【ネタバレ注意】
このSSは原作ラノベに準拠しています。
そのためアニメでは放送されていない描写についても少しではありますが言及があります。
よって少しのネタバレも許せないと言う方は閲覧を控えて下さい。
書き溜めはしていないので、最後どうなるか自分でも不明です。
それでは、次から書いていきたいと思います。
よろしくお願いします。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1383848624
俺は甘党だ。
なんせ、コーヒーに練乳を入れるという画期的かつ暴力的なマックスコーヒーを愛飲しているくらいだからな。
それに今の自分超大好き。
ボッチで友達がいないところも孤高でかっこいいし
理数系科目できないのも答えは1つじゃないって悟ってるみたいだし
希望を持たないのもリアリストでクールだし
濁った目も世界を見下してるみたいで偉そうだし
斜に構えたスタイルもアウトファイターみたいでカウンターが怖い。
つまり俺は甘い物が大好きだ。
だがそんな超甘党な俺ですら苦手なものがある。
恋愛。
まず俺の見解を言わせてもらえばあれは甘くない。
恋人がいれば時間も金もかかるし自由もなくなるし機嫌とらなきゃなんないし自分を殺さきゃなんないしちょっとしたことで苛つくし悲しくなるし泣きたくなるし死にたくなる。らしい。
そんな超ハードなことが甘いわけがない。
超ブラック。入社1年目から店長代理やらされるくらいブラック。
だが、しかし、世間の声を真摯に受け入れて百歩譲って恋愛が甘い物だとするならば、
俺は唯一の例外を認めなければならない。
恋愛なんて言うものは大嫌いだ。
俺は恋愛によるごたごたに自分を乱されたくないし自由気ままな生活を送りたい。
それに
希望は失望に変わる。
期待は裏切りを生み出す。
だから俺は他人には何も望まない。
唯一望むとすればそれは俺に対して「無関心」であること。
支援
俺はこれまで一人だったしこれからも一人でやっていく。
それが俺、比企谷八幡のモットーであり信条でありポリシーである。
俺はこれからも一人で生きていく。
誰にも頼らず、誰も許さず。
孤高の戦士、比企谷八幡の戦いはこれからも続く。
~完~
「ちょっとお兄ちゃ~ん」
お?天使の囁きが聞こえる。
キッチンでの洗い物を終えてソファに座っている声の主に尋ねる。
「なんだ?」
「小町、もうそろそろ受験なんだよね~」
声の主は世界で10人ほどしかいない、俺との会話をすることができる稀有な存在だ。
まるで俺って世界樹みたい。
んで、妹の小町はその中でも最も俺と喋る機会が多いやつ。
ふむ、こいつが勇者だな。
「知ってるよ、総武高もそろそろだしな」
「それでね、今年はバレンタインのチョコ作ってる暇ないんだ~」
「なにーーーー!?」
毎年、唯一俺にチョコをくれる小町ルートが断たれたとなると今年は0個。
甘党な俺にとっても男としてもショック。
「まあ仕方ないよな、受験だし。そんなこと気にせんで勉強頑張れ、勉強を」
「勉強ももちろん頑張ってるよ。けどお兄ちゃんは今年はチョコもらえないのか~」
え?確定?
もしかしたら貰えるかもしれねえだろ。
階段で困ってる老人を助けたお礼にとか、
チョコもらいすぎて困ってる葉山が俺の目の前で一つ落とすとか、
チョコくわえて「遅刻遅刻~」って走ってる子とぶつかるとか。
うん、0個だな。
「別にいいよ、チョコなんて買えばいいし」
「ちっちっち~甘いな~お兄ちゃんは。あ、今の小町的に座布団1枚」
その採点基準の方が甘いよ。だから俺には5枚くれ。
「貰うのと買ったのじゃ全然違うでしょ~?」
まあそうだな。貰ったチョコは胃もたれしそうだ。
トッピングとか想いが重くて。
「しょうがない。情けない兄を持った妹として、ここは一肌脱いであげますか」
「いや、受験前なんだし暖かい格好してろよ」
「小町に任せて!お兄ちゃん」
いや、何をだよ。
わくわく
クリスマスの人かな?
だがもう分かってることがある。
絶対に俺にとっていいことじゃないことが起こる。
それは確定事項だ。
小町が動けば俺に厄災が降りかかる。
それは妹を持った兄の宿命なのだ。
だから俺にできることは一つ。
「お手柔らかにお願いしますね」
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気付けば今年も1月が過ぎ、こんなことを後11回したら今年も終わるのかと早くも大晦日の心配をする今日この頃。
放課後になった教室を見回すと、色んなことがあったなと感慨深くなる。
葉山と三浦とはテニス対決をした。
川何とかさんのやってるバイト先に乗り込んで、年齢を暴露するぞと脅して辞めさせた。
事故から飼い犬を救った俺に感謝している由比ヶ浜に、お前の気持ちは勘違いだとお門違いな説教をした。
夏休みには葉山達をけしかけて小学生に消えないトラウマを植えさせた。
文化祭実行委員長になった相模には、構ってちゃんの最底辺だと罵って泣かせた。
告白したいと相談してきた戸部の意中の相手に俺が先に告白した。
うん、最悪だな俺。
けどなんだかんだで葉山と戸部とは喋るようになったし、何より戸塚。
戸塚とかいうクソカワイイ天使と仲良くなれた。
俺らって友達?友達なの?運命?愛し合ってる?
そんくらい戸塚との出会いは俺にとって大切なものだった。
けどもうこのクラスも残すところ1月か。
はー……早く3年にならんかね~。
いや、戸塚とは当然、一緒のクラスにはなりたいよ。むしろ籍も一緒にしたい。
けど後はどうでもいい。
葉山は出木杉君過ぎて鬱陶しいし三浦は怖いし戸部うるさいし。
あとはどうでもいい奴ら。
よって俺にはクラスに対する愛着なんて当然ない。
そんなわけで何とも思わないクラスからは早々に離脱して奉仕部の部室へと向かう。
ってか俺って真面目すぎね?
平塚先生に強制されて入れられた部活に唯々諾々と通うなんて社畜の鑑。
どうやったら平塚先生を説得して奉仕部を辞めることできるか、やっぱりプロポーズしかないのかと悩んでいたら部室に着いた。
扉は案の定開錠されておりスライドして俺の入室を許可した。
「あら比企谷くん。今日は来ないでと思っていたわ」
「『で』があるせいでお前の単なる願望になっちまってるじゃねえか」
「あら、それは違うわ」
ほう?
「これは皆の願いよ」
うぃあーざーわー
うぃあーざーちるどれーん
「へいへい、帰っていいなら帰りますが」
「あら、駄目に決まってるじゃない。
こんなぬるま湯のような部活でさえ頑張れないのなら、あなたの行きつく先は冷たい土の中しかなくなるわよ」
部活か死か。未だかつてこんな理不尽な選択があっただろうか。
まだ死にたくはないのでとりあえずいつもの席に座って文庫本を取り出す。
ページをめくる音、秒針が刻む音、風がドアを叩く音。
部室はこの3つの音だけが響き、さもすると寂しくなるかのような雰囲気。
だが俺はこの空気が好きだ。
気を遣わず、遣われず。
1人の人間として対等に存在している。
部室は知らぬ間に俺にとって居心地のいい空間になっていた。
始める時間間違えた……
眠いので今日はここまでです。
進まなくてすいません。
>>5
支援ありがとうございます
>>10
前はクリスマスのを書きました
前のも見て下さっていて嬉しいです。ありがとうございます
「2ケツってことか?道交法違反じゃねえか」
「まあまあ固いこと言わずにさ~」
そう言って荷台部分に由比ヶ浜が横乗りする。
マジかよ………俺が漕ぐのか。
「じゃあ行くぞ~」
「ごーごー!」
馬鹿そうな、楽しそうな声を上げる由比ヶ浜を乗せて自転車を漕ぎ出す。
俺と由比ヶ浜の家は駅2つ分しか離れてないしな。別にそれほど苦労でもない。
小町に比べるとやはり重く感じる。これで「重いな」とか言わない辺り俺は出来る男だ。
ってか制服着て2ケツとか青春って感じだな。
最も俺が馬鹿にして、軽蔑していた行為だ。
まあ、単なる僻みとも言う。
「ねえヒッキー」
「あ?なんだ?」
「……明日から一緒に登校しよっか」
「え?そりゃ無理だ」
「即答!?なんでし!」
「え?だって小町を中学まで送っていかなきゃならん時もあるからな」
「…え~シスコンじゃん」
「シスコンで何が悪い」
「開き直った!!」
ってか俺の背中に2つのマウントユイがちょこちょこ当たって気が気じゃない。
もうちょっと慎みを持ってみてはいかがでしょうか。
そんなどうでもいいような会話をしながら、たまに背中に当たる柔らかにゅう素材に気を取られながら、
自転車を漕いでると由比ヶ浜の家に到着した。
「ほらお前ん家、ここらへんだったろ」
自転車を停めたのは、以前花火大会で由比ヶ浜と別れた場所。
「あ、うん。運転ご苦労さま」
「そう思うなら今度からはお前が漕いでくれ」
「えーーやだよ。それじゃまた明日ね」
「ああ」
「バイバイ」
雪ノ下の時とは違って、少し照れくさそうに胸の前で手を振る由比ヶ浜。
俺もそれに応えて軽く手を上げて自転車を自宅に向けて走らせた。
あ゛~~~~~ってか付き合うって何したらいいの?
俺ボッチだしよく分かんないんだけど。
学校で会って、ちょっと喋って一緒に帰ったらそれだけでいいの?
八幡、よく分かんない。
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なんかどうでもいい話書いちゃったけど
キリがいいから今日はここまで
次はビッ…由比ヶ浜とのデートを書きたいぜ
というわけで読んで下さった方には心からの感謝を
それではおやすみなさいませ
レスありがとうございます
では再開します
バレンタインから2日後、木曜日は特に言及することもなく終わった。
学校に行って部活に行って由比ヶ浜と帰っただけ。
クラスでは相変わらずボッチ(たまに妖精トヅカが囁いてくる)だし、
部活も相談者が来なかったから読書して終わりだし、
帰るのが一人じゃなく由比ヶ浜と一緒になっただけ。
付き合っても特に変化はなく、つつがなく終わった。
そして今日、金曜日も特に何もなく終わろうかとしていた。
今日も今日とて由比ヶ浜を乗せて自転車は進む。
後ろのフカフカシートに背を預けそうになる誘惑を振り切って、何とか今日も目的地に到着。
「着いたぞー」
「あ、うん」
由比ヶ浜が荷台から降りる。
「じゃあまた学校でな」
「え、あ…ちょっと待って!」
「なんだ?」
「えーとね…ヒッキーって明日ヒマ?」
「いや、忙しい」
「あ…そうなんだ」
「撮り溜めてたアニメ見ないとなんないし、漫画も新刊買にいかなきゃならん」
「超ヒマじゃん!」
「え?忙しいっつうの」
「そ、そんなことよりデートしない?」
「そんなこととは何だ。俺にとっては学校よりも大事な仕事だぞ……デート?」
Date
日付け、または会う約束をすること。
「明日……会うのか?」
「え、うん…ヒッキーがよかったら」
「お、おう。いいぞ」
「ほんと?」
「ああ、でも明日は何すんだ?撮り溜めてたアニメでも見るか?」
「見ないし!ん~何するかは後でメールしよ?」
「そうだな。急には決められん」
「じゃあ後でメールするから!」
「ああ」
そう言って由比ヶ浜は家の方へと走って言った。
ふむ、デートか。都市伝説が本当にあったとは。
ならネッシーでも見るためにピクニックに行くとかどうだろう。
とりあえずここにいても仕方ないので自転車を走らせて帰宅することにした。
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四角い箱で「デート」について調べる。
色々な情報が出て来るが今一ピンと来ない。
買い物だって二人で行く必要性がないし、ドライブだって免許ないし無理。
食事だってわざわざ高い金払ってまで食いたいとも思わん。
あとは観光だが千葉LOVEの俺にとっては今更感が半端ない。
あとは映画とかゲーセンとかカラオケとか……彼女として楽しいの?
こういう娯楽って一人で楽しめるし、何なら1人の方がより楽しめる。
駄目だ、根本的に俺には「誰かと何かする」という能力が欠如してるし知識もない。
ここは身近な奴に意見を聴いてみるか、俺一人じゃ考えられないし。
そう言うわけで自分の部屋を出て小町の部屋へ。
扉をノックすると小町が出てきた。
「どうしたのお兄ちゃん。さっきご飯食べたでしょ?」
「ボケてねえよ。そんなことより相談があるんだけどよ」
「相談?あ、じゃあリビングの方に行こっか。ついでに休憩したいし」
というわけで小町とリビングに移動。
受験が目前に迫っているため、小町も必死に勉強していたらしい。
邪魔したお詫びにココアを入れてやり、ローテーブルに置いて相談に入る。
「相談ってのはデートについてだ」
「デート?あ、結衣さんと明日デートするんだ」
「おう。そうなんだけどよ、何したらいいのかさっぱりわからん」
「あ~お兄ちゃん、今まで一人でばっか遊んでたもんね」
「ほっとけ。んで、年も近いお前に聞きたいんだが、女はどういうことしたいんだ?」
「ん~なんだっていいと思うよ?」
「いや、何だってよくねえよ。もっと具体的に教えてくれ」
「逆にお兄ちゃんは結衣さんとしたいことないの?」
逆にやりたいことがなさ過ぎてお兄ちゃんは困ってるんだよ。
「ない」
「あ~……結衣さんが不憫だ」
「だって今まで一人で何でもやって来たから急に二人でしろって言われても困んだよ。
あ、キャッチボールとか?」
そういや壁当てしかしたことないしキャッチボールは俺の憧れの遊びナンバー4だ。
「結衣さん、女の子だしキャッチボールとか楽しくないと思う」
お前がしたいことを言えっつったんだろ。
「お兄ちゃんがしたくて、なおかつ結衣さんが楽しめそうなものってないの?」
「………………………………………………………………………………………………………………………」
「もういいよ!もう!お兄ちゃんは今度から二人で楽しめそうなことを勉強すること!
とりあえず、今回は小町が一つ教えてあげます!それは……
ドルドルドルドルドルドル」
「いや、ドラムロールいらねえよ」
「じゃん!サブレちゃんと一緒にデート!」
「え?……いやいや、俺は由比ヶ浜とデートしますし。人間ですし。犬とデートはできないですし」
「もう、そんなことわかってるよ! そうじゃなくて、結衣さんとお兄ちゃんの出会いってサブレのおかげでしょ?」
「ああ、そういやそうだな」
「だから!サブレちゃんも連れて一緒にデートするの! 女の子はそういうのにキュンキュンするの!」
つまり験担ぎが好きってこと?
よし、なら今度から由比ヶ浜とのデートには赤ふんどししていこう。
「それで、サブレも一緒に行ける喫茶店に行ったりペットショップに行ったりするの!
サブレがいたら気まずい雰囲気にもなりにくいし、一石二鳥だよ!」
ふむ、確かに小町の言うことは理に適ってる。
「それでいいかもな。なら由比ヶ浜に特に希望がなかったら伝えてみるわ」
「うん。あ~小町、最近勉強頑張ってるし糖分とりたいな~
ショートケーキとかモンブラン食べたい~あ、チーズケーキも!」
「……明日買ってくる」
「わーい!お兄ちゃん大好き❤」
「へいへい」
やばい、鼻の下が伸びまくる。
こいつは絶対、将来パパが5人や6人いることになるだろう。
というわけで、策士に三顧(3個とも言う)の礼を持って策を授けてもらい、小町も勉強に戻ったから俺も自室に引き籠る。
由比ヶ浜にメールで「明日何かしたいことあるか」と聞くと、
返事は「分かんない (´;ω;`)」だった。
いや、泣かなくてもいいよ。
ならばと小町から授かった案を、さも俺が考えたかのように由比ヶ浜に提案する。
ふむ、他人を犠牲にして甘い汁を吸うとの自己変革は早くも結果を出しているな。
すると由比ヶ浜も、常日頃は散歩ぐらいしかしてあげられてないから賛成とのこと。
ふむ、ならば明日は犬っころと1日遊ぶか。
後は待ち合わせ場所と時間を決め、互に行きたい場所を探し合うということで業務連絡は終了した。
よし、明日は結構ハードそうだから早く寝るか!
……その前にペット同伴可能な店探さなきゃ。
やっぱり付き合うのって大変。
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俺は自転車を漕いで由比ヶ浜の家を目指す。
昨日は緊張して眠れなかった…とかそんな純情丸出しエピソードはない。
快眠。危うく二度寝して寝過ごしかけた。
自転車を由比ヶ浜のマンションの駐輪場に止めてメールを入れる。
すると「今行く!」とのメールが程なくして帰ってきた。
ぼ~~と待っているとサブレを連れた由比ヶ浜が出てきた。
上はダウンで下はショーパンにブーツ。
ってか女ってなんで寒いのに足出すんだろう。
「おう」
「あ、ごめん。待たせちゃった?」
「いやいや、すぐ出てきたじゃねえか。それよりお前、なんでブーツなんだよ」
「え?寒いから」
ならショーパンやめろ。
「いや、寒いとかこの際どうでもいい。今日はサブレと遊ぶんだろ?汚れちまうぞ」
「え?今日は軽く散歩してお店チラチラ見るだけだと思ってたんだけど」
「え?俺てっきり、堤防とかで思いっきりフリスビーしたりボール投げたりするのかと思ってたわ」
「あ~でもサブレってダックスフンドだし。ボールくらいならいいけどフリスビーは無理かな」
「なんだ、じゃあちょっと散歩させたらいいのか?」
「う~ん……ヒッキーが構ってあげるならボール持ってこようか?」
どうしようかと足元にいるサブレを見ると、「構って!」と言わんばかしに尻尾をブンブン振っていた。
「よし、この動けるボッチにまかせろ。今日は1日構い倒してやる」
「わかった。あ、じゃあボールとってくるからサブレよろしく」
そう言って由比ヶ浜はサブレのリードを俺に渡してマンションに入っていった。
残された俺はサブレとしばし見つめ合う。
サブレは何が嬉しいのか俺の足の周りをグルグルしたり纏わりついたりしてる。
頭を撫でたりしてサブレを構っていたら由比ヶ浜が戻って来た。
「よし、じゃあ行こう!」
「まずどうすんだ?」
「ん~~とりあえずサブレ遊ばせるために公園いこっか」
というわけで歩いて行ける公園まで。
リードは引き続き俺が持ってる。
その道中でさえサブレは何が楽しいのか1撃で10人はヒットしそうなほど尻尾をブンブン無双してた。
もう歩いてるだけでこいつ満足してね?
「ほんとサブレってヒッキーになついてるよね~」
「あ~そういやそうだな」
「やっぱり助けてもらったこと覚えてるんだよ」
お犬様がそんなこと覚えてられるのか?まあ臭いとかで判別してるのかもしれん。
そんなこんなで芝生が茂る公園にたどり着いた。
「よし、んじゃヒッキーはサブレと遊んであげて」
そういうと由比ヶ浜が俺にボールを手渡す。
「いや、別にいいけどよ。お前は何すんだよ」
「あたし?パズドラ」
え~?別に犬好きだしいいけどよ。
結局サブレとのデートになっちゃってんじゃん。
まあ二人でボールなげても意味ないし、ここはサブレちゃんと思いっきりはしゃぐか。
「ふ、俺が動けるボッチということを証明してやろう」
「うん、見てるから」
おい、スマホをなぞるのやめなさい。
と言うわけでとりあえずはサブレと戯れることに。
サブレはすでにボールがなくとも芝生を駆け巡って大変楽しそうだ。
俺いらなくね?
とりあえずサブレが一通り走り回ってこっちにやって来たから、ボールを見せて注意をひく。
「おいサブ坊。お前はこれを取って来るんだぞ」
そういうとサブレの純粋な目がこちらを凝視する。
犬とは目を合せても緊張しないんだな。
「ほれ!とってこい」
そう言ってボールを遠くの方に投げる。
するとサブレが一陣の風の様に走り出す!
ボールとは逆の由比ヶ浜の方へ……
「きゃ!!サブレ!どうしたの?」
サブレはそのまま由比ヶ浜の胸へダイブ。
いや、そのボールは俺がいずれ取りに行くからお前はゴムボール取りに行けよ。
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ゲスいオチもついたから寝ます
読んで下さった方には感謝を。
ではでは、おやすみなさいませ
レスありがとうございます
ちょっと始めのうちはペース遅いけど
書きたいからちょこちょこ書いていきます
30分ほどサブレと遊んで由比ヶ浜が待つベンチの方へ。
「そろそろサブレも満足だろうし次行くか」
「うん、ってかヒッキーてすごいね」
まあな。俺は運動神経に関しては自信がある。
これで由比ヶ浜も俺を惚れ直したか?
まあ学生の内は運動出来る奴=モテルの方程式が成り立つからな。
「犬と遊んでるのにあんな濁った目のままなんて」
「………………………………」
ほっとけ。俺のこの目は生まれつきだ。
アニマルセラピー受けてんじゃねえんだから急に目がキラキラ輝いたりするか。
「で、この後どうすんだ?メシか?」
「ヒッキーはお腹へった?」
「おう、超減った」
「ならご飯にしよっか」
というわけでペット同伴可能なレストランに向けて出発。
サブレも疲れたのか歩き方がヨタヨタしてる。
仕方ない。俺はヒョイとサブレを抱っこする。
「あ…」
隣りで由比ヶ浜がスマホ片手に声を漏らす。
え?抱っこしたかったの?代わりましょうか?
「ほれ見ろ、そんな寒い格好してるからだ。ほら、カイロをやろう」
そう言ってサブレを差し出すが由比ヶ浜は受け取らない。
なんだ?
「……サブレよりヒッキーの方がいいな」
え?サブレ抱っこしてる俺を抱っこするの?
なにそれ、合体マシーンみたいで格好いい。
「俺は自分で歩くよ」
「そ、そうじゃなくて!!」
「あ?んじゃ何だよ」
「………手」
「テ?」
「ヒッキーと手を繋ぎたいの!!」
「…………」
やばい、驚きすぎてやばい。
言葉がやばいくらい出てこないしやばい。
「だ、だって初デートで手を繋ぐくらい普通だって小町で言ってたもん!」
小町?うちの妹?
けどそれなら、小町「が」言っていた、になる。
んじゃあれか?釣り堀小町のこと?
お前も小町頼りかよ。
ああ、だからさっきから携帯ピコピコしてたのかよ。
「……ほれ」
俺はサブレを右腕だけで抱え、空いた左手を由比ヶ浜に差し出す。
ついついぶっきら棒になってしまった。
「……ん」
由比ヶ浜の右手が俺の手に触れる。
由比ヶ浜の手は柔らかくて、温かくて、小さくて、愛おしかった。
二人とも緊張してしまったのか、無言のまま次の目的地に向かう。
手を繋ぐってだけで、こんなにも身近に感じるもんなんだな。
公園を出て10分ほど歩いたところにあるレストランに到着。
見た目はお洒落なログハウス。
テラスにはペット同伴の客専用の席がある。
店員がサブレを見て俺達をテラスの席に案内する。
ここで繋いでいた由比ヶ浜の手をパージ。
手が熱を手放して少し寒く感じる。
二人向かい合ってテーブルに着く。
このレストランは至って普通のイタリアン。
だから俺は明太子とイカの和風パスタを、
由比ヶ浜はチキンとシメジのクリームパスタを、
そして二人で食べるようにジェノぺーゼピザを1枚頼むこととした。
「サブレのどうしよっか」
そう。ここはお犬様専用のメニューがある。
単にチキンやポークやビーフをボイルしたシンプルな物もあれば
犬が食べてもいいようなパスタやリゾット、他にはケーキなんかもある。
「せっかくだし、なんか珍しいのにしないか?」
「ん~じゃあこのサーモンのスープパスタってのにしてみる」
というわけで店員を呼んで以上をオーダー。
店員が去っていくと、由比ヶ浜が話しかけてきた。
「そういやなんで今日はサブレも一緒なの?」
「あ~~……俺と由比ヶ浜が会ったきっかけ、だから?」
多分、小町はそういう意味で言っていたはず。
「あ、じゃあサブレは二人のキューピットってことだ!」
キューピットとか。恥ずかしいしやめてくれ。
「じゃあヒッキーと付き合えたのはサブレのおかげだ。
ありがと~サブレ~!」
そう言って由比ヶ浜がサブレをワシワシと撫でる。
俺もサブレには感謝すべきなんだろうな。
恥ずかしくて言えんが。
>>1マダカナー
>>277
待って下さっていてありがとうございます。
書き溜めを「結衣」から「由比ヶ浜」に一括変換したせいで
文章が変になっちゃって、やる気をなくしていたのですが…
とりあえずちょっと書いて見ます
時刻は12時半過ぎ。
1時には由比ヶ浜が来る。
リビングでぼけ~っとしていると、家では普段だらけた格好をしている小町が外行の格好をしていた。
「あ?出かけんの?」
「これからお父さんたちとお買い物だよ」
あれ?俺は?家族からも爪弾きされるの?
確かにいつもは昼過ぎまで寝てる両親がパジャマじゃなくて洋服を着ていた。
「受験前なのにいいのかよ」
「たまには息抜きも必要なの」
終わってから抜けよ。
「それよりお兄ちゃん、小町にそんなこと言っていいの?」
「なんでだよ」
「…お父さんたちがここにいると結衣さんと会っちゃうでしょ」
小町が小声で小粋に囁く。
あ~そういやそうだ。
何も考えずに誘ったけどこのままだと両親とのエンカウントという気まずいイベントが発生する。
「…そういうことか、すまん。気付かんかった」
「いいよ、お兄ちゃん。けど小町、昨日ケーキ食べたから今度は和菓子かな~」
「……月曜、学校帰りに買ってくる」
等価交換は世の理だ。ボッチといえども世界のルールには拘束される。
「じゃあお兄ちゃん、行ってくるからね。戻ってくるのは晩御飯食べてからだから遅くなると思う」
「へいへい、分かったよ」
そう言って小町と、娘とのお出かけに浮かれる親父たちが出かけて行った。
由比ヶ浜が来るまであともう少し時間がある。
俺はソファーに寝っ転がってテレビを見ることとした。
携帯が鳴っている。
その音で目が覚めた。
携帯を見ると時刻は1時。着信は由比ヶ浜から。
慌てて玄関まで走り、覗き穴を見ると携帯をかけてる由比ヶ浜の姿があった。
俺は急いで玄関の扉を開ける。
「すまん寝てた」
「もう、てっきり時間まちがえちゃったと思ったじゃん」
「すまん」
とりあえず由比ヶ浜を家に上げる。
今日も寒い中ショーパンとは尊敬を通り越して恐れを抱くレベル。
由比ヶ浜がキョロキョロと辺りを見回す。
「どうした?カマクラか?」
「違うし、そうじゃなくて…」
「ああ、家族ならいねえぞ」
「え!?」
「小町含め、皆でお買い物だそうだ」
「そ、そっか……」
そういや、俺だって由比ヶ浜の両親に会いたくなくてこいつの家を断ったんだったな。
思いやりとか配慮が足らんかった、反省だ。
「すまん、前もって言っとくべきだったな」
「う、ううん。別にいいよ」
とりあえず玄関先で話し込んでも仕方ないから階段を上ってリビングへ。
「んで、何か飲み物作るけど、由比ヶ浜は?牛乳?」
「え!?牛乳嫌い!」
牛乳嫌いなのにその胸は何なんだよ。
「じゃあ何がいいんだよ」
「ん~…ココア!」
牛乳じゃん。
そういうわけで由比ヶ浜にはココアを、俺にはコーヒー(練乳はちみつ入り)を。
出来た飲み物をテーブルに置いて、とりあえず俺もソファーに腰掛ける。
「んで、今日何すんの?」
「ん~結局昨日決められなかったしね」
「ってか付き合ってる奴らって何してんの?将棋?」
「将棋とか聞いたことないし。小町で聞いてみる?」
「なんでお前は小町頼りなんだよ。何かやりたいことねえの?」
「ん~~……ヒッキーの部屋見たい」
「え、やだよ」
「え!?」
「だって秘密の花園だぞ」
「秘密って……こ、恋人同士なんだし別にいいじゃん!」
「親しき仲にも礼儀ありって言うだろ」
「お願いします」
「お願いしたらいいってもんじゃねえよ」
まあ別に見られて困る物もないし汚くもないからいいか。
「はあ………分かったよ、じゃあとりあえず行くか」
「うん!」
由比ヶ浜がコップを持って立ち上がる。
やばい、俺の部屋に留まる気だ。
俺も一応コップを持って由比ヶ浜を先導する。
自室の扉を開けて由比ヶ浜を招き入れる。
「ほれ、ここが俺の部屋」
「お邪魔しまーす…」
由比ヶ浜が俺の部屋に入ってキョロキョロと見渡す。
「へ~男の子の部屋って汚いと思ってた」
「男は綺麗好きか汚いかが両極端だからな。 その点、結構女の方が部屋は汚いらしいぞ」
不動産屋とかだと女の方が部屋を汚すから貸すのが嫌らしい。
ソースがネットだから信憑性はないが。
「うわ~リビングも本ばっかだったけど、ヒッキーの部屋にもいっぱいじゃん」
「そりゃそうだろ。たまに読みたくなる一軍はこっちに置いてあるからな。
置けない2軍がリビング送りにされてるだけだ」
「あたしは部屋に本ないけど」
「学生なんだし本くらい読めよ」
「本読まなくたって立派な大人になれるよ!」
「まあそうだけどよ」
本ほど面白い娯楽もないと思うけど。
小説はその世界感に浸れるし、学問書も先達の財産の上澄みを得られる。
全部自分で体験しなきゃなんないなんて大変すぎて無理。
本読んでわかったふりしてる程度が丁度いい。
「じゃあお前は部屋で一体なにやってんだよ」
「え?優美子とかとラインしたりスマホでゲームしたりネットしたり」
うわー、現代人がいる。
「ほれ、部屋も見たことだしリビングに戻るぞ」
「え~?こっちでいいじゃん」
「こっちにはテレビもないしエアコン点けてなかったし寒いだろ」
「けどあたしはこっちの方がいいかな」
他人の生活感あるリビングってのは落ち着かんのかもしれんな。
俺はエアコンを点けて、リビングに戻ってテレビやエアコンを消す。
ついでにお菓子を持って自室に戻って来た。
「あ、ありがと」
「おう、ってかさとりあえず座ったら?」
「え、うん」
フローリングに敷かれたラグに乗り、デスクチェアをチラリと見て、
そして由比ヶ浜が腰を下ろした。ベッドに。
「……なんでベッドなんだよ」
「え?だって椅子はヒッキーが使うかと思って」
ベッドとか寝るときに悶々としちまうだろ。いや、今もするけど。
俺は残された椅子に腰かけて……ぎゅー
いや、彼女いるときまで「くぎゅーーー!!!!!!!」とか言わないよ?
音が鳴った方を見る。と、由比ヶ浜がお腹を抑えて赤くなっていた。
「昼メシ食ってねえの?」
「う、うん」
「そういや俺も食ってなかったな。何か食うか?」
「うん、とりあえずお昼にしよっか」
だが残念なことにボッチの俺は女が喜びそうな店など知らん。
「じゃあ何食いに行くんだ?」
「え?今日は家でのんびりがテーマじゃん。出ちゃダメだし」
え!?もはやサバイバル。
千葉県で遭難とかマジ笑えない。
「じゃあどうすんだよ」
「ん~お菓子?」
俺が持ってきた菓子袋を見ながら言う。
「いやいや、菓子なんかじゃ腹ふくれねえだろ」
「なら自炊するとか」
お前は料理出来ないから「自」炊とか言うな。
「はぁ…分かった。なら簡単な物を作ってそれを食うか」
「うん!」
部屋を出てさっき消したばかりのリビングのエアコンを点けて冷蔵庫を漁る。
中にはざっと見てベーコン、玉ねぎ、にんにく、牛乳、明太子がある
サイドチェストを覗くとホール缶トマトと鷹の爪が。
なら明太子クリームパスタか、にんにくを効かせたトマトパスタか、それともペペロンチーノか…………………………
「ってかなんでついて来てんだよ」
「え?なんか手伝えることないかなって」
ねえよ、猫どころかマリオネットの手を借りてもお前には借りねえよ。
「パスタになりそうだけどいいか?昨日もパスタだったけど」
「うん、問題なし!」
「なら明太子かトマトソースかペペロンチーノかどれがいい?」
「ん~……明太子!」
「クリームは?ありなしどっちだ」
「ありのほうがいいかな」
「ほいよ」
というわけで電気ポットで湯を沸かしてる間に紫蘇を刻み、明太子の皮をとる。
俺が料理をしていると、由比ヶ浜が本棚に仕舞ってあるDVDを見つけ出してきた。
「ヒッキー、これってヒッキーの?」
「いや、DVDは母親か小町のだな」
「ねえね、食事しながら映画みよ?」
「別にいいぞ」
「やった!じゃあどれにしようかな~」
由比ヶ浜は何が楽しいのか鼻歌を口ずさみながら本棚を物色する。
文章の途中だけど、内容的には一纏まりある部分に突入しちゃうんで今日はここまでにします
多分、明日か明後日には再開して最後まで行けるかと思います。
読んで下さったには心から謝謝
ではまた書きに来ます
>>285に一文書き忘れがあったので、細かいしどうでもいいですが一応訂正します
「じゃあどうしたらいいの!」
まあ別に見られて困る物もないし汚くもないからいいか。
「分かったよ、じゃあとりあえず行くか」
「うん!」
由比ヶ浜がコップを持って立ち上がる。
やばい、俺の部屋に留まる気だ。
俺も一応コップを持って由比ヶ浜を先導する。
自室の扉を開けて由比ヶ浜を招き入れる。
「ほれ、ここが俺の部屋」
「お邪魔しまーす…」
由比ヶ浜が俺の部屋に入ってキョロキョロと見渡す。
「へ~男の子の部屋って汚いと思ってた」
「男は綺麗好きか汚いかが両極端だからな。その点、結構女の方が部屋は汚いらしいぞ」
不動産屋とかだと女の方が部屋を汚すから貸すのを嫌がることもあるらしい。
ソースがネットだから信憑性はないが。
再開してくれて嬉しい。糖分に飢えてるので期待。
レスありがとうございます
>>294
書こうと思ったらいくらでもデートシーン書けるんですけど、蛇足かどうか判断に迷いますね
ssはいつも辞め時が分からないです
とりあえず、これ以上続けても仕方ないので今日書き切りたいと思います
「お前って好きなジャンルとかあんの?」
「恋愛もの!」
マジか。人の、しかも作り物の恋愛見てどうすりゃいいんだよ。
ってか俺と由比ヶ浜は根本的に考え方や趣味が合わない。
これって恋人として重大欠陥な気がする。
「俺は恋愛もの好きじゃねえ」
「え?じゃあどうしよう」
あー…ここにきて八方美人ぶり発揮すんのか。
けど二人で見るんだし俺か由比ヶ浜がイエスマンになるのは何か違う。
「俺はドキュメンタリーとか歴史物が好きだな。恋愛や戦争物は嫌いだ。由比ヶ浜は?」
「あたしは恋愛ものか……あとはコメディかな」
「コメディか、それなら俺でも見られそうだな。じゃあ面白そうなコメディをチョイスしてくれ」
「うん!」
二人であれやこれやと言い合いながら一本の映画を由比ヶ浜が選び出す。
付き合うってはこういうことなのかもしれん。
どちらか一方だけが我慢するのではなく、二人で二人の最適を探して模索していく。
衝突したら調整する。
二人が二人を思い合う。
中々骨が折れそうだけど、だからこそ一緒にいて幸せになれる。
なんてな、彼氏4日目の俺が偉そうに言えたことじゃない。
由比ヶ浜は早くもTVの前のソファに座ってスタンバイ。
早すぎるわ。まだパスタも湯がいてねえよ。
湯が沸いたらパスタを投入して、
その間にフランスパンを切ってレタス、生ハムを挟んでサンドイッチにする。
あと1分で茹で上がる段階になって隣のコンロで生クリームと明太子のソースを作り、胡椒を振る。
パスタが茹で上がればそのままソースのフライパンに投入し、軽く馴染ませて終わり。
仕上げに刻み海苔と紫蘇をトッピングして盛り付けも終了。
「ほへ~~ヒッキーって料理めちゃくちゃ上手なんだね」
別に上手くはない。単に面倒くさがりだから効率重視で簡単な料理を同時展開しただけだ。
出来上がった料理をテーブルに並べて、映画を流して食事を開始。
「頂きます」
「ありがと、ヒッキー。じゃああたしもいただきます!」
二人でいただきますをしてさっそく胃袋に投下していく。
「ヒッキー!メチャクチャおいしいよ!」
「そりゃよかったな」
「これどうやって作ったの!?」
見てただろ。
「ソースは生クリームと辛子明太子混ぜて少し胡椒を振るだけだ。だからお前でも失敗せん」
「そんなに簡単なの?じゃあ今度あたしもやってみよ」
「いいか?振るのは胡椒だぞ。間違っても猛威じゃないぞ」
「モウイって?武将?」
武将?毛利のこと?
「まあお前はいらんことせんかったら料理できるのはバレンタインで実証済みだからな。
だからレシピや基本を大切にしろ。間違ってもオリジナリティとか出そうとするな」
「え~?それじゃ誰が作っても同じじゃん」
「同じになるようにレシピがあんだろーが。料理家でもなんでもねえやつは平々凡々な料理を作ってればいいんだよ。それで十分美味いんだし」
「なるほど…料理家か…」
いや、なんでオリジナリティ守るために料理家目指してんだよ。
稀代の料理家、ユイ・ユイガハマが誕生するきっかけになるのかならんのかならんのだろう会話をしながら食事が進む。
由比ヶ浜がパスタとサンドイッチを美味しそうに頬張る。
うん、作った者としてはこんなに美味しそうに食べてくれるのなら作った甲斐があるってもんだ。
見てるのか見てないのかよく分かんない感じで映画も進んでいく。
由比ヶ浜も俺も食べ終わり、食後の紅茶を飲みながら映画鑑賞が続く。
由比ヶ浜は一々笑ったり、涙ぐんだり忙しい奴だった。
映画一つでそんなに感情がコロコロ変わっちまったらさぞ大変だろうな。
結局俺は映画よりも由比ヶ浜を観賞してたらいつの間にかスタッフロールが流れていた。
「映画終わっちまったけどよ、この後どうすんだ?3時だぞ。寝るか?」
「ね、ねる!!?」
「昼寝するにはもってこいな時間だろ。エアコンであったかいし」
「あ、あはは、そうだね…ってダメだし!せっかく一緒にいるのに寝るとか禁止!」
「じゃあ何すんだよ」
「ん~ヒッキーって休みの日は何してんの?」
「アニメ見るか本読むか寝るか」
「ヒッキーまじでヒッキーじゃん」
「外で楽しめるもんがあれば外にも行くがな。だが家の中が一番楽しい」
「けど今日はお家デートだし……一緒に読書とか?」
「俺は本好きだからいいけどよ。お前、本嫌いだろ」
「き、嫌いじゃないし!あたしだって読むよ!」
「例えば?」
「ポップティーンとか!」
「雑誌じゃねえか」
「雑誌も本でしょ!それよりヒッキーのおすすめ教えてよ!」
まあやる気があるんだったらとやかく言う必要もない。
1軍が置いてある自室に行こうとすると由比ヶ浜も立ち上がった。
「俺の部屋で読むか?」
「うん」
というわけでリビングに再度お別れをして自室へ。
「本で好きなジャンルは?」
「恋愛!」
「ない」
「即答!?む~…なら難しくないのがいい」
難しいかはお前の匙加減じゃねえか。
まあけど言い回しがくどい文章とかは俺も好きじゃない。
だから何てことのない日常の1風景を、シンプルな文章によって表現しているお気に入りの作家の本を数冊選び出す。
「俺が一番好きな作家の本だ。全米が泣いたり笑ったりするわけじゃねえけど、俺は好きだ」
「…ヒッキーが1番好きなの…うん!ならこれ読んでみる!」
そう言って由比ヶ浜はベッドに寝っ転がって読書を始めた。
おいおい、無防備通り越して暴力的だな。
まあここで「転がるな」とか言って、変に意識しちゃってるDTと思われるのも嫌だからスルーする。
俺も椅子に腰掛けて読みかけだった本を開く。
紅茶と、お菓子と、本。
なんて贅沢なんだ。
多分俺は今世界で10番目くらいには幸せだね。
ってかこんなんでいいの?彼女と一緒にいるのに喋らないとか。
チラリと由比ヶ浜の方を見てみると、彼女は本当にころころ表情が変わる。
それだけでどんなシーンが描かれているのかが手に取るようにわかる。
こぼれそうなほどの笑顔、嫌な物を見て眉根を寄せる表情、理不尽な出来事に怒る彼女。
その自由奔放な、内から自然とあふれ出る感情を素直に表現できる彼女を俺は愛おしいと思った。
馬鹿とか単純とかじゃない。
これが由比ヶ浜結衣なのだ。
彼女も彼女なりに楽しそうなので俺も自分の読書に戻る。
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気が付くと本の文字が見辛くなるほど日が沈んでいた。
集中して読書してると時間の流れを忘れる。
すっかり冷えてしまった紅茶を飲んで、電気を点けようかと立ち上がって所で座り直した。
俺のベッドで睡眠をとってやがる奴がいる。
電気を点けたら起こしてしまいそうだ。
いつから寝てたんだろうか。
彼女が開いているページを見るとそれほど進んではいなかった。
なら早々にリタイアした可能性が高い。
本によだれが垂れないように栞を挟んで回収する。
起こすべきか放っておくべきか少しの間戸惑う。
由比ヶ浜の寝顔を何の気なしに見てみるとその肌の白さに目を惹かれた。
薄く化粧はしているがそれだって元地を整える程度だ。
ファンデーションは多分使っていないだろう。
続いて気合を入れたのだろうマスカラ、すこし色づいたチークを見る。
女ってのは大変だな。
けど、これだって俺に見せるためにしてくれたと思えれば嬉しい。
俺は彼女に触れてみたいと思った。
寝ている隙にやるなんて卑怯者かもしれんが、誰も見てないんだし問題なし。
俺は彼女の髪に触れてみた。
ゴワゴワな俺の髪とは全く別質の手触りだった。
一房掴んでみてもスルスルと手の上を流れていく滑らかさ。
続いてほっぺを突いてみる。
別段太っていない彼女だが、もちもちとした触感だった。
髪も、頬も、手も、指も、足も、彼女は何から何まで俺とは違った。
同じ人間でありながら、男と女とでは全然違うらしい。
そんなことは知らなかった。
その事実に俺は少し怖くなった。
彼女の細さ、脆さゆえに壊してしまうのではないかと。
また、その事実がより一層彼女を愛おしく思わせた。
この人を守りたいと、柄にもないことを。
髪を撫でながらデコに「肉」か「ビッチ」か、はたまた全然違う文字か…何を書こうかと考えていると
由比ヶ浜が目を覚ました。
俺は慌てて手を引っ込める。けど瞬間移動までは出来ず顔の距離は至近距離。
「よ、よう」
なんで挨拶してんの?俺。
「………あれ?ヒッキー?」
「おう、皆さんご存知ヒッキーとは俺のことだ」
あ、駄目だ。全然テンパってる。
「………っ!!」
由比ヶ浜が目を見開いて俺と距離を置く。
「か、勘違いするな!疚しいことは何一つしてない!」
「へ?あ?そ、そういうことじゃなくて!」
「へ?」
「か、かお」
「顔?」
「…が近くにあったからびっくりしちゃって」
「あ、ああ。すまん」
「ね、寝顔…見た?」
「おう、ばっちり」
その言葉を聞いて由比ヶ浜の顔が真っ赤になる。
「う、う゛~~~恥ずかしいーー!!
よだれとか出てなかった!? 変な顔してなかった!?」
「ああ、よだれも大丈夫だったし寝顔もかわい…」
なにさらっと可愛いとか言おうとしてんの、俺。
どこのヤリ○ンだよ。
けど一度口に出した言葉はひっこめられない。
俺の言葉を聞いてますます由比ヶ浜は顔を真っ赤にする。
仕舞いにはベッドの掛け布団で顔を隠し始めた。
なにこれ、めちゃくちゃ可愛いんですけど。
「み、見てただけ?」
「へ?」
「寝顔見てただけ?」
俺は真実は言わんが嘘は吐かん。それが俺の譲れない信条だ。
「すまん、髪撫でたりほっぺた突いたりもした」
「…ほかには?」
「いや、そんだけだ」
マジックで落書きしようとしたのは思っただけで実行には移してないんだし嘘じゃない。
「…………すは?」
「へ?」
「……キス、とかは?」
鱚【きす】
スズキ目キス科の海水魚。沿岸の砂泥底にすむ。全長約30センチ。体は細長く、前方は筒形、後方は側扁する。背側は淡黄灰色で、腹側は白い。
俺は紫蘇を挟んだ握りが一番好きだ。後は天ぷら。
けど、いきなり魚の話をするわけはなくて。
「…そんなことしてねえよ」
「…ヒッキーは、したく…ないの?」
その言葉で俺の視線が彼女の口元に吸い寄せられる。
グロスを塗って妖しげに光る唇から目線を外せなくなる。
「…そういうのは段階踏んでくもんだろ。もっとデートして、手繋いだり、抱き締めあったり、色んなスッテプ踏んでか」
「あたしは…したいな、キス。ヒッキーと」
顔を伏せながらも素直な心情を吐露する彼女。
はあ………
もうダメ、ほんと俺ってダメダメ。こんなこと女の口から言わせるなんてマジでカス、ゴミ。
そんでもってもう駄目。もう我慢なんてできない。
俺だって彼女の唇を奪いたい。
俺はなんとか言葉にしようとしたが、喉に突っかかって上手く吐き出すことができない。
俺は一歩、由比ヶ浜の方へと近づく。
彼女は逃げない。
更にもう1歩。
まだ逃げない。
俺もベッドの上に乗り、彼女の目線に合わせる。
彼女は俯いたままだったが、数回深呼吸をして、そして顔を上げた。
彼女の目は閉じられていた。
もう俺の目には彼女の唇しか映らない。
もう俺の欲求は止まらない。
彼女を全て俺のものにしたい。
俺は戸惑いながら、焦りながら、踠きながら、彼女の唇に自分の唇を近づける。
そして
彼女と一つになった。
刹那と言うには長く、永遠とは到底言えない短いキスをして、俺は由比ヶ浜からそっと離れる。
なんだこれ。
口だぞ。
食べ物を流し込む入り口であり、言葉を発するための器官だぞ。
その器官と器官をくっつけるのなんて意味不明だ。
口にはそんな機能、予定にはないはずだろ。
こんなにも無意味で、無力で、無価値なことなのに
なのに俺はすごく今満たされている。
「…ヒッキー、泣いてるの?」
そう言う彼女は滴を瞳から零していた。
俺は自分の頬に手を当てる。
確かに涙にぬれていた。
ああ、泣いている。
俺は今確かに泣いている。嬉しくて。
俺は今誰かに、由比ヶ浜に必要とされていることを実感した。
その事実が、彼女の気持ちが、俺を認めてくれた。
ここにいてもいいんだと、このままでもいいのだと。
今まで満たされなかった、満たそうともしなかった感情が溢れかえってくる。
ああ、そうだ。俺は自分のことが大嫌いだったんだ。
だからあんな自己犠牲染みたことを繰り返していたんだ。
だから他人にも興味を示さなかったんだ。
それを彼女が教えてくれた、分からせてくれた。
それと同時に、俺が必要だと言うことも。
その事実が、俺の胸に温かなものを与えてくれた。
もう駄目だ。
この温かさは手放せない。
こんな優しさを知ったのなら、もう一人になんて戻れない。
失うことの怖さに恐れながら、癒してくれる温かさを望みながら、俺は再度彼女に口づけをする。
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今日も今日とて学校での激務を終える。
月曜の学校ってすげえ疲れる。
ポキポキ鳴らない肩を回しながら部室へと向かう。
扉を開けて部屋の主に挨拶。
「よう」
「ええ」
今日は罵詈雑言が飛んでこなかっただけマシだな。
いや、ってか挨拶に対して「ええ」っておかしくね?
なんで肯定なんだよ。返せよ、受け流すな。
まあ俺と雪ノ下の関係もよく分からんからな。
一番適確な表現となれば「部長と部員」でしかない。
なら俺の「よう」の挨拶の方が間違ってることになる。
それを責めずに受け流して下さる雪ノ下さんってまじ天使。
よし、脳内会話も空しくなってきたし、今日も今日とて読書に励むか。
どうせ相談者なんか来ないんだし。
部長と部員が二人っきりの部屋で、二人とも読書をする。
やっぱり奉仕部じゃねえよ、ここ。
なんで基本待ちの姿勢なんだよ。求められて助けるのは奉仕なのか?ただのスケット団じゃん。
俺がボッスンで雪ノ下はスイッチだな、などと考えていたらヒメコもやって来た。
「やっはろ~」
「ええ、こんにちは。由比ヶ浜さん」
ああ、俺以外にはちゃんと挨拶するんだ、スイッチ。
雪ノ下が紅茶を用意している間、由比ヶ浜が鞄から本を1冊取り出す。
それを見て雪ノ下が驚愕する。
「由比ヶ浜さん、あなた今日は早く帰りなさい」
「え?え?なんで!?なんか怒らせるようなことあたししちゃった!?」
「いいえ、怒ってなんていないわ。ただあなたのことが心配なの」
「え?なんであたし心配されてるの?あたし元気だけど?」
「ええ、そうね。人って自分が一番分からないのかも知れないわね。だから由比ヶ浜さん、お願いだから私の言うことを聞いてちょうだい」
「もうゆきのん!話聞いてよ!あたし元気なの!」
「ならなぜ本なんて取り出したのかしら……
ごめんなさい、早合点してしまったようね」
「ふぅ。分かってくれたんならべつにいいよ」
「その厚さなら十分始末できるわね」
おい、なんで俺を見るだよ。
「ちーがーうー。読書するの」
「……由比ヶ浜さんが読書、ですって?」
「もう!ゆきのんってば失礼!あたしだって読書くらいするんだから!」
昨日まではポップティーンくらいだったけどな。
「それは何と言うのかしら…少し意外だわ」
「だってこの人の本おもしろいんだもん」
それは俺が勧めた作者の小説だった。
昨日貸してくれと言うから4冊渡した。
いま彼女が手に取っているのは昨日読んでいたのとは別の物。
なら昨日の本はもう読んだのかもな。
「私が知らない作者の作品ね。どう面白いのかしら」
「超ふつーのことを超ふつーに書いてるの!」
それは俺が抱いている印象を、由比ヶ浜なりに表現したものだった。
「それは…日記なのかしら」
「ううん、作り話だよ」
「そう。それは果たして娯楽として成立しているのかしら」
「うん、おもしろいよ!ゆきのんも読んでみればきっと分かるよ!」
「…そうね、私も今度機会があれば読んでみるわ」
「うん!」
今日も今日とて奉仕部唯一の空気清浄器は順調に稼働しております。
彼女の笑顔を見ていたら、俺まで釣られて笑いそうになる。
持前のポーカーフェイスで乗り切ったけど。
雪ノ下が淹れてくれた紅茶を3人で飲む。
今までとは違って、3人揃って読書をしながら。
いや、だからこれ奉仕部じゃねえよ。
けど楽しそうに読書してる由比ヶ浜を見ていると、そんなことはどうでもよくなった。
今まで読書なんてしてなかった彼女が、俺の好きな作者の本を読んでくれている。
それだけで心が温かくなる。
彼女が俺の好きな物に興味を持ってくれて、一緒に好きになろうとしてくれていることが嬉しい。
俺も彼女をもっと理解したい、もっと近づきたいと思い始めている。
なら俺も由比ヶ浜に倣ってポップティーンでも読みますかね、ギャルの生態を少しでも理解するためにも。
俺は無類の甘党だ。
ケーキとか和菓子や生クリームが好きだし、チョコだって大好きだし
あと自分にも甘いし
それに
由比ヶ浜との恋愛は、彼女が作ってくれたケーキのように甘い。
了
やっと終わった……
こんなグダグダでクオリティーが下がってく一方のssを見て下さった方がいれば本当に感謝です
最近ssを書き始めたばっかりだから色々試してたけど、やっぱり書き溜めなしは合わないですね
誤字脱字が激しいし展開に振り回される
と、言うわけで次はがっつり書き溜めてから投下したいと思います
また次のssで会えれば幸いです。
読んで下さった方、レス下さった方、本当にありがとうございました。
おつおつ!!
ガハマさん可愛い、まじおっぱい
次はゆきのんでオナシャス!!!!!!!!!
乙!
ゆいゆいマジ天使
次も期待して待ってます
このSSまとめへのコメント
…ただただ、単純にこんな話は好きだ。 面白い!!