まどか「あの程度で『殺し合い』ねぇ……」(651)
まどか「私にはただの喧嘩にしか見えなかったよ」
さやか「喧嘩ねえ。夕べのあれが、まどかにはただの喧嘩に見えたの?」
まどか「うん」
さやか「…………あれはねえ、正真正銘、殺し合いだったよ。お互いナメてかかってたのは最初だけ。途中からは、アイツも私も本気で相手を終わらせようとしてた」
まどか「え?もしかしてあの子と対等のつもりだったの?」
さやか「え?」
まどか「さやかちゃんがあの赤い子に勝てるわけないじゃんwwwwwwwwwwwwwww」
さやか「ぐ・・・・・・」
まどか「ほむらちゃんが教えてくれたんだけど、あの子の名前、佐倉杏子っていうんだって」
さやか「…それが何?」
まどか「あの子はかなり強いってほむらちゃん言ってた。本気で戦ったら、並の魔法少女じゃ太刀打ちできないって」
さやか「あいつの言うことを信じるっていうの?」
まどか「でも実際にそうだったもん。さやかちゃん、まるで刃が立たなかった。でもあの子は笑ってた。笑いながら戦ってた。余裕があったんだよ。さやかちゃんは必死だったみたいだけど。」
さやか「…何よ偉そうに!魔法少女でもないくせに!だったらあんたが戦ってよ!」
まどか「え?」
さやか「キュウべえから聞いたわよ。あんた誰よりも才能あるんでしょ?私みたいな苦労をしなくても簡単に魔女をやっつけられるんでしょ?」
さやか「私に何か言うんなら、まず私と同じ立場になってみなさいよ。無理でしょ。当然だよね。ただの同情で人間やめられるわけないもんね?」
まどか「同情っていうよりは…」
さやか「何でも出来るくせに何もしないあんたの代わりに、あたしがこんな目に遭ってるの。それを棚に上げて、知ったような事言わないで!」
まどか「殺し合いのために才能を使えなんて勘弁してよ…それにさやかちゃんが弱いことと私に才能があることには何の関係もないよ」
さやか「…!」(走り去る)
まどか「待って!」
――――――――――――――――
ほむら「話って何?」
まどか「あのね、さやかちゃんのこと、なんだけど…」
まどか「あ、あの子はね、思い込みが激しくて、意地っ張りで、結構すぐ人と喧嘩しちゃったり」
まどか「でもね、すっごくいい子なの。優しくて勇気があって、誰かのためと思ったらがんばり過ぎちゃって」
ほむら「後半はお世辞かしら」
まどか「…うん」
ほむら「美樹さやかは感情で動くタイプの人間ね。頭で考える前に体が動くタイプ。慎重さにかけ、視野が狭い。自分が絶対に正しいと思い込んでいて、それを人に押し付けるようなことをしてしまう。」
両方ザコゴミに見えたってことかと
まどか「さやかちゃんね、ほうっておけないの。すぐ誰かと喧嘩しちゃうし。誰かがそばにいて止めてあげないと、ひどいことになっちゃいそうで。」
ほむら「…苦労してるのね。」
まどか「…うん。今回のこともそう。マミさんが忠告してくれたのに魔法少女になっちゃうし。上條くんの手を直してって。せめて一言でも相談してくれればよかったのに…」
ほむら「あの子は契約すべきじゃなかった。私のミスよ。貴女だけでなく、彼女もきちんと監視しておくべきだった」
まどか「上條くんね、今バイオリンに夢中なの。手が治ったばかりだから。さやかちゃんのことなんて忘れちゃったみたいで…」
さやか「だったら……アンタが戦ってみなさいよ」
まどか「え?」
まどか「うーん……分かったよさやかちゃん。でも、今回だけだよ?」
さやか「え?」
まどか「じゃあいってくるね、ティヒヒ!」
さやか「いくって……ちょっと、変身は!?」
まどか「は?」
さやか「え?」
さやか「だって、これは魔法少女同士の殺し合」
まどか「あの子を倒すのにどうして変身しないといけないの……」
さやか「え……」
まどか「契約だってしてないし、する気も今のところないし……さやかちゃんの言ってること、分かんないよ……」
さやか「まど……か……?」
まどか「とにかくいってくるね」
こうじゃないのか
ほむら「報われない献身を続けられるほど、彼女は強くない。彼女は心のどこかで報われたいと思ってる。期待している。」
ほむら「近いうちにそれは裏切られるでしょう。そして彼女は絶望へと向かって…」
まどか「だから、ほむらちゃんにお願いしたいの。さやかちゃんと仲良くしてあげて。マミさんの時みたいに喧嘩しないで」
まどか「私じゃもうそばに居てあげられないみたいだから…ほむらちゃんに、さやかちゃんの面倒、見てあげて欲しいの」
ほむら「難題を言うのね」
まどか「さやかちゃんには強くなってほしいの。そのためには自分の弱いところを認めてもらう必要があると思うの」
ほむら「私に教師をやれと言うのね。そして、美樹さやかが、佐倉杏子と喧嘩程度のじゃれあいではなく『殺し合い』と呼べるレベルの戦いができるようになるまで鍛え上げろと。」
ほむら「つまり、私に佐倉杏子と同レベルになるまで彼女を強くしろということね。」
まどか「そのぐらい強くなれれば、さやかちゃんは死んじゃったりしない、一人でも折れたりなんかしないと思うから」
まどか「ほむらちゃんお願い…私に出来る事なら何でもするから!」
ほむら「それなら条件を一つだけ出す。貴方が絶対に契約をしないということ。約束して。」
まどか「うん…約束する。」
―――――――――――――――――――――――――――――
ほむら「(…まどかの頼みなら仕方ない)」
ほむら「(それに、もし本当に美樹さやかが杏子並みに強くなったなら、ワルプルギスに対抗する有効な戦力になるかも)」
ほむら「(やれるだけやってみましょう…)」
―――――――――――――――――――――――――――――
ほむら「美樹さやか」
さやか「転校生…何の用?」
ほむら「鹿目まどかと喧嘩別れしたそうね」
さやか「何でアンタが…まさか、アンタまどかに何かしてないでしょうね?!」
ほむら「鹿目まどかを傷つけたって、私には何の意味もないわ」
さやか「信用できるか! どうせまどかから無理やり聞き出したんでしょう!」
ほむら「え」
さやか「あのときまどかが何か言ってたのって…もしかして、アンタがまどかに変なこと吹き込んだんでしょ!そうに決まってる!」
ほむら「ちが」
さやか「ゆるせない…よくもまどかに手を出したな!まどかがあんなこというはずない!」
ほむら「待っ」
さやか「食らえええええ!」
ほむら「(とりあえず避けよう)」
さやか「くっ!」
ほむら「(動きが直線的すぎる。それに刃先が大きくぶれてる)」
さやか「負けるもんかあ!」
ほむら「(攻撃する時に一々叫んで…まるでこれから攻撃しますと宣言してるようなものね)」
さやか「くっ、逃げるな!」
ほむら「そうね」
さやか「バカにするな!」
ほむら「(頭に血が上りすぎてる。考えるのをやめてるわね)」
ほむら「聞きなさい美樹さやか」
さやか「誰がお前の言うことなんか!くらえ!」
ほむら「(このまま絶叫と攻撃を続けさせて、疲れ果てるのを待つか)」
さやか「これで!」
ほむら「(面倒ね…一気に無力化して気勢を削ぐ!)」
そう決断してからのほむらの行動は速かった。変身してはいるが、武器を持たず素手のままでさやかに迫る。
さやか「終わりだ!」
不器用な刺突が迫る。ほむらはそれを横に避け、手刀をさやかの手に叩きつける。
さやか「ぐっ!」
さやかの手から刀がこぼれるのと同時に、ほむらは掌底をさやかの鼻っ柱に思い切り叩きつけた。
さやか「がっ!」
さやかは突き飛ばされ、背中を地面に打ち付ける。ほむらはまだ止まらない。
さやか「この…!」
さやかは起き上がって反撃をしようとするが、その前にほむらがさやかを捉え、組み伏せる。
さやか「くそ…離せぇ!」
ほむら「もういいでしょう、美樹さやか。勝負はついたわ。暴れないで。」
さやか「まだだ!あたしは負けてない!」
ほむら「私は素手よ、美樹さやか。丸腰の相手に貴方はこうまでされてるの。」
ほむら「私は落ち着いて話がしたいだけ。もうやめましょう。」
さやか「…」
さやか「…なんでよ…なんでこうなのよ…私はマミさんみたいに…」
ほむら「巴マミはいきなり人に武器を向けたりはしなかった。あなたは巴マミの何を見ていたの?」
さやか「…マミさんを見殺しにしたくせに…」
ほむら「では、あなたは見殺しにされずに、私に助けられてくれるのかしら?」
さやか「…アンタなんて信用出来ない…」
ほむら「では誰なら信用出来るの?」
さやか「アンタも、どうせ昨日の杏子って奴と同類なんでしょ…」
さやか「どうせ自分の都合しか考えてないんだ…マミさんだけが特別だったんだ…どうせ他の魔法少女なんて、あんた達みたいな奴らばっかりなんでしょ?」
ほむら「だから自分は特別、そう思いたいの?死んだ人間を高尚に祭りあげて、宗教でも始める気?」
さやか「あんた達とは違う魔法少女になる…私はそう決めたんだ…誰かを見捨てるのも…利用するのも…そんな事をする奴らとつるむのも嫌だ…見返りなんていらない…私だけは絶対に自分の為に魔法を使ったりしない…」
ほむら「上条恭介の腕を治したのは、貴方がそうしたかったからでしょう?それは自分のためではないと?」
さやか「アンタなんかに何がわかるっていうのよ…」
ほむら「それはわかって欲しくて言ってるの?わかって欲しくなくて言ってるの?」
さやか「…」
ほむら「あなたはあなたの考えがあって、私には私の考えがある。」
ほむら「でもあなたは弱い。今回のことで分かったでしょう?」
ほむら「自分の理想を通すには、それなり力が必要よ。私ならあなたを鍛えられる。強く出来る。」
さやか「どういうつもり?今度は何を企んでるのさ?」
ほむら「鹿目まどかに頼まれたの」
さやか「まどかが?」
ほむら「あなたと仲良くして欲しいって。あなたを強くして欲しいって。」
さやか「…とりあえず離して」
さやかはまだ組み伏せられたままだった。ほむらはさやかを開放した。さやかは折られた鼻を気にしながら立ち上がり、鼻血を拭いた。
さやか「もう治ってる…」
ほむら「魔法少女なら皆そうよ。望むなら、魔法の上手な使い方も教えるわ」
さやか「…まだあんた達を認めたわけじゃないから」
さやか「でも、むやみに争うのは、もうやめとく…あたし、弱いみたいだから…」
ほむら「明日、学校で会いましょう。鹿目まどかと一緒に。」
さやかはほむらに背を向けて去っていった。
―――――――――――――――――――――――――――――
翌日
まどか「ほむらちゃん…昨日のことなんだけど…」
ほむら「美樹さやかと話ができるようになったわ」
まどか「え!?」
ほむらは昨日の経緯を話した
まどか「そっか…もう魔法少女同士で争わなくていいんだよね?」
ほむら「少なくとも出合い頭に殺しあうようなことは、もうないと思うわ」
まどか「よかった…」
ほむら「でも、このままではいけない」
まどか「え?」
ほむら「人が強くなるには、自分が弱い存在であることを認める必要がある」
ほむら「でも、自分が弱い存在だと思ったままでは、そこで立ち止まって腐っていってしまう。」
まどか「…鉄は熱いうちに打てってこと?」
ほむら「ええ。どうしたらいいのかを示して、歩き出させるの。」
まどか「…私って口だけ出して、ほむらちゃんに任せてばっかり…何かできることってないのかな」
ほむら「美樹さやかの努力を認めてあげて。厳しくする人だけでなく、優しくする人も必要なの。飴と鞭よ。」
まどか「…うん!」
さやか「…おはよう」
ほむら「来たわね」
さやか「…まどか、あのさ…」
早乙女「皆さんおはようございます!」
まどか「大丈夫だよ、さやかちゃん。あとでゆっくり話そ?」
早乙女「HRはじめます!席について!」
ほむら「では、昼休みにでも。」
さやか「うん…」
―――――――――――――――――――――――――――――
昼休み、屋上
まどか「(やっとほむらちゃんとわたしたちでお昼出来る…ここにマミさんもいたらなって…)」
ほむら「落ち着いて話、できるかしら?」
さやか「…うん」
ほむら「あなたはこれからどうしたい?」
さやか「あれからさ…考えたんだよね…あたし弱くて、なのに正義だの許せないだのって…叫んでばっかりで」
さやか「あたし、マミさんに憧れててさ…誰かのために戦うって、それで魔法少女になって、助けられた人もいたけど」
さやか「それで…浮かれちゃったのかな…佐倉杏子に出会って、言ってることが許せなくて」
さやか「気付いたら頭に血が昇ってて、あいつに刀を向けてた。途中からはあいつを殺そうとしてた。」
さやか「あたし、自分の正義にそぐわないからって、人を殺そうとしてたんだよ…そんなことも分からずに、あたしは正しいんだって思い込んで…」
ほむら「よくあることよ。人類にとっては。日常茶飯事なぐらいに。」
さやか「あたし、わかんなくなっちゃった。あたしって正しくないのかな…?どうすることが正しいのかな…?」
まどか「さやかちゃん…」
ほむら「それならこれから考えましょう。一緒に。」
ほむら「戦い方も教えるわ。あなたは強くなるの。」
ほむら「あなたは使い魔を見逃して誰かを見殺しにするのは間違いだって、そう思うのよね?」
さやか「うん。今もそう思う。」
ほむら「では、間違ったことをする人を攻撃することは?」
さやか「…わかんない」
ほむら「私たちは警察や軍隊じゃない。誰かを守ることを義務付けられているわけではない。」
ほむら「私たちが誰かを助けても、何の見返りも手に入らない。私達が魔女を狩るのは、グリーフシードを手に入れてソウルジェムを維持するため。」
ほむら「魔法少女の人助けは純粋なボランティア活動ということになる。でも、いくらボランティアをするのが素晴らしいからって、それを他人に強要するのはおかしいんじゃないかしら?」
まどか「本当に強くなりたいなら私と一緒にヴァリトゥ-ドゥを習いに行こうよ!」
さやか「…」
ほむら「あなたは知らないでしょうけど、ソウルジェムの輝きを維持しないと大変なことになる。魔力もグリーフシードも貴重なの」
ほむら「誰かを見殺しにするのは正しいとはいえない。でも、身を削ってまで誰かを助けることを押し付けるのも、正しいとは言えない」
さやか「じゃあなにが正しいの」
ほむら「そんなに簡単には行かないの。だからに慎重になる必要がある。」
さやか「この前みたいにいきなり戦いをふっかけちゃ駄目ってこと?」
ほむら「そうよ」
さやか「じゃあどうしたらいいの?誰かを見殺しになんてできないよ」
ほむら「魔女も使い魔も倒したらいいわ。でも、違う考えの人に出会っても、戦いを仕掛けては駄目。」
ほむら「10人いれば10通りの考え方がある。そこは割り切ることよ。」
ほむら「あとは、使い魔を倒してても余裕を持てるように、効率的な戦い方を覚えること。」
ほむら「自分がどれだけ理想を守っても、理想が自分を守ってくれることなんてないのよ。」
ほむら「理想に殉じるなんて馬鹿げたことにならないよう、自分の力で頑張ることね。」
さやかちゃんは古流剣術か剣道をやって心の強さを手に入れればいいよ
道着袴で剣術の稽古に勤しむ汗だくのさやかちゃん…
さやか「…自分の力で…」
ほむら「そうよ。そのために強くなるの。自分を守れない人に、誰かを守ることなんてできないわ。」
さやか「…強く…」
ほむら「もう一度聞くわ。あなたはこれからどうしたい?」
光の速さで保存した
さやか「あたし…強くなりたい。みんなを守れるぐらい、どんな魔女にも負けないぐらい強くなりたい。」
さやか「転校生…あたしに、強くなれる方法を教えて」
ほむら「いいわ。教えましょう。鹿目まどかもそう望んでいる。」
まどか「まどかでいいよ、ほむらちゃん。さやかちゃんもいいよね?」
さやか「うん。転校生も…名前で読んでいい?」
ほむら「ええ。まどか。さやか。」
さやか「…ほむら。」
まどか「てぃひひ!じゃあごはん食べよ?おひる休み終わっちゃうよ?」
ほむら「ええ。」
さやか「うん!」
ちょっと夕飯食べに出てきます。
1時間ほどで戻るかと思います。
もし保守をしていただけるならお願いします。
再開します
―――――――――――――――――――――――――――――
放課後
ほむら「放課後になったわ。特訓の時間よ。」
さやか「…もうやるの?いくら何でも早くない?」
まどか「鉄はなるべく熱いうちにぶっ叩くんだよ、さやかちゃん」
さやか「怖いこと言わないでよ…」
ほむら「まだ怖くしないわ。痛くはするけど。」
さやか「え!?」
まどか「さやかちゃんガンバッテ!」
さやか「まどか~!」
―――――――――――――――――――――――――――――
ガード下
ほむら「(懐かしい場所…)」
まどか「ここで特訓するの?」
ほむら「ええ。昔は私もここを使っていたの。」
さやか「へぇ~、ほむらにもひよっこ時代があったんだねぇ~」
ほむら「自分が未熟だと自覚しているのなら問題ないわ。始めましょう。」
さやか「ぐっ…」
ほむら「ところでさやか、あなたの武器は何?」
さやか「刀だけど」
ほむら「刀ってどう思う?」
さやか「どうって…」
ほむら「聞き方を変えるわ。他の武器と比べて、刀って強い?」
さやか「えっと…」
ほむら「人類の戦争の歴史の中で、刀や剣といった武器が主役だった時代はとても古いわ。槍が生まれ、弓矢が生まれ、銃が生まれていく中で、剣は戦いの主役の座を奪われて脇役となり、そして消えていった。なんでかしら?」
さやか「え?うーん…」
まどか「はい先生!」
ほむら「はいまどかさん」
まどか「剣は短いからです!」
ほむら「正解」
さやか「ちょっ」
ほむら「そう。刀や剣の最大の弱点は、リーチが短いこと。」
ほむら「剣より槍のほうが間合いが広い。剣では矢や銃弾は防げないし、射手まで届かない。だから廃れた。」
ほむら「剣の使い手はそのことをよく知っておく必要があるの。慣れた魔法少女なら必ずその隙を突く。」
ほむら「それに、魔女はもっとでたらめな手段で攻撃してくる。自分の武器をよく理解しておかないと、対応しきれない。」
ほむら「逆に言えば、自分の武器の特性を理解することで、自分に合った戦いの方法が見えてくるのよ。」
さやか「な、なるほど…」
まどか「(弓いいなあ弓)」
まどか「刃物のリーチを補うなら刃を飛ばせばいいんだよ!」
スペツナズナイフ?さやかちゃんはサンボマスターにでもなるんですか?
ほむら「剣で攻撃するということは、敵の懐に深く飛び込むということ。それだけ危険も大きくなる。」
ほむら「では、もし敵があなたのように剣で戦うタイプだったら、あなたはどう戦う?」
さやか「えっと、とりあえず距離を取るかな」
ほむら「そうね、それもいいわ。あと、自分の懐に罠を張っておいたり、敵を近づけさせないように遠距離攻撃で消耗させるのもいい。」
ほむら「ちょっと考えるだけでも、剣への対処手段は結構出てくるでしょう?」
さやか「ってことはそれだけ…」
ほむら「剣の使い手は危険ね」
まどか「(ホーミング機能とかつけてみたり)」
届くぐらいでかいor長い剣を発現すればいいんじゃね?
13kmぐらい伸びる剣とか
ほむら「前置きが長くなったけど本題よ。あなたには、はやさを鍛えて欲しいの。」
さやか「はやさ?」
ほむら「機動の速さ、攻撃の速さ、対処の早さ、決断の早さ」
ほむら「相手がこちらに対応する前に攻撃する。一撃離脱。または一気に畳み掛ける。」
ほむら「はやさは攻撃にも防御にも使える。身につけておいて損はないわ。」
さやか「ふーん…」
まどか「(ノートノート…)」
何よりもっ速さが足りないっっ
ほむら「と、言う訳で、今回の特訓は短距離走です」
まどかさやか「え?」
ほむら「ここからあの印のところまで、ちょうど250m。往復で500mよ。」
ほむら「できるだけ速く行って戻ってらっしゃい。」
ほむら「もちろん変身してね。飛んで行くのよ。」
ほむら「タイマーセットOK…準備はいい?」
さやか「ちょ、ちょっと」(変身した)
ほむら「3,2,1,ゴー」
さやか「ああもう!」
―――――――――――――――――――――――――――――
さやか「はぁ…はぁ…ぜぇ…」
まどか「さやかちゃんおかえり」
ほむら「時間は一分よ。速度にすると30km/h。遅いわ。原付並。」
さやか「はぁ…はぁ、げ、原付…」
ほむら「当面の目標は18秒。つまり100km/hよ」
さやか「はぁ!?無理だって…」
ほむら「大丈夫よ。身体を鍛えるわけじゃないの。要は魔力の使い方よ。」
ほむら「さやかが飛んでいくのを後ろから見ていたけど、軌道が随分ぶれていたわ。推進力のベクトルをもっと上手く制御できるようになれば、もっと速くなるわ。」
ほむら「後は折り返しをもっと素早く。印を行き過ぎていたし、もたつきすぎ。方向転換を素早く出来るようにならないと、実戦で使えないわ。」
さやか「ぐぅ…」
まどか「大丈夫、さやかちゃんなら出来るよ。運動得意でしょ?」
さやか「それとこれとは…」
ほむら「数日間みっちりやりましょう。かなり向上するはずよ。」
まどか「がんばって、ね?」
さやか「…はあい」
―――――――――――――――――――――――――――――
数日後
ほむら「50m、5開始」
さやか「さやかちゃんぶっ飛んじゃいますよー!」
まどか「気をつけてね?」
ほむら「3,2,1」
さやか「ゴー!」
―――――――――――――――――――――――――――――
さやか「よっ、と」
まどか「ほとんど見えなかった・・・」
さやか「ほむら、どう?」
ほむら「9秒。平均200km/hね。」
まどか「すごい…すごいよさやかちゃん!」
さやか「へっへーどうよー」
ほむら「上達したわね。推進ベクトルの制御が上手くなった。」
さやか「ふっふーん!」
ほむら「これなら次の段階に進めるわね。実戦編よ。」
さやか「へ?」
50m往復*5でいいの?
>>184
そうです。往復を入れ忘れました。すみません。
―――――――――――――――――――――――――――――
使い魔の結界の中
ほむら「目の前に使い魔が10匹います」
さやか「…」
ほむら「これを殲滅しなさい。できるだけ速く。」
さやか「分かった」
ほむら「難しいことは考えなくていいわ。目標の隣を通り抜けながら、刃を敵にぶつけるだけ。今はそれでいい。」
さやか「うん」
ほむら「いつでもいいわ。始めて」
さやか「おおおおおおおお!」
―――――――――――――――――――――――――――――
さやか「…ふぅ」
ほむら「お疲れ様。それなりによかったわ。」
さやか「ねぇ、これってほんとうに役に立つのかな?」
ほむら「え?」
さやか「確かに速く動けるようになって、雑魚はすぐに片付けられるようになったけど、もっと強い相手だと…」
ほむら「もっと強力な攻撃技が欲しい?」
さやか「うん。」
ほむら「そうね。それはおいおいやっていきましょうか。」
ほむら「もう遅い時間よ。とりあえず今日はもう終わりにしましょう。まどかが待ってるわ。」
さやか「そうだね。帰ろう。」
さやかA「絶望があんたのゴールよっ!」
―――――――――――――――――――――――――――――
翌日
まどか「おはようほむらちゃん」
ほむら「おはよう」
まどか「さやかちゃん、どう?」
ほむら「機動の速さは概ね掴んだわ。後は剣の扱いを鍛えなきゃね。でも、私は刃物は専門外だから…」
まどか「どうやるの?剣道部の人にお願いするとか?」
ほむら「さやかの戦い方は高速での一撃離脱。地に足を付けた試合剣術では役に立たないわ」
まどか「自分で練習するってこと?」
ほむら「そうね。実戦の中で、さやかに自力で覚えてもらうしか無い。」
ほむら「対処の早さも決断の早さも、経験を積んでいく中で身につけてもらうわ」
まどか「ひたすら場数をってことだね」
ほむら「そういうこと。…心配?」
まどか「…ううん。ほむらちゃんがついていてくれるんでしょ?なら大丈夫。」
ほむら「そこまで信じてくれるなんて、光栄ね」
まどか「てぃひひ!」
さやか「まどかほむら~!」
ほむら「来たわね、じゃあ行きましょう。遅刻するわ。」
まどか「そうだね。行こっか」
さやか「お?ふたりとも何話してたの?ひょっとしてさやかちゃんのことかな~?」
まどか「てぃひひ、さやかちゃん最近すごいねって。ね、ほむらちゃん」
ほむら「まだまだ未熟よ。危なっかしくて目が離せないわ。」
さやか「うー何だこの差はー」
ほむら「(順調ね…ここまでは)」
―――――――――――――――――――――――――――――
学校
まどか「上條くん元気そうだね。」
さやか「そうだね…」
まどか「さやかちゃん声かけてみたら?上條くんのバイオリン熱も落ち着いてきたみたいだし…」
さやか「…」
仁美「さやかさん」
さやか「仁美?」
仁美「放課後、二人だけでご相談したいことがありますの。喫茶店で待ち合わせできますか?」
さやか「うん、いいけど…なに?秘密の話?」
仁美「はい。大切なことです。お待ちしています。」
さやか「?…うん、またあとでね」
仁美「はい。まどかさんと暁美さんも、ごきげんよう。」
ほむら「ええ。」
まどか「また明日、仁美ちゃん」
ほむら「(…やばいかも)」
さやか「というわけで、これから仁美のところに行きたいんだけど…」
ほむら「いいわ。今日の特訓はお休み。行ってあげなさい。」
さやか「ありがと。じゃ行ってくるねー」
ほむら「また明日ね」
まどか「さやかちゃんまた明日!」
さやか「うん、またね!」
―――――――――――――――――――――――――――――
帰り道
まどか「仁美ちゃんのお話ってなんだろ?私達には聞かれたくないのかなあ?」
ほむら「…………」
まどか「ほむらちゃんどうしたの?」
ほむら「…何でもないわ」
まどか「嘘。ほむらちゃんすっごく怖い顔してた」
ほむら「…そんなことないわ、大丈夫よ」
さや「恭介のことはもういいの…だって今は」チラッチラッ
ほむ「(なんだろう、さやかがさっきから視線を送ってくる)」
という俺得な展開に
まどか「ね、もし何か悩んでるんだったら、教えて?」
まどか「私、魔法少女でもないし、頑張るさやかちゃんを励ますことしかできなくて…ほむらちゃんに任せっきりで」
まどか「だから、少しでも役に立ちたいの…ほむらちゃんの負担を減らしたいの」
ほむら「…」
まどか「ね…お願い?」
ほむら「…私、志筑さんがさやかを呼び出した理由を知ってるの」
まどか「えっ?」
ほむら「話は上条恭介のこと。志筑さんは彼に告白をするつもりなの。」
まどか「ええっ!?」
ほむら「志筑さんはその前にさやかにそれを伝えるの。さやかは幼馴染なんだから、先に告白する権利がある、1日待つから心を決めろって。」
まどか「…」
ほむら「さやかのことが心配なの…追い詰められてしまうんじゃないかって。告白できずに、諦めてしまうんじゃないかって。」
ほむら「さやかは思い込みが激しいから、そうしたら自分はもうだめだって思い込んで、どんどん堕ちていってしまうんじゃないかって」
まどか「…」
ほむら「…何でそんなことを知ってるのかって、聞かないのね」
まどか「…ほむらちゃんは何でも知ってるもん。いまさらだよ。」
ほむら「…」
まどか「それに、いつかは教えてくれるんでしょ?何でほむらちゃんはそんなに物知りなのかって。」
まどか「わたし、ほむらちゃんのこと信じてるから。大丈夫だよ。仁美ちゃんのこと話してくれてありがとう。」
ほむら「まどか…ありがとう…」
まどか「じゃあ、さやかちゃんの背中を押せるようにがんばろっか!」
ほむら「そうね。少なくとも、さやかが後悔しなくて済むように…」
まどか「じゃあさやかちゃんにメールするね?仁美ちゃんのお話が終わったら来てって。」
ほむら「そうね。決断も対処も早いほうがいいわ。」
まどか「てぃひひ、さやかちゃんの実戦訓練だね!」
ほむら「ええ。」
―――――――――――――――――――――――――――――
喫茶店
仁美「ずっと前から…私…上条恭介君のこと、お慕いしてましたの」
仁美「あなたは私の大切なお友達ですわ。だから、抜け駆けも横取りするようなこともしたくないんですの」
仁美「私、明日の放課後に上条君に告白します」
仁美 「丸一日だけお待ちしますわ。さやかさんは後悔なさらないよう決めてください。上条君に気持ちを伝えるべきかどうか」
さやか「あ、あたしは…」
―――――――――――――――――――――――――――――
仁美が帰った後
さやか「あたし…どうすれば…」
さやか「ん…?メール…」
from:まどか
件名: 特訓だよ!
本文: いつもの場所!遅刻厳禁!待ってるからね!
さやか「今日は休みって言ってたじゃん…しかも遅刻厳禁って…時間書いてないし」
さやか「まあいいか…気が紛れそうだし…行っとこ」
―――――――――――――――――――――――――――――
ガード下
ほむら「(あの時ボコボコにしたドラム缶…今はあそこにあるのね)」
ほむら「(そういえば、あの時駄目にしちゃったゴルフクラブって、いくらぐらいしたんだろう)」
ほむら「(何万…いや何十万かも…ごめんねお父さん)」
まどか「ほむらちゃん?」
ほむら「え?なに?」
まどか「今度は申し訳なさそうな顔してた…大丈夫?}
ほむら「ええ、もう終わってしまったことだから。…まどかって鋭いのね。私の考えを見抜けるなんて」
まどか「てぃひひ、そうかなあ?」
ほむら「そうよ」
さすがに12時間続けて書いていたので疲れました。
しばらく寝ます。もし良かったら保守をお願いします。
もし残ってたら必ず続きは書きます。
続きは考えてありますが、今後の展開について、もしなにか要望があれば書いてくださっても大丈夫です。
ではおやすみなさい。
皆さんおはようございます
保守してくださってありがとうございました
今から続きを書きます。
>>243より
まどか「もしそうなら、たぶんほむらちゃんだからだよ」
ほむら「私だから?」
まどか「よくわかんないんだけど、私ね、ほむらちゃんとずっと前から一緒にいた気がするの」
ほむら「え?」
まどか「なんだかずっと前から知ってるような気がして…だからだと思う。ほむらちゃんの考えてることが分かるのは」
ほむら「…」
まどか「ねえ、ほむらちゃんって昔…」
さやか「おーい二人ともーさやかちゃんが来ましたよー!」
ほむら「後にしましょう。今はさやかを。」
まどか「…うん」
さやか「どうしたのさ急に特訓なんて」
まどか「さやかちゃん、仁美ちゃんのお話ってなんだったの?」
さやか「な、なによいきなり」
ほむら「あの時の志筑さん、心なしか深刻そうな顔をしていたわ。それでいて何かの決意をしてるような」
まどか「仁美ちゃんも大切な友達だから、もし仁美ちゃんが何か悩んでるんだったら力になりたいの」
さやか「ま、まどかとほむらには関係ない話だよ。それに二人だけの相談事だったし…」
ほむら「もしかして、口止めでもされた?」
さやか「されてないけどさ…」
まどか「さやかちゃんと仁美ちゃんだけで背負いこもうとするなんて、水臭いよ。」
まどか「話してくれるだけでもいいの。さやかちゃんお願い」
さやか「…」
さやか「(あたし仁美にあんなこと言われて、どうしたらいいかわかんなくって…)」
さやか「(でも、この二人なら…)」
さやか「…わかった。話すよ。」
さやか「仁美の相談はね、恋の相談だったの。」
まどか「…」
さやか「仁美は恭介のことが好きだったって。告白するまで一日待つから、私に心を決めろって。」
ほむら「…」
さやか「…驚かないんだね」
まどか「わ、わたしは…仁美ちゃんの様子見てて、そうなんじゃないかなって、なんとなく」
ほむら「私はまどかからそのことを聞いてたの。おかげで納得できたわ。」
さやか「…そっか。気づいてないの、私だけだったか」
ほむら「(さやかはソウルジェムのことはまだ知らない。自分がゾンビだからと思い込んで諦めようとはしないでしょう)」
ほむら「それで?あなたはこれからどうしたいの?」
さやか「…わかんない。」
まどか「さやかちゃんは上条くんが好きなんでしょ?」
さやか「…うん…やっぱりお見通しかあ…」
ほむら「上条恭介を志筑さんにとられてもいいの?」
さやか「…仁美ならお似合いだよ…美人だし、恭介にはもったいないぐらい。あたしなんか…」
まどか「さやかちゃんは幼馴染なんだよ!ずっと一緒にいた時間なら、さやかちゃんのほうが…」
さやか「だからだよ…恭介もあたしも、お互い昔から知りすぎてて…」
さやか「異性としてなんて見られてない…たぶん家族か何かみたいに思われてる」
まどか「そんなのまだわかんないよ!」
さやか「わかるよ…恭介、退院のこと一言も教えてくれなかったし、退院した後もバイオリンのことばっかり」
さやか「あたしのことなんてどうでもいいんだよ、きっと…」
まどか「だからって諦めきれるの?さやかちゃんはそれで満足なの?」
ほむら「志筑さんは魅力的で人気があるそうね。彼女に言い寄られたら、ほとんどの男子が受けてしまうのではないかしら」
ほむら「上条恭介に想い人は居ないようだし、このままだと確実に彼をとられてしまうわよ」
さやか「あたし、ほんとはそんな資格なんて無いの」
まどか「さやかちゃん…?」
さやか「あたしね、今日後悔しそうになっちゃった。あの時、仁美を助けなければって。ほんの一瞬だけ思っちゃった…」
さやか「これじゃ魔法少女失格だよ…みんなを守るんだって、そのために強くなるんだって、決めたくせに…」
まどか「…」
ほむら「…人の心は複雑なの。人の心はきれいなものだけでできてるわけではないのよ。暗い考えが頭をよぎることもある。」
ほむら「大切なのは、それらを全部ひっくるめた上で、何をしたいのかということよ。」
さやか「…」
ほむら「あなたは今志筑さんが魔女に襲われてても、見捨てる気なんて無いんでしょ?」
さやか「…うん」
ほむら「ならそれでいいの。あなたは悪くない。」
さやか「…あたし、怖いの…もし告白して振られたら、もう幼馴染としても一緒にいられなくなっちゃう」
さやか「恭介に拒絶されちゃうのが怖いの…」
まどか「でも、このまま何もしないでいて上条くんが仁美ちゃんと付き合うことになっても、さやかちゃんは上条くんの幼馴染としては一緒にいられなくなっちゃうと思う」
さやか「…え?」
ほむら「たとえ幼馴染であっても、実の彼女を差し置いて他の女に構っているような男は、誠実といえるかしら?」
さやか「………」
まどか「上条くんに彼女ができちゃった時点で、さやかちゃんは疎遠になるしか無いと思うの」
ほむら「でなければ、上条恭介を奪おうとしている、と思われかねないわね」
さやか「……あたし、どうすれば…」
ほむら「状況を整理しましょう。このまま何もしなければ、上条恭介はほぼ確実に志筑さんと付き合うことになる」
ほむら「そうなれば幼馴染としても一緒には居られなくなる。」
ほむら「彼のそばに居たいと思うなら、振られるかもしれないというリスクを踏んででも告白をするしか無い。」
ほむら「想いが実る保証はどこにもないけど、何もしないで居るよりはいい。」
ほむら「後はあなた次第。あなたが勇気を出して、彼に告白をするだけ。」
ほむら「上手くいってもいかなくても、あなたは今の関係を自分から壊しに行くことになる。でも何もしないでいて終わってしまうよりはいいと思うわ。」
まどか「さやかちゃん…怖いと思うけど、さやかちゃんなら出来るよ。がんばって。」
さやか「……無理だよ…」
まどか「さやかちゃん?」
さやか「…怖いよ…告白なんて出来るわけ無いよ…」
ほむら「さやか、今日の特訓は上条恭介に告白をすることよ」
さやか「……え?」
ほむら「魔法少女はあらゆる能力が人間より優れている。それをある日突然獲得するの。何の努力もなく。」
ほむら「だから自らの能力を過信して、恐怖を感じないままで戦っていることがある」
ほむら「でもいずれは恐怖に気付く。戦いの本質が、命の取り合いだってことを嫌でも理解する」
ほむら「その時に恐怖に足がすくんで動けないようでは真っ先に死んでしまう。」
ほむら「だからあなたには出来るようになって欲しいの。恐怖を乗り越えるということを。」
さやか「…恐怖を乗り越える…?」
ほむら「人が何かをしようと思ったら、相応のリスクを背負わなければいけないの。」
ほむら「手を汚さずに掴める物なんて無いのよ。」
さやか「………」
まどか「さやかちゃん、上条くんがとっても好きなんだよね?一緒に居たいんだよね?」
さやか「…うん」
ほむら「本当に欲しいものは自分で手に入れなければ駄目なの。待ってても手に入らないの。」
ほむら「あなたは強くなりたいんでしょう?ならこれくらいの恐怖、乗り越えてみせなさい」
さやか「…うん!」
まどか「じゃあ行ってらっしゃいさやかちゃん!」
さやか「え?今から?」
ほむら「決断と対応を早く。最初に言ったでしょ?」
まどか「がんばってね、さやかちゃん。それで明日結果を聞かせてね。」
さやか「うん…行ってくる!」
―――――――――――――――――――――――――――――
ガード下 、さやかが告白に行った後
まどか「…行っちゃったね」
ほむら「…大丈夫かしら」
まどか「さやかちゃんは思い込んだら一直線だもん。できるよ。告白。」
ほむら「…そうね。全く、手のかかる子だわ。」
まどか「てぃひひ、だからこそ、ね?」
ほむら「ええ。ほっとけない。」
ほむら「そういえば、どうしてここにさやかを呼んだの?私達が喫茶店に行っても良かったんじゃない?」
まどか「ここはね、さやかちゃんが頑張るための場所だから。」
まどか「だから、ここなら勇気を出せるんじゃないかなって」
ほむら「そうね…いい考えだったと思うわ」
まどか「うぇひひひ」
ほむら「帰りましょうか」
まどか「うん!」
―――――――――――――――――――――――――――――
翌日
まどか「おはよーほむらちゃん!」
ほむら「おはようまどか」
まどか「さやかちゃん…どうなったかな…?」
ほむら「わからないわ…さやかが来ないと…」
まどか「緊張するね…」
ほむら「ええ…」
まどか「あ、さやかちゃん」
ほむら「え?」
さやか「…」
まどか「…おはよう、さやかちゃん…」
さやか「…」
ほむら「…おはようさやか…」
さやか「…」
ほむら「…どうだった?」
さやか「…」
まどか「…さやかちゃん?」
さやか「…」
ほむら「…さや」
さやか「残念ながら…」
まどかほむら「?!」
さやか「…付き合うことになりました!!!」
まどかほむら「…え?」
さやか「告っちゃいました!うまくいっちゃった!さやかちゃん大勝利!!!」
まどか「…」
ほむら「…」
さやか「舞い上がっちゃってますね、あたし!」
まどか「…す、すごい、すごいよさやかちゃん!」
ほむら「…はあ…良かった…どっと疲れた…もう勘弁して…」
さやか「へへへ、ありがとう、ふたりとも。」
ほむら「それで?今日の特訓はどうするの?」
さやか「それなんだけどさ…恭介と約束しちゃってて…」
ほむら「いいわ。今度こそ休みにしましょう。デートなんでしょ?楽しんでらっしゃい」
さやか「ありがと!じゃ早く学校行こ!競争だ~!」
まどか「あっ、待ってよさやかちゃん!」
ほむら「まったく…はしゃぎすぎよ」
―――――――――――――――――――――――――――――
授業中
さやか「えへへふへへ…」
まどか「さやかちゃん、ノートとらなくていいの?」
さやか「え~?なに~?」
まどか「もう…ほむらちゃんに怒られるからね」
さやか「いいよいいよ~」
まどか「まったく…しょうがないんだから」
仁美「(さやかさんの御様子…私、負けましたのね)」
仁美「(それでもお譲りしたのは私…もし非情になりきれていれば、結果は違っていたのでしょうか)」
仁美「(いえ…後悔など…意味のない行為ですわね)」
―――――――――――――――――――――――――――――
放課後
さやか「それじゃーねーふたりとも!うへへへへ~」
まどか「バイバイさやかちゃん。ハシャギ過ぎないでね」
ほむら「また明日ね」
まどか「…特訓、お休みにして本当によかったの?」
ほむら「さやかには自分が掴みとったものを噛み締めて欲しいの。努力の証として。」
まどか「そっか。そうだね。」
ほむら「それに、私達にはやることがある」
まどか「やること?」
ほむら「佐倉杏子に会いに行く」
まどか「え?!」
ほむら「佐倉杏子の存在はさやかを良い方向に動かすのに役立つ」
ほむら「意見の対立する彼女との折衝を経験することで、さやかにまた一つ成長してもらいたいの。」
ほむら「世の中には自分と違う意見を持った人なんていくらでもいる。その人達に会った時一々争わなくてもいいようにね。」
ほむら「佐倉杏子は思い過去を背負っている。それはそれだけ重い教訓をさやかに与えてくれるはず。」
ほむら「さやかは新しい攻撃方法を欲しがってたから、彼女からも助言がもらえればと思うわ。」
まどか「…その子、わたしたちのお話聞いてくれるかな?」
まどか「なんか、こっちばっかり都合がいいような気がして…」
ほむら「大丈夫よ。さやかと彼女は相性がいいの。」
まどか「え?」
ほむら「じきにわかるわ。さあ行きましょう。」
―――――――――――――――――――――――――――――
ゲームセンター
まどか「ここにいるの?」
ほむら「魔女狩りに出ていないときは、だいたいね。」
まどか「それに、こんなにたくさんお菓子買っちゃって…どうするの?」
ほむら「彼女、お菓子が大好きなの。会話の取っ掛かりにするわ。」
まどか「(お菓子持ち込んじゃってもよかったのかなここ…)」
ほむら「いたわ。あのダンスゲームの所よ」
まどか「!」
杏子「…よっ…ほっ…」
ほむら「佐倉杏子」
杏子「久し振りだね…連れも居んのか」
杏子「あんたら妙なことしてるってな…キュゥべえから聞いたよ」
ほむら「奴は何て?」
杏子「あのひよっこ…美樹さやかだっけ?部活動じみたお遊びで鍛えてるんだってな?」
ほむら「それがどうかした?」
杏子「あんな甘ちゃん、構うだけ無駄だと思うよ?惚れた男の手を治すために契約したんだって?」
杏子「しかも使い魔まで狩るだって?お遊びも大概にしろっての」
杏子「まったく。たった一度の奇跡のチャンスをくっだらねぇことに使い潰しやがって」
ほむら「…」
杏子「魔法ってのはね、徹頭徹尾自分だけの望みを叶えるためのもんなんだよ」
杏子「他人のために使ったところで、ロクなことにはならないのさ」
ほむら「気になるのね。彼女のこと。」
杏子「なっ…」
ほむら「他人のために魔法少女になって、他人のために戦おうとする美樹さやかが心配?」
杏子「ちげぇよ…」
まどか「(さやかちゃんとの相性って、もしかして)」
ほむら「どうしてそんなに気になるのかしら?」
杏子「ちげえっつってんだろ…」
ほむら「この街を、あなたにも委ねたい。」
まどか「えっ?」
杏子「何だいきなり…どういう風の吹き回しだ」
ほむら「魔法少女には、貴女みたいな強かな子が向いているわ。美樹さやかにはまだ荷が重い。あなたの力が必要なの」
杏子「あんたらの仲間になれってか」
ほむら「そうよ。」
杏子「見返りは何だ?」
ほむら「この街はあなたと私たちの狩場になる。今までより収穫は増えるんじゃないかしら」
ほむら「そして、美樹さやかと相対する時間を提供するわ。気になるんでしょ?あの子のこと」
杏子「だからちげえって…」
ほむら「返事は?」
杏子「いいよ、のってやる」
杏子「元々見滝原丸ごとぶんどってやるつもりだったけどさあ、アンタみたいな手札が見えないイレギュラーがいたんじゃ、どうも手が出しづらくってね」
杏子「そっちから一部でも差し出そうってんなら話が早い。ついでにアンタの監視もできるしな。」
ほむら「私の?」
杏子「キュウべえにもわからないアンタの正体、見極めさせてもらうよ」
ほむら「いずれ話してあげてもいいわ。今は秘密。」
杏子「食えない奴。まあいいや…」
杏子はポッキーを取り出しながら…
杏子「く」
ほむら「くうかい?」
目の前に既にポッキーがあった。
杏子「あたしの持ちネタを…」
―――――――――――――――――――――――――――――
帰り道
杏子「いいのか?…もぐもぐ…こんなに…あむっ…菓子もらっちまって」
ほむら「いいのよ。買い過ぎちゃって。私小食なの。」
杏子「アンタいいやつだな…さくさく…そういやちゃんと名前聞いてなかったな」
ほむら「暁美ほむらよ」
杏子「そっちは?」
まどか「え?えと…鹿目まどかです」
杏子「アンタは魔法少女じゃないんだな」
まどか「う、うん…ほむらちゃんと約束したから…」
杏子「そりゃいい心がけだ。魔法少女なんて好き好んでなるもんじゃない」
ほむら「まったくね」
まどか「うん…」
杏子「じゃあまた明日な。あそこに行けばいいんだろ?」
ほむら「ええ。さやかも連れていくから。楽しみにね」
杏子「だからちげえっての…じゃあな」
ほむら「ええ、また明日ね杏子」
まどか「また明日ね杏子ちゃん!」
杏子「下の名前で…まあいいか」
―――――――――――――――――――――――――――――
杏子と別れた後
まどか「杏子ちゃん、怖い人かと思ってたけどイメージと違ったね」
ほむら「あの子は悪人というよりは、悪ぶってるだけなの。根はいい子なのよ」
ほむら「昔は正義に燃える魔法少女だったの。さやかのことが気になるのは、さやかに昔の自分を重ねているからね。」
まどか「ほむらちゃんって杏子ちゃんのこともよく知ってるんだね」
ほむら「ええ。いずれ話すわ。その理由も含めて全て。」
まどか「うん…」
ほむら「それほど険悪にならなくてよかったわ。お菓子が効いたのかもね。」
まどか「あのいっぱいあったお菓子って、杏子ちゃんのご機嫌取りのためだったの?」
ほむら「ええ。昔から言うでしょ?心を掴むには胃袋を掴めって。」
まどか「それは少し違う気がする…」
ちょっと用事を済ませてきます。
遅くとも夜には戻ります。
もしよろしければ保守をお願いします。
もし指摘したいことや要望、感想などがあれば書いていって下さい。
保守ありがとうございました。
再開します。
―――――――――――――――――――――――――――――
翌日
まどか「ほむらちゃほむほむ!」
ほむら「何よその挨拶」
まどか「てぃひひ!」
ほむら「まったく…さやかは?」
まどか「上条くんと一緒に登校するって」
ほむら「まあ放課後は特訓になるし、学校ではできるだけ二人で居させてあげましょうか」
まどか「うん!」
―――――――――――――――――――――――――――――
学校
さやか「恭介恭介~、お昼空いてるよね?」
さやか「…いいの?やったー!」
ほむら「…幸せそうね」
まどか「…うん。でも…」
仁美「…………」
ほむら「辛そうね…見せつけられてるようなものだし」
まどか「…さやかちゃんが幸せな分だけ、仁美ちゃんが辛いだなんて」
まどか「こんなの絶対おかしいよ。何とかならないのかな?」
ほむら「…たった一人を二人でとり合うってことは、そういうことなの。」
ほむら「どちらかが叶えば、どちらかは傷つくの。それは避けられないのよ。」
ほむら「もし志筑さんが付き合うことになっていたら、さやかが追い詰められていたでしょうね。」
まどか「それでも、何かしたいよ…」
ほむら「そうね。さやかは彼と食べるようだし、お昼は志筑さんと一緒に食べましょうか」
まどか「…うん!仁美ちゃん誘ってみるね!」
まどか「仁美ちゃん仁美ちゃん、お昼一緒に食べよ?」
ほむら「私もご一緒していいかしら」
仁美「…まどかさん、暁美さん。…ありがとうございます」
ほむら「ほむらでいいのよ、仁美」
仁美「ええ…ほむらさん」
―――――――――――――――――――――――――――――
放課後
さやか「さあさやかちゃん張り切っちゃいますよー!」
まどか「ハシャイジャッテ!」
ほむら「気を引き締めなさいさやか、今日の特訓相手は手強いのよ」
さやか「ふっふん、また使い魔の集団と戦うんだよね?今度は20匹とか?」
ほむら「違うわ。もっと強い相手よ」
さやか「もっと強い?魔女とか?そうかそうか…ついに魔女相手にさやかちゃんの新しい力を見せる時が…」
ほむら「違うわ。もっと難しい相手よ」
さやか「え?なにそれ」
ほむら「佐倉杏子よ」
さやか「…ハイ?」
ほむら「あなたには、杏子と話をしてもらいたいの。」
さやか「……ちょ、ちょっと待ってよ…何で急にそんな」
ほむら「あのときは杏子と殺し合いみたいな事になってしまったでしょう?だから今度はお互い、武器を向けずに話をして欲しいの」
さやか「そんなこといったって…むこうが攻撃してこないとも限らないじゃん、前みたいに」
ほむら「大丈夫よ、話はつけてあるから。杏子のほうも、あなたと話がしたかったみたいだし」
さやか「…だからあいつのことを名前で呼んでるんだ…昨日、なんか話したんだね」
さやか「どういうことなのほむら。あんたどっちの味方なの?」
ほむら「ほらほら、そういうふうに考えないの。私は冷静な人の味方で、無駄な争いをする馬鹿の敵よ」
ほむら「あなたには、自分と考え方の違う人とも冷静に話ができるようになってほしいの。」
ほむら「自分と違う考えを持った人なんて、世の中にはいくらでもいるのよ?いちいち争ってたらきりがないでしょう?」
ほむら「だから、あなたには自分の感情を制御できるようになって欲しいの。常に冷静でいられるように。」
さやか「…」
ほむら「あなたは、感情に任せて突っ走ってしまうところがある。」
ほむら「それはいい結果をもたらすこともあるけど、大抵は悪いことになってしまうの。戦いでは特に。」
さやか「…なんで?」
ほむら「戦場で考えるのをやめてしまったら、それは死にに行くようなものなの。」
ほむら「考えなきゃいけないことは多いの。敵がどんな攻撃方法を持っているかとか、自分の状態はどうかとか、どんな方法で攻撃すべきかとか…」
ほむら「頭に血を昇らせて戦っても、それは相手の思うつぼなの。」
ほむら「思い出して。杏子と戦った時のことを。私と戦った時のことを。」
ほむら「あなたはどうだった?杏子や私はどうだった?」
さやか「…」
ほむら「だから、今日の特訓は杏子と冷静に話をすること。そして、感情を制御することを覚えること。」
まどか「さやかちゃんは前のこと忘れられないかもしれないけど…これはさやかちゃんのためなの」
まどか「だからがんばろう?ね?」
さやか「…はぁ、わかったよ」
ほむら「それじゃ行きましょう。杏子が待ってるわ。」
―――――――――――――――――――――――――――――
ガード下
杏子「ようほむら、まどか、菓子くれよ」
ほむら「今日は持ってきてないわ。おあいにくさま。」
杏子「ちぇー」
まどか「うぇひひ」
杏子「で、そっちのアンタが…」
さやか「…美樹さやかよ。佐倉杏子」
杏子「おう、さやか」
さやか「馴れ馴れしいんだね」
杏子「かたいのが苦手なだけさ」
さやか「そう」
まどか「(大丈夫そうだねほむらちゃん)」
ほむら「(そうね、しばらく様子を見ましょう)」
杏子「…アンタ、使い魔も狩るんだって?」
さやか「そうよ、文句ある?」
杏子「何でそんなことするのさ?そんなことしても得しないよ?」
さやか「だからって、目の前で襲われている人たちを無視なんてできない」
杏子「弱肉強食って言ったよね?弱い奴は餌にしちゃえばいいんだよ」
さやか「(こいつ!…いや冷静になれ…)」
さやか「…弱いから見捨てるんじゃない、弱いから守らなきゃいけないんだ」
杏子「それでアンタは何を得るのさ」
さやか「損得なんて関係ないよ。あたしが助けたいから助けるんだ」
杏子「…あの坊やの腕を治したのもアンタ自身のためだっていうのかい?」
さやか「そうよ。あたしがそう望んだの」
杏子「…それが報われなかったとしても同じことが言えるかい?」
さやか「…わかんない。でも後悔はしない。」
杏子「それが裏目に出たときは?良かれと思ってした事せいで、大切な人たちが傷ついたとしたら?」
杏子「それでもアンタは、自分の願いを後悔しないって言えるかい?」
さやか「…?」
杏子「場所を移すよ。ついてきな。」
さやか「ちょ、ちょっと…」
ほむら「(行きましょう)」
まどか「(うん)」
すみません、明日早いのでそろそろ寝ないといけません。
今日中に終わらせるはずがこんなにも長引いてしまいました。
一応最後まで考えてあります。マミさんも含めてハッピーエンドにする予定です。
もし明日残ってたら、合間を縫ってでも書いていきたいです。
よろしければ保守をお願いします。要望とかも書いてくださって大丈夫です。
それではおやすみなさい。
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