桜木「人を好きになるということ」(234)

――― 私、桜木ゆかりは、夜見山北中学3年3組のクラス委員を務めています

3年3組は、男女分け隔てなく仲が良い、とても良いクラスだと思います

最近は、男子のクラス委員で、真面目で勤勉な、風見智彦くんが私によく話しかけてきてくれます

風見くんとは中学1年の頃からの付き合いで、何かと私の世話を焼いてくれるのですが……

風見「やぁ桜木さん、今日も良い天気だね! 良かったら屋上で一緒にお昼食べない?」

風見「そのプリントの束重そうだね。良かったら僕にも運ぶの手伝わせてくれる?」

風見「桜木さんって兄弟とかいるの? 僕には弟がいるんだけど、最近やんちゃになってきて兄貴の面目丸つぶれだよ(笑)」

風見「今度の日曜さ、予定あったりする? 知り合いから映画のチケット貰ったんだけど、良かったら一緒にどうかな?」



桜木「……ふぅ」

藤巻「ねぇゆかり、アンタ風見のことどう思ってるの?」

桜木「えっ? どうって………真面目な男の子だと思もうよ」

藤巻「はぁ…言いたいことがあるならはっきり言った方がいいわよ。あの手のタイプは好きなものにはとことん執着してくるんだから」

中島「風見くん、桜木さんのことずっと見てるもんね」

桜木「ちょ…ちょっとやめてよ二人とも…。 風見くんとはそんなんじゃないよー……」

藤巻「…どうだかね。ま、何かあったら私たちに相談しな。あんまりしつこいようだったらガツンと言ってやるからさ」

中島「私、恋愛とかそういう経験ないから羨ましいなぁ。でもしつこいのはちょっと苦手だけどね…(苦笑)」

桜木「も…もぉー…だからそういうのじゃないのに…。…でも心配してくれてありがとう、二人とも…」

―― 確かに私は風見くんのことが嫌いというわけではありません

……良いか悪いかで言うと、間違いなく良い人だとも思います

そして……彼が私に好意を抱いてくれていることにも気付いています

けれど……私は今までに恋愛というものを経験したことがないので、彼からのアプローチに戸惑っているのは事実です……

そんなある時、私たちのクラスに転校生の男の子がやってくることになりました

久保寺「…えぇー、今月私たちのクラスに転入予定だった榊原くんですが、急遽入院先の病院で体調を崩してしまったようで、

予定を変更して5月からの転入となりました。…慣れない夜見山での生活を、クラスみんなでしっかりサポートしてあげてくださいね」


生徒「「「はーい」」」





赤沢「ねぇゆかり、ちょっといいかしら?」

桜木「え、なぁに?赤沢さん」

赤沢「今度私たちのクラスに転校生が来るでしょ。だから明日クラスの代表として、前もって彼のお見舞いに行っておかない?」

桜木「うん、そういうことなら喜んで♪」

風見「ちょっ…ちょっと待ってくれる? そういうことなら男子クラス委員の僕も一緒に行った方がいいと思うんだ」

赤沢「(ジロッ)……まっ、いいわ。彼の為に授業ノートのコピーでも持って行ってあげたら喜ぶかもしれないわね」

風見「ま…任せてよ!」

桜木「赤沢さんは転校生さんに随分と親切ですね。もしかしてお知り合いだったりします?」

赤沢「べっ…別にそんなことないわよ! とっ…とにかく明日彼のお見舞いに行くわよ!いい!?」

桜木「ふふっ。分かりました♪」

―― 翌日 夜見山病院 ――

コンコン


恒一「はい、どうぞー」

桜木・赤沢・風見「「「失礼します」」」

恒一「えっと……君たちは?」

風見「僕は風見と言います。君のクラスメイトになる予定の者なんだけど、今日は前もって挨拶に伺わせてもらいました」

恒一「そうなんだ。わざわざ来てくれてありがとう(ニコッ)」

桜木「……」

風見「桜木さん?」

桜木「……はっ。ごっ…ごめんなさい…。私は桜木ゆかりって言います。こちらの風見くんとクラス委員を勤めさせてもらってます」

風見「それでこっちは…」

赤沢「赤沢泉美」

恒一「あれ、 君、前にどこかで会わなかったっけ?」

赤沢「…そっ…そうだったかしら? そっ…それよりゆかりももっと挨拶して!?」

桜木「えぇっ!?// こっ…これから一年間よろしくお願いします(ペコッ)」

恒一「こちらこそ、よろしくね (スッ)」

桜木「よっ…よろしくお願いします//(ギュッ)」

風見「………」

赤沢「風見、早く授業ノートのコピーを」

風見「…あっ、そうだったね。はいこれ、一ヶ月分の授業ノートをまとめておいたよ」

恒一「わぁーありがとう! 助かるよ!」

赤沢「ところで榊原くん、恒一くんって……呼んでもいいかしら?」

恒一「え? あ、うん、どうぞ」

赤沢「ありがとう。それじゃこれからよろしくね、恒一くん(スッ)」

恒一「こちらこそ(ギュッ)」

桜木「あっ……あのっ!」

恒一「え、なに?桜木さん」

桜木「あ……いえ、やっぱりなんでもないです…。……来月からよろしくお願いしますね♪」

恒一「うん!」

風見「……それじゃ挨拶も済んだことだし、そろそろ失礼しようか?」

赤沢「そうね。それじゃまたね、恒一くん」

桜木「まっ……また学校で会いましょう!」

恒一「うん、また!」

風見「………」

―― のどまで出かかった……

私も「恒一くん」って呼んで良いですか?って……

……初めて榊原くんと会った時、何故だか彼のことをもっと知りたいって……そんな風に思ったんです

この気持ちが何なのかは……その時はまだ……分かりませんでした

―― 5月 ――

恒一「榊原恒一と言います。これからよろしくお願いします!」

久保寺「…皆さん仲良くしてあげてくださいね」





赤沢「ねぇ恒一くん、もう体は大丈夫なの?」

恒一「うん、今のところは」

桜木「あまり無理をしないで下さいね? 何かあったらいつでも力になりますから♪」

恒一「ありがとう二人とも。もし何かあったらよろしくね(ニコッ)」

―――

藤巻「ふーん、そういうことか……」

中島「え、何がそういうことなの?奈緒美ちゃん」

藤巻「見て分からない? ゆかりのやつ、あの転校生に気があるんだよ」

中島「え、そうなの!?」

藤巻「しーっ、声が大きい! …ゆかりはさ、確かに誰にでも優しい性格ではあるけどさ」

中島「うっ…うん」

藤巻「見てみ?ゆかりの顔。男に向けてあんなに楽しそうに笑ってる顔、今まで見たことある?」

中島「な…ないかも」

藤巻「でしょ? そうなると…ここはアタシたちがゆかりのサポートをしてあげるべきだって思わない?」

中島「サポート?」

藤巻「だから恋の手伝いだよ」

中島「でっ…でも、ゆかりちゃんには風見くんが……」

藤巻「あんなストーカー男、ゆかりにはふさわしくないわよ」

中島「す…ストーカーって(汗)でも榊原くんは夜見北にきたばかりだし、まだ彼のこと何も分からないよ?」

藤巻「ま、それは大丈夫だと思うわ。ゆかりは人を見る目があるし、何よりあの子が風見になびかないのは、

アイツが腹黒だって無意識に警戒している証拠でしょ?」

中島「そ…そうなのかな。ところで、榊原くんに注目している子結構いるみたいだけど…奈緒美ちゃんは気にならないの?」15

藤巻「別に。アタシはもっとワイルドな男が好みだし。そんなことを言うってことはアンタもしかして転校生に気があるの?」

中島「べ……別に私もそういうわけじゃ。カッコいいとは思うけど……榊原くんに対しての印象はそれぐらいかな」

藤巻「まっ、確かにアイツはイケメンね。

だったら余計に……ゆかりの恋路の障害になりそうなやつを近づけさせないようにしないと…(ニヤ)」

中島「な……奈緒美ちゃん、何かワルい顔してるよ?」

―――

5行目に余計な文字が入ってしまいましたが、気にしないで頂けると助かります

風見「ねぇ桜木さん、この後ちょっと大丈夫?」


―――

藤巻「げっ早速出やがった」

中島「…あはは…」

―――

桜木「え、なぁに?風見くん」

風見「 図書館で面白そうな本を見つけたんだけど、良かったらこれから一緒にどうかな?」

桜木「えっ……でっ……でも……」

藤巻「ねぇ風見。ちょっと私たち宿題で分からないところがあるんだけど、アンタ暇なら教えてくんない?」

中島「なっ……奈緒美ちゃん!?」

風見「え……でも僕はこの後……」

藤巻「どうせ図書館に行く暇はあったんでしょ? ならここで私たちに勉強教えてよ」

風見「う……」

桜木「風見くん、無理しなくていいですよ? 奈緒美ちゃんたちには私が付き合うから、私に構わず図書館に行ってきてください(ニコッ)」

藤巻「(お…こういう展開になったか)ま、アンタが無理ならいいわよ。クラス委員はもう一人いるんだし」

風見「……ちっ」

藤巻「あん? アンタ今舌打ちしなかった?」

中島「ちょっと奈緒美ちゃん……」

風見「ごめんね、それじゃ僕は行くよ。また今度ね、桜木さん(スタスタ)」

藤巻「何よあれ、やな感じ」

恒一「あはは…良かったの? 風見くんのこと」

藤巻「ま、たまにはゆかりからアイツを引き離してやらないとね」

中島「そうだよね……」

恒一「え?それってひょっとして風見くん、桜木さんのこと好きなん…」

桜木「わあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

恒一「!!?(ビクッ)」

桜木「あ、ごっごめんなさい! お母さんから頼まれてたこと急に思い出しちゃって!! 私、先に帰りますね!!」

藤巻「だったら転校生と一緒に帰りなよ。まだここ慣れてないんだし、途中まで送ってあげたら?」

桜木「!」

恒一「あ…でも桜木さん急用みたいだし、一人で大丈夫だよ」

桜木「あっ、そういえば用事は明日なんでした! 今日は大丈夫ですから、途中まで一緒に帰りましょ?榊原くん♪」

恒一「あ、そういうことなら。よろしくね、桜木さん」





藤巻「さて、これだけお膳立てしてやったんだから、ちょっとは進展させろよ」

中島「まぁゆかりちゃんなら大丈夫なんじゃないかな?」

赤沢「あなたたち、もう下校時刻よ。そろそろ帰りなさい」

―― 帰り道 ――

桜木「へぇ~、榊原くんは料理研究部に入ってたんですね」

恒一「うん、そうなんだ。男が料理なんて変わってるって…良く言われるんだけどね」

桜木「あぁー…確かに男の人が料理っていうイメージはあまりないですね…。でも料理できるってとても素晴らしいことだと思いますよ?」

恒一「そうかな?」

桜木「そうですよ。これからは男の人でも料理をして当たり前!っていう世の中になってくれれば良いんですけどね♪」

恒一「あはは、そうなってくれると嬉しいな。ところで桜木さんは料理とかするの?」

桜木「えぇ、私はよくお母さんのお手伝いをしていますから。あと休日にはお菓子を作ったりしていますよ」

恒一「お菓子か~、僕甘いもの好きだからお菓子作れるって羨ましいよ」

桜木「そうなんですね! 今度クッキーを焼こうと思うんですけど、良かったら試食してもらっても良いですか?」

恒一「本当に? それは楽しみだなー! 期待して待ってるよ!」

桜木「ふふっ、でもあまり期待されたら緊張して失敗しちゃいますよ?(ニコッ)」


ガサッ


桜木「?」

恒一「どうかした? 桜木さん」

桜木「…今何か音がしたような。……ううん、やっぱり何でもないです」

恒一「そっか。それじゃ僕はもうすぐだからこの辺で。またね、桜木さん」

桜木「うん……またね、榊原くん♪」

―― 彼との帰り道はあっという間でした

榊原くんとお話をしている間は……胸が温かくなって……

別れるのが少し寂しくて……

でも…また明日彼と会えるんだって思うと、何だか学校へ行くのが楽しみに思えてきます

―― 翌日 ――

風見「おはよう、桜木さん!」

桜木「あ、おはよう。風見くん」

風見「昨日は何だか変な空気になっちゃってごめんね」

桜木「こ…こちらこそ、図書館に付き合えなくてごめんね?」

風見「あぁそれならもう良いんだ。本ならもう借りてきているから。これ(スッ)」

桜木「私に貸してくれるの?」

風見「同じのがちょうど2冊あったからね。良かったら一緒に読み進めて感想の言い合いをしようよ」

桜木「ど…どうもありがとう。時間がある時に読んでみるね」

風見「うん、是非読んでみてよ」

>>57うむ


桜木とかいうのをスレタイにチョイスした>>1のミスだな


狙ったのかもしれんがね

>>64
いやはやスラダン読んだことが無かったのでこれは不覚でした
次回はなるべく気をつけます

ガラガラガラ


恒一「おはよう」

赤沢「おはよう、恒一くん」

桜木「!(タッタッタ)おはよう、榊原くん♪ 」

恒一「おはよう、赤沢さん、桜木さん」

風見「………」

恒一「ところでさ、桜木さん。昨日言ってたお菓子作りなんだけど、僕も怜子さんに教わって挑戦してみることにしたよ!」

桜木「そうなんですか!? それじゃ今度お互いに作ってきて試食してみませんか?」

恒一「良いねー、是非そうしようか!」

赤沢「あ…あなたたち随分仲良くなったみたいね…」

恒一「あはは。桜木さんとは結構通じるところがあったみたいで、すぐに打ち解けちゃったよ」

桜木「ふふっ♪」

赤沢「そ…そうなの…。ま…まぁクラスメイト同士で仲良くなることは良いことよね(ブツブツ)」

―――

藤巻「お、あの二人結構良い感じじゃない?」

中島「そうだねー。まだ恋人っていうには遠い気がするけど、随分仲良くなってるみたいだね」

―――


風見「桜木さん、さっきの本なんだけど、休み時間にでも読んでくれないかな?」

桜木「えっ?」

風見「早く感想が聞きたくなってね。僕も急いで読むから放課後にでも感想を言い合おうよ」

桜木「でっ…でも…」

赤沢「ちょっと風見、ゆかりが困ってるじゃない。それに本なんて一朝一夕で読んだところでちゃんとした感想が出るものではないわ」

恒一「赤沢さんの言う通りだと思うよ。僕もよく小説を読んでいるんだけど、感想を出すにはなるべくじっくり時間をかけて読みたいからね」

風見「……僕は今桜木さんと話してるんだから、二人はちょっと黙っててくれないかな……?」

桜木・恒一・赤沢「!?」

風見「で、どうかな? 桜木さん。僕としては早く感想を聞きたいんだけど」

桜木「ご……ごめんなさい。でもやっぱりすぐには……」

風見「そっか。それじゃまた改めて感想を聞きに来るよ(スタスタ)」

恒一「……風見くんっていつもあんな感じなの?」

赤沢「元々ゆかりには良く話しかけてたみたいだけど、あんなに嫌味な感じの風見を見たのは初めてだわ……」

桜木「………」

恒一「……事情は良く分からないけど、僕、風見くんとも仲良くなってみるよ!」


―――

藤巻「お、榊原…意外と男前なとこもあるじゃん」

中島「う……うん。でもさっきの風見くん…ちょっと怖かったな…」

藤巻「……そうね。このままだと何をやらかすか分からないから、なるべく奴をマークしていないと……」

中島「だ……大丈夫かなぁ……」

―――

―― 休み時間 ――

赤沢「ねぇ恒一くん、高校はどこに行くかもう決めたの?」

恒一「あ、僕は中学を卒業したら東京の高校に進学しようと思ってるんだ」

赤沢「へ…へぇ、そうなんだ」

桜木「東京の高校ですかー……私も行ってみたいなぁ」

恒一「来ればいいんじゃないの?」

桜木・赤沢「!?」

恒一「東京なら僕も案内できるし、何より知り合いが居た方が楽しそうだしね」

桜木「かっ……考えておきますね//」

赤沢「……私も真剣に視野に入れてみようかしら(ボソッ)」

風見「(スタスタ)ねぇ桜木さん、本はどこまで進んだかな? 僕は120ページまで進んだんだけど、これがまたハラハラする展開でさぁ」

桜木「あっ…ごっ…ごめんなさい、実はまだ読んでなくて……」

風見「そうなんだ…」

恒一「ねぇ風見くん、僕も読書が好きなんだけど、良かったら僕も混ぜてもらっていいかな?(ニコッ)」

風見「………それじゃまた放課後に聞きにくるよ。できればちょっとでも読んでおいてね、桜木さん(スタスタ)」

恒一「あ……行っちゃった」

赤沢「恒一くんを無視するなんて……あいつどんだけひねくれた性格になってるのよ」

桜木「………」

―――

藤巻「これは予想以上にヤバそうな展開ね……」

中島「う…うん…」

藤巻「このままほっとくとストーカーどころじゃ済まなくなるかも……」

中島「で…でも実際にまだ何か悪いことしたわけじゃないし……」

藤巻「そうね……」

―――

――― 風見くんが榊原くんのことを無視した時……私は、初めて彼に対し怒りの感情を覚えました

しかし……同時に、私自身が…戒めを受けるべき場面でもあったのです……

……私があの時、風見くんにちゃんと言いたいことを言っていれば……


『あんな悲劇を生まずに済んだかもしれないのに』

―― 放課後 ――

風見「(スタスタ)ねぇ桜木さん、本は読んでくれたかな?」

桜木「…ねぇ榊原くん、これから用事とかありますか?」

恒一「えっ? いや特にないけど……」

桜木「それは良かったです♪ これから本屋さんに行こうと思ってるんですけど、良かったら付き合ってもらえませんか?」

恒一「で…でも風見くんが」

桜木「それじゃ行きましょっか♪ 榊原くんに是非読んでもらいたい本があるんです(グイッ)」

恒一「さっ桜木さん?」

スタスタスタ

風見「……さくらぎ……さん……?」

藤巻「ねぇちょっとアンタ」

風見「さくらぎさんに……無視……された……?」

藤巻「ちょっと風見聞いてるの!?」

中島「な……奈緒美ちゃん……」

風見「ふふ……ふふふ……あの転校生のせいだ………そうじゃなければ……桜木さんは……ぼくの……(スタスタ)」

赤沢「……ねぇ藤巻さん、中島さん、ちょっと……いいかしら」

藤巻・中島「?」

―― 本屋 ――

桜木「これこれ、綾辻○人さんの作品なんですけど、ホラーが好きな榊原くんにはとってもオススメですよ♪」

恒一「あ…ありがとう。……桜木さん、ちょっと良いかな?」

桜木「え、なんですか?」

恒一「ここだとちょっと迷惑になるかもしれないから、一旦出ようか」



桜木「それで、私に話ってなんですか?(ニコッ)」

恒一「風見くんのことなんだけど……」

桜木「………」

恒一「さっき、どうして風見くんのこと無視なんかしたの?」

桜木「それは……今日の休み時間に、風見くんが榊原くんのことを無視したから……」

恒一「それで僕の代わりに怒ってくれたんだね……ありがとう。でも気持ちは嬉しいけど……」

恒一「僕は風見くんの気持ちも何となく分かる気がするんだ……」

桜木「えっ……?」

恒一「自分が好きな女の子と他の男が仲良くしてたら……やっぱり良い気分はしないんじゃないかな?」

桜木「………」

恒一「僕は好きな人ができたことがないから、あまり偉そうなことは言えないんだけど……桜木さんだったらどうかな?」

桜木「私は………きっと嫉妬すると思います」

恒一「そうだよね。だからさ、あまり風見くんのことを責めないであげて?」

桜木「榊原くんって……本当に良い人ですよね……」

恒一「えっ?」

桜木「自分のことを良く思っていない人とも仲良くしたいなんて………普通じゃ中々できないことだと思いますよ?」

恒一「そ、そうかな…?」

桜木「……はい。……風見くんとは明日、きちんと話をしてみます」

恒一「桜木さん……」

桜木「えへへ……ちょっと意地になっていたんだと思います」

恒一「え…?」

桜木「好きな人に無視されたら傷つくのと同じように……、

……自分の好きな人が無視されるのも良い気分はしないものですよ?(ニコッ)」


恒一「…それって……?」

桜木「榊原恒一くん、私はあなたのことが好きです。もし良かったら……私と付き合ってもらえませんか……?」

恒一「桜木さん……」

桜木「えへへ……出会って間もないのに告白なんてされたら、やっぱり戸惑っちゃいまよね。

だから、返事はまだしなくて大丈夫です。でも、明日からも普通通り仲良くしてくれると嬉しいです♪」


恒一「返事……」

桜木「え…?」

恒一「今しても……いいかな?」

桜木「…は…はい……」

恒一「桜木さんの言った通り、確かに僕たちは出会って間もないけど、君と話していると何だか心が穏やかな気持ちになるんだ。

それって、少なくとも君に好意を抱いている証拠だと思う。だから…もっとより深く君のことを知ることで、

その好意がもっと大きくなるかもしれない。だけどそれには、普通の友達同士の付き合いじゃ駄目なんだと思う…。

……だから……僕なんかで良かったら、これからは恋人として……よろしくお願いできるかな?」


桜木「(ジワッ)は……はい……! よろしく…お願いします!(ダキッ)」

恒一「あはは、こんなところで抱きつかれるとちょっと照れ臭いな// でも……君の事、必ず大事にするからね(チュッ)」

桜木「///」

――― この日、私と恒一くんは恋人同士になりました

人通りが少ない場所だったとはいえ、あんなところでのキスはちょっと照れ臭かったです

そして次の日、私たちのことを報告するために、風見くんと話をすることにしました

―― 翌日 教室 ――

恒一「えっ、休み!?」

赤沢「そうなのよ……昨日からちょっと体調を崩してしまってるみたいで…」

恒一「体調を?」

赤沢「……あなた達に隠していてもしょうがないわね。良いわ、本当のことを教えてあげる」



恒一「そんなことが……」

桜木「風見くん……」

赤沢「…それにしてもあなた達が付き合うことになっただなんて、私の方がびっくりしたわよ……」

恒一「あはは…(苦笑)」

赤沢「……ゆかり、しっかり恒一くんのことを捕まえておかないと、油断してたら危ないわよ?」

桜木「あ……赤沢さんったら……//」

赤沢「(ま…冗談のつもりでもないんだけどね…)ともかく、風見の様子を見に行きたいのなら地図を渡しておくわ」

恒一「ありがとう、赤沢さん」

桜木「そういえば、幸子ちゃんと奈緒美ちゃんは?」

赤沢「それが彼女たちと連絡つかないみたいなのよ……無断で欠席なんて、今度キツく言っておかなきゃ」

恒一・桜木「………」

―― 時は少しだけ遡り 風見家 ――


ピンポーン ピンポンピンポンピンポーン

藤巻「出ないわね……」

中島「ねぇ奈緒美ちゃん……やっぱり学校に戻ろうよ…」

藤巻「どうせ今から行っても遅刻だし、一日ぐらいフけても大丈夫だって」

ガチャッ

風見「………どうぞ」

藤巻「……失礼するわね」

中島「お……お邪魔します」

ギーーー バタンッ

風見「それで……僕に何か用?」

藤巻「あんた、ゆかりのこと好きなんでしょ?」

風見「あぁ……好きだよ。……それで?」

藤巻「はっきり言って、アンタはゆかりにふさわしくないわ」

中島「ちょ…ちょっと奈緒美ちゃん……」

風見「ほう……何でそんなことが言えるんだい?」

藤巻「アンタ……弟さんを事故で亡くしてたんだってね……」

風見「………知ってたのか」

藤巻「アンタは弟さんのことを深く愛していた……だけど別れは唐突にやってきてしまった。

愛情を注いでいた弟さんが突然いなくなって混乱に陥ってしまったアンタは、

以前から好意を抱いていたゆかりに……その愛情の矛先を変えた……」

風見「………何が言いたい」

藤巻「アンタがゆかりに注いでいる愛情はただの偽りよ……」

風見「………なに?」

藤巻「だから……アンタがやってるのはただの愛情の押し売りだって言ってんのよ!!」

中島「な……奈緒美ちゃん、お……落ち着いて!?」

風見「………ふっ、何を言い出すかと思えば。僕の桜木さんへの愛情は本物だよ。

例え弟が死んで混乱してしまったとはいえ、僕の彼女への気持ちは変わらない」

藤巻「……昨日ゆかりから電話があってね」

風見「………」

藤巻「あの転校生……榊原と付き合うことにしたんだって」

風見「…………なんだと?」

藤巻「だからアンタがゆかりにいくら愛情を注ごうと、ゆかりがアンタに気持ちがうつることは決してない」

風見「……あんな転校生ごときに……ゆかりがなびくはず……」

藤巻「少なくとも榊原はアンタなんかよりずっとしっかりしてるわよ。

自分に敵意を抱いているやつと友達になろうなんて、お人よしにもほどがあるけどね」

中島「それに……榊原くんはきっとゆかりちゃんを大切にしてくれると思う……」

風見「………黙れよ」

藤巻・中島「!?」

風見「ゆかりには……僕が必要なんだ……僕がいなきゃゆかりは……あんな転校生なんかと付き合ったら……」

藤巻「アンタなにを……?」

風見「ゆかりを満足させてあげられるのは僕だけなんだ………そうだ、ちょうどいい……」

風見「お前たちにはゆかりを満足させる為の……実験台になってもらう……」

藤巻・中島「!?」

風見「僕の純潔がお前たちみたいなメスガキに捧げられるのを光栄に思えよ?(ドンッ)」

藤巻・中島「「きゃっ!?」」

風見「そっちの地味な方にはしばらく待っていてもらおうか。暴れないように口と手足を縛らせてもらうよ…」

中島「!!? んーーーー!!!」

藤巻「ちょっ……ちょっと……家の人に言いつけるわよ!?」

風見「無駄無駄。あいつら弟が死んでから仕事にしか興味がなくなってるからな。

言っておくけど逃げようとしても無駄だよ。こいつを置いて逃げられはしないだろう?」

中島「……(涙)」

藤巻「っ…!」

風見「さ、そろそろ大人しくしてもらおうか。……(ビリッ)」

風見「ふん……ガキの癖に胸だけは上等だな。こっちはどうだ?(スルッ)」

藤巻「やっ…やめろ……(ポロポロ)」

風見「グレーか。見た目の割に案外地味なの履いてるんだな」

藤巻「い……嫌だっ……(ブルブル シャーーー)」

風見「っち、こいつ漏らしやがった!! 余計な手間かけさせるんじゃねーよ!(バシンッ)」

藤巻「いたっ!!!」

風見「(チラッ)ふん、大人しいと思ったらもう一匹の方は気絶してやがる」

藤巻「や……やめてくれ! ……た……頼む……!!」

風見「……そうだな。前戯はやめにして本番からいっとくか」

藤巻「!!?」

風見「(スルスル)っち…濡れてやがる……小便くせぇな」

風見「(カチャカチャ)それじゃ……いれるぞ」

藤巻「……(ブルブル)」

ガチャンッ


恒一「止めるんだ!風見くん!!」

風見「あ?」

藤巻「さ……さかき……ばら……?(ガクッ)」

桜木「……もうこれ以上誰かを傷つけるのはやめて!!」

風見「……さくらぎ……さん?」

桜木「……私の知ってる風見くんは……そんなんじゃなかったよ……」

風見「………」

桜木「皆に勉強を教えてくれて……クラスに揉め事があったら率先して止めてくれて……」

桜木「風見くんは………誰かを傷つけるなんてこと……絶対にしなかった!!!」

風見「………もう………遅いんだよ」

桜木「……え?」

恒一「風見くん………?」

風見「お前のせいだ………お前さえ転校してこなければ……ゆかりは……(ゴソゴソ)」

恒一「!! や……やめるんだ……!!そのナイフをこっちに渡して……!!」

風見「………(バキンッ)」

恒一「ぐっ……!? か……風見くん………」

風見「よく見ておけよ、ゆかり。こんな奴じゃ君のことを守るなんて到底できない……(バキッ ボコッ)」

恒一「…ぐっ……」

風見「ふん……所詮こんなもんだ……やっぱり君を守ることができるのは僕だけなんだ……」

桜木「それは……違うよ……?」

風見「あ?」

桜木「恒一くんは……あなたを傷つけたくなかったの……。

……例え自分が傷つけられても……絶対に誰かを傷つけたりなんかしない……とても強い人なんだよ!?」


風見「どうして……どうして分かってくれないんだよ!?……僕はこんなにも君のことを想っているというのに……!!」

桜木「かざみ……くん?」

風見「僕のものにならないんなら……もう君は不要だ。……その男とあの世で仲良くやってろ」

桜木「………」

風見「どうした? 逃げないのか?」

桜木「………私が動いたら……恒一くんがあなたに刺されてしまう……」

風見「最後までそいつの心配か。まぁいい。もう……オマエは……死ね!!」

桜木「………!!!」

グサッ


恒一「…………ガハッ」

風見「………!? ふふふ………あははははははは!!!! 最後は好きな女を守って死ぬか!!!!」

恒一「………女の子に………ナイフなんか………向けるもんじゃ………ない……よ……(バタン)」

桜木「い………いや………いやぁーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

風見「さぁもうこれで邪魔者はいなくなった。さぁゆかり……これからは僕たち二人の時間だよ?」

桜木「恒一くん!!しっかりして!!恒一くん!!!!」

風見「黙れ!!!(バキッ)」

桜木「きゃっ!!!」

風見「何でだよ……その男はもう動かないんだ……もう君は……僕だけのものなんだよ……?」

桜木「………(ポロポロ)」

風見「(ペロッ)君の涙は美味しいね。こっちも堪能させてもらうよ?(ムニュッ)」

桜木「!?(ビクンッ)い…いやっ……!!」

風見「大きくて柔らかいね、ゆかりの胸は。スカートも脱がせるよ……?(スルスル)」

桜木「お願い………もう……やめて………」

風見「ピンクか。やっぱりゆかりは下着も可愛いのを履いてるんだな」

風見「(クチュッ ニュルッ)それじゃ……いれるよ?」

桜木「………いやぁっ!!」



ゴンッ


風見「………ぐっ……あっ………!? (バタン)」

桜木「風見くん……!?」

藤巻「はぁ……はぁ……ゆかり!!……早く……救急車を……!!」

桜木「奈緒美ちゃん……!!」





――― この後すぐに警察と救急車が到着し、

恒一くんは危険な状態ながらも無事に生還………風見くんは壷で殴られたショックで……記憶喪失となってしまいました

風見くんのご両親は事情聴取のため、警察に連行されることになったそうです……

―― 後日 ――

ガラガラガラ

赤沢「おはよう、恒一くん」

藤巻「おっす、榊原」

中島「おはよう、榊原くん」

恒一「おはよう、みんな」

桜木「おはよう、恒一くん♪」

恒一「おはよう、ゆかり♪」

――― あの事件の後、風見くんは記憶が回復したものの

一部の記憶は欠落したまま……戻ることはありませんでした

その記憶というのは……弟さんを亡くしてからの一切の記憶です

風見くんは遠くの親戚の家に預けられることとなり、今は別の学校で過ごしているそうです





恒一「ねぇゆかり、今度あそこの遊園地に行ってみない?」

桜木「恒一くんと一緒なら、どこでもいいですよ♪」



――― 人を好きになるということは、悲しいこともたくさんあるのかもしれません

けれど、この先どんな困難があっても……好きな人のことを信じていこうと思います



恒一「あはは。それじゃあ今度の休み、一緒に行ってみようか」

桜木「はいっ♪ あ、あそこに何か見えますよ!」

恒一「え、どこ?」

桜木「……嘘ですっ♪(チュッ)」





終わり

お付き合い頂きありがとうございました
スレタイがまぎらわしかったようで申し訳なかったです

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