カルテ1
TV「皆様こんにちわ、徹夫の部屋のお時間です」~♪
TV「今回のゲストは実力派女優として人気を博している梅原純子さんで
す!」
ピノコ「キャー!純子ちゃん!待ってたよのさー!」ドタバタ
ブラックジャック「ピノコ!部屋のなかで走るんじゃない!」
ピノコ「はーい」
TV「純子さんは去年の中旬から活動を初めてーーー」
ピノコ「はぁー、純子ちゃんかわゆいのよさ……でもこの子ちゅごいくろー
にんでおうちがびんぼーだかや大変だったのよねー」
ブラックジャック「その子より頑張ってる人間なんてごまんといるさ。たまたま
芸能人にそういう美味しい過去があるからネタにしてるだけだ」
ピノコ「アッチョンブリケ!ちぇんちぇーはひねくれもよなんやから!だ
まってなちゃい!」
ブラックジャック「やれやれ……」フゥ
ジリリリン!!ジリリリン!!
ブラックジャック「もしもし」
ブラックジャック「確かに、私がブラックジャックだ」
ブラックジャック「……」
ブラックジャック「すぐそちらに向かわせてもらおう」ガチャン
ブラックジャック「ピノコ、少し出るぞ。いい子で留守番しててくれ」
ピノコ「どこゆくのよさ?」
ブラックジャック「なぁに、チョイとした仕事でな」バタンッ
ーーー芸能プロダクション 虫プロ
マネージャー「お待ちしていました、ブラックジャックさん」
ブラックジャック「ああ」
マネージャー「純子ちゃん、ブラックジャック先生が来てくれたわよ!」
純子「……どうも、お久しぶりです、ブラックジャック先生」
ブラックジャック「クク……あなたも今や時の人。TVで見ない日はありません
な」
ブラックジャック「どうです?体調は?」
純子「はい、特に問題はありません」
ブラックジャック「そりゃあそうさ、なんたって私が整形してやったんだ。」
ブラックジャック「傷痕ひとつとして残ってもないし後遺症なんてもっての他
だ」
マネージャー「あの、ブラックジャック先生……あまりそのことは……」
ブラックジャック「フフ……いや、失敬」
ブラックジャック「それで、今回はどういった御用件で?」
マネージャー「はい、実は彼女、梅原純子のことなんです」
純子「……」
マネージャー「彼女の実家が貧乏だって話は知ってますでしょう?」
ブラックジャック「ま、あれだけ特番やらなんやらで言われていれば知らない人
間なんて赤ん坊くらいでしょうな」
マネージャー「はい、それで困ったことがありまして……実はこの子の親が、こ
の子に芸能界をやめさせると言い出しまして……」
ブラックジャック「ほう、そりゃまたなんで」
純子「……あの人、私を拘束していたいのよ」
純子「ずっとそうだったわ、子どもの頃から……あの人は私が自分の手元
にいないと満足しないのよ……」
マネージャー「……と、こういうわけなんですの」
ブラックジャック「……それで?私にどうしろと言うんですかね」
ブラックジャック「母親の説得ですか?バカいっちゃいけない、私は医者でお悩
み相談室じゃないんだ」
マネージャー「いえ、その……この子と同じ顔の子を作ってほしいの」
ブラックジャック「……はい?」
ブラックジャック「前にもこんなことがありませんでしたかねぇ?」
マネージャー「こんなことは…先生ほどのかたでなければ不可能ですわ」
マネージャー「彼女の母親との話し合いがあったんですの」
マネージャー「こちらとしても彼女にやめてもらっては多大な穴を開けてしま
うことになりますの」
マネージャー「そしたら彼女の母親はある条件を出してきまして」
ブラックジャック「ある条件……?」
マネージャー「このまま芸能活動をするのは百歩譲って構わない」
マネージャー「そのかわり週に三日は実家に居てくれ、と」
ブラックジャック「……」
マネージャー「でもいまの彼女のスケジュールじゃとてもとても無理なのです
わ」
ブラックジャック「……」
マネージャー「そこで私共も考えました」
マネージャー「この子の影武者を作ってその子に帰らせようと」
ブラックジャック「……バカバカしい!」ダンッ
二人「「!」」ビクッ
ブラックジャック「私はね、健康な人間の体にメスを入れるって行為をするとム
カムカしてきやがるんだ!」
ブラックジャック「アンタの整形のときもだ!」
ブラックジャック「しかも今度は影武者を作る?」
ブラックジャック「そんなアホらしいことに付き合ってなんていられやせん
ぜ!」
ブラックジャック「この話は無かったことにしてもらう!」
マネージャー「ぶ、ブラックジャック先生!」
純子「ま、待ってくださいブラックジャック先生!」
純子「ここに三億円あります!私が稼いだ全財産です!」
純子「おねがいします!私!この仕事を続けたいの!」
ブラックジャック「……」
ブラックジャック「……三日後だ」
純子「!」
ブラックジャック「三日後に手術を行う。三日後に私の診療所に来てもらおう」
スタスタ
純子「あ、ありがとうございます!!」
ブラックジャック「……」スタスタ…
ーーーブラックジャック邸
ブラックジャック「……」
ブラックジャック「……」ダンッ!
ブラックジャック「俺と言う奴は……本当にどうしようもないゴウツクだ……」
ピノコ「ちぇんちぇーどうちたの?帰ってきちぇからずっとしょうやってる
のよさ」
ブラックジャック「……なんでもないさ」ギィッ
ジリリリン!!ジリリリン!! ガチャッ
ブラックジャック「……もしもし」
手塚医師『やぁ、ブラックジャック、僕だ』
ブラックジャック「なんだ、手塚君じゃあないか」
手塚医師『いやぁちょっと休暇をもらったから偶には君と呑もうかと思っ
て電話したんだが』
ブラックジャック「ム……」
ブラックジャック「……わかった、後ほど落ち合おう」
手塚医師『ああ!まってるよ!』ガチャン
ブラックジャック「ピノコ、私はもう一度出かけるがお前はどうする」
ピノコ「おゆすばんしてるー」
ブラックジャック「そうか、すまないな一日何度も」
ピノコ「そうおもゆならチョコレートかってきてほしーよのさ!」
ブラックジャック「やれやれ、足元見てくるねぇ……」
ーーー居酒屋 korehahidoikao
ブラックジャック「……」グビッ
手塚医師「今日はよく飲むじゃないか」
ブラックジャック「……俺はガメツイか、手塚君」
手塚医師「……どうしたんだい急に」
ブラックジャック「率直に聞かせてくれ」
手塚医師「……ま、そうだな、僕は君のことを世界一ガメツイ医者だと言っても過言じゃないと思ってる」
ブラックジャック「……」グビッ
手塚医師「だけど僕は君のような者がいてもいいとも思ってる」
手塚医師「圧倒的技術に見合った手術料、世の中を見てみろよブラックジャッ
ク」
手塚医師「国宝の作ったたった一枚の皿が数千万、数億で取引されてる」
手塚医師「技術に見合った代金をもらう。そういうものじゃないかと思うんだよ」
ブラックジャック「……」グビグビ
手塚医師「それに、合法でしかできないこと、非合法でしかできないことがあるとおもわないか?」グビッ
ブラックジャック「……ふっ」
ブラックジャック「ありがとう、手塚君」グビッ
手塚医師「なんだい改まって、恥ずかしいぞ」グビグビ
ブラックジャック「君はいつも俺が悩んでるちょうどの時に遊びに誘うんだ」
ブラックジャック「エスパーか何かかね?」グビッ
手塚医師「ああ」
手塚医師「まぁそれはあれだよ、ご都合主義ってやつだよ」
ーーー
手塚「話が展開しないからとか言っちゃダメ。飯のくいあげですヨォ」
ヘコヘコ
ーーー
ブラックジャック「こりゃあ酷い」
手塚医師「さて、そろそろおあいそするか」ギシッ
ブラックジャック「技術に見合った代金……か……」
ブラックジャック「だが本当にそれだけでいいのか……」
ブラックジャック「……」
ブラックジャック「……私は私にできることをするしかない……」ザッ
ブラックジャック「……」ザッザッザッ…
ーーー翌日 とある片田舎
女「よいしょ、よいしょ……」
女「ふぃー」ドスン
女「たけし!よしえ!この荷物運んでちょうだい!」
たけし「かーちゃんかーちゃん、お客さんだよ!」ドタバタ
女「え?だれだい?」
たけし「んー、なんか黒いコート来てるつぎはぎのひと」
女「??……どなたかしら……」
よしえ「なんか、ぶらくじゃっくーとか言ってたよ?」
女「ブラックジャック……!」
ブラックジャック「すいませんね、今日は突然」
女「いえ、こちらもおかまいできませんで」
ブラックジャック「お名前を伺っても……?」
トミ子「トミ子、といいます、梅原純子の母です」
ブラックジャック「どうも、私は純子さんの整形手術をしたブラックジャックというものです」
トミ子「はい、存じております。その度はうちのバカ娘がお世話に……」フカブカ
ブラックジャック「その純子さんのことで、少し聞きたいことがありまして」
ブラックジャック「なんでも、あの子が芸能活動することに反対だとか」
トミ子「……ええ」
ーーーーーー
ーーー
ー
ブラックジャック「今日は失礼しました、おかげでいい話も聞けた」
トミ子「あの、先生」
トミ子「あの子のこと、宜しくお願いします……」
ブラックジャック「……」
トミ子「また、あの子になにか手術を依頼されたんでしょう?」
トミ子「……宜しくお願いします」ペコッ
ブラックジャック「……ええ、決して後悔のないようにさせてもらいます」
ーーー2日後 ブラックジャック邸
ブラックジャック「……きたか」
純子「……」
ピノコ「きゃ!きゃー!純子ちゃん!?なんで純子ちゃんがいるのよさ!?
ギェー!」バタバタ
ブラックジャック「ピノコ!静かにしろ!」
ピノコ「アッチョンブリケ!」
マネージャー「武者子ちゃん、来て頂戴」
武者子「はい」サッ
マネージャー「この子は鹿毛 武者子と言いますの、声から背格好まで純子にそっくり、この子の顔を純子にしていただければ問題ないですわ」
ブラックジャック「……」
マネージャー「それでは、私は少し済ませて来なければいけない仕事がありますのでまた後ほど」スタスタ…
ブラックジャック「……」チラッ
ブラックジャック「行ったな……」
ブラックジャック「よし、アンタ達二人はさっさと手術の準備をしてもらおう」
ピノコ「はいはーい!シュジュチュ台にねるよのさ!」
武者子「はい、わかりました」
純子「……?私も、ですか?」
ブラックジャック「やるからには徹底的、が私の心情でね。完璧に似せるためにアンタ本人を見本にする」
純子「わかりました」
ブラックジャック「ピノコ!ちょっと来てくれ」
ピノコ「はいなのさ」
ブラックジャック「ーーーーーー」ヒソヒソ
ブラックジャック「ーーーーーー」ヒソヒソ
ブラックジャック「……わかったな?」
ピノコ「しーうーのあらまんちゅ!」
ブラックジャック「……それじゃあ先に純子さんから手術室に入ってくれ」
ブラックジャック「武者子さんはこっちの部屋だ、細かい計測がある」
武者子「はい」
ブラックジャック「さて、ピノコ。後は頼んだぞ」
ピノコ「うっしっし」
ブラックジャック「……えらく乗り気だな?」
ピノコ「ちょーっとしゃいきんたいくちゅしてたかや」
ブラックジャック「いいオモチャがきたって訳か」
ブラックジャック「あんまり派手にやるなよ?ピノコ」
ピノコ「らいじょーぶらいじょーぶ!」
キャー!ヒェー!グェー!オムカエデゴンス!プップスー!
ドタバタドタバタ!
純子「なにか騒がしくないですか?」
ブラックジャック「さぁて?なにぶん私の助手はガサツでね?」
ピノコ「ちぇんちぇ、あの女にげてぇったよのさ!」
ブラックジャック「大分騒がしかったが何したんだお前?」
ピノコ「カヤシといぐしゅりととうがやしソースをまぜたののませたのよ
さ!」
ブラックジャック「ギェー……想像しただけで吐きそうになるな……」ゲェー
純子「ちょ、ちょっとまってください!!」
純子「逃げてったって、どういうことですか!?」
ブラックジャック「……純子さんよ、わたしはね、最初から武者子さんをお前さんの影武者にするつもりなんぞ無かったのさ」
純子「!!」
ブラックジャック「お前さんは言ってたな?自分の母親は、自分を近くに置きたいから芸能界をやめさせたい、と」
純子「え、ええ!そうよ!あの人はいつもそうだった!」
純子「いつも私のことを拘束して!芸能界に入ることも最後までゴネていたんですもの!!」
ブラックジャック「……」
ブラックジャック「……これを聞いてもまだ同じことがいえますかね?」ガサッ
純子「それは……ボイスレコーダー……?」
ブラックジャック「……」ピッ
ボイスレコーダー『私も、嫌ではなかったんです』
純子「これは……母さんの声だわ……!」
ブラックジャック「まぁ黙って聞いておきなさいな」
純子「……」
『娘が頑張ってる、もちろん嬉しかったですよ』
『でも、あの子は芸能界に異常に憧れていました』
『それもこれも、あの子の父、私の夫が死んでからです』
『夫は、売れないスタントマンでした』
『娘に言ってたんです、「お前は女優になれる」って』
『撮影中の事故であの人が亡くなってからは、純子は取り憑かれたように芸能界を目指し始めました』
『踊りや、歌、そのほかのお稽古も休み無しでやり』
『風邪をひいて寝込んでも意地でそれをこなそうとして』
『無理な減量、食事を一食しか食べないなんてザラでした』
『私はそれを見るのが辛かった』
『果てにはあの子は芸能界に入るためと整形手術まで手を出して……』
『今ではテレビで見ない日はないくらいになりました』
『でも、辛いんです』
『毎日テレビで見る度痩せていく娘を見るのは』
『それで、あの子に芸能界をやめさせようと思ったんです……』
ピッ
ブラックジャック「……というわけだ」
純子「そ、そんな……」
ブラックジャック「お前さんの母親はお前さんのことをずっとしんぱいしてたんですぜ」
純子「嘘よ、こんなの……嘘……!」
純子「私は、ずっと……死んだ父を喜ばせるために……ずっと……!」
ブラックジャック「純子さん、私がこんなこと言うのもなんですがね」
ブラックジャック「生きてるたった一人の親も喜ばせてあげられない人間が、死んだ人間を喜ばせようなんて、勘違いも甚だしいと思いませんかね」
純子「わたし……私……そんな……!」
ピノコ「もう!うじうじするんじゃないのよさ!」バンッ!
純子「私、でも、もう……もう戻れないわ」
純子「この顔は、もう、私じゃないもの……!」
純子「……もう、戻れないの!」
ブラックジャック「あんたも察しの悪いお人だ」
純子「えっ」
ブラックジャック「あんたは今、手術台にいるんですぜ、これから何をするか馬鹿でもわかるはずだ」
純子「!」
ブラックジャック「手術代はキッカリ三億!」
ブラックジャック「どうするかね?」
ブラックジャック「私はね、羨ましいですよ」
純子「えっ」
ブラックジャック「お前さんには、ここまで心配してくれる親が居るんだ」
純子「……」
純子「……私、母と顔をあわせたいです……!ちゃんと、本当の私の顔で……!」
ブラックジャック「よし、ピノコ!オペだ!」バサッ!
ブラックジャック「まったく手のかかる患者だ」
カルテ1 終
カルテ2
―ここはとある民家―
母「ちょいとあんた!!」
息子「なんだよかーちゃん…俺はこれから会社なんだぜ…」
母「なんだよじゃないわよ!!あたしをだれだと思ってるのよ!!あんたの母親よ!!」
息子「わかってるよ…」
母「だいたいねぇあんたはーーー」
ーーーーーー
息子の妻「あなた…あなたのお母さんどうにかならないの!?いちいち掃除
すると塵をさがして因縁つけるのよ!?」
息子「あぁ、わかってるよ…、あれでもうかぁさんも65だ…。僕が35にもなって初めて結婚したからいろいろと煩くなってるだけだよ」
息子の妻「あたし気が狂いそうよ!!家事一つ一つにけちをつけられて!!」
息子「…僕もさ…。」
息子「まるであの人子ばなれできちゃいないんだ…、いつまでも僕を小さ
な子供のように接してくる…いやになるよ」
息子の妻「ねぇ…めんどうだし介護施設にあずけない!?」
息子「いや…、そんなことかぁさんが受け入れるわけがないよ…」
息子の妻「はぁ…」
母「ちょっとサエコ(息子の妻)さん!!なんなのこの掃除は!!こんなのが掃除
と言えるの!?」
サエコ「ほらまた!!」
息子「グゥ…」
ーーー息子の職場
部下「大田(息子)さん、この書類なんですがね。」
大田「ああ、それはここだ」
部下「この書類は!!」
部下「この書類は!!」
部下「この書類は!!」
大田「これはここ、ここはこれ、これはどこ、ここもどこ!!わたしはだれ!!」
部下「あなたは大田さんですよ」
大田「しってるよ!!ちったぁ自分で考えやがれ!!俺を聖徳太子にする気か!!」
部下「はいはい。」
大田「(くっ…、家では嫁や母、会社じゃ部下に馬鹿にされて…心休まる場所がねーよ!!)」
ーーー息子宅
母「やれやれ…、サエコさん、あたしゃちょっと買い物に行くからね…そ
のうちに掃除やり直しておきなさい!!」
サエコ「は……はい……」フゥ…
母「それじゃあね」スタスタスタ…
サエコ「……いったわね……」
サエコ「あのひとがいると疲れるわ……はぁ……」
ーーー電車
母「今日は何にしようかね…」ガタンゴトン…
母「あの嫁さんじゃ料理は下手だからねぇ…」ガタンゴトン…
ブラックジャック「……席、どうぞ」
母「ありゃ、すまないねぇ若い人」
ブラックジャック「いえ……」
母「んま、すごい傷ね、どうしたのよ」
ブラックジャック「……」
母「……わけありかい?」
ブラックジャック「…そういうわけではないんですがねぇ」
母「はは、冗談よ」
ブラックジャック「そうですか、笑ったほうがいいですかい?」
母「いんや、やだったら笑うのはやめておくれ」
ブラックジャック「フフ、愉快なお方だ」
母「わたしゃこれから買い物なんだがそちらさんは?」
ブラックジャック「車がエンストしちまいましてね…家に向かっているんですよ」
母「あら、大変ねぇ。お仕事のかえり?」
ブラックジャック「まぁそうなりますかねぇ」
母「お仕事は何をなさっているんでしょ」
ブラックジャック「医者を……ね」
母「医者、まぁすごいんですね…息子に見習わせたいわ」
ブラックジャック「…息子さんがおいでで?」
母「ええ、課長になってからは停滞してる会社員よ。最近嫁さんもらって
来たんだけどこの嫁さんが家事のひとつも満足にできないこでね」
ブラックジャック「ほー」
ーーー
母「わるかったね、ずっと話こんで」
ブラックジャック「いえ」
母「あんたはここで乗り換えかね?」
ブラックジャック「はい、遠いのでね」
母「あたしは買い物よ、それじゃまた縁があれば」
ブラックジャック「ええ。」スタスタスタ…
母「……夏なのにコートで暑くないのかしら…」
母「ま、ひとそれぞれよね。さて、買い物買い物っと…」スタスタスタ…
ーーー
作業員「オーライオーライ!!落とすなよー!!」
作業員2「あっ!!」ガタッ!!
作業員「ば、バカヤロー!」
ワーワーギャーギャー!
ブラックジャック「……む、やけに表通が騒がしいな…」
通行人「なんの騒ぎだこりゃあ!!」
通行人2「なんか表通りで人が鉄骨の下敷きになったらしいぞ…」
通行人「ヒエー、こええな!」
ブラックジャック「……お前さんたち、その人の姿…わかるかね」
通行人2「紫の服きた60くらいの女だとよ!」
ブラックジャック「…………妙な胸騒ぎがしやがるぜ、…胸騒ぎってのは大体あたるんだ」
作業員「大丈夫ですか!!大丈夫ですか!!」
作業員2「ヒェー!!えらいことをしちまった!!」
ブラックジャック「ちょっと失礼しますぜ」
作業員「ちょっと、こまるよ!!」
ブラックジャック「わたしは医者だ。傷口をみさせてもらうよ」
作業員2「お、お医者さま!!どうですか!?」
ブラックジャック「……これは…、幸い鉄骨は頭にゃぶつかってないがそのかわ
り足に落ちたんだ」
ブラックジャック「みろ、足が膝から下が見事にぐちゃぐちゃにつぶれてやがる…」
作業員「うぷっ!!」
ブラックジャック「しかも足を取られて転んだ時に頭を強くぶつけたらしい……
おそらく脳内出血を起こし昏倒状態にある……!」
ブラックジャック「ここの近くの病院は!!」
作業員「と、通りの向かいに勿欲病院があります!!」
ブラックジャック「すぐに手配しろ!!この患者は一刻を争うぞ!!」
作業員「は、はい!!」
ピーポーピーポー…オムカエデゴンス!
ーーー勿欲病院
医者「すいません、ここにはもうベットの空きがなくて」
ブラックジャック「このクランケは一刻を争うんだ!」
医者「と、いっても…こんな小さな町病院にゃそんな手術できるような医
者はいないですよ…」
ブラックジャック「……わかった、ならばわたしがやろう…。手術室をかせ!」
医者「え、ええ!?」
ーーー
ブラックジャック「ーーー術式終わり!」
医者「ひ、ヒエー…本当にひとりでやりおったで……」
医者「流石に脚は切断するしかなかったようだが……あれだけの手術を1
時間足らずで……」
医者「あんた、うちで勤めないか?」
ブラックジャック「あいにく私は一人が好きでね。それに、無免許さ」
医者「」ゼック
ブラックジャック「このクランケはうちで預かりますよ。なんせ、ベッドがいっ
ぱいらしいのでね?」
大田「な、かぁさんが事故!?」
サエコ『え、なんでも鉄骨の下敷きになったらしくて…』
大田「そ、それで状態は!」
サエコ『なんとか助かったんですって……ブラックジャックってお医者さんのお
かげで』
大田「ほっ……」
サエコ『それでそのお医者さんのブラックジャックって人が来てくれって…』
大田「わかった、会社のかえりによるよ…」ガチャッ
ーーーブラックジャック邸
息子「すいません。ブラックジャック先生はおりますか?」ガチャッ
ピノコ「はーい、ちぇんちぇーおきゃくさんなのよさー」
ブラックジャック「あぁ、すぐいく」
大田「どうも、ブラックジャック先生ですか…?」
ブラックジャック「あなたが息子さんですかね?」
大田「はい。あの、母の容態は……」
ブラックジャック「……命は助かったよ、だが…」
母「……」
大田「かぁさん、無事で何よりだよ」
母「……」
大田「鉄骨の下敷きになってたと聞いたときは血の気がひいたよ!」ハハ…
母「…………すいませんが…どなたでしょうかね?」
大田「え!?」
ブラックジャック「……」
大田「先生!!これはどういうことですか!?」
ブラックジャック「……脳内出血によるショックで脳がやられたようでね…、痴
呆が出ちまったのさ……」
大田「な…!!」
ブラックジャック「……」
大田「……それで先生、手術代金は……」
ブラックジャック「……それはいらない。代金は事故を起こした建築会社に請求した」
大田「……」ホッ…
ブラックジャック「暫くはどこかの病院で入院させなさい」
息子「はい…ありがとうございました 」
ブラックジャック「……」
ーーー暫くして…とある病院の一室
母「……」
看護婦「はい大田さーん、お熱はかりますねー」
母「!!きゃあ!!なによあなた!!だれよ!!わたしにさわらないで!!」ジタバタ!!
看護婦「わ、おち、おちついてください!!」
母「へんたいー!!さわらないでー!!いやー!!」ジタバタ
看護婦「きゃー!!」
看護婦「あの部屋の大田さんには参ったわ……」イテテ…
看護婦2「あー、あの痴呆の!!」
看護婦3「あの家の人預けっぱなしで一度も来ないものねぇ」
看護婦2「ま、当然といえば当然よね。アレ…だもんねぇ」
看護婦「はー、イテテテ……」
ブラックジャック「……ピノコ、今日は何日だ?」
ピノコ「きょうは11がつ1にちなのよさ」
ブラックジャック「……三ヶ月か…」スクッ
ピノコ「ちぇんちぇーろこにいくの?」
ブラックジャック「回診さ」ガチャッバタン
キリコ出してくれ!
深夜速報の奴か
>>70
キリコはカルテ4に登場します
ブラックジャック「失礼、この病院に大田という患者が入院してると思うのだが…」
受付「突き当たりを右ですね」
ブラックジャック「どうも」
ーーー
母「……」
ブラックジャック「…どうも」
母「…!!文彦(息子)!!文彦じゃないか!!」
ブラックジャック「!?」
母「あんたそんな傷だらけになって!!なにしてたんだい!!」
ブラックジャック「ちょ、ちょいとまちなさいな!私はブラックジャックといって…!」
母「はいはいわかったからちゃんと消毒しなさい!」バシャッ
ブラックジャック「しょ、消毒液をかけてきやがった……むちゃくちゃしやがる……」ビショ
ブラックジャック(それからも、俺は1週間おきにその患者の見舞いにいった)
ブラックジャック(ただ成り行きで助けた患者だった)
ブラックジャック(しかし彼女は俺を実の息子と思い込み、愛情を向けてくる)
ブラックジャック(そんな彼女をみていると、どうしてもあの人を思い出してしまう)
ブラックジャック(……母さん……)
ブラックジャック(しかし、俺が見舞いに行っていた1ヶ月間)
ブラックジャック(一度も息子さんは現れなかった)
ブラックジャック(看護婦に聞くと、息子さんが来たのは入院の日だけだった)
>>71
深夜でのを見てくれた人ですか?ありがとうございます
大田「おや、ブラックジャック先生…わざわざ会社までなんの御用ですか?」
ブラックジャック「……もっと母親の様子を見にきたらどうですかね」
大田「……わたしも忙しいんですよ、サラリーマンはあなたたちが考える
より大変なんですから……」
ブラックジャック「そりゃわかりますがね、少しの時間くらいとれるでしょう」
大田「……正直ね、めんどくさいんですよ。あの人の見舞いなんて」
ブラックジャック「……」
大田「嫁にすぐケチをつけるし俺をいつまでも子供と思っているし…しか
も痴呆ですよ。実際いなくてせいせいしてますよ」
ブラックジャック「!!!!」ピシャッ!!
大田「!!」バキッ!!
大田「な、なにするんですか!!」
ブラックジャック「……あまりふざけたことを言いなさんな、あんた」
大田「な、な!?」
ブラックジャック「あんたは誰から産まれたと思っていやがるんだ!」
大田「なんですかあんたは!!関係ないでしょう!」
ブラックジャック「ああ、たしかにそうさ、ですが言わせてもらおう。あんたは
あの人から生まれてきたんですぜ、あの人が血や肉を与えたからあんたは
今ここで生きているんだ!!」
大田「けっ!!偽善的なことばかり言いやがって!!」プルルル…
大田「電話か…」
大田「私だ。ああ……」
大田「なっ!?サエコが倒れた!?」
大田「わ、わかった!!すぐにむかう!」
ブラックジャック「……」
(ピシャッって何だろう)
ーーー
手塚医師「……残念ですが…この病は私の病院では対処できない……」
大田「そ…そんな……」
手塚医師「ただ、ただ一人、この病を治せる医者が居ます」
大田「……教えてください!!」
手塚医師「……その医者は……」
ーーー
>>84
(殴った音です)
ーーーブラックジャック邸
ブラックジャック「……」
大田「……先生、サエコを……サエコを助けてください。ここに…三千万
用意しました!」
ブラックジャック「……ふ…」
大田「!」
ブラックジャック「フフ…フフフフ…ハハハハ…ハハハハ!!」
大田「せ…先生?」
ブラックジャック「ハハハハハハハ!!!」
ブラックジャック「……ふざけるな」バサッ!!
大田「あぁ!金が!!」
ブラックジャック「ピノコ……この札束に火をつけて庭で燃やせ!!」
ピノコ「ほ……ほんとにすゆの!?」
ブラックジャック「はやく燃やしてこい!!」
大田「な!?」
ブラックジャック「…たしかにこの病。私しか治せないと自負している……」
ブラックジャック「だが……あんたなんぞにはいくら金を積まれたとしても手術
を受ける気はないね」バンッ!!
大田「せ…先生…!」ドタッ
ブラックジャック「……土下座なんてみっともない真似はやめなさい」
大田「お願いします!!サエコを!!サエコを!!」
ブラックジャック「フフ……クク…ハハハハハハ!」
大田「おねがいします……おねがいします……うぅ……」グスグス
ブラックジャック「……ならば、私が出す条件をのむのならば手術をしよう……」
大田「ほ、本当ですか!」
ブラックジャック「ああ」
ブラックジャック「条件1『毎週母親の見舞いに行く』」
ブラックジャック「条件2『退院後施設に入れない』」
ブラックジャック「条件3『手術料は五千万』……さっき燃やさせたのも合わせ
てあと二千万」
大田「なっ……!」
ブラックジャック「…以上だ。…さぁ、どうする」
大田「……わ、わかりました!それでサエコが助かるなら!」
ブラックジャック「……ピノコ、仕事だ!車にのれ!」
ピノコ「えー!まだもやちてないよのさ!」
ブラックジャック「好都合だ、とにかく行くぞ」
ーーー1ヶ月後
ピノコ「ちぇんちぇー、おてがみ!」
ブラックジャック「ああ、かしてくれ」
ブラックジャック「……これは…太田さんからか……」ガサッ
『先生、いかがおすごしでしょうか』
『私も妻も、そして母も、今では元気にくらしています。』
『あの時先生が怒った意味、今の私ならわかります。』
『あの後、私は母の病室へ行きました。そして私は、母の愛を再確認しました。』
『いつもより寒かったあの日、母は病室に来た私を見て、少し心配そうでした。』
『寒いだろう、と、無理やりベッドに引きずり込まれ暫く一緒に寝ました。』
『その時思い出したのです、私がまだ小さかった頃、一緒に寝ていたことを』
『あの頃はまだ私より大きかった母は、今では私より小さくなっていまし
た。』
『肌を伝い来る母の温もりの中で、私は涙を流してしまいました。』
『そして私は気づいたのです、自分の過ちに』
『全ては先生のおかげです……ありがとうございました』ガサッ
ブラックジャック「……」
ピノコ「あれぇ?ちぇんちぇーなんやかうれしそうなのよさ?なにかいいこ
ちょれもかいてあったの?」
ブラックジャック「なに…なんでもないさ」フッ…
ブラックジャック「……クク」
ブラックジャック「母の愛の勝利ってやつかい……」
ブラックジャック「……」
TV『…老人ホームの数がーーー』
TV『ーーー介護の苦痛がーーー』
TV『…家庭のためにも介護施設はーーー』
ブラックジャック「だが……」
ブラックジャック「老いた者は、除け者にされ、疎まられる……」
ブラックジャック「……自分たちが老いた時、そうされたらどう思うんだろう
な?」
TV『ーーー国の資金はこういうことに使わなくてはーーー』
ブラックジャック「……嫌な世の中だ……」
カルテ2 終
カルテ3
男「ブラックジャックさん、いらっしゃいますか?ブラックジャックさん!」ドンドン
ブラックジャック「……何ですかねぇ朝っぱらから……うるさくてかなわん」ガチャッ
男「……ブラックジャック…いや、間 黒男さんですね?」
ブラックジャック「……なんだね」
男「貴方を無免許で医療行為を行なった罪で逮捕します」ガチャリ
ブラックジャック「……溝端さんたちか」
男「はい、そのとおりです。貴方が先月手術した溝端孝宏さんとその家族
から起訴されたんですよ貴方は」
ブラックジャック「クク……参ったね……」
ピノコ「ちぇんちぇー、あしゃっぱやからなにさわいでゆの……」ゴソゴソ
認知症の人を素人が見るのって相当大変だろ
ピノコ「って!ギャーーー!」
ピノコ「ちぇんちぇーになにしてゆのよさ!!」
ブラックジャック「ピノコ、大人しくしているんだ」
ブラックジャック「私は少し警察へ行かなければならなくなった」
ピノコ「でもちぇんちぇ…」
ブラックジャック「わかったな?いい子にしてるんだぞ」
男「…さぁ、いくぞ間黒男」
ブォォーン……
ピノコ「ちぇんちぇー……」ギィッ
>>99
訪問ヘルパーもある…とかじゃあ
ダメですかね?
ーーー取り調べ室
刑事「今まで何人手術した!」
ブラックジャック「さぁ?適当に書いておいて下さいな」
刑事「何人を手術の失敗で殺した!」
ブラックジャック「数えたこともありませんな」
刑事「しらばっくれるな!警察を舐めやがって!」バンッ
ブラックジャック「刑事さん…怒ってばかりいると、血圧が上がってポックリ
逝っちまいますぜ?」
刑事「ムッキーー!癪に障る野郎だ!」
ヒョウタンツギ「プープスッププープー!」
ブラックジャック「しかしそれよりも刑事さん、溝端さんのことだがね」
刑事「ああん?」
ブラックジャック「私が処方した薬をちゃんと病院側で投薬してるか聞いちゃくれませんか」
刑事「けっ!モグリの医者の言うことなんか聞いちゃないだろうね!」
ブラックジャック「それは困る。ちゃんと投薬しなければ…」
刑事「はいはい心配いらねぇよ!今頃あの青年は藪野病院に入れられて
る!今度はお前さんみたいなモグリのではなくキチンとした医者が見てん
だ!」
ブラックジャック「まってくれ、あの病の治療は特殊なんだ!一般には広まっ
て……」
刑事「答えることには答えねぇで質問に答えられると思うなよヤブ!お
い!コイツを部屋に連れてけ!」
ブラックジャック「ま、まて!」
ーーー
ブラックジャック「……これはまずいぞ……」
ブラックジャック「……」
ブラックジャック「……なにか…なにか手をうたねば……」
看守「おい、アンタに面会だぞ」
ーーー
ピノコ「ちぇんちぇー!」
ブラックジャック「ピノコ!」
ピノコ「もう!だかやあれだけメンキョちょっちょけばイイっていっちゃ
のに!」プンスカ!
ピノコ「こえ、さしいえ!」ドスン!
ブラックジャック「またこりゃたくさん持って来たな……」
ブラックジャック「……致し方ない……か」
ピノコ「?」
ブラックジャック「……ピノコ、少し頼み事があるんだ」コソコソ
ブラックジャック「ある薬を注射して貰いたい人がいる」
ピノコ「ええっ!?」
ブラックジャック「バカ、声が大きいぞ…!」コソコソ
ピノコ「ご、ごめんなちゃい」コソコソ
ピノコ「れも、そのあるひちょって?」
ブラックジャック「…藪野病院にいる溝端孝宏…この間の患者だ」
ーーー
ーーー藪野病院
受付「あら?お嬢ちゃんどうしたの?」
ピノコ「あンね、ここににゅういんちてゆ『みぞばたたかひろ』ってひ
ちょのおみまい!」
受付「溝端さん、溝端さんはそこの角を左よ、大丈夫?」
ピノコ「ン」スタスタ
受付「あれは…妹さん、かしら?」
ピノコ「……」スタスタ…
ーーー昨日 留置所
ブラックジャック『いいか、よく聞くんだピノコ』
ブラックジャック『私の机の引き出しの下、患者のカルテの引き出しがある』
ブラックジャック『そこにもしもの時のために置いてある金がある、それで藪野
病院の近くのホテルに泊まるんだ』
ブラックジャック『薬品棚の二段目、ガラス戸の中にある[56番]の薬品を取るの
をわすれるな』
ブラックジャック『そして、今日から1週間。おそらくだがそれぐらいだろう』
ブラックジャック『この間こっそりと溝端孝宏さんに薬品を注射してくれ』
ブラックジャック『あの[体が異常に腫れる]病は手術後キチンと抗生剤をうた
ないと治らないんだ』
ブラックジャック『期間的にもあと1週間以内で治るはずだ、頼んだぞピノコ、
これがうまく行かなければもしかしたらここから出られないかもしれん』
ピノコ「ン、この部屋なのよさ」コソコソ
ピノコ「……あのひちょね…?」コソッ
孝宏「……」パラッパラッ
ピノコ「(まー、ノンキにほんなんちぇよんでゆ!)」
ピノコ「(さすがにいまどうどうちょはいけないのよさ…)」
ピノコ「(どうちよう……)」
看護婦「溝端さん、お食事ですよ」カタッ
孝宏「……」パタン
ピノコ「(!……いいことおもいついたのよさ!)」
看護婦「では」スタスタ…
孝宏「……」
ピノコ「ねぇねぇ、たべにくいでちょ?」ピョコッ
孝宏「!?」ビクッ
ピノコ「はえちぇちぇいたいんでちょ?」
孝宏「……君、気持ち悪くないのかい?……こんな…身体中赤く腫れ爛れ
てる奴……」
ピノコ「んー、なえてゆかや」カチャッ
ピノコ「はい、アーンちなちゃい!」
孝宏「う、うん…ありがとう……」モグモグ
孝宏「君はどこのだれなんだい……?」モグモグ
ピノコ「たべながやしゃべやないの!」
ーーー30分後
孝宏「グゥ…グゥ…」スヤスヤ
ピノコ「ンン、ちゅいみんやくをまぜてたべさせゆのならお手の物なのよ
さ」
ピノコ「これで、チューシャをちて……」ブスッ!!
孝宏「グッゥ!?」ビクッ!
ピノコ「あら、間違って違うとこよにさしちゃったよのさ、やりなおちや
りなおち」ズボッ
孝宏「ウムグッ!?」ビクッ!
ーーー翌日
ピノコ「またきたよのさ!」
孝宏「ああ、昨日の…」
ピノコ「ハァーイ、ごはんたべさせにきまちたよのさー」
孝宏「きみ…名前は?それにご両親とかは…」
ピノコ「れでぃにはひみちゅがあるもんなの、こまかいこちょきにすると
モテないわよ!はいアーン!」
孝宏「あ、あーん」モグモグ
ピノコ「ビョーキにイチバンきくのはキチンとちたおちょくじなのよ
さ!」
孝宏「た、確かにそうだけど…」モグモグ
ーーー 夕方
医者「溝端さん、検診に来ましたよ」ガラッ
医者「あれ、また寝ている…」
医者「しかし、この病は本当に打つ手がないな……」
医者「結局うちでも投薬も手術も原因がわからないからできないし」
医者「困った患者だよ、本当に……」
孝宏「……」
ーーーさらに翌日
ピノコ「はろー」
孝宏「…あ、また、来たのか」
ピノコ「すこちゲンキないじゃないどうちたのよ?」
孝宏「……僕の病はさ、打つ手が無いらしいんだ」
孝宏「まぁ、もともといろんな医者に匙を投げられてさ」
孝宏「最後にはブラックジャックって無免許で凄腕って言われてる人に手術して
もらったけど」
ピノコ「……」
孝宏「結局見てのとおりだよ、治らなかった」
孝宏「ってごめん、こんなこと君にする話じゃなかった、ごめん」
ピノコ「いいのよさ、それよりもはい、アーン」
孝宏「う、うん」モグモグ
できればアレの事はオフレコでおねがいします。カルテ5の話も本筋はおもいついてるのでちゃんとやりますよ
ーーー
医者「院長、少しいいですか」
院長「ん?なんだね」
医者「あの、溝端さんのことなんですけどね」
院長「あー、あのブラックジャックに騙された患者か、それがどうした」
医者「今日、定期検査としていろいろ調べたんですけど…」ガサッ
院長「これは……尿検査の結果か」
医者「はい、それでですね、尿から睡眠導入剤の成分が検出されまして…」
院長「なんだと?しかもこの睡眠導入剤……医療用の専門の薬じゃない
か」
医者「とてもじゃないですけど一般人が手に入れられるものではないですよ」
院長「ウーム」
ーーー
ーーー翌日
ピノコ「よちよち、きょうもちゃんとねてるよのさ」
ピノコ「おちゅーしゃちまちゅねー」サッ
院長「……そういうことだったか」
ピノコ「!!…あんただれよのさ!」
院長「お前、ブラックジャックの回し者だな?」
院長「聞いたことがあるぞ、ヤツが妙な女のガキを連れてるってな」ニヤリ
ピノコ「あんただれなのよ!ちかぢゅかないで!」
院長「私か?私はこの藪野病院の院長をしている藪野孝蔵というんだ。私
はあのブラックジャックってヤツが嫌いでね」
院長「お前はブラックジャックの刑期を長くするための材料だ!捕まえさせても
らうぞ!!」ガバッ!!
ピノコ「きゃー!はなちてぇ!!」ジタバタ!!
院長「おとなしくしろっ!」
ピノコ「いやー!はなちてー!」ジタバタジタバタ
ピノコ「がぶっ!!」ガブッ!!
院長「ギャーいてぇ!指を思い切り噛みやがった!」
ピノコ「い、今のうちに逃げるよのさ!!」ダダッ!!
院長「だれか!だれかー!そのガキを捕まえろ!」
ピノコ「キャーー!」ダダダダ!!
医者「こらっ!まて!」ガバッ!
ピノコ「ひゃっ!」ヒョイッ!
ワーワーキャーキャー!!オムカエデゴンス!!ジタバタドタバタ!!
ピノコ「ンモー!しちゅこいのよさ!!」タタタタッ!!
院長「まてー!」ダダダダ!!
看護婦「っ!!危ないっ!」
ピノコ「!!」ドカッ!ガシャーンッ!!
看護婦「きゃ、キャー!!」
院長「なっ……何事だ!?」
看護婦「そ、その子が走ってきてワゴンとぶつかって…!」
ピノコ「っ……!っ…!」ドクドク
院長「な、なんてこった……注射器が喉に…!」
刑事「おい、元気にしてるか?ブラックジャックさんよぉ?」
ブラックジャック「うるさいぞ、いま飯を食ってるんだ。雑談ならあとにしろ」モグモグ
刑事「ほう?そんなにうまいかそのレトルトカレーが?」ニヤッ
ブラックジャック「…ボンカレーはどうつくってもうまいのだ」モグモグ
刑事「ふっ、貴様のとこの子供が死にかけだってのにカレーにご執心か……」
ブラックジャック「!?…どういうことだ!ピノコに何があった!」ドンッ!!
刑事「どうやらそのガキ、藪野病院に侵入してアヤシイことをしてたらし
くてなぁ?」
刑事「それが見つかって逃げ出した先に看護婦がワゴンを押してたらし
い、ぶつかって喉に注射針が刺さって重症だと病院側から連絡がきたぞ」
ブラックジャック「なっ……!!」
ブラックジャック「今すぐ私をピノコの元に連れていけ!!あの子の手術は私に
しかできないんだ!!」
刑事「おいおい、そんな言葉鵜呑みにして『はいそうですか』と言われる
とでも思ってるのか?ハハッ!」
ブラックジャック「手術だ!ピノコを手術する間だけでいい!」ドンッ!!
ブラックジャック「それともなんだ!?お前さんはピノコに死ねと言うのか!?」
刑事「む……」
ブラックジャック「そんな事したらお前さんも罪人ですぜ!!」
刑事「ちっ…わかった、手術の間だけだぞ!」
ーーー藪野病院
院長「!!…ブラックジャック!」
ブラックジャック「どけ!あの子は…ピノコはどこにいる!」
院長「に、西棟の緊急手術室だ……それよりもブラックジャック、あの子は何な
んだ!体表のほとんどが人工じゃないか…!」
ブラックジャック「…あの子はもともと畸形嚢腫だった、それを私が組み立てて
人間にしてやったのさ」
院長「に、にわかには信じられん!そんなの、漫画じゃないんだぞ!」
ブラックジャック「元ネタは漫画だよバカ!今そんなこと言ってる暇はない!!」ダダッ!!
ーーー
刑事「よぉ、どうだったんだ、ブラックジャック」
ブラックジャック「…手術は無事終わったよ」
刑事「ふっ、そんじゃ約束通りテメェはブタ箱に戻るんだ!」
ブラックジャック「……」
看護婦「い、院長!!院長!!」タタッ!!
院長「どうしたんだ」
看護婦「それが、105号室の溝端さんの症状が改善されたんです!!」
院長「なんだと!?」
ブラックジャック「……クク…いやはや、神様ってのは実に慈悲深いようですな、
院長先生」
院長「な、なにを…!」
ブラックジャック「おたくのとこでは彼に何も処置をしてないんでしょう?」
院長「だ、だからどうした!」
ブラックジャック「つまり、これは『私の手術』がうまくいっていた、というこ
とですぜ?」
院長「なっ!!」
刑事「…ああ、わかった」パタン
刑事「今しがた電話で連絡が入った。溝端さんたちは貴様への起訴を取り
下げるらしい」
ブラックジャック「ククク…そりゃどうも」
ブラックジャック「と、いうわけだ。私はあの子と帰らせてもらおう」
院長「ま、まてっ!!あの子の怪我は私の責任だ!当院で面倒をみる!」
ブラックジャック「……ふざけないでもらいたいね。言っておくがこの子は私の
ものだ、アンタは私の患者だけでなくこの子もふんだくる気かい」
院長「……」
ブラックジャック「いいですね?刑事さん」
刑事「けっ、もう俺にはお前に対して何の権限も無い。かってにしろ!」
ブゥゥゥン…
ピノコ「ちぇ、んちぇー…」
ブラックジャック「ピノコ、目が覚めたのか」
ブラックジャック「喋るな、傷の場所が場所だぞ」
ピノコ「ちぇん、ちぇー、ゆるさえた、の…?」
ブラックジャック「ああ、お前のおかげだ、助かったぞピノコ」
ピノコ「おくたん、だかや…」
ブラックジャック「…まだうちまでかかるぞ、寝ていろ」
ブラックジャック「私の奥さんならはやく元気になるんだ、妻が患者なんて御免
だからな」
ピノコ「…うん」
カルテ3 終
次で最後になります!見てくれた方ありがとうございます!
カルテ4
???「あぁ、わかった。すぐに向かわせてもらおう」パタン
???「ククッ……金持ちが金にモノ言わせて死を買う……笑えるね、だ
からこそこの仕事はやめられない…」スタスタ
???「ヒッヒッヒッヒッ……」カツンカツン
???「(…なんだこの気味の悪い爺さんは)」スタスタ
???「ちょいと、そこの人。あんた医者かね?」
???「……」
???「それもただの医者じゃない、あんたからは死の匂いがする…ヒッヒッ」
???「なんだ爺さん、ボケてるのか」
???「ヒッヒッヒッヒッ…いや何、少し知り合いの医者と似たような匂
いがしたもんで…まぁ、そいつはあんたより死の匂いは薄かったがね…」
???「……」
???「おっと無駄口を叩きすぎてしまったようだ、ヒッヒッヒッヒッ…」
???「では、またあうこともあるでしょうな…ヒッヒッ…」カツンカツン…
???「……気持ちの悪い爺さんだ、二度と会いたくないぜ」スタスタ…
???「ヒッヒッヒッ……匂う、匂うぞ、病の匂いが……」スンスン
???「……この家か」ガラッ
男の子「ひっ!何だお前!」ガタッ!!
???「……ヒッヒッヒッ…」
赤ん坊「オギャーオギャー!」
???「この赤ん坊……胃腸が弱いようでらっしゃる……」キラッ
男の子「こ、こら!弟に何する気だ!」
???「なに、少しばかり針を刺してさしあげるだけよ……」バッ!
???「!!……とらえた!」ブスッ!!
???「ムッ……手応えあり…」
赤ん坊「……」スヤスヤ
男の子「な、泣きやんだ…一体なんで……」
???「なぁに、ちょいと腹を悪くしていただけだね。痛みをとめるツボ
を突いたのさ…ヒッヒッヒッ…」
???「ヒッヒッヒッ…そんじゃあっしはこれで…」カツンカツン…
男の子「あ、あんた名前は!」
琵琶丸「……針師…琵琶丸…とでも…ヒッヒッヒッ」カツンカツン
???「こいつを使えばじっくり一時間かけて眠るように死んでいける」
???「電極から流される電流でじわりじわり脳を侵していき組織を破壊
していく」
???「さて、約束の金は振り込んだな?」
男「ああ、きちんと五百万、……やってくれ」
???「……」ピーピーピー!!
男「ム……少し不思議な気分になってきたぞ……」
???「脳がじわじわ死んでいってるのさ、いい気分だろう?」ピーピーピー!!
男「……思えばこの5年、ずっとこの病に苦しめられてきた…」
男「……やっとこの苦しみから解放される……」
男「不治の病……どんな名医もさじを投げた…」
男「家族…妻にも息子にも迷惑をかけっぱなしで……」
???「……」
男「ありがとよ、先生。俺はやっとあいつらを解放できる」
???「なに、礼には及ばんさ……俺は仕事を遂行するだけだ」
男「死神……ね。いやはや俺にとっては天使に違いねぇけどな」
男「あとは一人にしてくれやドクター・キリコ先生よ」
ドクターキリコ「フフフ……一時間したら戻ってくる。まぁその頃アンタは意識は
ないだろうがな……」スタスタ…
ーーーブラックジャック邸
電話「ジリリリン!!ジリリリン!!」
スパイダー「オデンワでごんす」
ピノコ「ちぇんちぇー、おでんわ!」
ブラックジャック「いま手が話せないんだ、でてくれー」
ピノコ「しーゆーのあらまんちゅ!」ガチャッ
ピノコ「もちもち、どちらさまなのよさ?」
ピノコ「ちぇんちぇー!なんやかしんないけどちぇんちぇーにかわれって!」
ブラックジャック「やれやれ、要件を聞いてくれ」
ピノコ「はやくかわんなかったやこの家をバクハすゆとかいってゆ!」
ブラックジャック「こいつはたまげた……どこの過激派テロリストだ」カタン
ブラックジャック「ブラックジャックだ。お前さんは何者だね物騒な」
ブラックジャック「……」
ブラックジャック「わかった、すぐにむかう。」ガチャン
ブラックジャック「ピノコ、私は数日で外国に行くことになりそうだ。留守番た
のむぞ」
ピノコ「えー?どこいくの?ピノコもついてっちゃらめ?」
ブラックジャック「だめだ!今回のは危険すぎる!留守番してるんだ!いいな!」
ピノコ「あ、アッチョンブリケ」
ブラックジャック「戻るのは…1週間、いや、もっとかもしれない。まかしたぞ」バタンッ
ーーーとある豪邸
従者「……おまちしていました、ブラックジャック先生」
ブラックジャック「……こんなところで何をしている……ドクター・キリコ…!」
ドクターキリコ「ふ、ブラックジャック…また会ったな……?」
ブラックジャック「何をしているかと聞いている!」
ドクターキリコ「そうカッカするなよブラックジャック。俺はただお前が失敗した時の
尻拭いとして来たんだ」
ブラックジャック「尻拭いだと…?」
ドクターキリコ「依頼主がお前の手術で治らなかった時、俺がかわりにその場で
安楽死させてやるって手はずなのさ…クク…」
ブラックジャック「なら残念ながらお前さんの出番はないぜ!帰りな!」
ドクターキリコ「そうはいかない!俺も依頼を受けてここに来た以上最後まで見
届けさせてもらう!手付金も貰っちまったしな!」
ブラックジャック「クッ…!勝手にしろ!だが絶対にお前さんの出番はないぜ!」
琵琶丸「ヒッヒッヒッ……そう声を荒らげるものじゃないよお二人さん」カツン…カツン…
ブラックジャック「…!お前さんは、琵琶丸……!」
琵琶丸「この豪邸の持ち主はなかなかの情報通ってやつみたいだね。放浪
してるわたしのことまで調べあげたらしい」
ドクターキリコ「あんた、医者だったのか、とてもそうは見えないが……」
琵琶丸「わたしは琵琶丸。しがない針師だよ…ヒッヒッヒッ」
ブラックジャック「まさかアンタまで呼ばれていたなんて思いもしなかった」
琵琶丸「ヒッヒッヒッ…ま、これも運命というやつでしょうな…先生とは
縁があるようだ…」
ブラックジャック「しかしこの依頼主ーーー灯台(ランプ)さんはそうとう生に執着が
あるみたいだな、東洋医学にまで救いの手を求めるとは」
ブラックジャック「どうやら本当にお前さんには仕事はまわりそうにないぜ」
ドクターキリコ「ふん、だとしても俺は帰らないぜ」
従者「灯台様がおいでです」
灯台「君らが今日本にいる各医学ごとのトップレベルの腕を持つ者達と聞
いて私が集めたのはよくわかってると思う」
灯台「そして、私がおおやけに治療を受けられない理由もあなたがたはわ
かっておいでですな?」
ブラックジャック「ま、お互い表道を歩ける商売をしてませんからな」
灯台「そういう事だ。私が病気だと知れてしまえば私の命を狙おうとする
輩がいるのだ」
灯台「だからこそあなたがたを集めた、とも言える」
ドクターキリコ「フン、どうでもいいが俺が仕事をすることになろうとならまい
と金は払ってくれよ」
灯台「もちろんだ、きちんと金の用意はある」
ブラックジャック「それで、あなたの病気とはなんなのです」
ブラックジャック「病名がない……ですと?」
灯台「ああ、これまでも何人かの医者に見せたが病名は分からなかった」
灯台「どうやら私は新種の病にかかってしまったらしいのだ」
ブラックジャック「明確な症状は」
灯台「普段は何も問題はない、だがしかし一度発作が起きるとそりゃあひ
どいことになっちまう」
灯台「体はまるで何かにとりつかれたように動きやがるんだ」
ドクターキリコ「動く……?」
灯台「そう、急にバッと動く。手も足も何もかもがだ」
灯台「発作は大体1日に二、三度不定期に起きる。大体30分は続く」
灯台「とにかくコイツが起きると何も出来なくなるんだ、その間はずっと
ミミズが下手くそなダンス踊ってるみたいなんだぜ。とんだマヌケだ」
ブラックジャック「ジスキネジアなどではないのですか?」
灯台「前に見た医者も調べたよ。ジスキネジアからブトウ病?とかいうヤ
ツまでとにかくこの症状で判明している病を片っ端からな」
灯台「だが、やはりそのどれでもなかったようだぜ。すごすご白旗あげて
どっかに行っちまったよ」
ブラックジャック「……灯台さん、こいつは高くつきますぜ。なんせ判明してな
いのかもしれない病だ」
灯台「は、いくらだ」
ブラックジャック「そうですねぇ……しめて三億、これで手を打ちましょう」
灯台「さ、三億だと!?いくらなんでもふっかけすぎだ!」
ブラックジャック「あたりまえでしょうよ、なんせ1から考えなきゃならないんだ」
ブラックジャック「それに三億で命が助かるんだ、安すぎるくらいですよ」
灯台「ゥ…うむぅ……」
灯台「わかった、それで助かるなら三億だろうと五億だろうと払ってやる!」
ブラックジャック「フフ……いい判断ですな」
ドクターキリコ「相変わらず汚い商売の仕方だな、ブラックジャック」
ブラックジャック「お前さんには言われたくないね、死神め」
ドクターキリコ「クククク……お褒めの言葉ありがたく受け取っておくぜ」
ブラックジャック「……」
ブラックジャック「ところで、琵琶丸はどこに行ったんだ」
ドクターキリコ「……さぁな、気付いたら居なかったぜ」
従者「琵琶丸さまならあちらです」
琵琶丸「ヒッヒッヒッ……あんたは肝臓が弱いみたいだね……どれ、ひと針……」キラッ
男「は、はぁ、どうも」
ブラックジャック「……自由な爺さんだなまったく」
ーーー
ブラックジャック「フム……」
ブラックジャック「全くわからない……」
ブラックジャック「この病、もしかしたら本当に未発見の奇病なのかもしれないぞ……」
ブラックジャック「とにかく色々やってみるしかないな……」
ドクターキリコ「クク……いつでもギブアップなら受け取ってやるぜ」
ロロールル「ホーさよか」
ブラックジャック「ええいうるさいぞキリコ!今は私のターンだ!」
灯台「ウ、ウオオオー!!!だ、だれかー!」
ブラックジャック「なにごとだ!」
従者「発作が出ました!先生!!」
ーーー
灯台「ウオ!ウオオオー助けてくれぇー!」ドタンバタン!!
従者2「お、おちついてください灯台さ……ギェー!」バキッ
ブラックジャック「いつも、このように……?」
従者「はい……わたくし共が五人がかりで抑えてもかなわなくて」
灯台「ムオオオー!」ドタンバタン!!
従者「発作が収まるまでは誰も手がつけられないのです……」
ーーー
ブラックジャック「手足が勝手にうごく病は世界各国で報告されている……」
ブラックジャック「だが今回のはそのどれにも該当しない……」
ブラックジャック「たしか、似たようなものがA国で集団発生したという文献も
あるが」
ブラックジャック「これも詳しい原因は解明されていない……」
琵琶丸「ヒッヒッヒッ……詰まってるのかい、先生よ」
琵琶丸「ここは少しばかり協力しませんか」
ブラックジャック「協力だと?」
琵琶丸「実はね、あっしもよくわかってないんでさァ今回のこれは」
琵琶丸「いや、わかってない、は正しくない。正しくは【針だけではどう
にもならない予感】がする」
ブラックジャック「予感だと?」
琵琶丸「ヒッヒッヒッ……先生よ、わたしはねェ病の名前や詳しいことは
知らないんです」
琵琶丸「だがものが見えないかわりに鼻がいい、こいつで病とその症状を
大体とらえて針を打ってる」
ブラックジャック「そのお前さんの鼻が、そう予感させたと言うのか」
琵琶丸「この病は針だけではその表層を剥ぐことしかできない、根本から
たたっ切らねば治らない、とね」
ブラックジャック「……馬鹿馬鹿しい!お前さんの根拠もない理論に付き合って
られんね!」
琵琶丸「だが先生も打つ手がない、どうするおつもりで?」
ブラックジャック「……」
琵琶丸「なにも損のある話じゃあ無いはずだ」
ブラックジャック「……」
ブラックジャック「わかった、その話に乗ってやる……今回だけだ!」
琵琶丸「ヒッヒッヒッ……」
ブラックジャック「それで、俺はどうすればいい」
琵琶丸「まずあっしが針を打ちます、そしたらすぐに脳を開いてもらいたい」
ブラックジャック「脳、だと?だが脳は既に別の医者が調べたが腫瘍はおろか異
常は何もなかったとカルテには書いてあるぞ」
琵琶丸「さぁ、ですがやるにこしたことはないとおもうがね」
ブラックジャック「……とにかくやってみるしかない……か」
ーーー
灯台「頼むぞ先生方よ」
ブラックジャック「……麻酔です」
灯台「ウ……ムゥ……」ガクッ
ブラックジャック「……琵琶丸」
琵琶丸「ヒッヒッヒッ……」
琵琶丸「…………」
琵琶丸「!!……とらえた!」ブスッ!!
琵琶丸「……ムッ…!手応えあり……!」スッ
琵琶丸「先生」
ブラックジャック「よーしきた、さあ出てってくれ。こっからは私の領分だ」
ブラックジャック「オペを開始する!」
ブラックジャック「あいつの案に乗ったはいいが本当にこれで治るのか……」
ブラックジャック「とにかく俺はできることをするしかないか」サッ
ブラックジャック「よっと」ゴキッ
ブラックジャック「脳のお出ましだ」
ブラックジャック「……やはり異常はない」
ブラックジャック「……ム?」
ブラックジャック「!!……こいつは…!」
ーーー
ーーー2時間後
ブラックジャック「……手術はうまくいったよ」ガチャッ
ブラックジャック「キリコ、お前さんの出番はこなかったみたいだぜ」
ドクターキリコ「フン……!」
琵琶丸「で、原因はわかったんですかね」
ブラックジャック「ああ、原因はコイツだ」コトッ
ドクターキリコ「なんだこれは、糸……か?」
ブラックジャック「寄生虫だよ、それもとびっきり新種のな」
ドクターキリコ「寄生虫だと!?」
ブラックジャック「CTはおろかあらゆるものを使っても個体を確認することが
できない新種だ……ククク」
ドクターキリコ「……」
ブラックジャック「多分こいつには既存の化学薬品は一切効かないだろうね、こ
いつは科学の進歩で生まれた新種だ」
ブラックジャック「化学薬品に順応し進化した、言ってみれば殺虫剤に順応して
いくゴキブリと同じもんだと言える」
ブラックジャック「普段は脳の深くに隠れてるが、琵琶丸の針によって灯台さん
の体からたまらなくなって表出してきたんだ」
琵琶丸「ヒッヒッヒッ……薬を使わないあっしの針が相性が良かったってわけか」
ブラックジャック「そういうことだ、まぁそれでさえ一時的に苦しめることしか
出来ないようだがね」
ブラックジャック「さぁキリコ、お前さんはさっさと帰りな!」
ドクターキリコ「フン……まだ全部は終わってないぜ。最後まで見届けさせてもらう……」ニヤ…
ーーー
灯台「と、言うことは治るのかい?」
ブラックジャック「あとは術後経過をみるのみ、まぁ十中八九安心なさってくだ
さって結構」
灯台「クク、恩にきるぜ先生よ」
ブラックジャック「なぁに、私は三億がもらえればお安い御用さ」
灯台「フン、お互い金が好きなようだな」
ブラックジャック「……」
琵琶丸「ヒッヒッヒッ……」
ドクターキリコ「……」グビ
琵琶丸「おや?キリコ先生、酒かね」
ドクターキリコ「フン、目障りだぜじいさん。消えな」
琵琶丸「ヒッヒッヒッ……強がりはやめときなさいな」
ドクターキリコ「……ククク……」
ドクターキリコ「クク……ハーッハッハッハッ!」
ドクターキリコ「せいぜいお高く止まっていればいいさ、お前も、ブラックジャックもな」
琵琶丸「……どういうことで?」
ドクターキリコ「クク……そのうちわかるさ、必ずな……」グビ
SS深夜VIPで書いてた人?
ーーー五日後
ブラックジャック「フム……もう五日。めだった異常は見られない……」
ブラックジャック「これならもう今日で帰っても大丈夫だろう」
ブラックジャック「だいぶ家をあけちまった、ピノコに土産でも買って帰る
か……」
従者「先生、おやくそくの三億。全額こちらに」
ブラックジャック「ああ、確かに受け取った」
従者「本当に先生にはなんとお礼を言えば……」
ブラックジャック「なぁに、三億のためですよ……フフフ」
>>179
シーッ!オフレコでおねがいしますって!
従者2「先生!ブラックジャック先生ー!」ドタバタ
従者「どうした、騒がしいぞ」
従者2「あ、あのっ!灯台様が発作を起こしました!」
ブラックジャック「なんだと!?」
ブラックジャック「一体どういうことだ!」
従者2「そ、それが、急に先ほど発作が起きてなにがなにやら!」
ブラックジャック「とに灯台さんの所へ行く!案内しろ! 」
従者「は、ハイ!」
灯台「ム、ムオオー!どういうことだ先生!俺は治ったんじゃなかったのか!」ドタバタドタバタ!!
ドクターキリコ「クク……やはりな」
ブラックジャック「どういうことだキリコ!!」ガシッ
ドクターキリコ「おいおい、俺はなんにもしてないぜ。こいつはお前のミスだブ
ラックジャック……ククク」
ブラックジャック「くっ……!」
ドクターキリコ「寄生虫の卵が孵化したんだ……お前浮かれてたん
じゃないのか?俺の鼻をあかしたことでなぁ?ククククク!」
ドクターキリコ「そして浮かれてたことでお前はこんな初歩的ミスをおかしたのさ……クク
ク……ハーッハッハッハッ!!!!」
ブラックジャック「うるさい!!黙れキリコ!」
ドクターキリコ「ハーッハッハッハッハーッハッハッハッ!!!!!」
ブラックジャック「だとしても!もう一度手術すればいいんだ!」
ドクターキリコ「クク……何回やっても結果は変わらんよ」
ブラックジャック「琵琶丸を呼べ!!もう一度手術だ!!」
従者「は、はい!ただちに!」
ドクターキリコ「そうだ、もう一度だけ言っといてやるぜ」
ドクターキリコ「ギブアップなら、いつでも受け取ってやるぜ」
ブラックジャック「うるさいっ!!」
ーーー手術室
ブラックジャック「なぜだ……!なぜ寄生虫が出てこない!!」ドンッ
ブラックジャック「この前は出たじゃないか!!」
ブラックジャック「方法は間違ってないはずだ!」
ブラックジャック「なぜでない……!」
ブラックジャック「……まさか……もう、順応した、と言うのか……!?」
ブラックジャック「馬鹿な、早すぎる!!」
ーーー
ブラックジャック「くそ、どういうことだ……!」
琵琶丸「先生、多分その寄生虫が順応したというのもあるかもしれない
が、あっしの針のききが悪いのも原因でしょう」
琵琶丸「ツボは回数をこなせばききが悪くなる」
ブラックジャック「くそ……!!一度目でキチンと処置をしていれば……!」
ブラックジャック「俺としたことがなんてミスをしたんだブラックジャッ
クっ!!!!」
ブラックジャック「俺というやつは……!!」バンッ!
ドクターキリコ「ククク……俺の出番のようだな……!」
ブラックジャック「ま、まだだ!まだ何か手はあるはずだ!それまではお前の出番は!」
灯台「先生よ、もういいんだ」
ブラックジャック「!」
灯台「俺はな先生、生き方ってやつに美学を持ってやってんだ」
灯台「病床で弱って死んでいくなんて俺の美学に反するのさ、だからこそ
もしうまく行かなかった時の為にドクターキリコを呼んだ」
ブラックジャック「ま、まて!きっとなにか手がある筈なんだ!」
灯台「先生、心配しなくても三億はキチンと払うさ。あの世に金はいらねぇ」
灯台「無駄な足掻きってのが俺は一番嫌いでね」
ドクターキリコ「そういう訳だ。大人しく帰るんだな」
ブラックジャック「キリコ…ッ!お前感づいていたのにわざと言わなかったんだな!?」
ドクターキリコ「俺はただ依頼された仕事をこなしただけだぜ?……クククク!」
従者「先生、こちら先程の三億です」
ブラックジャック「こんなものいらん!!」バサッ!!
従者「うわっ!」ドスンッ
ーーー
琵琶丸「それじゃあ先生、あっしはこれで」
ブラックジャック「はやくいけっ!私は今誰ともいたくないんだ!」
琵琶丸「では、また縁があったらあいましょう……ヒッヒッヒッ……」カツンカツン…
ブラックジャック「……俺は……キリコに対する対抗意識にばかり気がいって……!」
ブラックジャック「くそ……医者失格だ……!」
ブラックジャック「くそったれめ!!!!」
カルテ4 終
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