ボッチライフ (23)

「ではテストを返す。飯島(いいじま)ー。遠藤(えんどう)ー。大口ー(おおぐち)。」
 テスト終了から初めての数学の時間。教師が生徒にテストを返し始めた。出席番号的に早く呼ばれた奴らの中から点数の高さを自慢するものや点数の低さの言い訳をするものがでてくる。てか何で点数低いのバラしてまで言い訳する奴いるんだろな。しかも言い訳の内容がテスト前遊びすぎたとか凡ミスしたとかだし。テスト前に努力できるかも凡ミスしないかも全て実力だっつーの。でも俺はこういう奴よりも嫌いな奴がいる。それは点数が高いのを嫌味ったらしく自慢する奴だ。


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「うわー数学で86とか俺終わってるわー。もう絶対親に怒られるしマジ最悪」
 教室の前から二列目の一番左の席にいる遠藤がわざと聞こえるような声でしゃべり始める。出たよ俺が一番嫌いなタイプの奴が。冗談ぽく言ったら自慢もウザくないとでも思ってんのかよ。めっちゃウザいわ。しかも『数学で86』てどういう事だよ。いつも数学はどの教科よりも平均点が低くて90点台、80点台が少ないだろ! 数学で86も取ったらベスト10に入るか入らないかだわ!

「いや全然いいと思うで、俺70点やし」
「え! 70点?」
 遠藤の前の席の飯島が返事をする。それにワザとらしく遠藤が驚く。
「そうやけど、どうしたん?」
「いやー、飯島君がそんな低点数取るわけなないだろ! 本当の点数言えって」
「本当に70点だけど」
「いやだーかーらー、ウソつくなってー、もうテスト直接見せて」
 遠藤がそう言って飯島の机に裏向けて置いてたであろうテストを手に取る。それを見てワザとらしく目をギョッと開け「え!」と驚く。

「本当に70点じゃん! いやごめんごめんそんなつもりじゃなったんだ。まさかメガネ掛けて太って運動できなくて、しかも休み時間とか勉強してる真面目な飯島君が、こんなクソみたいな点数取ると思わなかったんだ! ホントごめんね!」
「お前[ピーーー]やー!」
 飯島のツッコミと同時に周囲で聞いていた取り巻きの男子たちが笑いだす。

「本当に70点じゃん! いやごめんごめんそんなつもりじゃなったんだ。まさかメガネ掛けて太って運動できなくて、しかも休み時間とか勉強してる真面目な飯島君が、こんなクソみたいな点数取ると思わなかったんだ! ホントごめんね!」
「お前死ねやー!」
 飯島のツッコミと同時に周囲で聞いていた取り巻きの男子たちが笑いだす。

 しょうもな。あれ遠藤以外の奴らは本当に面白いとでも思ってんのかなー。遠藤に気を遣ってんじゃね? まあ俺には関係ないしどっちでもいいけど。ただ70点を取った飯島を馬鹿にした遠藤はムカつくな。あれ飯島以外の70点以下の奴らも馬鹿にしてる事になるだろ。いくらスクールカースト最上位だからって調子乗りすぎ。バカにする対象は自分のグループ内の奴だけにしろ。それに飯島の『お前死ねやー!』も嫌い。人に死ねなんて言うなんて非常識にも程がある。死んでしまえー!

「矢神ー」
 そうこう考えてるうちにテスト返却の順番が回ってくる。俺は席を立ち先生のいる教卓へ足を進める。あー今回何点だろうなー、俺の中での得意科目だけあって普段は70点くらい取るんだけど今回自信ないんだよなー。ちなみにこの数学のテスト返却が最後のテスト返却。他の教科はすでに終わってる。結果が(笑) 

教卓の前に着くと
「今回はよかったぞ。よく頑張ったな」
 と言いながら先生が肩をポンポンと軽く叩いてくる。初めてこんなこと言われた。いったい何点なんだ? そう思った俺は席に向かいながら半分に折られたテストを開く。そこには大量のマルで埋め尽くされ91点と書かれた紙があった。

「ぉ!」
 驚きのあまり思わず驚き小さく声を出してしまう。あぶなーもうちょっと変な人と思われるところだった。思われとるわ! ……なんてね。やっぱ吉本新喜劇最高!
 席に到着すると俺は自分のテストの点数の良さに笑いが止まらなくなっていた。一生懸命寝たふりをして笑っているのを隠す。そりゃー普段無口で一人でいる奴が急に何の脈絡もなく笑い始めたら気持ち悪いでしょ。まあ脈絡があって笑っても気持ち悪がられるんだけど。

「春香すごーい、80点以上取るなんて上位じゃん」
「えへへ、今回は頑張ったんだー」
俺の右横と斜め右下から女子の声が聞こえてくる。横の声の主はよく知らない。だがもう一つの方の声の主はよく知っている。吉崎春香(よしざき はるか)。

 容姿端麗な上、運動神経抜群なモテ女だ。先ほど恐らく友達であろう女子に言われていた事を考慮すると頭も良いらしい。アニメや漫画じゃ物足りないかもしれないが、現実世界じゃ充分完璧超人って言っていいスペック。そんな彼女に俺は少し興味を持っていた。異性としてとじゃなく人間として。

彼女は普段、休み時間を読書で過ごしている。なので俺と話すどころか、誰かと話しているところを見る事もあまりない。ただ、だからと言って女子からハブられるとかではなく、むしろグループ分けなどではいつも上位グループに居る。物静で人気者、この二つの点を考えると吉崎春香は優しいのではないかと思う。きっとぼっちの俺にも優しい、そう思ってしまっていた。

「ていうーか、数学ってメッチャ難しくない? もう訳分からなかったよー」
「ふふふ、教えようか?」
「ホント! じゃあ問題3の二番から」
「ここはね」
 吉崎が問題3の二番の解説をしだし、それに前の席の女子が頷く。吉崎の解説が上手く数十秒で前の席の女子が『分かった! ありがとう』と言った

「やっぱり春香教え方上手い。80点台は伊達じゃないね」
その言葉に俺の心が高鳴る。80点台ですごいのなら90点台の俺はもっとすごいじゃん。きっと知ったら驚くよな。あー誰かに言いたい。でもぼっちの俺に言う相手などいない……いや待て吉崎、吉崎に言ってはだめなのだろうか。今、横の吉崎達の会話はテストの点数の話。しかも吉崎はおそらく優しい。なら言っても別に気持ちがわられなくて、むしろ『すごいすごい』と褒めてくれるのではないか……よし言おう!

「俺91点やったで!」
言っちゃったー。でもこれで良かった気がする。何にもせず安全圏にいるより、失敗してでも挑戦した方が成長するしな。

「は?」
 『え?』でもなく『ん?』でもなく一番敵意むきだしの『は?』で返される。吉崎に。
 これやっぱり挑戦するべきじゃなかったんだわ。優しいと思ってた人が全然そんな事なかったのって本当に辛いな。あー、へたこいたーーーでもでもでもでもそんなの関係ねー、そんなの関係ねー、そんなの関係ーーーあるな、ごめん。

今日はこれで終わります。

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>>19
すいません。俺は頭が悪いです。ダメなところ詳しく教えてください。

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