男「ものがたりろん」 (9)
男「なんで俺、こんなところにいるんだろう。早く家に帰って……」
「……ふむ、これは夢かな」
女「ねぇ、キミ」
男「うん? お前、いつの間に……」
女「物語のハッピーエンドは、どうしてどれも安っぽく見えるんだろうね」
男「……そうかな、バッドエンドの方が俺は嫌いだけどね」
女「まぁ、結局は価値観の違いに落ち着くんだろうけどさ」
「それでも私はバッドエンドを推すね。カタルシスって言葉も、まぁ今でこそ多義的で定義も怪しいけども、元々は悲劇的な感傷を指すものであるわけだし」
男「さぁ、俺はその辺詳しくないのでなんとも」
女「結局のところさ、ハッピーエンドは私達に何も与えてくれないんじゃあないかなって」
男「ふーん……」
男「それでも俺はさ……」
ジリリリリリリ
男「ん? 電話かな?」
女「始まりの鐘だよ」
男「え?」
女「それじゃあ、またどこかで会いましょう」 クルッ
男「ああ、もう行くんだ」
女「次に会うときは、きっと、もっと不幸なところで、ね」
男「どっちかというと、幸せなところの方がいいかな」
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ジリリリリリリリリリ
男「なんだ目覚まし時計の音かよ。我ながらベタな起き方だな」ハァ
男「…………」
男「ってか、これ俺のじゃないぞ」バッ
男「つーかよく見たら、そもそも俺の部屋でも布団でもねー」
男「夢の延長かよクソ」
ドンドン ドンドン
男「だ、誰だ?」
?「おにいちゃーん、早く起きないと遅刻するよっ!」
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