうことだから」グッ
ガチャンッ
蘭子「あ……」
蘭子「……」
蘭子「いっちゃった」
『らーんこっ!』
蘭子「っ!」ビク
蘭子「……」チラ
響「はいさい! ……じゃなかった、闇のまだぞ蘭子!」
蘭子「(あ、我那覇さん)」
蘭子「や、闇に飲まれよ」キリッ
響「お~っやっぱり本物はちがうゾ!」
蘭子「光の住人よ……。(元気な子、苦手だよー)」タラ
響「蘭子と二人きりで話すのははじめてだなっ」ニシッ
蘭子「……ふ。(そうですね♪)」
――…
小鳥「……」チラ
響「それでさー貴音のやつが……」
蘭子「……クク。(我那覇さん面白い~)」
響「……蘭子? 怒ってるのか??」シュン
蘭子「我が身体は愉悦に震えている。(お腹いたい……)」クス
響「難しい言葉を使わないでほしいさー…」
響「……じぶん、完璧だけどその、普通の言葉で喋ってほしいゾ!」
蘭子「ぇ、ええと……(どうしよー……)」
蘭子「……」チラ
響「……」ムム
蘭子「……」
蘭子「……」
蘭子「………………うん」コク
響「やった! ありがとうだぞ蘭子~っ!」ワーイ
蘭子「他愛もない……(な、仲良くなれたかな……)」ドキドキ
小鳥「……ふふ」クス
『響……そろそろ時間です』
響「あっ、貴音! いま行くぞ!」
蘭子「(四条さん……上品でカッコいい)」
貴音「蘭子。お疲れさまです」フフ
蘭子「ぁっ」
蘭子「(お、お疲れさまって言わなきゃ……っ)」
蘭子「お…………や、闇に…飲まれよ……(あぁ…orz)」
貴音「?」
貴音「まこと……蘭子は愉快な子ですね」クス
蘭子「闇が……泣いている。(わーっ褒められた♪)」
貴音「では……失礼します」
貴音「響……」
響「じゃあ蘭子、またな!」ニッ
タッタッタ…
蘭子「ぁ……」
蘭子「ま……また…」フリ…
小鳥「……」フフ
小鳥「蘭子ちゃん、もうそろそろプロデューサーさん戻ってくるって言ってましたよ」ニコ
蘭子「……夜が近い。(プロデューサー、はやく戻ってきてっ)」
蘭子は、イラストを描くのが趣味らしい。
前に、蘭子の部屋のドアが開いていた時に中を覗いたら画用紙に色々と描いていた。
蘭子に似た少女が格好の良い……と本人は思って描いているのかは謎だが、黒い天使を彷彿とさせる衣装を着たキャラクターが生き生きと描かれていた。
その時、絵の感想を蘭子に告げたら酷く狼狽し……その日は夕飯の時間になってもリビングに姿を現さなかった。
しかし、少しだけ吹っ切れたのか『描いているイラストを見ない』という約束をした後、今では料理を作っている俺をよそに、いそいそとテーブルの上で絵を仕上げている。
『なにを描いているのだけ教えてくれないか』と聞いたところ、
『わ、私の…………なんでもない……』とだけ恥ずかしそうに返された。やはりあの時見た絵は、蘭子自身で正解だったようだ。
そして今は、夕飯の支度中。ということは蘭子はといえば……
「料理、持っていくまでにテーブルの上片しておいてくれよ」
「クク……夕餉の直前まで我が進撃は止まぬ…」
なるほど。少し急いで持っていこう。
どう反応するだろうか。画用紙を濡らしても悪いだろうから、ご飯をよそった茶碗を先に持っていってやろう。
最近は、この同居人の反応が逐一楽しみなのだ。
コトッ
P「まだ機嫌、治らないのか」
蘭子「……」ツン
P「すまない……その」
P「でも変だとは思わないぞ? 日傘をさした少女の横に、どうして白馬に乗った王子様がいるのとか」
蘭子「……」フイ
P「王子様、馬に少女を乗せてあげないのかな。とか、王子様なんでネクタイしてるのかとか……見知ったネクタイだったとかは些細な事だ」
蘭子「…………」カァ
P「ほら、お食べ」
蘭子「……」パク
P「よしよし」
P「それでさ…」
P「……周りに男がいないのはわかるけど、俺をモデルに使うなら肖像権が発生するんだけど」
蘭子「!」カァ
蘭子「じ、地獄の業火を受けよっ!(もープロデューサーのばかーっ!)」カアァ
P「冷たっ、コップの水を指で弾くなっ!」アセ
春香「あっ、闇に飲まれよー!」ニコ
やよい「えへへー、闇に飲まれよ! ですっ」ニパァ
真「プロデューサー、闇飲まですっ!」ニコッ
雪歩「や、闇に飲まれよですぅ……」カァ
亜美「兄ちゃ~んっ」
真美「やみのま~っ!」ニッ
あずさ「あらあら……」ニコ
千早「…………や、闇飲まです」
伊織「なによ、皆してバカみたい…………闇のま。プロデューサー」ボソ
P「はは……ご苦労様」ハァ
P「蘭子……」
蘭子「……?」カキカキ
P「今さらだけど…」
P「……その、話し方どうにかならないのか?」
蘭子「っ」
蘭子「……ククク、私の翼を折るなど… P「それそれっ」
蘭子「……」キョトン
P「それが悪いとは言わないけどな」
P「その口調が無くなれば、もっと……普通に話せたりさ」
P「明るくなれたりするんじゃないか」
蘭子「!」
蘭子「…………そんなに、暗い……かな…」
P「そう気を落とすな。蘭子のファンの中には、確かに蘭子のそういう部分を愛してくれている人たちがいるのも知っている」
P「けど、トップアイドルを目指すんだろう」
蘭子「…………笑止(う、うん!)」
P「じゃあ……意地張ったり、変なプライドに固執するのはやめて。前に進むべきじゃないのか?」
蘭子「…………」シュン
――…
P「……夕飯の準備、出来たぞ」
蘭子「……」ショボン
P「そうしょげるなって」
P「まず、食べるところから。な? お食べ」
コトッ
蘭子「…………いただきます」ボソ
P「……」モグ
蘭子「……」パク
P「……」モグモグ
蘭子「……」パクリ
P「……」
蘭子「……」
P「……なあ、蘭子。元気だしてくれよ」
蘭子「……」チラ
P「いつもなら『クク、今宵の贄は格別。(オカズに大好物がある! やったー♪)』くらいの饒舌ぶりじゃないか」
蘭子「…………」
P「(俺が間違えているのかな…)」
P「(……いや、これも蘭子のためを想ってなんだ)」
蘭子「…………」パク、リ。
――…【TV収録】
MC『あれ、蘭子ちゃん今日は大人しいねえ』
蘭子「…………は、はは」
MC「う~ん、いつもみたいに『スタジオの照明は身体に障る……バサァッ!!』って感じで日傘広げないの?」
蘭子「ぁの…………」
蘭子「……その…」
MC「……」
MC「まあいいや次のコーナーいっちゃおうっ!」
ワー ワー!! パチパチ
P「……蘭子」
蘭子「…………」
――…
スタッフ『一旦休憩でーすっ!』
P「蘭子、ちょっといいか」
スタッフ『すみません』
P「あっ、はい」
スタッフ「今日、蘭子ちゃん身体の調子でも悪いんですか?」
P「あ……ええと…」チラ
蘭子「……」
P「……」
スタッフ「MCさんも蘭子ちゃん気に入られてるみたいなんで…」
スタッフ「……今回の出演もMCさん直々のお願いで実現したんですから」
P「はい……大変恐縮です」
P「すみません。少し話し合いをしますので」
スタッフ「」ペコ
タッタッタ…
P「蘭子、聞いていただろう」
蘭子「……」シュン
P「気落ちしている場合じゃないと思うが」
蘭子「……クク、奇をてらう必要など…」
P「いつもが奇をてらってるようなもので。ちゃんとしてる方が普通だろう」ハァ
蘭子「……いつもが、私らしさなんですっ!(皮肉なものだ。光が強くなれば、闇がより濃くその輪郭を顕す)」
P「……もしやとは思うが本音と建前、逆に言ってないか?」
蘭子「っ」ハッ
蘭子「……」カァ
P「うーん、どうしたものか……」
――…
MC「それでは、抜き打ちの楽屋訪問と参ります~っ! 現場にはスタッフが…」
蘭子「!」
蘭子「ぇっ?」キョロ
P「(出演者には内緒だが、鞄の中は見ないって打ち合わせでしてあるから安心し…)」
P「(……あっ)」
蘭子「画用紙……」
P「(画用紙は鞄に入りきらないんだった……)」
P「……マズい…」
MC「現場のスタッフゥーっ!」
スタッフ『はい、只今人気急上昇中の新人アイドル。神崎蘭子ちゃんの楽屋前に来てますー』
蘭子「……っ」ガタッ
P「(蘭子! ダメだその場からは動けないぞっ)」
蘭子「……」キッ
P「す、すまない……」
スタッフ『さあ中に入りましょう~』
ガチャッ
ワーワー!! ガヤガヤ!!
スタッフ『蘭子ちゃんは私物も上品というか漆黒に染められちゃってますね~』
蘭子「……」ドキドキ
『あれ? なにか画用紙がありますよ』
蘭子「!」チラ
P「(今からじゃ……回収に行けないっ)」
MC「蘭子ちゃん、あの画用紙は?」ニコ
蘭子「ぁ……えぇと…」
スタッフ『じゃあ、少し中を拝見させてもらいまーす』
パラッ
蘭子「ぁっ」
MC「これは……蘭子ちゃんのイラスト? みたいだね」
蘭子「ぁ……その…」カアァ
MC「どうなの?」
蘭子「わ、わた……」
蘭子「わ……」
蘭子『我が下僕 Pよっ!』
P「!」
蘭子「今すぐに禁断の書をこの世から抹消せよっ!(お願いっ、あの子を……)」
P「ら、蘭子」
蘭子「っ」ウル
P「(! わかった!!)」ダダッ
―――
P「すみません!」
スタッフ「え?」
MC『あ~スタッフさん? いま蘭子ちゃんの配下の人が禁断の書を抹消しに行きましたから!』
スタッフ「あっ、はい」
スタッフ「ええと……」
P「それを、渡してください!」
スタッフ「は、はい」スッ
P「どうも!」
ガシッ
P「そぉい!!!」バシュッ!!
キラーンッ!
MC「あ、ありゃー空の彼方に飛んでっちゃった」
MC「ど、どうなの? 蘭子ちゃん」
蘭子「ククク……アレは今朝拾った封印の書…………我が魂を封印するための恐ろしい魔術書。それを葬らせただけのこと」クツクツ
MC「な、なんだかよくわからないけどいつもの蘭子ちゃんだね!」
MC「よぅし! この調子で次のコーナーいこうか!! 蘭子ちゃんCM入りのコメントお願いっ!」
蘭子『CM? CMの後で何人が息をしていられるのかしら』クス
『はいカットーッ!!』
P「これで、良かったのか……?」
――…
P「収録、ご苦労様」
蘭子「……」
P「あと、画用紙回収してきたんだ」
P「車に何度か轢かれて、ボロボロになっていたけど……」
蘭子「ククク、所詮我が創造物の一つ。何度でも創る事は可能」クス
P「そうか……すまないっ! 俺の配慮が足りなかった」ペコッ
蘭子「プ、プロ……デューサー。平気、だから」
P「……お前が一生懸命描いていたものをこんなにしてしまって…
蘭子「……本当…気にしてないから……」ニコ
P「蘭子……」
P「……じゃあ、車。エンジンかけてくるから少し待っていてくれ」
蘭子「……」コク
――…
蘭子「…………ごめんね……こんなに汚しちゃって…」グス
――
P「……」
――…
P「蘭子ー、夕飯そろそろ出来るぞ~」
蘭子「ククク、いま白の世界を私色に染めているところ……(新品の画用紙。今度はたくさん描くからね♪)」カキカキ
P「……そうだな。お前はそれが一番蘭子らしいのかもしれない」
(『この口調がひどく、勿体無いと感じる。
これも彼女の魅力の一つだと割り切って、伸び伸びとさせるのが正しいのならプロデューサーとして、俺は好きにさせたいと思う。』)
P「前にこんな事を決心しておいて……結局、自分の考えを押し付けただけになってしまった」
P「蘭子に口調の事を注意した時も……」
(蘭子「……ククク、私の翼を折るなど…)
P「……確かに、蘭子自身がそう言っていたじゃないか」
P「アレは、蘭子の個性であり翼なのかもしれない……なんとも表現し難い形をしているが」タラ
P「……そろそろいいかー?」
蘭子「プ……プロ…プロヴァンスの風…」
蘭子「……」ブンブン
P「?」
蘭子「……」ギュ
蘭子「その……わ、私。絶対、あなたの期待に答えてみせるから……!」
P「」キョトン
蘭子「そ、それだけ……言いたかったの…」モジ
P「……ああ」ニコ
……やっぱり、素の蘭子も可愛いと思うんだけどなぁ。
「蘭子ちゃん、煩わしい太陽だねっ」ニコ
「天界が……近い。(おはようございます! いい天気ですねっ)」
東京に越して来てから、幾月か経つ。
福岡ほどではないにせよ、熊本も九州では都会。そう思って暮らしていた……しかし、やはり東京はすごい。
まず人が多い。ゴスロリを着ている人をたまに見かけてはテンションが上がる毎日だ。でも、他の通行人達はソレを見ても驚きもせず……無視して歩いていく。
地元でピンク色の集団が歩いていたら、誰もが一様に振り返るだろう。東京すごい。
東京に来てから私も色々と変わってきた、と思いたい。
まず、少し明るくなった……ような気がするし。人前に出ても堂々と出来るようになった……と信じたい。自分が好きなものを曲げたくないから。
そして……
「おう、またイラスト描いていたのか」
「きゃっ……」
……最近、プロデューサーを見るとアガってしまって上手く話せなくなる。
もう子供でもない。この気持ちがなんなのかくらい自覚している……けど、
「真・地獄の業火で燃え尽きるがいい!」
「それは勘弁してほしいな」
……こういう時にだけ、"いつも通り"が顔を出す。
もっと、素直になれないものだろうか――…
……むずかしいなー。
亜美「蘭姉ちゃん!」ニコ
真美「太陽、煩わしいっスねー!」ニッ
蘭子「……。(そ、そうだね)」
蘭子「蘭姉ちゃん……?」
亜美「よくぞ聞いてくれました!」
真美「ここにおわすはかの有名な敗戦探偵双海亜美様であらされるぞっ!」
亜美「ほらー、名探偵には"蘭姉ちゃん"が付き物じゃん?」ニシシ
蘭子「……是。(そ、そう…)」
千早『おはよう、神崎さん』
蘭子「(ぁ……如月さん)」
蘭子「おは……」チラ
亜美「」キラキラ
真美「」ワクワク
蘭子「……」タラ
蘭子「わ、煩わしい太陽ね……歌姫」
亜美「でたー!!」
真美「本家はちがうね~やっぱっ!」ウンウン
千早「じゃ、じゃあ私はこれで……」
蘭子「ククク……視える。衆人共が平伏す姿が。(頑張ってきてくださいねっ!)」
――…
蘭子「……」ガク
蘭子「(どうして上手くいかないんだろう……)」ハァ
少し、落ち着いて考えよう。
私はたぶん……特別な力を持っている。それが前世からの繋がりなのか、隔世遺伝ならぬ覚醒遺伝なのかは定かではない。
吸血鬼の血が薄れたのか、幼少の頃に天から降り注いだシャインシャワーをこの身に浴びたからか。地獄の悪魔に見定められ、『力』を供給されているのかもしれない。
『瞳』の眷属として恥ずかしくないように生きる。それが、先祖だか天界や地底の番人だかわからない使い魔へのせめてもの礼儀だろう。
そんな『人ならざる』私が恋をしたと定義しよう。
……常識の範疇では収まりきらないものであるのは確かだ。だって『人ならざる者』なんだもん。人とは違う存在なのだから。
そう、きっと特別な魔方陣や悪魔の契約書があって初めて、恋人の契りが可能になるのだ。口約束や、言葉のみの告白では足りない…………はず。
世の中からすれば、私のような『気付いた』側の存在は……『中二病』などという低俗な存在として周知されているらしい。なんたる羞恥、なんたる仕打ちだろう。
もし、仮の仮に……地球の自転が逆になるくらいの確率で、私に『特別な力』が無かったとしよう。その時は…
……その時は、努めて、人として生きようと思う。甘んじて。絶対ないけど。
だから、人を好きになったらどうすればいいのだろうか。
ごちゃごちゃ思考を巡らせたが、結局なにも解決していない。
「あ~……悩み、ほうらつかね。」
とりあえず。プロデューサーがくるまで、一眠り……しよう…。
スピー。
8:30から9:00まで用事があるので離れます。
落ちたら諦めます。
同時期にデビューしたアイドルの子が、恋愛観に関してまるで一家言あるかのような言い方で偉そうに語っていた。
(『――…恋愛は、キチンと火を通してキチンと皿に盛り付けるもの。』)
恋愛を料理に例えるなんて……現世の女はなんて粗野なのだろう。要約すると『段階をふんで、告白をする。そして晴れて恋人同士になれる』だったか、
『キチンと盛り付ける』の方は、恋人同士になった後もまともな身の振り方をしろという意味でもあったような……どちらにせよ私には理解が難しい。
血の契約書があれば一発で主従関係が結べるし、サモンであれば身体の契りで結びつけられる。うだうだ小難しい言葉を並べるだけ、無駄なこと。
と、また別の同期に言うと……その子は『血の契約書ww あんず的には恋愛自体、面倒くさいけど~』だと。『あとなに? 身体の契り(笑)って。エロ……最近の若い子こわいわぁー』だって。ははん。
「愛想無しもニートも、わかったような口を聞いて……」
愚痴を溢したが、愛想無しは私よりは愛想があるし。ニートはなんだかんだで働いている。努力せずとも、やたらキュートなアイドルの原石だ。
そもそも『ただの人』に相談した私が悪かった。そんな私にも一目置く先輩アイドルがいるのだが……
「蘭子。どうしました? 難しい顔をして」
銀髪の……正体が一切不明なかぐや姫(私独断認定)四条貴音。
蘭子「四条さん……」
貴音「蘭子。いつもの"ゆにーく"な話し方はやめたのですか?」
蘭子「……ええと」
蘭子「今は、四条さんと……二人きりの時だけは、キャストオフと言いますか…力を封印しているといいますか……」
貴音「……」
貴音「なるほど。わかりました」クス
貴音「では、少しだけお話をしましょうか」
蘭子「話……ですか」
貴音「都合が悪いのなら無理にとは言いませんが……」
蘭子「い、いえ……喜んで…」
貴音「そうですか……」クス
貴音「では、紅茶を煎れますので少々お待ちになってくださるよう」
――…
蘭子「(し、四条さんと二人きりで会話……)」
貴音「?」
蘭子「……四条さんは、出身地やそれ以外も色々と謎ですが…」
貴音「……秘匿情報ですから」
蘭子「あえてミステリアスを演出しているとか?」
貴音「"みすてりあす"……さあ、よくわかりません」
蘭子「……」
貴音「蘭子には……」
貴音「真実の姿。もしくは"第二段階"があると聞き及んでいました」
蘭子「そ……そう」
蘭子「ククク……この身体はただの借宿…真の姿を知るものは存在しない…」
蘭子「……知ったとしても、気付いた時にはこの世の住人では無くなっているだろう…」
貴音「……驚きました」
蘭子「……?」
貴音「貴女も……そう、ですか」
蘭子「はあ……」
貴音「では、今日はこの変にしておきましょう」
蘭子「あ、あの……」
貴音「お互い、帰るべき故郷があります。それがどれだけ離れていようとも、夜……水面に映るソレであろうとも…」クス
蘭子「……く、クク…ペテルギウス…懐かしい名よ……(四条さん。わかりやすくお願いします!)」
貴音「それでは……」ニコ
蘭子「や、闇に飲まれよ……(お、お疲れさまです……)」ハァ
……結果。謎が深まるだけで終了。
かぐや姫クラスまでいくと、話のキャッチボールがうまくいかないみたいだ。
私が壁に球をぶつけ、話し相手に捕球させるとすれば。四条さんは壁の上を飛び越える投球で捕球者のやる気ではどうしようもない……球広いすら難しい。むしろ我那覇さんがスゴいのではないかと勘繰ってしまうくらい。
悩めば悩むほど、絵を描くのが捗る。それはもう……初代スケブを超える勢いで白が漆黒に染まっていく。
「この衣装、格好よく描けたなぁ」
最新作は上出来だ。いつか、こんな素敵な装束に身を包み、ステージの上に立ちたいと夢見るのは……人ならざる私でも、女なら仕方のない事だろう。
『格好良いな……被服のデザインでも食っていけるんじゃないか?』
「ふぇ?」
「ん?」
「っ、ぷ、プロデューサー……っ!」
この雄は……我が聖域探査範囲を乗り越え、いとも容易く最重要機密書類を盗み見る。北だったら即死刑だ。
蘭子「……また、見た…」カァ
P「たまたま視界に入っただけだ。現場に向かうぞ」
蘭子「天と地、どちらの裁きがご所望かしら(どちらにせよ正拳突き!)」
P「ええと……天国? まだ優しそうだs…ぐぇっ!?」
P「物理攻撃かよ……お得意のスピリチュアルなアレはどうした?」イテテ
蘭子「人は脆い……。(べ~っだ!)」
P「……まあそれより仕事だ。速やかに移動しろ」
P「ああ、画用紙は責任を持って預かっておくから」
蘭子「……」スッ
P「たしかに、受け取った」
蘭子「……」
P「……どうした?」
蘭子「……ぁの」
P「?」
蘭子「ぁ……」カァ
蘭子「や、闇に飲まれよ!」カアァ
ドスッ!
P「ぐぇっ、言葉の使い方が違うっ!?」
P「痛た……なんだよ…闇飲まってそんな時に使う言葉じゃないだろう……」
蘭子「サクリファイスは深淵に……。(は、はずかしいよー)」
蘭子「……」ハァ
――…
確信した。
嫌いの逆……賛成の反対なのだ~と、捻りハチマキのキャラクターが言うように。
『嫌悪の反対なのだ~!』と、同じく捻りハチマキをした小さい私が……デフォルメされたそのナリで、何人も両手を上げて騒いでいる。
早い話が『大好きなのだ~!』ということ。否定はしない。事実なのだから、受け入れよう。
気持ちを再確認したところで、脳内では捻りハチマキを巻いた私の前に二つの立て看板が立っている。二択らしい。
目を凝らして見る。左には、『YES』。右には『NO』。これでは答えようが無い。
視点を上に向けていくと、案の定、大きめの釣り看板が下がっていた。内容は、『この恋を成就させたいか』――…なるほど。
さて、悩む。
『NO』を選んだ場合に起こりうること。
①関係は維持される。②日々、悶々としてしまう。③余計、引っ込み思案が強くなる。
しかし、今『NO』を選んでも。後々、『YES』を選択することが可能だ。急がずとも、賢い者はこちらを選ぶ。
して、『YES』を選択した場合。《失敗》
①微妙な空気になる。②悶々としてしまう。③引っ込み思案がマッハ。
……良いことが無い。しかし、リスクがあるならメリットも存在する。
『YES』《成就》
①恋人同士になる。②日々、悶々とする。③少しは、前向きになれる。④天空の光よ!(訳:毎日楽しい!)⑤ちゅ、チュー…とか……
『保留』が一番、楽なのだが……。
脳内の私は、頭の捻りハチマキを脱いで――…
……『NO』の看板を覆い隠した。そして、『YES』をタッチ。
瞬間、強い光に世界は包まれる。
「………………よし!」
不運(ハードラック)とダンスっちまう未来しか浮かばないが、決断したのだ。私は……好きだから、成就…させたいと思う。
「よし!」と勢い込んだのは良いが、具体的になにから始めればいいのか皆目見当がつかない。
相談出来る相手……親は、近くにいないし、電話越しでこんな話…出来ない。
「はぁ……」
『蘭子。晴れないようですね』
……この声は。
「四条さん?」
「恋について悩んでいるようでしたので。"すけっと"を呼んできました」
恋愛要素皆無のあの会話から、どう読み取ったのかは聞けないけど…………四条さん△です。素敵!
「それで、スケットというのは……」
『蘭子ー、闇のまちゃんなの~!』
……おおルシファーよ、我を見放したか。
それに『闇のまちゃん』ってなんだ。名前ではない。『お疲れちゃ~ん』的なアレなのだろうか。全く――…
――…私は、星井 美希が…苦手だ。
蘭子「星井………………さん」
美希「その"さん"付け、ミキが律子にしているのと同じ感じかも……」
蘭子「(つまりは嫌々、というわけですか)」
蘭子「……」チラ
貴音「?」
貴音「恋に関しては、美希の隣に並ぶものはいないと思ったのですが……」
美希「ミキねぇ、恋のキューピッドなの。よろしくね、蘭子」ニコッ
蘭子「(天使なら地獄の業火を司る私の敵なのだが……)」
蘭子「(けど……『YES』を選んだのは、私だ)」
蘭子「……よろしく、お願い、します」ペコ
美希「蘭子のまともなトコ、初めて見たの。普通なの」
美希「それで、相手は誰なの? なの」ニコ
蘭子「えっと……」
蘭子「(言っていいのだろうか。……星井美希に)」
蘭子「(とどのつまり。『貴女のハニーが好きなんです』と言うのと同義……)」
蘭子「……ええと…」
蘭子「…………歳上の、男性……なのですが」チョン、チョン
蘭子「(ああ、ヘタレ……)」ハァ
美希「歳上……なの?」
蘭子「……うん…」
美希「…………そう」
蘭子「……」チラ
美希「…………」ジィ
蘭子「…………?」
美希「……わかったの」ニコ
蘭子「……」ホッ
美希「じゃ~あ、うーんと…」
美希「……ハニー、最近新しいネクタイが欲しいって言っていたの」ニコッ
蘭子「そうなんだ……新しいネクタイ…そう」フム
蘭子「って、え?」
美希「……」ニコ
蘭子「ぇ、ええと……」
美希「蘭子、どうしたの? なの」ニコ
蘭子「ええと……」
蘭子「ど、どうしてプロデューサーの名前が……はは」
美希「ちがった? ミキ、こういう時の勘は良いの」
美希「それに、今の蘭子。普通なの…」
美希「……普通の女の子じゃ、ミキには勝てないよ?」ニコ
蘭子「ぇ……と」
美希「……」
蘭子「…………」ギュッ
蘭子「金色の毛虫よ……」
美希「? こんじきの…なに……なの??」
蘭子「神の座席はベルフェゴールのために!(わたし……まけません!)」
美希「……さっぱりなの」タラ
美希「でもぉ、その蘭子の方が可愛いって。ミキは思うな」ニコ
蘭子「(余裕そうですね……)」ハァ
貴音「……?」モグモグ
美希「じゃあ、ミキのアプローチを教えるの」ニコ
蘭子「ぇ……良いんですか?」
美希「だって、ミキと同じ事をして。ハニーが蘭子を選んだら、蘭子の方が魅力的だったってことだよね?」
美希「それならミキも仕方ないなぁって…」
美希「……諦めはしないと思うけど」クス
蘭子「な、なるほど」
蘭子「例えば……」
美希「じゃあ、教えるから。メモをとるの」ニコ
蘭子「スケブ…スケブ……」メモメモ
貴音「まこと、友情とは素晴らしいもの…」
貴音「……そして、"かすてえら"も素晴らしいものです」パクリ。
――…夜【P宅】
蘭子「(ぷ、プライドはひとまず置いておく。勝つためには必要だってベルゼバブが言っていたもん)」カァ
P「……どうした、力んで…?」
蘭子「は、はにぃ」
P「……なんだ美希みたいなこと言って」
蘭子「……」
ギュッ
蘭子「は、ハニーの腕、あ……暖かいの…なの」カァ
P「……だ、大丈夫か? 蘭子」タラ
蘭子「(ええと……)」チラ
メモ:【腕にくっついたら後は胸を押しつけるの!】
蘭子「ひゃ……」
蘭子「……あ、あの…」カアァ
ムギュー
蘭子「わ、私……プロデューサーのこと…」ボッ
P「お前……華奢なのに、胸はあるんだな…」
P「いや、セクハラとかじゃなくてな。単純な感想として……」アセ
蘭子「ふぇ……っ」カアァッ
ボンッ
P「あーっ、今にも湯気が出そうだぞ……」
蘭子「………………や、闇に飲まれよ……」カアァ
P「お、お疲れさま……」
蘭子「きょ、今日の夕飯は……私がつくります」
P「本当か? 助かるよ」
P「今日は『もう一人の私』が出てこないみたいだし……普通に話せてるじゃないか」
蘭子「い、今だけ……」
蘭子「ええと、冷蔵庫の中……」
ガチャッ
――…
P「こ、これは……」
蘭子「…………」ジィ…
P「(……すごい見られてる…)」
P「(まさか、カレールーを入れてカレー以外の料理が出来るとは思わなかったし……)」ゴク
パクッ
蘭子「……」ジ…
P「…………」サアァ
P「う、……美味いっ…なぁ…!」タラタラ
蘭子「!」
蘭子「ほ、本当……?」パアァ
蘭子「や……やたっ…えへへ」ニコ
P「…………可愛いけど、コレはどう処理するか……」タラ
ジャー… ジャー…
蘭子「~♪」
P「……」
蘭子「~~♪」
キュッキュ
P「……蘭子ー」
蘭子「?」
フキフキ
P「お前……エプロン似合うな」
蘭子「そ……そう、かな」
P「ああ。可愛い」
P「良い嫁さんになるんじゃないか?(料理スキルさえなんとかすれば)」
蘭子「!」
蘭子「…………」カァ
蘭子「(料理が大丈夫なら……簿記、とか勉強しようかな…)」テレ
キュッキュ
P「おーい、そろそろ寝るぞ~」
蘭子「っ」コクッ
チラ
メモ:【ミキがハニーと一緒に住んでたらぁ~、迷わずベッドに潜り込むの♪】
蘭子「べ、ベッド……は…」ウーン
――…
スタスタ…
P「……」
テトテト…
蘭子「……」
P「……どうして付いて来るんだ?」
蘭子「えっ、あの」
P「それに、なぜ俺のYシャツを着ている」
蘭子「ええと……(美希メモに書いてあったから…)」カァ
P「パジャマ洗ってしまって着る物が無いとか……」
P「……とにかく、話があるなら明日聞くから」
P「お休みー……」フワァ
蘭子「……深淵の彼方に。(おやすみなさい……)」
――…1時間後
スピー
P「……んっ」パチ
蘭子「ぁっ」
P「…………え?」
夜中に目を覚ましたら、同居人の美少女がベッドの中に潜り込んでいた。
……最近、ご無沙汰だったからな…。こんな幻想まで見るのかもしれない。
「……」
「……」
男物のYシャツを羽織った蘭子は、いつものツインテールをほどいた髪型で……少しだけ大人びていた。顔が真っ赤だから、歳相応にしか見えないのが残念だ。
さて、幻想だろうか夢だろうか。どちらにせよ選択肢は一つしかない。
「……蘭子」
「ぷ、プロ…プロデューサー…」
「…………好き…………です…」
こんな美少女に、赤面しながら上目遣いでなにやら告白らしきものをされた日には――…
……寝よう。
明日、時間をつくって……コンビニで本でも買って。20分もあれば、こんな幻想を見ずに済むようになる。賢者の域に達すれば仕事も捗るだろう……。
「……おやすみ、蘭子」
そう言って、頭を撫でる。
「ん……」
「………………………………おやすみなさい。P……さん」
ん? いま本名で呼ばれたか。そう悪いものでもないな……今度、蘭子に言って呼ばせてみようか…………きっと……可愛…い…………い……。
「……………………まだ、子供……にしか…見られないよね」
――…
P「……ふわぁ~あ、おはよう」
蘭子「煩わしい太陽ね(おはよう!)」
P「お……戻ったか」フワァ
P「……蘭子」
蘭子「?」
P「目指すは頂点。これからもよろしくな」ニコッ
蘭子「…………我が友 P、さぁ終焉を初めましょう(トップめざそー!)」
蘭子「……」
蘭子「ぁ……」
P「ん?」
蘭子「…………」スゥ…ハァ
蘭子「……っ」
ギュッ
蘭子「あの、Pさん。私、今よりもっと頑張って……あ、あなたのことを助けられるくらいのアイドルになるから……!」
P「!」
P「……ああ、楽しみにしているよ。俺も、お前と一緒にてっぺん。目指したいと思う」ナデ
蘭子「ん……」カァ
蘭子「アカシックレコードのさえずりが聞こえる……(ありがとうの気持ち、伝わったかな…?)」
P「……よし、まずは朝食からだ」
P「…………ちなみに、俺が作るな」
蘭子「?」
――…
『ククク、ようやく我が城が真実の姿を発現したわ』(訳:部屋の模様替え、終~わり♪)
「お……エアコンの前 片したのか。バッチリだな」
蘭子は、あれから少し変わってきたと思う。……妙な言葉遣いはそのままだが。
最近は掃除に洗濯……家計簿までつける具合だ。所帯染みて良いのかはわかないけど……。
「蘭子、この前……お前のイラストを見てしまった時に、画用紙借りただろう?」
「? ……あっ」
「あのイラストを元に、衣装を作って貰ったんだけどさ」
「ぇ…………わぁ!」
こうやって、跳び跳ねて喜ぶ姿を見れば……まだまだ少女なんだなって思う。
「ありがとうプロデューサー! ……あっ」
「こほん……我が友 P、深淵の……………………いや、やっぱり……」
「…………ありがとうっ」
子どもの内は、子どもらしくしていれば良い。取り繕うのはもう少し大人になってからだ。
「あとな蘭子……いっかい、名前で呼んでみてもらえないか?」
「ふぇ?」
「P…………P……さん…?」
赤面と上目遣いの組み合わせは素晴らしいと改めて実感する。
またいつか、呼んでもらおう。
……今度は、トップアイドルになった蘭子に…その時はまた、赤面するだろうか――…。
<了>
支援&保守ありがとうございます。
千早、凛に続いての蘭子ですがいかがでしたか。距離感的には蘭子くらいが付かず離れずで、もどかしいです。
続きを投下しても良さそうですが、GWも最終日なのでここで一度〆とします。
次は続編か、他のキャラクターでいきたいですがご要望があれば。
乙です。
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