綾乃「バレンタイン」(109)

~生徒会室~

千歳「綾乃ちゃん、このままでええの?」

綾乃「…え?」

千歳「だから、このまま卒業してしまってええの?」

綾乃「…えと…何の話?」

千歳「またまた、とぼけちゃって~」クスクス

綾乃「ごめんなさい…全然見当もつかないわ…」

千歳「え…?ほんまに…?」

綾乃「ええ…」

綾乃「何かやり残したこと…あったかしら…?」

千歳「……」

綾乃「会長職は引き継ぎも終わってるし…」

綾乃「推薦入試の結果も合格だったし…」

綾乃「あ、もしかしてお世話になった先生にお礼とか…?」

綾乃「それとも…」

千歳「綾乃ちゃん」

綾乃「は、はい」

千歳「歳納さんに告白してないやろ?」

綾乃「……へ?」

千歳「だから、歳納さんに告白しないまま卒業してええの?」

綾乃「ええええええええええ!?」

千歳「高校は別々やから、告白しておかないと後悔すると思うで?」

綾乃「で、でも…変だと思われないかしら…」

綾乃「今まで散々邪険に扱っておいて…いきなり告白だなんて…」

千歳「綾乃ちゃんの好きになった歳納さんはそんな子やないやろ?」

綾乃「そ、そうだけど…」

千歳「幸いもうすぐバレンタインやし、チャンスやで!」

綾乃「バレンタイン…」

千歳「うんうん」

綾乃「チョコ…作ったことないのよね…」

千歳「ほな、一緒に作ろ?」

綾乃「う、うん…///」

~杉浦家~

千歳「ではこれより綾乃ちゃんのバレンタイン大作戦を開始します!」

綾乃「何その作戦名…」

千歳「うふふ、プロポーズ大作戦みたいで素敵やろ?」

綾乃(そうかしら…)

千歳「用意するものは…」

千歳「板チョコ、ココアパウダー、生クリームやね」

千歳「お好みでバターとか、ハチミツとか、リキュールとか入れてみるのもありやで」

千歳「歳納さんはラムレーズンのアイスが好きらしいので、今回はラム酒を使います」

綾乃「材料はさっき買ってきたから安心アンコールワットね!」

千歳「まずは板チョコを細かく刻みます」

千歳「大きさが均一になるように刻まないと、溶け方にバラつきが出たり、ダマになったりするから気ぃつけてな?」

綾乃「ま…任せて…!」

千歳(不安や…)

綾乃「…これでいいかしら?」

千歳「うん、おっけーやね」

千歳「次は沸騰直前まで温めた生クリームに、チョコを入れてよく混ぜます」

綾乃「右腕だけ筋肉つきそうだわ…」

千歳「歳納さんのためやで!」

綾乃「う、うん…///」

綾乃(右腕だけムキムキでも愛してくれるかしら…///)

千歳「チョコが溶けたらラム酒を入れて、よく混ぜます」

綾乃(お酒…)

綾乃(千歳が匂いで酔ったらどうしよう…)

千歳「綾乃ちゃん不安そうな顔してどうしたん?」スーコー

綾乃「いえ、別に…って!ガスマスク!?」

千歳「匂いで酔ったらチョコ作りどころじゃあらへんからね~」ウフフ

綾乃(自覚あったんだ…)

千歳「続いてタッパーにラップを敷いて、そこにチョコを流し込みます」

千歳「表面を平らにならして、冷蔵庫で二時間ほど冷やしたら…」

綾乃「もうすぐ完成ね…!」

千歳「はい、ここに既に冷やしておいた物があります」

綾乃「えっ」

綾乃「そ、それじゃ意味ないじゃない!」

千歳「うふふ、これはうちが予習で作ったやつやからね~」

千歳「ちょっと早いけど、うちから綾乃ちゃんにあげるチョコやで」

千歳「あとで一緒に食べよ?」

綾乃「え、ええ…///」

千歳「そしたらチョコをラップごと取り出して…」

千歳「温めておいた包丁で食べやすい大きさにカット…」

千歳「ちなみに綾乃ちゃんにはハートの型抜きを用意してあります!」

綾乃「ず、随分周到じゃない…」

千歳「綾乃ちゃんには幸せになってもらいたいからね~」

綾乃「……///」

千歳「最後にココアパウダーをまぶして完成!」

綾乃「意外に簡単なのね…」

千歳「きっと歳納さんも喜んでくれると思うで~」

綾乃「……///」ドキドキ

千歳「あはは、今から緊張してどうするん?」

綾乃「だ、だって…」

千歳「当たって砕けろやで!」

綾乃「砕けちゃダメじゃないっ」

~2月14日・教室~

綾乃「……///」ドキドキソワソワ

京子「綾乃、そわそわしてどうしたの?」

綾乃「ななななんでもないわよっ///」

京子「ははーん、わかったぞ…」

綾乃「…!?」ドキッ

京子「さては綾乃…」

綾乃「な、なによっ…」

京子「誰かからチョコ貰いたくてそわそわしてるんだな!?」

綾乃「中学生男子かっ!」

千歳「……」ドバドバ

結衣「綾乃、はいこれ」

綾乃「えっ…」

結衣「チョコレート。普段お世話になってるから」

綾乃「あ、ありがとう…///」

結衣「千歳にも…って、鼻血出てるし!」

千歳「うふふ、ありがとなぁ~」ドバドバ

千歳「うちからも歳納さんと船見さんにチョコレートやで~」

結衣「ありがと、千歳」

京子「やったー!今年二つ目!」

綾乃「ふ、二つ目?…一つ目は船見さん?」

結衣「いや、私じゃないよ」

京子「朝一であかりから貰ったんだ~」

結衣「凄く大きな紙袋持ってたな…」

京子「クラス全員に配るんじゃないかな…」

千歳「さすがやね…」

京子「で、綾乃から私にチョコはないの?」

綾乃「えぇ!?あ、あるわけないでしょ!!」

千歳(綾乃ちゃん…)

千歳(いや、きっと放課後呼び出して決戦やね…!)ドバドバ

結衣「お前こそ、チョコ用意してないだろ…」

京子「私は食べるの専門なので!」

結衣「まったく…」

綾乃「……」

綾乃(ど、どうしよう…)

千歳「……」

~昼休み~

千歳「というわけで、協力してくれへん?」

千鶴「……」

千鶴「でも、姉さんはそれでいいの?」

千歳「うち?」

千歳「うちは綾乃ちゃんに幸せになってもらいたいんよ~」ニコニコ

千鶴「……分かった」

千鶴(それが姉さんの望みなら…)

~放課後・体育館裏~

綾乃「千歳の大事な話って何かしら…」

綾乃「それにチョコ持って来てって…」

綾乃「まさか……///」ドキドキ

綾乃「そ、そんなはずないわよね…」

京子「歳納京子!華麗に登場!」バビュン

綾乃「ととと歳納京子!?」

綾乃「な、なんであなたがここに来るのよっ!///」

京子「え?私千鶴に呼び出されたんだけど…」

綾乃「え…」

綾乃(…そういうことか)

綾乃「もう…千歳ったら…」クスッ

京子「どういうこと?」

綾乃「歳納京子、あのね…」

~池田家~

千鶴「……」

千歳「そんな顔しないで、千鶴~」

千鶴「でも、姉さんは…」

千歳「……」

千歳「はい、千鶴」

千鶴「……?」

千歳「バレンタインのチョコ」

千鶴「……姉さん」

千歳「いつもありがとな」ニコッ

千鶴「……」

千鶴「私からもこれ…」

千鶴「ちょっと失敗しちゃったけど…」

千歳「…ふふ、ありがとう千鶴」

~ごらく部部室~

ちなつ「そういえばあかりちゃん、先生方にもチョコあげてきたの?」

あかり「お世話になってるからね~」ニコニコ

結衣(どんだけ作ったんだ…)

あかり「それにしても京子ちゃん遅いね~」

結衣「千鶴さんに呼び出されたって言って、すっ飛んでいったけど…」

結衣(京子は千鶴さんに嫌われてるんじゃないのかな…?)

結衣(ヘマして好感度下げなきゃ良いけど…)

ちなつ「もう、私もチョコレートケーキ作ってきたのに…」

あかり「チョコレートケーキ?ちなつちゃんすごいっ」

結衣「少し残しておいてあげれば良いんじゃないかな」

ちなつ「そうですね。では…」

ちなつ「じゃーん!張り切って作っちゃいました!」

あかり「ひぃっ!」

結衣「こ、これは…」

あかり(どうして!?どうして緑色なの!?)

結衣(禍々しい形してるし…)

ちなつ「どうですか?美味しそうでしょ?」

ちなつ「食べてみてください結衣先輩っ」

結衣「……う、うん」

結衣(京子…ラッキーだったな…)

結衣「……」

ちなつ「……」ドキドキ

結衣(……南無三!)パクッ

結衣「……」モグモグ

ちなつ「ど、どうですか…?」

結衣「お、美味しい…?」

ちなつ「なんで疑問符つけるんですか…?」

結衣「あ…いや!美味しいよ!うん、美味しい」パクパク

ちなつ「キャー!良かったですぅ~♪」

ちなつ「バナナとアボカド使ってみたんですよ~」

結衣(緑色なのはそれでか…?)

ちなつ「…あれ、あかりちゃんどうしたの?」

あかり「……」アッカリーン

結衣(あかり、不憫な子…)

~古谷家~

櫻子「向日葵、お腹減った」

向日葵「もうすぐ夕飯ですから、我慢なさい」

櫻子「やだー!お腹減ったお腹減ったお腹減った!」ジタバタ

向日葵「もう…仕方ないですわね」

向日葵「はい、これ…」

櫻子「おっ!クッキーじゃん!」

向日葵「…あ、味わって食べなさいよ?」

櫻子「え?なに?」モキュモキュ

向日葵「もう完食ですの!?」

櫻子「んん…?なんかいつもと味違う?」

向日葵「…気のせいですわよ」

櫻子「そっかなー…?」

向日葵「それでは、夕飯の準備しますから」

櫻子「おう!」

楓「…櫻子お姉ちゃん」

櫻子「ん、どした?楓」

楓「今日のクッキーはチョコクッキーなの」

櫻子「あー、なるほどそれでかぁ」

櫻子「でもなんでまた急にチョコクッキー…?」

楓「今日はバレンタインだから…」

櫻子「…!!」

櫻子「そうか、向日葵のやつ…」

櫻子「誰か好きな子に渡そうとしてフラれたんだな!?」

櫻子「仕方ないやつだなぁ向日葵は~」ニコニコ

楓(櫻子お姉ちゃん…)ホロリ

向日葵「……」

向日葵(バレなくて良かったような、悲しいような…)

向日葵(今後も苦労しそうですわ…)

楓(お姉ちゃん頑張ってね…)

りせ「……」シュン

西垣「そんな顔をするな。チョコはちゃんと用意してあるんだ」

りせ「……!」

西垣「ただのチョコだと思うなよ?」

りせ「……?」

西垣「え?爆発?…その手があったか」

りせ「……」アセアセ

ミスった
>>64の前にこれ

~理科準備室~

りせ「……」

西垣「お、松本どうした?」

りせ「……///」スッ

西垣「ん?…そういえば今日はバレンタインか」

西垣「ありがとう、大切に食べるよ」

りせ「……?」

西垣「はっはっは、すっかり忘れていたよ」

西垣「冗談だよ。さすがに食べ物に爆発物は仕込まないさ」

西垣「ただ…」

りせ「……?」

西垣「今年のチョコは刺激的なオトナの味だ」

りせ「……!?」

西垣「ふふ、覚悟しろよ松本」

西垣「…ほら、口を開けて…」クイッ

りせ「……///」アーン

西垣「ふふ、いい子だ」

りせ「……///」パクッ

西垣「よく味わうんだぞ…」

りせ「……///」モグ…

りせ「……///」パチ…

りせ「……?」

りせ「……」モグモグ

りせ「……」パチパチ

りせ「……」ジトー

西垣「どういうことだって…、噛むとパチパチするチョコだ」

りせ「……」

西垣「刺激的だろ?」

りせ「……」

西垣「え?なんで怒ってるんだ?」

西垣「おい、松本!待ってくれ!」

西垣「松本おおおおお!!」

~夜・池田家~

千歳「綾乃ちゃん、うまくいったかなぁ」

千歳「……」

千歳「……」ブシャッ

千鶴(姉さん…)

ピンポーン

千歳「あら、お客さん?」

千歳「はーい」

ガチャ

綾乃「千歳…」

千歳「綾乃ちゃん…、どしたん?」

綾乃「あの、これ…」

千歳「…これ、チョコ?」

綾乃「うん、買ってきたものだけど…」

綾乃「私が作ったチョコは全部歳納京子にあげちゃったから…」

千歳「うちは別に良かったのに…」

綾乃「普段助けてもらってるお礼よ。受け取って?」

千歳「…ありがとう綾乃ちゃん」ニコッ

千鶴「……」ダバー

綾乃「ねぇ、開けてみて?」

千歳「今?」

綾乃「ええ、今」

千歳「……」ゴソゴソ

千歳「…?なんやろこのカード」

千歳「『きらきら光るあなたの夢が叶いますように』…?」

綾乃「素敵なメッセージカードでしょ?」

千歳「…ほんまやねぇ」

綾乃「いつもありがとう千歳」

綾乃「千歳の夢…叶うといいわね」

千歳「…うんっ」

千鶴「」

千歳「…で、綾乃ちゃん結果はどうだったん?」ワクワク

綾乃「そ、それは…」

綾乃「秘密よ!」

千歳「えー…」

綾乃(こんな不満そうな顔の千歳は初めて見るわ…)

千歳「うちの夢が叶ったかどうか知りたいねん!」

綾乃「う…うぅ…」

綾乃(言えるわけないじゃない…)

~数時間前・体育館裏~

綾乃「あの…これ…」

京子「おお、チョコ?」

綾乃「あ、余ったからあげるだけなんだからね!?」

京子「……」

綾乃(しまった…。またやっちゃった…)

京子「…へへ、ありがと綾乃っ」ニコッ

綾乃「…!!///」ドキッ

綾乃「そそそそれじゃ帰るから!!///」ダッシュ

京子「おー、またね綾乃ー…ってもういねぇし」

京子「…結局千鶴は何の用だったんだろ」

京子「……」グゥー

京子「へへ、開けてみよ」ワクワク

京子「おお、ハート型のチョコ」

京子「……?ハート型って余るものなの?」

京子「さては…」

京子「色んな人に渡してハーレムでも作るつもりだったんだな!?」

京子「いやー、綾乃も案外大胆なんだなぁ」ハッハッハ

綾乃(……)コソコソ

綾乃(バレなくて良かったような、悲しいような…)

綾乃(千歳…ごめんね…)

綾乃(そういえば千歳にチョコあげてないわね…)

綾乃(いつも助けてもらっているし、買っていこうかしら…)

~数日後・生徒会室~

綾乃「今日で生徒会室ともお別れね…」

千歳「そやね…」

綾乃「三年…かぁ」

綾乃「長かったような、短かったような…」

千歳「楽しかったなぁ~」

綾乃「ねぇ千歳、覚えてる?」

千歳「…初めて会った日のこと?」

綾乃「うん」

千歳「…よく、覚えとるよ」

綾乃「…私も」

綾乃「千歳と過ごしたこの三年間の想い出は、全部私の大切な宝物よ」

千歳「綾乃ちゃん…」

綾乃「別々の学校でも、ずっとお友達よね?」

千歳「…当たり前やん」

千歳「ずっとずっと、一番の友達やで」

綾乃「千歳…」ジーン

千歳「ヘタレな綾乃ちゃんを放っておくわけにはいかへんからね!」ビシッ

綾乃「な…!せ、せっかく感動的だったのにっ…」

千歳(そしてうちの夢を叶えるためにもね!)

おしまい!

たまには誰もくっつかない感じで
全員登場させようと思ったらごった煮になってしまった

支援ありがとうでした!

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