咲・優希「好きです!」京太郎「えっ」 (680)

前置き

・京太郎SSです

・ヒロインは咲と優希の2人のみ、他の人相手はないです

・舞台は全国終了後の清澄高校

・更新はゆっくりめ、寝落ちもありえます

以上の事が合わないのであればブラウザバック推奨

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――9月某日・須賀家――

京太郎「おはよー」

カピ「キュー」

須賀母「おはよう、京太郎」

京太郎「おはよ、母さん。 父さんはもう出たの?」

須賀母「ええ、京太郎もすぐに出るんでしょ?」

京太郎「麻雀部の朝練があるからな。 俺も今日から卓に入れるだろうし気合いも入るよ」

須賀母「空回りしちゃいそうで心配ね……とりあえず占いでも見てラッキーナンバーでも知っておいたら?」

京太郎「元担ぎってやつか……うん、そうする」

    ピッ

テレビ『朝の占い、今日の第一位は……みずがめ座のあなた!』

京太郎「おっ、幸先いいな!」

テレビ『今日はあなたの人生を左右する出来事が起きる予感! 日々苦労してる人は今日のために頑張ってきたと言っても大げさじゃない1日! ラッキーアイテムは……』

京太郎「人生を左右するねぇ……もしかして俺にも咲達みたいな麻雀が強くなる能力が芽生えるとか?」

カピ「キュー?」

京太郎「はは、んなわけないか」

須賀母「京太郎、ご飯よー!」

京太郎「今行く! 行こうぜカピ」

カピ「キュー♪」

京太郎「ごちそうさま! じゃあ俺学校行ってくる!」

須賀母「いってらっしゃーい」

カピ「キュー!」

京太郎「いってきます!」


京太郎(全国大会も終わり、俺の清澄高校での生活も二学期を迎えた)

京太郎(大会が終わった後の話し合いの結果、今後の部活は今まで雑用中心だった俺を鍛える事に重点を置いてくれるらしい)

京太郎(ネト麻とか雀荘でそれなりに勉強してはいたけど、きっと今の俺では大会で手も足も出ないのが現状だ)

京太郎(だからこれを機会に自分のレベルを少しでも上げたい、強くなってみんなに喜んでほしいって考えてる俺がいる)

京太郎(俺だって清澄麻雀部の1人なんだって、胸を張れるように――)

京太郎「よっしゃ、今日も頑張るかー!」


京太郎(そう、そんな風に気持ちが高ぶっていたから俺は学校についた時には朝聞いた占いなんて忘れてた)

京太郎(今思えば……あの占いは確かに当たってたんだなと言わざるを得ない)

京太郎(俺の人生を左右する出来事が、確かに今日俺を待っていたんだから)

――放課後・麻雀部部室――

京太郎「え、えーっと……これはこうか!」タンッ

和「はい、正解です。 少々長考気味ではありましたが初心者用の課題は問題なくクリア出来そうですね」

京太郎「インターハイ中もやる事が雑用くらいだったからな。 みんなに比べたらどうしても時間が余るし、そういう時にはなるべく勉強するようにしててよかったよ」

優希「ここで長考してるようじゃまだまだだけどな!」

京太郎「そんなのわかってるっつうの。 だからこうやって教えてもらってるんじゃないか……ってお前は何もしてないだろ!」ペシッ

優希「あうっ! まあせいぜい励むがいいじぇ。 私としても京太郎が弱いと張り合いがなくて困るしな!」

和「須賀君、ゆーきはこう言ってますが、本当は教えられないのが悔しいくらい須賀君の力になりたくてしょうがないんですよ。 だってゆーきは……ですよね?」

優希「の、のどちゃん! それは言わない約束……じゃなくて! そ、そんな事ないじぇ! 私は別に京太郎の事なんて……」

和「あら、私はそういう類の話はしてませんよ?」

優希「あっ、うう……///」

京太郎「んっ、とにかく優希も俺の成長を願ってくれてると……ありがとうな」ナデナデ

優希「う、あ……わ、私ちょっとタコス食べてくるー!」

京太郎「ありゃ……さすがに髪触るのは嫌だったのか?」

和「……ゆーきも苦労しますね」

京太郎「えっ?」

和「いえ、なんでもありません。 それじゃあ須賀君、次は少し難しい問題を出しますよ?」

京太郎「お、お手柔らかに……」

優希「あむ……のどちゃんめ……インターハイが終わってから重石が取れたみたいに明るくなったのはいいけどなんだか意地悪になったじょ。 なぁ、咲ちゃん」モグモグ

咲「……」ボー……

優希「咲ちゃん?」

咲「……」ボー……

優希「咲ちゃーん?」

咲「えっ、へっ!? あっ、優希ちゃんどうしたの?」

優希「どうしたのはこっちの台詞だじぇ! 朝からなんかボーッとしてるけど具合でも悪いのか?」

咲「そ、そういうのじゃないよ。 ただ……」

優希「ただ?」

咲「京ちゃん、最近いつも以上に頑張ってるなあって思って」

優希「それは確かに……染谷先輩の話だと部活の後、雀荘にも通ってるみたいだじぇ。 入部したての頃はあんまり熱心には見えなかったのに変わったものだじょ」

咲「……私、京ちゃんは和ちゃんとお近づきになりたくて麻雀部に入ったみたいだから、麻雀そのものにはあんまり興味ないんだと思ってたんだよ」

優希「やっぱり今は違うのかな?」

咲「うーん……たぶんもっと前からそうだったと思うよ。 ほら、京ちゃん、今年の個人戦予選で負けちゃったでしょ?」

優希「うん」

咲「あの時京ちゃんはすごいショック受けてて、清澄の名に泥を塗ったってすごく落ち込んでて……あの時はまだうちって注目はあんまりされてなかったのに」

優希「長野のレベルが落ちたとか言われてたしな……手のひら返しでもてはやされてる今とは偉い違いだじぇ」

咲「うん……あの時なんとなくわかったんだ。 京ちゃんはちゃんと麻雀を好きになってきてるんだって」

優希「なるほどな……でも麻雀をちゃんと好きになったってだけにしては鬼気迫るくらい必死じゃないか?」

咲「たぶんだけど、また予選落ちになったら今度こそ清澄の名前に泥を塗っちゃうって思ってるんじゃないかな……」

優希「……そんなの言わせたい奴には言わせて気にしなければいいのに」

咲「あはは、それを気にしちゃうのが京ちゃんなんだよ」

咲(本当、京ちゃんは変な所で優しすぎるんだよ……そんな京ちゃんだから私は)

京太郎「……」タンッ

和「そこはもっと……」

京太郎「ああ、なるほど……」

咲(……私は、麻雀をまた始めるきっかけをくれた京ちゃんに感謝はしててもそれ以上の気持ちを抱いた事はなかったけど)

京太郎「やった! 上手くいった!」

咲(それでも、今の麻雀を楽しそうに勉強してる京ちゃんは見てて気持ちいいし、それにすごく――)







咲「……かっこよくなっちゃったなあ」

優希「ん? 咲ちゃん、今なんか言ったか?」

咲「えっ? あっ、ううん、なんでもないよ」

咲(うわわ、声に出しちゃってた……危ない危ない)


和「須賀君、そこはこうするのが一番……」

京太郎「うあ、たしかにそうだな……悪い、もう一度やらせてくれ!」


咲(京ちゃん……昔から私を助けてくれた人、一番塞ぎ込んでた時期に手を差し伸べてくれた人、私に……またこの道を歩むきっかけをくれた人)

咲(いつからかなんてわからない、でも今ならはっきり言える。 私は……宮永咲は――)





咲(そんな京ちゃんに、恋してるんだって)





咲「京ちゃん……」ポー……




優希「……」

短いけど今回はここまで

ちなみに和は清澄の団体戦全国優勝によって転校がなくなったので心に余裕が出来ている設定

そして京太郎の敗北後に言った清澄の名に泥を~の台詞は自分の中で京太郎の評価を一変させた台詞だったりします

あの、咲実写化ってマジですか……?

デマっぽくて一安心
咲を実写化とか考えるだに恐ろしい

こんばんは
それではこれよりプロローグ終わりまで投下していきます

――数時間後……

まこ「よし、今日の部活はここまでじゃ」

久「みんなお疲れ様。 この調子なら引き継ぎしてもなんの問題もないみたいね。 全国優勝校としてこれからも期待してるわよ?」

優希「おまかせあれだじぇ!」

久「なんかその言葉を聞いたら急に不安になってきたわ」

優希「じょ!?」

まこ「久は相変わらず人の悪い……それじゃあ帰るとするかの」

京太郎「あっ、染谷先輩。 俺ネト麻が今南場入ったばかりなんでもうちょっと残ります」

まこ「ん、そうか。 じゃあすまんが鍵を閉めておいてもらえるか?」

京太郎「わかりました。 部活終わったらまたRoof-topに寄らせてもらいますね」

まこ「おお、来い来い。 常連のおっちゃん達もイキのいいのが入ったと喜んどったからな」

京太郎「あはは、今度は負けないって言っておいてください」


優希「……完全に私達が蚊帳の外だじぇ」

和「あくまで気のおけない先輩後輩といった感じですしこれ以上の進展はないとは思いますが、ゆーきもうかうかしていられませんね?」

優希「うぐぐ……」

優希(確かに、私もうかうかしてられないのかもしれない……進展しないのはこっちも同じだし)チラッ

咲「……」

優希(――最強のライバルは既に生まれてる気がするから)

久「ふふっ」

久(咲も優希も青春してるわね……須賀君がどっちを選ぶのか今から楽しみだわ)

久「ほらまこ、今日は早くシフトに入らなきゃいけないんでしょ?」

まこ「おっとそうじゃった。 それじゃあ京太郎、後はよろしく頼むな」

久「私も学生議会の様子を見に行きたいし失礼するわね」

京太郎「はい、お疲れ様でしたー」

咲「お疲れ様です」

優希「お疲れ様だじぇ!」

和「お疲れ様でした」

    ガチャッ、バタンッ

和「さてと私達も軽く掃除をしたら帰りましょうか」

咲「そうだね。 私は牌を磨いてるよ」

優希「じゃあ私とのどちゃんは床磨きだな!」

京太郎「3人も別に帰っていいんだぞ? 俺が帰りに掃除すればいいんだし」

和「いけませんよ須賀君。 大会中はその言葉に甘えてしまっていた分私達は返さなければいけませんから」

咲「みんなでやれば早く終わるしね」

優希「そんな事気にしてる暇があったら、京太郎は今やってる対局をどう勝つか考えておくんだな!」

京太郎「……悪い、じゃあまかせる」

――十数分後……

和「あら、電話……お父様から? すいません、ちょっと席を外します」

優希「帰ってくるまでには掃除を終わらせておくじぇ!」

和「ふふ、頼もしいですね」

    ガチャッ、バタンッ

咲「何かあったのかな?」キュッキュッ

京太郎「んー、よくわからんけど悪い事ではないんじゃないか。 約束は守ってくれる親父さんらしいし……シャットダウンっと」カチッ

優希「京太郎、終わったのか?」

京太郎「ああ、とりあえずギリで一位にはなれた。 もっと安定してなれるよう頑張らないとな……咲、牌磨きどれくらい進んだ?」

咲「えっと、あと三分の一ってところかな」

京太郎「じゃあ俺は和の使ってたモップ借りて床磨きの方するか」

優希「あっ、それならちょっとまかせるじぇ。 私はトイレに行ってくる」

京太郎「ん、了解」

優希(本当は咲ちゃんと2人っきりにしたくないけど……ちょっとだけなら大丈夫だよな?)

    ガチャッ、バタンッ

京太郎「よし、さっさと終わらせるかー」

咲「……」キュッキュッ

咲(京ちゃんと2人っきりだ……なんだかすごく久しぶりで緊張しちゃうなあ)ドキドキ

京太郎「あっ、そういえば咲」

咲「なあに、京ちゃん」

京太郎「お前朝からなんか心ここにあらずって感じだったけどどうかしたのか?」

咲「えっ……」

京太郎「おいおい、まさか俺が気づいてないとでも思ったのか? これでも咲の様子がおかしいのを察せる自信はあるんだぜ」

咲「そう、なの?」

京太郎「そりゃ三年近い付き合いだしなあ……まあ麻雀の事とか知らない事はたくさんあったけど、それでもそこらへんの奴には負ける気はしないな」

咲「……」

咲(ずるいなあ、京ちゃん……こんな2人っきりでドキドキしちゃうようなシチュエーションでそういう事言っちゃうんだから)

京太郎「悩みがあるなら聞くぞ? あっ、でも金に関する話は勘弁な!」

咲「くすくす、そういうのじゃないよ」

京太郎「なんだ、てっきり本を買いすぎてお小遣いがほとんどないよぉ……みたいな悩みかと思ったけど違うのか」

咲「私のまねのつもりかもしれないけどそれ似てないよー」

京太郎「うっ、これでも少しは自信あったんだけどな……」

咲「京ちゃんって私をあんな風に見てたんだ」ジトー

京太郎「わ、悪い……ってそうじゃなくて! 今話を逸らそうとしたって事はもしかして話せないのか?」

咲「うん……ちょっと京ちゃんには」

咲(さすがに京ちゃんにあなたが好きでその事ばかり考えてました、なんて言えないよ……)

京太郎「そっか……ならしょうがないな。 まっ、抱え込むのだけはやめとけよ。 話せるようになったらいつでも俺は親友のよしみで相談にのってやるから」

咲「……親友、かあ」

咲(やっぱり京ちゃんにとって私は女友達ってだけなのかな……)

京太郎「えっ、なんだよその反応……まさか親友だと思ってたの俺だけってオチ!?」

咲「ええっ!? そ、そんな事ないよ。 私も京ちゃんは大切な友達だって思ってたし……」

咲(今はそれだけじゃないけど)

京太郎「さりげなく過去形じゃねえかよ! うわ、うわあ……」

咲(あ、あれ、もしかしてまずいんじゃないかなこれ。 なんか京ちゃんがっくりしてるし、このままだと友達としても関係が悪化しちゃう気がするよ!?)

咲「き、京ちゃん違うの、今のはそういう意味じゃなくて!」

京太郎「じゃあどういう意味なんだよ……」

咲「え、えっとそれは……」

咲(な、なんでこうなっちゃうの!? 京ちゃんの誤解を解くには私の気持ちを正直に言わなきゃいけないけどこんな形で言うのはやだ……でも誤解を解かなきゃ嫌われちゃう……あわわわ、どうしようどうしよう!)

咲「京ちゃん、お願い信じて……私にとって京ちゃんはどうでもいい人だとかそんなんじゃ絶対にないから! あの、だから……」

京太郎「ぷっ……!」

咲「へっ?」

京太郎「お、お前がそんな必死になってくれるなんてな……いいもの見せてもらったよ」ニヤニヤ

咲「もしかして……からかったの?」

京太郎「いやあ、最近ちょっと話す機会も減ってたし、ここは1つ俺達の友情を確かめるためにドッキリをだな……」

咲「……」

京太郎「いやあ、それにしてもいい反応だったぜ咲。 さすが持つべきものは親友って奴だな! お前が友達で本当に学生生活が楽しく過ごせてるよ」

咲「……」

咲(そうだよね……京ちゃんからすれば私は中学からつき合いのあるちょっと古い友達ってだけ。 京ちゃんが私を好きになってくれるなんて今のままじゃ夢のまた夢なんだ……だったらもう、大胆にいかなきゃ、いけないよね)ゴッ

京太郎「さ、咲? な、なんか雰囲気が麻雀やってる時のそれじゃありませんかね……?」

咲「京ちゃん」

京太郎「は、はい!?」

咲「知りたい?」

京太郎「な、何を?」

咲「私が何に悩んでるのか」

京太郎「そりゃ、まあ……気にならないと言ったら嘘に――」

咲「私、今好きな人がいるの」

京太郎「……えっ」

咲「……」

京太郎「あの、マジで?」

咲「うん」

京太郎「へ、へぇ……咲にもとうとうそんな相手が出来たのかー……よ、よかったじゃないか」

咲「ありがとう」

京太郎「ち、ちなみに俺も知ってる奴か?」

咲「そうだね、京ちゃんはよーく知ってるはずだよ」

京太郎「そうなのか……いったい誰だ……?」







    咲「だって京ちゃん自身の事だもん、知らないはずないよね」




京太郎「…………は?」

咲「ここまで言ってもわからないの? それとも気づきたくないのかな?」

京太郎「さ、咲? もしかしてさっきからかったの根に持ってるのか? もしそうなら謝るからこんな冗談……」

咲「冗談か、確かめてみる?」グイッ

京太郎「お、おい咲近っ……」

咲「京ちゃん、私さっきすごく怖かったんだよ。 京ちゃんに誤解されてそのまま嫌われちゃうんじゃないかって、考えたくもない想像が頭の中をぐるぐる回ってた」

京太郎「さ、咲……」

咲「だけど誤解を解くには私の気持ちを打ち明けなきゃいけないし、私だって女の子だからそういうのは憧れるシチュエーションがあったんだよ」

京太郎「……」

咲「だけどわかった、そんな事言ってたら京ちゃんは一生私を仲のいい友達としてしか見てくれない。 だからちょっとだけ自分に正直になる事にしたの……」カタカタ

京太郎(咲、震えてる……?)

咲「わ、私は、京ちゃんが、その、す、好き! 友達としてじゃなくて、異性として、好き、なんだよ……」

京太郎「咲……」

咲「京ちゃんが今そういう目で私を見てないのはわかってる。 それでも私がどう思ってるかだけは、理解して?」

京太郎「……」

京太郎(咲が俺を好き……? ダメだ、咲の言ってる事の意味はわかるのに、頭が混乱してどうしても受け入れてくれない)

咲「まだ信じられないみたいだね、京ちゃん……だったら証拠を見せてあげるよ」スッ

京太郎「えっ、おい、咲……!?」

咲(く、唇は無理だけど……頬でもキスしちゃえば、京ちゃんだって私を少しは意識――)







  「ちょっと待ったあああああっ!!」




京太郎「うわっ!?」グイッ

咲「あっ……」

優希「……なに、やってるんだ2人共」

京太郎「ゆ、優希!? いや、これは……」

咲「……告白、してたんだよ」

京太郎「咲!?」

優希「どっちが、どっちに」

咲「私が、京ちゃんに」

優希「返事は」

咲「まだ、だけど」

優希「そうか……よかった、ならまだチャンスはあるんだな」

京太郎「優希、お前なに言って……」

優希「京太郎!」

京太郎「は、はい!」

優希「……咲ちゃんとつき合うのか?」

京太郎「いや、正直まだ脳の処理が追いついてないからなんとも……」

優希「……だったら目が覚める事教えてやるじぇ」

京太郎「な、なんだよ……」

優希「すう、はあ……」

咲「まさか、優希ちゃん……!」

優希「もうちょっと様子見でいくつもりだったけど、これはもうなりふり構っていられなくなった。 だからここで言わせてもらう!」







優希「京太郎、私は京太郎が好きだ! 私とつきあってください!!」




京太郎「な、に……?」

京太郎(なんだ、これ……俺は軽い気持ちで咲をからかったら、なんか咲に告白されて、それを見てた優希にも告白、された……)

優希「はあはあ……」

優希(うわああ、言っちゃった言っちゃった言っちゃった……! だけどここまで来たら後になんか退けるか! 咲ちゃんが行動を起こしたんだ、私も一歩踏み出さないと咲ちゃんには勝てないじぇ!)

咲「……」

咲(ううっ……なんでこんなタイミングで……ううん違う、むしろこれで覚悟が強くなったよ!)

優希「咲ちゃん……」

優希(京太郎の中学からの同級生、京太郎をあだ名で呼ぶ唯一の人。 過ごした日々も京太郎からの信頼も遥かに違う私にとって最大の難敵……!)

咲「優希ちゃん……」

咲(その人懐っこさでたった数ヶ月で京ちゃんの隣にいる事が多くなった子。 私と違ってぐいぐい京ちゃんにアピールできる私にはないものを持ってる私にとって高い壁の強敵……!)

優希(でもそれがなんだ、私は過ごした日々は短くても京太郎への想いは負ける気はしない!)

咲(それでも私は京ちゃんが好きだから……私だって優希ちゃんみたいに前に進んでみせるよ!)

優希(だから咲ちゃんには――)

咲(だから優希ちゃんには――)

咲・優希「負けない……!」ゴッ

京太郎「どうしてこうなった……」



和「な、なにがあったんですか……?」

これにてプロローグ終了、次から咲VS優希がスタートする予定

ちなみにもしこういうアピール対決が見たいというのがあれば、書いていただければ書く際に参考にさせていただきます

今回の規制は長かった……投下します

――須賀家……

京太郎「はあ……」

京太郎「和が戻ってきたからうやむやになっちまったけど、俺告白されたんだよな……しかも2人ほぼ同時に」

京太郎(咲と優希は答えはすぐじゃなくていいって言ってくれたが……どうしたもんか)

京太郎(ちょっと前の俺ならこの手の話は羨ましいって思ってたはずなんだがな……当事者になったら喜ぶどころか悩みどころしかなかったぜ)

京太郎「うーん……」

京太郎(咲も優希も嫌いじゃない、むしろ好きか嫌いかで言えば間違いなく好きの部類に位置する)

京太郎(だけどそれは恋愛的な意味じゃない、あくまで友達、ほっとけない妹的な意味合いだ)

京太郎(咲とはそんな関係になるのを想像した事もない、優希だっていつものアレはからかってるだけとしか考えてなかったし)

京太郎(だから正直俺としてはあの2人から好きだのつき合うだのの言葉が出てきた事自体驚きでいっぱいなわけで……こんなシチュエーションの時パッと答えなんか出せるわけなかったんだなあ)

京太郎「とりあえず現実的な答えは2人共振る、なんだろうな……俺にも一応好きな奴がいるわけだし」

京太郎(好きな奴……だけどあいつは、和は咲や優希に対する俺以上にそんな風に俺を見てない)

京太郎(さすがに嫌われてはいないだろうけど、たぶん和の中じゃ俺は手のかかる生徒で、どんなに好意的に解釈してもせいぜいいい人止まりな気がする)

京太郎「実際俺も和と一緒の昼飯に息巻いて参加しなくなるくらいには諦めてるしな……」

京太郎(本当に恋愛ってのはこうもままならないもんなんだな……頭を悩ませるから麻雀には集中出来なくていつもなら二位から三位、時々トップになれるRoof-topでラスばっかだったし)

京太郎「染谷先輩やおっちゃん達も心配してたし……長引かせないでさっさと決めるべきなんだ」

京太郎(振る、か……ギクシャクするかもしれないけどそれが一番なんだよな。 今のこんな気持ちの俺じゃどっちとつき合うにしてもろくな結果にならない)

京太郎「あいつら泣くかな……嫌だけど、しょうがないんだよな……」

京太郎「もう、寝よう。 明日の事は、明日考えればいいんだ……」

――翌日……

京太郎「あんまり眠れなかった……おはよう」

須賀母「おはよう京太郎、眠そうだけどまた遅くまでネト麻してたの?」

京太郎「あっ、いや……なんとなく寝つきが悪かっただけだから」

須賀母「そう? 楽しそうなのはいいけどあんまり無理しちゃダメよ……はい、お弁当」

京太郎「ありがとう、母さん」

須賀母「ううん、ごめんなさいね。 本当は毎日作ってあげられればいいんだけど」

京太郎「それはしょうがないだろう。 母さんだって仕事で忙しいんだから……今度の出張はいつだっけ?」

須賀母「3日後。 お父さんもいないから一週間くらいまた1人にしちゃうけど本当にごめんね?」

京太郎「中学の頃からだったしもう慣れたから大丈夫だって、カピもいるし」

カピ「キュー」

須賀母「んー……京太郎は本当にいい子だわ!」ピョンピョン

京太郎「……飛び跳ねてどうしたんだ、母さん?」

須賀母「京太郎、ちょっと、屈んで!」ピョンピョン

京太郎「ああ……これでいい?」

須賀母「そうそう、ほらいい子いい子」ナデナデ

京太郎「……この年で頭撫でられるって結構恥ずかしいな」

須賀母「なに言ってるの、まだまだ京太郎は子供なんだから甘えられる時に甘えればいいの」

京太郎「子供、か……母さんに言われるとなんか複雑だ」

須賀母「それはどういう意味かしら……」←135cm
京太郎「冗談だよ、冗談!」

京太郎(大人か……もし俺が大人ならあいつらを傷つけない方法が浮かんだのかね……)

京太郎「じゃあ、いってきまーす」

京太郎(さて、やっぱり話すのは早い方がいいよな……下手に期待を持たせるのはよくないだろう)

京太郎「なんて言うべきなんだろうな……」


  「まずは朝の挨拶からっていうのはどうかな、京ちゃん」

  「のどちゃんが言っていた……挨拶できない奴はろくな大人になれないらしいじぇ」


咲・優希「というわけでおはよう!」

京太郎「……」

京太郎「……なんでここにいるんだお前ら」

咲「一緒に登校したいなーって思って」

優希「来ちゃった♪」テヘペロ

京太郎「来ちゃったって……俺の家の近くまでわざわざ来て待ってたのか? 咲なんかけっこう距離あっただろうに」

優希「恋する者にそんな理屈は意味ないんだじぇ!」

咲「私は別に苦じゃなかったよ? き、京ちゃんと一緒に登校出来るし///」モジモジ

京太郎「そうは言ってもな……ちょっと失礼」ギュッ

咲「ひゃっ!?」

京太郎「やっぱり手が冷えてる。 最近秋も近付いて肌寒くなってきたんだから無茶はするなって」サスサス

咲「だ、大丈夫だよー///」

優希「むう……」

京太郎「ほら、優希も手貸せ」

優希「へっ?」

京太郎「へっ、じゃねえよ。 お前だって待ってたんだろ、暖めてやるから手を出せ」

優希「お、おう!」

京太郎「ったく、こんな冷たくしてまで……麻雀やる奴が指大事にしなくてどうすんだよ」サスサス

優希「……///」

咲「うー……」

京太郎「よし、2人共大丈夫だな。 じゃあ学校行こうぜ」

咲「う、うん」

優希「わ、わかった」


京太郎(全くいきなりこれとか……こんなの考慮してないっつうの)

咲「……」

優希「……」

咲「今回はどっちかな?」

優希「たぶん引き分けだじぇ」

咲「京ちゃん、特に考えてなかったみたいだしね」

優希「ドキドキさせられるのはこっちだけ……こんなの不公平にも程があるじょ」

咲「京ちゃんをドキドキさせるのは骨が折れそうだなあ……あの顔は間違いなくどう断ろうか考えてる顔だったし」

優希「わかるのか?」

咲「それなりに長い付き合いだからね」ドヤッ

優希「くっ、やっぱり年月じゃ咲ちゃんには勝てないじぇ……なら私は積極性で京太郎の心を手に入れるまでだ!」

咲「あっ! ま、待ってよ優希ちゃん!」

優希「京太郎ー!」ガバッ

京太郎「おわっ!」

優希「このままおぶって学校まで連れていけ!」

京太郎「なんでだよ!?」

優希「いいからいいから、京太郎号出発だじょ!」

京太郎「お前なあ……」

優希(咲ちゃんに勝つにはグイグイ攻めるしかないじぇ。 せ、背中に胸も当ててるし掴みはバッチリなはず……)

京太郎(こういうのって背中に当たるものにどぎまぎする場面なんだろうな……悲しいくらい何も感じねえ)

咲(うう、優希ちゃんに先手を取られちゃった……だ、だけど私だって負けないよ!)

優希(次の戦いはお昼……この優希ちゃん特製スペシャルタコスで京太郎の胃を掴んで私は大きくリードする!)

咲(京ちゃんの好きな物ばっかり詰めたお弁当……これを使って巻き返してみせる!)

優希(咲ちゃんにも、のどちゃんにも……)

咲(優希ちゃんにも、京ちゃん自身にも……)

咲・優希(絶対に負けない!)

京太郎「はあ……」

短いけど今日はここまで、次はお昼の戦いから

たぶんこういう状況は関係ない第三者しか楽しめないんだろうなと思う今日この頃
そして咲日和の京太郎のお昼辞退はやっぱり和への諦めが入ってなきゃ辻褄が合わないと感じた今日この頃

こんな時間だけど投下します

――お昼……

京太郎「さてと今日はどこで昼飯食おうかなっと」

咲「京ちゃーん」

優希「京太郎ー」

京太郎「……まあ、朝を考えたらそりゃこうなるよな」

咲「お昼、一緒に食べよ?」

優希「屋上行こう、屋上!」

京太郎「あーあー、わかったから引っ張るな!」

ワイワイ、キャッキャッ

嫁田「相変わらず咲ちゃんはいい嫁さんだなあ。 最近はなんか片岡もグイグイ来てるけど俺は咲ちゃんを応援するぜ!」

モブ男子A「須賀の奴、いつの間にあんなリア充に……」

モブ男子B「くうう、俺もああやってお昼誘われたい……!」

モブ男子C「リア充爆破リア充爆破リア充爆破……」ブツブツ

――屋上……

京太郎「あれ?」

和「あっ、こんにちは須賀君」

京太郎「和も、誘ってたのか?」

咲「当然だよ、和ちゃんを仲間外れにして3人でご飯食べても美味しくないもん」

優希「のどちゃんのお弁当は美味しいしな!」キリッ

和「ゆーき、また私から貰う気満々だったんですか……」

優希「今日は色々忙しくて自分の分のお昼を用意出来なかったんだじょ……」

京太郎「購買にタコス買いに行けばいいじゃんかよ」

優希「それはそうかもしれないけど……」チラッ

咲「……?」キョトン

優希「いいや、やっぱり私はここにいるじぇ!」

優希(相手はタコスをタンスと間違えるような咲ちゃんだ、天然で何かしそうだから油断ならないじょ……)

和「ふう、仕方ありませんね。 半分わけてあげます」

優希「ありがとう、のどちゃん! お礼に占いつきの飴をあげるじぇ、ちゃんと前みたいに悪い結果は除いておいたじょ!」

和「いい結果しか入っていない占いに意味があるとは思えませんけど……」

優希「つれないじぇ、のどちゃん」

咲「あはは……あっ、そうだ京ちゃん、はい」

京太郎「なんだよ、これ」

咲「お弁当。 京ちゃんの大好物ばかり入れてみました!」

優希「あっ、先手を取られた!」

優希(咲ちゃんのお弁当ものどちゃんに負けず劣らず美味しい……しかも中身が京太郎の好物ばっかりなら私のタコスでも勝てるかわからないじぇ……でも退くなんて選択肢、私にはない!)

京太郎「あー……嬉しいのは確かなんだけどその」

優希「京太郎、私からはこれをやろう!」

京太郎「タコス?」

優希「ただのタコスじゃないじぇ。 この私が今作れる最高傑作、優希ちゃん印のスペシャルタコスだ!」

咲「優希ちゃんのタコス……!」

咲(前に一回だけ食べさせてもらった時もすごく美味しかったのに、最高傑作だなんて……ううっ、私のお弁当で勝てるのかな……)

京太郎「……あのな2人共」

咲「な、なに?」

優希「どうしたんだ?」




京太郎「俺、弁当あるんだけど」


咲「そんなの考慮してないよ……」ズーン

優希「こんな理不尽な結末があっていいのか……」ズーン

京太郎「あー……」

和「え、えっと……」

咲「しょうがないから2人分食べるしかないよね……あはは、太っちゃうなら胸にいかないかなあ」

優希「ふふふ、いつもなら黄金色に見えるタコスが灰色に見えるじぇ……」

京太郎「……ったく、おいそこの2人」

咲・優希「……?」

京太郎「だったらこういう風にだな……」

――……

咲「えっと、じゃあ優希ちゃんと和ちゃんの分がこれだね」

和「ありがとうございます、咲さん」

優希「これが京太郎の好物……メモっとくじぇ」

京太郎「優希、メモってないでタコス渡せ。 咲も箸くれないか?」

咲「う、うん」

優希「お、おう」

咲(京ちゃんの提案は簡単なものだった)

優希(さすがに3人が用意したご飯を食べきるのは無理だからって咲ちゃんのお弁当を私とのどちゃんにも分けて)

京太郎(優希のタコスを俺と優希で半分こする……優希の奴がお昼を忘れていたのがこの場合上手く働いたな)

京太郎「タコス半分にするって難しいな……」

優希「そ、それなら半分食べて返してくれれば……」

咲「むっ、そんなのダメだよ!」

和「そうですよゆーき、少しはそういう事に対する羞恥心を持ちなさい」

京太郎「あっ、半分にできた。 ほら優希」

優希「ううう……」

優希(作戦失敗だじぇ……本当なら)

――……

京太郎『おっ、美味いなこのタコス!』

優希『そうだろう、そうだろう! うーん、でもそんなに美味しそうに食べてるのを見てたら私も食べたくなってきたじぇ』

京太郎『いや、そんな事言われてもな……』

優希『ちょっと返してもらうじぇ!』パクッ

――……

優希(……って流れから自然に関節キスをするはずだったのに!)

京太郎「もぐもぐ……お前が言うだけあって美味いなこのタコス」

優希「そ、それはよかったじょ」

優希(嬉しいけど複雑だじぇ……)

京太郎「次は咲の弁当だな。 それにしても箸入れ忘れるなんて咲もドジだよなあ」

咲「え、えへへ……」

咲(本当にお箸忘れるなんて失敗しちゃった……あれ、でもよく考えたら)

――……

京太郎『全く咲はドジっ子だな……』

咲『ご、ごめんね。 食べさせてあげるから許して京ちゃん』

京太郎『えっ、それって……』

咲『あ、あーん……』

――……

咲(……とか出来たかもしれないって事だよね!? しかもその時のお箸で私もお弁当食べるから……か、関節キスだよ!?)

京太郎「自分の弁当があって助かったぜ、本当に……おっ、やっぱり俺の好物を把握してるだけあって味付けも俺好みだな!」

咲「あ、ありがとう……」

咲(ううっ、嬉しいのに逃がした魚が大きすぎて喜びが半減しちゃうよ……)

京太郎(さっきより落ち込んでる気がするんだがどうしたんだ、2人共……作ってきたのを食べるだけじゃダメだったのか?)

和「咲さんのお弁当美味しいです」ホッコリ

京太郎「和もそう思うか?」

和「はい。 あっ、そういえば須賀君。 この前見せてもらったネト麻の牌譜ですけど……」

京太郎「ああ、悪いな。 わざわざ改善点とか書いてもらって」

和「いえ、誰かに教えるというのは自分の成長にも繋がりますから」

京太郎「それでもだよ。 和がいなきゃ、俺もっと弱かっただろうし本当に感謝してる」

和「ふふ、ならそれは次の大会の成績で返してくださいね?」

京太郎「うわ、それはなかなかのハードルだな。 ん、でも頑張ってみるよ」

和「期待してますよ」

京太郎「プレッシャーはかけないでくれって!」

咲「……」

優希「……」

咲「何か間違ってる気がするよ……」

優希「京太郎めぇ……のどちゃんにデレデレしおってからに」

咲(私も京ちゃんに麻雀教えられたらなあ……だけど能力ありきの私じゃ和ちゃんみたいなデジタル打ちは教えてあげられない……)

優希(ぐうう、のどちゃんが羨ましいじぇ……私、人に教えるなんて出来ないからこういう時何も出来ない……)

咲(悔しいなあ……)

優希(悔しいじぇ……)

今はここまで、いけるようなら夜にまた部活編を投下したいところ

おそらく清澄内で咲と優希は初心者指導に全く向いてないツートップ

ミスした……

>>94-95の関節キスを間接キスに脳内修正してください
なんだ関節キスって、どんなハードなプレイなんだ……

ふたばよりコピペだが

咲さん→そこでカンすればいいはずだよ!
優希→そこでドーンとリーチすれば一発間違いなしだじぇ!
まこ→この河の表情を覚えておくんじゃ
和→なんでそこでそうなんですか、ここは……くどくどくどくど
部長→あっ、買い出し行ってきてくれるかしら?

短めですが投下します

>>109
部長だけ麻雀に関してですらないのか

――放課後・部室……

京太郎「リーチ」タンッ

まこ(ほう、オーラス流局一歩手前のこのタイミングでリーチをかけたか。 これは……ここが安牌かの)タンッ

久(捨て牌からはなかなか予想がつきにくいわね……ふふ、少しは出来るようになったじゃない。 まあ、表情からバレバレではあるけど今回は聴牌も無理みたいだし、ベタオリして逃げ切らせてもらうわ)タンッ

和「……」タンッ

まこ「ほほう」

まこ(和の奴、あっさりと危険牌を切りおったか。 これは予想通り京太郎の手は……)


咲・優希「……」ポツーン

咲「暇だね」

優希「暇だじぇ」

咲「京ちゃん楽しそうだね」

優希「私達が入ってた時よりイキイキしてるじぇ」

咲・優希「……はあ」


まこ「ノーテンじゃ」

久「ノーテンね」

和「テンパイです」

京太郎「テ、テンパイ」

久「私の逃げ切り一位ね、お疲れ様」

京太郎「お疲れ様です……はあ、緊張したー。 この面子に振り込まないってだけで神経擦り切れそうですよ……元部長とか何待ってるかわからないから打つ度に手が震えましたもん」

まこ「そりゃあそれが今回の京太郎の課題じゃからの。 まあ何はともあれお疲れじゃ」

和「お疲れ様です須賀君。 ふむ、さっきのオーラスはやはりフリテンリーチでしたか……」

京太郎「あー、やっぱりバレてた?」

和「須賀君の雰囲気からその可能性が高いとは感じましたね」

まこ「ツモれば得点が伸びて逆転も狙えたとはいえ無茶するのう」

久「まあ、須賀君が淡々とリーチをかけた時点で、ここにいる全員なら想像は出来たんじゃない? いつもの須賀君ならリーチをかける時もっと勢いよくやるしね」

京太郎「ううん、やっぱりネト麻と違って表情とかそこも気をつけなきゃいけませんよね……」

久「まあ初めて戦う相手なら表情だけで読み切れっていうのもなかなか難しい話ではあるし、捨て牌からはわかりにくかったから少しは自信持っていいんじゃないかしら」

まこ「さすが平然と悪待ちをやるもんは言うことが違うのう」

久「まあねー」

和「私は専らペーパーやネト麻でのデジタル的指導ですから、駆け引きに関しては染谷部長に任せてましたけど……少しはものに出来たみたいですね」

京太郎「いやあ、雀荘とかに行くと色々やる人がいるからそういう面では勉強になるよ。 本当にありがとうございます染谷部長」

まこ「なあに、家も人手不足が解消されたしかまわんわ。 最近は京太郎目当ての女性客も出てき始めたくらいじゃ」

咲「……!」ガタッ

優希「!?」ピクッ

京太郎「いやあ、執事ってやっぱり憧れるんですかね?」

咲「し、執事!?」

優希「それはどういう事だ!?」

久「あら、ずっと黙ってたと思ったら聞き耳立ててたの、あなた達」

京太郎「どういうってそういう意味だよ。 一応バイトも兼ねて行ってるからな、メイド服は無理だから執事服着て接客してるんだよ俺」

まこ「なかなかどうして、板についてると評判でのう。 女性客の卓には指名される時もあるわ」

京太郎「見本がすごい近くにいますからね。 見よう見まねでしたけど評判がいいなら良かったです」


咲「京ちゃんが……」

優希「執事……」

久「私も見たけどなかなかかっこよかったわよー。 あれはいずれ固定客がついてそのままお持ち帰り……」

まこ「久……家はそういう店じゃないんじゃが」

久「冗談よ、冗談」

咲「うう、気になるなあ」

優希「見てみたいじぇ……」

京太郎「なんだ、そんなに気になるなら今日店に来るか?」

咲「本当!?」

優希「いいのか!?」

京太郎「いいも何も客ならバイトの俺が拒否する話ではないだろ……いいですよね、染谷部長?」

まこ「んー……まあ、来るんはかまわないんじゃが」

和「何か問題があるんですか?」

まこ「2人と麻雀打って心が折れる客がたくさん出そうなんがの……京太郎、あんたが責任を持って相手をする言うんならええが」

京太郎「マジっすか……うーん、わかりました。 来たら俺が責任を持って面倒見ます」

咲・優希「やった!」

咲(そういえば私も優希ちゃんも最近京ちゃんと麻雀打ってなかったよね……楽しみだな)

優希(特殊すぎて初心者の相手は向かないってしばらく京太郎との麻雀禁止だったからな……久々に腕が鳴るじぇ!)


京太郎「だけど染谷部長は他のお客さんの相手がありますし、もう1人の面子はどうしましょう?」

まこ「そうじゃな……」

久「私が行けたら良かったんだけど。 受験生って立場上あんまり好きに出来ないから、今日は行けそうにないのよね」

和「あ、あの……」

まこ「ん?」

和「わ、私が行ってもいいですか?」

まこ「かまわんが……ああ、なるほどの。 よしよし、ちゃんとメイド服は用意しちゃる」

和「あ、ありがとうございます……」

京太郎「これで面子は揃いましたね」

優希「よーし、気合いが漲ってきた! 景気づけに麻雀するじぇ!」

咲「あっ、私もやるよ」

和「それでは私も……」

京太郎「俺は外の空気吸ってきます。 ついでに飲み物でも買ってきますね」

久「あっ、須賀君。 私も付き合うわ」

まこ「じゃあ卓にはわしが入るとするか」

京太郎「じゃあちょっと出てきます」

久「また後でねー」

  ガチャッ、バタンッ

京太郎「でも珍しいですね」

久「何が?」

京太郎「元部長が雑用に付き合うなんて」

久「ちょっとね。 須賀君と話したい事もあったし」

京太郎「話ですか?」

久「ええ、もし間違ってたら謝るんだけど……」







  久「――須賀君、もしかして咲や優希と何かあった?」





とりあえずここまで

次回は竹井久の相談室から一年組Roof-topに行くまで投下したいと思います

ちなみにこのスレの和は咲と優希両方に恋愛相談されて、立ち位置に困りつつもどっちも応援しています

投下いきます

ラブコメを書いてるつもりがなぜ胃が痛くなるとか曇るとか言われているのかわからないそんな自分がここに


京太郎「えっ……」

久「今日の須賀君、微妙に咲や優希への態度が固いのよね。 例えばさっきまこの家に行く話になった時、まこに2人の相手をするように言われてあなた本気で迷ったでしょう?」

京太郎「それは……」

久「気付いてないかもしれないけど、普段のあなたならあそこで本気で迷ったりしないのよ。 迷ったふりして咲や優希をからかいはしてもね」

京太郎「……」

久「一方で2人の須賀君を見る目は傍から見てたらバレバレでも隠そうとしてた昨日までと違って、露骨にあなたへの好意が出てる」

久「むしろこれで何もないって考える方が不思議じゃない?」

京太郎「……元部長は怖い人ですよ」

久「あら、たぶんまこも気付いてるわよ。 和はちょっとわからないけど」

京太郎「そうですか……あんまり部活に影響ないようにしたかったんですけどね」

久「差し支えなければ聞かせてもらえるかしら? 昨日あなた達に何があったのか……」

京太郎「実は――」






――少年事情説明中……





京太郎「――というわけでして」

久「……まさかこんな早く事態が動くなんて私も想像してなかったわ」

久(まさか咲から動くなんてね。 様子からして告白なんてまだまだ先の話で優希に先を越されると思っていたんだけど……須賀君のちょっとした悪戯、とんでもない引き金を引いちゃったわけね)

京太郎「あいつらが俺を好きでいてくれてるのはわかるんですけど……断るしかない立場としてはやっぱり心苦しくて」

久「あら……ちょっと須賀君?」

京太郎「はい?」

久「あなたなんで断る事前提で話を進めてるの? というか結論出すのがちょっと早くない?」

京太郎「えっ、だって……今の俺じゃ……無駄だとは思いますけど俺は和が好きだし、染谷部長達にも迷惑かけられないから早く決めないと……」

久「……確かに今のあなたと付き合ったところで2人のどちらにもいい結果は出ないでしょうね」

京太郎「でしょう? だから俺は――」







  久「だって須賀君、2人と向き合おうとしてないんだもの」






京太郎「なっ……」

久「たった1日での結論、今まで名前も知らなかった人からの告白なら十分すぎる時間かもしれないわ。 だけど今回みたいになまじ付き合いがある人間からなら話は別よ」

京太郎「だけど待たせて変に期待を持たせるくらいなら……!」

久「あのね、須賀君……あなたがどう見てるか知らないけど、今さらちょっと待たせたくらいで期待するほどあの子達は浮かれてないわよ。 実際2人は答えはすぐじゃなくていいって言ったんでしょ? あなたその後2人に答えを急かされたりした?」

京太郎「それは、ないですけど」

久「あの2人は長期戦なんて覚悟の上で動いた。 変に期待だなんだって言うけど、本音はあなたが気まずいから早く終わらせたいだけなんじゃないの?」

京太郎「……!」

久「色々心の中で言い訳を組み立てて逃げようとしてるみたいだけど……須賀君、2人の気持ちなんかこれっぽっちも見てない」

京太郎「そんな事!」



久「じゃあなんでさっきから断るための口実に人を利用してるのよ」

京太郎「!?」

久「振り向かせられないのは理解してるし、今じゃ振り向かせる努力もしてないけど断るためにはその気持ちを理由にする? 人に迷惑はかけられないからよく考えもせずに早く決めなきゃいけない? なにそれ、馬鹿じゃないの」

京太郎「……」

久「……須賀君、もう無理だって諦めるくらいならなんで和を振り向かせる努力を今からでもしなかったの?」

京太郎「っ」

久「大会中は私が須賀君に色々頼んで動いてもらってたし、和も事情があって麻雀に集中したかったみたいだからともかく、今は関わる時間も増えてチャンスも多いのに……むしろ全国前のあなたの方が和にアピールしてたわよ」

京太郎「それは……」

久「須賀君の和への気持ちは嘘じゃない、それくらいは私にだってわかる。 でもそれ以上にあなたは諦めてるから動こうとしないのよ……もう友達のままでいいやって思ってる部分ない?」

京太郎「……」


久「まこに関しては論外だから何も言わないわ。 それで少しは目が覚めた?」

京太郎「……俺」

久「ん?」

京太郎「俺、和目当てで麻雀部に入ったんです」

久「まあ、それはなんとなくわかってたわ」

京太郎「最初は憧れのアイドルとお近づきになりたいくらいの気持ちだったんですよ。 でも麻雀教えてもらったり意外に子供っぽいところとか見てたら本気で好きになって……」

久「……」

京太郎「だけどなんででしょうね……本気になればなるほどわかっちゃうんですよ、和は俺をそういう対象としては見てくれないって」

京太郎「それでも目があるなら頑張ったのかもしれません、けど……あ」

京太郎(ああ、こういうところか……)

京太郎(なんて事はない……俺、早い段階からどうせ無理だって諦め半分だったんだ)

京太郎(和が好きで色々考えた事だってあるのに俺はそのための一歩を踏もうとしてこなかった……)

京太郎(咲や優希は俺がそんな目で見てないのわかってて、それでも少しずつ足を進めてたのに)

京太郎(そりゃ好きになってくれるわけないわな……俺はただ足を止めて見てただけなんだから。 現実は俺が動かないと何も始まらなかったのに)

京太郎(いい人止まりで終わらせようとしてたのは俺の方で、それ以上和に踏み込ませなかったのも俺の方……それでズルズル引きずった結果がこれだ)

京太郎(――本当に情けねえなあ……)

久「須賀君?」

京太郎「部長……今の俺どんな顔してます?」

久「……泣きそうな顔してるわ。 だけどさっきの顔よりは全然いいと私は思うわよ」

京太郎「そう、ですか……俺、もう現状でほとんど満足しててそれ以上進むのは怖いって思ってる」

久「……」

京太郎「だから……もう和をいいわけに使うのやめます」

京太郎「いつまでも中途半端に自分の中で終わらせてた気持ちを引きずるのは、誰にとってもよくないから」

久「……そう」

京太郎「すいません、なんか気を遣わせちゃって」

久「いいのよ。 悩める部員を救うのも元部長の務めってね」

京太郎「ありがとうございます……さっさと飲み物買って戻りましょうか、今日は俺がおごりますよ」

久「遠慮なくいただくわ……あっ、須賀君」

京太郎「はい?」

久「矛盾してるかもしれないけど、あんまり2人を待たせるのもダメよ?」

京太郎「そうですね……少しの間ちゃんと考えて、それでもそんなにしない内に結論出します」

久「それでいいわ。 まっ、人からしたら羨ましい環境なんだから楽しんでおきなさい」

京太郎「……それが出来たらどんなにいいか」

久「まあ楽しめるのは第三者だけか……あ、それともう1つアドバイス」

京太郎「はい?」

久「――あの子達はあなたの妹でもなんでもないの、それだけは大前提としてしっかり胸に刻んでおきなさい」

京太郎「……わかりました」


――麻雀部部室……

京太郎「戻りましたー」

久「ただいまー」

まこ「おう、お帰り」

京太郎「ほら、みんな飲み物買ってきたぞ。 和は紅茶でよかったよな?」

和「はい、ありがとうございます」

京太郎「咲と優希はって……」

咲「ふにゅう……」グッタリ

優希「きゅう……」グッタリ

京太郎「……どうしたんですかこれ」

和「いえ、咲さんとゆーき、今回の半荘でどちらが勝つか賭けをしたらしくて」

まこ「それはもう凄まじい戦いを繰り広げておったんじゃ」

久「へぇ、それで結果は?」

まこ「東場では優希がリード、南場から咲が盛り返して、2人で点を奪い合ってたんじゃが……」

和「叩き合いをしているところを私と染谷部長の連続ツモで2人まとめてトバしました」

久「あらら」


咲「うう、こういう時って想いの力で私か優希ちゃんが勝つはずなのに……」

京太郎「本の読み過ぎだな」

優希「まさか2人同点の時にやられるなんて、そんなミラクルいらないじぇ……」

まこ「人を無視するんが悪いんじゃ。 席順なら咲の勝利だと言ったんじゃがそれはそれで納得できんと言うし全く面倒な後輩達め」

久「乙女心は複雑ってやつかしらね……で、だいたい予想はつくけどそこまで熱くなるってどんな賭けをしたの?」

咲「え、えーっと……」

優希「それは……」

まこ「こん後Roof-topで京太郎にどちらが先にお嬢様って呼ばれるか、だったかのう?」

京太郎「は?」

咲「ち、ちょっと染谷部長!?///」

優希「ばらしたら恥ずかしいじぇ……///」

久「……この子達、大胆なのかそうじゃないのか時々理解出来なくなるわ」

京太郎「あはは……」


和「……」

和(昨日から2人が少し大胆になったのは気のせいでしょうか……日課の相談もこなかったし、須賀君もどことなく変ですし……)

和(とにかく応援だけはしっかりしましょう……全て終わった時どちらにも後悔がないようにさせてあげないと)

和(それが2人の味方というある意味相反する立場にある私の役目なんですから)

久「和?」

和「えっ」

久「遅くなるのもアレだからそろそろRoof-topに行くみたいよ? 先に行っちゃったけど合流しなくていいの?」

和「あっ、わかりました」

久「あっ、和!」

和「はい、なんでしょう?」

久「1つ聞きたいんだけど……あなた須賀君をどう思ってる?」

和「……? いい人ですし、数少ない男友達と思ってますけどそれがどうかしましたか?」

久「即答か……」

和「竹井先輩?」

久「ううん、なんでもない。 引き止めて悪かったわね」

和「はあ……よくわかりませんけどそれでは失礼します」

  ガチャッ、バタンッ

久「……目がないか」

久「少し前までは私はそうは思わなかったけどね……今は確かにそうみたい」

久「……青春ね、本当に」

とりあえずここまで

次回はRoof-topにて執事京太郎の素敵滅法が炸裂、する予定
中の人的にはまこさんも人外執事やってますが

ちなみにこのスレの設定で和が京太郎に好意を抱いていると、和は咲と優希に相談を受けた後毎日涙でエトペンを濡らします

それではまた

和「お友達でいましょう、須賀くん!」

京太郎「………」

こんな時間ですが投下します


――Roof-top……


まこ「さあ着いたぞ。 京太郎は更衣室に、和は衣装を渡すからこっちに来んしゃい」

京太郎「はい、わかりました。 じゃあ咲と優希はそっちの席で待っててくれるか?」

咲「はーい」

優希「早く見せろー」

京太郎「はいはい」

和「じゃあ私も行ってきます」


咲「京ちゃん、龍門渕で本物の執事さんに色々習ってるって言ってたから期待しちゃうなあ」

優希「打つ前に腹ごしらえー……あっ、タコスがあるじぇ!」

咲「あっ、私も飲み物頼もうかな……すいませーん」

「お呼びでしょうかお嬢様方」

咲「あっ、はい。 注文を、したいんですけど……」


京太郎「はい、何でございましょう?」


咲「……」

優希「……」

京太郎「……あ、あれ? 2人共どうしたんだ?」

咲・優希「……はっ!」

優希「お、おおう……これはなかなか……」

咲「き、着替えるの早いんだね……まだ五分も経ってないよ?」

京太郎「そうか? ハギヨシさんなんて秒単位で着替えるらしいからまだまだだと思うんだが……俺には気配を殺すのも瞬間移動も出来ないし」

優希「なんか不吉な単語が聞こえた気がするじぇ」

京太郎「おっと、そんな事よりご注文はなんでしょうか、お嬢様方?」

咲「お嬢……」

優希「様……」

咲・優希「……えへへへ///」

京太郎「……タコスと紅茶ですね、かしこまりました」

まこ「なあにやっとるんじゃ、あいつらは」

和「ふふ、やっぱりこの服可愛いです♪」

まこ「こっちもこっちでこれじゃし……はあ」


京太郎「お帰りなさいませお嬢様」

京太郎「ただ今ご注文の品をお持ちいたします」

京太郎「お嬢様、いってらっしゃいませ……」


優希「京太郎、忙しそうだじぇ」

咲「やっぱり人気あるんだね……」

京太郎「で、電話番号でございますか?」

咲・優希「!?」ガタッ

京太郎「いえ、そういう事は……はい、申し訳ありませんお嬢様」

咲・優希「ほっ……」

和「2人共須賀君の一挙手一投足に注目しすぎではないですか?」

咲「だ、だってあんな京ちゃん滅多に見られないし……」

優希「カメラでも用意しとくんだったじぇ……」

まこ「写真ならあるぞ?」

咲・優希「えっ」

まこ「京太郎がバイトし始めの時に他のバイトがおもしろ半分で撮ったやつじゃが……ほれ」

咲「わあ……」

優希「これはいいものだじぇ……!」

まこ「欲しいなら焼き増しするがどうする?」

咲・優希「ください!」

和「……本当、2人に何があったんでしょう?」

咲「京ちゃんの執事……えへ、へへ///」

優希「永久保存版だじょ……ど、どこに飾ろうか迷うじぇ///」

京太郎「お待たせー……ってどうしたんだこれ」

和「いえ、気にしないであげてください」


京太郎「よし、じゃあ始めるか……」

咲「久しぶりの京ちゃんとの麻雀だ……いっぱい楽しもうっと」

優希「タコスパワーも充電したし、いいものも手に入ったし今の私に怖いものなしだじぇ!」

和「エトペンの準備も出来ました」

4人「よろしくお願いします」


優希「親はもらった!」

京太郎(相変わらず優希は東一局の親率高いな……安手でもなんでも流す事だけ考えとこ)

優希「リーチだじぇ!」

咲(二巡目でリーチ、やっぱり優希ちゃん速いな……この局は槓材が来る前に和了られちゃうかも……)タンッ

和(今回は配牌が悪いですね……)タンッ

京太郎「和、それチー」

京太郎(くっ、一発消すしか出来ないなんて情けねえ!)

優希(京太郎め、生意気にも一発を消してきたか……だけど!)

優希「ツモ! リーチ、連風牌、一通、混一色、ドラ1で倍満8000オール!」

京太郎(さっき鳴かなきゃ一発ついて三倍満かよ、おっかねえにも程があるぞ!?)

優希「よっし、一本場いくじぇ! と、その前に……京太郎!」

京太郎「なんだ?」

優希「最下位になったら罰ゲームだから覚悟しておくように!」


京太郎「はっ!?」

咲「!?」

和(ゆーき、仕掛けるつもりですね……)

京太郎「な、なんだよ罰ゲームって!」

優希「そうだな……一位になったものが最下位の京太郎になんでもいいから命令出来るっていうのはどうだ!」

咲「!!?」ガタッ

京太郎「こら待て、なんで最下位が俺って確定してんだよ!」

優希「むしろ最下位にならない自信があるのか?」

京太郎「……さ、三位くらいになら俺だってなれるかもしれないだろ」

優希「無理だな」

京太郎「即答すんな! あったまきた、お前最下位にして恥ずかしい目にあわす!」

優希「やれるものならやってみろ! さあ続きだ続き……ダブルリーチだ!」

京太郎「速っ!?」

優希(よ、よし! 流れは作れた! 後は南場に入る前に京太郎をトバして一位になって明日の休みデートするように命令するだけだじぇ!)

和(ゆーき……皮算用は結構ですが)チラッ

咲「……」ゴッ

和(咲さんは、それを素直に許す気はないみたいですよ?)


優希(ううっ、ダブリーをかけたはいいけど当たり牌が来ないじぇ……京太郎は振り込んでくれないし)タンッ

咲「……」タンッ

和(ここはベタオリ、ですね)タンッ

京太郎(振り込まないように振り込まないように……!)タンッ

優希(ドラが来たか……だけどこれじゃないじぇ……)タンッ


  咲「――カン」


優希「じょ!?」

咲「ツモ。 嶺上開花、ドラ4……跳満、12000の一本場は12300です。 責任払いだから優希ちゃん1人の支払いだよ」

優希「しまったっ!?」

京太郎「大明槓からの責任払いか。 相変わらずむちゃくちゃな奴……」

和(それだけじゃありません。 咲さん、ゆーきの当たり牌を完全に握り潰して和了っています……!)


優希(やられた! 京太郎をトバす事ばかり考えてて咲ちゃんへの警戒が疎かになってたじぇ……咲ちゃんは手牌から聴牌気配がしなくてもカンからの嶺上開花で一気に和了りまでいけるのに!)

咲(ふう、なんとか優希ちゃんに和了らせないようにしながら自分が和了れたよ……優希ちゃんがリーチしてくれてて助かったかな。 だけど勝負はまだこれから……京ちゃんばかり見てた優希ちゃんも集中するはずだし、気を引き締めないと!)ゴッ

優希(――悔しい……だけどそれ以上に燃えてきたじぇ。 さすがは咲ちゃん、私の恋のライバルだけあってスムーズには終わらせてくれないな……だったら真っ正面からやっつけて京太郎を頂くとしようか!)ゴッ

和(さて、どうしましょう。 部活の時のようにまた2人は叩き合いを始めるでしょうからそこを突けば一位は狙えますけど……麻雀は手心なしで真摯にいきたいところですが、友人として今の2人の邪魔をしていいものなんでしょうか?)

京太郎(これ、俺和了れるのかな……)

まこ「客が何人かビビっとるから変な気迫を出さないでほしいんじゃが……今は何を言っても無駄かいのう」


――30分後……

咲「……」

優希「……」

京太郎「……えっと」

優希「……負けた」ガクッ

咲「か、勝ったあ……」

    半荘結果

    一位 宮永咲

    二位 片岡優希





    三位 須賀京太郎

    四位 原村和


和「負けてしまいました……」


咲「あれ、だけどなんで京ちゃんじゃなくて和ちゃんが最下位なの……」

京太郎「他でもないお前がオーラスで和に直撃喰らわせて叩き落としたからだろ」

咲「はうっ……だってあそこで和了らないと優希ちゃんが和了ってた気がするし……」

優希(……確かに私は次のツモで和了れてたから京太郎を親被りで最下位にして自分も勝てたじぇ)

優希「うー……これは悔しがればいいのか、でも咲ちゃんも失敗はしてるから喜べばいいのかわかんないじぇ」

和(こ、こんなつもりではなかったんですが……い、いえ、麻雀は思い通りにいかないものですから仕方ありませんね)

和「あ、あの咲さん。 それで罰ゲームは何をすれば……」

咲(あっ、そうだ……私がトップだから最下位の和ちゃんに罰ゲームを出すんだ。 だけどこんな状況想定してなかったから、何をお願いすればいいんだろう……)

咲「え、えっとじゃあ……猫耳着けて語尾にニャーってつけるとか……どう、かな?」

和「へっ?」

まこ「猫耳なら用意はしちょる」

和「いつの間に!?」

優希「おー、頑張れのどちゃん」

京太郎「和、ごめんな……俺の代わりに頑張ってくれ」

和「ふ、2人も助けてください!」

咲「ダメだよ和ちゃん……これは罰ゲームなんだよ! 安心して、他のお客さんには見られないように後でやるから!」

和「そ、そんな……」


――一時間後……

まこ「よぉし、それじゃ客もはけたしいってみるかいのう」

和「うう……」

咲「頑張って和ちゃん!」

優希「やればできるじぇ、のどちゃーん!」

京太郎「自分を信じるんだ和ー」

和「……」







  和「お、おかえりにゃさいませ、ご主人様///」






咲「……」

優希「……」

まこ「……」

京太郎「……」

和「あ、あの、どうしたんですかにゃ?」

まこ「和」ギュッ

和「は、はいにゃ!」

まこ「家で本格的に働かんか? あんたがいれば家は安泰間違いなしなんじゃ!」

和「ええっ!?……にゃ」

咲「な、なんて事をしちゃったんだろう私……これは目覚めさせちゃいけなかったよきっと」カタカタ

優希「のどちゃん+猫耳メイド+語尾=相手は死ぬ!」

京太郎「執事足るもの冷静に冷静に冷静に……」

咲「はっ!? き、京ちゃんはもう見ちゃダメー!」

優希「そ、そうだじぇ! これ以上見たら罰金だじぇ、罰金ー!」

京太郎「そんな理不尽な!?」

咲・優希「執事なら敬語!」

京太郎「そ、そんな理不尽すぎます咲お嬢様、優希お嬢様!」

咲・優希「はうっ!? や、やっぱりそれもダメ!///」

京太郎「どうしろって言うんだー!」


――須賀家……

京太郎「はあ……今日は疲れた。 まあ眼福もあったからプラマイゼロか……」

京太郎(あの後もう二回半荘やって見事に俺は咲と優希に一回ずつ負けた……和はあんな事があったせいかガタガタだったけど)

京太郎「それにしても、デートか……」

京太郎(で、負けた俺への罰ゲームは明日と明後日を使って咲、優希とそれぞれデートする事になったわけだが……はたしてこれ罰ゲームって言えるのか?)

京太郎「わっかんねえな、どうにも……とにかく2人が楽しめるように頑張らないとな」

京太郎(明日は咲……どんなコースを巡るか大まかに決めとくかね)

京太郎「2人の告白からの答えも考えなきゃいけないし、忙しくなりそうな気がするぜ……」




???「……なるほどね」

今日はここまで

次回は咲ちゃんとのデートになります

それではおやすみなさい

黄金週間の京優SSが書き終わらない……
そんな感じですが更新させていただきます


――翌日……


咲「……」ソワソワ

京太郎「おーい」

咲「あっ、京ちゃん! おはよう、今日はよろしくね!」

京太郎「おはよう咲。 それにしてもお前、随分と早い時間にいたんだな? まだ待ち合わせまで15分はあるぞ」

咲「えへへ、京ちゃんとデートするんだーって思ったらついつい早く来ちゃった」

京太郎「……」

咲「京ちゃん?」

京太郎「言ってて恥ずかしくならないのか?」

咲「どうして?」キョトン

京太郎「……いや、お前がいいならいいんだけどな」

咲「変な京ちゃん」

京太郎(変なのはお前だろ、どう考えても! 昨日まで事ある毎にパニクってた癖になんでそういう台詞はふつうに言えるんだよ!?)

京太郎「と、とりあえず行くか……どこか行きたい所の希望があるなら聞くぞ?」

咲「そうだねー……じゃあちょっと見たい映画があるから付き合ってくれるかな?」

京太郎「映画か、わかった」


――映画館……


京太郎(……わかってた、わかってたはずなんだ)

咲「……」

京太郎(映画ってキーワードを聞いた時点でこうなるのはわかってたはずなんだ……!)

咲「わぁ……」

京太郎(だけどやっぱりコテコテの恋愛映画はきついんですよ、咲さん! しかも何かこの映画場面変わる毎にキスシーンとかあるしさあ!)

咲「すごいなあ……」ギュッ

京太郎(おいおい、なんで手を握る? いくらデートでも積極的過ぎませんかね、咲さんよぉ!)

咲「……///」

京太郎(うん、無理、映画の内容とか全然入らねえ! くそっ、前ならこれくらいのスキンシップは問題なかったけど咲が俺を好きだって前提があると一気に恥ずかしくなる……!)

咲「……えへへ///」


――同時刻・須賀家近辺……


優希「はあ……今頃京太郎は咲ちゃんとデートか。 明日は私の番とはいえ今は何も出来ないなんて気が狂いそうだじぇ」

優希「だけどお互いのデートに干渉しないのは咲ちゃんとの約束だからな……どんなに見に行きたくても我慢我慢……」

優希「あっ、京太郎の家まで来ちゃった……ううん、無意識って怖いじぇ」

???「あら?」

優希「じょ?」

須賀母「家に何か用かしら?」

優希「えーっと……」

優希(なんだ、このちびっ子は? 京太郎に妹がいるなんて話聞いた事ないけど……)

須賀母「あっ、もしかして京太郎のお友達? ごめんなさいね、あの子今出かけてるの」

優希「それは知ってるじぇ……」

須賀母「あれ、その舌っ足らずな喋り方……もしかしてあなた片岡優希さん?」

優希「へっ?」

須賀母「ふふっ、いつも息子から話は聞いてるわ。 自分の作ったタコスをよく食べる元気な女の子だって」

須賀母(それだけじゃなくて愚痴も色々あったけどそれは言わないでおきましょう)

優希「そ、そうか、京太郎の奴、私の事を家でも……ん?」

須賀母「どうしたの?」

優希「……息子って」

須賀母「あらやだ、ごめんなさい。 自己紹介がまだだったわね……私京太郎の母です」←135cm

優希「……じぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」


――……

咲「いいお話だったね!」

京太郎「そ、そうだな」

京太郎(俺はそれどころじゃなかったから半分以上内容覚えてないけどな!)

咲「やっぱりクライマックスの告白シーンが一番よかったよね! 私もあんなロマンチックな告白されてみたいなあ……」チラッ

京太郎(なんか見られてるのは気のせいだ、気のせいに決まってる……)

咲「むうっ……」

京太郎「そ、そろそろ昼だな! どこで食べてく?」

咲「あっ、それなんだけどね」

京太郎「えっ?」

咲「お弁当、作ってきたの! 公園で一緒に食べよう?」

京太郎「……マジか」


――公園……


京太郎「モグモグ……」

咲「ど、どうかな?」

京太郎「うん、美味いぜ咲」

咲「本当? 良かったー……」

京太郎「俺も最近は料理するようになったけどやっぱり咲には及ばないなー」

咲「ふふっ、年季が違うからね! まだまだ京ちゃんには負ける気はしないよ」

京太郎「そりゃそうか……でもこんだけ美味い料理作れるなら、咲はいい嫁さんになれるんだろうな」


咲「えっ!?///」

京太郎「あっ……わ、悪い、変な事言った!」

咲「う、ううん……京ちゃんにそう言ってもらえて、私嬉しいよ」ニコッ

京太郎「うっ……」

京太郎(改めて見ると咲って結構可愛いんだよな……今まで馬鹿やってた相手だからそんな風に見た事なかったけど)

咲「あっ、京ちゃん。 口元にご飯粒ついてるよ」

京太郎「んっ? こっちか?」

咲「違うよ、逆……んしょ」ヒョイッ

京太郎「おっ、取ってくれたのか、サンキュー」

咲「もう京ちゃんってば……」パクッ

京太郎「あ」

咲「ん、どうしたの?」

京太郎「い、いや、なんでもない……」

京太郎(ああ、もう! 天然はこれだから困るんだよ!)


――同時刻・須賀家……


須賀母「はい、お茶とお菓子どうぞ」

優希「す、すいませんだじょ……」

優希(ううう! まさかこのちびっ……小さい人が京太郎のお母さんだったなんて! 私、失礼な事とかしてないよな!?)

須賀母「そんなに緊張しなくていいのに……それで優希ちゃん」

優希「は、はい!」

須賀母「京太郎に用があったんじゃないなら、どうして家の前でボーッとしてたのかよかったら聞かせてもらえるかしら?」

優希「うっ……」

優希(ど、どうしてって言われても困るじぇ……フラフラしてたら京太郎の家に着いちゃっただけだし……)

須賀母「ふふっ、もしかして……無意識の内に来ちゃったって感じかしら?」

優希「うえっ!?」

須賀母「じゃあもしかして、最近京太郎が悩んでる返事を返さなきゃいけない告白の相手ってあなたなの?」

優希「あ、えっ……///」

須賀母「そう、あなたが……」

優希(き、京太郎の奴、そんな事まで話してるのか!? 恥ずかしいし気まずいじぇ……)

須賀母「あっ、別に直接聞いたわけじゃないの。 あの子が部屋でそんな感じの事をブツブツ言いながら悩んでるみたいだったから……だけど正解ではあったみたいね」

優希「……///」モジモジ

須賀母(あの子の話だと告白したのはもう1人いるみたいだけど……そっちは今日出かけた相手から想像つくしここはちょっとお膳立てしてあげようかしら)

須賀母「ねぇ、優希ちゃん?」

優希「ひゃい!?」

須賀母「もしそっちがよかったらちょっと提案があるんだけど……」

優希「提案……?」


――……


京太郎「ふぅ、食った食った……ご馳走さん」

咲「お粗末様でした」

京太郎「さてと、これからどうする?」

咲「そうだね……ふぁ……」

京太郎「なんだ、眠そうだな?」

咲「うん……今日が楽しみであんまり寝てなくて……お弁当もあったから早く起きたし……」

京太郎「無理しなくていいんだぞ?」

咲「んー……大丈夫だよ……きゃう!」

京太郎「危なっ! ほらほら、歩くのも覚束なくなってんじゃんか」

咲「んう……」

京太郎「しょうがないな……ほれ」ポスンッ

咲「ぇ……」

京太郎「男の硬い膝だけど、まあ我慢してくれよな」

咲「京ちゃんの、膝枕……」スリスリ

京太郎「ちょっ、さするなよ……」

咲「えへへ……あったかーい……」

京太郎「俺はむず痒いぞ……」

咲「むにゃ……ダメ、もう寝ちゃいそうだよ……」

京太郎「寝とけ寝とけ、ちょっとしたら起こしてやるから」

咲「じゃあ……ちょっとだけ……だよ」

京太郎「わかったわかった」

咲「おやすみ、京ちゃん……」

京太郎「おやすみ、咲」


咲「すう……すう……」

京太郎「……」ナデナデ

咲「にゅふ……」

京太郎「……朝から緊張とかしたけど、こういう寝顔とか見てると落ち着くもんだな」

咲「すうすう……」

京太郎「本当は俺と咲ってこんな落ち着く関係なんだよな……今じゃこんな事になったけど」

咲「京ちゃん……」

京太郎「一番問題なの、この現状が嫌じゃない俺なんだよなあ……」ナデナデ

咲「にゅう……」ブルッ

京太郎「ちょっと寒そうだな……上着かけてやるか」

咲「きゅう……」

京太郎「ふぁぁ~……俺もあんまり眠れてなかったから眠くなってきた……ちょっとだけなら寝てもいいよな?」

咲「すう……」

京太郎「……ぐう」


――数時間後……


カー、カー…

京太郎「……」

咲「……」

京太郎「悪い……」

咲「ううん、しょうがないよ……」

京太郎「まさか2人揃って夕方まで寝ちまうなんて……せっかくのデート、午後はほとんど潰れちまったな」

咲「でもあれだけ眠かったら楽しめなかった気もするし……本当に気にしないで京ちゃん」

京太郎「でもなあ……」

咲「だ、だったら……また、今度デートしようよ!」

京太郎「今度か、そうだなあ……今回は半分以上寝て過ごしたし、いつか改めてやり直すか」

咲「う、うん! それにしても……」

京太郎「ん?」

咲「ちょっと寝て頭がすっきりしたら、私すごく恥ずかしい事言ったりしてた気がする……///」

京太郎「間違ってはいないな」

咲「恥ずかしいよぉ……///」

京太郎「あはは……さて、じゃあそろそろ帰るか」

咲「そ、そうだね。 あっ、京ちゃん、上着ありがとう」

京太郎「ああ、別にいいって。 それより寒くなかったか?」

咲「……むしろ暖かかったよ///」

京太郎「そうか、ならよかった。 じゃあ行こうぜ、家まで送っていくからさ」

咲「うん! 今日はありがとう京ちゃん!」

京太郎「どういたしまして」


――片岡家……


優希「……」

優希「はは、ははは……」

優希「あーはっはっはっは!!」

優希「今日はフラフラして正解だった! まさかこんなチャンスが巡ってくるなんて思いもしなかったじぇ!」

優希「私にだけチャンスがあるわけじゃないけど……それでも十分過ぎる機会だじょ!」

優希「明日は京太郎とのデートだし、いい事尽くめだじぇ……!」

優希「待ってろよ京太郎ー!」


――宮永家……


咲「えへへ、今日は楽しかったなあ……」

咲「次のデートも約束出来たし、最高の1日だったよ!」

宮永父「咲ー、須賀君の家から電話だぞー!」

咲「あっ、はーい! なんだろ、京ちゃんからかな……」

咲「はい、もしもし」

須賀母『あっ、咲ちゃん?』

咲「あっ、京ちゃんのお母さん。 どうかしたんですか?」

須賀母『ちょっと聞きたい事と……お話があるの』

咲「な、なんですか?」

須賀母『うん、それはね……』


――須賀家……


京太郎「ああー、いい風呂だった。 明日は優希とのデートだし早く寝るか」

須賀母「京太郎、京太郎」

京太郎「どうしたんだ母さん。 そんなニコニコして……」

須賀母「ふふっ、お母さんに出来るのはここまで……後は頑張ってね!」

京太郎「は?」

須賀母「どんな選択でも私は応援するからねー、おやすみなさい京太郎」

京太郎「あっ、うん、おやすみ……なんだったんだ、いったい?」

今日はここまで

次回は優希とのデートからです

それでは

前スレから思っとたんやけど135って公式ネタなの?
ちょっと気になったにわかに誰か答え教えてくれると嬉しい。

>>203
これはあくまでこのSS内での設定、原作では京太郎の親は登場すらしてません
京太郎が大きな胸を好む理由が小さい子は母親を連想させるからという裏設定の為だけの135です
胡桃が130らしいので135ならまあ問題ないかなと

少し報告

現在ゴールデンウイークの京優SSを書いているため少々こっちに手が回らなくなってます

ゴールデンウイーク明けに更新しますので少々お待ちください

約二週間ぶりですね
更新再開します

――翌日……


京太郎「そろそろか?」

優希「おーまーたーせーだじぇ!」キキィ!

京太郎「おおう、わざわざ自転車で来たのかよ」

優希「遅れるわけにはいかなかったからな! 京太郎、待った?」

京太郎「いや、そんなには待ってないぞ。 せいぜい10分ってところだ」

優希「……はあ」

京太郎「なんだよ、そのわかってないって顔は」

優希「京太郎、こういう時は『俺も今来たところだ』って言うもんだじぇ……」

京太郎「なんでそんな漫画みたいな事をやらにゃいかんのだ……」

優希「デートの醍醐味の1つだろ、それは!」

京太郎「そんな大げさなもんじゃないっつうの。 ほら、こんなとこで問答してんのもアレだし早く遊ぼうぜ」

優希「うむ、それもそうだな! じゃあちょっと自転車置いてくるから待っててくれ!」


京太郎「了解……あっ、ちょっと待った」

優希「ん?」

京太郎「優希、確かここらで自転車借りられるところあったよな?」

優希「あったはずだけどそれがどうしたんだ?」

京太郎「いや、どうせだしさ俺も借りて一緒にサイクリングとかどうかって思ってな」

優希「ほほう……面白そうじゃないか」

京太郎「2人乗りの方がデートらしいんだろうけど、それだと怒られちゃうからな……」

優希「自転車の2人乗りは青春っぽいのに世知辛い世の中だじぇ」

京太郎「そういうなって。 じゃあ俺は自転車借りてくるからちょっと待っててくれよ」

優希「おう、わかったじぇ」

――……

優希「おー、なかなか速いじゃないか京太郎! だけど私相手だとまだまだだじぇ!」

京太郎「あんまり飛ばしすぎるなよー!」

優希「わかってるー!」

京太郎「それでどこに行くよー?」

優希「そうだなー……ちなみに咲ちゃんとはどこに行ったんだ?」

京太郎「映画だけど」

優希「他には?」

京太郎「いや、それが咲の奴眠そうだったから公園で膝枕して寝かせてやったら俺もつい一緒に寝ちゃってさ……」

優希「なぬっ!?」

優希(ひ、膝枕だと!? 咲ちゃんとはもうそこまで進んだっていうのか……やはり咲ちゃんは侮れない強敵だじぇ……!)

京太郎「優希?」

優希(咲ちゃんに勝つにはここで思い出に残るようなデートをしたいところだじぇ……だけどどうすれば……)

優希「うー、うー……!」

京太郎「なんか唸ってるし……落ち着くまで走っとくか」

優希「うーんうーん……」

――……


京太郎「あっ、そういえば……」キキィ

優希「んっ……京太郎?」キキィ

京太郎「優希、お前今月誕生日だったよな?」

優希「そうだけど……おぉ、なんだ、祝ってくれるのか?」

京太郎「おいおい、友達の誕生日祝わないほど薄情じゃないつもりだぞ俺は」

優希「……友達、か」

京太郎「……」

優希「まあ、今はそれでいいじぇ。 それでいったい何してくれるんだ京太郎!」

京太郎「ん、実はこの先にある喫茶店で誕生日限定のサービスやってるんだよ」

優希「サービス?」

京太郎「ああ、1つのメニューに限り半額になるんだよ……で、その店にはタコスがあr」

優希「ほら、何してる京太郎! 早くしないと置いていくぞ!」

京太郎「速っ!? ちょっと待てよ優希!」

優希「急がないとタコスがなくなるじぇー!」

京太郎「そもそもお前店の場所知らないだろ、待てっつうの優希ぃー!」

――……


カランカラン

「いらっしゃいませ、2名様でよろしいでしょうか?」

京太郎「はい。 それでこっちの子がもうすぐ誕生日なんですけどサービスお願い出来ますか?」

「かしこまりました、念のため証明出来るもののご提示をお願いいたします」

京太郎「優希、なんかないか?」

優希「えっと学生証でいいのか?」

京太郎「おう、これなら問題ないだろ……じゃあこれで」

「……はい、確認いたしました。 それではこちらのお席へどうぞ」


京太郎「ようやく一息つけたー……ったく、タコスって聞いただけで爆走しやがって」

優希「ふっ、血に刻まれたタコスへの本能が私を暴走させてしまったのだ……」

京太郎「お前はどれだけタコスに呪われてんだよ……」


「ご注文はお決まりでしょうか?」

京太郎「あっ、はい。 優希、タコスいくつ頼むんだ?」

優希「ふむ……それじゃあ5つ頼もうか!」

京太郎「はいよ、タコス5つとアイスコーヒー2……」

優希「?」

京太郎「……アイスコーヒーとカフェオレでお願いします」

「かしこまりました」

優希「京太郎、なんで今アイスコーヒー2つ頼もうとしてやめたんだ?」

京太郎「お前、タコス以外お子様舌だから甘い方がいいかと思ってな」

優希「バカにしてるのか! 私だってコーヒーくらいブラックで飲めるじぇ!」

京太郎「へえ、だったら俺のアイスコーヒーと交換するか?」

優希「望むところだじょ!」

京太郎(俺、別にブラックで飲むなんて言ってないんだけどな)

「お待たせいたしました、アイスコーヒーとカフェオレでございます」

優希「ほら、さっさと渡せ京太郎!」

京太郎「はいはい、じゃあカフェオレは飲ませてもらうからな」

優希「好きにしろ! そして見るがいい、この優希ちゃんが大人であるという証を!」チュー

京太郎「……」ゴクッ

優希「……」チュー

京太郎「ふう、甘くて美味しいな……」

優希「……」ピタッ

京太郎「優希?」

優希「苦ぁ……」ウルウル

京太郎「やっぱりダメだったか……ほら、カフェオレ返すから意地になってないでこっち飲め」

優希「ううっ……」ゴクゴクッ

京太郎「背伸びなんか似合わねえんだから、素直にしときゃいいのに」

優希「だって京太郎が私を子供扱いするから……」


京太郎「それはまあ、悪かったよ……お詫びに奢るからそれで勘弁してくれ」

優希「えっ、でも悪いじぇ……」

京太郎「いいんだよ、元々出すつもりだったし……デートなんだからこれくらいは格好つけさせてくれよ」

優希「あっ……わ、わかったじょ」

京太郎「サンキュ」

優希「お礼を言うのはこっちの方だじぇ。 ありがとうな京太郎!」

京太郎「……」

優希「ん? どうしたの?」

京太郎「いや、改めて礼とか言われるとなんつうか……」

優希「もしかして照れてるのか? あはは、京太郎にも可愛いところがあるじぇ!」

京太郎「う、うっさいわ!」チュー

優希「あはははは!」

京太郎「笑いすぎだろ、全く……」チュー

優希「……あれ?」

京太郎「なんだよ?」

優希(考えてみたら今京太郎が飲んでるアイスコーヒーはさっきまで私が飲んでたやつで……今私が飲んでるカフェオレはさっきまで京太郎が飲んでたやつ……)

優希「――――――!?!!??!?///」ボンッ

京太郎「ゆ、優希!?」

優希「あう、ああ、うう、あうあう……///」

京太郎「お、おい大丈夫かよ?」

優希(間接キスだ……この前出来なかった間接キスを私はやったんだじぇ!)

優希「な、なんでもない……///」

京太郎「いや、だけどお前」

「お待たせいたしました、タコスでございます」

優希「あっ、タコスが来たじぇ! ほ、ほら一緒に食べようじぇ京太郎!」

京太郎「お、おう……」

京太郎(何があったんだ……さっきまで普通だったのにすっげえ挙動不審になってる)

優希「タ、タコスうまー……」チラッ

京太郎「……?」チュー

優希「~~~~///」モジモジ

京太郎(マジでどうしたんだ優希は……)

――……


カー、カー……

京太郎「よっと……」キキィ

優希「きょ、今日は楽しかったじぇ!」

京太郎「そうか? タコス食いに行ってその後そこら辺走り回ってただけだぞ?」

優希「それでも、楽しかったものは楽しかったんだじぇ!」

京太郎「……まあ、俺も楽しかったけどさ」

京太郎(一緒にいて疲れるけど素直に楽しいって思える奴だよな優希って……)

優希「な、なあ京太郎?」

京太郎「ん?」

優希「わ、私は色々小さいし、苦手な事も多いけど……頑張るからな!」

京太郎「……はあ?」

京太郎(なんだ優希、いきなりわけのわからん事を言いだして……)

優希「と、とりあえずそれだけ! じゃあ私はこれにておさらばするじょ!」

京太郎「えっ、待てよ、家まで送……」

優希「だ、大丈夫だから!」シャー!

京太郎「あっ、優希……」

優希「またなー!」


京太郎「……行っちまった」

京太郎(なんか変だったな今日の優希は……正確に言えば喫茶店に入った後ぐらいからだっけか?)

京太郎「とは言っても喫茶店でだって優希が背伸びしたくらいしか変わった事は……」

京太郎「――あれ?」

京太郎(そういえば俺、アイスコーヒー飲む時確か……)

京太郎「……」

京太郎「………」

京太郎「…………」

京太郎「――――なるほど、間接キス、か」







京太郎「うおあああああああああっ!!?!?」





――……


咲「これでよし、と」

咲父「咲、まだ起きてたのか?」

咲「あっ、お父さん。 うん、色々準備しなきゃいけない事もあるし」

咲父「それにしてもまさか咲がなあ……こういうのはもっと先の話だと思ってたよ」

咲「お、お父さん! まだそうなるって決まったわけじゃないよ!」

咲父「でも咲はそうなってほしいんだろ?」

咲「うっ……そ、そうだけど」

咲父「まあ、俺はお前を信じるよ……照とだって和解できたお前だ、何もしなかった俺やあいつなんかよりはちゃんとやってけるだろ」

咲「お父さん……」

咲父「ああ、悪いな……それじゃあ頑張ってこいよ、咲」

咲「……うん、ありがとうお父さん」




咲「明日、か……」

――……


優希「……うん、まあそういう事だじぇ」

和『私の知らない間にそんな事になっていたんですか……須賀君も罪な人ですね』

優希「ごめんね、のどちゃん。 すぐに言うべきだったのに……」

和『気にしないでください。 元々私は話を聞くくらいしかしてませんから……』

優希「でも私はのどちゃんのおかげで頑張れるんだじぇ」

和『そう言ってくれると嬉しいですね。 そういえばゆーき、今まであった事と明日の事はわかりましたけど明日の準備などは終わっているんですか?』

優希「あっ」

和『ゆーき……』

優希「ご、ごめんのどちゃん! 私、明日の準備あるからもう切るじょ!」

和『ええ、そうしてください』

優希「今日も話を聞いてくれてありがとう、のどちゃん! じゃあまた明日!」

和『はい、また明日です』

優希「わあああ、急いで準備しなきゃー!」



優希「明日は新しい闘いの始まりだじぇー!」

――……


京太郎「……眠れねえ」

京太郎(まさか優希が気にしてたのが間接キスなんて乙女らしいというか何というか……)

京太郎「あんなに気にされたらこっちも恥ずかしいじゃねえかよ……」

京太郎「なんだか、こうして考えると咲も優希も見方変わってくるよな……」

京太郎「咲とは一緒にいてすごく落ち着く、優希とは一緒にいてすごく楽しい……」

京太郎「あいつら、まるで正反対なんだよな……なんでそんな2人が俺なんかの事好きになったんだか……」

京太郎「とりあえず明日からまた学校だ……俺も気合い入れないとな」





京太郎「そういえば明日から何かあったような……なんだったっけか?」

今回はここまで

時間がかかってしまい申し訳ありませんでした


咲11巻で京太郎と優希の会話があって、優希が他の人にはなかなか見せないジト目を京太郎に向けていただけで満足してしまう自分は訓練されているのだろうか

更新します


――告白から5日目……

京太郎「ふぁぁ……眠い」

須賀母「京太郎、おはよう」

京太郎「おはよう母さん」

須賀母「朝ご飯用意してあるから早く食べちゃいなさい」

京太郎「わかった」

須賀母「あっ、それと京太郎、私夕方には出るから留守番よろしくね?」

京太郎「ああ、そういえば今日から出張だったんだっけ……期間は1ヶ月だよな?」

須賀母「そう。 前にも言ったけど父さんは一週間くらいで戻ってくるはずだからその間は……」

京太郎「まあ、一週間くらいは1人で何とかする。 今日はバイトあるから出発は見送れないけど仕事頑張ってきなよ」

須賀母「ありがとう、京太郎も頑張ってね」

京太郎「また留守番くらいで大げさな……わかってるって」

須賀母「本当に、色々とね」

京太郎「……?」

――……

京太郎「いったい母さんのあの含みを持たせた態度はなんだったんだ……あんな顔をどっかで見た気がするんだけどな」

咲「京ちゃん、おはよー」

京太郎「おはよう、咲。 それと……」

優希「お、おはよう京太郎///」

京太郎「お、おはよう、優希……」

咲「あれ、何かあったの?」

京太郎「い、いや何もないぞ! なあ、優希!」

優希「そ、そうだじぇ!」

咲「怪しい……」ジトー

京太郎「うっ」

咲「……まあ、いいけどね」

京太郎「ほっ……」

咲「……あっ、そうだ京ちゃん」

京太郎「ん?」

咲「今度のデートはもっと楽しいのにしようね」ニコッ


優希「!?」

京太郎「」

咲「ね?」

京太郎「あ、ああ……そう、だな」

咲「えへへ、じゃあ今日も頑張っていこう! お弁当、今日も作ったからたくさん食べてね!」

京太郎「わ、わかった……」チラッ

優希「こ、今度ってなんだ、今度って、今度って……」ブツブツ

京太郎(うわあ、表情が赤から青に一気に変わった……なんて爆弾の投げ方だよ、しかもこれで天然だからたちが悪い……)

和「おはようござい……」

咲「あっ、和ちゃんおはよう!」

優希「……」ブツブツ

京太郎「……」ダラダラ

和「な、なんですかこの空気は……」

――お昼・部室……

京太郎「今日は部室でお昼か」

咲「い、いろんな場所があるからどんどんお昼試してみたいからね。 和ちゃんなんて学生議会室も狙ってるし……」チラッ

京太郎「そ、そうなのか?」チラッ

和「え、えぇ、まあ……」チラッ

優希「……」ブツブツ

3人(ふ、雰囲気が暗い……)

和「あ、あの……ゆーきはいったいどうしたんですか?」

京太郎「あー……何というか俺が悪いんだろうな、これ」

咲「えっ、京ちゃん何したの?」

和「須賀君、まさかゆーきを傷つけるような真似をしたんじゃ……」

京太郎「いや、それは……」

優希「……違うじぇ、のどちゃん。 これは私が浮かれてたところに冷や水かけられた気分なだけなんだ」

和「えっとつまり……」

優希「誰かが悪いとかそういう話じゃないんだじょ。 大丈夫、ちょっとしたら元に戻るから……」

咲「優希ちゃん……」

優希「だけど、私だけがこんな気持ちを味わうなど不公平……咲ちゃんも思い悩んでもらおうか!」

咲「えっ?」

優希「なあ咲ちゃん、昨日何があったか知りたがってたよな?」

咲「う、うん」

京太郎「ゆ、優希お前何を!?」

優希「ならば教えてあげるじぇ」


優希「私と京太郎は昨日、間接キスを達成した!」


咲「……へっ?」

優希「ふ、ふふ……今度またデートが出来ると油断したな咲ちゃん。 だが既に京太郎のファースト間接キスは私が頂いた後だじぇぇぇぇ!」

咲「そ、そんなあ……!」ガーン


京太郎「なんだよ、ファースト間接キスって……」

和「ゆーき……張り合うにしてもそれはないと思います」

優希「何とでも言うがいい! しかしこれで咲ちゃんからリードを奪ったじぇ!」

咲「う、うう……でもでも、初膝枕は私だよ! 京ちゃんに膝枕してあげたのもしたのも私が初めてだもん!」

優希「ぐうっ、それを言われたら……!」


京太郎「ちなみに咲、優希……俺はもう間接キスも膝枕もお前らとするはるか前にしてるからな?」

咲「」ピシッ

優希「」ピシッ


和「意外ですね、須賀君ってプレイボーイだったんですか?」

京太郎「いや、相手は母さんだけどな」

和「ああ、なるほど……」

優希「な、なんだ驚かすな!」

咲「ビックリしちゃったよ……」

京太郎「でも女の子はファーストキスとか夢見るけどさ、案外親が赤ちゃんくらいの時にやっちゃってたりするもんだよな」

咲「」

優希「うああ、それを言うな、女の子の夢を壊すんじゃなーい!!」

和「須賀君、さすがにそれは無粋ですよ」

京太郎「わ、悪い……ま、まあ、でもさすがにキスは親ならノーカンでいいかもな」

優希「はあはあ……そうしてくれなきゃ困るじぇ」

咲「……」

咲(そういえば昔……)

――……


咲『お姉ちゃん、大好き!』チュッ

照『わわ、随分おませさんだね、咲は……』

咲『えへへー』


――……


咲「ううっ、うぇぇ……」

京太郎「うお、どうした咲!?」

優希「ああっ、咲ちゃんが泣いたじゃないか! この愚か者!」

京太郎「お、俺のせいなのか!?」

優希「他に誰がいるんだ、誰が!」

和「さ、咲さん、しっかりしてください咲さん!」

咲「うぇぇぇん!」

京太郎「さ、咲落ち着け、泣き止んでくれ!」

優希「えっとえっとえっと……タ、タコス食うか?」

和「それは何の解決にもなってません!」

咲「うわあああんっ!」

――放課後・Roof-top……


京太郎「――という事がありまして。 なんとか泣き止んでくれたんですけどこれってやっぱり……」タンッ

久「須賀君、有罪」タンッ

まこ「左に同じく」タンッ

京太郎「……ですよねー」タンッ

久「当たり前でしょう、わざわざ女の子の夢であるファーストキスをそんな言葉で踏みにじるとかありえないわよ」タンッ

まこ「女心を理解できん奴はいつか刺されるかもしれんぞ」タンッ

京太郎「は、反省してます……俺としてはそんなものだから一々落ち込むなって言いたかったんですけど」タンッ

久「言い方ってものがあるでしょうが……須賀君、それロンよ。 11600ね」

京太郎「ぐあっ……」

まこ「で? 今日咲と優希が部活を休んだんはそのせいか?」

京太郎「あっ、それは違います。 なんでも用事があるらしくて元々休むつもりだったって」

久「ふうん、それに加えて和も家の用事で休んじゃって、だからまこも須賀君もこんな早くからここにいるわけか」

まこ「ところで今年受験生の誰かさんはここにいてええんか?」

久「いいじゃない、たまには息抜きしないと死んじゃうもの」スッ

まこ「来るんは構わんがあのツモしたら出禁じゃからな」

久「……ツモ。 2000、3900です」

まこ「わかればええんじゃ」

京太郎「あはは……」

まこ「京太郎も笑っとらんでシャキッとしんさい! そんな事だと新人戦もあっさり終わるぞ!」

京太郎「は、はい!」

おっちゃん(俺場違いじゃないかこれ……)

――夜・須賀家近辺……

京太郎「はあ……今日はいつにもましてキツかったな」

京太郎(竹井先輩も部長も徹底的に潰しに来るんだからまいっちゃうぜ……いや、根本的な原因は俺なんだけど)

京太郎「……あっ、そういえば今日から自炊しなきゃいけないんだった。 かといってスーパーはもう閉まってるだろうし、コンビニも微妙に遠いんだよなあ……」

京太郎「……冷蔵庫にあるもので適当に何か食うか」

京太郎「それにしてもいい匂いがするな……これから夕飯の家でもあるのかね」

京太郎「……ってあれ? なんで家の電気ついてんだ?」

京太郎「母さんはもう出たはずなんだけどな……つうかさっきからするいい匂い家からだ」

京太郎「いったいどういう事――」ガチャッ







   咲「――おかえりなさい、京ちゃん!」

   優希「――おかえりだじぇ、京太郎!」






京太郎「……」

咲「待っててね、今夕ご飯出来るから」

優希「それとも先にお風呂にするか? 今なら私が背中を流してあげるじぇ」モジモジ

咲「あっ、そんなのズルい! だ、だったら私も一緒に……」

優希「咲ちゃんはご飯の支度があるんじゃないのかー?」

咲「そ、それはそうだけど……」

京太郎「……」

咲「あれ、京ちゃんどうしたの?」

優希「京太郎、何を突っ立ったままでボーッとしてるんだ?」

京太郎「――すいません、家を間違えました」

ガチャッ、バタンッ……


咲・優希「……」

咲「ちょ、ちょっと京ちゃん!?」

優希「間違ってない、間違ってないじぇー!」

――……


京太郎「……で、これはどういう事だ?」

咲「実はね、一昨日京ちゃんのお母さんから電話があったの」

京太郎「母さんから?」

優希「うむ、どうやら今の私達の関係を知っていたらしくてな」

京太郎「マジかよ……」

咲「そこで1つ提案されたんだ」

優希「1ヶ月私達と京太郎の3人で生活をしてみないかってな!」

咲「というわけで私達……」

優希「今日からここに住む事になったじぇ!」

京太郎「なんだよ、それ!? 意味わかんねえし、第一なんだってそんな話に……」

咲「あっ、そういえば京ちゃんのお母さんから手紙を預かってるんだった……はい!」

京太郎「手紙?」カサッ






須賀母『京太郎へ。
きっとあなたがこの手紙を読んでいる頃母さんはおらず、代わりに2人の可愛らしい女の子が目の前にいるはずです。今のままのあなただと、このままズルズル答えを出せない気がするので勝手ながらお膳立てさせて頂きました。
2人のご家族にはキチンとこちらから話してありますのでそこは安心してください。
あなたがどちらを選ぶのか、それとも2人共愛するのかはわかりませんが悩んで考えて迷いぬいた末に出した答えなら私は応援するから。
それでは1ヶ月2人に迷惑をかけないようにしながら頑張るように!
      母より』

京太郎「……」

須賀母『P.S.
一昨日電話があったんだけど、父さんは仕事が長引くから私と同じくらいの期間帰れないからそこのところよろしくね!』
京太郎「……」


京太郎「……」

京太郎(ああ、そうか、これは夢か……きっと俺は色々衝撃的な事が重なって夢を見てるんだ)

咲「え、えっと……」

優希「京太郎……」

京太郎(で、この夢はいつになったら覚めるんだ? 俺としても早く飯食ったり風呂入ったりしたりしたいからさ、早く覚めてくれよ……)

咲・優希「ふ、不束者ですが、よろしくお願いします!」ペッコリン

京太郎(――ああ、ダメだ、無理。 現実逃避もここまでだ……だけど叫ぶくらい、許されるよな?)


京太郎「なんじゃそりゃあああああああああ!?」

本日はここまで



そういえばこの前初めて咲ソートをしたらこんな結果になりました

1…片岡優希
2…須賀京太郎
3…宮永咲
4…原村和
5…染谷まこ
6…竹井久
7…蒲原智美
8…夢乃マホ
9…龍門渕透華
10…東横桃子

15位くらいまで長野勢、上は全て清澄という……

どういうソート?

>>257
咲のキャラソートですね

遅めですが更新します

京太郎「……」モグモグ

咲「京ちゃん美味しい?」

京太郎「ああ……」

咲「よかった! おかわりもあるからどんどん食べてね!」

京太郎「ああ……」

優希「おかわりだ咲ちゃん!」

咲「うん、ちょっと待っててね」

優希「悔しいけどやっぱり美味しいじぇ……なっ、京太郎」

京太郎「ああ……」モグモグ

優希「……なんか上の空だじょ」

京太郎「……」モグモグ

京太郎(どうすりゃいいんだ、この状況……俺を好きって言ってる2人と1ヶ月同居しろとか母さんは何を考えてるんだよ……!)

咲「はい優希ちゃん」

優希「ありがとうだじぇ、咲ちゃん」

京太郎(つうか2人は今の状況をどう思ってんだ? 来たって事は嫌じゃないのはまあ、わかるけどよ……)


京太郎「なあ、2人に聞きたい事があるんだけど」

京太郎(だけどそんな事よりまず話し合わなきゃいけない事はたくさんある……)

咲「なにかな?」

優希「なんだ?」

京太郎「お前ら、どこで寝るとかそういうのは決めてるのか?」

京太郎(一緒に住むからには色々決めとかないとトラブルの元になるしな……)

咲「京ちゃんのお母さんは客間を使っていいって言ってくれたけど」

京太郎「客間ね……まあ妥当なところか」

優希「なんなら一緒に寝てあげてもいいじょ!」

京太郎「却下だ。 お前の寝相の悪さを考えたらまともに寝れやしない」

優希「つれないじぇ、京太郎」

京太郎「とにかく一緒に暮らすからには色々とルールを決めとくべきだろうし、飯終わったら話し合おうぜ」

咲「そうだね、そうしようか」

京太郎「……ところでおかわりいいか?」

咲「うん!」

優希「むう……」


――……

京太郎「……さて、寝る場所はもう決まってるみたいだから他には風呂の順番とかだな」

咲「京ちゃんの家なんだから京ちゃんが最初じゃダメなの?」

京太郎「俺は男だから最後に入るよ。 2人は客なんだしな」

咲「いいのかなあ……」

優希「はっ、まさか京太郎……私や咲ちゃんが入った後のお湯で何かするつもりなのか!?」

咲「ええっ!?」

京太郎「んなわけないだろうが! とにかく俺は最後に入るから2人で順番どうするか決めといてくれ!」

咲「う、うん……」

京太郎「じゃあ次は家事だけど……まあ、これは俺がやっとくから気にしなくていい」

咲「えっ、でも……」

京太郎「さっきも言ったけど2人は客なんだし、何かやらせようとは思わねえよ」

優希「うーん、さすがにそれは悪い気がするじょ……」

咲「そうだよ、私達に出来る事なら手伝うから京ちゃん1人でやる必要はないよ」

京太郎「……わかったよ。 じゃあ炊事は咲と俺との当番制って事でいいか?」

咲「うん、まかせて!」

優希「ちょっと待て! なんで私が最初から外されてるんだ!?」

京太郎「じゃあ聞くけどな優希、お前タコス以外の料理出来んの?」

優希「……」

京太郎「……」

優希「タ、タコスなら負けないじぇ……」

京太郎「じゃあ咲、明日は俺がやるから」

優希「うわあああん! 咲ちゃん、京太郎が私を虐めるじょ!」

咲「あ、あはは……」

京太郎「まあそう嘆くな、優希にもちゃんと仕事があるから」

優希「なに、本当か!」

京太郎「洗濯を頼む」

優希「洗濯?」

京太郎「さっき気づいたんだけどよ……ほら、女の子の服とか俺がやるよりはいいだろ?」

咲「ああ、そうだね……確かにその方がいいかも」

優希「なんでだ?」

京太郎「えっ」

優希「いや、やるのは構わないけど、なんで京太郎だと問題なんだ?」

京太郎「そ、それは……」

咲「ゆ、優希ちゃん……」

優希「なあなあ、なんでなんだじょ」

京太郎「と、とにかくそういう事だからまかせたぞ優希! まだ話し合う事もあるけど、俺はカピの所に行くから2人はお風呂先に入っといてくれ!」ガチャッ、バタンッ

優希「あっ、京太郎」

咲「……逃げたね京ちゃん」

優希「あんなに慌てて変な奴だじぇ……どうする咲ちゃん」

咲「お言葉に甘えてお風呂入っちゃおうか……私はお皿洗ってるから優希ちゃんが先でいいよ」

優希「それくらいなら私も手伝うじぇ! さっさと終わらせて一緒にお風呂に入ろうじゃないか咲ちゃん!」

咲「本当? ありがとう優希ちゃん」


――京太郎の部屋……


京太郎「なあカピ、大変な事になっちまったよ」

カピ「キュー?」

京太郎「まさかこんな事になるなんて。 なんだかんだで長引きそうな問題かなって思ってはいたけどだからといってこんな強硬手段に出るか、普通……」

カピ「キュー」

京太郎「そりゃ俺がはっきりすればすむ話なんだろうけど……はあ」

カピ「キュー」スリスリ

京太郎「はは、慰めてくれてサンキュー、カピ。 愚痴っちゃって悪かったな」

カピ「キュー」

京太郎「そうだ、もうこうなっちまったもんはしょうがないんだ。 だったら頑張って順応しないとな」

カピ「キュー!」

京太郎「さて、ちょっくら気合い入れていくとしますか!」


――……

咲「京ちゃん、お風呂空いたよー」

京太郎「おう、わかった」

優希「ぷはあ、やっぱり風呂上がりのフルーツ牛乳は最高だじぇ!」

京太郎「いつの間に用意したんだ……まあ、いいや。 じゃあ風呂行ってくる、眠かったら寝ちゃっていいからなー」

咲「はーい」

優希「んー」

ガチャッ、パタンッ

優希「……よし、じゃあ私は行くじぇ」

咲「えっ、もう寝るの?」

優希「なに言ってるんだ咲ちゃん。 こういう時にやる事は1つと相場が決まってるじゃないか」

咲「えっ、もしかして……」







優希「宝探し、だじぇ」ニヤッ






――京太郎の部屋……


優希「おじゃましまーす……おお、ここが京太郎の部屋。 なかなかどうして綺麗に片付いてるじゃないか」

咲「ゆ、優希ちゃんさすがにマズいよ……京ちゃんにバレたら怒られちゃうってば」

優希「じゃあなんでついてきたんだ咲ちゃん……」

咲「そ、それは……」

優希「まあ怒られるのが怖いなら咲ちゃんは引き返せばいいじょ。 私は京太郎の好みを知るためあえて死地に飛び込む!」

咲「好みって……京ちゃんの読んでるそういう本なんてどうせ大きい胸の女の人ばっかりの本に決まってるよ……」


優希「確かにそうだろう。 しかし咲ちゃんは本当に京太郎の好みがそれだけだと思うか?」

咲「えっ?」

優希「大きい胸はまあ、今の私には手に入らない代物だじぇ。 だけど他にも京太郎の好みがあってそれが私に出来る事なら……」

咲(そ、そうか、京ちゃんの他の好みから攻めるって考え方もあるんだ……どうせ京ちゃんは胸しか見てないと思ってたけどそういう事なら!)

優希「京太郎だって大きなおっぱいだけにかまけてるはすが……あれ、咲ちゃん?」

咲「えっと、ここじゃないか……」ガサゴソ

優希「ノリノリじゃないか咲ちゃん……って、早く私も探さないと!」

――……

咲「なんで……全然見つからないよ」

優希「おかしいじぇ……まさか京太郎がそういう本を一冊も持ってないなんて事はありえないはずだし」

咲「どうしよう、たぶん京ちゃんそろそろお風呂から出てくるよ……」

優希「ちぃっ、今回は一時撤退して明日また探すしかないか」


京太郎「探すって何をだ?」


優希「決まってるじゃないか、京太郎のお宝、本……」

咲「あ、あああ……」

京太郎「なあ何してるんだ、2人共?」

優希「きょ、京太郎……」

咲「あの、これは、その……」

京太郎「……さっさとリビングに戻れやこらー!」

咲「ご、ごめんなさーい!」

優希「ま、待ってくれ咲ちゃーん!」

京太郎「はあはあ……ったく、油断も隙もありゃしない」

京太郎「……」キョロキョロ

京太郎「見つかりはしなかったみたいだけど一応場所移動させとくか……」ゴソゴソ



――……

京太郎「……」

咲「あ、あの京ちゃん……」

優希「京太郎……その」

京太郎「……」

咲「ご、ごめんなさい!」

優希「ごめんだじぇ、京太郎……」

京太郎「はあ……」

咲・優希「!」ビクッ

京太郎「そんな謝らなくていいよ、なんか俺が悪い事してる気分になる」

咲「ゆ、許してくれるの?」

京太郎「まあ実害はなかったしな。 もうこれ以上は何も言わねえよ」

優希「よ、よかった……」

京太郎「それに元々絶対見つからない場所にあるしな。 お前らが何回探そうが無駄な努力ってやつだ」

咲「むっ……」

優希「そう言われるとなんか絶対に見つけてやりたくなるじぇ……」

京太郎「いいぜ、俺がいない間なら家捜しでも何でも好きにすればいいさ。 掃除代わりになるし俺にとっても万々歳だ」

咲「言うね京ちゃん……いいよ、そこまで言うなら絶対に見つけだしてやるんだから!」

優希「後悔してももう遅いからな!」

京太郎「へいへい、せいぜい頑張ってくれ」

咲「むうっ……!」

優希「なんかムカつくじぇ……!」

京太郎「んな事よりさ、せっかく三人いるんだから麻雀やろうぜ麻雀」

咲「えっ、でも卓ないよ?」

京太郎「マットと牌はあるから手積みでやろう」

優希「手積み……ふふふ、京太郎は命知らずだじぇ」

京太郎「は?」

優希「手積みという事はいわゆるイカサマし放題の無法地帯! ただでさえ弱い京太郎がイカサマまでありになったら搾取されるだけの銀行状態になるに決まってるじぇ!」

咲「優希ちゃん……」

京太郎「……あのな優希、イカサマやりますってあらかじめ宣言するアホがどこにいるんだよ」

優希「えっ」

咲「そんな事言われたら優希ちゃんの動きをずっと注目するよね……」

京太郎「何かやろうものなら徹底的に指摘してやるから覚悟しろよ」

優希「え、ええっと……」

咲「じゃあ始めよっか京ちゃん」

京太郎「おう。 あっ、イカサマ宣言してる誰かさんは洗牌に参加するなよ」

優希「あっ、うん……」

――……

優希「……」チャッ

咲「……」ジー

京太郎「……」ジー

優希「ううっ……」タンッ

咲「あっ、それロンだよ」

優希「じょ!?」

京太郎「やっぱり咲は強いな……」ジャラジャラ

咲「でもいつもより嶺上開花しにくいし、自動卓に慣れちゃったら手積みだとちょっとやりにくいかも」ジャラジャラ

優希「……」

京太郎「よし準備完了、次行くぞー」

咲「うん」

優希「……」チャッ

咲「……」ジー

優希(や、やりにくいじぇ……)チラッ

京太郎「……」ジー

優希「え、う……///」

優希(あんなに見られたら、恥ずかしいじょ……早く牌切らないと)タンッ

京太郎「優希」

優希「……?」

京太郎「ロン、倍満だ」

優希「うえっ!?」

咲「これで優希ちゃんのトビ終了だね」

優希「うう……もうこんなの嫌だー!」

――京太郎の部屋……

京太郎「ふうっ……今日は疲れた。 よく眠れそうだぜ……」

京太郎「……明日からしばらくは咲と優希と一緒に生活するのか」

京太郎「……」ゴロン

京太郎「……」モゾモゾ

京太郎「……眠れねえ」

京太郎「自分の家に女の子がいるってこんなに緊張すんのかよ……」

京太郎「もしかして咲達も同じ感覚なのか……?」

京太郎「っ、バカな事考えてないで寝ろ、俺……!」

――客間……

咲「……」コロコロ

咲「……」パタパタ

咲「……」ギュッ

咲「緊張して眠れないよ……一緒の家に京ちゃんがいるってだけでドキドキしちゃう……」

咲「京ちゃんも、少しは私と同じでドキドキしてくれてるかな……」

咲「してくれたら、いいな……」

咲「京ちゃん……」




優希「くかー……もうタコス食べらんない……なんて事はないじぇ……むにゃむにゃ」

今日はここまで

以下余談

今週は色々ありましたね

部長のアドバイスに従うだけじゃなくて頭を使う優希だとか、爆発漫ちゃんだとか、ガイトさんが完全に極道の娘にしか見えなかったりだとか、ヤミチン誤植だとか
成香ちゃん可愛いので、すごいナデナデしたいです

男子インハイに関してはやり玉に上げられる泉ちゃんお気の毒としか言いようが……京太郎はハードル下がっただけでなんも実害ありませんし

余談終わり

それではおやすみなさい

少々停滞しちゃいましたね、すいません
更新します

――共同生活1日目朝・須賀家……


優希「咲ちゃん起きろー!」

咲「ふあ……?」

優希「咲ちゃん、おはようだじぇ!」

咲「んー……おはよう優希ちゃん」

優希「どうしたんだ咲ちゃん、眠そうだけど眠れなかったのか?」

咲「あはは、京ちゃんの家にいるんだなって思ったらなかなか寝つけなくて」

優希「そんなものなのか。 私はむしろ京太郎の家だから落ち着いて眠れたじぇ!」

咲「羨ましいなあ」

優希「ほらほら、早くしないと学校に遅れるじぇ。 京太郎起こしに行こう咲ちゃん!」

ガラッ

京太郎「その必要はねえよ」

カピ「キュー」

優希「なんだ京太郎、もう起きてたのか?」

咲「京ちゃんおはよう、随分早いんだね」

京太郎「おう、おはよう咲。 今日の炊事は俺担当って言っただろ? だから朝飯作ってたんだよ」

京太郎(まあ、ほとんど寝てないだけなんだけどな……)

咲「京ちゃんのご飯かあ……考えたら全国で作ってくれたタコスくらいしか食べた事なかったっけ」

優希「それじゃあ京太郎のお手並み拝見といこうか!」

京太郎「作れない奴が偉そうに言うなっつうの! ほら、2人共さっさと顔洗って歯みがいてこい。 咲なんてよだれ垂れてるぞ」

咲「えっ……や、やだ! 京ちゃん見ないでぇー!」

京太郎「おいおい今さらだろ……お前が昼寝してるのを起こしに行く度に、俺はお前がよだれ垂らして寝てるだらしない寝顔を見てきたんだからよ」

咲「ううう……もう私顔洗ってくる!」タタタッ

優希「おいこら京太郎、咲ちゃんをいじめるんじゃない!」

京太郎「別にいじめてねえし。 ほらお前も行ってこいよ」

優希「後で覚えておけよ!」

京太郎「あっ、優希」

優希「なんだじぇ!」

京太郎「おはよう」

優希「……へっ?」

京太郎「ゴタゴタで忘れてた。 一緒に暮らす以上挨拶は大事だからな」ニッ

優希「……」

京太郎「優希?」

優希「……お、おはよう京太郎」

京太郎「お、おう」

優希「……わ、私も顔洗ってくるじぇ!」タタタッ

京太郎「……ったく、いきなりしおらしくされたら調子狂うっつうの」スタスタ

カピ「キュー」トコトコ

――……


京太郎「あんま時間なかったから軽いものしか作れなかったけどいいよな?」

咲「うん、大丈夫だよ」

優希「お腹減ったから早く食べようじぇー!」

京太郎「……よし、じゃあいただきます!」

咲「いただきます!」

優希「いただきますだじぇ!」

カピ「キュー」


咲「美味しい……美味しいよ京ちゃん!」

京太郎「はは、サンキュー。 トーストにハムエッグだからあんま自慢にはならないけどな」

優希「まあそんなに卑下しなくてもいいじぇ。 京太郎にしては上手く出来てると思うぞ!」

京太郎「なんか優希の言い草だと素直に喜べねえな……」

優希「褒めたのにそれはあんまりだじぇ!」

咲「あはは」

京太郎「でも自分でトーストにしといてあれだけど朝はパンよりご飯だよなあ」

咲「だったら明日はご飯で作るね!」

京太郎「あっ、なんか要求したみたいで悪い……」

咲「もう、そんなに気にしないでいいよ京ちゃん。 一緒に暮らしてるんだから助け合わなきゃ!」

京太郎「咲……ありがとうな」

優希「むっ……わ、私にも頼っていいんだからな京太郎!」

京太郎「あー……気持ちだけありがたくいただいとくわ」

優希「なんかさっきから咲ちゃんと扱いが違わないか!?」

京太郎「気のせいだ気のせい」

優希「うがー!」

咲「優希ちゃん、どうどう……」

――……

3人「ごちそうさまでした!」

カピ「キュー」

優希「制服に着替えてくるじぇ!」

咲「私も急がないと……」

京太郎「あっ、その前に……2人にこれを渡しとくな」

咲「鍵?」

京太郎「家の合い鍵。 俺バイトしてて帰るの遅くなる時もあるからさ、ないと困るだろ?」

優希「京太郎の家の鍵……喜んで貰うじぇ!」

咲「な、なんだろう、すごく嬉しい……えへへ」

京太郎「そんなに喜ばれると照れるな……まあ落としたり忘れないようにしてくれよ、特に咲」

咲「だ、大丈夫だよたぶん……」

京太郎「悪いが信用ならん」

咲「そんなぁ……」

京太郎「というわけで、咲には追加でこれを渡しておく」チャラ

咲「キーホルダー?」

京太郎「一筒の麻雀牌をモチーフにした龍門渕製キーホルダー。 鈴付きだから落とした時すぐ気付くってやつだ」

京太郎(実はそれだけじゃないんだけど、まあそれは言わなくていいか)

咲「プレゼントは嬉しいけどその理由を考えたら複雑だよ……」

優希「いいなー、咲ちゃん……京太郎、私にはないのか?」

京太郎「えっ、でもお前ならなくさないだろ」

優希「そ、そんなのわからないじょ!」

京太郎「うーん……じゃあ念のために東の牌をモチーフにしたやつを後で渡しとくわ」

優希「やったじぇー!」


京太郎「おっと、話してる間に時間も押してきたな。 俺は皿洗っとくから2人は着替えてきな」

優希「おぉ、そうだ急がないと遅刻だ遅刻ー!」

咲「ま、待ってよ優希ちゃーん!」

京太郎「忙しないこって……さて、さっさと皿洗って俺も準備するか」

京太郎(一応夕飯も何にするか考えとかないと……どうせ優希はタコス一択だろうから後で咲にリクエスト聞いとくとして……内容によっては本屋でレシピ本買ってこないとな)


――……


京太郎「忘れ物ないかー?」

咲「うん、大丈夫だよ!」

優希「問題ないじぇ!」

京太郎「よし、じゃあ行くか。 カピ、留守番よろしくな」

カピ「キュー」

3人「いってきます!」
カピ「キュー!」

京太郎「うーん……風が気持ちいいな」

咲「うん、それに今日もいい天気だねー」

優希「天気予報で言ってたけどしばらく雨はないらしいじょ。 京太郎と咲ちゃんは晴れと雨どっちが好きだ?」

京太郎「俺は晴れかなあ……」

咲「うーん、私も晴れの方がいいけど、でも雨も嫌いじゃないかな」

優希「どうしてだ?」

咲「晴れだと外でひなたぼっこしながら本読めるし、雨の日も雨音聞きながら静かに本読めるし……」

優希「……咲ちゃんの文学少女っぷりには脱帽だじぇ」

咲「そ、そうかな?」

京太郎「いや、たぶん褒めてはいないぞ……」

優希「あっ、天気といえば咲ちゃん知ってるか?」

咲「えっ、何を?」

優希「のどちゃんの事なんだけど……ちょっと耳を貸してほしいじょ」

咲「う、うん」

優希「……」ゴニョゴニョ

咲「えっ、えぇっ!?」

京太郎「どうした咲? 優希はなんて言ったんだ?」

咲「えっと……ご、ごめん、京ちゃんにはちょっと……」

優希「ええい、女の子の秘密の会話に入るんじゃない!」

京太郎「なんなんだよ……あっ、和だ」

咲「ふえっ!?」

和「おはようございます」

京太郎「おっす、おはよう和」

咲「お、おはよう和ちゃん」

優希「おはようのどちゃん! 今日も大きなおっぱいで何よりだじぇ!」

和「わ、わけのわからない事を言わないでください! 須賀君、ゆーきは迷惑をかけていませんか?」

京太郎「まあ、今のところは大丈夫……ってあれ、和知ってたのか?」

和「ゆーきがそれはもう嬉しそうに電話をかけてきましたから。 咲さんも一緒という事なので私としてはあまり口を出すつもりはありませんから安心してください」

京太郎「そうか、ありがとな」

和「ふふっ、別に感謝されるような事はしてませんよ」

咲「……」ジー

和「咲さん? 私の顔に何かついてますか?」

咲「えっ!? あっと、えっと……ね、ねぇ和ちゃん?」

和「なんでしょうか」

咲「私ね、和ちゃんの事大切なお友達だと思ってるんだ」

和「い、いきなりですね……ありがとうございます」

咲「だからね、だから……」


咲「――雨の日に服が透けて色々見えちゃった時には力になるからね!」

和「…………はい?」

優希「あ」

京太郎「……もしかしてさっきのってこれか?」

咲「の、和ちゃん、前に雨で服が透けちゃって大変だったんだよね?」

和「……」

優希「……」カタカタ

咲「和ちゃん可愛いからきっと視線とか怖かったと思う……だからもしまたそうなったら私頑張って和ちゃんを助けるよ!」

和「……」プルプル

咲「和ちゃん?」

優希「抜き足差し足忍び足……」ソー…

和「……どこに行くんですか、ゆーき」

優希「」ビクッ

和「私はあなたに言いましたよね……むやみやたらにあの話をしないで、と確かに言いましたよね……?」

優希「は、はひ……」

和「ゆーき……」ゴゴゴゴゴ

優希「……に、逃げるが勝ちだじぇー!」タタタッ

和「待ちなさいゆーき! 今日という今日は許しませんよ!!」タタタッ

京太郎「あーあ……何してんだあいつは」

咲「ゆ、優希ちゃん大丈夫かな?」

京太郎「さあな」


ツカマエマシタヨ、ユーキ!

ゴ、ゴメンナサイ、ノドチャーン!


京太郎「うん……ダメだったみたいだな」

――お昼休み……

優希「ううっ、頭が痛い……もうテストはやだあ……」プスプス

咲「だ、大丈夫?」

和「全くゆーきはろくな事をしないんですから……」

京太郎(和って怒るとあんなに怖いのか……肝に銘じておこう、うん)

優希「こういう時はタコスを食べるに限る……というわけで買ってくるじょ」

咲「あっ、私もお昼ご飯買ってこなきゃ」

京太郎「ちょっと待った2人共」

優希「なんだ京太郎、私は急いでるんだから手短に頼むじぇ」

京太郎「ほらよ」

咲「えっ」

京太郎「ちゃーんと作ってきたぜ、2人の分の弁当」

優希「なぬっ!?」

咲「きょ、京ちゃん、そこまでしてくれたの?」

京太郎「どんなのにするか迷っちまったから優希にはタコス、咲にはおにぎりだけどな」

優希「京太郎……さすが私の婿だじぇ!」

咲「そ、それは違うよ優希ちゃん! 京ちゃんは私の、その……」

和「……とりあえず食べませんか?」

京太郎「そうだな、ほら2人共突っ立ってないで座った座った」

優希「はーいだじぇ」

咲「うん!」

和(しっかり両隣を確保してますね咲さんとゆーき……涙ぐましい努力です)

咲「京ちゃん、このおにぎり丸いよ……」

京太郎「すまん、コツが掴めなくて三角に出来なかった」

咲「わ、私はかわいくて好きだよこういうの。 それじゃあいただきます」

京太郎「おう、数だけはあるからたくさん食べてくれ」

優希「タコスうまー」ムシャムシャ

京太郎「ほらほら、そんな急いで食べたらこぼすぞ」

咲「美味しい……♪」モキュモキュ

和(しかしこうして見ると……とても須賀君を巡って2人が争っているようには見えませんね)

京太郎「和も一個どうだ?」

和「いいんですか?」

京太郎「咲にも言ったけど数だけはあるからな」

和「それではお一ついただきますね」

京太郎「ああ」

和(まあ、そうでもないと私がこうして同席するなんて、とてもではありませんが出来ませんか)

優希「私もおにぎりもーらい!」

京太郎「お、おい、俺の分は取っておけよ!?」

咲「えへへ……」モキュモキュ

和(……やはりいいですね、こうして友達と一緒にご飯を食べるのは)


和「あっ、美味しい……」

今回はここまで

清澄一年組4人の話はもっと増えてほしい今日この頃
だけど4人共どこか天然ボケ属性だからツッコミが足りない気もする今日この頃

放置してすいませんでした
投下します

――放課後……

和「それでは私はここで」

優希「のどちゃんまた明日ー!」

咲「また明日、和ちゃん」

京太郎「また明日な」

和「はい、また明日」スタスタ

京太郎「さて、今日の夕飯は気合い入れて作るとしますか!」

咲「お昼は美味しかったから楽しみだなあ」

京太郎「おいおい、ハードル上げるのは勘弁してくれよ?」

咲「大丈夫、京ちゃんを信じてるから!」

京太郎「だからそういうのをだな……」

優希「いざという時は毎食タコスを作れば問題ない!」

京太郎「それはお前だけだろ!」

咲「私も毎食はちょっと……」

優希「なぜだ!?」

京太郎「優希、世の中はお前みたいにタコスだけで生きていける人間じゃないんだよ」

優希「むっ……失礼な、私だってタコスだけあれば生きていけるわけじゃない!」

京太郎「へぇ、じゃあ後はなんなんだよ?」

優希「えっと、タコスと麻雀とたこ焼きとタコスと……あれ、タコスはもう言ったっけ……」

京太郎「もういい、もういいから……」

優希「最後まで聞け! それと部長と染谷先輩とのどちゃん、咲ちゃん、そして京太郎!」

咲「へっ?」

優希「他にも色々あるけど、私にとって麻雀部の皆は大切なものでなくてはならないものだ! 仲間で友達で、その……好きな人だからな!」

京太郎「うっ……」

優希「な、なんだか言ってて恥ずかしくなってきたじぇ……京太郎のせいだじょ!」

京太郎「なんでだよ!?」

咲「……私も」

優希「咲ちゃん?」

咲「私も優希ちゃんと一緒かな……みんながいなかったら自分がどうなってたかわからない……それくらい麻雀部は大切でかけがえのないものだって思うよ」

京太郎「咲……」

咲「あはは、改めて言うと照れちゃうね……」

優希「全くだじぇ……」

京太郎「……」

咲「京ちゃんは、どうかな?」

京太郎「……俺も、同じだ。 麻雀部のみんな、お前ら2人も含めて大切な仲間だって思ってるよ」

咲「そっか……」

京太郎「……つうかさ、夕飯の話からなんでこんな話になってんだよ!」

優希「おぉ、そういえばそうだった……じゃあ今日の夕飯はタコスで決定だな!」

京太郎「どうしてそうなる!?」

咲「あはは……あっ、家に着いたよ」

京太郎「おっ、本当だ……鍵、鍵と……」ガチャッ

カピ「キュー!」トコトコ

京太郎「ただいまカピ、いい子にしてたかー?」

カピ「キュー」

京太郎「よしよし……ほら咲、優希も」

咲「えっ?」

優希「ん?」

京太郎「カピにただいまって言ってあげてくれ。 しばらくはここが2人の帰る家だからな」

咲・優希「……!」

京太郎「な?」

咲・優希「……うん、ただいま!」

カピ「キュー!」

京太郎「おかえり、だってさ」

――夜・須賀家……

京太郎「んー……味はこんなもんか? 本の通りにはやってみたけどどうせなら第三者に味見してほしいな……」

優希「味見が必要と聞いて来たじぇ」

京太郎「どわっ、いきなり出てくんなよ! でもちょうどいい、味見してみてくれ」

優希「おう、まかせろ!」

京太郎「……どうだ?」

優希「うーん、ちょっと味が薄い気がするじぇ」

京太郎「ふむ、じゃあ少し調味料足すか……ああ、その前に一応咲にも味見してもらおう、咲ー!」

咲「なぁに京ちゃん」

京太郎「ちょっと味見してくれないか?」

咲「うん、いいよ」

京太郎「どうだ?」

咲「えっと、ちょっと味が濃いんじゃないかな……」

優希「えっ、咲ちゃんは薄く感じないのか?」

咲「う、うん」

京太郎「好みの味が結構違うんだな……別々に鍋用意して味付け変えるか」

咲「な、なんか手間かけさせちゃってごめんね」

京太郎「気にすんなって。 いつも世話になってる分こういう事で返させてくれよ」

咲「……ありがとう、京ちゃん」

京太郎「いいって事」

優希「……」

優希(うむむ……私も少し料理勉強しようかな……)

――……

咲「ごちそうさまでした」

優希「満腹だじぇー……」

京太郎「上手くできてたみたいでなによりだ。 じゃあ俺は洗い物してるから2人は風呂入ってきちゃえよ」

咲「うん、行こうか優希ちゃん」

優希「動きたくないじぇー……」

咲「でも私達が入らないと京ちゃんがお風呂入れないんだよ? ほら、行こう」

優希「うー、わかったじょ」

京太郎「全く何してんだか……でもあの様子なら今日は部屋を漁られずに済みそうだな」カチャカチャ

カピ「キュー?」

――……

咲「京ちゃんお風呂空いたよー」

京太郎「おう」

優希「んにゃー……」

京太郎「なんだなんだ、優希の奴具合でも悪いのか?」

咲「そうじゃないんだけどすごく眠いみたい」

京太郎「なんで昨日一番グッスリ寝てたはずの優希が寝不足の俺達より眠そうなんだ……」

咲「あはは……ほら、寝溜めは出来ないって言うし」

優希「んう……」

京太郎「大丈夫か優希、なんなら俺が布団まで運ぶぞ?」

優希「本と……!」

京太郎「んっ?」

優希「……んーん、大丈夫だじぇ……」

京太郎「そうか? 辛かったらちゃんと言えよ?」

優希「うん……」

京太郎「咲、俺は風呂行くから優希の事よろしく頼むな」

咲「うん、任せて」

京太郎「サンキュ」スタスタ…

優希「……行ったか咲ちゃん?」

咲「う、うん」

優希「うあああ、なんだか上手くいったのにせっかくのチャンスをふいにした気分だじぇ!」

咲「優希ちゃんが眠そうなフリをして京ちゃんを油断させるなんて考えるからだよ……」

優希「くくく……この鬱憤は京太郎のお宝を見つけ出すことで晴らしてやるじぇ……!」

咲「それ八つ当たりじゃ……」

優希「やってやるじぇ!」

咲「聞いてないよ……」ガクッ

――京太郎の部屋……

優希「こちらタコス、ターゲットの部屋に潜入した、どうぞ」

咲『え、えっと、こちらリンシャン、京ちゃんは鼻歌を歌いながらお、お風呂に入ってます、どうぞ』

優希「OK、さすが咲ちゃ……じゃなくてリンシャンだじぇ」

咲『うう、なんか恥ずかしいよ……すぐ近くで京ちゃんが、京ちゃんがあ……』

優希「落ち着くんだリンシャン! 全ては京太郎の好みを知るため、一時的とはいえ私達は協力関係なんだからチームワークが大事だじょ!」

咲『う、ううっ……わ、わかったよ。 恥ずかしいけど私頑張ってみる』

優希「それでこそ咲ちゃんだじぇ」

咲『もう変なアレで呼ぶのやめたんだね……それでどうするの?』

優希「私が目標物を探すから、咲ちゃんは京太郎の見張りと京太郎が隠し場所に選びそうなところを教えてほしいじょ」

咲『わかったよ……ところで優希ちゃん、この通信機だっけ? どこから持ってきたの……?』

優希「昨日京太郎の部屋をガサ入れした時に見つけたんだじぇ」

咲『い、いつの間に……』

優希「細かい事は気にしちゃダメだじょ。 そんな事よりミッションスタートだじぇ!」

咲『う、うん!』

――……

咲『京ちゃんはたぶん隠し方はあまり凝ってないと思うんだ』

優希「ふむふむ」ガサゴソ

咲『だから辞書のケースの中とかベッドの下とかベタな所に隠してる可能性が高いんだけど……』

優希「昨日探したけどそこにはなかったじぇ」

咲『うん、そうなんだよね……だから私も見当がなかなかつかなくて』

優希「うーむ……あれ?」

咲『どうしたの優希ちゃん?』

優希「クローゼットの上に変な隙間がある……あっ、板が取れたじぇ」

咲『ええっ!? こ、壊しちゃったの?』

優希「いや、これは新しくつけたっぽい……あっ、棚があるじぇ!」

咲『京ちゃん、そんな事してたんだ……それで何かあった?』

優希「何もない……埃はないからどこかに移動させたのかも」

咲『ふりだしに戻っちゃったね……』

優希「うー、いったいどこに隠したんだー!」ゴロゴロ

咲『ゆ、優希ちゃん、暴れたらダメだよ』

優希「……」

咲『優希ちゃん?』

優希「あった」

咲『へっ?』

優希「ベッドの下に……本、あった」

咲『えっ、でも昨日は確かに……』

優希「きっと、私達を追い出した後ここに移動させたんだじぇ。 普通は最初に探したここをまた探さないからな」

咲『な、なるほど……』

優希「でも残念ながら私達は見つけ出した……私は今からこのブツを回収して部屋に戻るじぇ」

咲『わかった、京ちゃんもそろそろ出てきそうだから急いでね』

優希「了解だじぇ……うーん、手が、なかなか届かないじぇ……!」

咲『頑張って、優希ちゃん!』

優希「こんのおおおお……!」

ガシッ!

優希「よし、掴んだ!」

咲『やったね優希ちゃん! あ』

優希「へへ、ミッションコンプリートだじぇ! 咲ちゃん、もうそこから移動していいじょ」

『……』

優希「咲ちゃん?」

京太郎『――ずいぶん楽しそうな事してたんだな、優希』

優希「えっ」

京太郎『確かに挑発まがいの事はしたけど昨日の今日でやるとは思ってなかったぜ……下手な芝居までしやがってよ』

優希「きょ、京太郎!? お、お前咲ちゃんはどうした!?」

京太郎『咲? ああ、咲なら逃げたぞ』

優希「」

京太郎『でだ、優希』

ガチャッ……

優希「……」

京太郎「覚悟、出来てんだろうな?」

優希「……戦略的撤退だじぇぇぇ!」

京太郎「うわっ……逃がしたか」

――須賀家・客間……

優希「はあ、はあ……」

咲「ゆ、優希ちゃん大丈夫だった?」

優希「なんとか逃げ出せたじぇ……だけどコレはちゃんと持ってきた!」ジャーン!

咲「これが京ちゃんの隠してた本……」

優希「カバーがかかってるから中身はまだわからないけどな! 咲ちゃん、早速読もう!」

咲「う、うん、なんだか緊張しちゃうな……」ドキドキ

優希「私もだじぇ……」ドキドキ

咲「京ちゃんの好み……」

優希「今こそ明らかにするじぇ!」







ペラッ……







咲「……」

優希「……」

咲「………」

優希「………」

咲「――きゃ……」

優希「――ひっ……」

咲「きゃああああああああ!!」

優希「うわああああああああ!!」






京太郎「えーっと、あいつが持ってたのは……なんだ」

京太郎「カモフラージュに置いといた【恐怖の心霊写真特集】か」

短いけど今回はここまで

投下します

――翌日・朝……

咲「……もう、朝?」ボー

優希「うーんうーん……」ブツブツ

咲「ううっ……怖くてほとんど眠れなかった……」

優希「来るなぁ……やだぁ……」カタカタ

咲「……朝ご飯、作らなきゃ」ブルッ

咲「……その前におトイレ行っておこう」

優希「京太郎助けてぇ……」


――同時刻・京太郎の部屋……


京太郎「んー……よく寝た」

京太郎「悲鳴の後何にも聞こえなかったけどあいつら大丈夫だったかな……」

京太郎「色々言われんだろうなあ……憂鬱だ」ブルッ

京太郎「考えてもしょうがない……トイレでも行こ」

――トイレ……

咲「ふうっ……」

咲「京ちゃんったらあんな事して酷いよ……それは京ちゃんの部屋を家捜しした私達が悪いのかもしれないけど」

咲「むうっ……」

咲「あっ、鍵かけ忘れてた……んしょ……」



京太郎「はあ……」

京太郎「今度はどうするかなあ……ホラーはあんまりやりすぎると洒落にならねえし」

京太郎「ふうむ、今度はハズレとでも貼っとくか?」

京太郎「どうしたもんか……」

ガチャッ







咲「えっ」


京太郎「あっ」






咲「……」

京太郎「……」

咲「………」

京太郎「………」

咲「…………」

京太郎「…………悪い、邪魔した」

パタンッ

咲「……えっ?」


京太郎「見なかった見なかった見なかった、俺は何も見なかった……」

ヒャアアアアアアアッ!?

ドタンバタンッ、ガンッ!

アウッ! イ、イタイヨォ……

京太郎「……」ダラダラ

優希「おはよう……んっ、京太郎すごい汗だけどどうしたんだ!?」

京太郎「ナンデモナイ……ナンデモナインダ……」

京太郎「……」

咲「……」パクパク

優希「……」モグモグ

京太郎「あ、あの咲さん?」

咲「なにかな京ちゃん?」

京太郎「お、俺の朝ご飯は……」

咲「ちゃんとあるじゃない、白米と梅干し」

京太郎「こ、これじゃあ男子高校生にはちと量が……」

咲「なにか言った?」

京太郎「……なんでもありません」

咲「ふんだ」プイッ

優希「おい京太郎、お前咲ちゃんに何かしたのか?」

京太郎「事故だ、事故だったんだよ……」

咲「事故だからって許されると思う?」

京太郎「……思いません」

優希「本当に何があったんだじぇ……」

――清澄高校……

京太郎「はあ……」

京太郎(咲、怒ってたなあ……当たり前だけど。 ああ、何てことやらかしちまったんだ俺……)

「どうしたよ須賀、ため息なんてついて」

京太郎「いや、咲とちょっとな……」

「ああ、なるほど……咲ちゃんと夫婦喧嘩したのか」

京太郎「だからあいつとはそんなんじゃねーっての」

「はいはい……そういえば須賀、お前最近片岡とも仲良くしてるみたいだな」

京太郎「まあ、部活一緒だしな」

「……友人として忠告だけはしとくわ」

京太郎「ん?」

「気をつけろよ」

京太郎「気をつけろって……何をだよ」

「お前はわかってないんだろうけどな、咲ちゃんも片岡も……いや、麻雀部の面子は清澄じゃかなりレベル高い女の子ばかりなんだぞ?」

京太郎「……まあ、確かに咲も優希も可愛い部類ではあると思うけど」

「そんな2人が今お前に熱をあげてるってもっぱらの噂なんだよ」

京太郎「……マジか」

「マジだ。 それに加えてあの原村ともしょっちゅう昼飯を一緒してるとなったら……まあ、いい気しない奴もいるってわけだ」

京太郎「……」

「俺はお前がいい奴だってわかってるし、お前が麻雀部の誰かと付き合うにしても祝福するけどさ……そういう奴ばかりじゃないってのは理解しとけよ?」

京太郎「……わかった、サンキューな」

「いいってこった」スタスタ

京太郎「……」

京太郎(いい気しない、か……確かに当事者じゃない連中からしたら俺の置かれてる環境って羨ましいんだろうな)

ザワザワ……

京太郎(まあ、どんなに羨ましがられたって俺は部活やめる気なんかさらさらねえけど……)

ヒソヒソ……

京太郎「……昼飯行くか、みんな待ってるしな」ガタッ

――屋上……

優希「京太郎遅い!」

京太郎「悪い悪い」

咲「……」ジトー

京太郎「うっ……」

和「あの、何かあったんですか?」

京太郎「い、いや、なんでもないんだ……なっ、咲」

咲「……」プイッ

京太郎「おおう……」

優希「朝からこんな調子なんだじぇ」

和「須賀君……何したんですか?」

京太郎(さ、さすがに言うわけには……いかねえよなあ。 考え事してたとはいえ咲のトイレ中に入っちまったなんて言ったら……通報、もしくは軽蔑か?)

京太郎「マジでどうしようどうしよう……」カタカタ

咲「……」

京太郎「こ、こうなったら血を賭けた麻雀で溜飲を下げてもらうしか……」

咲「……はあ、京ちゃん」

京太郎「はい、なんでしょうか咲様!?」

咲「いいよ、もう」

京太郎「へっ?」

咲「私もちょっと至らない部分あったし……京ちゃんとギクシャクするの嫌だし」

京太郎「さ、咲……」

咲「だからお互い朝の事は忘れようよ。 それが一番でしょ?」ニコッ

京太郎「おぉ、咲から後光が射して見えるぜ……ありがたやありがたや!」

咲「もう調子いいんだから」クスクス

優希「……結局なんだったんだじぇ」

和「私に聞かないでください……」

咲「ほら、昼休みが終わっちゃうし早くお昼にしよう?」

京太郎「そうだな! それじゃあ咲の弁当……いただきます!」カパッ

咲「あ……」

優希「おぉ……」

和「これはまた見事に……白米だけですね」

京太郎「……」

咲「え、えっと……ふりかけあるよ?」

京太郎「ありがとうございます……」シクシク

――部室……

京太郎「リーチ!」タンッ

優希「むむっ、安牌が……よし、これだ!」

京太郎「へっ、通らないぜ優希! ロン、6400だ!」

優希「うおおっ、私が京太郎に直撃されただとぉ!?」

京太郎「俺も日々成長してるのさ……このまま最下位に引きずり下ろしてやるぜ!」

優希「ええい、調子に乗るなよ京太郎!」

和「ツモ、3900オールです」

京太郎「」

優希「」

まこ「全く何しとるんじゃ……」

咲「あはは……」カチッ

ロン

咲「あうっ!?」

久「咲は相変わらずネト麻だとダメダメねぇ……」

咲「うう……」

京太郎「ネト麻だと俺より弱いもんなあ、咲」

優希「京太郎より……それはまた同情するじょ」

京太郎「言っとくけどお前もどっこいどっこいだからな?」

優希「……ふっ、直接牌に触れないネト麻など邪道なのだ!」




和「へぇ、邪道ですか……」

優希「あ」

京太郎「俺知ーらね……」

まこ「わしも知らん」

和「ゆーき……」

優希「あ、あわあわあわ……」ポロッ

和「ロン、9600の一本場は9900……」

優希「ひいっ! のどちゃんの視線が氷のように冷たい!?」

和「ロン、7700の二本場は8300……」

優希「」

京太郎「冷たい和、相手は死ぬって感じですかね……」

まこ「どこかから苦情が来そうじゃな……」

和「ロン、4800の四本場は……」

優希「のどちゃん、トんでる! 私もうトんでるじぇ!」

まこ「ああ、別にハコ下ありで構わん」

優希「じょぉぉぉぉ!?」

咲「えっと、えっと……」カチッ

ロン、アナタノトビデス

咲「ううっ、いくらやっても勝てないよぉー……」

久「あらあら……」

京太郎「……」

京太郎(ああ、やっぱり楽しいな麻雀部……)

和「ロン」

優希「もうやだぁー!」

――須賀家……

優希「疲れたじょぉぉぉぉ……」ドサッ

京太郎「マイナス十万超えとかなかなか見られないもん見させてくれてサンキュー優希」

優希「馬鹿にしてぇ!」

京太郎「いやいや、素直に感謝してるんだぜ?」ニヤニヤ

優希「うぐぐ、だったらそのニヤニヤ笑うのをやめろ~!」ポカポカ

京太郎「痛くない痛くない」

優希「ムキー!」

咲「2人共、遊んでるならご飯持ってくの手伝ってよー」

京太郎・優希「はーい」

――……

京太郎「うめえ、うめえよ咲……」

咲「京ちゃん、そんな泣かなくても……」

京太郎「だって今日一日まともに飯食ってないんだぜ? 喜びにむせび泣きたくもなる!」

優希「タコスを食べればよかったのに」

京太郎「それだとなんか負けた気になるだろ」

咲「京ちゃんは何と戦ってるの……」

京太郎「自分、だな!」

優希「かっこいい事言ってるつもりかもしれないけど実際はかっこ悪いじぇ」

京太郎「うるへー、そんな事言う奴はこうだ!」ヒョイッ

優希「あっ、私のおかずを取るな!」

京太郎「ゴクン……へっ、もう食べちゃったよ」

優希「よくもやったな……だったらこうだ!」バクバクッ

京太郎「ちょっ、待っ、取りすぎだろおい!」

優希「倍返しだじぇー!」

京太郎「やめろぉ!」

咲「2人共、おとなしく食べなさい!」

京太郎・優希「はーい……」

咲「もう……」

――お風呂……

優希「ねぇ、咲ちゃん」チャプチャプ

咲「なぁに、優希ちゃん」

優希「今日京太郎と何があったんだ?」

咲「えっ!?」

優希「咲ちゃんがあんなにむくれるなんて珍しいからな。 気になって私は夜も少ししか眠れそうにないじぇ」

咲「眠れないわけじゃないんだね……」

優希「それでどうなんだ?」

咲「えっと……実は」

――少女事情説明中……

優希「……」

咲「で、でもね、今思うとちゃんと鍵をかけておかなかった私も悪かった気がするし……」

優希「……」

咲「だから京ちゃんを怒らないであげてほしいな……」

優希「――その手があったか」

咲「えっ」

優希「なんでもないじぇ」ニコッ

咲「……」

咲(な、なんだろう……私とんでもない事しちゃった気がするよ)

優希「そうかそうか……」

優希(そうやって意識させるって方法もあるんだな……機会があったら試してみるじぇ!)



京太郎「……!?」ブルッ

京太郎「な、なんか嫌な寒気が……何もなきゃいいんだけど」

カピ「キュー?」

今回はここまで
なんだかんだで京太郎の環境、羨ましいと思う人も多い気がします
同じ立場になった時耐えられるかは別として

投下します

――翌日……


京太郎「料理をしたい?」ジュー

優希「うむ」

咲「優希ちゃん、急にどうしたの?」

優希「急にじゃない、一昨日くらいからずっと考えていた事だじぇ」

京太郎「なんでまた……よっと! よし、上手くひっくり返った」

優希「悔しいが私はタコス以外の料理では咲ちゃんに手も足も出ない……」

咲「そ、そんな事ないよ。 私だって和ちゃんに比べたら……」

優希「のどちゃんはかわいい、頭がいい、スタイルもいい、家事も出来るってチート性能だから比較対象にしちゃダメだじぇ」

京太郎「天は二物を与えないとか和見てると嘘なのがよくわかるもんなー……」グツグツ

優希「京太郎、デレデレするな!」

京太郎「し、してねえって!」

優希「……まあ、のどちゃんのハイスペックぶりは置いておくとしても、私も将来を考えて料理出来るようになりたいと思ったわけだ」チラッ

京太郎「味見味見……」

優希(いつまでも咲ちゃんに胃袋を掴ませてるわけにはいかないしな……)

京太郎「うん、美味い……後は隠し味っと」

優希「いいよな咲ちゃん?」

咲「今日は私の当番じゃないから、京ちゃんがいいなら私は何も言わないけど……」

京太郎「俺は別にかまわないぜ。 なんでもチャレンジするのはいい事だしな」

優希「よし、決まりだじぇ! そうと決まれば早速……京太郎、朝ご飯だ!」

京太郎「はいはい、今出来ましたよ」

咲(なんか不安だなあ……)

――清澄高校・旧校舎……

京太郎「さてと今日も部活頑張るとしますかね……ん?」

「……」

京太郎「なんだあいつら……なあ、なにしてんだ?」

「……!」ダダダッ!

京太郎「おわっ!? あ、危ねえなあ、ったく……」

――部室……

まこ「――不審者じゃと?」

京太郎「えぇ、部室の前に男子が数人。 大方麻雀部は女子が多いから見に来たってところでしょう……俺が声をかけたら逃げちゃいましたけど」

咲「なんか怖いね……全国大会が終わった直後は確かに人がいっぱい来てたけど今の時期にそれだなんて」

優希「ふっ、害をなすような輩なら返り討ちにしてやればいいんだじょ!」

久「簡単に言わないの、相手が1人ならともかく数人じゃ危険すぎるわ」

和「部室の前にいただけで決めつけるのは早計だとは思いますが……須賀君に声をかけられて逃げたのならあまり好ましい客人ではないでしょうね」

まこ「そうじゃな……何が起こるかわからんし、用心に越したことはないか。 全員なるべく1人では行動はしないようにしておくんじゃ、ええな?」

一年組「はい」

久「私もまこにくっついてようかしら?」

まこ「あんたを襲う命知らずがいるとは思えんがな」

久「ちょっと、どういう意味よそれ」

まこ「気がついたら牢屋の中にぶち込まれてそうという事じゃ」

京太郎「あっ、確かに」

久「須賀君……ちょっとお姉さんとお話しましょうか?」

京太郎「すいませんでしたあ!」ドケザッ

優希「プッ、京太郎、情けない姿だじぇ!」

京太郎「笑うなよ!」

咲「きょ、京ちゃんったら……」クスクス

京太郎「咲までひでぇ!」

和「……」プルプル

京太郎「和もそれ絶対笑いこらえてるよなぁ!?」

久「さすがね、新部長。 あっという間に重い空気が吹き飛んだわ」

まこ「新人戦もある、四人にはなるべくいつも通りのコンディションでいてほしいからのう。 気をもむのは上級生であるわしがやっとけばええんじゃ」

久「あら、まさか1人で背負い込むつもり? ダメよ、私にも半分背負わせなさい」

まこ「じゃがお前さんは引退した身じゃ。 受験だって」

久「あのねぇ、こんな大変な時に後輩達を見捨てて自分の事に集中出来るほど、私は薄情な女じゃないわよ」

まこ「むうっ……」

久「こういう時は素直に頼りなさい、私だって何もかも1人で出来たわけじゃないんだから」

まこ「……すまん、恩に着る」

久「それでよろしい」

――……

和「本当にいいんですか?」

京太郎「いいっていいって。 染谷新部長も言ってただろ、1人で行動しないようにってな」

和「なんだか咲さんやゆーきに悪い気が……」

京太郎「おいおい、そもそもこんな非常時に和を1人で帰せないって俺に送るよう言ったのはあいつらだぞ?」

和「それはそうですが……でも須賀君は私の家から1人で帰るわけですよね?」

京太郎「俺は男だしなー、不審者も男だしなんかされる可能性は低いだろ」

和「……」

和(本当にそうでしょうか……もし不審者が私達を狙っているのだとしたら唯一の男手である須賀君は邪魔者、排除にかかるような気もしますが……)

京太郎「それにこれでも色々鍛えられてるからな、心配無用ってやつだ!」

和「それならいいんですけど……」

和(そう言うのは簡単ですが、憶測で不安にさせてはいけませんよね……)

京太郎「にしてもさ、よく考えたら俺達こうやって2人で帰るの初めてじゃないか?」

和「そういえばそうですね……普段は咲さんとゆーきが一緒ですし」

京太郎「確かにインターハイ過ぎてからは4人で行動するのが当たり前だったな……まさかその内の2人とあんな事になるとは思わなかったけど」

和「……須賀君、答えはまだ?」

京太郎「情けない話だけどな……」

和「真剣に考えていてくれているのなら私からは何も言えません。 ただ後悔のない選択をしてくださいとしか」

京太郎「いや、急かされないだけありがたいよ。 焦って決めてもろくな結果にならないからな……麻雀も恋愛も」

和「そうなのかもしれませんね」

京太郎「和はいないのか? そういう感情を抱くような相手」

和「私ですか? 私は家庭の事情もあってそういう事を考える余裕もありませんでしたね」

京太郎「……ですよねー」

和「須賀君?」

京太郎「ああ、なんでもないなんでもない。 あっ、和の家着いたぞ」

和「あら、本当ですね……それでは須賀君、今日はありがとうございました」

京太郎「いえいえお気になさらずお姫様」

和「くすっ、似合いませんよ?」

京太郎「はっきり言うなあ……」

和「ふふっ、それじゃあまた明日です」ガチャッ……

京太郎「――和!」

和「はい?」

京太郎「もしもさ、もしも……」







京太郎「――俺が和の事好きだって言ったらどうする?」







和「えっ……」

京太郎「……」

和「……」

京太郎「……」

和「――ごめんなさい」

京太郎「!」

和「そうとしか、言えません……私は須賀君をいいお友達と思ってはいますが、そういう目で見た事は一度もありませんから」

京太郎「……」

和「あの、須賀君……?」

京太郎「プッ……あっはっはっは!」

和「す、須賀君?」

京太郎「いやあ、まさかちょっとした例え話でそんな真剣な答えが返ってくるとは思わなくて……和って本当に真面目だな!」

和「か、からかったんですか!?」

京太郎「ピンポーン、大正解だ」

和「須賀君……」ジトー

京太郎「おお、そんな怖い顔でにらむなって! 可愛い顔が台無しだぜ?」

和「もう、須賀君!」

京太郎「あはははは! じゃあな和、また明日!」タタタッ

和「明日の部活ではいつも以上に厳しくしますからね!!」

京太郎「そりゃ勘弁だー!」タタタッ

和「もう……」

――……

京太郎「……」タタタッ

京太郎「………」スタスタ

京太郎「…………」ピタッ

京太郎「あー、やっぱりキツいなあ……わかってても失恋ってのは堪えるわ」

京太郎「でもけじめはつけときたかったしな……これで、きっちり前に進めるならよしとしとくか」

京太郎「……」

京太郎「――ああ、なんだろうな」

京太郎「風が、目にしみるぜ……」

京太郎「帰るまでになんとかしないと……あいつらに心配させたくないしな」

京太郎「でもそれ、どれくらい、時間かかるんだろうな……?」

京太郎「――わかんねえや、あはは……」

――……

京太郎「……」タタタッ

京太郎「………」スタスタ

京太郎「…………」ピタッ

京太郎「あー、やっぱりキツいなあ……わかってても失恋ってのは堪えるわ」

京太郎「でもけじめはつけときたかったしな……これで、きっちり前に進めるならよしとしとくか」

京太郎「……」

京太郎「――ああ、なんだろうな」

京太郎「風が、目にしみるぜ……」

京太郎「帰るまでになんとかしないと……あいつらに心配させたくないしな」

京太郎「でもそれ、どれくらい、時間かかるんだろうな……?」

京太郎「――わかんねえや、あはは……」

混雑してるとか言ってたのに重複投稿してる……
短いけど今回はここまで

原村和さんは改めて見るとやり過ぎな位色々盛り込んでるハイスペック少女ですよね

間を開けてすいませんでした
更新します

――須賀家……

優希「それでは優希ちゃんの三分クッキングを始めるじぇ!」

咲「本当に手伝わなくていいの?」

優希「最初から手伝ってもらったら自分がどれだけ出来るかわからないしな! 咲ちゃんはおなかを空かせて待っているがいい!」

咲「大丈夫かな……」

優希「さて、何を作ろうか……京太郎から借りた料理の本にいいものはないかなー」パラパラ……

優希「おっ、これなんか強そうな名前だじぇ!」

咲(強そう……?)

優希「ビーフストロガノフ……よし、決めた! この優希ちゃんに相応しい料理はお前だ!」

咲「優希ちゃん」

優希「咲ちゃん? どうした、お腹がすいて我慢できなくなったか?」

咲「今日はカレーにしようよ」

優希「えっ、でも作る料理はもう決め……」

咲「いいから、ね?」

優希「う、うん……わかったじょ」

咲(決して難しいわけじゃないけどタコス以外初心者の優希ちゃんが手を出すには早いと思うよそれは……)

優希「カレーか……まあ、王道だし失敗もしないだろうから問題ないじぇ。 えっとニンジン、ジャガイモ、玉ねぎ……」

咲(頑張ってね、優希ちゃん)

優希「あ、あれ? タコス作る時みたいに上手く切れない……じょ!?」コロン、コロコロ

咲「……えっ」

咲(ジャガイモがこっちまで転がってきたよ……)

優希「咲ちゃーん、ジャガイモ取ってー」

咲「わ、わかったー」パタパタ

優希「ありがとう咲ちゃん。 いやー、タコスじゃないとこうまで苦戦するとは思わなかったじょ」ザクッ、ザクッ……

咲「ほ、本当に大丈夫? それとよそ見しながら包丁使うのはやめたほうが……」

優希「大丈夫大丈夫! これくらい簡単に出来」サクッ

咲「あ」

優希「へっ?」ピュー

咲「きゃあああああ! 優希ちゃん、血が、血が出てるよぉ!?」

優希「な、なんじゃこりゃあああああ!?」ピュー

咲「そんな事言ってる場合じゃないって! 救急箱救急箱ー!」

京太郎「……」

京太郎「大丈夫、少しは吹っ切れたからバレないはずだ……」

京太郎「すう、はあ……よし!」

ガチャッ

京太郎「ただいまー……」

カピ「キュー!」

京太郎「おっ、どうしたカピ。 なんか震えてるけど……」

優希「ぎにゃああああ! 火が火柱が出たじぇー!」

咲「ダ、ダメだよ優希ちゃん! あんまり動いたらまた血が……」

ドンガラガッシャーン!

キャー!?

ナベガタオレタジェー!?

京太郎「なに、やってんだあいつら……」

カピ「キュー……」カタカタ

――……

京太郎「で、結局今日の夕飯はカップラーメンになったわけだが」ズルズル

優希「ううっ……」

咲「ごめんなさい京ちゃん……」

京太郎「いや、別にいいんだけどさ……ほら、優希もいつまで落ち込んでんだよ」

優希「だって、だって……」グスッ

優希(こんな有り様じゃ、京太郎に嫌われちゃうじぇ……こんな事ならタコス以外もちゃんと出来るようにしておくんだった……)

京太郎「……」

ポンッ

優希「ふぇ?」

京太郎「泣くなって。 タコス以外は初めてだったんだろ? なら失敗だってするっての」ナデナデ

優希「でも……」

京太郎「俺だって今じゃそれなりにタコス作れるけどさ、初めて作った時は酷かったろ?」

咲「あっ、あの真っ黒だったタコスの事だね」

優希「……確かにあれはマズかったじぇ」

京太郎「初めてなんてみんなそんなもんなんだよ。 それとも優希はもうやりたくないか?」

優希「……そんな事ないじぇ。 ここで諦めるなんて私らしくない!」

京太郎「だったらいいじゃん。 またチャレンジしてうまくなればいいんだからな」

優希「そうだな! んー、なんだか燃えてきたじょ!」

咲「よかったね、優希ちゃん」

優希「うん! よーし、次こそは美味しいご飯を作ってみせるじぇ!」

京太郎「まっ、一応期待しとく」

優希「ふふん、首を洗って待っているがいい!」

咲「ふふっ……」

――翌日・清澄高校……

優希「またお昼になー!」パタパタ

咲「じゃあ私も先に教室行ってるね」

京太郎「おう、転ぶなよ?」

咲「転ばないよー……きゃう!?」

京太郎「……大丈夫か?」

咲「ううっ、大丈夫……」スタスタ

京太郎「さてと俺も行くか。 和に会ってもいつも通りでいないとな……んっ?」

キラッ

京太郎「上履きの中に何か……画鋲か、これ?」

京太郎「……」

京太郎「まさか、な……」スタスタ

「……」

――休み時間……

京太郎「すいません、染谷先輩いますか?」

まこ「んっ、どうしたんじゃ京太郎。 わしの教室までわざわざ来るなんて珍しいのう」

京太郎「ちょっとお話がありまして……今いいですか?」

まこ「おう、ええぞ」

京太郎「じゃあちょっと屋上まで……」

――屋上……

まこ「鍵の管理を一任してほしい?」

京太郎「お願いします!」

まこ「……何かあったんか?」

京太郎「あっ、いえ、そういうわけじゃないんですけど」

まこ「あんたが悪事を働く性格でない事は理解しとるが、わしも久から受け継いだ部長としての責務がある。 理由もなしに鍵を預けるなんて出来んぞ」

京太郎「はい、わかってます……ほら、例の不審者ですけど相手は男子数人じゃないですか? ないとは思いたいですけどもし先輩やみんなが鍵開けに行った時に遭遇して何かあったら……」

まこ「ふむ……確かに部室の鍵を盗られでもしたら一大事じゃな」

京太郎「俺は男ですからいざという時でも逃げたりとかして何とかなると思うんですよ」

まこ「そうは言うがのう……わしとしても後輩を危険にさらす真似はしたくないんじゃが」

京太郎「俺は大丈夫ですって。 最近はハギヨシさんから護身術も習ってますし、そんじょそこらの不審者なんか返り討ちにしてやりますよ!」

まこ「しかしのう……」

京太郎「お願いします! 部に迷惑はかけませんし、極力危ない真似もしませんから!」ペッコリン

まこ「……」

京太郎「……」

まこ「……ふう、負けたわ」

京太郎「それじゃあ!」

まこ「わしから顧問には京太郎以外に鍵を渡さんように言っておく。 ただし本当に危ない真似はせんようにな!」

京太郎「ありがとうございます!」

まこ「全く、うちの部の連中はどうしてこうも頑固者揃いなんじゃろうなあ」

京太郎「それは染谷先輩も含めてですよね?」

まこ「やかましいわ!」

京太郎「す、すいません!」




「……ちっ」

――部室……

京太郎「……」キュッキュッ

京太郎(とりあえずこれで何かがあるとしたら俺に被害が集中するはずだ……みんなには指導してもらってるんだしこれくらいは引き受けないとな)

和「こんにちは」

京太郎「あ」

和「あっ、須賀君」

京太郎「お、おう……和」

京太郎(やっぱりちょっと気まずいな……和はからかわれてたと思ってるからいつも通りだけど)

和「……須賀君、昨日の言葉を覚えてますか?」

京太郎「えっ!? そ、それって……」

和「はい……今日の部活は今まで以上に厳しくすると言いましたよね?」

京太郎「……ああ、そっちですか」

和「はい?」

京太郎「いや、なんでもない……」

和「よくわかりませんが……とにかく今日は厳しくいきますからね!」

京太郎「わかりましたー」

――……

和「須賀君、それです」

京太郎「うおっ、マジか!?」

和「点数、場の状況、最善を尽くすためには色々気を配らないといけません……例えば今のはですね」

京太郎「ふむふむ……なるほど。 やっぱり覚える事とか多いんだな」

和「麻雀の腕を上げるのに近道はありませんから。 ひたすら勉強してひたすら打ってひたすら勉強しての繰り返しです」

京太郎「和はその結果強くなったと」

和「自画自賛したいわけではありませんが、上達はしたと思います……結局大事なのは自分の打ち方をどれだけ貫けるか、ですからね」

京太郎「自分の打ち方、か」

和「須賀君は素養自体は悪くありません。 ですから経験と知識を重ねればきっと強くなれますし自分の最適な打ち方も見つかりますよ」

京太郎「はは、サンキュー」

和「どういたしまして。 それでは次は……」

京太郎「おう、どんどん来てくれ!」

優希「うむむ、京太郎め……のどちゃんと楽しそうにしおって」

咲「私達はあんな風に教えられないからね……和ちゃんが羨ましいよ」

咲(だけどなんだか和ちゃんに対して京ちゃんがぎこちない気がする……なんでだろ)

まこ「まあ、そこは適材適所というやつじゃ、諦めんさい」

優希「ううー……痛っ」

久「あら優希、その指どうしたの?」

優希「昨日料理してたら包丁で切っちゃったんだじぇ……」

まこ「ほう、優希が料理とは珍しい事もあるもんじゃのう」

咲「大変だったんですよ、血がピューって出て……」

まこ「なんじゃ、咲も一緒におったんか?」

咲「はい。 その後は一緒にカレーを作ろうと思ったんですけど結局失敗しちゃって」

優希「その日の夕飯は3人でカップラーメンだったじょ」

久「3人?」

咲「はい、京ちゃんも……あ」

まこ「ほほう……」キラーン

久「へぇ……」キラーン

優希「な、なんか2人が怖いじぇ……」

咲「あ、あのあのその……」

久「須賀くーん、ちょっと来てくれないかしら?」

京太郎「なんですか?」

久「それでは今から須賀君と咲、優希の尋問を始めます!」ニヤッ

まこ「異議なしじゃ」ニヤッ

京太郎「はい!?」

和「……とうとうバレましたか」

――少年少女尋問中……

久「じゃあなに、あなた達今一緒に住んでるって事?」

京太郎「はい……」

まこ「くくっ、そこまで大胆に動くとは青春しとるのう、お前さん達」

優希「うぐっ……」

咲「あうう……」

和「あ、あの、3人ならきっと問題ないと思うのであまりキツく言わないであげてください……」

久「いやまあ、部に影響が出るような問題を起こさなければ親御さんが許可を出してる以上私達は何も言えないわけだけど……だけど周りには気をつけなさい」

咲「えっ?」

優希「それって……」

まこ「昨日の不審者の事もある。 誰がなにをしでかすかわからんちゅう事じゃ。 もしその連中が麻雀部の部員になんらかの害を加えようと言うんなら、真っ先にあんたら……正確には京太郎が標的になる気がするけぇの」

京太郎「……!」

久「知られなければどうって事ないんだけどね……ところで咲が須賀君の家にいるって事は和、あなたはしばらく1人で帰るのよね?」

京太郎「昨日は俺が送りましたけど……」

まこ「毎日それが出来るっちゅうわけでもないじゃろう」

京太郎「それは……」

久「うーん……わかった。 和については私とまこで何とかするわ」

まこ「じゃな」

和「えっ、でも竹井先輩も染谷部長も色々予定があるんじゃ……」

久「受験の諸々なら和が気にする必要はないわよ。 むしろここで何もしない方が気になって勉強出来なくなっちゃうしね」

まこ「麻雀部に関係している以上部長が部員の安全に気を配るのは当たり前の事じゃ。 和が気に病む事は何もありゃせんわい」

和「……すいません」

久「違うでしょ、和」

まこ「確かにこういう時は謝るんは違う気がするのう」

和「……ありがとう、ございます」

久「どういたしまして」

まこ「まっ、そういうわけじゃから京太郎、あんたに咲と優希は任せてもええな?」

京太郎「は、はい」

まこ「よし、しばらくはこうして行動するようにする。 各自色々思うところもあるじゃろうが何もなければただの杞憂として笑い話になるんじゃ、悪いが我慢してくれ」

久「それじゃあ今日はもう帰りましょうか」

――帰り道……

咲「なんか大変な事になっちゃったね」

優希「新人戦もあるのにこれじゃまともに練習も出来やしないじぇ」

京太郎「優希の口からそんな言葉が出るとは……成長したなあ」

優希「その親戚のおじさんみたいな目はやめろ!」

京太郎「まあ染谷部長も言ってただろ、何もなかったら笑い話だって。 だからそんな気にするなよ咲」

咲「うん、そうだね……」

京太郎(……とは言ったものの、何もないって事はたぶんないだろうな。 そうじゃなきゃしばらくバイトを休みだけにしてくれなんて言ってあんなにあっさり通るはずがない……向こうでも何かあったのか?)

優希「咲ちゃん、今日の晩ご飯はどうするんだ?」

咲「うーん……優希ちゃんは何が食べたい?」

優希「タコス!」

咲「……出来ればそれ以外で」

優希「えー!」

京太郎(……何にせよ、俺がしっかりしないとな。 何かあったら俺が矢面に立っていく……うん、頑張ろう)

――須賀家……

京太郎「そういえば明日は土曜か……2人は午前中部活した後どうするんだ? 俺は午後からバイトだけど」

咲「私は帰って本読んでようかな……」

優希「私は料理の練習でもするじぇ」

京太郎「わかった。 買い物とかは俺がやるから何かあるなら言ってくれな」

京太郎(あれ、そういや明日って……)

優希「咲ちゃん、お風呂行こう!」

咲「うん」

京太郎「咲、ちょっといいか?」

咲「なに?」

優希「先に行ってるじぇー!」

京太郎「話があるんだ、実はな……」

咲「明日の事でしょ?」

京太郎「あれ、なんだ知ってたのか」

咲「知ってたも何も明日の部活は……」

京太郎「えっ、マジ? 俺聞かされてねえぞ」

咲「京ちゃん、うっかり話しちゃいそうだから……」

京太郎「咲じゃないんだからそんな事あるかっつうの」

咲「むっ、私はそこまでドジじゃありませんよーだ!」

京太郎「そんな膨れるなって。 とにかく明日は……」

咲「うん、それで大丈夫だと思うよ」

京太郎「ん、わかった。 じゃあ俺は明日の準備しとくわ」

咲「……京ちゃん!」

京太郎「ん?」

咲「和ちゃんと何があったのかは聞かないから」

京太郎「……えっ」

咲「聞かないけど……京ちゃんの行動はきっと間違ってなかったよ!」

京太郎「咲、お前……」

咲「そ、それだけだから! お風呂行ってくるね!」パタパタ

京太郎「……」

京太郎「――本当、咲にはかなわねえなあ」

今回はここまでで

投下します

――翌日……

優希「今日も部活だじぇ!」スタタッ

京太郎「おいおい、そんなにはしゃぐなよ優希」

咲「優希ちゃん、走ったら転んじゃうよ……きゃっ!?」

京太郎「おっと……お前も気をつけろよ咲」

咲「あ、ありがとう京ちゃん」

京太郎「気にすんな、いつもの事だからな」

咲「ううっ……」

優希「何してるんだ2人共! 早く早くー!」

京太郎「全く……優希の奴朝っぱらからあんなに元気なんだ」

咲「でも元気なのが優希ちゃんらしいよね」

京太郎「まあな。 でも本当にたまにでいいからおとなしくしてほしい……」

咲「あはは……」

優希「とうちゃーく!」ガチャッ







「お誕生日おめでとうー!」






優希「うえっ!?」

まこ「驚いとる驚いとる」

久「ふふっ、サプライズは大成功ってところかしら」

和「ゆーき、お誕生日おめでとうございます」

優希「おぉ……そういえば今日は私の誕生日だったじぇ!」

京太郎「忘れてたのかよ! まっ、とにかく誕生日おめでとう優希」

咲「サプライズだから朝には言えなかったけどお誕生日おめでとう優希ちゃん!」

優希「ありがとうだじぇ!」

久「というわけで、今日の部活は予定を変更して優希の誕生日パーティーをするわよ!」

まこ「準備は万全じゃ、最近は色々あるが今日は全部忘れて楽しもうじゃないか!」

「はーい!」

優希「みんな、本当にありがとうー!」

――夜・須賀家……

咲「京ちゃん、私先に寝るね」

京太郎「わかった、優希はどうする?」

優希「私はまだ起きてるじぇ」

咲「それじゃあおやすみなさい、京ちゃん、優希ちゃん」

京太郎「おやすみ」

優希「おやすみだじぇ」

パタンッ……

優希「んー、今日は楽しかったじぇ!」

京太郎「そりゃよかったな」

優希「うむ、京太郎もタコス作りご苦労!」

京太郎「プレゼントとしては微妙な気もするけどな……喜んでくれたならよかったよ」

優希「ふふん、だったら京太郎自身をプレゼントにすればいいじぇ。 私は喜んで受け取るぞ」

京太郎「悪いけどそれは辞退させてもらう」

優希「ちぇっ、残念だじぇ」

京太郎「……なあ優希」

優希「なんだ?」

京太郎「いつか聞こうと思ってはいたんだけどさ……お前、なんで俺を好きになったんだ?」

優希「んー? それはあれか、私がいつ京太郎を好きになったか教えてほしいって事か?」

京太郎「ああ、ちょっと気になってさ」

優希「……なかなか恥ずかしい事を聞く奴だじぇ。 まあ、教えるくらいなら問題ないか……それはだな」

京太郎「それは?」

優希「……」

京太郎「……」

優希「……いつからだろう?」

京太郎「は?」

優希「いや、意地悪とかじゃなく私いつから京太郎を好きになったかまるで覚えてない……」

京太郎「なんだよそれ」

優希「なんというか、いつの間にか好きになってたって答えが一番正しいというか……」

京太郎「そんなもんなのか……」

優希「……あっ、でも京太郎の見方が変わったきっかけになる話はあったじぇ」

京太郎「そんなのあったのか?」

優希「京太郎は覚えてないか? 京太郎が麻雀部に入ってすぐ、あの雨の日の事……」

――数ヶ月前……

ザアアアアアアア!

優希「むう、なんて酷い雨だじぇ……朝はあんなに晴れてたのに」

優希「でも本当にどうしよう……今日は傘持ってないし、のどちゃんも染谷先輩も部長ももう帰っちゃってるし……」

京太郎「ん? 何してんだよ片岡」

優希「むっ? あっ、須賀だじぇ」

京太郎「空なんか睨んでどうした? そんな事してもタコスは降ってこないぞ」

優希「そんな事わかってる! ただちょっと傘を忘れちゃっただけだじぇ!」

優希(相変わらず失礼な奴だ……まあいい、どうせこいつものどちゃん目当てで来ただけのミーハー、今まで来た連中みたいにすぐにやめちゃうに決まってる)

京太郎「確かに朝は晴れてたしな……ああ、咲が傘忘れてたのもそのせいか」ボソッ

優希「だから雨がやむまで待ってるんだじょ」

京太郎「でもこの雨朝まで降り続くらしいぞ?」

優希「なに!? くっ、じゃあ濡れて帰るしかないか……」

京太郎「……」

優希「はあ、ついてないじぇ……」

京太郎「ほら」

優希「えっ?」

京太郎「傘ないんだろ? 俺置き傘あるし、よかったら使えよ」

優希「……いいのか?」

京太郎「いいっていいって。 同じ部活の仲間なんだしさ、こういう時は助け合わないとな」

優希「……それじゃあ、ありがたく借りるじぇ」

京太郎「おう、じゃあ俺は置き傘取りに行くわ。 また明日な!」タタタッ

優希「うん、また明日……」

優希「あっ、お礼言うの忘れたじぇ……明日言えばいいか」

優希「……仲間か」

優希「結構、いい奴なんだな」

――翌日……

優希「今日も楽しく部活だじぇー」

和「ゆーき、そんなにはしゃいでると転びますよ?」

優希「大丈夫だじぇ! のどちゃんみたいにおっぱいで足下が見えないって事はないからな!」

和「ゆ、ゆーき、何を言うんですか!」

優希「あはは、のどちゃんが怒ったじぇ!」

和「ま、待ちなさいゆーき!」

優希「こんにちはだじぇー!」

和「はあはあ……こ、こんにちは」

まこ「おう、こんにちは優希、和」

久「優希は今日も元気ねぇ……」

優希「私の取り柄ですから! あれ、須賀はまだ来てないのか?」


久「ああ、須賀君なら休みよ。 昨日の豪雨に打たれて風邪ひいちゃったんですって」

優希「へっ?」

まこ「なんでも傘を忘れたとか言ってたの。 まあ急な雨じゃったからしかたない話じゃが」

和「確かに昨日は結構な数の人が濡れて帰っていましたからね。 ゆーきも少し心配でしたけど、ちゃんと持っていたみたいでよかったです」

優希「……」

優希(傘を忘れたって……そんなわけないじぇ。 だってあいつ、置き傘あるって言ってた……あっ、もしかして)

優希「自分が濡れるのに、私が困ってたから貸してくれたのか……?」

和「ゆーき? どうしたんです、ボーッとして」

優希「な、なんでもないじぇ!」

優希(……)

――数日後……

京太郎「こんにちはー」

久「あら、風邪治ったのね?」

京太郎「はい、長々と休んでてすいませんでした」

まこ「そんな謝らんでええ。 この前の雨は不意打ちじゃったしの」

京太郎「ははは、ありがとうございます」

優希「……」ジー

京太郎「ん?」

優希「あっ、えっと……」

京太郎「どうしたんだよ、そんなモジモジして」

優希「こ、この前の傘返すじぇ……そ、それと!」

京太郎「?」

優希「あ、ありがとうな! 【京太郎】!」

京太郎「お、おう、どういたしまして……あれ、今お前俺の名前……」

優希「お、同じ学年だしな! よそよそしいし名前で呼ぶことにさせてもらうじぇ!」

京太郎「……」

優希「ダ、ダメ?」

京太郎「……いや、確かにそうだな。 じゃあこれからは俺も名前で呼ばせてもらうわ【優希】」ポンッ

優希「あ……うん!」

和「こんにちは」

優希「それじゃあのどちゃんも名前で呼ばないとな!」

和「何の話ですか?」

京太郎「じゃあ遠慮なく呼ばせてもらいますか……よぉ、和!」

和「い、いきなりなんですか!?」

久「青春ねぇ」

まこ「青春じゃなあ」

――……

京太郎「そういやそんな事もあったな……あの時なんで急に名前呼びになったのか不思議だったけど、それがきっかけだったのか」

優希「そこから今まで以上に一緒に過ごして京太郎のいいところがいっぱい見えて……いつの間にか好きになってた。 はっきりいつからかはもうわからないけど、きっかけって事ならこれが私が京太郎を好きになったきっかけだじぇ!」

京太郎「そうか、あの時からお前……」

優希「時間にしたら数ヶ月……きっと咲ちゃんに比べたら短い時間なんだと思う。 だけど年月とか関係ないじぇ!」

京太郎「優希……」

優希「私は京太郎が好きなんだ! 誰がなんと言おうと、この気持ちは咲ちゃんにだって負けるつもりはない!」

京太郎「そっか……」ポンッ

優希「ふあっ」

京太郎「ありがとな、そこまで想ってくれて」ナデナデ

優希「……えへへ♪」

京太郎「そろそろ俺達も寝るか……聞けてよかったよ」

優希「私は結構恥ずかしかったけどな……あっ、京太郎!」

京太郎「んー?」

優希「ちょっと耳を貸すじぇ」

京太郎「こうか?」シャガミ

チュッ

京太郎「んなっ!?」

優希「きょ、今日は誕生日だし、キスさせてもらった! ま、まあ本当は唇にしてやりたいところだけど、今回は頬で勘弁してやるじぇ! お、おやすみ京太郎!」タタタッ

京太郎「……」

京太郎「……あー」

京太郎「優希の奴、あんなに可愛かったんだな……」




咲「……」ギュウッ……

今回はここまで

投下します

――翌日……

咲「……」タンッ

京太郎(うーん……これか)タンッ

優希(ううっ……やっぱり南場は勢いが落ちるじぇ)タンッ

和「ツモ。 1300、2600です」

京太郎「おっ、咲の親被りか……と言ってもトップと20000点差でラスの俺にはまだまだ途方もない差だけど」

和「須賀君も振り込みが減りましたね。 今回はほとんどツモによる削りですし」

京太郎「和了れなきゃ意味ないんだけどなー……」

咲「……」

優希「咲ちゃん、なんか顔色が悪いけど大丈夫? 今日はあまり和了れてないし調子でも悪いのか?」

咲「大丈夫、ありがとう優希ちゃん……ほらオーラスだよ京ちゃん、親なんだからまだ諦めちゃダメだからね?」

京太郎「おう、わかってるって」タンッ

京太郎(でも本当にどうしたんだ咲の奴……朝からどこか上の空なんだよな)

優希(配牌からして悪すぎだじぇ……)タンッ

和「……」タンッ

――数巡後……

京太郎(よし、とりあえず一向聴……)

京太郎「……」タンッ

優希「……」タンッ

咲「ポン」カシャッ

優希「じぇ!?」

京太郎(咲が鳴いたか……こりゃ加槓から嶺上開花の可能性が高いな……)スッ

京太郎「……ん?」

京太郎(この手牌……普通なら連荘するにしても赤ドラを抱えてなるべく高目を狙うところだけど……)チラッ

咲「……」

京太郎(やって、みるか)タンッ

優希(あれ、京太郎……赤ドラを捨てたじぇ)タンッ

和(須賀君の点数や普段の打ち方からして切るとは思いませんでしたが……何か考えがあるみたいですね)タンッ

咲「……カン」

優希(うあっ……鳴かれた時からいやな予感はしてたけどやっぱり嶺上開花か……!)

咲「……」スッ……



京太郎「ロン!」

咲「……えっ?」

優希「なぬっ!?」

京太郎「悪いな、咲……槍槓、2000だ!」

咲「あっ……」

和「あの待ちから赤ドラを捨てて槍槓のみの待ちに変えるなんて……」

京太郎「咲なら間違いなく加槓してからの嶺上開花で来るからな。 オーラスの親番、和了れば連荘出来るんだから高目狙って無理するよりはいいと思ったんだよ」

優希「むむむ……咲ちゃんをよく知ってるからこその待ちというわけか!」

京太郎「まっ、そういうこった。 ほら連荘だ、ここから俺の華麗な逆転劇が始まりだ!」タンッ

咲「……京ちゃんはやっぱりすごいね」

京太郎「えっ?」タンッ

和「須賀君、ロンです」

京太郎「」

優希「二巡目で振り込み……かっこつかないじぇ、京太郎」

――夜・須賀家……

京太郎「よし、トップ! ふうっ、ネト麻ならそれなりに勝てるけどやっぱり部活だと勝てねえなあ。 まあ経験の差って言ったらそれまでなんだけど……」カチカチ

コンコン

京太郎「ん?」

咲「京ちゃん、ちょっといいかな?」

京太郎「咲? いいぜ、開いてるから入ってこいよ」

ガチャッ

咲「お邪魔します……ごめんね、夜遅くに」

京太郎「いいっていいって、ちょうど対局が終わったところだしな」

咲「ネト麻?」

京太郎「ああ、俺は経験の長さじゃ圧倒的にみんなに劣るからな。 少しでも追いつくためには人一倍場数踏まないといけないだろ?」

咲「そっか……でもやりすぎて体調崩したりはしないでね?」

京太郎「へーい、了解しましたお姫様。 それでどうしたんだ?」

咲「……」

京太郎「もしかして今日調子が悪かった事と何か関係があるのか?」

咲「……うん」

京太郎「悩みでもあるのか?」

咲「そういうのじゃ、ないんだけど……ねぇ、京ちゃん」

京太郎「なんだ?」

咲「私達が初めて会った時の事、覚えてる?」

京太郎「咲と初めて会った時? ああ、よく覚えてるぞ。 あれは確か中学に入学して1ヶ月も経たない頃だったよな……」

――三年前……

咲「……」

咲(私、何してるんだろう……)

ペラッ

咲(あんなに好きだった麻雀、あっさりやめちゃって……それどころか麻雀の事、嫌いにまでなっちゃってこうやって本に逃げて……)

ペラッ

咲(お姉ちゃんを怒らせて、あの子の事だって――)

咲「あ……」ツー

咲(泣いちゃダメ、私にそんな資格ないんだよ……)

ペラッ

咲(お姉ちゃん……私、ダメな子だよ……お姉ちゃんが言ってたみたいに、綺麗な花を咲かせるなんて私には出来ないよ……)

咲「うっ、ううっ……」

「お、おい、大丈夫か?」

咲「……えっ?」

「えっと、どこか怪我したのか? それとも何か辛い事でもあったのか?」

咲「……」

「あ、それよりまずは涙拭けよ! ほら、ハンカチ貸すからさ!」

咲「……あ、ありがとう」

「いいって事! 女の子が泣いてんのに何もしないのはダメだって母さんがよく言ってるしな!」

咲「お母、さん……?」ポロポロ

「ええっ!? な、なんでまた泣いて……あっ、もしかして俺のせい……ご、ごめん!」

咲「ち、違……」

「ごめん、本当にごめんな! また泣かせちゃいけないし、俺もう行くから!」

咲「えっ、ま、待っ……」

「本当にごめんなー!」タタタッ

咲「……行っちゃった」

咲「随分、慌ただしい人だったなあ……金髪だったけど不良とかじゃないみたいだし……もしかしてハーフなのかな」

咲「金髪、か……」

――数日後・図書室……

「はあ……中学デビューして早々に女の子を泣かせちまうなんて最悪だ……あの子大丈夫だったかな」

「つうか図鑑ってどこだよ……図書室広すぎだろ……」

「あ、あの……」

「へっ?」

咲「……」

「あっ!? き、昨日の……」

咲「ハ、ハンカチ借りたままだったから……」

「ああ、うん……あ、あのさ昨日は泣かせちゃって本当に……」

咲「ま、待って! 昨日私が泣いちゃったのはあなたのせいじゃないよ!」

「えっ、そうなのか?」

咲「うん、だから気にしないで……」

「よ、よかったあ……いきなり女の子を泣かせる最悪の中学校生活の幕開けかと思ったぜ」

咲「ふふっ……」

「わ、笑うなよ!」

咲「えっ? 私今笑ってた……?」

「思いっきりな!」

咲「……」

咲(あの事があってから、笑い方なんて忘れてたのに……ああ、私まだ笑えるんだ……)

「おーい、ボーッとしてどうした?」

咲「ううん、なんでもない……ところで、名前聞いてもいいかな?」

「名前? ああ、そういやお互い名前も学年も知らなかったんだよな……俺は須賀京太郎、今までの会話でなんとなくわかると思うけど一年生だ」

咲「私は宮永咲……私もこの前入学したばかりの一年生だよ。 よろしくね須賀君」

京太郎「おう、よろしくな宮永。 ところでさ……ここにいるって事はもしかして宮永ってよく図書室来てるのか?」

咲「うん、私クラスじゃ図書委員だし、毎日とは言わないけど結構来てるよ」

京太郎「じゃあ頼む、図鑑のある場所を教えてくれ! 授業で使うらしいんだけど場所がわからねえんだ!」

咲「いいよ。 確か図鑑はね……」

――……

咲「あの時の京ちゃん、私を泣かせちゃったーってすごく焦ってたよね」

京太郎「し、しかたねえだろ! あの時は急にお前が泣き出したから頭真っ白だったんだよ!」

咲「そういえば私達、その日までクラスが同じって事にも気付いてなかったんだよねー……」

京太郎「いやあ、まさかの偶然だったよな……懐かしい話だぜ」

咲「ねぇ京ちゃん、じゃあ私がこうして京ちゃんって呼ぶようになった時の事は覚えてるかな?」

京太郎「あったりまえだ、あんなん忘れられるわけないだろ」





「……」

――二年前……

京太郎「宮永、一緒に帰ろうぜ」

咲「うん、わかった。 ちょっと待っててね」

京太郎「今日は図書室行くのか?」

咲「うーん、まだこの前借りた本読み終わってないから今日はいいかな」

京太郎「そうか、じゃあちょっと俺に付き合ってくれよ」

咲「別にいいけど何かあったの?」

京太郎「へへっ、いいもの見せてやるよ」

咲「いいもの……?」

――須賀家……

カピ「キュー」トコトコ

咲「わあ、可愛い! 確かえっと……」

京太郎「カピバラだよ、カピバラ。 紹介するぜ、俺の新しい家族カピだ!」

カピ「キュー」

咲「わわわ、こっち来たよ!?」

京太郎「同じ小動物の匂いを嗅ぎつけたか。 さすがだなカピ」

咲「それどういう意味!?」

カピ「キュー」スリスリ

咲「あははは、毛がくすぐったいよっ……!」

京太郎「カピも宮永を気に入ったみたいだな、よかったよかった」

咲「須賀君が言ってたいいものってこの子の事?」

京太郎「ああ、こいつすっげえ可愛いからさ……一番の友達の宮永に自慢したくなったんだよ!」

咲「一番の友達……な、なんか照れちゃうな」

京太郎「いいじゃんいいじゃん、本当の事なんだしさ」

咲「うー……」

京太郎「ふむ……でも確かに問題もあるな」

咲「えっ?」

京太郎「ほら、俺達一年近い付き合いなのに未だに名字呼びだろ? なんだか距離があるな、よそよそしいなーって思うんだよ俺」

咲「そ、そうかな?」

京太郎「そうだよ! うーん……よし、決めた! これからは俺宮永の事咲って呼ぶからさ、宮永も俺の事名前で呼んでくれよ!」

咲「えっ……ええええええええええええええええっ!?」

京太郎「おぉ、すげえ反応……」

咲「む、無理だよそんなの! お、男の子を名前で呼ぶなんて恥ずかしいよぉ……」

京太郎「そんなに恥ずかしいかぁ?」

咲「恥ずかしいよ!」

京太郎「そうか……そんなに嫌なら無理はしなくていいけどさ。 まぁ、俺はこれから咲って呼ぶけどな」

咲「うっ……」

――翌日……

京太郎「咲、昼飯行こうぜー」

咲「も、もう! いつまで名前で呼ぶ気なの!?」

京太郎「えっ、これから先ずっとだけど?」

咲「ううう……」

京太郎「咲もいつでも俺を名前で呼んでくれていいからなー」

咲「絶対無理!」

京太郎「つれねえなー」

咲「あっ、そうだ須賀君。 私今日と明日は一緒に帰ったり出来ないと思うから」

京太郎「んっ、なんか用事でもあるのか?」

咲「ちょっとね……東京にいるお母さんの所に行くから」

京太郎「あー、なるほどね。 わかった、せいぜいお母さんに甘えてこいよ」

咲「私そこまで子供じゃないよ!?」

京太郎「はいはい、ならもう少し身長伸ばそうなー」

咲「須賀君!」

京太郎「あははは!」

咲「もうっ……ふふふ」

――翌日夜・須賀家……

京太郎「咲は今頃お母さんと家族水入らずしてんのかねー……まぁ、別居してるくらいしかあいつの家庭の事情は知らないけど、あんなにのほほんとした奴を育てた親ならそんなに深刻な事情じゃないんだろうな、きっと」

ザー……

京太郎「おっと雨降ってきたか……窓閉めないと……あれ?」

咲「……」

京太郎「咲? なんで、今東京にいるはずじゃ……ってあいつ傘さしてねえし……」

咲「……」パクパク

京太郎「えっ……?」

咲「……」タタタッ

京太郎「咲!? くそっ、母さーん、俺ちょっと出てくるから!」

――須賀家近辺……

咲「……」

京太郎「はあ、はあ……おい咲、傘もささないで何してんだよ。 風邪ひいちゃうぞ」

咲「……」

京太郎「それにさっきのはなんだよ……間違ってたら謝るけど、お前確かに口パクでこう言ったよな?」





京太郎「【助けて】ってよ……」

咲「……」

京太郎「おい咲、なんとか言えよ……!?」グイッ

咲「っ……」ポロポロ

京太郎「お前、泣いて……うわっ!?」

咲「……」ギュウッ

京太郎「咲……?」

咲「……私、あんなに怒らせちゃってたなんて知らなかった」

京太郎「何の話を……」

咲「私、私……」

京太郎「……」

咲「頼っちゃ、いけないのに……自分で抱えてなきゃいけないのに、ごめんね……私、弱いから……須賀君に頼っちゃいそうだよ……」

京太郎「……」

咲「ごめんね、ごめんなさい……」

京太郎「……馬鹿やろう」

咲「っ……」

京太郎「そんな事言うなよ、俺達友達じゃねえか……いいんだよ、辛いなら頼れ、嫌なら何も言わなくていいからせめて泣くためだけでもいいから俺を使ってくれよ」

咲「うっ、ううっ……」

京太郎「俺はお前の味方でいる、どんな事があったって須賀京太郎は宮永咲の友達だ……だから思いっきり泣いちまえよ、咲」

咲「うっ、ひっく……ね、ねぇ……須賀君」

京太郎「なんだ?」

咲「私、須賀君を名前で呼んでいい……?」

京太郎「もちろんいいに決まってる、むしろ俺は待ってたんだぞ?」

咲「あのね……それでね、ただ名前で呼ぶんじゃなくて、京ちゃんって呼んでもいいかな……?」

京太郎「きょ、京ちゃん?」

咲「ダメ、かな……」

京太郎「……好きにしろよ、そうお前が呼びたいならさ」

咲「京、ちゃん……」

京太郎「なんだ咲」

咲「京ちゃん……京ちゃん……ううっ、うっ、あっ……うわああああああああんっ!!」

京太郎「……」

咲「ひっ、くっ……うああああああああああんっ!!」

京太郎「咲……」

――……

京太郎「いやー、懐かしいな。 あの後2人共濡れ鼠で揃って母さんに怒られたっけ」

咲「……京ちゃん、あれだけの事があったのにあの後何も聞かなかったよね」

京太郎「そりゃ俺から聞く事じゃなかったっぽいしな」

タタタッ

京太郎「ん?」

京太郎(今誰かが廊下を走ったような……カピか?)

咲「あの日から京ちゃんって呼ぶようになって……私達は今まで以上に一緒にいた」

京太郎「まあな」

咲「そして清澄に一緒に入って……京ちゃんはまた私が麻雀を始めるきっかけをくれた」

京太郎「……お前はいつかまた麻雀を始めた気がするけどな」

咲「でもそれは今じゃなかったよね。 もしあの日麻雀をまた始めるようにならなかったら私は今もお姉ちゃんと仲直り出来なかった」

京太郎「……」

咲「そう考えると私、京ちゃんにずっと助けられてたんだよね」

京太郎「……俺はあの時から何もしちゃいないさ。 全部お前が決めてお前が成し遂げたんだよ、咲」

咲「私はそうは思わないけど……でもそれは重要じゃないね」

京太郎「……」

咲「私ね、京ちゃんの事とても大切なお友達だとずっと思ってた」

京太郎「……」

咲「だけどいつも私を引っ張ってくれた京ちゃんが麻雀で弱音を吐いて、それでも必死に上手くなろうって努力してるのを見て気付いたの」

京太郎「……何に?」

咲「――京ちゃんも、等身大の男の子なんだなあって」

京太郎「お前の中の俺は今までヒーローかなんかだったのかよ」

咲「そこまでは思ってないけど……でも似たようなものだったのかな」

京太郎「おいおい……昔からお前にはかっこ悪いとこも見せてたはずだぞ」

咲「それでも私を助けてくれる時はかっこ悪いとこなんてなかったし……だから」

京太郎「だから?」

咲「インターハイも終わって落ちついたら急に、その……男の子として意識しちゃうようになって。 だから私、京ちゃんを男の子として好きな時間は優希ちゃんより短いの……」

京太郎「……まさか、お前昨日の話!?」

咲「だけど! 私だって優希ちゃんに想いで負けてるつもりはない!」

京太郎「咲……」

咲「好き……京ちゃんが好き、どんどん好きって気持ちが大きくなってどうしようもなくなっちゃうの……」

京太郎「……」

咲「京ちゃん……」スッ

京太郎「咲、ちょっと待っ……!」

チュッ

咲「えへへ……頬だけど、京ちゃんにキスしちゃった……これでおあいこだよね」

京太郎「咲……」

咲「ごめんね、いきなりこんな事して。 でもこれが私なりの改めての決意表明だから……おやすみ、京ちゃん」

ガチャッ、パタンッ……

京太郎「……」

京太郎「くそっ……なんでドキドキしてんだよ俺は」

京太郎「昨日、優希にドキッとしたばっかじゃねえかよ……節操なさすぎたろ……」

京太郎「俺は、俺は……!」

――廊下……

咲「……」ペタッ

咲「あんな事、言ったけど……やっぱり、無理だよ……」ギュッ

咲「私は、優希ちゃんみたいに押していけない。 どれだけ一緒にいた時間があっても、それは逆に京ちゃんにそういう対象に見られない時間を築いたのと同じなんだ……」

咲「私、私……」

――客間……

優希「……うっ、ひっく」

優希「咲ちゃんは、咲ちゃんは、あんな気持ちをずっと抱えてたのか……」

優希「無理だ、無理だじぇ……あんなの、あんな深すぎる気持ちが相手なんて……私じゃ」ギュッ






咲「優希ちゃんには、勝てない……!」


優希「咲ちゃんに勝てるわけ、ない……」

今回はここまで

投下します

――3日後……

京太郎「ツモ、1300オールです」

「うわあ、また負けちまったか」

「須賀ちゃん、随分強くなったじゃないの。 バイト始めた頃とは雲泥の差だ」

京太郎「ありがとうございます」

京太郎(咲と優希から話を聞いて3日経った)

京太郎(正直俺は2人に好きって言われても、まさかあんな強い気持ちでいたなんて思ってもみなかったのかもしれない)

京太郎(考える、いつか決めるって口では言っていても、結局俺は和の時みたいにこのまま答えを出さずにズルズル行くつもりだったんじゃないのか……最近はそんな突拍子もない事すら頭に浮かんで)

京太郎(和にふられてそんなにしない内にあいつらを意識する自分がどうしようもなく軽い奴な気がして、俺は今こうして麻雀に逃げている)

京太郎(少なくとも麻雀を打ってるこの瞬間は、そういった事を考えなくてすむから)

京太郎(咲と優希も最近はなんだかおとなしい……それにホッとしている自分が嫌で俺はさらに麻雀に逃げる)

京太郎(こんな事したって、何も解決しやしないのにな……)

まこ「京太郎!」

京太郎「っ、そ、染谷先輩?」

まこ「お客さんがあんたをご指名じゃ、行ってきてくれ」

京太郎「は、はい!」

まこ「……」

――……

京太郎「ありがとうございました!」

まこ「お疲れさん、客も減ってきたからちょっと休憩しんさい。 打ちっぱなしで疲れたじゃろ?」

京太郎「そうでもないですけど……わかりました」

――休憩室……

京太郎「ふう……」

京太郎(出来れば打ち続けていたいくらいだったんだけどな……さすがにそんな事して店に迷惑はかけられないか)

まこ「ほれジュース」

京太郎「えっ?」

まこ「わしも今から休憩じゃ。 隣ええか?」

京太郎「あっ、はい……」

まこ「んくんくっ……ぷはあ! 休憩時間のジュースは格別じゃな」

京太郎「おじさんみたいですよ染谷先輩」

まこ「なんじゃと? うら若い乙女を捕まえておじさんとは言ってくれるのう、京太郎」グリグリ

京太郎「す、すいませんすいません! 染谷先輩は十分女の子らしいです!」

まこ「わかればええんじゃ、わかれば」

京太郎「いてて……」

まこ「……何かあったか?」

京太郎「えっ……」

まこ「あんたの打ち筋は見せてもらった。 それが家に悩みを抱えて来る客と似たような打ち筋だったんでな……違うなら謝るが」

京太郎「……さすがですね、染谷先輩」

まこ「これでも人を見てきた経験は久にも勝ると自負しとるからな」

京太郎「話、聞いてもらえますか?」

まこ「もちろん構わんよ。 吐き出すだけでも少しは楽になれるじゃろう」

京太郎「ありがとうございます……」

――……

まこ「なるほどのう……」

京太郎「もう自分がわかんないんです……和にふられたばっかりなのに俺は咲にも優希にもドキドキして……節操なさすぎで嫌になっちゃいますよ」

まこ「うーむ……なあ、京太郎」

京太郎「なんですか?」

まこ「わしはあんたがそんな自分を責めるほど間違っとるとは思えんのじゃが」

京太郎「えっ?」

まこ「咲も優希もなかなかの器量よしじゃからの。 そんな2人に思いを寄せられて意識するなっちゅうのはそれこそ酷な話じゃろ」

京太郎「だけど俺は和にふられたばっかりで……」

まこ「はあ……京太郎、お前さんはちょっと真面目すぎるのう」

京太郎「真面目? 俺が?」

まこ「京太郎は自分の気持ちが和からあっさり咲や優希に移ったみたいで気分がよくないんじゃろうが……むしろあれだけ意識してなかったあんたがこうして2人を意識しとるのは進歩してるという事に他ならんと思うぞ?」

京太郎「……」

まこ「それに和にふられる前にも2人を意識する場面はあったんじゃないのか?」

京太郎「それは……」

まこ「つまりはそういう事じゃ。 無関心だったり悪感情を持ってたりするわけじゃない相手に思いを寄せられて悪い気がするような奴はほとんどおらんよ」

京太郎「俺、難しく考えすぎてたんですかね……」

まこ「わしは少なくともそう思うがの。 むしろあんたはなんだかんだでちゃんと考えとるから好印象ですらあるぞ?」

京太郎「そうですか?」

まこ「咲や優希が惚れるのもわからんではないと思うくらいにはの」

京太郎「……」

まこ「まあ、今は悩めばええ。 自分の気持ちを決めつけずじっくり自分に向き合ってこれからどうしたいか考えてみんさい」

京太郎「……はい」

まこ「おっと、もうこんな時間か。 それじゃあわしは仕事に戻るとするかの」

京太郎「染谷先輩、ありがとうございました」

まこ「ええんじゃよ、後輩の悩みを聞くのも先輩の仕事じゃ。 ああ、それと1つだけええか?」

京太郎「なんですか?」

まこ「言おうか言うまいか迷ったんじゃが……そこまで自分を責めるという事は、京太郎あんたまだ和に未練があるんじゃないのか?」

京太郎「!?」

まこ「だから2人の真摯な気持ちに対して、自分が宙ぶらりんな気がして自分自身が嫌になっとるように見えたんじゃが……まあ、さすがにそれは穿ちすぎか」

京太郎「……」

まこ「変な事言ってすまんの。 今のは忘れてくれ」

パタンッ

京太郎「まだ未練がある、か……」

京太郎「……」

京太郎「――やっぱり染谷先輩はすげえや」ゴソゴソ

ピッ

京太郎「……もしもし」

『もしもし?』

京太郎「よっ、ちょっといいか? 会ってしたい話があるんだけど……」

――公園……

京太郎「……」

和「お待たせしました」

京太郎「悪いな、こんな時間に呼び出して」

和「いえ、私も少し考え事が煮詰まっていたので……それでどうしたんですか?」

京太郎「いや、この前受け止めたつもりで逃げた事をちょっとはっきりさせときたくてな」

和「? 須賀君、いったい何の話を……」

京太郎「和、好きだ」

和「えっ……!?」

京太郎「この前は冗談なんて言って逃げちまった。 だけど今は違う……前に進むために、俺は本気で和に気持ちをぶつけたい……悪いけど話、付き合ってくれるか?」

和「須賀、君……」

京太郎「俺さ、元々和目当てに麻雀部入ったんだよ。 一年で、いや、学校中で噂になってるアイドル原村和に少しでもお近づきになりたくてな」

和「なんとなく、わかってはいました……自意識過剰な気がして、思わないようにしてましたけど」

京太郎「あちゃー、やっぱりバレてたのか……俺かっこわりいなあ」

和「そんな事……」

京太郎「いや、いいんだよ。 だから、はっきり言っちまうと麻雀自体に興味はあまりなかったんだ……まあ、一応メジャーな競技だし嗜むくらいはしておいて損はないかなって気持ちでさ」

和「確かに、入部したての頃の須賀君はあまり真剣とは言い難かったですね……」

京太郎「だけどさ、いざやってみたら麻雀って難しくてよ。 何回も負けて、それが悔しくて、和にいい所見せたくて必死に勉強しても役すら覚えきれなくて……」

和「……」

京太郎「その頃から和はただのアイドルじゃなくて、1人の雀士として憧れる存在になってた。 そうしたら色々見えてなかった和が見えてきて……結構感情的な所とか、ぬいぐるみがないと眠れない所、負けず嫌いな所とかな」

和「す、須賀君!」

京太郎「そういう所を知ってく度に俺は嬉しかったんだ。 和のただ外から見てるだけじゃわからない姿を知れたんだからな」

和「……!」

京太郎「だけど問題はそこからだ。 俺は和にいい所見せたいなんて気持ちで麻雀打ってた癖にそこで満足しちまった」

和「満足、ですか?」

京太郎「他の眺めてるだけの奴らじゃ知れない和を知ってそこでもういいんじゃないかってな……だから雑用に終始して練習出来なくてもあんまり気にならなかった。 個人戦で負けた時も清澄に泥を塗ったと思っても、それを抜いても悔しかったのかって言われるとそうでもなかった」

京太郎「結局俺は最初の頃と何にも変わってなかったんだよ……和がいたから俺は麻雀を始めた、和にいい所見せたくて俺は麻雀を上手くなろうと思った。 俺のまだ数ヶ月程度の麻雀人生において原村和以外ははっきり言ってどうでもよかったんだ……だけどさ、もうそういうのはやめようと思う」

和「須賀君……」

京太郎「俺は前を向きたい。 和にいい所見せたいためだけに麻雀やってた自分から、和を知れれば麻雀に負けたって気にしないなんて自分からおさらばしたいんだ」

和「……」

京太郎「だから和、悪いけど背中を押すと思ってはっきり言ってやってくれ。 冗談にした事でまだチャンスが完全に潰えてないなんて甘い事考えてる馬鹿な俺に……」

和「……」

京太郎「……」

和「――ごめんなさい」

京太郎「……」

和「前にも言いましたが、私は須賀君を友達以上に感じる事は出来ません……」

京太郎「……ああ」

京太郎(なんだろうな……この前冗談にした時はあんなに泣いたのに今回はむしろ清々しい気分だ。 自分の中のよろしくない部分含めて全部吐き出せたからか?)

和「須賀君……?」

京太郎「ありがとうな、和。 おかげで心のどこかでまだ期待してた馬鹿な俺はいなくなった」

和「そんな、お礼を言われるような事は私してません……」

京太郎「それでもだよ。 俺は感謝してるんだ」

京太郎(そうか、あの時俺が泣きたかったのは和にふられた事じゃなかったんだ……あの時俺が泣きたかった本当の理由は……)

京太郎「前に進むとか言っときながら、冗談なんて逃げ道作ってた自分が情けなかったんだ……」

和「えっ?」

京太郎「なんでもない。 よっしゃ、これからは違う目標で麻雀やんないとな! 色々教えてもらうと思うけど頼むぜ和!」

和「は、はい」

京太郎「よーし、まず狙うのは部活での一勝! みんなともっと対等に戦えるように頑張るか!」

和「……」

京太郎「うおおおお、やるぞー!」

和「――須賀君は、もうとっくにそんな気持ちで麻雀を打ってなかったと思いますよ」ボソッ

和(昨日咲さん相手に決めた槍槓、あれは勝ちを諦めないからこそ打った手……負けたって気にしないなんて嘘です、須賀君は既に私を中心にした麻雀から脱していたんですよ)

京太郎「へっ? 今何か言ったか和」

和「なんでもありません」

和(ですがそれを言う必要は今の須賀君にはなさそうですね……)

京太郎「悪かったな、こんな話するために呼び出しちまって。 送ってくから帰ろうぜ」

和「そうですね……お願い出来ますか?」

京太郎「おう、不審者の件もあるし友達を1人で帰すなんて出来ないしな!」

和「ふふっ、よろしくお願いしますね」

京太郎「おう!」

和(須賀君の決意を見た以上、私も頑張らないといけませんね。 傷つく事を恐れずに……)

和(咲さん、ゆーき、明日です。 明日私は……)

和(――何もかも全て、2人に話します)

今回はここまで

1つ訂正を

×和(昨日咲さん相手に決めた槍槓、あれは勝ちを諦めないからこそ打った手……負けたって気にしないなんて嘘です、須賀君は既に私を中心にした麻雀から脱していたんですよ)

○和(この前咲さん相手に決めた槍槓、あれは勝ちを諦めないからこそ打った手……負けたって気にしないなんて嘘です、須賀君は既に私を中心にした麻雀から脱していたんですよ)

劇中で3日経ってるのを忘れてました……

遅くなりました
投下します

――翌日……

ピンポーン……

和「よくいらっしゃいました。 どうぞ上がってください2人共」

咲「……」

優希「……」

和(予想以上に状況は深刻なようですね……とにかく私は私に出来る事をしましょう)

和「私は飲み物を取りに行ってきますので先に私の部屋に行って待っていてください。 ゆーきは何回か来ていますから知ってますよね?」

優希「うん……」

和「それでは咲さんを案内してあげてください。 それでは少し失礼しますね」スタスタ

優希「……咲ちゃん」

咲「……」ビクッ

優希「のどちゃんの部屋はこっちだじぇ、ついてきて……」

咲「う、うん……」

優希(勝ち目がない相手と一緒にいるのってこんなに辛いのか……麻雀なら強くなってやるって思えるのに、京太郎がのどちゃんを好きだってわかってても諦めなかったのに、今回は何しても勝てる気がしないじぇ……)

咲(私、優希ちゃんに何を勝てる所があるんだろう……いつもドジしちゃってみんなに迷惑かけちゃうような私より、京ちゃんだって……)

ガチャッ……

久「あら、遅かったじゃない2人共」

咲「部長……じゃなかった、竹井先輩?」

優希「なんでここに……」

久「和に呼ばれたのよ。 まあ本命はあなた達で私はたぶん数合わせなんだろうけど」

咲「それってどういう……」

和「お待たせしました、どうぞ」

久「ありがとう和、いただくわね……うん、美味しい」

和「ふふっ、ありがとうございます」

優希「……のどちゃん」

和「なんですかゆーき?」

優希「私と咲ちゃんにしたい話ってなんなんだ? それになんで元部長が……」

和「そうですね……その質問に答えるためにも1つ提案があります」

咲「提案?」

和「はい。 咲さん、ゆーき、そして竹井先輩……私と一回打ってくれませんか?」

久「打つって麻雀を?」

和「はい。 そうすれば自ずとゆーきの質問にも答えられますので」

久「何か考えがあるみたいね……うん、私は構わないわよ」

咲「私も……いいよ」

優希「じゃあ、私もやるじぇ」

和「ありがとうございます」

――……

優希「私が起家だな!」

優希(のどちゃんが何を考えてるのかはわからないけど……麻雀してる間はそれに集中出来るから願ったり叶ったりだじぇ)

優希「リーチ!」タンッ

久(二巡目リーチか……相変わらず速いわね)タンッ

咲「……」タンッ

和「……」タンッ

優希「のどちゃん、それロン! 親跳ね、18000だじぇ!」

和「はい」

咲(和ちゃん、何をするつもりなんだろう……なんだかいつもと違う気がする……)

優希「よし、一本場! このままガンガンやらせてもらうじぇ!」

久「あら、あんまり油断してると足をすくわれるわよ優希?」

優希「えっ」タンッ

久「例えばこんな風にね。 ロン、7700の一本場は8000よ」

優希「じぇ!?」

咲「地獄単騎、しかも私の槓材まで使って……やっぱり竹井先輩はすごいです」

久「あら、褒めても何も出ないわよ? さあ続けましょう」

久(和の真意はともかく、2人も少しは普段通りの顔に戻ってきたみたいね……さて、この半荘が終わるまでに何が起きるのかしら?)

――……

咲(オーラスだね……トップは竹井先輩、二位が私、千点差で優希ちゃんが三位……)

優希(のどちゃんが焼き鳥で断ラスか……珍しい事もあるんだな)

久(親とはいえ逆転するには相当な力量が必要……和、どうするつもり?)

和(……)

優希(なんだか、嫌な予感がするじぇ……)タンッ

和「昨日……」

咲「えっ?」

優希「じょ?」







和「昨日、須賀君に告白されました」






咲・優希「!?」ガタッ!

和「ツモ、1300オール。 一本場です」

咲「の、和ちゃん、今のって……」

久「咲、ちょっと落ち着きなさい。 優希もよ」

優希「だ、だって……!」

久「和は言ったはずよ、打っていれば自ずと話は出来るって。 だから続けましょう」

咲「は、はい……」

優希「わかった、じょ」

久(なるほどね、こういう時の抑止力のために私を選んだわけか……それじゃあお手並み拝見といかせてもらうわよ、和)

和「安心してください、私は須賀君を咲さんやゆーきのように見てはいません」

咲「ほっ……」

和「――最も」

優希「っ!?」

和「それは私がそうだという話でしかありませんが……ツモ、3200オールの一本場は3300オールです」

久「これはまた……」

和「須賀君は確かに見た目は軽い印象を受けますが、関わってみればそんな先入観をあっさりと払拭出来るほどいい人です。 きっと2人以外に彼に惹かれる人もいずれ現れるでしょう」

優希「!?」ポロッ……

和「ロン」

優希「あっ……」

和「4800の二本場は5400……ゆーき」

優希「……」

和「あなたは明るく振る舞っているその裏でいつも怖がっていましたね。 前はよく須賀君との距離は今のままでいいのか、最近では付き合いの長い咲さんに自分じゃ相手にならないんじゃないか……相談を受けた時、決まってゆーきは弱音を口にしていました」

咲「えっ……」

咲(優希ちゃんが、私を……?)

優希「だって、だって……あんな話聞かされたら、自信なんか……」

和「ゆーき、決めつけるのはまだ早いですよ?」

優希「でも……」

和「だって、咲さんもまたあなたを脅威に感じ、怯えていたんですから……そうですよね、咲さん」

咲「……!」ビクッ!

優希「咲ちゃんが、私に怯えてた……?」

和「そうです。 咲さんはたった数ヶ月で須賀君の隣にいるようになったあなたを怖がっていました……ただでさえ自分が須賀君に恋心を抱いた期間はあなたより短いのに、と」

咲「和ちゃん! その話は……」

優希「のどちゃんがなんでそんな事……もしかして」

和「はい、私は咲さんとゆーきの両方から須賀君に関して相談を受けていました……その事について申し開きするつもりはありません。 私が言いたいのは一つだけ……咲さん、ゆーき、あなた達は何をしているんですか?」

咲「えっ……」

和「あなた達はお互いに相手を高すぎる壁と判断して弱気になっています。 ですが2人にとって一番高い壁はもっと違うものだったはずですよ」

優希「……!」

和「須賀君をどうやって振り向かせるか……2人が最も悩んでいたはずの問題は今のように恋敵に怯えているだけで解決するものだったんですか? こうしている間にも名前も知らない誰かが須賀君と親しくしているかもしれないのにそんなに余裕でいいんですか?」

咲「……」

優希「……」

和「須賀君はもう前に進んでしまいましたよ。 そんな時に立ち止まって、手遅れになってから後悔したいんですか、咲さん、ゆーき!」

咲「……」

咲(和ちゃんの言う通りだ……好きになった時間が短くて、それでも付き合いは長くて京ちゃんにそういう目で見てもらえない……なら私は人一倍頑張らないといけなかったのに)

優希「……」

優希(私は、何をしてたんだ……まだ京太郎に好きになってもらってもいないのに咲ちゃんにどうしたら勝てるかなんて事ばっかり考えて、肝心な所を見落としてた……!)

咲・優希(私達が、本当に考えなきゃいけないのは……!)

咲「……和ちゃん」

優希「のどちゃん……」

和「なんでしょうか?」

咲「ありがとう、おかげで目が覚めたよ」ガタッ

優希「私達が一番に考えないといけない事……思い出せたじぇ」ガタッ

和「いえ……偉そうな事を言ってすみませんでした」

久「2人共帰るの?」

咲「はい、京ちゃんにアピールしないといけませんから!」

優希「3日も何もしなかったのは痛すぎる……だから一気に取り返してくるじぇ!」

久「あー……まあ、後悔しないくらいには頑張りなさい」

咲・優希「はい!」

ガチャッ、バタンッ……

久「……行っちゃったわね、まだ勝負ついてなかったのに」

和「いえ、大丈夫です」パタタタ……

久「あら」

和「天和、役満ツモ和了してましたので」

久「まくられたかー……やるようになったじゃない和」

和「偶然ですよ」

久「……でもよかったの?」

和「なにがですか?」

久「2人から相談を受けてた事を話しちゃって。 あの2人は気にしてなかったみたいだけど……何か言われるとは思わなかったの?」

和「そうですね……確かに少し怖かったです。 私がこんな事をしていると2人に知られたら友達でいられなくなるんじゃないか……2人が悩んでいる事がどれだけ無意味かわかっていてもそう思って口に出せませんでしたし」

久「だけどあなたはこうしてその事を話した……どうして?」

和「きっかけは、須賀君の告白でした。 須賀君は私の答えをわかっていたはずなんです、その数日前冗談と言いながら告白された時……私ははっきり断ったんですから」

久「なんでそんな事したのかはなんとなく想像つくけど……あの子も妙に律儀よね」

和「そうかもしれません。 ですけど確かにあの告白は私の中にあった恐怖心といいますか……それに似たものを壊してくれたんです」

久「ふーん……」

和「それに……」

久「それに?」

和「やっぱり、笑っていてほしいじゃないですか……友達には」

久「ふふっ、それもそうね」

和「この事が2人にどんな結果をもたらす事になっても私は祝福します、慰めもします。 だって咲さんもゆーきも私の大切なお友達、ですから」

久「和って……」

和「はい?」

久「いや、なんでもないわ」

久(和ってクールそうに見えて一年の中で一番感情で動く子よね……とは言わないでおきましょう)

――須賀家前……

咲「……優希ちゃん」

優希「……咲ちゃん」

咲「今さらだけど、私は京ちゃんが好き」

優希「私も京太郎が好きだじぇ」

咲「だからもう優希ちゃんに怯えたりしない、私は京ちゃんを振り向かせる事に全力を尽くすよ」

優希「せいぜい頑張ってくれ! だが最後に笑うのは私だじぇ、咲ちゃん!」

咲「……」

優希「……」

咲・優希「……ぷっ」


咲・優希「あはははははは!」

京太郎「おい誰だ、人の家の前で高笑いしてるのは……ってお前らかよ!」

咲「あっ、京ちゃん!」

優希「おぉ、京太郎!」

京太郎「な、なんか最近の暗さとか吹き飛んでんな……何かあったのか?」

咲「別にー、なんでもないよ!」

優希「ただ初心を思い出しただけだじぇ!」

京太郎「初心って……まあ、とにかく入れよ。 近所迷惑になるだろ」

咲「うん! 京ちゃんただいま!」

優希「ただいまだじぇ!」

京太郎「はいはい、おかえり」







     パシャッ……












パシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッ


「……」カチッ、カチッ……

「ちっ……」

「……」スタスタ……



シーン……

今回はここまで

和さんの言いたい事を要約すると
「横からさらわれたくないなら変な事で悩んでないでアピールでもしてなさい!」
に尽きます

それにしても最近京優成分が足りない、京優SS読みたいです先生……

それでは

遅くなりました
投下します

――数日後……

京太郎「おっと優希、それロンだ!11600いただこうか!」

優希「な、ななな……この私が京太郎にまくられただとぉ!?」

京太郎「くくく、オーラスまでひたすら耐えたかいがあったな……インターハイを経験したとはいえ集中力が元々よくない優希ならオーラス三位の俺相手に油断してくれるって信じてたぜ!」

優希「お、おのれ京太郎……!」

咲「もう、二人共落ち着きなよ……」

まこ「咲の言う通りじゃ、楽しそうなのは構わんのじゃが……一応挨拶までが対局じゃけぇ、もうちょっと落ち着かんか」

京太郎「あっ、すいません」

まこ「まあ、ここ数日のあんたらに比べたら随分見られる顔になったがの……さて時間も時間じゃ、今日はそろそろ解散とするとするか」

優希「もうそんな時間なんだな……おぉ、外も暗くなってきてるじぇ」

和「もう秋ですからね。虫の鳴く声もよく聞こえてきますよ」

咲「秋かあ……私は今年も読書の秋なのかな」

京太郎「あー、そういえば咲は中学の頃秋は一日中図書室籠もってた日もあったよな……」

咲「だ、だって読書の秋って聞いたら、文学少女としては本を読まなきゃいけないと思ったんだもん……」

優希「咲ちゃんは堅苦しく考えすぎだじぇ。あっ、ちなみに私の秋は……」

京太郎「はいはい、食欲食欲」

優希「おいこら京太郎!」

京太郎「なんだよ、違うのか?」

優希「……ふ、ふん、京太郎にしてはよくぞ見破ったと褒めてやるじぇ!」

京太郎「なんでそんな偉そうなんだお前は……」

和「須賀君、少しはゆーきの気持ちを察してあげてください」

京太郎「へっ?」

和「ゆーきも女の子なんですよ?好きな人の前で食欲旺盛な姿を見せるのはやっぱり恥ずかしいんです」

優希「ちょっ、のどちゃん!?」

和「あら、違いましたか?」

優希「う、ううー……」

咲「むうっ……」

まこ「ほれほれ、ラブコメやっとらんで早く帰りんさい。京太郎が部室の鍵を閉められんし外も本格的に暗くなってきとるからな」

――

カチャン

京太郎「これでよしっと、じゃあ俺鍵を返しに行ってくるわ。咲、優希、悪いけどちょっと待っててくれるか?」

咲「うん、帰りに夕ご飯の買い物していこうね京ちゃん!」

優希「なるべく早く帰ってくるんだぞ!」

京太郎「へいへい、それじゃあ部長また明日です」

まこ「おう、また明日な。じゃあわしらも行くとするか和」

和「はい。咲さん、ゆーき、須賀君また明日」

咲「うん、また明日ね!」

優希「また明日ー!」

――

京太郎「さてと鍵も返したし旧校舎に戻るとするか……んっ?」

京太郎「俺の下駄箱になんか入ってる……これは手紙か?」

京太郎「部活行くときは確かなかったよな……?」ビリッ

京太郎「えっと、なになに……」

京太郎「……」

京太郎「……」ゴソゴソ

京太郎「……」ピッ

京太郎「あっ、優希か?悪いけどちょっと用事が出来たから咲と一緒に先帰っててくれるか?」

京太郎「そんな怒るなって、埋め合わせは必ずするからさ……うん、うん、よろしくな」ピッ

京太郎「……ったく」タタタッ

――屋上

ガチャン

京太郎「……」

「よぉ、須賀」

「来てくれたんだな、嬉しいぜ」

「逃げたらどうしようかと思ってたよ」

京太郎「呼び出しといてよく言うわ……」

京太郎(男子が3人か……でもこいつら、どこかで見た事が……あっ、そうだ、あの時だ!)

京太郎「……お前らこの前麻雀部の部室の前でコソコソしてた奴らだな?」

「あっ、覚えてた?」

「だからマスクとかしようって言ったんだよ!」

「今更そんな事言ったってしょうがねえだろ!」

京太郎「それで何の用だよ?わざわざ手紙使って呼び出すくらいだ、何もないって事はないんだろ」

「まあな、おいあれ見せてやれよ」

「はいはいっと……なあ須賀、これなーんだ?」

京太郎「写真?」

「ただの写真じゃないぜ。須賀が同じ麻雀部員を家に連れ込んだ決定的瞬間ってやつだ!」ポイッ

京太郎「はっ……!?」パシッ

京太郎(これ、この前咲と優希が一緒に帰ってきた時の……こいつら、あの場にいて写真なんか撮ってやがったのか!?)

「いやあ、まさか2人も同時に家に連れ込むなんてさすが女だらけの麻雀部に堂々と入った奴は違うねぇ?」

「しかも部室の鍵まで任されてるんだろ?あそこベッドあるみたいだし部室でもよろしくやってんじゃねえの?」

「もしかして麻雀部員は全員既に須賀の奴隷になってたりして……うわ、怖いわー」

京太郎「……お前ら、こんな写真撮って何がしたいんだ?」

「んー?まあ、はっきり言わせてもらうなら……この写真ばらまかれたくなかったら麻雀部やめろや、須賀」

「全国優勝を決めた清澄高校麻雀部は不純異性交遊の温床だった!麻雀が人気なこのご時世だ、ゴシップネタだけどそこそこの金にはなりそうだぜ」

「須賀の軽そうな見た目なら説得力もあるしなあ?」

京太郎「……」

京太郎(なるほどね……要するにこいつらは俺を退部させるためにこんな事をしたわけか。今までにも雰囲気で麻雀部辞めろって空気出してくる奴らがいたけど、ここまで直接的に来たのは初めてだな……)

「それで須賀、答えは?当然決まってるよなあ?」







京太郎「……断るに決まってんだろアホらしい」






「はあ!?」

京太郎「これは2人に麻雀を教えてもらいに来てもらっただけだよ。鍵は最近暗くなってきたし女子達より男の俺が最後まで残った方がいいと思っただけだ」

「う、嘘だ!」

京太郎「そう思いたきゃ勝手にそう思ってろ。だけどな、少なくともこんなもん出されたって俺は麻雀部を辞めたりなんかしねえよ」ビリッ!

「須賀、てめえ……!」

京太郎「話はそれだけか?じゃあ帰らせてもらうわ、俺も忙しいんでな」

「絶対、後悔させてやるからな……!」

京太郎「……ああ、そうだ」

「あん?」

京太郎「一つだけ言っとくわ」

「なんだよ?」

京太郎「俺に何かしたいなら勝手にすりゃいいさ、だけどな」

京太郎「――麻雀部のみんなに手を出したら絶対に許さねえからな」ギロッ

京太郎「じゃあな」スタスタ

バタンッ!

「す、須賀の野郎……!」

「地区予選敗退の雑魚のくせにいきがりやがって……」

「だけどどうすんだよ、まさか写真に一切効果がないなんて……」

「ふん、やり方なら他にも色々とあるだろ」

「だな……」

「絶対に麻雀部から追い出してやるからな須賀ぁ……!」

――

京太郎「……」

京太郎(明日から色々ありそうだな……さて、どうしたもんか。釘は刺しといたけどもしあいつらが麻雀部に危害を加えるようなら俺は……)

咲「あっ、京ちゃーん!」

優希「遅かったな京太郎!」

京太郎「咲、優希……先に帰っていいって言っただろ」

咲「えへへ、京ちゃんが1人じゃ寂しいと思って」

優希「夕飯の買い物の荷物持ちも必要だしな!」

京太郎「お前らなあ……」

咲「ほら、早く行こ京ちゃん!急がないとスーパー閉まっちゃうよ!」

優希「帰りにタコスも買っていくじぇ!」

京太郎「わかった、わかったから引っ張るなって!」

京太郎(さっき考えたのはあくまで最終手段だな……俺はやっぱり麻雀部にいたい。みんなともっと麻雀を楽しみたいし……)

咲「今日は夕ご飯何にしようか?」

優希「タコス!」

京太郎「却下だ」

優希「なんで京太郎が答えるんだー!」

京太郎(――こいつらと一緒に馬鹿やっていたいから)

今日はここまで

更新します

――数日後

京太郎「……」

咲「京ちゃん、どうしたの?」

優希「下駄箱に何かあるのか?」

京太郎「いや、なんでもねぇよ。ほら早く教室行こうぜ」

京太郎(週明けに早速来やがったか……上履きのつま先部分に剃刀の刃なんか仕込みやがって……昨日の内に教科書全部回収しといて正解だったみたいだな)

――教室

京太郎「おはようっす」

咲「おはよー」

「ああ、須賀、咲ちゃん……」

京太郎「どうした?朝から浮かない顔しちまって」

「いや、な……」

咲「えっ、な、なにこれ……」

京太郎「うわ、こりゃまた派手にやられたな……」

京太郎(机がボロボロになってやがる……ったく、派手にやりすぎだっつうの。これじゃ咲達に朝隠した意味がないじゃねえか)

嫁田「朝来たらこうなっててよ。全くどこのどいつがこんな事したんだか……」

咲「きょ、京ちゃん……」

京太郎「そんな顔するなよ咲。これくらいで凹むほど俺は柔じゃないからな」

咲「で、でも……」

京太郎「それに俺は1人じゃないしな……そうだろ?」

嫁田「まあ、確かに……少なくともこのクラスにやった奴はいないだろうしお前の味方だろうけど」

京太郎「それなら問題ないな、うん」

咲「も、問題だらけだよ!京ちゃん、こんな事されて平気なの!?」

京太郎「平気じゃないさ。正直すごいムカついてる」

咲「だったら!」

京太郎「とは言っても俺はあくまで一学生だしな……まあ、咲は本当に気にしなくてもいいから」

咲「そんな……」

京太郎(まっ、こういうのは人望のある人間に頼まないとな……それに下手に話して咲や優希が巻き込まれるのは避けたいし)



「……」

――屋上

京太郎「というわけで竹井先輩、力を貸してください」ペッコリン

久「構わないけど……なんか意外ね」

京太郎「なにがです?」

久「須賀君ならこういうのは黙って耐えてそうな気がしたから」

京太郎「いやいや、俺だってそこまで殊勝じゃありませんって。辛ければそれを口にしますし、助けが必要なら求めますよ」

久「でも大方小規模なら私にだけ話して咲達には黙ってるつもりだったんでしょ?」

京太郎「うっ」

久「やっぱり……自分を好きな子達にかっこ悪いところを見せたくないって辺り須賀君も男の子ね」

京太郎「竹井先輩にはかないませんね……」

久「まあ須賀君をからかうのはこの辺にしておきましょうか。それで私に何をさせたいの?」

京太郎「三人の男子生徒の名前を教えてほしいんですけど……」

久「その三人が須賀君が見た不審者って事?」

京太郎「はい、間違いありません」

久「まあ一応全校生徒の顔と名前はある程度把握してるから、特徴さえ教えてもらえれば数日で確実に見つけてみせるわ。それで特徴は?」

京太郎「えっとですね……」



「……」

――廊下

京太郎「よし、とりあえず連中を探すのは竹井先輩に任せておけばいいだろう……後は麻雀部に関わる事だし染谷部長にも事情を説明して……」

優希「京太郎!」

京太郎「んっ?あぁ、優希か」

優希「話は咲ちゃんから聞いたじぇ!どうするつもりなんだ!」

京太郎「どうするも何も……まあ、何とかするさ。だからお前は気にしないで……」

優希「そんなの無理に決まってる!京太郎が、好きな人がひどい目に遭ってるのを黙って見ていられるわけないじぇ!」

京太郎「俺が誰にやられてるのかもわからないのに何するんだよ」

優希「うっ……」

京太郎「気持ちだけで充分だって。それに安心しろ、そんなにしない内に全部片付くから」

優希「……本当?」

京太郎「おぉ、本当だ」

優希「……わかった、京太郎を信じるじょ」

京太郎「そうしてくれ、後心配してくれてありがとうな」

優希「これくらいでお礼言われても困るじぇ……」



「……」

――中庭

京太郎「そういうわけなので、しばらく迷惑をかけてしまうかもしれませんけどよろしくお願いします」

まこ「それは構わんが……京太郎、あんた本当に大丈夫なんか?」

京太郎「別に慣れてますから」

和「えっ、須賀君はそういった経験があったんですか!?」

京太郎「いや、ここまで直接的なのは初めてだけどさ。まあ、うちが地区予選突破した辺りから1人だけ男子の俺に対する風当たりって結構強かったんだよ。しょっちゅう麻雀部辞めろって暗に言われてきてたしな」

まこ「そうだったんか……すまんの、そんな事知らんかった」

京太郎「いえいえ!染谷部長が謝る事じゃありませんよ!俺は別に気にしてませんでしたし……まあ、実力的に言えば辞めろって言われるのも理解できましたし」

和「須賀君は初心者なんですからまだまだこれからじゃないですか!そんな事もわからないで須賀君を退部させようとする方がおかしいです!」

まこ「和の言う通り、京太郎は少しずつじゃが確かに強くなっとる。そういう言葉は筋違いもいいところじゃな」

京太郎「ありがとうございます……そう言ってもらえるだけで俺、頑張れる気がします!」

まこ「何度も言っとるが、無茶だけはせんようにな?」

京太郎「はい!」



「……」

――部室

京太郎「ほい、リーチっと!」

優希「通さんじぇ!ロン、6400!」

京太郎「ぐえー!ていうかなんだよその待ちは!?悪待ちとか竹井先輩みたいな事しやがって……」

優希「ふっ、何とでも言うがいい……麻雀は和了った者こそ正義だ!」

京太郎「ぐぎぎ……」

和「ゆーきはまたそんな非効率的な……」ブツブツ

まこ「これ以上久みたいなひねくれ者が増えたら困るんじゃが」


久「好き勝手言ってるわね……」

咲「あの、竹井先輩」

久「あらどうしたの咲」

咲「京ちゃんの事でちょっと相談が……」

久「ああ、たぶん今咲が思ってるのと同じ内容で須賀君から相談受けてるわよ?」

咲「えっ」

久「意外だった?まあ須賀君も黙ってやられっぱなしでいる気はないって事みたいよ」

咲「そうですか……」

咲(京ちゃん、竹井先輩にはすぐ話したんだ……私じゃやっぱり頼りないのかな……)

久「……ふふっ」

咲「な、なんですか?その含み笑い……」

久「本当に咲はわかりやすいわね。どうせ須賀君が自分には何も詳しい事言わなかったのを気にしてるんでしょ?」

咲「そ、そんな事!」

久「ない?」

咲「……」

久「んー?」

咲「……あ、あります」

久「素直でよろしい」

咲「た、確かに私はすぐ迷子になっちゃうし力もないし鈍臭いし胸もちっちゃいし頼りないかもしれませんけど……」

久「はーい、ストップストップ。後少なくとも今は胸の大きさは関係ないと思うわよ咲」

咲「あっ、それもそうですね……」

久(これはまた重症ねぇ……しょうがない、2人共可愛い後輩だからどちらかに肩入れはしないつもりだったけど)

久「咲、須賀君は別にあなたが頼りないとかそんな理由で詳しい事を話さないんじゃないと思うわよ?」

咲「じゃあどうして……」

久「男の子はね、女の子の前じゃかっこつけたがるものなのよ……特に大切に思ってる子には、ね」

咲「……ふぇ?」

咲(京ちゃんが私に話してくれないのは……私を大切に思ってくれてるから……?)

咲「……」

久「……咲?」

咲「そ、そんな京ちゃんったら……」モジモジ

久「……これはもしかして裏目ったかしら?」

優希「むっ!?」

まこ「どうした優希」

優希「何か嫌な予感がする……女のカンってやつにビンビン来てるじぇ!」

和「またわけのわからない事を……後ゆーき、それロンです」

優希「じょ!?」

京太郎「うわー、親倍直撃とか同情するわ……」

優希「」チーン

まこ「優希のトビで終了じゃな。それじゃあ少し休憩するとしようかの」

京太郎「あっ、じゃあ俺飲み物買ってきますよ。何かリクエストあります?」

まこ「ええんか?すまんのう、じゃあお茶を頼む」

和「私はありますから大丈夫です」

優希「タコスジュース……」

京太郎「そんなものはない」

優希「ううー、じゃあオレンジジュースで妥協するじぇ」

京太郎「はいはい……竹井先輩と咲はどうしますー?」

久「ああ、じゃあ私はコーヒーをお願いしようかしら。咲は……」

咲「京ちゃんもそれならそうと言ってくれればいいのに……」

久「……なしでも大丈夫っぽいわね」

京太郎「わかりました、じゃあ行ってきます!」

ガチャッ、バタンッ

まこ「ところで久、咲の奴はどうしたんじゃいったい」

久「ちょっと慰めようとしたら失敗しちゃったわ。まあ、そんなにしない内に元に戻るでしょ」

まこ「何を吹き込んだんじゃ、全く……」

咲「京ちゃん、えへへ……」

優希「むー……」

――


京太郎「……とりあえず今のところは大丈夫だな。これくらいの嫌がらせなら数日間は余裕で耐えられそうだ」


「……」


京太郎「帰りにハギヨシさんにも連絡しないとなー。龍門渕ならいい防犯グッズも知ってるだろうし」


「……」


京太郎「とりあえず今一番の問題はえーっとコーヒーにオレンジジュースにお茶……俺は何を買うかって事だな」


ブンッ!


京太郎「――えっ?」






ガンッ!!

――部室


ガシャーン!!バタッ、バタンッ!

咲「ひゃっ!?」

まこ「な、なんじゃ今の音は?」

優希「様子を見てくるじぇ!」

咲「えっ、あっ、わ、私も行くよ!」

和「咲さん、ゆーき!?2人ともそんな何があるかもわからないのに……私も行きます!」

まこ「あっ、ちょっと待たんか!……全く一年組はどうも考えるよりも先に行動するのう、なあ久」

久「……」

まこ「久?」

久(なに、この嫌な予感は……でも、まさかそんな……)


咲『きゃあああああああっ!!』


まこ「今の声……咲か!?」

久「まこ、行きましょう!」

まこ「お、おぉ!」

――

久「何があったの!?」

優希「ぶ、部長ぉ……京太郎が、京太郎が目を覚まさないんだじぇ……!」ユサユサ

京太郎「……」グッタリ

まこ「京太郎!?」

咲「あ、あああ……京ちゃん、京ちゃあん!!」

和「あ、頭をどこかにぶつけたみたいで出血が……」

久「っ、保健室に行って保健の先生を呼んでくるわ!まこ、部室からありったけのタオル持ってきてちょうだい!」

まこ「わ、わかった!」

久「和、優希と咲を須賀君から引き離しなさい!状態がわからない以上揺さぶったら危険よ!」

和「は、はい!」

優希「離して!離してくれのどちゃん!」

咲「京ちゃん、なんで、なんで……」

優希「京太郎、京太郎ー!」

京太郎「……」

久(そんな、須賀君や私達の予想以上に事態は悪かったっていうの……!?)






「……」ニヤッ

今日はここまで

遅れてすいませんでした
更新します

――

久「ふうっ……」

咲「部長、京ちゃんは!?」

久「頭の傷は落ちた時に切っただけで見た目より大きな怪我じゃないみたい。縫う必要もないだろうしそんなにしない内に目も覚ますって言ってたわ」

和「よかった……」

久「ただ……」

まこ「まだ何かあるんか?」

久「切った傷とは別に……何かで殴られた痕が見つかったそうよ」

優希「!?」

咲「も、もしかしてそれって……」

久「それでここまで来たら情報を共有した方がいいと思うんだけど……みんなはどれだけ須賀君から聞かされてる?」

まこ「わしと和は京太郎が嫌がらせを受けとると聞いたの。下駄箱の剃刀だとか机をボロボロにされたとか言っとったが……」

咲「だから京ちゃん、朝下駄箱であんな顔してたんだ……」

優希「私と咲ちゃんは何も聞かされてないじぇ……ただすぐに片づくから心配するなって言われただけで」

和「2人は一緒に暮らしてますから巻き込まないようにしていたのかもしれませんね……」

まこ「それともう一つ……県予選を勝ち抜いた直後には京太郎が麻雀部におる事を快く思わんで言外に辞める事を要求する奴もおったと」

咲「そんな!京ちゃんだって立派な部員なのに……」

優希「どうして、どうして京太郎がそんな事言われなきゃいけないんだ!何も知らない癖になんで……!」

和「咲さん……ゆーき……」

久「……じゃあ、須賀君が現在進行形で麻雀部を辞めるように迫られていたのは知ってたかしら?」

咲「えっ……」

和「……はっきりと言ってはいませんでしたが」

優希「のどちゃん、知ってたのか!?」

和「……」

優希「どうして!どうして教えてくれなかったんだ!?」

まこ「やめんか優希!和だってはっきりそうだとわかっているわけではないのにあんたらを不安にさせるような事は言いたくなかったんじゃ!」

優希「っ……!」

咲「……その人達が京ちゃんをこんな目に遭わせたんですか?」

久「確証はないけどまず間違いないわね。今須賀君に危害を加えようとする心当たりはそこしかないもの」

咲「そう、ですか……」

久「とにかく咲と優希は須賀君についててあげて。私は先生達に事情を話してくるわ……もう一刻の猶予もないから」

まこ「わしも行くぞ。部長としてこれ以上変な連中に好き勝手はさせん」

久「そうね、じゃあまこは私についてきて」

和「私はどうしたら……」

久「和は2人と一緒に須賀君についてあげて」

和「わかりました」

久「……2人、特に優希が無茶しないように気をつけてね」

和「……はい」

――保健室

京太郎「……」

咲「京ちゃん……」ギュッ

優希「巻き込まないためとかなんとか知らないけど黙って傷ついて……こんな事されたって私達は嬉しくないじぇ、バカ……」ギュッ

和「……」

咲「なんでこんな事になっちゃったんだろう……私達が全国で優勝したから?」

優希「咲ちゃん……」

咲「こんな時、じゃあ全国行かなきゃよかったって言えれば楽になるのかもしれないね……」

和「咲さん、それは!」

咲「だけど、私言えないよ……みんなと一緒に頑張った事、京ちゃんがあんなに支えてくれてきた事を否定するなんて出来ないよ……!」ポロポロ

優希「京太郎だってそんなの望まないもんな……全く幸せ者だじぇ……」ポロポロ

和(私は、こんな時何も言えないんですか……2人の親友を自負しているのに、なんて情けないんですか……!)

――10分後

和「部長達、遅いですね」

咲「そうだね……保健の先生も出ていっちゃったし」

優希「京太郎も全然目を覚まさないじぇ……」

咲「……優希ちゃん、ちょっといい?」

優希「なんだじぇ、咲ちゃん」

咲「……」ゴニョゴニョ

優希「!?」

咲「……」ゴニョゴニョ

優希「……うん、そうだな」

咲「じゃあ……」

優希「わかった」

咲「和ちゃん」

和「は、はい!?なんでしょうか咲さん」

咲「ちょっと飲み物買いに行きたいんだけど一緒に来てくれないかな?」

和「えっ、それは……」チラッ

和(どうしましょう……咲さんを1人で行かせるわけにはいきませんし、かといってゆーきを1人にするわけにも……)

優希「すうすう……」

和「ゆーき?」

優希「ん、京太郎……」

咲「優希ちゃん、泣き疲れちゃったみたいだね」

和「そう、ですね」

和(これなら、少しくらい席を外しても大丈夫でしょうか……)

咲「和ちゃん、ダメかな……」

和「……わかりました。須賀君が目を覚ました時混乱するでしょうからなるべく早く戻りましょうね」

咲「うん」

ガラガラ、ピシャン

優希「……」

優希「……行ったか?」

優希「ごめん、のどちゃん」

――

和「……これくらいでいいでしょうか。咲さんは何を――」

シーン

和「咲さん……?ま、まさか迷子になったんですか!?」

和「迂闊でした、まさかこの距離で迷うなんて……咲さんを侮っていたようです」

和「とにかくゆーきが目を覚ます前に見つけないと……あの子を1人にしたら須賀君を襲った犯人を捜そうとしかねません……!」パタパタ

咲「……ごめんなさい、和ちゃん。そう考えてるのは優希ちゃんだけじゃないの」

優希「ここにいたのか、咲ちゃん」

咲「優希ちゃん……さっきはありがとうね」

優希「眠った演技とかしたことないから不安だったけど、上手くいったみたいでよかったじぇ」

咲「うん……」

優希「だけどまさか咲ちゃんから犯人捜しをしようと持ちかけられるとは思わなかったじょ」

咲「巻き込んでごめんね、優希ちゃん」

優希「ううん、私は1人でもやろうとしてたし咲ちゃんから声をかけてもらって嬉しかったじぇ!」

咲「優希ちゃん……」

優希「でも犯人捜しっていっても何をすればいいんだ?」

咲「私達京ちゃんに嫌がらせした人達の顔もわからないもんね……とりあえず京ちゃんの鞄を部室に取りに行こうか?」

優希「むむむ、勢い込んでもそれくらいしかやる事がないか……」

――部室

咲「……あれ」

優希「どうした咲ちゃん」

咲「部室に誰かいるみたい……」

優希「えっ」

「おい、早く見つけろよ!あいつが管理してる以上ここに鍵があるはずなんだからな!」

「うるせえよ!だいたいなんで直接襲うなんて馬鹿な真似したんだ!?」

「しょうがねえだろ!須賀の野郎を辞めさせるにはあんなチマチマしたやり方じゃダメなんだよ!」

「も、もしバレたら俺達ただじゃすまないよな……」

「だからその前に須賀を喋れないようにするんだろ!」

「鍵を俺達が持ってていつでも部員達に何か出来るってわかれば、あいつだって黙って辞めるだろうからな」

「それしかないんだ……もう引き返せないんだよ俺達は!」

「それはわかってるけどよ……」

優希「あいつらが……!」

咲「優希ちゃん、待って!男の子3人が相手だよ!?私達だけじゃどうしようもないよ!」ヒソヒソ

優希「じゃあどうするんだ!?このままあいつらが部室を漁るのを黙って見てるのか!?」ヒソヒソ

咲「……とにかく今のこの状況を誰かに伝えないと。優希ちゃん、携帯で音が出ないようにしながら写真撮れないかな?」

優希「そうか、それをみんなに見せればいいんだな!よし、まかせるじぇ!」

「何をまかせるって?」

咲「あっ……」

優希「!?」

――保健室

京太郎「んっ……」

京太郎「ここは、保健室か?くそっ、頭がズキズキしやがる……」

京太郎「……そうか、俺は誰かに殴られたんだっけか。まあ、誰かと言ってもやった奴はだいたい想像つくけどな……まさか日にちも経たずにいきなりここまでやるとは思わなかったぞ……」

京太郎「だけどこうなった以上咲と優希は家に帰した方がいいな。あいつらが巻き込まれる前に何とかしないと……」

ヴー、ヴー……

京太郎「ん、メールか……優希から?」カチカチ

京太郎「……」

京太郎「!?」

――新校舎・廊下

和「はあ、はあ……咲さん、どこに行ってしまったんですか?」

久「ああ、もう!なんなの、あの分からず屋達は!?須賀君が襲われたって言ってるのに、はっきりと襲われたって証拠がないなら動けないなんて!あの怪我をどう見たら1人で転んだ事に出来るのよ!?」

まこ「気持ちはわかるが落ち着け……」

和「竹井先輩、染谷部長!」

まこ「おぉ、和か。どうしたんじゃ、そんなに汗を流して」

和「咲さんと飲み物を買いに行ったんですが、途中ではぐれてしまって……部長達は見ませんでしたか?」

まこ「見とらんが……なんじゃ、咲はまた迷ったんか?」

久「……優希はどうしたの」

和「泣き疲れたみたいで眠ってしまって……だから咲さんと2人で出てきたんですけど」

久「……やられたわね」

まこ「久?」

久「たぶん咲は迷子になったわけじゃないわ。優希と示しあわせて和を撒いたのよ」

和「えっ……」

久「ここで和と一緒に行っていなくなったのが優希なら和だってすぐに意図を読めたんでしょうけど、散々迷子になった事がある咲だからこそはぐれただけって可能性が出てくる……全くよく考えたわね」

和「そ、それじゃあ!」

久「保健室に戻るわよ!この考えが正しければきっと優希もいなくなってるはずよ」

まこ「くっ、あいつら無茶しおって!」

――保健室

久「……」

まこ「なんてこった……」

和「そんな……なんでゆーきも須賀君もいないんですか!?」

久「須賀君……」

――

京太郎「はあっ、はあっ……」

京太郎(誰にも言わずにここに来いと住所が書かれたメールには写真が添付されていた)

京太郎(縛られた咲と優希の写真……それが意味する事はたった一つだ)

京太郎「許さねえ……!許さねえぞ、あいつらあああああ!!」

京太郎(あいつらがとうとう俺以外にも危害を加えようとしてる……それもよりによって咲と優希の2人にだ)

京太郎「それだけはさせねえ……!咲、優希、頼むから、無事でいてくれよ!」

今回はここまで
次回は少なくとも優希誕生日SSが終わってからになると思います

すいません、遅くなりました
更新します

――???

咲「んっ……あれ……?」

咲(ここ、どこ……?)

優希「お、起きたか咲ちゃん!大丈夫か!?」

咲「優希ちゃん?私いったい……!?」

咲(て、手が動かない……し、縛られてる!?)

優希「私達京太郎を襲った奴らに捕まっちゃったみたいだじぇ……」

咲「あっ……」

咲(そうだ、私達京ちゃんに酷い事した人達を見つけてそれをカメラで撮ろうとして……)

優希「携帯取り上げられちゃったから助けも呼べないじょ……私達どうなるんだ?」

咲「わ、わからないけど……きっと誰かが助けに来てくれるよ!」


「それはどうかねぇ?」

咲「!?」

優希「お前、部室を漁ってた奴らの内の1人だな!」

「そう睨まないでくれよ。こんな事になってはいるけどこちらとしても危害は加えたくないんだからさ」

優希「ここまでしたら既に立派な危害だじぇ!」

「それもそうか……まあ、安心してくれ。目的がすんだらきちんと家に帰してやるよ」

咲「……どうして?」

「ん?」

咲「どうして、あなた達は京ちゃんに酷い事するの!?京ちゃんがいったい何したって……!」

「……」

咲「答えて!」

「気に入らないからだよ」

優希「は?」

「おい、来たみたいだぞ!」

「おう、今行く。じゃあせいぜい見てやってくれよ……あいつの最後をさ」

ガチャッ、バタンッ

優希「……最後って、なんの事だ?」

咲「ま、まさか……」

――

京太郎「メールで指定されたのはここか……」

京太郎(廃墟みたいだけど……元々雀荘だったのか?いや、そんな事今はどうでもいいな)

京太郎「とにかく急いで2人を助けないと……」

ギィィ……

京太郎「おい、来たぞ!出てきやがれ!」

「よぉ、よく来たな須賀」

「歓迎するぜ」

京太郎「咲と優希はどこだ!?」

「奥の部屋にいるよ。手荒なまねはしてねえから安心しな」

京太郎(奥の部屋か……ここには2人しかいないけどもう1人はそこにいるのか?だったら下手に手出すのも危険か……)

京太郎「こんなまねしといてよく言いやがる……さっさと2人を解放しろ!お前らの望みは俺が麻雀部をやめる事だろうが!」

「ああ、それなんだけどさ……どうせならお前の実力を見て決めようと思うんだよ」

京太郎「なんだと?」

「お前が女に現を抜かしてないなら当然麻雀もそれなりに打てるはずだよなあ?」

京太郎「……」

「ここは元々雀荘でな、まだ動く卓もあるんだよ」

「だからここで俺達と打ってトップを取れたらお前と奥の2人を解放して、俺達もおとなしく今までしてきた事を学校や警察に告白する。まさかド素人の俺達相手に逃げるとか言わないよなあ?」

京太郎「……お前ら、麻雀が運に左右されるものだってわかってて言ってんのか?」

「だけど俺達は生憎役とかもよくわからないんだよ。とりあえず同じ面揃えりゃいいんだっけ?」

京太郎「……俺がここに来るまでに警察に連絡してたらそんなくだらない勝負受ける必要ないだろ」

「それはねえな」

京太郎「なに?」

ギィィ

「だって俺がずっと見てたからな」

京太郎「……2人しかいないと思ったら俺を見張ってやがったのか」

「連絡されないか警戒するのは当たり前だろ?」

京太郎「……勝負を受けなかったら?」

「2人がどうなってもかまわないなら好きにしろよ」

京太郎「……とことんクズだなお前ら」

「なに、お前が勝負受けて勝てばいいんだよ」

「もちろん負けたら麻雀部は退部してもらうからな!」

京太郎「……わかった。受けてやるよ」

「それでこそ麻雀部だ!おい、奥から観客連れてきてやれよ!」

「おう」

京太郎「……」

「連れてきたぞ」

咲「きょ、京ちゃん……」

優希「京太郎!」

京太郎「咲、優希!」

「やる前に話くらいならしてもいいぜ?どうせこれが最後になるだろうからなあ」

京太郎「……言われなくても」スタスタ




「……なあ」

「あん?」

「もし須賀がトップ取ったらどうすんだ?まさか本当に全部学校とかに告白するのか?」

「んなわけねえだろ」

「じゃあ……」

「その時は喋れないようにしてやればいいんだよ、須賀も、あの2人もな」

「おぉ、怖い怖い……つうかなにお前ロリコンなの?」

「はあ!?別にそんなんじゃねえよ!」

「あーあ、じゃあ原村辺りも捕まえときゃよかったな」

「おいおい……」

「まっ、どっちにしろ三人がかりなら余裕だろう。せいぜいいたぶってやろうじゃねえか」ニヤァ



京太郎「咲、優希」

咲「京ちゃん、あのその……」

優希「京太郎……」

京太郎「こんの馬鹿!」

咲「ひうっ!?」

優希「うっ……」

京太郎「お前らは気にしないでいいって言っただろ!もし取り返しのつかない事になってたらどうするつもりだったんだ!?」

咲「ご、ごめん、なさい……」

優希「ごめんだじぇ……京太郎……」

京太郎「はあ……といっても怪我して心配させた俺も偉そうな事言えないか。ごめんな、怖い思いさせて」

咲「う、ううっ……」

優希「ひっく、ぐすっ……」

京太郎「泣くな泣くな。これからちゃんと麻雀でケリつけてくるからさ。帰ったら咲は肉じゃが、優希はタコスでも食わせてくれよ」

咲「うん、うんっ……!」

優希「ま、まかせとけ……ううっ」

京太郎「じゃあ行ってくる。あっ、そうだ咲」

咲「な、なに?」

京太郎「お前にキーホルダー渡しただろ?一筒の形したやつ」

咲「う、うん」

京太郎「それ今持ってるよな?」

咲「あるけど……」

京太郎「じゃあそれ強く握って祈っといてくれ。俺が勝つってな」

咲「えっ……」

京太郎「お前の応援がありゃ、いつも以上の力出せる気がするからさ。頼んだぜ」スタスタ

咲「……」

優希「私には、何もなしか……咲ちゃん」

咲「ふぇ!?な、なにかな?」

優希「私のキーホルダーも渡しとくじぇ。咲ちゃんの方が効き目あると思うし……」

咲「優希ちゃん……」

優希「ほら、早く」

咲「……ううん、それは受け取れないよ」

優希「……なんで」

咲「京ちゃんを応援したいのは優希ちゃんも同じでしょ?だから2人で応援しようよ、京ちゃんを」

優希「咲ちゃん……」

咲「ね?」

優希「……うん!それじゃあどっちが京太郎を勝ちに導けるか勝負だな!」ギュッ

咲「ふふっ、そうだね」ギュッ

京太郎「待たせたな」

「最後のお別れはすんだか?」

京太郎「へっ、帰ってからの話をしてたんだよ」ギシッ

「けっ……」

京太郎「勝って帰らせてもらうぜ……お前らなんかに絶対負けないからな」

「その自信がどこまで続くか楽しみだ」

京太郎「……」

カラカラッ……

「須賀、お前の親からだぜ」

京太郎「起家か……」

「さあて、麻雀部唯一の男子部員のお手並み拝見といかせてもらおうか」

京太郎「……」

京太郎手牌

578m 2468p 35567s 東 ドラ6s

京太郎(俺には、咲や優希みたいな力はない。運も人並みだし、技術だってまだまだ勉強中だ)

京太郎第一ツモ東

京太郎(でも、なんでだろうな……)

「……」東

京太郎「ポン!」

京太郎(たとえどんなにこいつらが強かったとしても……)

京太郎「ツモ!」

「なっ!?」

「……」

「ちっ……」

京太郎手牌

567m 345p 5556s / 東東東 ツモ6s

京太郎「ダブ東ドラドラ、4000オール!」

京太郎(負ける気がしねえ!)

東一局

京太郎37000(+12000)
モブC21000(-4000)
モブB21000(-4000)
モブA21000(-4000)

短いけど今回はここまで

ちなみに
モブA……京太郎を殴りつけた人。過激な発言はほとんど彼
モブB……京太郎の机をメチャクチャにしたり、下駄箱に剃刀仕込んだ人。
モブC……京太郎と咲、優希の写真を撮った人。弱気な発言多し

一応モブ3人はこんな感じです

おつおつ

>578m 2468p 35567s 東
>567m 345p 5556s / 東東東 ツモ6s

7sフリテンなのはわざと?

>>567
あー……最初からここはツモ和了させるつもりだったから正直フリテンを全く意識してませんでした
指摘ありがとうございます

遅れましたが更新します

――東一局一本場・親京太郎

京太郎(とりあえず幸先いいスタートだ。出来ればさっさと終わらせて帰りたいところだけど……)

「どうした須賀、あの2人の事でも気になるのか?」

「安心しろよ。アドバイスされたらたまんねえから隣の部屋に行かせたけど、しっかりこれからお前が負ける様子はそこのカメラから隣に置いてあるテレビで見てもらってるからなぁ」

京太郎「元々廃屋だったのにそこまでするなんてご苦労なこった……だけど残念だったな!」

「あ?」

京太郎「リーチ!」

「なっ!」

「またかよ……!」

京太郎「ツモ!2600オールの一本場は2700オール!」

「ちっ、クソが!」

京太郎「言っただろ、お前らに負ける気はしない!」

「……」

(おい)パクパク

(んっ?)

(そろそろやるぞ)

(ああ、わかってるよ……)ニヤッ

優希「やった、やったぞ咲ちゃん!また京太郎が和了ったじぇ!」

咲「うん!この調子なら京ちゃんストレートに勝てるね!」

東一局一本場結果

京太郎45100(+8100)
モブC18300(-2700)
モブB18300(-2700)
モブA18300(-2700)

――東一局二本場・親京太郎


京太郎(さて連荘は出来たわけだけど……麻雀勝負を仕掛けてきたからにはこいつらもこのままで終わるとは思えない。動かねえ内に稼いどかねえと)

「……」トントントン

「……」打3p

「ポンだ」

京太郎(っ、ツモ番飛ばされたか……)

「……」トントントントン

「……」打4p

「おっとそれもポン」

京太郎(また飛ばされた!?)

「……」コツ

「……」打1m

「俺もポンだ」

京太郎(三回目……!)

「んー?どうしたよ須賀、そんなに睨んじゃって」

京太郎「……なんでもねぇよ」タンッ

「はい、ローン!」

京太郎「なっ!?」

京太郎(しまった、山越し……!)

「えーっと?6400だっけか」

「二本場だから+600だぞ」

「ああ、そうだったそうだった。ほら須賀、7000よこしな」

京太郎「……ほらよ」ジャラッ

東一局二本場結果

京太郎38100(-7000)
モブC18300(0)
モブB18300(0)
モブA25300(+7000)

――東二局・親モブC

「ポン」

「それポンだ」

「はいはい、ポンと」

京太郎「……」

京太郎(間違いねぇ、こいつら……!)タンッ

「ロンだ!これはわかるぜぇ、満貫で8000だ!」

京太郎「くっ!」

京太郎(通ししてやがる……!)

咲「きょ、京ちゃん、逆転されちゃった……」

優希「雲行きが、怪しくなってきたじぇ……」

東二局結果

京太郎30100(-8000)
モブC18300(0)
モブB18300(0)
モブA33300(+8000)


――東三局・親モブB

京太郎(通しされて飛ばされて山越し直撃もしてくる……合わせ打ちすれば振り込む事はないけどそれだと手が進まない……!)

「ツ、ツモ!2000、3900」

「親被り……痛いな」

「おいおい、モブC。このままじゃモブBが飛んじまうぞ」

「わ、悪い悪い……」

京太郎「……」ググッ


咲「京ちゃん……」

優希「京太郎……」

東三局結果

京太郎28100(-2000)
モブC26200(+7900)
モブB14400(-3900)
モブA31300(-2000)

――東四局・親モブA

京太郎「……」タンッ

「ポン!」

京太郎(モブAが俺の捨て牌を鳴いた?俺のツモ番を飛ばす目的じゃないって事か……まあ、またすぐ来たからよしとしとくか)

――数巡後

「カン!」

京太郎(……おいおい、マジかよ)

モブA手牌

■■■■■■■ / 中中中中 白白白

「ちっ、外れか!」タンッ

京太郎(發はまだ河に一枚も出てない……ツモにしろロンにしろ親の大三元なんてされたら誰かが飛んで終わっちまう!)スッ

京太郎ツモ發

京太郎「!?」

京太郎(ここで引かされた!この發を出すなんて出来ないしここは……)タンッ

「ロン」

京太郎「ぐっ!」

「8000、逆転だな」

「おいどうした須賀よぉ、最初の頃の勢いはどこいっちまったんだ?」

京太郎「……」ギリッ


咲「あ、危なかった……京ちゃんがあそこで振り込んでなかったら……」
モブA手牌

345m 77p 發發 / 中中中中 白白白

優希「モブCがあぶれてた發捨ててモブAが大三元和了ってたじぇ……」


京太郎「くうっ……」

「……」

「おい、モブB」コソッ

「なんだよ」

「なんで和了ったんだ、お前が見逃せば俺がモブA和了らせて終わってたのに……」

「……何言ってんだモブC、お前が出してもモブAは見逃したぞ」

「は?」

「当たり前だ、そんな簡単に終わらせてやるわけねえだろ。須賀の奴にはもっと痛い目見せてやらないとなぁ……」

「だそうだ」

「お、おいおい……」

東四局結果

京太郎20100(-8000)
モブC26200(0)
モブB22400(+8000)
モブA31300(0)

――南一局・親京太郎

京太郎「……」タンッ

京太郎(頭を切り替えろ、今のは大三元を回避できたと思っとけばいい!まだ点差は十分にひっくり返せる範囲内だ!)

京太郎「チー!」

京太郎「ポン!」

京太郎「チー!」

京太郎(奴らが鳴いてツモ番を飛ばそうとするなら、とにかく速攻かけて和了るだけだ!)

京太郎「ツモ!」

京太郎手牌

444m 8s / 666m 4【5】6p 345s   ドラ4p

ツモ8s

京太郎「喰いタンドラドラ2000オール!」


咲「京ちゃん、頑張って……」

優希「負けるな京太郎ー!」

南一局結果

京太郎26100(+6000)
モブC24200(-2000)
モブB20400(-2000)
モブA29300(-2000)

――南一局一本場・親京太郎

京太郎(よし、いける……なんでもいい、とにかく和了るんだ!)

「ポン!」

京太郎(くそっ、またか!)

「……」

(須賀の奴、目が全然死んでない……なんでだ、意味がわかんねえ!モブAやモブBの奴がいたぶろうとしてる事も、イカサマされてんのだってとっくに気付いてるだろうになんでそんな目ができるんだこいつ!)

「ツモ!跳満3000、6000!」

「また一本場の+忘れてるぞ」

「おっといけねえ、3100、6100だったな」

京太郎(親被りで最後の親番も潰された、いてえけど……三局で二万点の差ならまだ、まだいける!)

南一局一本場結果

京太郎20000(-6100)
モブC21100(-3100)
モブB17300(-3100)
モブA41600(+12300)

――南二局・親モブC

(須賀の奴、やっぱり諦めてない……)

京太郎「……」タンッ

(本当にこのままやって大丈夫なのか?このままやったら、須賀に逆転されるんじゃないのか……)

「……」

(いつもなら、鳴いてモブAの支援しておくところなんだろうけど……)

(モブCの奴、何してんだ……早くどの牌なら鳴けるか教えろよ!須賀のツモを飛ばせないだろうが!)

京太郎「おいモブA、もう二分だぞ……いつまで固まってるんだよ」

「ちっ!わかってるよ!」タンッ

「……」

京太郎「……」タンッ

「ロン!11600だ!」

京太郎「……ほら」ジャラッ

(よし、須賀から直撃取ったぞ!いつもみたいに鳴いてたら無理だったな……)

(モブCの馬鹿が、こっちの言う事も聞かないで勝手な事しやがって……!)

(……モブCはもう駄目だな)

南二局結果

京太郎8400(-11600)
モブC32700(+11600)
モブB17300(0)
モブA41600(0)

――南二局一本場・親モブC

「……」グッ

「ほれ」打1s

「ポン」トントントン

「そら」打3p

「ポン」コツコツコツコツコツ

「ほらよ」打5m

「ポン」

京太郎(終わりが近づいてきたせいか露骨にやってやがる……!)

(モブAもモブBも俺を無視するのか……さすがにさっきのはまずかったのか……)

「ツモォ!1300、2600、おっと一本場だから1400、2700だ!」

(モブCの馬鹿はもういらねえ!怖じ気づいて自分勝手にやるならお前も叩き落としてやるまでだ!)

南二局一本場結果

京太郎7000(-1400)
モブC30000(-2700)
モブB15900(-1400)
モブA47100(+5500)

――南三局・親モブB

「ツモ6000オール」

京太郎「……」

「はははは!残り1000点!?無様なもんだなあ須賀よぉ!」

京太郎「……」

京太郎(残り二局で、トップと約40000点差……こりゃキツいな……)

「もう諦めたらどうだ?お前が勝てる可能性なんて万に一つもないんだからよ」

京太郎「何回も言わせんな、お前らに負ける気はしないっつうの……二局ありゃ充分だ」

京太郎(これは俺だけの戦いじゃない……咲や優希のためにも負けるわけにはいかないんだよ!)

「けっ、言ってろ」

「まあせいぜいあがけばいいさ」

「……」


咲「ううっ、京ちゃん……」ギュウッ

優希「京太郎ぉ……」ギュウッ

南三局結果

京太郎1000(-6000)
モブC24000(-6000)
モブB33900(+18000)
モブA41100(-6000)

南三局一本場・親モブB

京太郎(よし、清一ドラ4聴牌!これを和了れば充分逆転は狙える!)


優希「やった!京太郎が大物手を聴牌した!あれさえ和了ればまだまだオーラスでまくってのトップを狙えるじぇ!」

咲「うん!」


京太郎「……」タンッ

「……」タンッ

京太郎「っ!ロ……」

「ローン!」

京太郎「なっ……」

「頭ハネだ、悪いなあ須賀」

京太郎「う、くっ……」

京太郎(こんな、よりによってこんな時に頭ハネなんて……!)

京太郎「く、そっ……!」

京太郎(残りはオーラスの一局のみ……逆転するには――)







京太郎(役満をツモ和了するしか、ない……!)











南三局一本場結果

京太郎1000(0)
モブC17300(-6700)
モブB33900(0)
モブA47800(+6700)






本日はここまで

ちなみにモブ達がしている通しのサインは
萬子…牌を指で叩く
筒子…雀卓を指で叩く
索子…拳を握る
字牌…点棒入れの蓋を開け閉めする
となっています

更新します

京太郎「……」

京太郎(負けるのか、俺……?あんな大口叩いておきながら、咲や優希を助けられずに終わるってのかよ……!)

(須賀の奴、そろそろ折れるか?じゃあもういっちょ苦しんでもらいますかねぇ)

「おい、須賀」

京太郎「なんだよ……」

「もうさ、お前の負けはほぼ確定だ。お前は麻雀部からいなくなって、向こうの部屋の2人も俺達がたっぷりかわいがってやる……意味はわかるよなあ?」

京太郎「……」


咲「ううっ……」

優希「くっ……」


「だけどこっちとしてもさ、ここまでボロボロのお前をこれ以上いたぶるのも寝覚めが悪い訳よ」

京太郎「何が言いたいんだ、お前」

「なあに、簡単な話だ」

「――今負けを認めて2人のどちらか選べばそっちには手出さずに逃がしてやるよ」

京太郎「……!」


咲「そんな!」

優希「こ、こいつらどこまで……」


京太郎(こいつ、咲と優希、どっちかを俺に切り捨てろって言うのか……!)

「無駄に足掻いて2人共俺達の玩具にするか、どっちかだけでも確実に助けるか……悩む事じゃないだろう?」

(そんな気さらさらないくせにモブAの奴……とことん須賀をズタズタにする気なんだな。面白いから俺も乗っとくか)

「そうだな、確かに簡単な話だ。お前家にまで連れ込んでるなら気に入ってるんだろ、あの2人……その内より好きな奴を助ければいいだけだ」

京太郎(より好きな奴……咲と優希、どちらかを選ぶ……)

京太郎「俺は……」

京太郎(咲と優希、最近になってようやく向き合えてきた、俺を好きだって言ってくれる2人……勝手に人の家に上がり込んで、家探しまでして、色々あってそれでも一緒に暮らしてすっげえ楽しかった2人)

京太郎「俺、は……」

京太郎(そんな2人の内、どちらかを選ぶ、切り捨てる……俺が好きな方を助ける、見捨てる……)


咲「京ちゃん……」

優希「京太郎……」

京太郎「……」

京太郎(俺が助けたいのは、好きなのは……)

――優希『私は京太郎が好きなんだ!』

――咲『好き……京ちゃんが好き』

京太郎(……ああ、確かに……簡単な話だったな)

京太郎「決まったぞ……よく聞いてやがれ」

「で、どっちを選ぶんだ?」

京太郎「俺は……選ばない」

「は?」

京太郎「俺はどっちも切り捨てない!お前らに勝って、3人でこの息苦しい場所から出て行ってやる!」

咲「京ちゃん……!」

優希「それでこそ京太郎だ!」

京太郎「さあ賽を回しやがれ、モブA!泣いても笑ってもこのオーラスで終わり……この一局で全部ひっくり返してやるよ!」

「……けっ、そうかよ」カラカラ

「馬鹿な奴……」

「……」

――南四局・親モブA


京太郎(……ははっ、つくづくついてねえ配牌だな)

京太郎手牌

268m 279p 16s 中中 白 東 南

京太郎ツモ西

京太郎(ドラ一枚もないか……ったく、残り1000点でここから逆転とか無茶苦茶だっつうの)


咲「京ちゃん……」

優希「京太郎……」


京太郎(だけどまあ、もう覚悟は決まったわけだし……諦める理由はどこにもないんだよな!)

「須賀、いつまでも牌を睨んだって結果は変わんねえぞ!こっから逆転なんざ無理なんだからよ!」

「お前はせっかくのチャンスを棒に振った挙げ句、無様に負けて麻雀部から消えるんだ。もうそれしかないんだよ」

「……」

京太郎「うるせえよ、そんなの最後までやんなきゃわかんないだろ!」

京太郎(そうだ、思い出せ……麻雀部の皆は似たような苦境でも諦めたりなんかしなかった!)

「……須賀」

京太郎「だからなんだよ」

「……お前、ここから勝つつもりなのか?自棄になってるわけじゃなくて、本気で」

京太郎「……そうだよ」

「くっ、ははは、こりゃ傑作だ!」

「役満ツモらなきゃ絶対勝てないのに、運良くそんな手が入る訳ないだろう」

「……もしそんな事が出来るんだとしたら、そんなの奇跡としか言えないぞ」

京太郎「……だったら」

京太郎(奇跡を起こすしか勝てる道がないなら……)

京太郎「起こしてやる、絶対に」

「……!」

「無理無理!運が絡む麻雀でよ、そんな事が出来るんだとしたらただのクソゲーじゃねえか」

「そもそも麻雀なんか運次第なんだから練習なんか意味ないだろ、なあモブA」

「全くだぜ、結果が悪かったってそんなもんどうせ運が悪かっただけなんだから一々気にするのも馬鹿馬鹿しいわ」

京太郎「……」

「まっ、だからさっさと諦めろや須賀……お前は運が悪かったんだよ」

「どうせお前だって女の子と部活したかっただけだろ?散々いい思いしたんだろうしさ、そろそろ俺達と代わってくれよ、な?」

「……」

京太郎「……」タンッ

打…西

「ちっ、最後までいけ好かねえ奴だ……なあ、さっさと終わらせようぜ」

「時間かけるのも面倒だしな」

「……」

京太郎(なあ、麻雀に神様がいるなら聞いてくれ)

京太郎手牌

268m 279p 16s 中中 白 東 南

ツモ3m

打…東

京太郎(これから先、一生麻雀で勝てなくてもいい。 配牌が最低続きでもいい)

2368m 279p 16s 中中 白 南

ツモ9p

打…2p

京太郎(だけど俺は、こいつらには……こいつらだけには負けたくねえ!)

2368m 799p 16s 中中 白 南

京太郎ツモ南

打…6s

京太郎(俺は諦めねえ……清澄高校麻雀部にはな、諦めるなんて言葉はいらねえんだよ!!)

2368m 799p 1s 中中 白 南南

ツモ中

打…白


咲「なんだろう……」

優希「咲ちゃん、どうした?」

咲「京ちゃんが、いつもと違う気がする……」

2368m 799p 1s 中中中 南南

ツモ1m

打…7p


優希「でも!残り1000点から逆転なんて、無理ゲーにも程があるじぇ!」

咲「じゃあ、諦める?」

優希「そうしたいけど、目をそらしたいけど……京太郎が全然諦めてないのに、そんな事できるわけないじぇ……」

咲「うん、そうだよ……私達は最後まで京ちゃんを応援しよう優希ちゃん」

優希「うん……」

咲「京ちゃん……頑張って!」


12368m 99p 1s 中中中 南南

ツモ9p

打…6m


優希「聴牌を取らずその牌を切る……」

咲「逆転を狙うのならもうこれしかない……」

優希「……京太郎勝てるよね、咲ちゃん?」

咲「信じよう……京ちゃんを」


1238m 999p 1s 中中中 南南

ツモ南

京太郎「――リーチ!」

打…8m


優希「リーチか……だけどこれじゃツモったとしてもリーチツモ、中、ダブ南、三暗刻、チャンタで倍満……まだ足りないじぇ!」

咲「一発がついて裏ドラが3つ乗ればいけるけど……京ちゃん、お願い引き当てて!」

優希「神様、仏様、ええいこの際なんでもいいじょ! 京太郎を、京太郎を勝たせてくれ……!」







「ポン!」





咲「ああっ!?」

優希「一発が、消えた……」

咲「裏ドラが3つ乗っても三倍満で届かない……ここまで、なの?」

「一発が消えちまったな?どうするよ、須賀ぁ!」

京太郎「……」スッ

123m 999p 1s 中中中 南南南 ツモ南

京太郎「……」ニッ

優希(えっ……)

咲(京ちゃん、笑ってる……?)

京太郎「ありがとよ、モブA」

「あ?」

京太郎「お前が鳴いてくれたおかげでこの牌が来てくれたんだからな……カン!」

123m 999p 1s 中中中 / 南南南南

新ドラ9p

優希「カ、カン!?」

咲「ド、ドラが3つ乗ったよ!後1つ役があれば……あっ」

優希「まさか京太郎が狙ってるのって……」

咲「京ちゃん……!」

京太郎(最後まで諦めない……そうさ、だって俺は)

優希「いけ、やっちゃえ京太郎!」

咲「引いて、京ちゃん!」

京太郎(――清澄高校麻雀部の一員なんだからな!)

123m 999p 1s 中中中 / 南南南南

嶺上牌……1s

京太郎「ツモ」

「なっ!?」

京太郎「リーチ、中、ダブ南……」

「う、嘘だろ……そんな事、あるはずが……」

京太郎「チャンタ、三暗刻、ドラ3……裏はなし」

「……やられたな」

京太郎「嶺上開花……数え役満、8000、16000だ!」



南四局結果

京太郎33000(+32000)
モブC9300(-8000)
モブB25900(-8000)
モブA31800(-16000)

――


咲「……」

優希「……勝った」

咲「京ちゃんが、京ちゃんが……勝った!勝ったよ優希ちゃん!」

優希「やった、やったじぇ咲ちゃん!京太郎が、京太郎がやってくれたじぇー!」


「あそこから逆転されるなんて嘘だろ、おい……」

「そんな、まさかこんな……」

「……須賀」

京太郎「約束は守ってもらうぞ」

「ああ、わかってる……あの2人連れてこんな所おさらばしちまえ」

京太郎「言われなくてもそうするっつうの」スタスタ

「須賀!」

京太郎「んっ?」

「……悪かったな、色々」

京太郎「……ああ」スタスタ

「ふうっ……おい、モブAもモブBもいつまでしょげてんだよ」

「……」

「もう終わったんだよ。俺達はあれだけ有利だったのに負けたんだ……抵抗するのは情けないと思わないか?」

「……」

「だ、だからさ、最初に須賀と決めた通り、おとなしく全部話して――」

「――黙れよ、裏切り者」ブンッ

「えっ?」

グシャッ!

京太郎「咲、優希!」

咲「京ちゃん!」

優希「京太郎!」

京太郎「おわっ!?あ、危ないから2人していきなり抱きつくなって……」

咲「ご、ごめんなさい」

優希「でもでも!思わずそうしちゃうくらいに今のオーラスかっこよかったじぇ!」

京太郎「そ、そうか?」

咲「う、うん!優希ちゃんの言うとおりだよ!」

優希「私、京太郎に惚れ直しちゃったじぇ!」

咲「そ、それも優希ちゃんの言うとおりだよ……」

京太郎「そうか……そりゃよかったな」クシャクシャ

咲「えへへ……」

優希「くすぐったいじぇー……」

京太郎「それじゃあ帰ろうぜ。とりあえず学校で和達に謝らないとな」

咲「ううっ、やっぱり和ちゃんも染谷部長も竹井先輩も怒ってるよね……」

優希「でも心配かけたのは事実だからおとなしく叱られるじぇ……」

京太郎「まあ、俺も一緒に謝るからそんなにビビるなって。さてとじゃあまずは竹井先輩辺りに連絡――」

咲「あっ……!」

優希「京太郎!」

京太郎「えっ、どうし……うわっ!?」

ガンッ!

咲「あ、ああ……」

優希「はあ、はあ……!」

京太郎「い、いきなり引っ張るなよ!っていうか今の音は……」

「死ねよ須賀ぁ!」ブンッ!

京太郎「なっ!?」

「ちっ、外した……!」

京太郎「モ、モブA!お前鉄パイプなんて振り回して何のつもりだ!」

「お前さえ、お前さえいなければ……」

京太郎「聞く耳持たずかよ……」

京太郎(くそっ、部屋の入り口を陣取ってやがる。俺1人ならともかく後ろに咲と優希がいる状態じゃ逃げる前にきっと……!)チラッ

「お前なんか、お前が、お前のせいで……須賀ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

京太郎「っ!?」

咲「京ちゃん、ダメー!」

優希「や、やめろぉ!!」

京太郎(やべえ、ちょっと目離した隙に近寄られた……避けるのも防ぐのも今からじゃ間に合わない……頭に、当た――)

ガツンッ!

京太郎「……」

咲「……」

優希「……」

京太郎「……あ、れ?」

京太郎(痛く、ない?)

「ぐっ、ぐぎぎ……!」

????「須賀君、宮永様、片岡様、無事ですか?」

咲「あっ……」

優希「えっ、えっ?」

京太郎「……ああ、そうだ」

京太郎(この人を呼ぶために、咲にキーホルダー握らせたんだった……)



京太郎「ハギヨシさん!」

ハギヨシ「すいません、少々位置の把握に手間取ってしまいまして……ですがもう安心してください」

「くそっ、くそっ!う、動かねえ……!」

ハギヨシ「既に警察と救急には連絡してあります。向こうの部屋で確保いたしました2人の内1人は怪我をしておりましたので、簡単な応急処置も施しておきました」

京太郎「そ、そうですか……」

京太郎(あ、相変わらずだなハギヨシさん……鉄パイプ握りながらにこやかに話してるし)

ハギヨシ「そういうわけですので、あなたで最後なのですがいかがいたしましょう?こちらとしても手荒な真似はあまり好ましくないのですが……」

「う、うるせえ!」

ハギヨシ「そうですか、ならば――」グシャリッ

「ぐえっ!?」ドサッ

ハギヨシ「申しわけありませんが、しばし眠っていただきます」

京太郎(鉄パイプ持ったまま曲げるわ、腹に一撃入れて気絶させちまうわ……ハギヨシさんって本当にすごい人だ……)

――

京太郎(こうして俺達の周りを騒がせたモブA達の監禁事件は終わった)

京太郎(俺達も事情を話すって事で警察に行き、色々話してたら終わったのは夜)

京太郎(そこから竹井先輩とか咲と優希の親が来て2人がお説教されたりとかさらに色々あって……)

京太郎(俺達が家についたのは夜8時以降の事だった)

京太郎「あー、疲れたー」

咲「色々あったもんね……」

優希「ううっ、拳骨された頭がまだ痛むじぇ……」

京太郎「まあ、下手したらそれじゃすまなかったんだし、むしろ良かったと思っとけよ」

優希「ううー……」

カピ「キュー!」トコトコ

京太郎「おっ、ただいまカピ。いい子にしてたかー?」

カピ「キュー♪」

咲「そういえば……まさかあのキーホルダーにGPSだっけ?そんな機能がついてたなんて知らなかったよ」

京太郎「あのキーホルダーはまだお試しなんだと。強く握らないとGPS機能自体が動かないらしいし、コストの問題とかなんとかで天江さんのモチーフの一筒にしかつけられなかったとかなんとか言ってた」

咲「……でもなんで私にこれを?」

京太郎「そりゃ……咲は迷子になりやすいからな」

咲「やっぱりそんな理由なんだね……」ガクッ

京太郎「まあそれがあったからハギヨシさんが来てくれたんだし、結果オーライって事で」

咲「そうだね……ねぇ、京ちゃん」

京太郎「うん?」

咲「心配かけて本当にごめんなさい。それと……」

優希「あっ、咲ちゃん、抜け駆けはなしだじぇ!えっと京太郎!私もその、ごめんなさい。それと……」

咲・優希「助けに来てくれて、ありがとう」ニコッ

京太郎「!」ドキッ

咲「そ、そういえば今日のご飯は肉じゃが作る約束だったね!私キッチン行ってくる!」パタパタ

優希「わ、私もタコス作らないと!」パタパタ

京太郎「……まいったな」

京太郎(俺は、モブA達に咲と優希のどちらか選べと言われた時、どっちも選ばなかったんじゃない。どうしてもどちらかを選べなかったんだ)

京太郎(だってその時俺が思ったのは……)

京太郎「2人共誰にも渡したくない、か……」

咲「京ちゃん、どうしたのー?」

優希「早く来ないとカピがタコス食べちゃうじぇー!」

京太郎「ああ、悪い!今行く!」

京太郎(もう間違いない……俺は、2人共好きになり始めてる……本当にどうしようもないな俺は)

京太郎「どうしたもんかなあ……」

本日はここまで

長々と放置して申し訳ありませんでした
明日の夜に更新します

寝落ちした……
とりあえず今から更新開始

――???

咲「京ちゃん……」

優希「京太郎……」

京太郎「ま、待て、お前ら、落ち着け!話せばわかる……」

咲「そんなの無理だよ……」

優希「私達もう待てないじぇ」

京太郎「だ、だからってこんな……!」

咲「だから京ちゃん」

優希「選べないなら2人まとめて愛してもらう!」

京太郎「ちょっ!?だから待っ――」

ドスンッ!!

――京太郎の部屋

京太郎「……」

京太郎「夢?」

咲「きょ、京ちゃん、今すごい音したけど大丈夫!?」

京太郎「ああ、ちょっとベッドから落ちただけだから大丈夫だよ」

咲「それならいいんだけど……もう朝ご飯は出来てるから着替えたら降りてきてね」

京太郎「おう、わかった」

咲「それじゃあ先に戻っ……!」

京太郎「んっ?」

咲「……」ジー

京太郎「ど、どうした?」

咲「う、ううん、なんでもない!邪魔しちゃってごめんなさい!」

バタンッ!

京太郎「なんなんだ咲のやつ、人をジロジロ見て。つうか邪魔って何の話……」ギンギン

京太郎「……あっ」

京太郎「待て咲、お前はとんでもない勘違いをしてるぞ!これはあくまで生理現象で、別に何かしていたわけじゃ……」

京太郎「さ、咲ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

――

咲「ご、ごめんね京ちゃん……」

京太郎「いや、こちらこそお見苦しいものを見せて……」

優希「……」

咲「み、見苦しくなんかないよ!京ちゃんのなら、私……」

京太郎「待て、お前何を言う気だ!?」

優希「……」

京太郎「ああ、もうじゃあこうしよう!俺も前にお前の見ちゃったしおあいこ……」

咲「お、思い出させないでよぉ!」

京太郎「す、すまん!」

優希「……なぜだじぇ」

京太郎「……優希?」

咲「優希ちゃん?」

優希「なんで咲ちゃんばっかりそんなハプニングに遭遇してるんだじぇ!私だって咲ちゃんが見られてから脱衣所で待ってたり色々してるのに!」

京太郎「そんな事してたのかお前は!」

優希「ううっ、なんでだ。パンチラした時も京太郎は反応してくれなかったし何がいけないんだじぇ……」

咲「パ、パン……!?」

京太郎「あれはお前が部室で勝手にスカートめくりあげたんだろうが!」

咲「!??!!?!?」

優希「くっ、やっぱりおっぱい星人の京太郎にはもっと過激にいかないとダメか……」

京太郎「やめんか!」

京太郎(今やられたらシャレにならないんだよ!)

咲「もっと、過激……あうう」

京太郎「咲は何を想像してんだ……」

咲「ダ、ダメだよ京ちゃん、女の子にそんな事言わせるなんて……」

京太郎「すっげえ不穏だから戻ってきてください!?」

――教室

京太郎「はあ……疲れた」

「お疲れだなヒーロー」

京太郎「それはやめろっての。だいたいなんだよヒーローって……」

「そりゃさらわれた咲ちゃん達を1人乗り込んで助けたってんだからそう言われもするだろ」

京太郎「……」

京太郎(あれは俺がってよりハギヨシさんがすごいって話なんだけどな……むしろ俺ときたらあれから2人に変な……)

京太郎「はあ……」

「……なんか本当にお疲れだな。何かあったのか?」

京太郎「……なあ、ちょっと聞きたいんだけど」

「んっ?」

京太郎「同時に2人の女の子に惚れられてて、自分も2人共好きになってきてる奴ってどう思う?」

「……須賀、お前まさか」

京太郎「いや、例えばの話だからな!?」

「……本人達の気持ち次第なんじゃねえの?」

京太郎「だよなあ……」

「まあとりあえず言わせてもらうなら……」

京太郎「言わせてもらうなら?」

「リア充爆死しろ」

京太郎「だからあくまで例えだっての!」

――部室

京太郎「リーチ!」

和「通りません、ロンです」

京太郎「うぐっ!」

久「……ねぇ、咲、優希。本当に須賀君、それでしかまくれない状況で数え役満なんて芸当をしたの?」

咲「本当ですよ!」

優希「あの時はかっこよかったじぇ!」

久「うーん、それにしては普段と変わりないわよねぇ」

まこ「ふむ、つまり火事場の馬鹿力……もっと正確に言うんなら咲と優希のピンチに反応して瞬間的に強くなったちゅう事か」

和「そんなオカルトありえません。たまたまその時の須賀君がいい引きをしただけです。そんな偶然は二度とありません」

京太郎「……あの、和?」

和「なんですか」

京太郎「なんか怒ってないか……?」

和「……別に、須賀君には大して怒ってません」

咲「うっ」

優希「ぐっ」

久「まあ解決した時和がすごく怒ったから私からは何も言わなかったけど、確かに2人の行動は軽率だったわね」

まこ「言っとくが京太郎、あんたもじゃからな」

京太郎「……はい」

咲「反省してます……」

優希「ごめんなさい……」

和「……本当に反省してますか?」

咲「うん……京ちゃんがあんな事になって暴走しちゃった」

優希「ごめんね、のどちゃん……」

和「……もう、あんな事しないでください。親友を2人共失っていたかもしれないなんてあんな不安、私は二度と感じたくありません……」

京太郎「和……」

久「……まこ」

まこ「はいはい……」

久「須賀君、私達ちょっと外に出てるから」

京太郎「えっ」

まこ「こんな時は当事者だけにしとくべきじゃろ?じゃ、後は任せた」

京太郎「あっ、はい……」

京太郎(とは言っても……俺も居場所ない気がする)

和「須賀君」

京太郎「はい!?」

和「さっき言った事を訂正するつもりはありません。その時にあったような偶然は二度と起こらないですし、今回助かったのもただの結果論です」

京太郎「……ああ」

和「……ですが、須賀君が咲さんとゆーきを助けてくれたのも事実です」

京太郎「……」

和「だからあの時は言えませんでしたが……ありがとうございます、須賀君。2人を助けてくれて本当にありがとうございます……」

京太郎「元々あんな事になったのも俺のせいだからな。それに……」

京太郎(俺は2人を渡したくないって独占欲で動いてた部分もあったみたいだしな……)

咲「京ちゃん?」

優希「京太郎?」

京太郎「……なんでもない。とにかく俺はお礼を言われるような事はしてないからさ」

和「……わかりました。私も言いたい事が言えましたから、もうこの話を引きずるつもりはありません」

京太郎「んっ、サンキュー。それじゃあ続き始めますか」

咲「うん!」

優希「よっし、今度こそ一位を取ってやるじぇ!」

和「ゆーき、タコスを卓にこぼさないでください」

優希「うっ、ごめんだじぇ」

京太郎「何やってんだか……」

咲「ふふっ」

――須賀家

京太郎「じゃあ俺寝るわ。おやすみ」

咲「おやすみなさい京ちゃん」

優希「おやすみー」

咲「……優希ちゃん」

優希「なんだじぇ、咲ちゃん」

咲「京ちゃん、何か変だったよね?」

優希「むっ、咲ちゃんも気付いていたか」

咲「まあ京ちゃんの事だからね」

優希「さりげない自慢はいいじぇ……それで咲ちゃんはどう思うんだ?」

咲「何だろ、私達を見る目が変わったというか、むしろ見なくなったっていうか……」

優希「ふうむ、とうとう京太郎も陥落したのか?」

咲「だけど私にも優希ちゃんにも同じ反応してるよ?」

優希「……まさか」

咲「やっぱり優希ちゃんもそう思う?」

優希「いや、だけど……いくらなんでも、それは」

咲「でも多分間違いないよ……ねぇ、優希ちゃん。もしも、もしもだよ?」

優希「……」

咲「京ちゃんが、私達2人共を好きになってきてるって言ったら、どうする?」

優希「私は……」

本日はここまで

火曜頃更新します





そういえば咲キャラの身長と誕生日が公開されましたね

須賀京太郎…身長182cm
片岡優希…身長143cm

39cm差ですか、そうですか

優希「京太郎、今すぐ身長を縮めろ!」

京太郎「無理言うな!つうかなんで!」

優希「……出来ないじぇ」

京太郎「出来ないってなにが?」

優希「うー……不意打ちでキスが出来ないって言ってるんだ、察しろ馬鹿!」

京太郎「はっ!?」

……いいネタになりそうで美味しいです、はい

生存報告です

更新はもう少しお待ちを
ハーレムって難しい……

こんばんは

長い事放置しておいていきなりこんな事言うのもアレなんですが……ちょっと今の展開で全く続きが書けないのでこのスレをHTML化して話を根本的に見直したいと思います。
一応咲と優希ヒロインでのハーレム物としてこのSSを書き始めましたが、モブ関連など無駄な話を入れてしまって完全に話を破綻させてしまいました。

結末だけは決まってるのでちょっとしばらくはネタが浮かんだ京優SSを書いたりしながら、途中の展開など考え直します。
少なくともモブ関連のエピソードは全削除します。

それでは今までお付き合いありがとうございました。
本当にすいませんでした。

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