さやか「ストーカー被害に遭ってるんだけど……」(168)

さやか「…………」

……………………

さやか「……今日もか……」

……………………

さやか「何なの……本当に……」

ダッ

さやか母「おかえり、さやか」

さやあ「……ただいま」

まどか「え、ストーカー!?」

さやか「ここ最近、ずっと帰りをつけられてる感じがするの……」

まどか「本当なの? 気のせいとかじゃなくて?」

さやか「最初は気のせいかと思ったけど、もうずっとだから間違いないよ」

さやか「まどか……悪いけど、家の前まで一緒に帰ってくれるかな……」

まどか「うん、そういうことなら……」

さやか「ありがとね。おかげで今日は出なかったよ」

まどか「本当? よかったぁ……」

さやか「でもたまたまかもしれないし、しばらく毎日付き合ってもらってもいい?」

まどか「もちろんだよ! さやかちゃんのためだもん!」

さやか「本当にありがと……じゃあ、まどかも気をつけて」

まどか「うん、じゃあまた明日!」

バタン

まどか「……誰もいないね……」

ガバッ

まどか「こ、ここがさやかちゃんが踏んだ地面!」

まどか「くんかくんかくんか! はうぅ、さやかちゃんの靴の裏の匂いがするぅぅぅぅぅ!」

まどか「はっ、いけないいけない! つい我を忘れちゃった」

まどか「さやかちゃんの可愛さあまりで始めたストーキングだったけど……」

まどか「一緒にいられる時間が増えて大成功だね!」

さやか「いやー、まどかに見送ってもらい始めてから全然出なくなったよ」

まどか「ウェヒヒ、よかったねさやかちゃん」

さやか「そろそろ大丈夫かなって思うから、もう今日はいいよ。ありがと」

まどか(ガーン! ど、どうしよう!)

ジリリリリリリリ

さやか「な、なんだなんだ!?」

まどか「あ、そういえば今日避難訓練があるって言ってたっけ?」

さやか「めんどくさいなぁ……えーと、校庭に集まるんだっけな。一緒にいこうか?」

まどか「……! いや、ちょっとトイレに寄りたいから先行ってて!」

さやか「そう、じゃあ後でね」

まどか「……誰もいなくなったね」

まどか「今日は午前中、体育の授業があった……つまり、さやかちゃんの鞄の中には……」

まどか「……あった、さやかちゃんの体操服! くんかくんかくんか!」

まどか「ふぉぉぉぉぉぉぉぉ! な、なんてフローラルなさやかちゃんの体臭!」

まどか「これは国宝級……いや、まど宝級の絶品だよ!」

まどか「はっ、いけないいけない! 早く校庭いかないと私がいないことがバレちゃう」

まどか「これは家に帰った後でじっくりと……ウェヒヒヒヒヒ……」

さやか「まどか、やっぱり今日から一緒に帰って!」

まどか「やった! じゃなくて、またストーカー?」

さやか「そうなの! 昨日は帰りは出なかったけど、実は体操服が盗まれてたっぽいんだ!」

まどか「体操服が!?」

さやか「きっと避難訓練の時に……でもこれで犯人は、多分私のクラスの誰かだね」

まどか「(ぎくーっ!)こ、このクラスの人とは限らないんじゃないかな……」

さやか「間違いないよ。あんまり時間なかったはずだし、私の席を知ってる人じゃないと」

まどか「で、でも席くらいなら他のクラスの人だって……」

さやか「いや、最近席替えあったからこのクラスの人か……クラスの誰かと相当親しい人だ」

まどか「他のクラスで、相当親しい人……」

まどか「見損ないましたよ! ストーキングだけでなく体操服を盗むなんて!」

マミ「だから私じゃないわよ!」

まどか「昨日も私達のクラスに遊びに来てたじゃないですか! 他に友達いないからって!」

マミ「いるわよ! 私ってどんなキャラだと思われてるの!」

さやか「で、でも……マミさんがそんなことするとは思えないけど……」

マミ「当たり前よ! というか話を聞く限り、一番怪しいのはクラスメイトでしょ!」

さやか「まぁ確かにそっちの方が本命ではありますけど……」

まどか「……犯人は、クラスメイト……」

さやか「そしてストーキング癖のありそうな人といえば……」

まどか「見損なったよ! ストーキングだけでなく体操服を盗むなんて!」

ほむら「だから知らないわよ!」

まどか「だって毎日毎日、時間を止めて私の部屋に忍び込んで下着くんかくんかしてるでしょ!」

ほむら「してないわよ! 私ってどんなキャラだと思われてるの!」

さやか「で、でも……転校生はそんなこと……うーん……しない、かなぁ?」

ほむら「何で疑問系!?」

まどか「ほむらちゃん……今なら謝ればさやかちゃんも許してくれるよ、きっと」

ほむら「だから私じゃないって!」

さやか「考えてみれば、時間を止められる転校生がわざわざ避難訓練にまぎれてコソコソ盗むかな?」

ほむら「というか話を聞く限り、まず疑うべきは男子からでしょ普通!」

まどか「そ、そういえば!」

さやか「そうだったぁー!」

さやか「男子……もしかして、恭介!?」

ほむら「彼は入院中よ」

さやか「そうだった……ちょっとガッカリ……」

まどか「…………」シュッシュッシュッシュッ

ほむら「まどか、何でシャドーしてるの?」

まどか「いや、ちょっと上條くんが憎くて」

ほむら「クラスの男子であなたをストーキングしそうな人物の心当たりは?」

さやか「うーん……何だか全員怪しいような気がしてきた……」

ほむら「美樹さやか、身の程というものを知るべきよ」

さやか「どういう意味!?」

まどか「ほむらちゃん何言ってるの! さやかちゃんは世界一可愛いんだよ!」

ほむら「それはないわ。中の上か……甘く見てもいいとこ上の下ってところでしょ」

さやか「そんなリアルな判定は嫌だぁー!」

まどか「さやかちゃんは上の上の上、特上だよ! むしろ美樹さやかという特別ランクだよ!」

さやか「……ま、まどか……?」

ほむら「……もしかして、まどかが犯人?」

まどか「な、ななななな何言ってるのかなじょじょじょ冗談きついよ!」

まどか「はぁ……ヤバかった……」

まどか「とりあえず今はさやかちゃんは私に疑いを持っていないようだけど……」

まどか「この先はどうなるかわからないよね……」

まどか「…………」

まどか「しょうがない……ちょっと早いけどあの手を使おう!」

まどか「ウェヒヒヒヒヒ……今夜は祭りだね……ウェヒヒヒヒヒ……」

まどか「ええっ、今度はパンツが盗まれた!?」

さやか「夕方までは確かにあったから夜のうちに……一体誰よ!」

ほむら「でも……私達は中学生よ? 夜に出歩くなんてできるかしら?」

まどか「私も昨晩はずっと家族と一緒にいたし、出かけるなんて許してもらえないと思う」

ほむら「それにいくら夜とはいえ、下着ドロなんてそう簡単にできることじゃないわ」

さやか「うぅ……言われてみれば私の勘違いのような気もしてきた……」

まどか「まぁ……もう少し、様子を見てみようよ」

まどか「……zzz……」

コンコン

まどか「ん、窓……! 来たね!」

ガラッ

杏子「ほら、今日はブラだったよな。とってきたぜ」

まどか「ありがとう杏子ちゃん!」

杏子「魔法少女の力を使えば楽勝さ。それで早速だが」

まどか「わかってるよ。はい、約束のハーゲンダッツ」

杏子「あの伝説のハーゲンダッツが今日も食えるとは感激だぜ! ガリガリ君しか縁がなかったのに……」

杏子「でも、さやかの下着なんか何に使うんだ?」

まどか「それはもちろん匂いを嗅いだり、こんな風に味わったり……ぺろぺろぺろぺろ」

まどか「さ、さやかちゃんの味がするうううう! え、え、え、エクスタシぃーーーーー!」

杏子「なんだこいつ……意味わかんねぇ……」

まどか「明日は靴下でよろしくね!」

杏子「さらに靴下かよ……こんな変態だと知ったら急に加担するのが嫌になってきたぜ……」

まどか「何言ってるの!? ハーゲンダッツ食べられなくなってもいいの!?」

杏子「う……うーん……でも冷静に考えたらやっぱり下着ドロなんてなぁ……」

まどか「ゴディバのチョコもつけるよ!」

杏子「明日は靴下だな! 任せろ!」

さやか「今度はブラまで盗まれたよ!」

まどか「えぇ、ブラまで!?」

さやか「もう間違いないよ! まどか、さすがに怖くなってきたから明日泊まってくれない?」

まどか「お、お泊り!? もちろん大歓迎だよフォーーーーーーウ!」

まどか(うへへへへ……私のすぐ横でさやかちゃんの靴下が盗まれアリバイは鉄壁に……)

まどか(そしてさやかちゃんと一晩中一緒……)

まどか(さらには翌日には手元に……さやかちゃんの、く、く、く、靴下が……)

まどか(ウェヒ、ウェヒヒ、ウェヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒィ!!)

さやか「それじゃあ、一緒のベッドになっちゃうけど……」

まどか「問題ないよ! いや問題あってもむしろどんとこい!」

さやか「あはは、何か今日のまどかおかしいよ。それじゃあ、おやす……」

ピンポーン

さやか「ん? 誰だろこんな時間に」

さやか「はーい」

マミ「…………」

ほむら「…………」

さやか「え? マミさんと……」

まどか「ほむらちゃん? 何で……」

マミ「暁美さんに協力を頼まれてね……」

ほむら「まどかも巻き込まれてるし、例のストーカー下着ドロを捕まえようと思ったのよ」

マミ「そしたらもう驚きよ」

ポイッ

杏子「おいマミ! これほどけよ!」

さやか「きょ、杏子!?」

まどか(あ……あいつ、しくじりやがったなぁぁぁぁぁ!!)

ほむら「ちょうど佐倉杏子が盗もうとしているのを捕まえたわ」

さやか「杏子……あんたが、ストーカーだったの……?」

さやか「ちげーよ! あたしじゃねー!」

マミ「嘘よ、どう見ても盗もうとしてたじゃない」

杏子「た……確かに盗もうとしてたのは事実だけど、盗みたかったわけじゃない!」

杏子「あたしは食い物と引き換えに、まどかに頼まれただけなんだ!」

まどか(な、何バラしてんじゃぁぁぁぁぁぁ!)

マミ「か、鹿目さん……本当なの……」

まどか「……うぅ、ぐすっ……」

ほむら「ま、まどか……泣いて……?」

まどか「ひ、酷いよ杏子ちゃん……私に罪を押し付けるなんて……」

杏子「はぁ!? てめぇ何言い出しやがんだ!」

さやか「そうだよ杏子! まどかがそんなことするわけないでしょ!」

杏子「さ、さやかまで!?」

まどか(ら、ラッキィィィィィィィィィ! さやかちゃんマジ天使! さやかちゃんマジ天使!)

さやか「ストーカーしたり下着を盗んだりしたのはもういいよ……」

さやか「でも、よりにもよってまどかに罪を押し付けるなんて……最低!」

杏子「違う! これは本当にまどかが!」

まどか「自分の下着のみならず、さやかちゃんの下着も売って……そんなにお金が欲しいの!?」

杏子「売ってねえよ! あたしってどんなキャラだと思われてんだ!」

ほむら「でも食べ物に釣られるような人間だとは自分で認めるのね」

まどか「杏子ちゃん……もうやめよう? これ以上の嘘は、自分を傷つけるだけだよ」

杏子「完全に裏切る気だなこの野郎!」

マミ「え、えーっと……どっちを信じれば……」

まどか「さやかちゃんを好きな気持ちは分かるよ……でも、靴下を盗むなんてよくないよ……」

杏子「てめぇが言うな!」

ほむら「……ねぇ、まどか」

まどか「何? ほむらちゃん」

ほむら「どうして佐倉杏子が盗もうとしたものが靴下だって知ってたの?」

まどか「」

マミ「そういえば……普通はパンツやブラを想像するわね」

さやか「ま、まどか……まさか本当に……」

まどか「……だ、だってほら、パンツとブラはもう盗まれてるじゃん!」

まどか「となると次は靴下の番でしょ!?」

さやか「そ、そうなの……?」

ほむら「さぁ……」

まどか「それとも、さやかちゃんは杏子ちゃんより私が信用できないって言うの!?」

さやか「え、えー……」

まどか「よく考えてみてよ! 私はさやかちゃんの大親友だよ!?」

まどか「ハーゲンダッツに釣られて下着ドロするような意地汚い杏子ちゃんとどっちが信用できる!?」

さやか「え? ハーゲンダッツって?」

まどか「」

マミ「鹿目さん……もう言い逃れはできないわ」

杏子「ほらな! あたしの言う通りだっただろ!」

ほむら「佐倉杏子、あなたも全然威張れる立場じゃないからね」

さやか「ま、まどか……どうして……」

まどか「…………」

まどか「……ウェヒ」

さやか「え?」

まどか「ウェヒ、ウェヒヒ、ウェヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒィ!!」

まどか「さ、さやかちゃんがいけないんだよ!」

まどか「さやかちゃんがあんまりにも可愛いくていい匂いするから!」

まどか「さやかちゃんが暑いなーとか言いながらスカートや胸元パタパタさせてるから!」

まどか「最近ブラきつくなっちゃってさーとか言ってくるから!」

まどか「私の、私の劣情を毎日毎日煽ってくるから!」

まどか「だから……だから、私は……道を、踏み外しちゃったんだよぉぉぉぉぉぉ!」

まどか「契約…、契約するよっ…QB!」

QB「君の願いなら、どんなエントロピーも凌駕するよ、まどか!ここの全員を殺す事も容易いよ。」

まどか「聞いたよね、さやかちゃん?」

まどか「早く靴下を私に頂戴…?さやかちゃん?」

みたいなのもいいなあ

マミ「…………」

ほむら「…………」

杏子「…………」

さやか「……ねぇ、まどか」

まどか「な、何?」

さやか「…………」

まどか「…………」



さやか「まず、何か言うことがあるでしょ」

まどか「ごめんなさい」

ほむら「で、今はストーカーも下着ドロもパッタリなくなったと」

マミ「鹿目さんも改心したみたいでよかったわね」

さやか「まぁ、直接的な被害はなくなったけど……」



まどか『さやかちゃん、学校着いたよ!』

さやか『はぁ……今日もやるのね。はい』

まどか『すぅ~~~~~……はぁぁぁぁぁ、さやかちゃんの下駄箱の空気は最高だよぉ……』

さやか『……ねぇ、これ本当に必要なの?』

まどか『当然だよ! これがないと一日を過ごす元気が湧かないよ!』



さやか「てな感じで毎日下駄箱の空気を朝一で……これだけはどうしてもと……」

マミ「それは……難儀ね」

ほむら「わけがわからないわ……」

さやか「うぅ……いつか元のまどかに戻ってよ……」

END

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