夜神月「大事な話って?」総一郎「ああ……父さんな……」(391)

総一郎「警察……辞めたんだ」

月・粧裕・幸子『……え?』

総一郎「……すまん……」

月・粧裕・幸子『……』

ある晩の家族会議、
父さんから驚きの告白。

何故かそこには、ギターがあった。

幸子「ちょっとあなた……どういうこと?」

月「そうだよ父さん。冗談はやめ――」

『ガシャリーンッ!!』

総一郎「冗談ではないっっっ!!!!!」

月・粧裕・幸子『……!!』

怒号とともに湯呑みを叩き割る父さん。
確かあれは、僕が小学生のときにあげた――

……父の日のプレゼントなのに……

幸子「あ、あなた! その湯呑みは――」

総一郎「お前たち……見ろ」

幸子「!!」

右手を差し出す父さん。
破片で血だらけだった。

総一郎「……その目によく刻んでおけ!!」

総一郎「これが……私の決意だっっっ!!!」

月・粧裕・幸子『……!!』ビクッ

正直、何を言ってるか分からない。
でも父さんは……真剣だった……。

幸子「あ、あなた……本当に何が――」

月「母さん! 今は止血が先だよ!」

月「粧裕、すぐにタオルを取ってくるんだ!」

粧裕「う、うん……わかった……!」

『スッ』

総一郎「立つなああああああっっっ!!!!!」グワッ

月・粧裕・幸子『……!!』ビクッ

総一郎「……」ハァハァ

月「……で、でも父さん……血を止めないと……」

総一郎「話はまだ……終わってないだろう」

粧裕「うっ……ひっく……」グスン

あまりの威圧に泣き出す粧裕。
くそっ。何なんだよこの状況は!

月「何で……警察を辞めたんだ?」

総一郎「……」スッ

腕を組み、目を閉じた父さん。
居間には重たい空気がのし掛かる。

総一郎「……これは警視総監直々の命令……」

月「……え?」

『ガンッッッッッ!!!!!』

総一郎「私は……ハメられたんだ!!!!」

月・粧裕・幸子『……!!』

テーブルを叩きつける父さん。その目は血走っている。
ハメられたって……一体どういうことなんだ……!?

総一郎「あれはそう……去年の冬のことだった――」

◇去年の冬://電車◇

ガタンゴトン……ガタンゴトン……

『次は 東京 東京 お出口は――』

総一郎(よし、今日も仕事、がんばるz……ん!?)ピクッ

『さわっ、さわっ……』

総一郎(!!!!!)

総一郎(ま、まさかこれって……)


――ち、痴漢!?


ガタンゴトン……ガタンゴトン……

『さわ、さわ……もみ、もみ……』

総一郎「ぁ……///」

総一郎(くっ……どこの誰か知らんが……)

総一郎(私は警視庁刑事部部長……夜神総一郎だぞ!!)

総一郎(そんな私に痴漢して、生きて帰れると思うな!!)

粧裕「ごめんなさい・・・ちょっと魔がさしただけなの・・・」

総一郎(見てろ! 今に一生の恥をかかせてやる!!)ガッ!!

痴漢の腕を強く掴んだ私――そして声を荒げる。

総一郎「みなさん! この人痴漢です!!!!」

……しかし……

少女「いたっ……おじさん……離してよぉ……」グスン

総一郎「なっ……!!!?」

驚くことに、私が掴んだ腕は、か細いものだった。

総一郎(……ま、まさかこんな少女が私に……!?)

少女「ひっく……離して……痛い……痛いよぉ……」グスン

私は心底驚いた。こんな少女が痴漢だなんて……。
一体どういうことだ? そんなことがあり得るのか!?

そんな意外性に、気を動転させていたら――

L「おやおや、これは珍しいことが起こりました」

一人の男が、車内に声を響かせた。

L「紳士は今、“この人痴漢です”、とおっしゃいました」

L「しかし思い出して下さい。“痴漢”とは普通――」

L「女性に性的な嫌がらせを働く、“男性”のことですよね?」

総一郎「……!」

そう言いながら、私に歩み寄る猫背男。
まるで乗客全員に問いかけるような口調だ。

L「そこで紳士に質問ですが――」

L「あなたは本当に、痴漢を“され”たのですか?」

総一郎「くっ……!」

電車内に漂う、不穏な空気。
おかしい。何だかアウェイを感じる。

総一郎「確かに厳密には、痴漢でなく痴女だったが……」

総一郎「私が尻を触られたのは、紛れもない事実だ!」

L「ほう……こんな清純な少女が、あなたのような中老に?」

総一郎「だからそう言ってるだろ! 人を外見で判断するな!」

犯人はL

L「では当の本人に聞いてみましょう」

L「あなたは、彼のお尻を触りましたか?」

少女「≡」ブンブン

首を横に振る少女。
瞳にはまだ、涙が残っている。

L「触ってないそうですよ?」

総一郎「なっ……この女……!!」

L「片方は触ったといい、もう片方は触ってないという」

L「これはどちらかが……嘘をついているようですね」

総一郎「バカを言うな。私が嘘をつくわけないだろ!」

L「そんなこと、誰にも分かりませんよ」

L「むしろこの場所の特性を考えると――」

L「あなたの方が不利だと言えますけどね」

総一郎「私が不利だと……? どういうことだ?」

  `f⌒ヽ        /)  r‐_'_´彡' _,. -- 、__,,.. -‐:'ヾィ、_:::::-―、::::::::::!
   !:.:.:.:`丶、   ,.ィ-' ,ニZィ:.:.:.ヽ_/:::そ(ンヘ-ヘ:::::::::::ゞミ{Yfr≧彡z_:ヾ:::::::|
   `ヽ:.:.:.:.:.:.> '´ ,..、 r_‐'ヾ/:::|::rェ=ェュ::::/::::ヾ::_彡ミ`'"'ー=三ミ三_ヾ::::!

     _> '´  ,.イ   ` ̄/::/!:l//::::::::/::::::::::三チ'__:.:,.:.:.:__,:.:`三三z_:::::'、
__,. '´   /:.:.:.:.\ /::/::::/:r'ニニヾi::::::::::::::'ハィoュ:リz:ィoュッ':.三彡そ:::::>、__

   `ヽ  / ヾ:.:.:.:.:.:./::/::::/:::r'―:、:ヾヽi:::::::::::lリ:.フ^``:"¨´:.:.:.:`ミシ´::::::::::::::::::
三ニ=、」/   ヾ:.:.:.:〈:.:.〈::::/r―'ー:、:.:!:.:|:.:|l::::::::::l|:.iゞ-'`=、、:.:.:.:.:.:f}リ::::::::::::::::::::::::
   ヾ」      >´ヾ::::>':::::` ̄フヾ:ヽ:':.:.:.:}l::::::::::!l:|「 ̄`~l|l.:.:.:.:.:.://:::::::::::::::::::::::::
  ヾ ヽ    /::::::∠Zフ::::::::::::/::::l|:.:.':.:.:.:.:.|l:::::::::ハ!|:::::/^'リi:.:.:.:./´::::::::::::::::::::::::::::
   ヾj}.  /:::::::::::/::::::::::::::::::/:::::::l|:.:.:.:.:.:.:.:ゞ、:/ ̄',:fZ,_,.ィi|!:.:/「_〕:::::::f´_〕:::::::::::
   ,ィミ{./::_::_::_:∠::_::_::_::_::_::/::::::::::::、:.:.:.:.:/:::::::``:‐:ゞ:三彡イ::::::| |::::::::| _!::::_:::::
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 _/,! |, l::::::::::::::::::: l|l::::::::::::::::::::l:::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::::::::::r― 、::::::::,! |::::/ -/::ノ 、!-、

  ,//, l::::::::::::::::::: l|l::::::::::::::::::::l::::::::::::::::::::::、:::::::::::::::::ト、::ヽ_) ヾ::/  |::/ // イ t'!
  //   l::::::::::::::::::: l|l::::::::::::::::::::l::::::::::::::::::::::::丶::ト、::::| ヽ:::::>、 `',.イ ,ィ ´ ∠ノ ソ
、,' |    l::::::::::::::::::: l|l::::::::::::::::::::l:::::::::::::::::::::/==,| ヾ!  ヾj `ー´ レ´|_,.イ'´ _/::
丶、! //イ l::::::::::::::::::::l|l::::::::::::::::::::l:::::::::::::::::/_>J             / /´:::::::::

  У/////'l::::::::::::::::::::l|l::::::::::::::::::::l:::::::::::::/ \   す  判  見   |xイ_::::::::::::
 /////////l:::::::::::::::::::l|l::::::::::::::::::::l:::::::::/   ∧.           か    />ァ―-
 |////////∧:::::::::::::::::l|l::::::::::::::::::::l::::::/,イ  //ノ   る.   断  け    ´ / `丶
 |//rー'"`ー'、 \:::::::::::::l|l::::::::::::::::::::l::://,! -<          で    ∠.イ
 {j/iト、 二ニ、丶ミミ≫、:::::l|l::::::::::::::::::::l//{{    )  な      人     /
. Y |!ヾ'、  ```ー--≧竺zz、、:_:_少、∧ ./   ┃      を   ∠...,;;,
  l! ゞニ)i、  丶、二ニニニ二三≧イ,.ィ'、 ∧、 ̄ヽ  ┃           /;;;;;;,,,,
  ヽ `^`ミ≧、、―---―_三彡イ´て>、i||i∧``7   ┃          /  ;;;;;;;;,,,
   ゙^ヽ   `~"ー=ニ>,<}\`」 |:::ヒ!::>、 ∧ ん-、 ! !          |丶ミ、、 '''
     ∨/ ,;//,  r‐<ヽ-'  ヽ_ノヒ!^ソ-,ヘ ヽ  | , ‐ 、         '、 ヾミ、
     ∨/  /ハ、,ゝ、〉       ヒ!ココ〈__ノ   |/   |/⌒ヽr、rv< ̄`  \ヽ
      ∨/ //`´ ゝ、                         `丶、

L「少女さん。この車両は何と呼ばれていますか?」

少女「……女性……専用車両……」グスン

総一郎「それがどうしたというんだ?」

L「気づきませんか? 女性専用車両ということは――」

L「この車両に、男性が乗ることは許されないんですよ?」

総一郎「だから、それがどうしたと聞いているんだッ!!」

L「……!?」

総一郎「この車両が女性専用? そんなことは分かっている」

総一郎「痴漢防止のために設立された? もちろん知っている」

総一郎「だが私が痴漢なんてすると思うか? 無論するわけがない!!」

総一郎「だから私は、女性専用車両に乗ってもいいんだ!!」

L(この男……何を言ってるんだ……?)

女性専用車両って別に男が乗っても大丈夫なんだが・・・

L「……まぁいいでしょう。とりあえずは百歩譲ります」

L「では、この女性専用車両に乗車した理由を教えて下さい」

総一郎「ふん。すいてたからに決まっている」

総一郎「今は通勤ラッシュ中。当然の選択だろう」

L「……なるほど。自分は特別扱い、というワケですね」

総一郎「特別扱い? 断じてそのような意識はない」

総一郎「他の男も、私を真似たきゃ真似ればいいし」

総一郎「現にお前も、この車両に乗っているじゃないか」

L「ほう……私が男だと、どうして決め付けるのですか?」

総一郎「……何?」ピクッ

Lが美少女とか・・・(;゚д゚)ゴクリ…

L「“人を外見で判断するな”、そう言ったのはあなたですよ?」

総一郎「ふん。その声・容姿から考えると、男が妥当だろう?」

L「これはこれは、立派な先入観をお持ちで」

L「声の低い女性や、ずぼらな格好をした女性がいないとでも?」

総一郎「私は可能性の話をしている。妥当とはそういう意味だ」

L「つまり統計的に私を男だと判断した、ということですか?」

総一郎「ああ。人間は普通そうする。何もおかしいことではない」

L「確かにそうですが、それでは100%とは言えませんよね?」

総一郎「しつこいぞ。性別判断にそこまでの精度は必要ないだろ」

L「しかし私は今、こうして完全性を要求しているんです」

L「私が男かどうか、100%で知りたければ――」

L「私の股間を触ってみるのが一番だと思いますよ」

総一郎「……何? 股間を触るだと?」

L「はい。性別を判断するにあたって――」

L「性器を基準にすることは、言わばスタンダードですから」

L「この人痴漢です」

              _ __ __

           _、rくミミミミミミWW彡彡\
          /三三ミミミミWWレ///彡\
        ノ三==ミミ衍ミ>}jiMjiルf///ll|彡\

        }ニ彡彳  l|          |||ミミミヘ、
         j三≠ |!  |         ||! ミミlト}l
         {三シ      ヽ V /    ii|ミミl| l|
         {彡ノ ‐''ニ‐_、、,_j} ハjl、_,、-ニIIiill|ミ/} |!
       /~Y/===| f´_・_j! l|=|!f´_・_,}! |=llヘ.

        | {フトl|  ヽ[[[[「「l /|  iL`iiiiii'_/ |卩|
       l ヽ} lト、    ,,,、 /_|  l、 、、  /リレ|
       ヽ \} ヽ  ´  {[´_、_ ,_j  `` / l/ /
         \j/ l| l「 _,,rijlflliillillflk,,  |! |_/
          | リ   ,ィ'" ̄ ̄ ̄ト} jf|
          l     ´ ̄ ̄ ̄ ̄´ ノ |
          |\ヽ'ー   ̄ ̄ ̄  _,イ__

        r-┤ヽ\\       //| \j \
         |\八  \\_',_;'_,,';_;_,';/ / /\/   |ー―-
     _,r‐ノ  \ヽ ヽ` ー ─ ─ ‐ / ( /     |〉/
_, -、,_/// {   r‐\   \ r‐、    ト、,/_     |//
    //  }! /\  \   ノ_}___  | / /:::\   |´
\ \/   ハ/\:::\ \/ヾ   ``ヽ=v':::::// \|
 //\ l |    \::::\/  /´ ̄>ー‐':::::://
//    ヽ ヽ    \:/ _/-''T「 ̄ ̄`lトく,__
      ヽ \     {/    _,rー‐r-、_゙ブ
             /   ‐''"  `,,_,、_ `ブ

総一郎「ふん……確かに一発で分かる方法だな」

L「ええ。決定的な証拠となるはずです」

総一郎「そこまで言うなら……確かめさせてもらうぞ?」

L「……」ゴクリ

『もみもみ』

総一郎「……ふん。ほら見たことか。やはり付いて――」

『ガシッ』

L「みなさん! この人痴漢です!!!!」

総一郎「なっ……なにぃっ……!!!?」

L「そう。本来“痴漢”というのは、このような“男”のことを指します」

L「つまりあなたは、女性を男性呼ばわりした、ということです」

L「それは故意・過失を問わず、許されることではありません」

L「紳士であるなら、今すぐ彼女に謝っていただけませんか?」

少女「……ぐすん……ひっく……」

総一郎「!!!!!」

総一郎「何で謝罪なんか……たかが言葉を間違えただけだろ!」

L「いいえ謝ってください。さもないと――」

L「私に働いた痴漢行為に、責任を取ってもらいますよ?」

総一郎「!!!!!」

総一郎「ふざけるな! お前が触れといったんだろう!」

L「いえ。私は“触っていい”なんて一言も言ってませんよ」

L「“触ったら男かどうか分かる”、と言っただけです」

総一郎「くっ……そんなのは屁理屈だっ!!」

L「ところで少女さん、彼が私の股間に触るのを見ましたか?」

少女「……」コクリ

首を縦に振る少女。それを見て猫背男はニヤリ。

L「おほっ、これはこれは。どうします? 目撃者がいますよ?」

L「あれほど痴漢をしないと豪語していた人が痴漢ですか?」

総一郎「くっ……この下衆野郎っ……!!」

総一郎「……謝ればいいんだろ……謝ればっ……!!!」

『カチッ』

L「では、少女に謝ってください」

L「“痴漢呼ばわりしてすみませんでした”、と」

少女「……ぐすん……ひっく……」

総一郎「……痴漢呼ばわりして……すまなかった……」

『カチッ』

L「はい、結構です。少女さん、これでいいですか?」

少女「……ぐすん……」コクリ

L「良かったですね。許してもらえたようですよ?」

総一郎「……ふん。じゃあこの件はもういいだろう……」

総一郎「次は本題――この女が私の尻を触ったかどうかだ」

L「ほう……あくまでこの少女が、あなたに痴漢行為をしたと?」

総一郎「ああ。そればっかりは譲れない――」

総一郎「――痴漢は列記とした犯罪だからな!!」

少女「……ッ!」ビクッ

総一郎「皆さんの中に目撃者はいらっしゃいませんか!!」

総一郎「この少女が、私の尻に触る瞬間を見たという方は!!」

『……』 『……』 『……』

静まり返る車内。ただ虚しく、私の声が響くだけだった。

総一郎(くっ……目撃者はいないのか!!)

L「ところで紳士。あなたはこの少女を疑ってるようですが」

L「もし彼女が痴漢行為をしてない場合――」

L「あなたは、“痴漢冤罪”の罪を背負うことになりますよ?」

総一郎「ふん。そんなものは怖くも何ともない」

総一郎「現実として、痴漢行為はあったのだからな!」

L「ほう……それは残念ですね……」

総一郎「……何? 残念だと?」

L「ええ。もしあなたが少女を痴漢として追い込み――」

L「結果として少女が何らかの罰を被ることになれば――」

L「それはすなわち、あなたが罰を受けることになりますから」

総一郎「ふん。意味が分からんな。私が罰を受けるだと?」

L「はい。もしあなたが少女を痴漢にしたてあげた場合――」

L「私は公の場で、このテープを再生しようと思っています」カチッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

L「では、少女に謝ってください」

L「“痴漢呼ばわりしてすみませんでした”、と」

少女「……ぐすん……ひっく……」

総一郎「……痴漢呼ばわりして……すまなかった……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

総一郎「!!!?」

L「この録音、改めて聞くとどうですか?」

L「あなたが“痴漢冤罪”を認める内容になってませんか?」

総一郎「くっ……いつの間にっ……!!!」

L「今時、男だろうが女だろうが、痴漢は痴漢なんですよ?」

総一郎「きさま騙したなああああああああああ!!!!」

L「さて紳士。どうしますか?」

女性専用車両で、
少女がオヤジに痴漢をした。

L「これだけでも信じ難い話だというのに――」

仮に認められたとしても、
あなたは冤罪行為で裁きを受ける。

L「こんな状況、私なら素直に諦めますよ?」

総一郎「くっ……!!!」

L「無駄な足掻きはやめたらどうでしょう?」

総一郎「……お前は一体、私に何の恨みがあるんだ?」

L「恨み? そんなものはありませんよ」

L「強いて言うなら……“依頼”でしょうか」

L「女性専用車両に毎日乗り続ける男を懲らしめて欲しいと」

L「――この少女に頼まれましたから」

少女「……てへ♪ おじさんが悪いんだよ?」

総一郎「!!!!?」

総一郎「じゃ、じゃあやはり……私の尻を触ったのは……」

少女「うん私だよ♪ でも録音があるから訴えられないね」

総一郎「……フフ……フハハハハハハハッ!!!!」

総一郎「バカめ! そんなもの乗客が証人になってくれる!」

総一郎「お前の自白が聞けた、その時点で私の勝ちだッ!!!」

少女「何言ってるの? そんなのいるわけないでしょ――」

少女「毎日女性専用車両に乗ってくる、おじさんの味方なんて」

総一郎「……!!」

L「依頼主としては、この話は穏便に済ませて欲しいようです」

L「警視庁刑事部部長がこんな様では、世間に示しがつきませんからね」

総一郎「くっ……そこまで大事になってるのか……?」

少女「感謝してよおじさん♪ 危うくクビだったんだよ?」

総一郎「……クビ? この正義感溢れる私がか?」

少女「うん♪ 実は私、おじさんの写真をパパに見せたの」

少女「パパ警察官だから、何とかしてくれると思ってね」

少女「そしたらパパ――」

“この写真の男が、何度も女性専用車両に乗ってくるのか?”
“クッ、なんて野郎だ。安心しろ、今すぐやめさせ――ん?”
“よく見ればコイツ……刑事部の夜神じゃないか!!”
“何という警察官の恥! これは明日、緊急会議を開かねば!”

少女「――ってな感じに、何だかすごく怒っちゃってさ」

少女「可哀想だから私が探偵さんと隠密に解決するってことで」

少女「怒り狂うパパを説得したんだよ♪」

総一郎「……そうなのか……ちなみに君のお父さんの役職は……?」

少女「んーとねぇ……警視総監……だったかな?」

総一郎「!!!!!」

少女「おじさん、感謝してよね。パパすっごく怖かったんだから」

総一郎「ああ……ありがとう……私を救ってくれて……」

総一郎「私の正義を……認めてくれて……」

◆現在://夜神家/リビング◆

総一郎「――というような流れで」

総一郎「警視総監の娘が私を救ってくれたのだ」

総一郎「まさにそれは、正義を貫く私へのご褒美……」

総一郎「彼女は本当に……良い子だった……」

月・粧裕・幸子『……』

……父さん……?

総一郎「だから私は、彼女のことが好きになった」

総一郎「すまないが幸子……お前よりもずっとな……」

総一郎「しかし私の正義は、不倫という行為を許さない」

総一郎「だから私は、援助交際という形を取ることで」

総一郎「自らの正義を保つことに成功したのだ」

月・粧裕・幸子『……』

……何を……言ってるの……?

何が何だかわからない

◇回想続き://都内某所◇

総一郎「これで頼む!」

私は1万円札を10枚束ね、
彼女に向かって頭を下げる。

少女「えぇ……困るよぉ……」

総一郎「頼む! おじさん本当に――」

総一郎「君のこと、好きになっちゃったんだ!」

少女「……でもおじさん……結婚してるんじゃないの?」

総一郎「ああ、してる……だから“援助”交際なんだ」

総一郎「断じて真剣な交際じゃない! 不倫ではないんだ!」

少女(……この人……本当に何言ってるの……?)

総一郎「くそっ……じゃあこれならどうだ!?」

私は精一杯の気持ちを込めて逆立ちをした。
路上の小石が掌に食い込んで痛い……だが乗り越えろっ!

総一郎「これが今の……私の気持ちだっっっっ!!!!」プルプル

少女(……も、もういやぁ……)グスン

少女「……ぐすん……ひっく……」

総一郎「ん? 何を泣いて――はっ!?」プルプル

私の告白に……心打たれたというのか……。
なんて……なんて可愛いんだっ……!

総一郎「好きだ少女!! 大好きだぞぉ!!!!」プルプル

少女(いやああああああああああ!)グスン

少女(帰りたい……帰りたいよぉ……!)グスン

少女(でも帰ったら……きっとこの人悲しんじゃう……)グスン

少女(そう考えると……何だか胸が痛くて……)グスン

胸を押さえる少女。こういう人間はたまにいる。
相手の気持ちを汲みすぎるというか、同情しすぎというか。
病的なまでに自分の気持ちを押し殺してしまう人種。

総一郎(胸を押さえるくらい私を……愛おしすぎる)プルプル

総一郎「……じゃあ、私と援助交際、してくれるんだな?」

少女(……もうこの人……わけ分かんないよ……)

少女「……おじさん……警察官じゃないの……?」グスン

総一郎「ん? 警察官だが、それがどうしたんだ?」

少女「私と援助交際したら、犯罪になっちゃうよ?」

少女「だって私まだ……中学生……未成年だもん」

少女「おじさん……警察官なのに罪を犯すの?」

総一郎「馬鹿者。正義が罪を犯すわけないだろう」

総一郎「それに君の言う“罪”というのは国が定めたもの――」

総一郎「そんなものは、論理が破綻しているっっ!!!!」

総一郎「援助交際は、私の正義では罪にならないっ!!!」

総一郎「少し考えれば自明だ。両者合意の下なんだぞ?」

総一郎「そこに犯罪性なんか、あるわけがないだろ!!!」

総一郎「児童の保護のため? あまり正義をなめるなっっ!」

総一郎「私は君を傷つけない。傷つけないがゴムはつける!」

総一郎「脅したり、ネットに晒したり? するわけがない!」

総一郎「だから私は、援助交際をしてもいいんだ!!」

少女「……!?」

……もしかしてこの人……相当危ないんじゃ……

◆現在://夜神家/リビング◆

総一郎「――その後、私は彼女とラブホテルに行った」

総一郎「……何だその目は? もちろん合意の上だぞ?」

総一郎「彼女は嬉し涙を流しながら、快諾してくれたよ……」

月・粧裕・幸子『……』

総一郎「そしてその晩のことだ。異常事態が起こったのは……」

総一郎「……私の元に、警視総監から電話が掛かってきたんだ」

“夜神、話がある。今すぐ私の家まで来い”

総一郎「――ってな」

月・粧裕・幸子『……』

総一郎「……殴られたよ……12発……」

総一郎「そして自主退職を命じられ、私は職を失った……」

総一郎「そう……私は彼女に――」

『バンッッッッッッッッッッ!!!!!!!』

総一郎「――ハメられたんだっっっっ!!!!!」クワッ

いや、ハメたんだろ

月・粧裕・幸子『……』

……ふぅ……。

月「うあああああああああああっっっっっ!!!」

尊敬する父親がクズだった衝撃。
僕は全力で叫び、全てを吐き出そうとする。

粧裕・幸子『……』

言葉を失っている、母さんと粧裕。
僕の叫びすら、その耳には届いていない。

『バンッッッッッッッッッッ!!!!』

総一郎「静かにしろライト!!!」

総一郎「話はまだ終わってないだろ!!」

月「……黙れ……黙れ!!!!!」

総一郎「なっ!? 黙れだと!?」

総一郎「親に向かってその口の聞き方は何だ!!!!」

月「うるさい!! 全部お前が悪いんじゃないかっっっ!!!」

総一郎「何ッ!?」

月「女性専用車両への乗車、援助交際が許される?」

月「冗談はたいがいにしろっ!! 特に援助交際ッッッ!!」

月「少女を傷つけた上に、母さんまで悲しませやがって!!」

総一郎「幸子が悲しむ? ふん! 知ったことか!!」

総一郎「私は本能で、幸子ではなく少女を選んだ!!」

総一郎「仕方のないことに一々文句をつけるんじゃない!!!!」

月「仕方がないだと!? お前は母さんと結婚してるんだぞ!?」

月「自分の誓いに責任を持て! 何のための理性だよっっ!!」

総一郎「だからある程度譲歩してやったんだろうが!!!」

総一郎「私が不倫ではなく援助交際を選んだ理由を忘れたか!!」

月「だからどっちも一緒だろッ! そのラインが意味不明なんだよ!!」

総一郎「意味不明!? 援助交際なんて風俗と同じだろうがっ!!」

総一郎「既婚者が風俗に行って何が悪い!? 説明してみろ!!!」

月「ふざけるなっ!! お前の場合、相手に惚れてんだろうが!!」

総一郎「それは本能だから仕方ないとさっき言っただろ!!!」

総一郎「お前は好きになるかどうかを理性で決めるのか!!?」

月「だから結婚ってのは……ああくそっ!! 話がループしている!!」

総一郎「だったら静かにしていろ! まだ続きがあるんだ!!」

月「続きだと? どうせろくな事でもないんだろ!!」

総一郎「黙れ!! 私がどれだけ傷ついたと思っている!?」

総一郎「私はずっと自分の正義に従って生きてきたんだぞ!?」

総一郎「なのにその結果がこの有様!! 理不尽すぎるだろ!!」

総一郎「悪が生き延び、正義が淘汰される? ふざけるなっ!!」

総一郎「そんな間違った社会……この私が許さないっっ!!!!」

総一郎「だから私は、小さな金融会社から金を借り――」

総一郎「このギターとアンプ、そしてマイクを購入し――」

総一郎「パンク・ロックの道を歩もうと決意したっ!!!」

月「……!」

……なっ……ここでギターが出てくるのか……!

ヤミ金キタ━━(゚∀゚)━━ !!

総一郎「自分の正義が認められる、そのときまで――」

総一郎「自分の心の叫びを、社会にぶつけ続けたい……」

総一郎「私はそれだけを胸に、ひたすらコイツを鳴らしてきた……」

月・粧裕・幸子『……』

総一郎「……すまない。お前達に黙ってたことは謝る」

総一郎「だが、成功するまで、言いたくなかったのだ」

総一郎「お前達を……不安にさせたくなかったから……」

月・粧裕・幸子『……』

……何だろう……この気持ち……

総一郎「ははは。そんな顔をするな……」

総一郎「まぁ実際、私の人生というのは、苦労の連続だった……」

総一郎「最後に、“私が何に苦悩していたか”赤裸々に綴ったナンバー……」

総一郎「“Little Dream”――聞いてくれ」

『ギュィィン……♪』

総一郎「ズンズンチャッチャ♪ ズンズズンチャッチャ――」

           世界が逆に回転する~
                           - 、   - 、

                 _,, -― "⌒ヽ-、   ヽ    \
           -=≡ ,,-"        i ヽ    ヽ  ヽ.ヽ
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 ⌒ヽ   -=≡   ヽ  \ ヽ、    /     /   /  / .'
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 ̄ ̄ ̄(_,ノ  ̄ ̄ ̄ヽ、_ノ

押し寄せてく 不安がまだ
苦痛を産み出して…

待てスレが違うというか年始に貼りまくっただろもう溜まったのか欲求不満者ども

こwwwなゆきwwww舞う季節はwwww
いつwwwもww3センチwwwww
 
ひとwwwはだwwwでwww4センチwwww
カイwwwロでwww5センチwwww

風に吹かれてwwww2センチと22ミリwwww

ぼwwwくはww君の全てなどwww
知ってwwwはいwwwないだろうwwww
それwwwでもwww6センチでwww
君を逝wwwかせたよwwww

根拠はないけどwwwwwwww本気で思ってるんだwwwwwww
 
「細い」や「短い」なんてもうwwwやめろwwwやめろwwww
硬けりゃいいだろwwwwww黙ってしゃぶってろよwwww

えんwwwぎでwww喘ぐのならwwww
喜びも悲しみもwwww虚しいwwwwwwwwだwwwwけwwwww

「ちいwwwwwさいwwwwwねぇwwww」

心まで抉るwwww否定の言葉wwwwアッアッアアンwwww

6wwwwwセンwwwチのwwww
惨め消えるまでwwwwあと7センチwwwwwwwwwwww

>>336
すまぬ…すまぬ…

『ギュィィン……♪』

総一郎「……以上だ……」ハァハァ

月・粧裕・幸子『……』

月「……」

粧裕「……」

幸子「……」

総一郎「……」

総一郎「……話は……終わりだ」

~完~

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