とある幸福の幻想殺し (131)









その少年は、どこまでも優しい、だけど少しだけ弱い、少年だった―――――







 

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1384265121

「上条…………!!お願いだ…………!!!」


「ごめんな。だけど、それ以上俺のそばにいてくれたら、壊れちまうだろ?」


「壊れてもいい!お前の事を守れるのなら、それでもいいんだ!!!」


「ありがとう。だけど、俺が良くないんだ。お前がもし俺の不幸のせいで死んだら、俺は一生後悔する。だから、全部俺の為なんだ。
 なにも後悔しなくていい。俺は俺の都合で勝手にお前に取り行って、勝手に離れていくクズだ。
 何も気にするな。お前は絶対にいつか俺から離れれば幸せになれる」

「そんなこと知った事ではない!お前はお前のそばにいると不幸になると言ったな?俺様にとって、お前のそばにいる事が俺様の幸せなんだ!!!」


「…………俺は。お前と会えた事を、俺は神様に感謝するよ」


「感謝しなくてもいい!嘲っても侮蔑してもいい、だから、だから…………」


「俺は、お前と出会えて幸福だ。俺はもう、とっくに救われてる」


「上条…………!」


「『貴方に、神の御加護があらん事を』」


「上条ーーーーーーーっ!!!!!」
 






その少年は、笑っていた。



ひっそりと、たおやかに。



その笑みは、まさに触れれば壊れてしまいそうな、繊細で、弱弱しいものだった。




―――――すまない。





「何がだ?」

 

彼は、笑みを浮かべたまま、虚空へ向かって語りかけた。


まるで、誰かと会話しているかのように。



―――――あの、赤い男のことだ。



「…………何で謝るんだ?」



実際、彼としては、会話しているのだ。




―――――wsrのせいだろう。彼と、『また』離れなければいけなくなったのは。



彼が会話している相手の、音のない言葉にノイズが走った。


だが、そんなことは気にせず、彼は会話を続けた。

「お前は俺とあいつを離れさせたかったのか?」



―――――そんな訳がないだろう。



「なら、お前が謝る必要はない。何度目だよ、このやりとり」


彼、上条当麻は、『存在しない右手』に向かって少しだけ軽く微笑んだ。



その笑みは、どこまでも透き通っていて、まるで―――




「さあ、幻想殺し。次は、どこへ行こうか?」




―――――当麻が、好きな所へ。





―――この世界の地獄を見てきたような、微笑みだった。

 【このスレは無事に終了しました】

  よっこらしょ。
     ∧_∧  ミ _ ドスッ

     (    )┌─┴┴─┐
     /    つ. 終  了 |
    :/o   /´ .└─┬┬─┘
   (_(_) ;;、`;。;`| |

   
   【放置スレの撲滅にご協力ください】  
   
      これ以上書き込まれると

      過去ログ化の依頼が

      できなくなりますので

      書き込まないでください。


            SS速民一同
 【糞スレ撲滅にご協力ください】

>>18

ガンゴンバキン!! と、拳を振り落とす音が連続した。
上条当麻にしては珍しく、一撃では済まさなかった。

         _、、ィ,._                   _ _
   \\\ゞ´   ヾ                , ',___、 ヽ
   (⌒\Z ,w'レviゞ               {ィ|rwniト }

    \ ヽヽ(l. ゚ -゚ノ  文句はねぇよな?  ○i、゚ヮ゚|l_,○
     (mJ     ⌒\             .U__リ史.リ!_し  ハ,,ハ
      ノ ∩  / /              _,ノ八. ヾ、 O(゚ヮ゚,,O
     (  | .|∧_∧              ``''=''=ー'"´ `c_,,o)~
  /\丿 | (     ) ←>>18
 (___へ_ノ ゝ___ノ






   とある幸福の幻想殺し 第一話
      『遠い、昔の話』






その少年は、不幸な少年と呼べるような人間ではなかった。

不幸と呼ぶには、あまりにも激しすぎる『災厄』が、絶え間なく彼を襲ったからだ。



勿論、小さな不幸は『それ』より以前より幾らでもあった。



そのせいで、彼は『厄病神』と呼ばれ、周りの人間から攻撃される事もあった。



だが。



『それ』が始まったのは、およそ五歳の頃だったか。








初めに、父が死んだ。



彼と彼の父親が乗っていた車が、謎のエンジントラブルで、何故か爆発炎上した。



彼の事をとても愛し、彼に攻撃する者たちから力強い腕で守ってくれた父は、同じように彼の事をかばい、爆発から守って、死んだ。



彼は、体中にやけどを負ったが、何とか生き延びた。








次に、母が死んだ。

彼の家の柱が突然崩れ、落ちてきた屋根の下敷きになった。



彼のことをとても愛し、同じく愛する父を失った悲しみにも挫けず賢明に息子を守り続けてきた母は、父と同じように瓦礫から彼の事をかばい、死んだ。



彼は、全身の骨や筋肉が傷ついたが、何とか生き延びた。









次に、親戚の伯父と、その孫が死んだ。


竜巻が彼のおじの家を襲い、二人とも巻き込まれてどこかへ飛ばされていった。



親を亡くした彼の事を、厄病神と呼ばれていた事を知る親戚たちがたらいまわしにしてきた中で、唯一彼の事を愛し、大切にしてくれたおじは、



幼いながらに傷ついていた彼を慰めようと、懸命に語りかけ、笑わせようとして、時々優しく微笑む彼に幼いながら特別な感情を抱き始めていた従妹は、



窓の外に吹き飛ばされそうになる彼を、懸命に家の中へ引っ張り込み、その反動で竜巻に巻き込まれ、死んだ。



彼は、全身を切り刻まれたが、何とか生き延びた。

そして、彼の事をよくしてくれた近所のおばさんが、階段から落ちて骨を折った。



そして、彼の傷を優しく手当てしてくれた保険医の先生が、薬品のトラブルで、クビになった。



そして、彼の命を何度も救ってくれた業界では有名な医師は、事故に巻き込まれ左手が上手く動かせなくなった。



そして、そして、そして―――――








やがて彼は、一つの法則を見つけ出した。

多くの人が自分の周りで傷つき、その度に少しずつ考えていた仮説が、彼の中で確固たるものになった。



幼稚園の同級生の子供たちは、別に不幸に巻き込まれはしなかった。



自分に石を投げた大人たちは、特に不幸に巻き込まれはしなかった。



自分を厄病神とののしった人々は、皆不幸に巻き込まれはしなかった。

気付いてしまった。





彼は、気付いてしまったのだ。





彼の周りで不幸に会った人間は、皆、自分に優しくしてくれた人間だと。

投下終了。

投下開始。




彼は逃げた。

どこに、という目的が具体的にあった訳ではなかった。



ただ、人のいない所に。



彼が、不幸に巻き込まれるのが悪い、勝手に優しくするのが悪い、と割り切れるほど『強い』人間だったらよかったのかもしれない。



だが、彼は、優しくて、弱かった。

結果的に、山のふもとのほら穴に彼は逃げ込んだ。



当然山の中で、彼が食事をとれるはずも無く、彼はゆったりと死に向かっていた。



その事に対し、彼は特に恐怖を感じなかった。



人は、皆死に恐怖する。



これは『本能』だ。食欲や睡眠欲と同じく、押さえつけることは非常に困難だ。

だが、彼は恐怖しない。



もう彼は、幾人もの大切な人をなくし、また自分も何度も死にかける事によって、人としての感覚など、忘れてしまった。



彼はただ、誰にも傷ついてほしくない、それだけを祈るようになっていた。

3日ほどたったころ。



彼は、順調に衰弱していった。



もう動く気力も体力も無い、心身ともに枯れ果てたころ。

洞窟が、突然に崩れた。



天井から大量の石や岩が降ってきて、彼の右手を押しつぶした。



わずかに残っていた血が、肩口から流れて言って。



そして彼は、『死』を見た。

黒。



どこまでも闇が広がり、なにがあるのか、なにがないのかさっぱりわからない。



そして、その先にあるのは、『無』。






ああ、なるほど。人は死ぬとみんななくなっちゃうんだ。



彼は、その事に恐怖を感じることも無く、ただ思った。





皆はもう、いないんだ。なくなっちゃったんだ。




 

投下終了。
今更ながら、このssは禁書二次創作です。
尚設定を盛大に変更しているので、そこら辺を踏まえてどうぞ。


話は面白そうで期待だけど、
無意味な改行しすぎで読みにくい上に内容が薄くなってるのが残念。

上から目線で言ってごめんだけど。

あとその無意味な改行のせいで変な文章に目がいってしまう
竜巻で切り刻まれたのには少しわろた



彼はやがて『無』の口へたどりついた。






そこにいたのは、『龍』の形をした何かだった。

―――――すまない。


『君は、誰?』


―――――すまない。


『何で謝ってるの?』


―――――すまない。


『わからないよ、分からない』


―――――すまないッ…………!

それは、泣いていた。


実際に涙を流していた訳でもないし、泣く、という行動をするのかどうかも分からないが、確かにそれは泣いていた。


彼は、それが悲しんで欲しくないと思った。

『どうして、そんなに泣いてるの?』


―――――お前が、悲しんでいるからだ。


『? 僕は悲しんでるの?』


―――――そうだ。お前は悲しんでるんだ。


『どうしてわかるの?』


―――――『自分』は、『お前』だからだ。



それは何を言いたかったのか。

泣きながらら話すそれをみて、上条は、不思議と分かった。

『そっか、君は、僕なんだ』


―――――ああ。


『だけど、何で僕は今悲しんでるの?』


―――――今悲しんでいるのではない。ずっと本当は悲しかったんだ。


『嘘だよ、だって僕、乙姫ちゃんが死んでから泣いた事なんて一度も無いよ』


―――――…………すまない。


『どうして謝るの?』


―――――すまない…………ッ!


『ねえ、教えて。どうして君は、そんなに謝るの?』


―――――tyrddのせいだからだ。


『………? なんて言ったの?』


―――――お前の愛する人が、お前を愛してくれる人が死んだのは、自分のせいだからだ。


『どういう事?』


―――――自分は、傷つけられなければいけない、孤独でなければいけないんだ。

それは、語り出した。


自分は、この世界の言葉にはない名前を持った、別の世界のとある龍だと。

はるか昔に冒した、あまりにも大きな罪を償う為に、神に永遠の孤独と悪意を与えられたのだと。

多くの世界を行き来して、孤独に耐えては悪意に殺されて、たどり着いたのがこの世界だと。

この世界でも同じく孤独にあるはずが、何の因果か『不幸にも』彼に『なって』しまったのだと。

彼に『なった』といっても、完全に同化するのではない、力の一部が右手にと、精神世界において少し繋がっているのだと。

そして本来の彼の宿命である孤独と悪意は、あろうことか彼にも降り注いだのだと。

だから、彼を愛し、慈しむ人間はみな死に、悪意を与えるものだけが残る、と。

全てを語り終えたその龍は、彼を見た。

あまりにつらい宿命を与えてしまったその少年は、自分をどう罵ってくれるのか。

悪意には慣れていた。孤独にも慣れていた。

いや、慣れることなどなかったが、それでも今まで何度も体験してきた。

だから、期待していたかったのだ。

自分を嘲って罵り、殺そうとしてくれる事を。

そうすれば、楽になれるから。



―――そうはならない事を、知っていながらも。

『ごめんね』




彼は、表情を崩さないまま、謝った。




―――――なぜ謝るのだ、自分が悪いのだ。お前に謝って貰う事など何一つないんだ。


『だって、君は僕のせいで悲しんでるんでしょ?』


―――――お前は関係が無い。自分が勝手に罪を犯して、勝手に悲しんでいるだけだ。


『嘘だよ』


―――――なぜわかるというのだ。お前と自分は違う。


『でも、君は僕だ』


―――――………そうだな、それでも。悲しんでいる事とお前とは関係ない。


『僕は、君が泣いている理由が分かるんだ』


―――――ああ、お前が悲しんでいるからな。繋がった精神の部分でこちらにお前の感情の波が来るんだ。迷惑な話だよ。


『違うよ』


―――――ああ、それだけじゃないな。罪を犯した罪悪感とその罰の重さに悲しんでいるんだ。自分勝手な事にな。


『違うよ』

―――――じゃあ何だというんだ?自分はただ―――


『君は、僕の事を本当に大切に思ってくれてるんだ。僕が傷つく事を、自分のせいにして、その事を責めて、悲しんでるんだ』


―――――冗談はよせ。自分はお前たち人間などとは格が違う存在だぞ。


『君は、僕に責められたいんだ。だから、僕の不幸が自分のせいだと正直に話して、それでも責められないなら、急に自分勝手な振りをしてる。さっきといってる事がぐちゃぐちゃだよ』


―――――………。


『君は、罪を償いたいんだ。神様に与えられた罰なんかじゃなくて、自分の意思で』


―――――………なんで、わかるんだろうな。初めて、自分の意思で。誰かに、罪を償いたいと思った。お前のせいだ。


―――――お前が、あんなにも理不尽な目にあって。あんなに苦しい目にあって。なのに、なのに!


―――――お前は、ずっと祈っていた!お前を傷つけた奴らの幸福を!お前を痛めつけた奴らの幸せを!!


―――――何でよりによってお前に自分はなったんだ!!もっとカスみたいなやつになればよかったんだ!!自分本位で、身勝手で、情が無くて、狂ってて!!!


『そんな人なんていないよ』


―――――じゃあお前はいったい何をされてきた!!侮蔑され、攻撃され、隔離され!!!あいつらは、お前を散々に傷つけたのだぞ!!!


『それは、僕が近くにいると、幸せになれないからだよ』


―――――自分本位で、身勝手で、情が無い。何が違うんだ?


『それは我儘じゃないよ。皆、幸せに生きたいんだ。当たり前のことだよ。僕に悪意を向ける人が残るっていってたよね?つまり、ぼくを攻撃して、みんなは幸せになってるんだよ』



―――――お前の幸せは、ないのか。


『…………?』


―――――お前も、『皆』に入るだろう!?なのになぜ、そんなに自分を傷つける奴に対して、そんな感情を向ける事が出来るんだ!!


『……………そんなの、簡単だよ』


―――――なんだというんだ。


『―――――皆の幸せが、僕の幸せなんだ』


―――――…………ッ!!!

龍は言った。


神よ、自分は初めて、貴様の事を今までで一番心の底から消し去りたいと願おう。


何故、この少年なのだ。


何故、こんな優しい少年に、自分などを重ねたのか。

―――――………お前は、死なせない。


『?』


―――――幸い自分の『力』であった右手が破壊された。あの世界でも、ある程度力を行使できる。


『どういうこと?』


―――――お前は、生きるんだ。お前が、自分から自分の幸せを見つけられるようになるまで。


『つまり、ぼくは生き返るって事?』


―――――ああ。


『そっか』


―――――お前は、世界を周ってくれ。色んなものを見て、いろんなものを感じて。


『そうだね』


―――――本当に、幸せと思えるだけの何かを、見つけてくれ。


『それは、とても素敵な事だね』

>>67>>68 ご指摘ありがとうございます。確かに見直して改行多いと思ったのでちょっと減らしました。それでも多いけど。
1レスごとの中身は内容で区切っているので、スクなってしまう事があるのは申し訳ないです……

いってなかった投下終了。

今ジャンプで一番熱いのはワールドトリガーだと思う。
投下します。





世界の闇に、ひびが入る。

ガラスが割れるかのごとく、光がこぼれ出して来て、彼の身体を照らした。

宙に浮くような感覚。焼けるような熱。

そのさなかで、彼は、龍に問いかけた。

『君は、なんて言うの?』


―――――お前たちが発音できる言葉ではない。


『どんな感じ?』


―――――   。    xt   だ。


『ホントだ。よくわかんないや』


―――――ああ。


『じゃあ、どんな意味があるの?』


―――――意味、か。


『うん』

―――――………自分の名前には、『虚構』………『幻想』を『殺す者』という意味がある。


『『幻想を殺す』………?じゃあ、決まりだね』


―――――自分の名前か?


『うん。きみは、『幻想殺し』(げんそうごろし)だ』


―――――安直だな。

『気に入らない?』


―――――………いや、気に入った。宜しく、お前。


『お前、じゃ何か荒っぽいよ』


―――――では、なんと呼べばいい?


『そうだね……『当麻』、でいいんじゃないかな?』


―――――わかった。当麻。


『うん、幻想殺し』


光が、彼を包み込んだ。

彼の世界は、もう既に色彩を取り戻していた。

右手を見る。そこには、なにも無い。
肩には、何かをふさいだような跡、痛みも悲しみも無いが、その事実が少しだけ彼を驚かせた。

―――――驚いたか?


「え、君、生きてても話せるの?」


―――――右手がなくなったからな。自分の精神も解放少し解放されたようだ。


「それじゃあ、いつでも君と話せるってこと?」


―――――そうだな。


「嬉しいな。幻想殺し」


―――――自分もだ。さて、当麻。


―――――「行こうか」。


―――――「世界を見に」。



そして彼の過去を知り、その後の彼の行方を知る人間は、誰もいなくなった。

投下終了。
『幻想殺し』はイマジンブレイカ―ではありません。げんそうごろしと読みます。



彼らは、世界を旅した。

汚らしい襤褸をまとい、粗末な衣服を身につけ、特殊な仕事をこなしていくことで手に入る給金を使って。


時には命の危険があるような仕事も、と言うかそちらの方が多かったがあった。

しかしたいていの、というかほぼすべての障害は、幻想殺しの力で消し飛ばす事が出来た。

勿論、上条の意思により人は一人も殺さなかったが、彼の旅に襲いかかって来る者たちは皆、彼を傷つける事どころか敵ともみなされ無かった。

多くの人たちを、見た。



貧困に苦しむ少年。戦闘に明け暮れる兵士。女を貪り食らう好色家。ただひたすらにものを作る芸術家。人を超えた力を操る魔術師。

彼は、それらの人々の事を、すべて覚えている。



なぜなら、彼は、孤独だったから。

幻想殺しは上条当麻で、上条当麻は幻想殺しだった。

彼は、二人でも一人きりだった。

上条当麻を愛した人間は、皆不幸に襲われる。

だが、彼は孤独に耐えられるほど強くない。



ならば、自分を憎み、恨む人間と共に過ごせばいい。



彼がその結論に達した事は、至極当然のことなのかもしれない。



自分を襲った人々に、彼はついて行った。

そのたびに彼はさらに大きな悪意に襲われたが、孤独はそれよりも彼を恐怖させた。

彼は憎悪の対象である自分と共に過ごさせることを申し訳なく思ったが、その結果幸福になるならチャラにならないだろうか、ならないな。なんて考えたり。


ついてこられる方は、何度も彼に攻撃するが、殺すことはかなわない。

だから、いつか皆打ち合わせたように仕方がない事だと割り切り、存在しないかのように扱おうとした。

上条は、それでも良かった。近くに人が居る。それだけでも彼は安心する事が出来た。





―――だが、それもまぎれもない『幸福』だ。神の罰は、それを許しはしなかった。


彼を憐れみ、彼を救おうと、自分の為に尽力した人々は、やがて彼と過ごすうちに。

彼の事を道端の石ころとしか認識しなかった人々は、やがて彼と過ごすうちに。

彼を憎み、彼を嫌い、彼をさげすんだ人々は、やがて彼と過ごすうちに。



彼の事を、愛してしまうのだ。

『わたしは、あなたをすくいたい。あなたは、すくわれなければならない』



周りの運を吸い取るかの程の幸運を持った東洋の聖人は、その言葉を最後に左手を失い、上条当麻は彼女の元から去った。



『かみじょうちゃん、あんたとたたかって、あんたにかつために、おれはうまれてきたんだ』



力を求め、力と共にあった人助けの好きな全能の雷神は、その言葉を最後に死に、上条当麻は彼の元から去った。



『ああ、あなたは、ほんとうにやさしいひとなんですねー』



彼の力を憎んで憎んで憎み切った緑色の狂信者は、その言葉を最後に死に、上条当麻は彼の元から去った。




つまり、そういう事なのだ。


上条当麻とは、誰とも共にいられない。



横に誰かいる夜は、笑いながら存在しない右手を抱いて眠った。

横に誰もいない夜は、泣きながら存在しない右手を抱いて眠った。

―――――当麻。ここは、どこだ?

「学園都市、だよ。魔術師の宿敵、科学サイドの総本山だ」

―――――ここがか。

「さて、入りますか?」

―――――何をしに?

「幸せを見つけに…………なあ、このやりとり恥ずかしいからやめないか?」

―――――何度も言っているだろう。当麻はこうでもしないと人を救う以外何もしようとしないからな。

「いやほんとに。ぼそぼそ幸せを見つけになんて言ってるボロマントの男なんて変質者以外の何物でもないですよ?」

―――――安心しろ。お前は十分変質者だ。

「ひどっ!幻想殺しひどっ!」

―――――喧しい。サッサと入るぞ。

「やれやれ、幻想殺しさんが反抗期でお母さん嫌になっちゃいます」

―――――そうか。自分の力を借りずに当麻だけであの鉄のゲートを突破するのか。なかなかやるではないか。

「ちょっ!?」

―――――冗談だ。だが、さっさと行くぞ。

「はいはい」

投下終了。時間が出来て嬉しい。

その行動に、音は伴わない。

ただ、上条当麻が幻想殺しの『力』を使った。

それだけで、鋼鉄の壁は半径1mほどの穴が、ぽっかりと開いた。



「今日はあと何回ぐらい『いける』?」


―――――対象にもよるが、3回はやれるだろう。問題ない。


「おっけー、入りますか!」


扉の穴を悠々と通り抜け、中に入っていく。


上条当麻と幻想殺しの、新たな冒険が、始まった。




    とある幸福の幻想殺し 第二話
      『愛をなくした者にも』

「お姉さまー!!」

「ちょ、黒子!?」

学園都市の第七学区。
その中にある人気の服飾店、セブンミストの前で、一人の女子中学生が同じく女子中学生に抱きついていた。

「お姉さま!こんなところで会えるなんて運命的なものを感じますの!」

抱きついている方のツインテール少女の名は、白井黒子。

「あーもううっとうしい!サッサと離れなさいっていってんのよ!」

抱きつかれている方のショートカットの少女の名は、御坂美琴、と言った。

「ハハハ……白井さんはいつもどおりですね」


白井の後ろからついてきていた二人の少女。

苦笑いをするのは、佐天涙子。


「佐天さん!笑ってないでとめてよ!初春さんも!!」


声をかけられた頭に花飾りを乗せた少女は、初春飾利。

初春は、黒子の元へ向かい羽交い絞めにした。


「はいはい、白井さん。そろそろやめましょうねー」

「離しなさい初春!今日こそ私はお姉さまへの愛を……」

「いい加減に………しろやこらーっ!!」

御坂美琴は、こめかみにしわを寄せながら叫ぶ。

すると、彼女の頭のあたりから、電撃がほとばしった。


「ああああああ!!いいですわお姉さま!!」


電撃を受けながら、何故か喜ぶ黒子。


「何喜んでんのよあんた!」

「黒子はお姉さまの愛の鞭ならばどんなものでも受け入れられますのおおおお!!」


変態である。

「そんなに言うならもっと食らわせてやるわよ!!」

「あばばばばばばばばば」

「「あはは……」」


苦笑いする初春と佐天。

これが、彼女たちの日常なのである。







そこにまぎれる、異物。



おしまい。
最近学校が始まって書き溜めを作れない。

「え?」


御坂が、素っ頓狂な声を上げる。


「どうかしたんですか?」


初春が、頭の花飾りをいじりながら聞く。

ちなみに黒子は地面に転がったままだが、そこら辺は気にしない。

「…………黒子、今能力使える?」


だがその問いかけに答えることなく、切羽詰まったような表情で問いかける御坂。


「………!?使えませんの!」

「やっぱり?」

「どうしたんですか御坂さん」


少し真面目な様子に、少し違和感を感じ取ったのか佐天が心配げな表情で問いかける。

「私って普段、能力を無意識に展開してるの。電磁波のレーダーをね。だけど、それが完全に今、出せない」

「わたくしも同じですの……能力の演算は出来ますのに、実際にテレポートする事が出来ない……」

「それは……何らかの攻撃を受けているってことですか?」


心配げに問いかける初春。


「それは無いと思………、ッ!!!!!」


突如その場から飛びずさる御坂。


「だ、誰ですか!あなた!!」

「風紀委員ですの!あなた、なにをやってるんですの!?」




そこに立っていたのは、襤褸を着こんだツンツン頭だった。



「普通に歩いていたら女子小学生に変質者扱いされた………上条さんのメンタルはもうボロボロですよ」


―――――襤褸をまとっているからではないのか。


「こいつは10年間共に過ごしてきた相棒だぞ!」


―――――知っているが。良く使い続けるものだな、そのマントも。

少ないけど終了。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年01月19日 (日) 16:46:13   ID: j7Qs5GUU

楽しみにしてます

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