・モバマスのSSです。
・初投稿、地の文有りです。
・読者の方々の認識と登場人物の性格・発言等差異がある場合があります。
拙い文章力故に長丁場になるかもしれませんが、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1381687178
お、いちごパスタか?
両親について良い思い出と呼べるものは数える程しか無い。
ただ、私は母親の料理している背中が好きだった。
料理の味よりも、誰かが自分のために食事を用意してくれている。
そんな些細なことが何よりも嬉しかった。
学生時代は本気でプロを目指して料亭で働いていた。厨房の匂いが、手の込んだ長い仕込みが、より美味しいものを作ろうとする周囲の姿勢が好きだった。厳しいながらも私は確かにそこに充実感を感じていた。
しかし、結局私は料理の道では無く、全く無縁だったプロデュース業の道を歩むこととなった。きっかけは宗教に嵌まった母親が、私の安らぎの場であったキッチンの天井や床に教団の教えが書かれた紙を大量に貼り始めたことだった。一番大事な拠り所が汚された気分になり、しばらく厨房を離れた。
行き場を失い、人生に絶望しつつあった自分は社長に救われた。
「人を育てるのも、素晴らしい料理を作るのも、本質的なものは同じだと私は感じている。もしよければ、うちでプロデューサーとして働かないか?」
ナニカに縋りたかった私は、この言葉を信じた。
正直、今でもこの選択が正しかったのか分からない。
だだ、プロデューサーとしてアイドルを支え、まっすぐ前を見据えている彼女たちが、私が作った料理を食べ、本当に嬉しそうな笑顔を浮かべてくれた時、安心するのだ。ああ、良かった。私はまだ人と触れ合うことができるのだと。
だだ、プロデューサーとしてアイドルを支え、まっすぐ前を見据えている彼女たちが、私が作った料理を食べ、本当に嬉しそうな笑顔を浮かべてくれた時、安心するのだ。ああ、良かった。私はまだ人と触れ合うことができるのだと。
「プロデューサーの料理の腕は確かに素晴らしいです」
若干困ったような表情でリゾットを頬張りながら、事務員の千川ちひろさんは言う。
リスのように食べ物を頬張っている姿は大変愛らしい。
「それは良かった。もう少し追加しますか?」
「ええ、お願いします。このリゾット美味しいですね」
「少し多めに入れておきますね」
「ありがとうございます。家庭的で栄養バランスも考えられているのはとても良いと思います」
「アイドル同様に社会人は体が資本ですから」
「おっしゃる通りです」
ちなみに材料費は毎月アイドルの給料から天引きしているが、アイドルの人数が多いため微々たる金額に留まっており、幸い今の所苦情は無い。私としては両親とあまり食事をする機会の無い志原仁奈等の年少組が喜んでくれるのが何よりも嬉しい。
「一緒に食べるでごぜーますよ!プロデューサー!」
仁奈の食事の際のあの笑顔は最高だと思う。一度カメラに収める機会があったらそうしよう。
まーた料理人Pか
はよ
「でもね、明らかにプロデューサーの料理はおかしいんですよ!どう考えても普通じゃないんです!」
「……味や材料に何か問題でも?」
近くの商店街から購入している材料に特段問題があるとは思えないのだが。
「どんでもない!美味しいですよ」
ブンブンと首を振って否定してくれるのは嬉しいが、ちひろさんの髪の毛が料理に触れそうで怖い。
「異常なのは料理の効果です!どこのイタリア人のスタンド使いですかあなたは!?」
「トニオさん地味に好きなんですよ」
「でも、パール・ジャムってスタンドは明らかに料理に入れていい外見じゃないですよね?」
「ミニトマトに手が生えた感じですからね。それよりも何でスタンドが食べられてトニオさんにダメージが無いのか気になります」
「あ、それ私も思いました。って、違います!今はその話ではありません!」
アイドルは皆、激しい運動量をこなしているし、栄養管理をきちんとすれば体調がよくなるのは当然のことだと思うのだが、一体何が不満なのだろうか。
志原仁奈・・・・また新しいアイドルが追加されたんか
「料理自体に不満はありません。むしろ結婚して三食作って欲しいくらいです」
「前向きに検討しておきますよ」
「私はいつでもいいので」
「はい、では続きを」
「さらっとスルーして逃げないでください」
「ええ、続きをお願いします。何が不満なのか具体的に」
「………スタドリが全く売れなくなりました。年少組はともかく、学生組や大人組も何が入っているか分からないスタドリよりもプロデューサーの料理の方が健康に良いって」
「そもそもアイドルとプロデューサー相手に商売しないでください。あとスタドリの原材料ってなんですか?未だに不明なんですけど」
「企業秘密です。在庫大量に抱える羽目になるんで買ってください」
「お断りします。材料不明な薬品なんて飲めません」
「堅物ですね。市販薬だって材料不明じゃないですか」
「それとこれは別です。プロデューサーとしてアイドル及び自身の健康管理は義務ですから」
「まあ、スタドリの件は結婚して責任とってもらうからいいとしましょう」
これ以上結婚を迫られた場合、辞表を書くべきだろうか。ちひろさんと結婚した場合、確実に金銭的なトラブルを抱える羽目になる気がする。
>>7様 申し訳ありません。入力ミスです。
誤:志原仁奈
正:市原仁奈
再度文面を確認してから続きを投稿させていただきます。
お手を煩わせて大変申し訳ありません。
ちっひと結婚できるなら全財産投げ打ってもいい
「明らかにプロデューサーの料理を食べた人が進化してます!というか、一部のアイドルなんてキャラが完全に崩壊しています!もう何人か完全に人間止めちゃいましたよ!」
「そうですか?」
某ロボット発明家や元婦警等、元々人外染みた能力の持ち主は何人かいたような気がしなくもないのだが。
「ええ、監視カメラでその様子を撮影しましたのでご覧ください」
「盗撮の件は、あとで早苗さんに通報しておきますね」
「コレを見てからでもそれが言えますかね。人間離れし過ぎにも程がありますよ」
どこか含みのある笑顔でちひろさんはビデオを再生した。
料理人Pかと思ったらなんか変な方向になってきたぞおい
Case.01 北条加蓮の場合
「加蓮。少し疲れた表情だけど大丈夫か?」
「今日のレッスン少し厳しめだったからね。あと、Pさんお腹空いた」
「それを早く言え。毎日三食ちゃんと食べるって約束だろ」
「守ってるから大丈夫だって。過保護だなぁ」
映像内の加蓮と私は呑気に会話をしているが、正直人間一人の体調を管理するだけでも結構気を使うのだ。今は心臓に毛が生えているのではと時折思わせてくれるようになったが、いつ再発するか分からないため、加蓮が扱う仕事内容については細心の注意を払っている。
「過保護なくらいがちょうどいい。加蓮の場合は特に」
「んー、でも、Pさんがご飯作ってくれるようになってからジャンクフードあんまり食べなくなったし、自分でも少し作り始めたし」
「ああ、その件については親御さんからお礼言われたよ。やっと、加蓮が料理に興味持ってくれたし、健康的になったって」
「あー、はいはい」
「まあ、本当に良かったよ。加蓮が逞しくなってくれて」
「逞しいってアイドルに言わない方がいいよ。気にする子もいるだろうから」
「デリカシーが足りなかったな。すまない」
「ん、別にいいよ。まだ時間かかりそうだからゴミ出しておくね」
「すまん。助かるよ」
この映像を見て大人組に改めて事務所内での飲酒を避ける様に言い聞かせる必要があると思った。
映像内では尋常ではない量の空き缶やワインの空き瓶、ワンカップの瓶等がゴミ箱の近くに放置されている。
加蓮が呆れた様子でそれらを小さく握り潰してゴミ袋に入れている。年少組の情操教育にも良くないのでそろそろ対策を練るべきだろう。
「あーあ、昔はレッスンとかめんどくさいとか、だるいとか言ってた私が自主的にゴミ出しかぁ」
「確かに口では文句言っていたけど、一度も途中で投げ出したり、帰ったりしなかったからな。加蓮の担当を選んで良かったと思ってるよ」
「それ、言ってて恥ずかしくない?」
「昔、体調崩した加蓮にご飯食べさせる時にプライドなんて捨てたよ」
「お粥作るのに鮮度の良い材料が無いからって直接農家に頼み込んだよね。あまりの過保護ぶりにお母さんがちょっと引いてたよ」
「…少しショックだ」
この会話には覚えがある。確か加蓮が某ハンバーガーチェーン店の新作のライスバーガーのCMに出演した頃なので約2週間程前のことだ。
加蓮に何度か1日店長を務めてもらい、インターネット上でかなり話題になった後にCMに取り組んだのでかなり知名度の向上にはつながった案件だ。
「…最近、仕事多いけど無理してないか?」
「大丈夫。あなたが育てたアイドルだよ」
「どういう意味だ?」
「ちゃんと無理しない様にずっと見ててくれるって信じてるってこと」
「分かった。気を付けるよ」
「私さ、絶対Pさんが居なくなったらまた体調崩すと思う」
「胃が痛くなるから止めてくれ」
「Pさんが私のプロデューサーやってくれてる間は問題ないから心配ないよ」
「なら、いいけどな。ほら、パスタできたぞ」
「ありがと。あと、Pさん。私に言わずに結婚とかしないでね、不安になるから」
「何度も言われてるし分かってるよ」
「もし破ったらライスバーガーの刑ね」
普通に缶握りつぶしてるがこれくらいは序の口か・・・
一旦映像を切ってちひろさんは深呼吸をした。
若干リゾットが口のまわりについているのはご愛嬌。
「今の映像に明らかにおかしい点があります」
「別に普通だと思いますが?」
食事を作りながら加蓮と話していただけだ。何処にも違和感など無い。
汚れたお札を見つけた時のような表情でしばらくちひろさんは黙っていたが、やがて自分の机から何かが書かれた紙を取出した。
A社企画リスト9月度 北条加蓮
①CMテーマソング収録:1件
②ファーストフード店1日店長:都内2件
③ファーストフードの新商品のCM:1件
「このCM覚えてますよね?」
「もちろんです。担当アイドルのことですから」
加蓮が1日店長を務めた際に大勢のファンと取材陣が訪れた結果、店内のパンが切れてしまい一時注文を受け付けることができなくなった。
幸い米が残っていたので急遽『加蓮のギュッ♡とライスバーガー』を独断で販売。
これがきっかけとなり、A社は公式な商品として販売、もちろん当該商品のCMには加蓮が出演した。
CMの長さは25秒程度だが、インパクトが凄い。
通常の宣伝ならば、出演者の知名度、より食感をリアルに見せる為に具を派手にアップしたり、肉が焼ける食欲をそそる効果音等に力を入れるがこのCMは一切それが無い。一切CGを使用しない。
加蓮が微笑んでご飯を握って、具を挟む。
そして、『愛情注入しました』というセリフと共に若干潤んだ目で加蓮がバーガーを掲げる。
それだけのCMだ。
しかし、これが売れた。何故ならば、加蓮は炊飯器にから醤油のかかったご飯を取出して握ると何故か焦げ目がついている。それも綺麗なハート型に。
ご飯の両面に綺麗なハート型が焼かれている『加蓮のギュッ♡とライスバーガー』
加蓮が一日店長を務めた店で即興で見せたこの技がインターネット上の動画で話題となり、製品化へと至った。
『え、マジで?』『自演乙』『どうせCGだろ?』等の噂がもちろん相次いだが、生放送で実践して以降、この手の話題は徐々に減りつつある。
「どうやって作ってるんですか?あのバーガー、もとい焼きごはん。あとさっきの映像のここ!
どう見ても空き缶や空き瓶をペッタンコに潰してから捨ててますよね!病弱な女子高生が空き瓶潰せますか?」
「ああ、それ気になって本人に聞いてみたんですよ」
「それでなんて言ってたんですか?」
『Pさんのこといろいろ考えながらご飯握ったらできた』
「なにそれこわい」
ちなみに、何故かCuで同じことができる子が多かった。
「あと、ライスバーガーの刑ってなんですか?」
「根性焼きです。あのハート型の」
「や、やられたことあるんですか?」
「もちろん無いですよ」
「ですよねー」
流石に冗談だろうが、もし本当にやられたら一生消えない気がする。
あのCMは加蓮の今までの過程をかなり正確に沿っている。
最初は煮え切らず、燻っていた加蓮が本格的にアイドルとして活躍し、打たれた鉄のように熱い。
そんな加蓮の状況を如実に表している気がしてこのCMはかなり気に入っている。
「料理は情熱次第と、加蓮談」
「確かにそうなんですけど!そうなんですけど!何か違うんですよ!致命的に!」
「そうですか?内心は熱い加蓮らしいと思いますけど」
「…もういいです。次行きましょう。次」
何か諦めた目をしてちひろさんは空になった皿をこちらに差し出した。
「もういいですよ、この魔窟で生きるために責任とってもらいますから」
「はいはい」
一番変わったことと言えば、ちひろさんが以前ほどお金に執着しなくなったことだと思いながら黙ってちひろさんの皿に料理を追加した。
現時点では以上です。
『北条加蓮』は病弱故に達観していた人生を、身体的なハンデを乗り越えアイドルになったため、人一倍執着、情熱を抱いているイメージがありましたのでこのような形になりました。
お目汚し大変失礼致しました。
空き瓶潰してたのか…
ヒェッ…
加蓮からシュインシュインって音が…
割らずに圧縮でもしてるのか…
俺のこの手が真っ赤に燃える?(錯乱)
き、きっとアルミ缶だよ(錯乱)
音速を超えた結果、ガラス化が起きてぺったんこになったんだな(錯乱)
内容はいいのに、とにかく読みにくい
地の文で発言者名を頭につけないタイプは最も文章力が要求されるから
ほかの地の文SSを参考にした方がいいと思う
話はおもしろいから期待してる
瓶ってどうやって折るんだ……
熱で溶かしてる
某パン漫画を超えた太陽の手の持ち主なんだよ(目そらし)
情熱(物理)で溶かしてるんでしょ
Cuに同じことできるアイドル複数いるみたいだけど、CoやPaにはどんな特殊能力が付与されとるんだ?
そんなに読みにくいか?
充分読みやすいよ?
鍵カッコが連続しすぎなんよ
口調の似ている話者で進める>>8とかが顕著
まだ二人だけだからマシだけど、三人以上になったら破綻するよ
いや普通に読める
心配は解らんでもないが、三人以上になるまでは静観でいいでしょ
現時点で破綻してるわけでなし
この程度で「とにかく読みにくい」とかどんだけ
SSって文が台本調だからね・・・
鍵括弧だらけなのは、まぁ仕方ないって言うか
>>1です。
多くのアドバイスをありがとうございます。
少しでも読みやすい文体に仕上がるよう今後も精進致します。
続きとなる白菊ほたる編がある程度完成しましたので、様子を見て投稿させていただきたいと思います。
そういえば前に幸子が超堅い奴あったけどまさか……
Case.2 白菊ほたる
白菊ほたる。過去に所属していた事務所が相次いで倒産したという経緯の持ち主。
何故か彼女の周りにいると不幸なことが起こると噂されていた少女。
辛い過去を抱えながらもアイドルを目指す一途な姿勢に惹かれ、私は彼女をスカウトした。
「ほたるちゃんは本当に逞しくなりましたよ。ええ、本当に」
加蓮の件では納得がいかなかったのか、若干不機嫌そうな様子でちひろさんは食後コーヒーを飲みつつ呟いた。
「逞しく成り過ぎて人間止めちゃいましたからね」
ほたるが若干人間を止めてしまったことは確かに否定できない。
あの年齢で少しだけ腹筋が割れてしまった。初めて見た時かなりショックを受けた。
「巷でのほたるちゃんの呼び名知ってますか?」
「ええ、『リアル閻魔ちゃん』ですね」
あの不幸体質の少女がこのように呼ばれている。世の中どうなるか分からないものだ。
「プロデューサーさんが原因ですからね」
「……まあ、そうですけど、結果しては良い方向に進んだのでは?」
無言でちひろさんが頷く。実際、当事務所でテレビの主演回数だけならほたるは上位に入る。
また、番組の話題性もあり、知名度も向上しつつある。決して悪いことではない。
「警察から頻繁に感謝状が届くプロダクションって多分うちだけですよ」
そう、ほたるが正確にはほたるの不幸体質が変わってから警察から礼状や謝礼が頻繁に届くようになった。凶悪事件が未遂に防がれたこともある。
腹筋は割れたが、別にほたるが筋肉質になり、犯罪者をなぎ倒している等というわけではない。断じてない。
ただ、社会問題や環境問題を取扱う教育番組に出演しているだけである。
しかし、その教育番組が放送された後、恐ろしい頻度で闇に葬られた事件が明らかになる。ほたるが出演した後に必ずといって程に天罰が如く悪事が明るみに出る。
政治家の汚職が番組で取り上げられた時には、大物政治家による汚職事件が。
環境問題が取り上げられた際には、不法投棄を行っていた業者の存在が。
人種差別が取り上げられた時には過激派が企てていたテロが。
コンピューターの仕組みを取りあげると、ウィルス作成者の所在が。
動物の生態を題材にすると、条約で保護されている動物を取扱うペットショップが。
アイドル事務所の仕組みが話題に挙がれば、薬物問題が。
しかも1つ発覚すると芋づる式で10件近く見つかる。
それも、証拠を運悪く落してしまい警察官が拾った。
運悪くウィルスにパソコンが感染し、情報が漏れてしまった。
運悪く車が事故を起こしてしまい、盗品を道にばら撒いた等々、運悪く、たまたま悪事がバレてしまう。
ほたるが番組に主演した後1時間以内に必ず、誰かが、運悪く、悪事がバレ、裁かれる。
偶然と笑い飛ばすにはあまりにも高いその確率に、誰も何も言わなくなった。
今では未解決事件の親族の方々や行方不明者の捜索依頼がほたるに来るほどだ。
そして、事件に巻き込まれている場合、犯人が何かしらミスを犯し、事実が判明する。
いつの間にか歌って、踊って、事件も解決できちゃう『リアル閻魔ちゃん』と呼ばれていた。
「私、ちゃんとアイドルできてますか?皆を笑顔にできていますか?」
たまに不安になるのか、時折ほたるはこうした質問をしてくる。その度に笑顔どころか人命救助に貢献している。正直、ここまで社会に貢献できる人間はいないのではないかと思うと告げると、ほたるは嬉しいような、困ったような微妙な笑顔を見せてくれる。そんなひと時が私の楽しみだ。
少なくとも私は彼女をこのような方向性にプロデュースしたことを後悔してはいない。
間違ってはいない。きっと、たぶん、うん、大丈夫だ。
「はいはい。現実に還って来てくださいねぇ~」
ペシペシとちひろさんに頬を叩かれ、思考に没頭していた意識が元に戻った。
「まあ、ほたるちゃんの現状は一旦置いておいて、どうやってあの子の不幸体質を改善したんですか?」
「してませんよ。たぶん、そんなことできません。ただ、方向性を決めただけです」
どうしうやってと視線で問われるが、私は原理が分からないため説明が難しい。
また、自意識過剰気味だったほたるに自信をつけさせるための対策を講じたことも大きい。
「健全な魂は健全な体に宿るですか?体育会系思考ですね」
ジト目のちひろさんは地味に可愛い。
「当事務所の幸運の女神、天才科学者の協力があってのことですよ」
当然の対処法として、当事務所の幸福の女神こと鷹富士茄子と常に一緒に行動させた。
結果、ほたるの周囲が不幸が起こる回数が激減。曰く、幸福の御裾分けらしい。
ただし、これだけでは根本的な解決には至らない。
ほたるのご両親のご協力を得て独自に調査を行い、対策を考えた。
ほたるは根が優しく、真面目な少女だ。芯も強く、アイドルであることに対しても熱心であり、向上心がある。
両親も娘想いで人柄も良い。また、ほたる自身が大きな怪我や病気を患ったことはない。至って普通だ。
しかし、実際に過去に彼女が所属した事務所はどれも不幸にも潰れている。
結論から言えば、ほたるが最初に所属した事務所が悪かったと言わざるを得ない。
ほたるが所属する前から資金繰りのトラブルがあり、いつ倒産してもおかしくなかった。
ほたるが次に所属していた事務所も、倒産した事務所のアイドルを引き抜く程人材が不足していた状況だった。
ただ、それらを除いてもほたるの周りで不可解な出来事が多いのは事実だ。
ご両親が随時起きた出来事を日記に記してくれていたため、その異常性はほたるの過去を知らない私でもある程度知ることができた。
一旦日記の内容を、日付、曜日、回数等に分けて分析したところ、法則性があることが分かった。
曜日や日付に応じて1日に起こる不幸な出来事の回数が決まっているという法則性が。
法則性があるならば対処できる。そのことを告げた時、ほたるは最高の笑顔を見せてくれた。
その後、当事務所の某青狸兼問題処理担当と数週間に及ぶ議論と検査の結果、
①ほたるの周辺で不可解な出来事が起こるのは事実。
②完全に無くすことはできないが、回数は分かっている。
③なら、その回数だけ発散してしまえばいい。
④折角なので世直しに活用してみよう。
⑤じゃあ、不幸を集めて悪党に飛ばすロボ作るか。
トントン拍子で話は進み、ロボ、もとい開発者命名『あめのちはれ』が完成。
ただ、完成したものの、軽量化が大きな問題となった。自立走行等は内部が精密過ぎてできなかったらしい。
常に携帯することが条件なだけに、軽量化はかなり深刻な問題。
車輪が付いた鞄に入れてもかなりの重量になってしまう。
そこで、ほたるのネガティブ気味な思考を改善することも踏まえ、体力トレーニングに務めた。
食事も3食共に作り、重たい機械をある程度引っ張れるよう本人も懸命に努力した。
無論、自分が普通の幸せを手にするために他の誰かを不幸にすることに対して、ほたるは難色を示した。
当然と言えば、当然。心優しいほたるらしい悩み。
「大人らしく。ズルいことを言わせてもらうとね」
ほたるの頭を撫でながらその時伝えた言葉は今も覚えている。
「ほたるは全部を我慢しなくていいと思う」
そんなに小さな体でたくさんの不幸を抱え込んで来たのだから。
「ちょっとだけ、ズルくなって、欲張りになって」
子供らしくホットチョコレートでも飲みながら、たまに我儘を言っていい。
「悪いことしたらダメですよって思っていいと思う」
悪いことをしたらバチが当たるのは当然ってね。
「それでも誰かを不幸にすることなんてできません。悪い人でもです」
泣きそうな表情でほたるは私に訴えた。ああ、この子はどこまでも優しいのだろう。
「分かった。それなら止めよう。ただ、今後アイドルを続けるために1つだけ約束して欲しい」
駄目なら担当プロデューサーから外させてもらうと言い聞かせてから、ほたるにあることを約束させた。
「って、ほとんど脅迫じゃないですか!?」
回想を遮ってちひろさんが叫んだ。まあ、実際その通りなのだが。
「親御さんに知られたらどうするんですか?」
「とっくの昔に報告しましたよ。殴られるつもりでした」
本当にほたるのご両親には頭が上がらない。
「それで、ほたるちゃんを脅して何て約束させたんですか?」
机に顎を乗せ、プクーッと膨れた顔のちひろさんに問われた。
「第一に自分の幸せを考えること」
それを幼い少女に無理矢理約束させた自分は最低だと思う。
「自分の幸せすら考えられないアイドルをプロデュースすることはできないと言いました」
「汚いですね。さすがプロデューサー汚い」
「誉めても何も出ませんよ」
「矯正してあげるんでこの婚姻届にご記入を」
「汚い大人なのでお断りします」
ちひろさんの調子が戻ったらしい。それにしてもいつも常備しているのだろうか。
「プロデューサーさんは、笑顔になってくれますか?」
私の脅しに対してほたるは涙を流しながら聞いてきた。
「私が少しだけ幸福になって、トップアイドルになったらプロデューサーさんは嬉しいですか?
もしも、事務所が潰れちゃっても我儘な私のプロデューサーさんでいてくれますか?
困ったら相談していいですか?辛くなったら泣いていいですか?」
溜め込んでいたものが溢れ、涙声になっていたほたるに対して私はいいんじゃないかなと軽めに応えた。
まあ、私がほたるとの約束を破る「悪い人」になったら、一生分の不幸をぶつけてくれと加えて。
「ほたる。まず、自分が幸せになる努力をしよう。ちゃんと手伝うから」
「そして、現在に至ると」
おもしろくなさそうな表情でちひろさんが締め括った。
そして、少し間を置いてこう言った。
「ぶっちゃけ、ほたるちゃんの体質って某黒いノートの上位系じゃないですか」
「ちひろさん。それ以上はいけない」
それほど物騒な能力ではないはずだ。
最悪の場合、私がほたるの一生分の不幸を被ることになるだけで。
あれ、もしかして、かなり危険な地雷を踏み抜いたのでは?
「はーい、次行きましょう。次」
パンパンとちひろさんが手を叩いた。
心なしか胃が重くなった気がした。
第2話白菊ほたる編は以上になります。
お目汚し失礼致しました。引き続き文章力の向上に努めます。
その他の登場予定として後2名ほど考えているのですが、皆様からのアドバイスやリクエスト等ありましたら、貴重な参考意見とさせていただきますので、教えていただけると幸いです。
村上のお嬢を!!
特徴が無いのが特徴の娘はどう進化するのん?
新田ちゃんおにゃーしゃー
関ちゃんが見たいです
ありすちゃん見たいです
だりーな!
だりーなはよ!
乙
輝子をください(意味深)
ほたるがこれなら女神こと茄子さんはどうなってまうの?
きーらーりんっ☆をおにゃーしゃー☆
聖來さんオナシャス!!
美優さんを
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