咲「お姉ちゃん家に遊びに行く!」 (51)
咲「お姉ちゃん!」ヒョコッ
照「さ、咲!?」
咲「えへへ、会いたくなっちゃって白糸台まで来ちゃった」ガバッ
照「ちょっ……」サッ
咲「……避けちゃうなんて酷いよ」
照「あ……ご、ごめん」
咲「……酷い」
照「いやだってここ外だし……」
咲「……外だからダメなの?」
照「そういうわけでも……」
咲「じゃあどうしてなの?」
照「……恥ずかしい」
咲「私たち仲直りしたよね?」
照「……したけどそれとこれとは関係ないよ」
咲「……」
照「ところで、こんな急に来て何考えてるの?」
咲「そ、それはお姉ちゃんに会いたくなっちゃったから……」
照「こっちに来るんだったら連絡ぐらいしてよ」
咲「うっ……」
照「それにもう夕方だけど、宿泊場所のアテはあるの?」
咲「……お姉ちゃんの家」
照「……」
咲「ダメ……かな」
照「私がダメって言ったら他に場所ないんだよね」
咲「……うん」
照「もう、今日だけだよ?」
咲「ごめんなさい……」
照「とにかく、次からはちゃんと連絡してね?」
咲「……うん」
照「……」
照「なら、もうすぐ日も暮れるし一緒に家まで行こう?」
咲「う、うん!」
照「あ、その前に夕食の材料を買っていかないと」
咲「そ、そうだよね……急に来ちゃったもんね……」
照「すぐにしゅんとしないで」
咲「……ごめんなさい」
照「別に迷惑だなんて全然思ってないから」
照「むしろ私の家でちゃんと楽しんでいってほしいぐらいだよ」
咲「お姉ちゃんの家で楽しむ……?」
照「? さっきも言ったけど遊んだり一緒にご飯食べたりだよ」
咲「そ、そうだよね」
照「……他に何があるの?」
咲「……」
照「……」
咲「ほ、ほら! 早く行かないとスーパーが閉まっちゃうんじゃないの?」
照「……ごまかし方が下手クソ」
咲「あぅ……」
照「まあ急いだ方がいいことには変わりはないんだけどね」
咲「え、本当に早く閉まっちゃうの?」
照「咲と一緒にいる時間が減っちゃうからだよ」
咲「……そ、そっか///」
照「……」
咲「……///」
照「……手、繋いであげようか?」
咲「……いいの?」
照「私がしたいって言ってるんだからいいの」
咲「……えへへ」
咲「こうしてお姉ちゃんと一緒に歩くのって久しぶりだからちょっと緊張する……」
照「何で緊張するの……」
咲「んー……何となくかな?」
照「なにそれ、変なの」クスッ
咲「あ、お姉ちゃんが笑った!」
照「いやいや、私も人間なんだから笑ったりもするよ……」
咲「そうじゃなくて、今日は初めて笑ったよねっていうことだよ」
照「ああ、そういう……」
咲「ところでお姉ちゃんはあんなところで何してたの?」
照「ちょっと歩きたい気分だったから、特に何かをしてたっていうわけじゃないよ」
咲「……もしかして私が来るかもって思ってたりしたの?」
咲「この辺って駅から近いみたいだし」
照「どうだろうね」
咲「……そうだったら嬉しいかも」
照「でも、私がこの辺を歩いてて本当によかったよ」
照「咲1人のままなら絶対に私の家まで辿り着けなかっただろうし」
咲「お姉ちゃんの家までなら私1人でも行けたよ?」
照「……嘘」
咲「ちゃんと行けたから!」
照「さっきの道、私の家への道と逆方向だよ」
咲「……」
照「次からは本当に連絡してね? 心配だから」
咲「……はい」
咲「それでね、いつも麻雀部のみんなにお姉ちゃんはこんな人なんだよって話したりしてるんだけどイメージと全然違うとか色々言われて……」
照「いつもって……」
咲「お姉ちゃんのことをもっとわかってもらおうとしてもなかなか上手くいかないの」
照「別に私は咲だけに……」
咲「……?」
照「え、えっと……ここだよ、さっき言ってたスーパーは」
咲「えっ……そ、そうなんだ」
照「……」
咲「……」ソワソワ
照「どうかした?」
咲「な、何でもないよ!?」ビクッ
照「その反応は何かあるよね」
咲「……」
照「怒らないから言って?」
咲「……もう着いちゃったんだって少し思っちゃった」
照「別に手を繋ぎ続けることぐらいならいいよ」
咲「え、本当……?」
咲「でも、ちょっと悪いよ……」
照「そんなに悲しそうな顔をして言われても離せないよ」
咲「……」
照「ほら、行こう?」ギュッ
咲「……ありがとう、お姉ちゃん」ギュッ
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照「……確かに手を握ったのは私からだったけどね」
照「お会計の時ぐらいは離してほしかったかな」
咲「……えへへ」
照「照れるところじゃないよ」
照「片手で財布を扱わなきゃいけなかった私の身にもなって」
咲「そう言われても、1回繋いだお姉ちゃんの手を離したくないって思っちゃったんだもん」
照「……すぐそういうこと言う」ボソッ
咲「? 何か言った?」
照「何でもないよ」
照「それより、買った物を袋に詰めたいから家に帰るまでは手は繋げないよ」
咲「なんだかやけにお菓子が多いような……」
咲「って、今から離さないといけないのはわかるけど……何で家までなの?」
照「……それは気のせい」
照「買い物袋が2つあるからだよ」
咲「えー、私も持つよー!」
照「私だけで大丈夫だよ」
咲「でも……」
照「大丈夫だから」
咲「うーん……やっぱり私が1つ持つよ」
照「いいよ、私だけで持てる」
咲「もう、2つあるんだから1つぐらい持つってば」
照「だからいいって……」
咲「……」ウルウル
照「わ、わかったから! そんな目で私を見ないでよ……」スッ
咲「!」
照「でも咲の力で持てる?」
咲「いくらお姉ちゃんでもそれは酷いよ……私だってこれぐらい持てるんだから!」
照「……そっか」クスッ
咲「これでお姉ちゃんの片手は空いたよね?」
照「まさか私と手を繋ぎたかったから持ったの?」
咲「それだけじゃないよ、お姉ちゃん辛そうだったし」
照「……ありがとう」
咲「私もこれぐらいは手伝わなきゃね」
照「それで、本音は?」
咲「……聞いちゃう?」
照「ちゃんと言ってよ」
咲「……お姉ちゃんと手を繋いで歩きたかったから、だよ///」
照「……本当に、可愛いんだから」ボソッ
咲「? 何か言った?」
照「何も言ってないよ」
咲「……それ、今日2回目だよね」
照「」ギクッ
咲「お姉ちゃんもちゃんと言ってよー」
照「い、いや……本当に何もないから」
咲「……嘘ついてないよね?」
照「う、うん……」
咲「……」ジー
照「うっ……」
咲「……まあそういうことにしといてあげる」
照「……」ホッ
咲「……」
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照「ほら、着いたよ」
咲「……久しぶりに来たかも」
照「家にはつい先月来たばっかりでしょ」
咲「お姉ちゃんにとってはすぐでも、私にとってはすごく久しぶりなの!」
照「……」
咲「あ、そうだ、お母さんにも挨拶しないと……」
照「今日はいないよ」
咲「え?」
照「だから、今日は母さんはいないって」
咲「……そうなんだ」
照「うん、だから勝手にあがっていいよ」
咲「……」
咲「お、お邪魔します……」
照「適当に買い物袋置いといていいよ、私お風呂沸かしてくるから」
咲「う、うん」
照「?」
照「疲れたならその辺に座って休んでてもいいけど」
咲「……」
照「じゃあすぐ戻ってくるね」
咲「あっ……」
咲「……」
咲「お姉ちゃんは私と家に2人だけで何も思わないのかな……」
咲「私はこんなにドキドキしてるのに……」
照「沸かしてきたよ……って何してるの」
咲「えっ……ち、ちょっとボーッとしちゃってただけだよ?」
照「ずっと立ちっぱなしって……とりあえず座ったら?」
咲「……うん、そうする」
照「本当にゆっくりしてていいからね」
照「あとお風呂が沸いたら先に入って来ていいよ」
咲「……お姉ちゃんは後から入ってきてくれるの?」
照「私は今から晩御飯の準備があるからちょっと厳しいかな」
咲「そ、そっか……でも普通は一人で入らないとダメだよね」
照「……ごめん」
咲「いいよ、いつもは1人で入ってるから」
照「本当にごめんね」
咲「もう、気にしないでいいってばー」
咲「じゃあ入ってくるね!」
照「うん、いってらっしゃい?」
咲「えーっと……それはちょっと大袈裟すぎるかも」
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咲「……」キュッ
咲「……1人だしシャワーだけで済ませようと思ったけど、せっかく沸かしてくれたんだし入った方がいいよね」
咲「……」チャプ
咲「……ここのお風呂に1人で入るのって初めてかも」
咲「毎日お姉ちゃんが入ってるお風呂……」
咲「そう思うと余計にドキドキしちゃう」
咲「こっちに来た時はいつも一緒に入ってたのに……」
咲「……」
咲「もしかしたら、今日は一緒に入らなくてよかったのかも」
咲「今はいつもと同じように接することができそうにないし」
咲「……」
咲「……はぁ」
咲「今日は家に二人だけっていうのを聞いてからずっと心が落ち着かない……」
咲「でも、お姉ちゃんは全く気にしてないみたいだし」
咲「……いや、私が気にしすぎてるのかな」
咲「家族と二人っきりになってドキドキする、なんておかしいもんね……」
咲「どうしてなんだろう……」
咲「……ってわからないフリするのももう何回目なんだろう」
咲「本当は自分でも既にわかりきってるのに、お姉ちゃんのことが好きだから、なんて」
咲「もちろん家族としてではなく……」
咲「……」
咲「とにかく、お風呂に上がる前までに今のこの状態をなんとかしないと……」
咲「……」
咲「……」グスッ
咲「ダメ、かもしれない……」
照「咲、私もお風呂に入ってもいいかな?」
咲「えっ、お、お姉ちゃん!? お夕飯はどうしたの!?」
照「やっぱり咲と一緒にお風呂に入ってから作ろうかなと思って」
咲「そ、そっか……」
照「さっきはああ言っちゃったけど、せっかく来てもらったのに悪いからね」
照「咲は毎回楽しみにしてるみたいだし」
咲「ま、まぁそうだけど……」
照「それじゃあもう脱いじゃったから入るね」ガラッ
咲「ち、ちょっとお姉ちゃん!?」フイッ
照「……何で私に背を向けて入ってるの?」
咲「え、えっと……入口に背を向けて入るのがね……なんだかね、良いらしくて!」
照「へぇ、そうなんだ」
咲「……」ホッ
照「って言って信じると思う?」チャプ
咲「」ビクッ
照「バレバレだよ、それで本当は何?」
咲「……何もないよ?」
照「そんなわけない、咲は私の家に来てからどこかおかしい」
照「絶対に何かあるよね」
咲「……な、何もないよ?」
照「……お願いだから話してよ」ギュッ
咲「!? お、お姉ちゃん!? そんな後ろから……」
照「私が原因なら改善するし、そうじゃなくても相談にはのってあげられると思う」
咲「お姉ちゃん……」
照「……それとも私じゃ信用できないの?」
咲「そ、そんなこと……!」
照「じゃあ話してよ」
咲「……ひいたりしない?」
照「しないよ、絶対に」
咲「……なら言うね」
照「……」
咲「実は、ね……」
咲「今日はお母さんがいない、って言われてからなんだかお姉ちゃんのことを意識し初めちゃって……」
咲「……」
照「……続けて」
咲「それでね」
咲「率直に言うと、どうしてこうなってるのかは自分でもわからないんだ」
咲「でも、お姉ちゃんがそういうのを全く気にしてなさそうに見ていると……苦しかった」
咲「お姉ちゃんは私のことを家族と思ってるしそもそも意識するはずないよね、とも思ったけど」
咲「なぜかそう思うと胸が余計に痛くなっちゃうの」
照「咲……」
咲「……やっぱり気持ち悪いと思ったよね」
照「そんなことない」
咲「あるよ」
照「……」
咲「ここに来てからはお姉ちゃんの顔を直視できないし、ましてやお姉ちゃんの裸を見るなんてとても……」
咲「今、こうして抱きつかれてるのだって……」
照「……咲は私のことが好きなの?」
咲「……」
照「さっきの気づいてないって言ったのも嘘だよね」
咲「……ごめんなさい」
照「やっぱり」
咲「……うん、本当はずっと気づいてたよ」
咲「私がお姉ちゃんのことが好き……大好きだからって」
照「……私も好きだよ、咲」
咲「……違うよ、お姉ちゃん」
咲「それは私の好きと決して同じじゃない」
照「……」
咲「……あはは、なんだか暗くなっちゃってごめんなさい」
咲「せっかく色々してもらってるのにね」
照「咲……」
咲「……でも、これも今日で最後」
咲「こんなこと言っちゃったんだもん、もうお姉ちゃんの家になんて来ちゃダメだよね」
咲「お姉ちゃんに会うことも当然」
咲「……」
咲「もう逆上せちゃいそうだからこの手を離してほしいかな」
照「……離さないよ」
咲「……どうして?」
照「離したらもう咲と会えないんだよね?」
咲「……だって、もう私なんかと会いたくないでしょ」
照「誰がそんなこと言ったの?」
咲「で、でも……!」
照「ちょっと黙って」
咲「……」
照「……さっき、私も好きって言ったよね」
咲「だから、お姉ちゃんのは違う……」
照「いいから、少し私に話させて」
咲「……ごめん」
照「……」
照「……本当はね、私はこの気持ちをずっと胸の内にしまっておくつもりだったよ」
照「だって、咲が私のことをそういう風に好きだなんて夢にも思ったこともなかったから」
照「それなのに、咲はいつも私に期待させるようなことをさらっと言う」
咲「……」
照「すごく嬉しかったけど、その反面すぐに期待しちゃうような自分が嫌だった」
照「咲の好意は絶対に私のものと違うと思っていたから」
咲「お姉ちゃん……」
照「……家族としてじゃなく、咲が私のことを好きって言ってくれたときは本当に嬉しかったよ」
照「……私も咲のことを大切に思ってるから……もちろん家族としてじゃないよ」
咲「……それ、信じていいの?」
照「こんなタイミングで嘘なんて言わないよ」
咲「……私、これからもっとお姉ちゃんに我侭なこといっぱい言うかもしれないよ?」
照「私が全部受け止めてあげるから大丈夫だよ」
咲「……お姉ちゃんが他の人と話してるのを見ただけで嫉妬するかもしれないよ?」
照「それは咲だけじゃないよ、私もきっとしちゃう」
咲「……」
照「……」
咲「……しばらくこのままでいさせてもらってもいい?」
照「……うん、いいよ」
咲「……」
咲「お姉ちゃん、好き……」
照「……私もだよ、咲」
咲「えへへ……」
照「……」
咲「……」ガクッ
照「! さ、咲!?」
咲「……うぅ」
照「逆上せそうっていうのは本当だったんだ……」
照「と、とりあえず浴槽から出さないと……って重!?」
照「でも急がないと咲が……」
照「……」
照「……うん、仕方ないよね」
咲「ねぇ、お姉ちゃん……」
照「……うん、ごめん」
咲「……やっぱり見た?」
照「まあ、全裸だったし……」
咲「……!///」
照「でも今まで一緒にお風呂に入ったりしてたんだからこれぐらい……」
咲「私が意識があったか無かったかの違いは大きいよ!」
照「そんなこと言ったって……咲が逆上せてるって言ってたのが本当だったなんて思いもしなかったし」
咲「……」ムスッ
照「……咲もこのままでいさせてって言ってたよね」
咲「うっ……まあそうは言ったけど……」
照「だから、お互い様ということでこの話は終わりにしてほしい」
咲「……はーい」
咲「あ、そういえばお姉ちゃんはどうやって私を脱衣所まで運んだの?」
照「」ギクッ
咲「人間は気絶するとすごく重くなるって聞いたことあるけど……」
照「……内緒」
咲「それは恥ずかしいから?」
照「……うん」
咲「……なら私も聞かないでいいや」
照「……ありがとう」
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咲「あ、もうご飯できてたんだー」
照「うん、咲から離れるのは悪いと思ったけどあんまり遅くなるのもどうかなと思って」
咲「やっぱりカレーだったんだね」
照「まあ、定番みたいなもの?」
咲「そうだねー」
照「ありきたりとも言うんだけどね」
咲「もう、お姉ちゃんの作ってくれるものならなんでも嬉しいよー」
照「……ありがとう」
咲「いただきます!」
照「……」ソワソワ
咲「……おいしい!」
照「そ、そう……」ホッ
咲「……」モグモグ
照「……」
咲「あ、お姉ちゃんちょっといい?」
照「えっ……やっぱり美味しくなかった?」
咲「いや、そうじゃないよ……」
照「じゃあ何?」
咲「……さっきのお風呂場で言ってくれたこと、夢じゃないよね?」
照「……///」カァァ
咲「えへへ……お姉ちゃん、大好き」
照「!?///」
咲「照れてるお姉ちゃん、かわいいね」
照「……食事中にそういうこと言わないで」
咲「だって、つい言いたくなっちゃったんだもん」
照「……むぅ」
咲「お姉ちゃんも言ってくれてもいいんだよ?」
照「……面と向かってだと恥ずかしくて言えない」
咲「……じゃあ、真っ暗なところでだったらいいんだ」
照「ち、ちょっと咲!?///」
咲「冗談だよー」
照「……それは笑えないよ」
咲「あ、そういえば」
照「まだ何かあるの?」
咲「今日お姉ちゃんが小声で言ってた内容、ちゃんと聞かせて?」
照「……恥ずかしいから、嫌」
咲「へぇ、私には言わせておいて自分からは言わないんだ」
照「……」ダッ
咲「あっ、お姉ちゃん! ちょっと逃げないでよ!」
咲「家の中なんだから逃げても仕方ないよ……って聞こえてないかな」
咲「もう……お姉ちゃんのバカ、せっかくのカレーも冷めちゃうよ」
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