レッド「やられたらやり返す…倍返し(カウンター)だ!」【第一話】(89)

ー19XX年ー

【産業中央ポケモンセンター入社試験会場】


レッド「御センターに入って働く事が、私の夢でした」

面接官「ポケモンセンターなんてうち以外にもあるでしょう」

レッド「いいえ、産業ポケモンセンターでなくてはダメなのです。私はこのポケモンセンターに…恩返しがしたいのです」

面接官「恩返し?」

レッド「技ではありません」

面接官「わかってます」

レッド「私の実家は、小さなモンスターボール工場を営んでいます。しかし最大手取り引き先だったトキワ林業が倒産し、経営は大きく悪化しました。

『なんとかします、なんとかします』周りに必死に頭を下げ、そのストレスをぶつけるように『急所こい、急所こい』とポケモンバトルで運を頼りに戦うようになった父の姿はよく覚えています。

その数日後、父は過労で帰らぬ人となりました。

母が工場を継いでからも経営は良くならず、いよいよ工場が不渡りを出そうかとなった時に助けていただいたのが、カントー産業ポケモンセンターでした。御センターはうちの工場のボングリの加工技術の高さを見抜いていただき、様々な融資をほどこしてくださいました。

おかげで今でも母親の工場は細々ながら経営できています。だから私は恩返しがしたいのです!」


面接官「わかりました。質疑応答は以上になります。では次にパートナーポケモンを見せてください」

レッド「わかりました。…出てこい!」

ミナキ「……」

ミナキ「…へぇ」

【産業中央ポケモンセンター入社式】

ザワザワ…ワイワイ…

レッド「そこの席が空いてるな」

ミツル「うん」

ミナキ「やっぱりね、君は残ると思ってた」

レッド&ミナキ
「……?」

ミナキ「失礼、私はミナキ。タマムシ出身の人間だ。よろしく」

ミツル「み、ミツルです。ホウエン地方のトウカ出身です」ガシ

ミナキ「はいよろしく。…君はマサラタウンのレッドだね?」

レッド「えっ」

ミナキ「面接の時に一緒のグループでね。覚えていたんだ。よろしく。」

レッド「……よろしく」

ミナキ「ところで、お二人の希望部署は?俺は“希少種調査部門”かな。せっかく王手ポケモンセンターに就いたんだから、伝説と呼ばれるポケモンを見てみたいし願わくば共に戦いたい。特にスイクンとね」

ミツル「僕は…ポケモンやトレーナーの為になる仕事なら…」

ミナキ「おぉご立派。レッドは?」

レッド「…俺はもっと上にいく」

ミナキ「え?」

レッド「上にいって…やることがあるんだ」

ー現在ー


産業中央ポケモンセンター



カントー中央ポケモンセンター

【ジョウト地方コガネ支店】

キョウ
「実質5億の損失じゃ。貴様わかっておるのか!?これも全て見抜けなかった貴様の責任ではないか!!」

レッド「………」

キョン「ファファファ…なんだその目は?そんな目をする暇があるならワタル支店長に膝を地につけ頭を下げてはどうか!!」

ガッ!

レッド「…話が違います。あの時全ての責任は」

ワタル「もういい!!…今は責任のなすりつけ合いをしている場合じゃない」

レッド「…私の土下座でマスターボール500個…総額5億が帰ってくるのならいくらでもします。…しかし、今は原因を突き止め自体を収集するのが先決かと」

ワタル「君の言う通りだ。一刻も早く5億を回収してほしい。…レッド融資課長」

ワタル「あの5億が帰ってこなければ…俺は…!!」

レッド「………」

ポケモンセンターがポケモンを回復させるだけの時代はとうの昔

フレンドリーショップと合併したのを皮切りに、ポケモンセンターは次様々な事業に手をのばしていった。

ポケモンバトルや交換を担当する部署は勿論、珍しいポケモンの捕獲、及び保護などポケモントレーナーに関する事の大半を引き受けるような巨大な施設に進化した。

20XX年。世界を襲った未曾有の日照りや大雨により経済状況は混乱。これにより産業ポケモンセンターもダメージを受けた。

この状況を乗り切るべく、産業中央ポケモンセンターはカントー第一ポケモンセンターと合併。

世界第三位のメガセンターの「カントー中央ポケモンセンター」にメガ進化した。

そのカントー中央ポケモンセンターの中でもジョウト地方で最も巨大なコガネシティーのポケモンセンター。

そこにレッドが様々な企業やトレーナーに金や道具、BP、果てはポケモンなどを貸し与える融資課の課長に赴任して、はや二年。最大の窮地を迎えようとしていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーー




レッド




ーーーーーーーーーーーーーーー

ー事件が起きる3ヶ月前ー

【キキョウシティー・トレーナーズスクール】


ジョパンニ「数ヶ月前、キキョウの隣のエンジュシティーに巨大なトレーナーズスクールが出来ました。それをきっかけに生徒の数が減り、ジョウト信用ポケモンセンターも融資を断ってきて…このままでは、この塾の裏庭に住んでいるポケモン達への食費もままならなくなってしまいます…」

レッド「ではジョパンニ塾長、その住んでいるポケモンの種類を教えてください。正確に」

ジョパンニ「は…?コラッタ、マダツボミ、メリープ、ホーホー、イシツブテ、レディバです」

レッド「なるほど。では次に実際の授業風景を見せてください」

ジョパンニ「今の環境で最も気をつけなければいけない状態異常、それは火傷状態です。皆さんも火傷した時には力が出ませんよね?同じように、ポケモンも火傷を負ったら力を出すことができません。さて、ここで火傷状態にしてくる鬼火の使用率の高いポケモンを………」



レッド「・・・・・・」




ー授業 終了後ー

レッド「ちょっといいかな?」

短パン小僧「なにー?」

レッド「君はジョパンニ先生についてどう思ってる?」

短パン小僧「すっげー感謝してる!」

レッド「感謝?」

短パン小僧「俺のウソッキー、他の奴らと戦っても先生に教えてもらってからは、すっげー強くなったんだぜ!」

レッド「そのウソッキー…見せてもらっていいかな?」

短パン小僧「いいよ!」





レッド「ジョパンニ塾長、一つ伺いたい点がございます」

ジョパンニ「は、はぁ…」

レッド「この塾の裏庭に住んでいるポケモン、その種類には意図がある」

ジョパンニ「!」

レッド「ホーホーはHP、マダツボミは攻撃と、それぞれのポケモンが6種類のステータスの努力値全て振ることが出来るようになっています」

ジョパンニ「そうです」

レッド「しかし、その6種類のポケモン達を生徒に努力値を与える為に住まわせているのならコストパフォーマンスが悪いですね。ドラッグを使用した方が時間も費用もかからない」

ジョパンニ「敢えてそうしてるんです」

レッド「…ほう?」

ジョパンニ「確かにドラッグを使ってパパッと努力値を与えた方が要領はいいのかもしれません。…しかし、そこにはポケモンとトレーナーの努力が無い!信頼がない!私はそう思っています」

レッド「ドラッグの採用が融資の条件だと言ったら…?」

ジョパンニ「他のポケモンセンターを探す事になります」

レッド「そうですか…」

ジョパンニ「…………」

レッド「“頑丈ウソッキーに弱点保険〝ですか」ニコッ

ジョパンニ「…え?」

ジョパンニ「…え?」

レッド「あなたの生徒のポケモンです。技構成はアームハンマー、ふいうち、岩雪崩、カウンター」

ジョパンニ「確か…短パン小僧君の相棒の…」

レッド「技はあなたに相談して貰ったと聞きました。…ウソッキーという使用率の決して高くないマイナーポケモンでありながら、現環境に睨みをきかせた技構成だ」

レッド「物理が多い今の環境でカウンターは刺さりやすい。更に弱点保険と頑丈で“確実に一発耐えからの重い一撃”を与える事が出来る。

そして素早さの低さを補う不意打ち。その一方でアームハンマーはトリルとの相性がいいからトリパにも組み込める。

読み合いの力量こそ必要ですが、ファイアロー、ギルガルド、バンギラスといったトップメタに強い。そして何より…」

レッド「ウソッキーの目が爛々と輝いていました。トレーナーとの信頼がなければあの目はあり得ません」


ジョパンニ「っ!!」


レッド「それにあの授業は分かり易さを重視しつつ、バトルで必要な知識はしっかりと抑えてる。ジョパンニ塾長、そのスタイル…貫いていただきたい」

ジョパンニ「そ、それじゃあ融資の件は…」

レッド「ポケモンセンターの職員として、この場で融資すると言うわけには言えません。稟議書を提出する必要がありますので。…しかし、最善を尽くします」

ジョパンニ「ありがとうございます……ありがとうございます…!」

レッド「しかし、敢えて先ほどの技構成に意見をするなら岩雪崩でファイアローを見るおつもりなら些か不安だ。蜻蛉帰りで逃げられる可能性が高い…なので代わりにステルスロックを採用する案も……」

【カントー中央ポケモンセンターコガネ支店・定例会議】


キョウ(副支店長)「それでキキョウのトレーナーズスクールにポフィン3000万分の融資じゃと…?ファファファ…馬鹿げておる」

レッド「ジョパンニ塾長の授業はポケモントレーナーとして必要な心構え、バトルに必要な基礎が十二分に詰まっています。

今でこそ“勝つことだけを目的とした”トレーナーズスクールが流行っていますが、少年少女がポケモンと触れ合った時に求められるスクールは彼ねような講師を持つスクールです!キキョウスクールは必ず持ち直します」


キョウ「わかっておらぬ…拙者達に必要なのは大口の取り引きなのじゃ。目標額である融資額100億を達成する為には、来週の期末までに5億を融資せにゃあならんのだ。そんなちっぽけな取り引きなど必要ない!」

レッド「ちっぽけ!?そう思うのは此方側の一方的な悪しき論理です!派手なのが好きなのなら毒タイプなんか使わずドラゴンでも使えばいい」

キョウ「何じゃと…?」

ワタル(支店長)「レッド!…ドラゴンが派手で素晴らしいという意見は大いに賛同する」

レッド(素晴らしいとは言ってない…)

ワタル「それはそうとして…我らコガネ支店はセンター内レート2000、不思議な贈り物取り引き数トップと、様々な点でジョウト地方で強い存在感を示している。

ここで目標融資額100億を達成すれば、最優良店舗は間違いない!そして、それはあと一歩のところまで来た!それは君の功績が非常に大きいと思っている」

レッド(支店長と副支店長が統一パなんか使ってるから…)

ワタル「だからあと一歩!…力を貸してほしい」

レッド「……わかりました」

ワタル「……………」

ワタル「アサギロケット工業に纏まった資金の依頼があるそうです。伺って話を進めてほしい」

レッド「…!!」

ハヤト(レッドの部下)「さ、サカキ社長に会えたのですか?」

ワタル「あぁ」

ヤナギ(レッドの部下)「こちらが言っても門前払いだったのだが…」

ワタル「そんな事なかったよ。むしろ、不思議なしっぽといった珍味までくれたよ」

キョウ「ファファファ!流石はワタル殿といったところか!」

ワタル「担当は…そろそろメイ君が良いんじゃないか?」

メイ(レッドの部下)「へっ!?わ、私ですか!?」

レッド「ワタル支店長、彼女はまだ(主人公になって)二年目です!まだ早すぎます!」

ワタル「そんな事はない。むしろ、こういう取り引き先の方が大きな経験になる。レベルの高いポケモンの方が経験値は高いだろう?」

レッド「しかし…」

ワタル「レッド、君がしっかりサポートしてやれ。新人を育てるのも先輩の大切な役目だ」

レッド「…わかりました」

ワタル「くれぐれも過去の事を考えるなよ?……時代は変わったんだ」

レッド「…………」




メイ「あ…あの、本当に私なんかが担当で良かったんでしょうか…」

レッド「支店長直々のご指名だしね。俺もサポートするから大丈夫だよ」

メイ「でも…」

レッド「おいおい、ここに来る前はポケウッドで女優をしていたんだろ?もっと堂々としてくれよ」

メイ「そ、それとこれとは違いますよ~!」

レッド「はははっ、じゃあ、早速アサギに行こうか」

メイ「あ、はい!」

メイ(レッド先輩と二人で…うわぁドキドキしてきた。帰りとかにお食事誘ったり出来ないかな…///)

メイ(コガネからアサギまでならわりと時間かかるよね。…えっとうわぁ~なに話そう)

レッド「じゃあ、パソコンからテレポート使えるポケモンを呼び出してくるよ」

メイ「……………」

レッド「ん?」

メイ「何でもないですっ」プクゥ

レッド「???」

【アサギシティ・アサギロケット工業 受付】

受付嬢「」カチカチ…ピロリロリン

メイ「あ、あのー…」

受付嬢「」カチカチ…カチカチ…

メイ「あ、あのー!」

受付嬢「え?あ、はーい、何ですかー?」

メイ「融資の件で伺いました、カントー中央ポケモンセンターのメイといいます」

レッド「同じくレッドです。…サカキ社長はいらっしゃいますか?」

受付嬢「あ、はーい。じゃあ事務所あっちなんでそこで待っててくださーい」

レッド「……………」

【ロケット工業 事務所】

prrrrr! prrrrr!

メイ「随分と時間かかりますね…」

prrrr!prrrr!

レッド「20分」

メイ「え?」

レッド「さっきから20分ライブキャスターが鳴っているけど誰も出ない」

メイ「確かに鳴りっぱなしです…」

メイ(それに煙草の臭い…うう…この臭い慣れないなぁ…)

職員A「うちのラッタが言うこと聞かねえからよう、一発ぶん殴ったら言うこと聞きやがった」

職員B「やっぱ、ご主人としもべって関係を植え付けんと駄目だな!」

職員C「恩返しより八つ当たりの方が威力上がってんじゃねぇの?」

ギャハハハハハハハハハ!!!

メイ「っ!」ガタ!

レッド「待つんだ」

メイ「で、でもっ」

レッド「俺たちは…カントー中央の看板を背負ってるんだ」

メイ「……わかりました」

レッド「何が過去の事を考えるなだ…何も変わってないじゃないか」ボソ

メイ「へ?」

幹部っぽい職員「お待たせして申し訳ありません。では、社長室へご案内します」

レッド「行こうか」

メイ「えっ、あ、はい!」


【社長室】

コンコン

サカキ「入れ」

ガチャ

幹部っぽい職員「どうぞ」

レッド「失礼します」

メイ「失礼します…」

サカキ「……」

メイ「ははは初めまして…サカキ社長。わわ私、カントー中央ポケモンセンターのメイと申しますっ」

メイ(こ…この人怖い…)

レッド「“初めまして、サカキ社長”
。カントー中央ポケモンセンターのレッドです」

サカキ「くくく…まぁいいだろう」

メイ「こ、こちら…トレーナーカードになります」

サカキ「くだらんな。そんなもの必要ない」

メイ「で…でも…」

サカキ「…………」ギロ

メイ「は、はい!そ、それで…今回うちに融資を頼みたいという話ですが…」

メイ(ににに逃げたいよおお)

サカキ「あぁ、そうだったな。そちらがどうしてもって言うからな」

メイ「そ、それで…その融資の内容とは…?」

サカキ「なぁに…纏まった数のポケモンの捕獲が必要になってね。……マスタボール500個程必要なんだ」

レッド「!」

メイ「ごごご…500っ個ですか!!??」

サカキ「子供のお使いじゃないのだ。それぐらいおかしくないだろうに」

メイ(えっと…今だとマスターボール一つにだいたい約100万の価値があるんだから…これが500個で…)

メイ「ご…5億っ!…しゃ、サカキ社長!是非ともその融資、うちにおねが」

レッド「待て」

メイ「え?」

レッド「是非ともうちで“検討”させていただきませんか?」

サカキ「検討?……私の耳がおかしくなければ今おまえは検討と言ったのか?」

レッド「えぇ」

サカキ「お前達が散々こちらに融資融資言っときながら検討だと!?こちらは別のセンターに頼んでもいいんだぞ!!」

メイ「レ、レッドさん…」

レッド「“検討”させてください」

サカキ「……………」

レッド「初手からいきなり交換読み交換みたいな大味な手を出す人は多くありません。そうでしょ?」

サカキ「……フン、まぁ良い。だったらさっさと帰って検討でも何でもすればいい」

レッド「ありがとうございました。では、今日のところは失礼します」

メイ「し、失礼します!」

ガチャン

サカキ「…相変わらず目障りな男だ」

霊夢に別れを告げ寺子屋へと急ぐ。

寺子屋は人間の里のほとんど中央にあるため、外からだとなかなかの距離を歩くことになる。

小町の能力を使って距離を縮めればいいと思ったが、どうやら縮めた距離の中を人間がたくさん通ることになるため衝突事故や一瞬で景色が変わったことに対する混乱を招くので使えないらしい。

なので神と死神はえっちらおっちらと徒歩で歩いている。

そういえば地蔵時代は動けなかったから、昔は歩くことすら面白かったなぁ。

でも日々をすごすたびに面白いはなくなって、代わりに当たり前やつまらないばっかりになってきたのだった。

いづれ、私はすべてのことを面白いという観点で見れなくなってしまうのだろうか。

それは少しさびしい。

小町「四季様?」

映姫「え、あ。どうしました?」

小町「なんだか悲しそうな顔してたので」

どうやら表情に出ていたようだ。顔をこすって表情を普通に戻し、えへへと笑ってごまかす。

小町「………もしなにか相談したいこととかあったらあたいに言ってくださいね。聞きますから」

映姫「生意気ですね」

なんとなく心を読まれたのが悔しくて、悔悟棒で小町を叩く。小町は「きゃんっ」といつもどおり鳴いて、涙目でこっちを見てきた。

すみません。超ミスりました

びっくらこいたwww

【カントー中央ポケモンセンターコガネ支店 支店長室】

ワタル「…何故話を進めてこなかったんだ?」

レッド「アサギロケット工業の社風は優良企業のそれとはとても思えませんでした。あれでは…昔のロケット」

ワタル「レッド」

レッド「…失礼しました。しかし、今まで取りつく島のなかったサカキ社長がこうも簡単に動いてきたのには何か理由があるのではないかと思います。もう少し調べる必要があります」

ワタル「その必要はない。先ほど、サカキ社長から俺に直接連絡があり、融資の話を進めたところだ」

レッド「っ!?」

ワタル「マスターボール500個総額5億円分、貸し入れ期間は5年、無担保でだ。メイ君」

メイ「は、はぃ!」

ワタル「これから、俺ともう一度サカキ社長に直接伺い、関係書類を受け取りにいく。そして、明日の朝までに稟議書を提出してくれ」

メイ「えっ、あの…」

レッド「ちょっと待ってください!明日の朝までというのは流石に無茶です!!」

ワタル「わかってくれレッド!この取り引きに最優良店か否かがかかってるんだ!」

キョウ「メイよ…お主ならできるよのぅ?」

メイ(あ、副支店長いたんだ)

メイ「頑張り…ます」

ー数時間後ー

【午後8時過ぎ 同センター内オフィス】

メイ「うーあの社長怖いし苦手…どっと疲れたよー…でも今からが本番だもんなぁ…」

メイ「……」キョロキョロ

メイ(もう皆帰ったよね?)

メイ「出ておいで!ミジュマル!」

ミジュマル「ミジュー!」

メイ「うがああああ」ムギュウウウ

ミジュマル「ミジュ!?」

メイ「むふふー相変わらずの抱き心地よのー」ムギュウウウ

ミジュマル「ミジュ!ミジュ!」

メイ「離さぬぞぉ離さぬぞぉー」ムギュウウウ

ミジュマル「ミジュゥゥ…」

メイ「ぅぅぅ…このままじゃミジュマルを抱き枕にして寝そう」

レッド「それだけは勘弁してくれよ」

メイ「わかってますよぅ…」

メイ「………………」

メイ「うぇぇああああああレッドさん!!??」

レッド「ほらっミックスオレ」

メイ「へ?あ、ありがとうございます!」


メイ「…あの、いつから見てました…?」

レッド「ミジュマルに襲いかかった時から」

メイ「うぅぅ…///皆には内緒にしててください」カァァァ

レッド「わかってるよ。それに、俺も一人の時はたまにボールから出してるし」

メイ「そうなんですか?」

レッド「あぁ。せっかくだし、出してやろうかな。出てこい!」

ロトム(ノーマル)「キュイイィ!」

メイ「ロトム!」

ロトム「キュイ!キュイイィ!」

メイ「は、はしゃいでますね」

レッド「周りに電子機器ばっかだからな。ほっといたら乗り移りかねないから困るよ」

メイ「あははっ!…それで、レッドさんはどうして残ってるんですか?」

レッド「どうしてって…メイちゃんを一人にして帰るわけにはいかないだろ?今日は俺もここで一泊だ」

メイ「えぇぇ!?そんな、悪いですよ!」

メイ(特に私の心臓に!)

レッド「大丈夫。メイちゃんが作った書類をチェックする必要があるしな」

メイ「でも…」

レッド「それに、溜まってた仕事もこの間に片付けちゃうから問題ないよ」

メイ「あ、あの…えと…ありがとうございます!!」

メイ(わわわわわ!二人きりで一晩とか…え、うわ、うわああああああ

ミジュマル「ミッジュ!ミッジュ!」

ロトム「キュウゥゥイ!」

レッド「さて…俺はむしろ仕事よりも今からが大変だ……ちょっと廊下へ出てくる」

メイ「え?」

レッド「一人にしちゃう方への謝罪かな」

【カントー中央ポケモンセンター 社宅 レッド家】

レッド『ということなんで本っっっ当にごめん!!今夜はちょっと』

エリカ(エリ花)
「帰れそうにない…そういう事でいいんですね?」

レッド『です…』

エリカ「あらあら、そうですか」

レッド『あの…エリカ…エリカさん?』

エリカ「何でしょう?」

レッド『私の耳が節穴じゃあなければ…怒ってらっしゃる?』

エリカ「あらあらあら。今日は私達がお付き合いを始めた交際記念日、しかも内縁の妻のような状態ですから他の御夫婦からすれば結婚記念日と同じくらい大切にしたかった日の夜に、仕事を理由に一人ぼっちにさせられた私の声がレッドさんは楽しげに聴こえます?」

レッド『ご、ごめんなさい…でも1番若い部下を一人にさせるわけにもいかなくて…』

エリカ「1番若い…って事はメイさんですね?」

レッド『うぐっ!?』

エリカ「で・す・ね?」

レッド『お、お察しの通りです』

エリカ「………ぐすっ」

レッド『え、エリカさん?』

エリカ「…やっぱり、若くてピチピチな女の子の方が良いんでしょうか…」

レッド『え、えぇぇ!?』

エリカ「ぅぅ…私みたいなおばさんなんかより…」

レッド『まままま待ってよエリカ!メイちゃんだから残ったとかそんなんじゃないし…そもそもエリカまだ20代だし…』

エリカ「……………ふふっ」

レッド『え?』

エリカ「冗談ですよ。ちょっとからかってみたくなっただけです」

レッド『えっえっ』

エリカ「レッドさんの仕事が大変なのも、部下に一人で仕事を押しつけられないのも、他の女性に手を出せるような度胸がないのもわかってますわ」

レッド『ど、度胸ないかなぁ…』

エリカ「あったら今頃私も子宝に恵まれてるかと」

レッド『面目ございません』

エリカ「それに、話を聞く限りだと悪いのは急かしているワタルさんですしね。私の怒りはそちらに向けておきますわ」

レッド『そ、そうして貰えると助かります…』

エリカ「ただ…」

レッド『?』

エリカ「寂しいか寂しくないかって言われたら寂しいですし…ちょっぴり拗ねます」

レッド『…本当にごめん。この埋め合わせは必ずするから』

エリカ「あらあら、期待しときますわね?」

レッド『任せといてよ。…それじゃあそろそろ戻るよ』

エリカ「えぇ。お仕事頑張ってくださいね」

ピッ

エリカ「……はぁ」

ポン!

キレイハナ「ハナハナー!」

エリカ「あら、キレイハナ?どうしました?」

キレイハナ「ハナ!」

エリカ「あら…もしかして、私を慰めるためにボールから出てきたんですか?」

キレイハナ「ハナァ!」

エリカ「ふふっありがとうございます。じゃあ今夜の抱き枕はレッドさんの代わりにキレイハナ、あなたかしら」

キレイハナ「ハナハナ!」

【ポケモンセンター オフィス】

レッド(こりゃあ今度エリカに一日中買い物付き合えって言われても文句は言えないなぁ)

レッド「ふー…」

メイ「………」

メイ「あのー…もしかしてさっき言ってた謝罪って」

レッド「ん?あぁ、エリカだよ」

メイ「ははっ、そうですよね!…そう…ですよね…」

レッド「??」

メイ「じゃあ、早速やっちゃいますね!」

レッド「う、うん」

メイ(レッドさんにはエリカさんがいる…わかってる…)

メイ「わかってるのになぁ~」

レッド「???」

ミジュマル「ミジュゥ…」

ロトム「キュイイィ…」

ー次の日 朝ー

メイ「あ、あの…書類どうでしょうか…」

レッド「……………」

レッド(わかってたけどまだまだ甘い。…そもそも二年目に任せる内容でもないし、さらに一晩でだ。それを考えたら彼女はよく頑張ってる)

レッド「…うん。大きな問題もないし良くできてる。後は俺が細かい部分を手直しするよ。他の関係書類も全部俺のパソコンに置いといてくれ」

メイ「お願いします!」

レッド「それが終わったら昼まで休んでくれ。家に戻ってシャワーや仮眠をとってきなよ」

メイ「えっ…いいんですか?」

レッド「勿論だ。もう瞼が半開きだよ」

メイ「ありがとうございます!」

ベテラントレーナー「それじゃあ、朝のミーティングを始めるぞー」

レッド「今行きます!」

【会議室】

ベテラントレーナー「では朝のミーティングを始めるが、ワタル支店長とキョウ副支店長は諸用があって出られないそうだ」

レッド「…諸用?」

ベテラントレーナー「あぁ…なんでも朝一で終わらせなければならない用があるそうだ」

レッド「………まさかっ!」ガタ!


【オフィス】

レッド「ないっ…俺の机にあった書類が!…くそっ」

【支店長室】

コンコン

レッド「失礼します!」

ワタル「どうした?レッド」

キョウ「騒がしいぞ」

レッド(やはり書類は支店長が…)

レッド「その書類はまだチェックが終わってません。すいませんが返してもらいませんか?」

キョウ「貴様!昨日朝一に提出と言ったを忘れたか!?それに、先ほどヤマブキ本部のポケモンセンターにデータを送ったところじゃ」

レッド「でしたら、私が本部に連絡を…」

ワタル「その必要はない。俺がこいつをチェックして問題なしと判断した」

レッド「しかし…」

ワタル「レッド!!」

レッド「っ!」

ワタル「何かあったらこの俺が!全責任を負う!!」

ワタル「…これは緊急をようする案件だ。この案件の成功か否かでこのコガネ支店全体の未来が決まるといっても過言ではない。それはわかるな?」

レッド「…はい」

ワタル「ならば君がすべきなのは、このマスターボール5億分の融資を何としても完遂させることだ」

レッド「……………はい」

ワタル「だからこそ、君にはカントーに行ってきてほしい」

レッド「!」

【カントー地方 カントー中央ポケモンセンター ヤマブキ本部】

レッド「…というわけなので、是非とも先日お送りした5億分のマスターボールの融資を通していただきたい」

マチス「そうは言いますガ…無担保で5億分ってのは流石にネ…」

レッド「マチス調査官、ジョウト地方は鋼タイプを最初に発見した地方という事もあり、鉄鋼関連の工業が密集しています。失礼ですが、その工業における我々カントー中央の取り引き先のシェアはご存知ですか?」

マチス「ンー…30%ぐらいですか?雷が外れる率と考えたらまぁ、低くはないネ」

レッド「5%です」

マチス「た…たったの5%!?エアスラッシュを外す程度じゃないですカ!」

レッド(それだと割と多いと感じるんだが…)

レッド「今、ジョウトの工業は40%以上のシェアをジョウトシティーポケモンセンターに持っていかれているのが現状です」

マチス「………」

レッド「しかし、今回年商50億を越える巨大企業であるロケット工業との取り引きさえ成立すれば…カントー中央とジョウトシティーの差は15%にまで縮まります」

マチス「だ、大文字や鬼火を外す確率…それは確かに大きいですね」

レッド(そもそも割合と確率がごっちゃになってる時点でおかしいが…ここはチャンスだ)

レッド「この融資は今まで難攻不落だったジョウトシティーの牙城を突き崩す最大のチャンスなんです!是非とも!」

マチス「…わかりましタ。上に掛け合ってみマス!久しぶりに電撃が身体を走ってるネ!!」

レッド「ありがとうございます!よろしくお願いします!」

【コガネシティー バトルスポット】

ミツル「サーナイト!鬼火だ!」

サーナイト「!」コクッ

ボォ!!

キリキザン「ッキィ!」ジュッ

キリキザンは火傷をおった!

レッド「キリキザン!そのままアイアンヘッドだ!!」

キリキザン「キリッ!!」

サーナイト「っサナ!!!」

ミツル「サーナイト!大丈夫か!?」

サーナイト「…」コクッ

ミツル(火傷にしたのに思ったよりダメージが大きい…)

キリキザンは命が削られた!

ドクンッ…

キリキザンは火傷のダメージを受けている!

ジュッ

キリキザン「……キリィ」

ミツル「命の球だったんだ…読み違えちゃったな…サーナイト!頑張れ!気合い玉だ!」

サーナイト「サナッ!」ゴゴゴゴ…

レッド「そこだっ!不意打ち!!」

キリキザン「…ザンッ!!」

ズバッ!

サーナイト「ッッ!?」

ミツル「サーナイト!!」

サーナイト「サ…サナァ…」

サーナイトは倒れた!

ミツル「ありがとうサーナイト。お疲れ様。ゆっくり休んで」

サーナイト「サナァ…」

キリキザン「…」スチャ…

レッド「キリキザンも。久しぶりに戦ったから疲れたろ」

キリキザン「!!」ブンブン!

ジャキン!

レッド「ははっ、血気盛んで嬉しいよ。戻ってゆっくり休んでくれ」

キリキザン「…ザン!」

ミツル「…う~んやっぱりレッドには勝てないなぁ…」

レッド「だがあそこで鬼火はいい判断だ。キリキザンの不意打ちもメタルバーストもすかせるからな」

ミツル「レッドの性格だから、キリキザンに気合いのタスキを持たせて一発耐えてからのメタルバーストを読んだんだけど…」

レッド「ははっ!そう思ってキリキザンに火力増強アイテムを持たせたんだ」

ミツル「お見事!勉強させてもらいました。

ミツル「それで、今回はどうしたの?」

レッド「ん?」

ミツル「レッドがバトルを仕掛けてくる時はポケモンかレッドに何かあった時」

レッド「!」

ミツル「ポケモンは元気そうだったし、レッドの方かなって」

レッド「…敵わないなお前には」

ミツル「よく言うよ。…納得のいかない仕事でもさせられた?」

レッド「本当敵わないよ。まぁ、そんなところだ」

ミツル「レッド、わかってると思うけど溜め込んじゃ駄目だからね。…でないと僕みたいに」

レッド「わかってる。大丈夫だ」

ミツル「僕もあの時に誰かに相談したりしてガスを抜いとけば良かった。レッドやハルカさん、それにサーナイト達もいたのにな…」

レッド「……………」

ミツル「そういえば、今度エンジュにミナキが出張で出てくるんだって。久しぶりに同期でご飯でも食べようって」

レッド「あぁ、そりゃ良いな」

ミツル「それじゃあミナキに言っとくよ。…どうする?もう一戦する?」

レッド「頼むよ!俺の相棒がまだ戦ってないからな!」

ミツル「えー…やっぱりあの子を出してくるの?」

レッド「当然だ。悔しかったら両刀ポケモンを出して対するんだな」

ミツル「まいったなぁ…」

【カントー中央ポケモンセンター社宅 レッド家】

レッド「アンズちゃんの誕生日のブレゼント??」

エリカ「そうなんです。明日キョウさんの家で誕生日会が開かれるので…」

レッド「黒いヘドロとかで良いんじゃないか?」

エリカ「真剣に考えてください」

レッド(わりと妙案と思ったが違うのか…)

レッド「でもさ、そういうのは気持ちが大事なんじゃないの?」

エリカ「それはまぁ、レッドさんが私にプレゼントをくださるのならお気持ちがあれば何でも嬉しいです」

レッド(さり気なく照れる事言わないでほしいなぁ…//)

エリカ「ですが社宅というコミュニティで、しかも上司の御身内の方のお誕生日となれば、贈り物如何でここの地位や決まるのです。もしかしたら…レッドさんの出世に繋がるかもしれません」

レッド「そんな影響はしないと思うけど…」

エリカ「するかもしれません!…それに、ただでさえ私は結婚してないのにレッドさんと住んでる部外者みたいな目で見られてるのに」

レッド「頼むよエリカ…そういう地位とか出世の話は仕事の時だけで十分だよ…」

エリカ「むぅ…」ぷくぅぅ

レッド「エリカさん?」

エリカ「だったら早く結婚してマイホームを買ってほしいです…」

レッド「え、エリカさん?」

エリカ「私だって好きでアンズさんのお誕生日会に行くわけじゃありませんっ」

レッド「そんなに馬が合わなかったっけ?」

エリカ「あら、草は毒が苦手なのは常識ですわよ?そもそもジムリーダー時代もほとんど面識ありませんでしたし」

レッド「そうなの?」

エリカ「彼女がセキチクのジムダーになって間もないうちに、“あれ”がありましたから…」

レッド「“ポケモンリーグ解体”か…」

かつてポケモンリーグは各地方のチャンピオン、四天王、ジムリーダーを管理し、多くのトレーナーが打倒チャンピオンを目指すために旅に出ていた。

しかしポケモンセンターという組織が巨大化し、バトルスポットを有するようになり状況は一変。

トレーナーの多くはバトルスポットに流れ込み、チャンピオンや四天王に挑むが為に各地方のジムリーダーにわざわざ戦いに行く者が激減した。

これにより運営が厳しくなっていったポケモンリーグ本部は、世界一の機関、ポケモングローバルリンク、通称「PGL」に吸収される。

これがポケモンリーグ解体であり結果、ジムリーダー、四天王、チャンピオン制度の廃止されたのである。

これにより各地方のチャンピオン、四天王、ジムリーダーはその立場を失ったことになった。

各々のジムリーダー達は、元々の仕事に専念する者やエリカのように一般人として過ごす者もいたが、多くの人間はポケモンバトルに関する仕事が出来る“現在”のポケモンセンターに就職したのである。

エリカ「私個人としては、ポケモンリーグ解体は悪いことではありませんでしたけど」

レッド「本当?」

エリカ「でないとジムリーダーの仕事が忙しくて家事に割く時間が削られますから。挑戦者が減っていたとは言え公務員ですし」

レッド「それはそうか…」

エリカ「ふふっ…なんならレッドさんが専業主夫になってくださったんならジムリーダーのままでも構いませんでしたけどね」

レッド「そ、それは無理かな…」

エリカ「わかってます。家事の方はお任せください」

レッド「いつもありがとうございます」

エリカ「だ・か・ら・こ・そ・、本当の夫婦になってマイホームが欲しいんです!」

レッド「そ、そこに話戻っちゃうの!?」

エリカ「あら、寧ろ話題を逸らせたおつもりでしたら?」

レッド「思ってないです…」

エリカ「今日、ハルカさんにお会いしたんです。…凄く幸せそうでした」

レッド「だからー…マイホームや結婚は…そのー…タイミング的にまだ早いというか何というか…」

エリカ「あらあらあらあら、レッドさんと同期のミツルさんはハルカさんと結婚してアサギに素敵なマイホームを建てたんですって。レッドさんと同期のミツルさんは」

レッド「……………」

エリカ「結婚記念日には二人で美味しいご飯を召し上がるんだとか…レッドさんと同期のミツルさんは」

レッド「……………」

エリカ「一年に一回はイッシュやかロスに旅行に行くそうですわ。レッド同期のミツルさ」

レッド「わあああかった!!わかりました!!見習いますよ俺と同期のミツルさんを!!…あー!凄いな!アイツはっ!」

エリカ「……………」ジィィィ

レッド「え?」

エリカ「普段からそれくらい声張って力強い方が殿方として魅力的ですわよ?」

レッド「お…押忍っ」

エリカ「……毎晩のようにレッドさんを抱き枕にしてるんですから…いい加減襲って来てもいいのに」ボソ

レッド「エリカさん?」

エリカ「はぁ…私のラフレシアかキノガッサは媚薬的な粉は出せないのかしら…」ボソ

レッド「エリカさんん!!??」

ー数日後ー
【コガネ支店 オフィス】

レッド「はい…そうですか。わかりました」

ワタル「…………」

メイ&ハヤト&ヤナギ
「……………………」

レッド「ありがとうございました。マチス調査役」ガチャ

キョウ「そ、それで…マスターボールの融資は…?」

レッド「認可されました」

キョウ「ようし!!」

ワタル「ッ!…ふぅ…」

うおおおおおおお!!

やったああああああああ!!

メイ「良かったぁ~…もし通らなかったら私の稟議書のせいだと思ってたからほっとしました!」

ヤナギ「ははっ気にしすぎじゃないのか?」

メイ「そ、そう言われましても…」

ハヤト「ここは素直に喜べよ!ですよね?レッドさん!」

レッド「…………」

ハヤト「レッドさん?」

レッド「…いや、何でもない」

【カントー中央ポケモンセンター 大ホール】

ウツギ(取締役)「発表します!最優良店舗は…ジョウトコガネ支店!!」

パチパチパチパチパチパチ!!!

ウツギ「それでは、ワタル支店長、前へ」

ワタル「はい!」

ウツギ「シロナ代表より、賞状が贈られます」

シロナ(ポケモンセンター代表)「最優良店舗、おめでとうございます」

ワタル「ありがとうございます」

パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!

ワタル「………」チラ

オーキド(常務取締役)「」パチパチパチ

ワタル「今回私たちが最優良店舗に選ばれたのは、コガネ支店の職員一人一人が…」



【エンジュシティー 居酒屋】

ミナキ「それじゃあ、我らがレッド君のコガネ支店の最優良店舗に乾杯!」

レッド「なんだそれ…」

ミツル「……」キョロキョロ

ミナキ「ミツル?どうした?」

ミツル「ううん、なんて言うかこんな高そうな居酒屋なんて始めてだからさ」

レッド「秋にもう一度来てみたいな。紅葉と鈴の塔が絶景だろうに」

ミナキ「喜んでもらえて良かった。マツバにお勧めの店を聞いといて正解だったな」

レッド「元ジムリーダーのか。仲良かったんだっけ」

ミナキ「まぁな。もっとも、最初に紹介されたのは舞子さんと戯れながら酒を飲める店だったよ。私は別に良かったんだが」

レッド「却下だ」

ミツル「右に同じく」

ミナキ「お堅いねー全く…それで、今回の最優良店舗賞だけどさっ」

レッド「うん?」

ミナキ「お前んとこのワタル支店長、近いうちにヤマブキ本部に異動、おそらくは取締役か何かの重役ポストが確定だろうな」

レッド「あー…だろうな」

ミナキ「なんせ元チャンピオンで知名度、バトルの実力は言わずもがな。そんな彼に足りなかったのがセンター職員としての実績。そこに最優良店舗賞だからな。まぁ裏にはあの人の力があるんだろうけど」

ミツル「あの人?」

ミナキ「決まってるだろ?オオキド常務だよ」

レッド「……」ピクン

ミナキ「我ら、旧産業ポケモンセンターの人間で最も影響力を持つ男にして、“トレーナーとしての強さ”が重要視される今のカントー中央では、トレーナーは既に引退した身では異例の常務取締役だ。そのオオキド常務とワタル支店長は太いパイプで繋がってるって話だ」

ミツル「へぇー…」

ミナキ「まぁ、オオキド常務からすれば、今回の最優良店舗賞でシロナ代表を初めとする旧カントー第一ポケモンセンターの人間の鼻を明かせてご満悦なんじゃないか?誕生に、娘ぐらい歳の離れた人間が上にいるってのも面白くないだろうしね」

レッド「シロナ代表か…」

ミナキ「代表本人は権力争いなんかより考古学の為の冒険に力を入れたいらしいけどね。そこら辺もオオキド常務からしたら気に入らない話さ」

レッド「シロナ代表らしいっちゃ、らしいけどな」

ミナキ「ただまぁ…今回の最優良店舗賞もほとんどお前の功績だって噂だぞレッド?」

レッド「俺は別に…言われた仕事をしてるだけだし…」

ミナキ「こりゃあお前の有能さが評価され、ヤマブキ本部に来るのも遠くないかもな。ははっ!そうなったら代表一直線だぜ!」

レッド「なんだそりゃあ…」

ミナキ「お前言ってただろ?入社式の時に、“俺はもっと上を目指す”って」

レッド「あれはそんな意味じゃなくてだなぁ…」

ミナキ「その為にはシロナ代表にバトルで勝つか、彼女を恋する乙女に変えてやればいい」

レッド「…はぁ?」

ミナキ「噂だけどシロナ代表、あれだけ美しいのに独身どころか恋人も出来た事がないとか…何が言いたいかはわかるな?」

レッド「お前なぁ…」

ミナキ「はっはっは!冗談だよ。お前はさっさとエリカちゃんと結婚しとけっての!とにかく上に行っても仲良くしてくれよ?レッド代表」

レッド「だぁかぁらぁ、そういう意味じゃないって」

ミツル「レッド!!」

レッド「っ!?」

レッド「ミツル?」

ミツル「例え上に行っても…自分の地位しか考えないような人間になったら駄目だからね!」

レッド「お…おぅ…?」

ミツル「旧産業中央と旧カントー第一で争ってるような現状じゃあ…ポケモンやトレーナーの為のポケモンセンターには絶対にならないよ!!」

レッド「…………」

ミナキ「…………」

シーン

ミツル「……ごめん。また僕なにか変なこと言っちゃったかな?」

レッド「いいや、お前の言う通りだ。ミツル」

ミツル「あっはは…ちょっと、トイレ言ってくる!」トタタタ…


ミナキ「…ミツルの奴、最近は大丈夫か?」

レッド「ああ。最近は随分とマシになった」

ミナキ「あんな病気にかからなければ…あいつももっと上に行けたのにな」

【居酒屋 トイレ】

サー…バシャ!バシャ!

ミツル「ふぅ…」

ミツル「………」

三年ほど前、ミツルは同期トップの早さで課長代理に就任し、新しく新設されたヤマブキ東口支店で顧客獲得を任されていた。

ミツル『お、お、お願いします。…皆様ポケモンを預ける際には…ぜ、ぜ、是非我がポケモンセンターを』


カラテ王『声が小さい!!!出て行け!!!』

ミツル『……っ!』


しかし、気弱で人見知りな正確が災いし、思ったような結果が出せずに苦しんでいた。

更に、期待の新人として浴びていた周囲からの大きな注目はそのまま、失望に変わっていった。

カツラ『ウオォォォォイ!!』

バンッ!

ミツル『っ!!』ビクッ

カツラ『販売強化指定したモンスターボールがまるで売れてないではないかっ!!それに最近の君のレートは…なんだこの戦績は!?』

バンッ!

ミツル『っ!』

カツラ『ここで問題だ。能力が高そうに見えたが実際に使ってみたら微妙で使えないもの…なーんだ?』

ミツル『…わ、わかりま』

カツラ『お前とバイバニラだよ!!』

バン!!バンッ!!

ミツル『…っ』

カツラ『だいたい…私が立ってるのに何故君が座っているんだ?…もう良い。君はいるだけ無駄だ。帰りたまえ』

バン!!バン!!

カツラ『帰れ!ほら帰れよ!帰れ!帰れ!帰れ!』

バン!!バン!!バン!!バン!!バン!!

カエレ!!カエレ!!カエレ!!カエレ!!

ミツル『ーーーーーーーー』


元々病弱だったミツルはストレス性の統合失調症になり、半年の休職を余儀無くされた

ミナキ「まぁ、快復に向かってるのなら何よりだ」

レッド「あぁ。もうカントーに戻ることも無いって、アサギにマイホーム建てて、こっちで骨埋める覚悟で頑張ってるよ」

ピロリリン!

ミナキ「おっ」

レッド「何だ?」

ミナキ「人事部にいる私のスパイから、発令三日前のレア情報ゲット」

レッド「好きだなぁ人事ネタ」

ミナキ「当たり前だろ。バトルのセンスが無い人間にとっては…人事が全てだよ」

レッド「センスかぁ…」

ミナキ「おい、また同期が飛ばされるぞ」

レッド「誰だ?」

ミナキ「エンジュ支店、ルビー課長。ヒワダ物産営業部長だと」

レッド「……出センか」

ミナキ「そう言えば聞こえは良いけど、ようは片道切符の島流しだ」

ピロリリン!

レッド「また人事ネタか?」

ミナキ「いや、スイクン目撃情報だ!!ハナダの岬か…そうか、カントーにいるんだな!」

レッド「人事ネタよりイキイキしてるな」

ミナキ「当たり前だ。…とにかくさ、私たちも気をつけようぜ」

レッド「あぁ…」

ミナキのこの言葉は二ヶ月後、レッドにとって現実のものとなる。

ー二ヶ月後ー

【カントー中央ポケモンセンター】

レッド「…ロケット工業が赤字?」

メイ「は、はい」

レッド「馬鹿な、この前の試算表では1億の黒字と予想されたはずだ。…それがなんでたった二ヶ月で赤字になるんだ?」

メイ「わかりません!ロケット工業経理課長のアポロさんに連絡を入れても全然繋がらなくて…」

レッド「…ロケット工業の書類を纏めたクレジットファイルを用意して!」

メイ「は、はい!」



レッド「この試算表は、メイちゃんがコピーしたの?」

メイ「いえ、ロケット工業に決算表を要求したらこれが準備されてて…」

レッド「…この試算表のオリジナルは見た?」

メイ「えっ?」

レッド「コピーじゃない試算表の原本は見た!?」

メイ「いえ…見てないです」

レッド「………………」

レッド「粉飾……!」

メイ「それじゃあ、この前のマスターボールの融資は…」

レッド「…行くよっ!!」

メイ「は、はい!」

粉飾とは、会社が嘘の決算書を作り、あたかも利益が出ているようりする事である。

その目的は株価を釣り上げたり、ポケモンセンターを騙し、返す当てもない物資や資金を借りる為である。

【アサギロケット工業 オフィス】

アポロ(経理課長)
「粉飾だなんて…そんな…」

レッド「ではこの赤字決算についてどう説明してもらえますか?」

アポロ「どういう事と言われましても…よく調べてみないと…」

レッド「私が調べましょう。アポロさん、※総勘定元帳を出してください。私が集計します」

※総勘定元帳(そうかんじょうもとちょう)とは、勘定科目ごとに全ての取引を記載する勘定口座を集めた会計帳簿である。

アポロ「い…今は税理士事務所にありまして…」

レッド「わかりました、では法人税の領収書をいただけますか?前にいただいたこちらのコピーと照らし合わせます」

アポロ「………」

レッド「それも…税理士事務所ですか??」

アポロ「…………」

レッド「サカキ社長に合わせていただけますか?」

アポロ「社長は今外出中でして…」

レッド「何時ごろお帰りに?」

アポロ「さ…さぁ…」

レッド「メイちゃん、俺の家から着替えを持ってきて。朝まで張り込みだ」

アポロ「そんな馬鹿な…困ります」

レッド「困るのはこっちの方だ!!!」

アポロ「…っ!」

レッド「アポロさん…あなた経理課長でしょう。何も知らないでは済まされませんよ」

アポロ「そ、そんな事を言われても私は…」

女性社員「社長いらっしゃいますか?……あ、社長、モーモー牧場さんからお電話が」

レッド「!」ガタッ

【社長室前廊下】

レッド「………」

カツカツカツ!

アポロ「レッドさん、困ります!社長は本当に留守なんです!」

メイ「……………」

アポロ「本当にお願いします!勘弁してください!」

カツカツカツ! ガチャ!

アポロ「~っ!!」

【社長室】

レッド「やはりいましたね。サカキ社長」

サカキ「君たちの顔を見ていたら状態異常にでもなりそうだからね、隠れていたんだ」

レッド「サカキ社長、場合によっては融資したマスターボール五億円分、直ぐに返していただく必要があります」

サカキ「最近のポケモンセンターは横暴だな。あれだけ借りてくれ借りてくれって言ったから借りてやったのに…」

レッド「粉飾となったら話は別です」

サカキ「……仮に、仮にだ。もし我々が粉飾していたとでもしよう。そうなったら君たちは、そんな事も見抜けなかったマヌケなポケモンセンターって事になるんだぞ?」

レッド「…………」

メイ「…っ」

サカキ「お帰り願おう。穴抜けの紐はご利用かな?」

レッド「……結構です」

サカキ「……くくく」

一ヶ月後、アサギロケット工業は多額の不渡を出し、あっけなく倒産した

ー現在ー

【コガネ支店 支店長室】

ワタル「それで…5億回収の見込みは?」

レッド「サカキ社長の自宅や会社にはジョウトシティーセンターなどがべったり張り込んです。他に余力となる資産があるかどうか…」

キョウ「サカキ社長の行方は?」

レッド「今朝不渡を出してから、連絡が取れません…」

ワタル「粉飾を見破れなかったのが全てか…!」

キョウ「仰る通り…あの程度の粉飾、何故見抜けなかったのだ!?」

レッド「!?…あの時にそんな時間の余裕が無かったのは、副支店長もご存知でしょう??」

キョウ「そんなのは言い訳じゃ!!実質5億の損失だ…貴様わかっておるのか!?これも全て見抜けなかった貴様の責任ではないか!!」

レッド「………」

キョン「ファファファ…なんだその目は?そんな目をする暇があるならワタル支店長に膝を地につけ頭を下げてはどうか!!」

ガシッ!

キョウ「っ!?」

レッド「…話が違います。あの時全ての責任は」

ワタル「もういい!!…今は責任のなすりつけ合いをしている場合じゃない」

レッド「…私の土下座でマスターボール500個…総額5億が帰ってくるのならいくらでもします。…しかし、今は原因を突き止め自体を収集するのが先決かと」

ワタル「君の言う通りだ。一刻も早く5億を回収してほしい。…レッド」

ワタル「あの5億が帰ってこなければ…私は…!!」

レッド「………」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年04月18日 (土) 08:45:20   ID: QW-5C0Rf

おーーー

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