ペルソナ3〜重なる2つの運命〜 (80)

時は、待たない――

全てを等しく、終わりへと運んでいく――

限りある未来の輝きを、守らんとする者よ――


1年間――


その与えられた時をゆくがいい――

己が心信ずるまま、緩やかなる日々にも――

揺るぎなく進むのだ――

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ガタン ガタン

?「姉さん、そろそろ着くよ」

??「ん~後、半年………」

?「馬鹿言ってないで早く」

次は~終点、巌戸台~巌戸台~

?「行くよ。姉さん」

??「ハイハイ。分かりましたよ~」

深夜の電車から2人の人影が降りてくる。

1人は茶色の髪を後ろ頭で一つに纏め、ポニーテールを作り、首から赤色のイヤホンをぶら下げた、活発な印象を受ける少女。

もう1人は濃紺の髪を無造作に伸ばし、首から少女とは色違いの青色のイヤホンをぶら下げた、クールな印象を受ける少年。

??「ねー湊、何か変じゃない?」
湊「そう?………確かに人はいないけど、もう12時だし単純にみんな家に居るんじゃない?」

こっちでやらせて頂こうかと。
今回はキッチリ完結させます。

??「そう、かなぁ?」

湊「それより、美月姉さん、よだれ垂れてる」

美月「なぬ!?」

美月は制服の袖でゴシゴシと口周りを拭う。

美月「湊ぉ~もっと早く教えてよぉ」

湊「『後半年~』とか言ってるからだろ。それより早く。寮が閉まっちゃうだろ」

そう言うと湊は美月を置いて歩きだす。

美月「あ~待って~」
美月(あれ?……あそこにあるの……棺桶? こんな町中に?)

湊「姉さん、早く」

美月「今行くよー」
美月(気になるけど、今はいっか)

~月光館学園 学生寮前~

美月「着いたー」

湊「やっとだよ」

2人の前には古めかしいが立派な建物がそびえ立っている。そして表札には『月光館学園 学生寮』と書かれてた表札がさがっていた。

美月「何だかレトロな雰囲気だね」

湊「確かにね……電気は点いてないみたいだから寮の人達は寝てるのかな?」

美月「待ってても仕方ないよね。お邪魔しまーす」

湊「あ、ちょっ……ハァ…お邪魔します」

~ラウンジ~

湊「暗いな……」

美月「月明かりがあるから何となく分かるって感じだね」

湊「電灯のスイッチは……」



「やぁ。遅かったね。長い間、君達を待っていたよ」



突然の声に驚き、2人は声がした方に振り返る。

美月「子供?」

10歳位だろうか…、短めの濃紺の髪、青白い肌、黒と白の縞模様の服を着た少年がフロントに両肘を就いて座っていた。

??「この先に進むなら、ここに名前を」

少年はフロントに置いてある朱色の台紙と一枚の紙、そして羽根ペンを2人に渡す。

そして言われるがまま美月と湊は紙にサインする。

??「…確かに」

書類を受け取った少年は、2人が胡散臭いモノを見るような顔をしている事に気づく。

??「怖がらなくていいよ。ここからは自分の決めた事に責任を取ってもらうっていう当たり前の内容だから」

??「時はすべてのものに結末を持って来る。たとえ、目や耳を塞いでいてもね」

書類を持ったまま少年は暗闇に溶けるように消えて行く。



さぁ、はじまるよ…



少年が消えた場所をみて2人が呆然としていると、

??「誰!?」

声がした方を見る。そこには茶髪の少女が居た。その少女の太ももには拳銃のホルダーのような物が付けられていて、そしてそこに、明らかに拳銃が収まっていた。

湊(あれ、もしかして、銃!?)
美月(や、ヤバくない!?)

段々と少女の容姿がハッキリしてくる。
薄いピンク色のカーディガンに短いスカート、そしてロングブーツを履いた美少女だった。

??「っ!……」

少女の腕が銃に伸びる。

?「待て!」

凛とした女性の声が少女の手を止める。それと同時に真っ暗だった室内の電灯が点き、柔らかなクラシックが流れ始める。

?「到着が遅れたようだな」

そう言って現れた声の主は赤みがかった髪をしていて、白のブラウスに大きな赤いリボン、そして黒の短いスカートにロングブーツという出で立ちのとてつもなく綺麗な女性だった。

?「私は桐条美鶴、この寮に住んでいるものだ」

??「……誰ですか?」

美鶴「彼女達は転入生だ。だが、いずれ正式な寮が割り当てられるだろう」

??「…………いいんですか?」

美鶴「さぁな」

美月「……何だかあんまり歓迎されてない感じ?」ヒソヒソ
湊「さぁ、どのみち数日だけだからいいんじゃない?」ヒソヒソ

美鶴「彼女は岳羽ゆかり、夜野、君と同い年だ」

ゆかり「どうも」ジロー

美月「えっと、夜野 美月(やの みつき)です。よろしく」ニコッ

ゆかり「あ、う、うん。よろしく」

美鶴「そして彼は今年中学三年になる」

湊「有里 湊(ありさと みなと)です。よろしく」

ゆかり「あ、こちらこそ、よろしく」

美鶴「さて、岳羽、君は夜野を部屋まで案内してくれ。有里は私が案内する」

美月「あ、桐条さん、私のことは美月って呼んで下さい。夜野って言われるの慣れてなくて。…岳羽さんも」

美鶴「………そうか。なら、私のことも美鶴と呼んでくれ」

ゆかり「あ、私もゆかりって呼んでね」

女3人「キャッキャウフフ」

湊(………相変わらず姉さんは他人と仲良くなるの早いな……そして胸を貫くこの疎外感………)

美鶴「コホン、今日はもう遅い。部屋は、夜野が三階、有里が二階だ。案内しよう」

~side美月~

ゆかり「ここだね」

美月「ありがとう、ゆかり」

ゆかり「いえいえ。………ね、美月。駅からここに来るまで……2人とも平気だった?」

美月「ん~、何か街中に棺桶が立ってたけど、あれってオブジェか何か?」

ゆかり「あ、えっと、多分そう、だと思う」

美月「へー変な街だね」

ゆかり「あはは……そっか、うん。……ごめん、気にしないで」

美月「うん? わかった」

ゆかり「ありがと。あのさ……色々分からない事あると思うけど、それはまた今度、ね」

美月「うん。じゃ、お休み」

ゆかり「うん。お休み」

~side湊~
美鶴「ここが君の部屋だ」

湊「分かりました」

美鶴「一つ、質問がある………ここに来るまでに何か変なモノを見なかったか?」

湊「それは………夜の12時になると、機械類が全部停止したり、人が棺桶になったり、変な黒い奴が蠢いていたり、ってことですか?」

美鶴「っ!?知っているのか!?」

湊「………ボクは五年ほど前から。姉さんは健康優良児で、いつも夜11時には寝てたから知らないと思いますけど」

美鶴「そう、か」

湊「………色々知ってるようですね」

美鶴「あぁ」

湊「岳羽先輩も、ですか?」

美鶴「………あぁ」

湊「そうですか………じゃあ、話せるようになったら教えて下さい」

美鶴「今じゃなくていいのか?」

湊「はい。だって………………眠いですし」

~ベルベットルーム~

美月「ここは…?」

まどろみの中、目を開く。すると目の前に黒と青の空間が視界一杯に広がってる……

美月「………夢?」

??「その通り」

どこからともなく老人の声がする。

??「いやはや、久方ぶりのお客様だ。それも、2人もいらっしゃるようだ」

美月「2人?」

曖昧な意識の中、周りを確認する。すると、すぐ隣に何となくだが、湊が居るのを感じ取る。

湊「………姉さん?」

湊も私に気付いてくれたみたいだ。そして私達がお互いを確認した直後、老人が言葉を続ける。

??「さて、お初にお目にかかります。私の名は『イゴール』以後、お見知り置きを」

美月「あ、はい。よろしくお願いします」

湊「どうも」

イゴール「ほほっ。面白い方々だ。さて、今、あなた達は私の隣に誰が見えますか?」

美月「………男の人?」
湊「………女の人……かな?」

美月「え?」
湊「え?」

私にはイゴールさんと男の人しか見えないけど、湊は女の人がみえてるの?

イゴール「ほほっ。なるほどなるほど。これはとても興味深い……あなた方2人は別々のモノが見ていらっしゃるようだ」

??「初めまして。『テオドア』と申します」

声と共に青いベルボーイの服装で身を固めた年齢が読み取り辛い銀髪の青年が現れる。

美月「あ、はい。初めまして」

湊「『エリザベス』さん?……あー、初めまして」

湊の声が聞こえる………名前から察するに湊の方はやっぱり女性なのかな?

イゴール「さぁ、自己紹介はそこまでにいたしましょう」

イゴールさんの声が私達を惹きつける。

イゴール「ここは、【ベルベットルーム】。何らかの形で契約を方のみが訪れられる場所」

イゴール「つまり、今日から貴方達は、このベルベットルームのお客人だ」

イゴールさんの手元に寮の玄関で私達2人が署名した書類が置いてある。

イゴール「貴方達は力を磨く運命にある。いずれ必ず私の手助けが必要になるでしょう」

湊「力?」

イゴール「左様。それに伴い、貴方達が支払う代償はただ一つ」

イゴール「《契約》に従いご自身の選択に相応の責任を持って頂くことです」

湊「………分かった」
美月「分かりました」

イゴール「これをお持ちなさい」

イゴールさんの手から2つの古びた鍵がふわりと飛び上がり、私と隣に居るであろう湊の前に浮翌遊する。

イゴール「ほほっ………では、またお会いしましょう」

イゴールさんの声を聞いた直接、強烈な眠気が私を襲い意志に反して瞼がゆっくりと下がってくる。

そして私の意識は闇に閉ざされた。

~翌日~

美月「う……?」
美月(昨日のあれは、夢……だったのかな?)

ふと美月が自分の右手を見ると、そこには鈍色に輝く古びた鍵が握られていた。

美月「この鍵…」

右手に握られた鍵が昨日の出来事が夢ではなかった事を明確に物語っていた。

ゆかり「美月ー起きてる?」

美月「あ、うん!!起きてるよ~」

ゆかり「じゃあ早く降りてきてね。湊くんが朝ご飯作ってくれたから」

美月「分かったー」

~ラウンジ~

湊「姉さん、お早う」

美月「おはよ~」

湊「ほら、シャキッとして」

美月「うぐ~………ねむい………いただきます」

美月は椅子に座り、湊が出した山盛りの朝食を勢い良く食べ始める。

美月「流石は湊。相変わらず料理はバッチリだね…サラダもシャッキリポンとしてて」

湊「いいから早く食べなよ。遅刻するよ?」

ゆかり「てか、美月……量おかしくない?」

美月「? ふふーだよ。ふふー」

湊「呑み込んでからしゃべりなよ」

美鶴「仲が良いんだな君達は」

湊「まぁ、そうですね」
湊「ボクにとってはたった1人の『家族』ですから」ボソッ

美鶴「?」

美月「ご馳走様」

ゆかり「はや!?………あ、そうだ美月。学校までの案内、私がするよ」

美月「本当!?ありがとう。あ、でも、湊は……」

美鶴「彼は私が案内しよう。同じ人工島にあるとはいえ学園はかなり広い。中等部と高等部はかなり距離があるしな」

美月「そうですか……じゃ、湊のことよろしくお願いします」
美鶴「ああ。任せてくれ」

ゆかり「美月~早く!!」

美月「今行く!じゃ、湊。行ってきます!!」

湊「行ってらっしゃい」

ゆかりと2人で駆け出して行く美月を見送る湊。

湊「桐条先輩は学校、いいんですか?」

美鶴「そうだな。そろそろ行こうか………有里。今日の12時あの現象が起きたら私の部屋に来てくれ。昨日のコトの説明をする」

湊「………分かりました」

そう言うと湊は美鶴と共に寮を出て行く。

~月光館学園~

ゆかり「美月。昨日、その……色々見たでしょ?あれ、他の人には言わないでね?」

美月「うん。っていうか言っても信じてくれないと思う」

ゆかり「確かに。そうだね」ハハハ

?「おんやぁゆかりっち、転校生とは既に仲良しな感じですかいな?」

ゆかり「ゲッ。順平……何?」

順平「何って…………もちろん只の親切心だって。やましい気持ちは微塵も有りませんぜ」

ゆかり「ふーん」

順平「な、転校生。分からないことが有ったら何でもこの順平に聞いてくれや」キリッ

美月「…………ゆかりに聞いた方が良さそうな気がする」

ゆかり「プッ。振られてやんの」

順平「んなぁ!?………そりゃないぜ」

~夕方~

ゆかり「あ…帰って来ました」

??「成る程。彼女達か……始めまして私は幾月修司。君達が通っている学園の理事長をしている者だ」

学園から帰ってきた美月と湊に眼鏡を掛けた中年男性がにこやかに自己紹介をしてくる。

美月「えっと、始めまして夜野美月です」
湊「有里湊です」

幾月「うんうん。挨拶が出来る若者は好きだよ……さて、寮の部屋割りが間に合わなくて申し訳なかったね。正式な割り当てが決まるのはまだ先になりそうでね」

湊「そうですか」

幾月「淡泊だねぇ。あ、もうこんな時間か………何か聞きたい事とかあるかな?」

湊「特には」

美月「私もです」

幾月「………………本当に?」

湊・美月「!?」ゾクッ

幾月の言葉にほんの一瞬だが、2人の体を悪寒が全身を駆け巡る。

幾月「………よろしい。じゃあ私は失礼するよ。転入したてで疲れてるだろう今日は早めに休むと良い。若い頃は寝てなんぼだからね」

~深夜~

幾月「さて、彼女の様子はどうだい?」

ゆかり「熟睡してます…………っていうかいくら理事長でも女子高生の寝室を覗くってダメでしょ」

幾月「はは。だから岳羽くんに頼んでいるんじゃないか」

ゆかり「女の子同士でも気が引けますよ………あれ?真田先輩と桐条先輩はどこに?」

幾月「真田くんはいつもの見回りに。桐条くんは『彼』の説得だよ」

ゆかり「…………湊くんはまだ中学生ですよ」

幾月「とはいえ、報告によれば彼は五年前から《影時間》そして《シャドウ》の事を知っている。それに彼はしっかり者のようだからね」

ゆかり(そう言う問題じゃ無いと思うんだけどな……)

~美鶴の部屋~

湊「」ガチャ

美鶴「来たか………学園はどうだった?」

湊「ボチボチです」

美鶴「そうか………さて、君には話しておこう。この、存在しないはずの時間の事を」

幾月「ふーむ、特に異常はなさそうだね」

ゆかり「はい」

幾月「ふむふむ。これは興味深い最初はもっと不安定になるものなんだがねぇ」

ゆかりと幾月の視線の先には『熟睡したまま』の美月の姿が。

幾月「《象徴化》もせず完全に安定した状態か………興味深いねぇ」

ゆかり「理事長、その発言、変態みたいですよ」

幾月「ははは。いやはや手厳しい」





ビービービービービービービー



穏やかな雰囲気を崩し、幾月とゆかりがいる部屋にけたたましい警報が響きわたる。

幾月「!?」
ゆかり「!?」

??『誰か応答を願う!!』

無線機から青年の切羽詰まった声が聞こえる。

ゆかり「真田先輩!?どうしたんですか!!」

真田『岳羽か!凄いヤツをみつけた、が……追われててな。もう直ぐそっちへ着く。一応連絡しておく』ガガ ブツッ

ゆかり「真田先輩!?………じゃあ、その凄いヤツがここにくるんじゃ!?」

美鶴『岳羽!!聞こえるか!?』

ゆかり「は、はい」

美鶴『そこから下に降りては美月を起こしてくれ。そして有里と合流したら屋上に逃げろ!! 私は下に向かう!!』

ゆかり「わ、分かりました!」

幾月「大変な事になってきたね」

ゆかり「あ、理事長は……」

幾月「私はここに残るよ」

ゆかり「………分かりました」

そう言ってゆかりは部屋を飛び出し階段を駆け下りていく。

ゆかり「起きて!美月!!」

美月の部屋の部屋のドアを激しく叩くゆかり。すると中から鍵が開く。

美月「どしたの?こんな夜中に?」

ゆかり「起きてたの?」

美月「ううん、何か目が覚めただけ」

ゆかり「そっか、じゃあ早く!!」

美月「へ?……ちょ、ちょっと!?」

そう言ってゆかりは美月の手を引いて部屋を飛び出す。

湊「姉さん!岳羽先輩も」

美月「湊!これどう言うこと!?」

湊「さぁ?ボクもイマイチ状況が……それに桐条先輩に姉さん達と一緒に逃げろって言われただけだから…」

ゆかり「話は後、いいから付いて来て!!」

ゆかりの切羽詰まった表情をみて美月と湊は頷き合い、ゆかりと共に屋上に向かう。

ゆかり「よ、よし、ここまでくれば……」

ザザザザザザサ

ゆかり「……うそ」

??「ァァアーーーーー!!」

湊「デカい!?」

美月「な、何あれ!?」

3人の前に何本もの腕で構成された巨大な化け物が立ちふさがる。

ゆかり「わ、私が、守らなくちゃッ!!」

ゆかりは足のホルスターから拳銃を抜き、額に当てる。

ゆかり「っ!!」

だが、恐怖から引き金を引くことが出来ない。

美月「ゆかり!!」

ゆかり「くぁっ!!」

化け物は隙が生じたゆかりを見逃さず、巨大な拳でゆかりを殴りつけ、屋上の柵に叩きつける。

美月「ゆかり!!大丈夫!?」

湊「姉さん、前!!」

湊に言われ振り向くと化け物が美月の目の前で巨大な拳を振り上げていた。

湊「くそ!!」

化け物の拳が振り抜かれる前に湊は美月の前に躍り出て、美月を庇うように立ちふさがる。

そして、化け物の拳が湊に向け、振り下ろされる。

美月(また、失うの……?)

美月の脳裏に、自分の両親が死んだ時の光景がフラッシュバックする。

美月(また、守れないの……?)

??「君に、出来るかい?」

突然、美月の前に昨日ラウンジで会った白黒の少年が現れる。

その少年は右手を銃の形にして人差し指をこめかみに当て、更に、銃を撃つような仕草をする。

美月「湊を守れるなら………私は、躊躇わない」

美月は、弾き飛ばされたゆかりの拳銃を拾い上げこめかみに当て、ゆっくりと引き金を引く。

美月「ペ………ル……ソ…」

ガシャン!!

ガラスが割れたような音と共に公子の背後に人の形をした《何か》が現れる。そしてその《何か》が、化け物の拳を止める。



『我は汝、汝は我』

『我は汝の心の海より出でし者゛幽玄の奏者゛』

『オルフェウス』



公子「オル…フェウス……」

??「ァァアーーーーー!!」

突然現れたオルフェウスに化け物が反応し、別の腕に持っていた巨大なナイフで公子に斬りかかる。

オルフェウス「ォオオ---ーー!」

化け物の攻撃をオルフェウスが背中に背負った堅琴を盾にして弾き返す。

美月「オルフェウス!!」

美月がそう叫ぶとオルフェウスは堅琴を化け物叩きつける。

そしてオルフェウスは化け物に更に攻撃を加えようとする、が

美月「あっ…ぐぅ……あ、ァァァァァア!!」

美月の悲痛な叫びと共にオルフェウスの口から引き裂きながら新たなペルソナが現れる。

タナトス「オォォォォォォオ!!!」

姉が分裂した
一人で二人分、ペルソナ合わせて3人分おいしい

>>28
全部、美月で脳内補完して下さい

タナトス「ガァァァァァァア!!」

鎖で繋がれた棺桶を背負い、頭蓋骨を模した仮面を被った漆黒のペルソナ、《タナトス》は、手にした片手剣で化け物を一瞬で細切れにし、そして煙のように消え失せる。

美月「」フラッ

湊「姉さん!」ダッ!

美月に駆け寄ろうとした湊を小さな影が邪魔をする。

嘆きのマーヤ×2「「オォォーーーーー」」

湊「くっ!!………邪魔を………するな!」カッ!

湊の激情に反応して湊のペルソナ、《イザナギ》が覚醒する。

湊「ジオ!!」

イザナギ「」ザッ

イザナギが手をかざした瞬間、小さな影に雷が降り注ぎ、瞬く間に消滅させる。

湊「姉さん!!」

美月「」スゥ

湊「ハァ………良かった」












??「姉は初召喚で強力なペルソナを召喚……そして弟は召喚器無しでのペルソナ召喚……実に興味深い」

湊はペルソナの召喚は初めてじゃないの?

オルフェウスじゃないのかP3の主人公なのに…

>>33
自在に召喚出来ないけど召喚自体は初めてではないって感じです
>>34
美月がオルフェウス出しちゃったんで…

~4月20日 辰巳記念病院~

全体が白で統一された病室で美月は目を覚ます。

美月「う………ここは?」

ゆかり「あ、気がついた?」

美月「ゆかり……っ!! 湊は!?」

ゆかり「ちょっ、落ち着いて美月!湊くんは大丈夫だから!」

美月「そっか……良かった」ホッ

ゆかり「約一週間の眠りから覚めての第一声がそれって……美月って本当に湊くんの事が大切なんだね」

美月「まーね。弟みたいなもんだからね」

ゆかり「? 弟じゃないの?」

美月「んーん。違うよ。私は……家族が事故で亡くなって、湊のご両親に引き取られてるんだ。だから、湊とは血が繋がってないんだよ」

ゆかり「え……?」

美月「何というか…湊のご両親は湊に興味がないらしくて……」

美月は悲しそうな表情で言葉を続ける。

美月「それで、私が親代わりをする約束で私は引き取られて………まぁ、そんな感じ」

ゆかり「……ごめん。変な事聞いたりして」

美月「ううん、大丈夫だよ。湊も私も心の整理はついてるから」

ゆかり「うん……」

美月の話を聞いたゆかりは何かを決心したかのような表情になる。

ゆかり「………私もね、十年前の事故でお父さんが亡くなってて…何となく、美月にシンパシー感じちゃった……」

美月「……ゆかりも、大変だね」

ゆかり「うん……じゃ、そろそろ行くね。今日退院出来るらしいから……後で湊くんが迎えに来るって言ってた」

美月「わかった。ありがとう、ゆかり」

ゆかり「うん。じゃ、また後で」

そう言って、ゆかりは足早に病室を去っていく。

美月「……あ。あの変なヤツの事を聞くの忘れてた」

コンコン

美月「どうぞー」

湊「よ」

美月「湊。ヤッホー」

湊「………元気そうだね」

美月「まぁね。体は問題ないよ」

湊「そっか。じゃ、退院しますか。荷物はまとめてる?」

美月「準備はバッチリだよ…………湊、その…この間の夜の……」

湊「それは夜に説明するらしいから……夜中、四階の作戦司令室に集合ってさ」

美月「………うん」

湊「荷物、持つよ」

美月「…うん」

~夜中 学生寮 作戦司令室~

美鶴「全員集まったか……では、始めようか?」

美月「あの、その前に一つ質問が……そっちの人は………」

明彦「……あぁ。そうか。初対面だったな………俺は、月光館学園三年、真田明彦だ。よろしく」

美月「あ、夜野美月です。よろしくです」

ゆかり「私も質問が……何で、順平が居るんですか?」

順平「へへっ。いや―色々あってさー。昨日棺桶が沢山並んでる所でマジ泣きしてるとこを真田先輩に助けられて……泣き顔見られてハズカシー、みたいな?」

ゆかり「ワケ分かんないし………桐条先輩、こんな奴も、ですか?」

美鶴「彼にも適性がある。知っておくに越したことはない」

ゆかり「確かに、そうかもしれませんけど………」

美鶴「では、今度こそ始めようか」

幾月「君達は1日が24時間ではないと言われたら、信じるかい?」

美月「はぁ…?」
順平「へ?」
湊「……」

幾月「反応薄いねぇ……」

反応の薄い三人に苦笑いをする幾月。

美鶴「君達は既に体験しているはずだ。………消える街灯り、停止する機械、不気味に立ち並ぶ棺桶……これらの現象は全てある時間にしか起こらない。そしてその時間は、ある特殊な才能を持った人物しか体験出来ない」

美月「ある時間……?」

美鶴「1日と1日の間に存在する時間……我々はその時間を《影時間》と呼んでいる」

美月「影時間……」

幾月「まぁ、ただ不思議な時間があるだけ、ってことなら問題無かったんだけど、その影時間には人を襲う怪物……我々が《シャドウ》と呼ぶモノが跋扈している」

美月「シャドウ…?……あ!まさかこの間の黒いヤツ?!」

美鶴「そう。……君達が見たあの巨大な怪物もシャドウだ」

順平「?シャドウ…?俺、見たことないけど……」

明彦「お前は昨日襲われただろ。黒いスライムみたいなヤツだ」

順平「……えぇ!?じゃあ俺危なかったんじゃ!?」

明彦「ギリギリだったな……まぁ最初は不安定になって軽い記憶障害が起きるらしいからな。そのせいだろう」

順平「ま、マジっすか……」

ゆかり「もう、順平は黙ってなよ………」

順平達のやり取りを笑顔で見ていたが、幾月は急に表情を真剣なモノに変える。

幾月「さて、ここからが本題だ……我々は《特別課外活動部》…表向きは部活だけど、実際はシャドウを倒す為の集団だ」

美鶴「メンバーは私、明彦、岳羽そして……有里も、だ」

美月「え……?湊も……?」

湊「………」

美鶴「有里は一週間程前からだ。ペルソナの召喚も苦もなく出来るようだしな」

美月「ペル…ソナ?」

幾月「簡単に言えばシャドウに対抗する力だよ。シャドウはペルソナ使いにしか倒せない。そして、夜野さん、伊織くん。君達にもその力が備わっている」

順平「えーっと……つまり、俺達は人を襲う化け物をぶっ倒せる。ってことッスか?」

幾月「そういうこと」

美鶴「そこで君達に頼みがある………我々と共に特別課外活動部《S.E.E.S.》の一員になって欲しい。……勿論、強制はしない。最大限、君達の意志を尊重する」

順平「………」

美鶴「最悪の場合、命を落とす可能性もある。十分に考えて結論を出しても……」

美月「やります」

ゆかり「美月……」

美月「湊が戦ってるのに私が何もしないなんて有り得ないですし」

湊「ダメ……って言っても無駄だよね」

美月「勿論。いくら湊の言葉でもそれはきけないよ」

湊「はぁ……長年の苦労が水の泡だよ……まぁ、姉さんらしいけど」ボソッ

美月「?」

美鶴「美月は手を貸してくれるのか………ありがとう」

美月「いえいえ」

美鶴「伊織、君は……」

順平「や、やりますよ!! 女の子が戦うのに男の俺が黙って見てるわけにゃいきません!!」

美鶴「そうか……」

ゆかり「バカね」

明彦「まぁ、戦力には違いない。意志と覚悟があるならそれでいいさ」

明彦「………さて。意見も揃った事だし、そろそろ行こうか」

美月「へ?…えっと……どこに、ですか?」

明彦「あぁ。この人数なら問題無く行けるだろう」

美鶴「明彦!、流石にいきなり《タルタロス》に行くのは……!!」

幾月「いや、どの道タルタロスには行かなければいけないし……早い方がいいさ」

美鶴「しかし……!!」

幾月「それに、アソコに行けば生半可な覚悟は直ぐに砕ける…本当に彼等に覚悟が有るかどうか分かるだろう?」

美鶴「理事長! そんな言い方は」




順平「タル……何だって?」

美月「タルタルソースじゃない?……そういえば最近、湊お手製のアジフライ食べてないなー」チラッ

湊「はぁ……了解。明日はアジフライだね。タルタルソース付きの」

美月「やった!」

ゆかり「あんた達ねぇ……先輩達が険悪なムードなのに……湊くんのアジフライ、そんなに美味しいの?」

美月「絶品だね☆」

湊「姉さん、なにそのテンション」





美鶴「ハァ……分かりました。では今回は一階を捜索するだけという条件なら」

幾月「うんうん」

明彦「よし。みなぎってきたな!」

美鶴「明彦、お前は捜索には加われないぞ。怪我が完治してないだろう?」

明彦「なん……だと?」

美鶴「ここだ」

順平「……ここって、俺らの学校じゃないッスか。タルなんとかに行くんじゃ?」

明彦「まぁ見てろ。直ぐに分かる」

美鶴「そろそろだな……」



美月「それでね、湊は意外とデザートも作るの上手で……」

ゆかり「へぇ~。甘い物なら私も結構うるさいわよ?」

美月「それが中々の物で……」

湊「いや、和やかなのは良いけど、ここは緊張する場面だよ……ほら、桐条先輩、こっち見てるって」



美鶴「…………」

明彦「……ゴホンッ…さぁ、もう直ぐ12時だ」













ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

午前0時…ありとあらゆる電子機器が停止し、人が棺桶の形に《象徴化》した時間。

そして、月光館学園の闇の姿が現れる。

順平「なん、だよ……これ」

美月「うそ……学園が……塔に?」


月明かりに照らされた巨大な塔は、不気味という言葉がピッタリな姿をしていた。


美鶴「コレが《タルタロス》だ」

順平「これ!? ちょ、じゃあ、俺達の学園は!?」

美鶴「心配するな。影時間が終われば学園は元の姿に戻る」

美月「スゴ……って、湊はあんまり驚いてないね?」

湊「まぁ。姉さんが病院に居る間ここでペルソナ能力を鍛えてたし」

美月「へー、って、私聞いてないよ!?」

ゆかり「ハイハイ。姉弟喧嘩は後にして」

美月「う」

ゆかり「桐条先輩」

美鶴「ああ。今日はここの中を探索する」

順平「マジっすか……」

明彦「なんだ? 怖いのか」

順平「ま、まっさかぁ!張り切って行きましょーーー!」

~タルタロス内部~

順平「おお…中もスゲーな」

明彦「ここにシャドウがウジャウジャいると思うと、血が滾るな」

美鶴「明彦」

明彦「ぐっ…分かってるよ」

ゆかり「あ、真田先輩、まだ怪我治ってないから探索は……」

明彦「分かってるよ……」

順平「探索、ッスか?」

美鶴「ああ。このタルタロスはシャドウや影時間の事を知る為の最重要地点だ」

明彦「俺達も長い事シャドウと戦ってきたがタルタロス内部は初めてでな」

順平「へー。そーなんッスか」

ゆかり「……あれ?美月達は……?」







湊「姉さん、見えてる?」

美月「うん。バッチリ」

湊「そっ。じゃあ、行くよ」



カチャッ

イゴール「ようこそベルベットルームへ」

イゴール「早速我がベルベットルームをご使用頂き光栄で御座います」

イゴール「さて。あなた方は始まりの地に足を踏み入れられたようだ」

イゴール「これからあなた方に訪れる試練。それに対し、我々も微力ながら力添えさせて頂きます」

イゴール「あなた方の《力》については、既にご理解頂けているようだ」

イゴール「………おや。そろそろ時間のようですな」

イゴール「またのお越しをお待ちしております」

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