【まどマギ】魔法少女スーパーさやかちゃん (67)

短編なので、一気に投下します

さやかメインのドタバタものです

変態ほむらさん注意

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1380645164

ほむら「これが魔法少女の真実よ」

まどか「嘘…」

さやか「それを信じろっていうの?」

マミ「んー!んー!んー!」


転校生、暁美ほむらが語ったQBの正体…


魂を抜きとってSGに変える?魔女は魔法少女の成れの果て?絶望した時の感情エネルギーが目的?


ほむら「巴マミ……あなたには辛すぎることでしょうけど」

マミ「んーっ!んんーっ!」


マミさんは暁美ほむらに拘束され、ギャグボールをかまされている。


こんなものどこから手に入れたのよ。


ほむら「疑うなら、QBに聞いてみるといいわ」

さやか「で、でもさ、QBはそんな都合の悪いこと、簡単に教えてくれるもんなの?」

ほむら「契約にはこちらの同意が必要よ。聞かれた以上、嘘をつくことはできない」


参ったなー。世の中、うまい話はないってことか…


ほむら「理解してもらえたかしら?あなたたちは、関わるべきではないと」

まどか「う、うん…」

さやか「確かにねー、そりゃキッツイわ」

マミ「ひっく…ひっく…」

ほむら「泣かないで巴マミ。私もまた、QBに騙された一人よ」

マミ「むぐーっ!くぎゅうぅーっ!」

まどか「と、とりあえず口のやつ、外してあげたらどうかな…?」

ほむら「そうね、でも念のため…」


暁美ほむらはマミさんのSGを取り上げてから、そっと拘束具を外した。

マミ「SGが魔女を生むなら……みんな死ぬしかないじゃない!あなたも……私も!鹿目さんも美樹さんも!」

まどか「えー」

さやか「いや、あたしらはまだ魔法少女じゃないし」


マミさんは激しく取り乱している。だから話の前に縛り上げたのか。


ほむら「落ち着きなさい。絶望すればSGが濁るわ」

マミ「これが落ち着いていられるわけないでしょう!」

ほむら「このまま魔女になるというなら……今すぐ殺してあげるわ、巴マミ!」

さやか「ちょ、ちょっと待って!」


マミさんのSGに、銃を突きつける暁美ほむら。コイツ本気だ。


さやか「マミさん、QBに話を聞いてみようよ。もしかしたらコイツの勘違いってことも…」

ほむら「………」

QB「やれやれ、イレギュラーにも程があるよ」

まどか「QB!?」

ほむら「来たわね淫獣」


いつから聞いていたのか、諸悪の根源QBが姿を現した。

QB「君は何者だい?暁美ほむら。魔法少女であることは間違いないみたいだけど」

ほむら「私に答える義務はないわ。答えなければならないのは、あなたの方」

マミ「QB、嘘でしょ?嘘だって言ってよ!」

QB「事実だよマミ。君もいつか魔力を失い、絶望したときに魔女になる。割と近い未来のようだけど」


うわ、あっさり認めやがった…!


まどか「みんなを騙していたの?」

QB「僕はちゃんと、魔法少女になってくれってお願いしたよ?詳しい説明は省略したけど、何のリスクもなしに、奇跡なんて起こせるわけないじゃないか」


マミさんコイツ殺そう。今すぐ殺そう。


まどか「一体、どうしてこんなことを…」

QB「この宇宙のためだよ。君たちは、エントロピーって言葉を知ってるかい?」

マミ「あなたにぶつける私の鉄拳は、私の受けた心の傷に釣り合わないってことよ!」

QB「いや、だいぶ違ぶげっ!」


自力で拘束を解いたマミさんは、QBに殴りかかっていった。


マミ「信じていたのに!あなたを友達だと思っていたのに!」


瞬く間に肉塊に変わるQB、マミさんの両手も真っ赤に染まっていく。

QB「れっきとした取引なんだけどね。それを騙したというなら、最初から奇跡なんか望まなければよかったんだ」

まどか「え?QBが二匹も…」

ほむら「巴マミに選択の余地はなかった。卑劣極まりないわね」

マミ「二人を一人前に育てたら私は引退して、友達と学生生活を楽しんで、素敵なボーイフレンドを作って、パティシエになる勉強をして、ケーキ屋さんを開いて、幸せな結婚をして、可愛い子供たちに囲まれて、暖かい家庭を築くつもりだったのに!返してよ!私の夢を返してよ!」

さやか「あのー、もしもしマミさん?」


二匹目に襲い掛かったマミさんは、脇目も振らずひたすらQBを殴り続けた。


まどか「ほむらちゃん、ちょっと聞きたいんだけど…」

ほむら「私は永い時を戦い続け、真実を知った。そして鹿目まどか、あなたを救うためにここへ来たのよ」

まどか「あ、えっと……わたし?」

ほむら「一ヵ月後に、この街に現れる魔法少女の天敵…ワルプルギスの夜。そいつを倒したら、全てを話してあげるわ」

まどか「そ、そう…」


なんなの?最初からまどかの質問を知ってたかのような反応…


正体不明の魔法少女、暁美ほむら。何が目的?まどかを救うためだけとは思えない。


さやか「マミさん…」

マミ「美樹さん。死にたくなかったら、もう私に関わらないで」


フラフラと立ち上がったマミさんは、泣きながら一人で帰ってしまった。


あたしもまどかも、かけてあげられる言葉は、何一つ見つからなかった。

まどか「さやかちゃん聞いた?マミさんあれから、ずっと学校休んでるんだって」

さやか「そっか…」


QBを信じて戦ってきたのに、裏切られたんだもん。無理もないよ。


まどか「わたしたちに、何かできることってないのかな?」

さやか「それは難しいけど……一度、マミさんのとこ行ってみよっか」

まどか「うんっ」


こうして、放課後にマミさんの家に向かったあたしたち。


さやか「なんでアンタもついてくるの?」

ほむら「今の巴マミは自暴自棄になっていて危険よ」

さやか「マミさんに限ってそれはないでしょ」

ほむら「豆腐メンタルを甘く見てはいけないわ」

さやか「アンタにも責任はあるでしょうが!」

まどか「まあまあ…」


マミさん宅のチャイムを鳴らすが、応答はない。


さやか「マミさーん、いないのー?」

ほむら「鍵は開いてるみたいね」

まどか「ほ、ほむらちゃん!勝手に入っちゃ…」

ほむら「そんなこと言ってる場合じゃないわ。魔女化するかもしれないのよ?」


確かに、マミさんの安否確認が優先だ。

そっとじ

さやか「おじゃましまーす」


一声かけて室内に入る。が、全員がすぐに違和感を感じた。


まどか「な、何?この臭い…」

さやか「腐臭?まさかマミさん…!」

ほむら「………」


あたしたちは慌てて、部屋の奥へと進んだ。


マミ「あら、みんな揃ってどうしたの?」

まどか「ど、どうしたの?じゃないですよ!」

さやか「良かった……マミさん無事だった……」


想像した最悪の事態はまぬがれたみたい。あたしたちはホッと胸をなでおろす。


ほむら「それはいいけど、なにこの惨状?」


マミさんは思ったより元気そうだったけど、あのお洒落な部屋は荒れ果て、生ゴミが散乱していた。


マミ「ごめんね、ちょっと散らかってて」

まどか「これがちょっと…?」

ほむら「汚部屋と呼ぶのがふさわしいわね」

さやか「それよりマミさん、ずっと学校にも来ないで何してたの?」

マミ「え……そんなに時間経ってたの?つい夢中になってたわ」


そう言ってマミさんは、PCのディスプレイを見つめた。


まどか「これって……ゲーム?」

マミ「違うわ。私の夢を叶えてくれる魔法よ」


マミさん、それ現実逃避…

マミ「みんな私を頼りにしてくれる……友達もたくさんできたわ。あと少しで自分のお店を持つこともできるの」

さやか「そ、そうなんだ」


うっわー、マミさんネトゲにはまっちゃったのか…


マミ「これならあなたたちを安全に育てられるわ。さあ、一緒に戦いましょう」

まどか「えー」

さやか「あ、あたしそろそろ恭介の病院に行かなきゃいけないから、また今度ねー」

まどか「ま、待ってよさやかちゃん、わたしも…」

ほむら「鹿目まどか、巴マミを立ち直らせるチャンスよ。ここは彼女に従いましょう」

まどか「離して!嫌だよこんなの!」


ごめんねまどか……マミさんを頼んだよ。


あたしは一人、逃げるようにしてマミさんの家を後にした。


マミ「鹿目さんは♂キャラで職業はナイトよ。ゆくゆくは私のキャラの恋人になってね」

まどか「…わけわかんないよ」

恭介「自分で弾けもしない曲なんか……聴きたくないんだよ!」

さやか「恭介!?」


病院へやってきたあたしが見たのは、CDを叩き割る恭介の姿だった。


恭介「こんなもの!こんなもの!」

さやか「なにやってんの!ケガがひどくなるじゃない!」

恭介「どうでもいいよ!もう僕の手は動かないんだ!諦めろって言われたんだ!」


傷ついた手を振り回して暴れる恭介。あたしの制止も聞こうとしない。


さやか「だからってこんな…」

恭介「さやかなんかに僕の気持ちはわからないよ!放っといてくれ!」

さやか「このっ…!」

恭介「うごばっ!」


あたしはついカッとなって、マミさんばりの鉄拳を恭介の顔面に食らわせた。


恭介「ざ、ざやが…」

さやか「バカだよ……あたしらまだ若いんだよ?くたばりかけのジジイに治らないって言われたら、はいそうですかって諦めるの?どうして可能性を信じないの?」

恭介「無理だびょ……奇跡か魔法でぼないど」


鼻血を流しながらも、なおネガティブな恭介。


奇跡……魔法か。いいじゃない、やってやろうじゃない。

さやか「決めた。あたしが恭介の手を治してあげる。だからあたしを信じなさい」

恭介「ぶぇ?」

さやか「もし治らなかったら、あたしが一生面倒見てあげる。奴隷でも肉便器にでもなってあげる!」



―あなたはその人の夢を叶えたいの?それとも夢を叶えた恩人になりたいの?



ふと、マミさんの注意を思い出す。


…大丈夫、あたしは恭介を、みんなを救いたいの。間違ったりしない。


さやか「約束だよ。奇跡も、魔法もあるんだよ」

恭介「ざやが、後ろ…」

医者「話がまとまったところで、くたばりかけのジジイの説教を聞いてもらおうか」

さやか「げ…」


病室を追い出され、事務所へ連れて行かれるあたし。


医者「病院で怪我人を殴るとは、一体何を考えているんだ!」

さやか「チッ、ウッセーナ……反省してまーす」


あたしは説教を受けている間に、テレパシーを使ってQBを呼び出しておいた。

QB「美樹さやか、本気かい?真実を知っていて契約しようだなんて」

さやか「覚悟はできてるわ。あたしの願い、叶えてちょうだい」

QB「まどかも君のように、物分かりが良ければ助かるんだけどね」

さやか「うるせえ。まどかにチョッカイかけたら殺すよ」

QB「はいはい。さあ美樹さやか、君の願いを教えてくれるかい?」


あたしは大きく深呼吸をし、QBに願いを伝える。


さやか「あたしは……みんなを救いたい!恭介もまどかもマミさんも!この世界はあたしが救うんだ!」

QB「分相応って言葉を知ってるかい?」

さやか「いいから叶えなさいよ!」


突然、胸が締め付けられる感触に襲われる。まるで、あたしの中から何かを絞り出すような…


QB「契約は成立だ。君の願いは多分、エントロピーを凌駕した」

さやか「多分って何よ」

QB「そんな身の程をわきまえない願いをするなんてね。おかげで大赤字だ」

さやか「よくわかんないけど、ザマァってことね」

あたしの胸の前で、青く光るSGが象られていく。


QB「受け取るといい。それが君の力だ」

さやか「…あまり強くなった気がしないんだけど」


確かに、魔法少女としての力は感じる。でもマミさんと比べると、天と地ほどの差があるように思えた。


QB「本来、魔法少女の潜在力は因果の量で決まる。才能もなく、平凡な人生を歩んできた君では、大した力は得られないよ」

さやか「じゃあ……願い事は?」

QB「どうやら君の能力は【素質】になったみたいだ。叶う可能性はあるけど、全ては君次第だよ」

さやか「…ごめん、わかるように説明して」

QB「要はRPGの主人公になったと思えばいい。LVが上がれば使える力も大きくなる」


つまり、経験を積めばマミさんよりも強くなれるってこと?


QB「ただ、才能の無さだけはどうしようもないね。マミを越えるだけでも、気が遠くなるほどの経験値が必要だよ」

さやか「世界、って言葉が余計だった?」

QB「そうだね。今の君がLV1だとすると、初めて会った時の使い魔は、LV5ってとこかな」

さやか「ちょ、あんまりじゃない!」

QB「僕はただ、赤字を取り戻すために君をサポートするまでだ。簡単に死なれると困るからね」

さやか「お前が死ねぇ!!!」


さやかちゃんは淫獣を倒した!経験値1ポイント獲得!

さやか「恭介ーっ!」


あたしは母親を起こすまどか並みの勢いで、病室のドアを開けた。


恭介「さやか!?…何その格好」

さやか「あたし、魔法少女になったんだ。カッコいいでしょ」

恭介「えー」


やや引いてる気がするけど、そんなことに構ってられない。


あたしは恭介の腕を抱きしめ、回復魔法を発動させる。


恭介「さ、さやか…?」

さやか「これがあたしの魔法。必ず治るから……元気出して恭介」


まだLVの低いあたしじゃ、痛みを和らげるくらいだろう。


あたし絶対強くなるから、恭介も頑張って。




恭介(さやか……意外と大きい……)



恭介(おかげで一部、元気になったよ……)

さやか「魔法少女、なっちゃいました☆」

まどか「さやかちゃん…」


翌日、あたしは学校の屋上で、まどかにQBと契約したことを打ち明けた。


まどか「どうして…?ゾンビなんだよ?魔女になって他の魔法少女に殺されちゃうんだよ!」

さやか「自分を犠牲にしてでも、叶えたい願いがあったんだ。それに、今すぐ魔女ってわけじゃないでしょ」

まどか「でも…」

さやか「大丈夫。魔力を使い過ぎたり、絶望したりしなきゃいいの。あたしに任せて」


まどかを不安にさせないためにも、精一杯明るく振る舞わなきゃ…


さやか「転校生、いるんでしょ?ちょっと来てくれる」

ほむら「………」


あたしが声をかけると、出入口の扉が開き、暁美ほむらが現れた。


ほむら「こンのクソバカ…」

さやか「言ってくれるじゃない」


暁美ほむらは開口一番、吐き捨てるように呟く。


ムカつくけど、ここは我慢しなきゃ。

さやか「アンタに頼みたいことがあるんだけど」

ほむら「それには及ばないわ。巴マミを二軍落ちにしてまで伝えた真実を知りながら、目先のエサに釣られて契約なんかするバカの頼みなんて、聞くつもりないわ」

さやか「容赦ないねー。一緒に魔女退治してもらおうと思ったんだけど」

ほむら「足手まといよ。突撃バカのあなたと私とでは、戦うスタイルが違いすぎる」


全く、二言目にはバカバカと!


まどか「こればっかりはほむらちゃんが正しいよ。さやかちゃんバカだよ」

さやか「ちょっ、まどかまで!?」


あたしは仕方なく、ぼっちで魔女狩りに出かけることにした。


なんとかマミさんを引っ張り出せないかなー?




まどか「…ねえほむらちゃん、さっきはあんなこと言ったけどさ」

ほむら「まどか、美樹さやかのことは諦めて。契約した以上、避けようのない運命よ」

まどか「でも、フォローはできるでしょ?お願い、さやかちゃんを助けてあげて」

ほむら「あの子が私の言うことに、素直に従うとは思えないわ」

まどか「わたしからも話しておくから!わたしにできることなんでもするから!」



ほむら(…確かに巴マミがアレだし、バカとはいえ、美樹さやかが協力的なのは悪くないわね)



ほむら「…いいわ。それじゃこちらの条件を聞いてもらえる?」

まどか「うんっ」

さやか「…アンタ誰?」

杏子「ったく、マミの奴が引きこもったって聞いたから、わざわざ来てみたのによ。話が違うじゃねーか」


あたしが使い魔を追って路地に入ると、そこには赤毛の魔法少女が立っていた。


さやか「邪魔するな!」

杏子「使い魔なんか倒してどうすんだよ。GS孕むまで待ちな」

さやか「わかってるけど、今は経験値が必要なの!」

杏子「トーシロが……頭冷やしな!」


赤毛の魔法少女の一撃は、ブロックした剣ごとあたしを大きく吹き飛ばした。


杏子「弱っ、アンタホントに魔法少女?」

さやか「なったばっかりだからしょうがないでしょ」

杏子「そっか。まあ使い魔すら満足に倒せねー役立たずは、あたしが潰してやるよ!」


襲い掛かる攻撃に、全く歯が立たない。あたし、何もできずに終わるの…?


ほむら「待ちなさい、佐倉あんこ」

杏子「テメェ、誰があんこだ!」


ズダボロになったあたしを助けてくれたのは、暁美…


杏子「おい、なんでパンツなんかかぶってるんだ?」

ほむら「あなたには関係のないことよ」


…違った。ただの変態だ。

さやか「ちょっと、それまさかまどかの…」

ほむら「彼女は佐倉杏子。打倒ワルプルギスの夜のために、私が呼び寄せたの」

杏子「こんな奴がいるなんて聞いてねーぞ」

ほむら「事情が変わったのよ。忠告も聞かずに契約したこのバカを助けるって、まどかと約束したの」


あたしの命って、まどかの下着一枚分の価値なの?


杏子「あたしはトーシロと組むなんざゴメンだね」

ほむら「その心配はないわ。美樹さやかは10日もしないうちに魔力を使い切り、魔女になる」

さやか「なめんじゃないわよ!」

杏子「…今、何気にとんでもねーこと言わなかったか?」

ほむら「まだ伝えてなかった?それじゃ説明するわ」


この杏子って子も知らなかったのか…



ほむら「以上が魔法少女とQBの正体、そしてこのバカよ」

杏子「…さやかって言ったか?お前、ホントにバカだな」

さやか「それはもう聞き飽きたって」

ほむら「まどかとの約束だから助けてあげたけど、まどかの安全と、巴マミの復活の方が優先だから」

さやか「あたしが魔女になっちゃったら、約束を破ることになるんじゃないの?」

ほむら「…銃を貸してあげるわ。洗濯済みの下着ではここまでが限界ね」

さやか「いい加減それ外せ」


ごめんねまどか……あたしなんかのために。

杏子「とりあえずワルプルギスの夜が来るまでの間、あたしは勝手にさせてもらうぜ」

ほむら「わかったわ」


なんなのコイツら?こんな自分勝手なのが魔法少女だなんて、認めたくない。


杏子「それとアンタ、これだけは言っておくぜ」

さやか「…何よ」

杏子「魔法ってのは徹頭徹尾、自分のために使うモンだ。他人のためとか、正義のためとか、くだらねーこと考えんじゃねえ。死ぬぞ?」

ほむら「その通りよ杏子」

さやか「アンタは自分の欲望に忠実ねー」


こんなヤツらに、マミさんの守ってきた街を好きにはさせない。


見ててマミさん、コイツら絶対泣かせてやる!



その頃、マミのマンションでは…


マミ「さあ行きましょう鹿目さん。今日中にLVを5つは上げるわよ!」

まどか「助けて……助けてほむらちゃん……」

さやか「恭介…」

恭介「やあさやか、これ見てよ」


回復魔法を使い始めて数日。恭介の指先は、少しずつ動くようになっていた。


ただ、ここまでLVを上げられたのは、暁美ほむらに借りた、銃のおかげってのが気に入らないけど。


恭介「さやかがずっと信じてくれてたから……僕一人じゃとても耐えられなかったよ」

さやか「ううん。恭介の、もう一度バイオリンを弾きたいって気持ちだよ。あたしは少し、後押ししただけ」


あたしはいつも通り、恭介の治療を始める。


恭介(…よし、今日こそさやかの禁断の果実を拝ませてもらうよ!)


恭介の、邪な野望に気付かないまま…


恭介(角度はOK、あとは腕をずらして服を弛ませれば…!)


さやか「ちょっと恭介、動いたら集中できないって」

恭介「ご、ごめん、少しだけ腕を持ち上げるようにしてくれたら楽かな」

さやか「こう?」


恭介(グッド!いい感じに胸元の布地が浮いた!)


なんだろう?いつもよりSGの濁りが強いような…


恭介(うおお!ピンク色の内堀に到達!天守閣落城は目前だ!)

さやか「くっ…!」

恭介「さやか!?」


思った以上の穢れに、あたしは前のめりに倒れ、恭介に抱き止められる形になった。


さやか「ごめん恭介、ちょっと疲れちゃったみたい…」

恭介「ぼ、僕なら平気だから、無理しないでさやか」


早く治してあげたい一心で、飛ばし過ぎたかな?魔女退治用に魔力を残しておかないと…


恭介「今日の分で三日は持つから、ゆっくりと休みなよ」

さやか「三日?何の話?」

恭介「オカズが…じゃなくて、僕もリハビリ頑張るから。さやかだけに負担はかけられないからね」

さやか「うん、ありがとう恭介」


三日か……それだけあれば、十分経験は積める。


よろけただけとはいえ、恭介と急接近しちゃったし、気力は満タンよ!


恭介(あれが噂に聞く中二病なのかな?正直、魔法少女とかかなりイタいけど、いいモノ見せてもらえるしもう少し付き合ってみようか…)


恭介「おっと、ティッシュティッシュ…」

杏子「へぇ、あのボウヤが契約した理由かい?」

さやか「アンタは…」


佐倉杏子。自分のためにしか魔法を使わない、あたしとは決して相容れないヤツ。


杏子「惚れた男をモノにするためか……いいじゃん、悪くないぜそういうの」

さやか「…何か用?」

杏子「ほむらから聞いたよ。実戦経験が必要なんだろ?あたしがちょっと鍛えてやろうと思ってね」

さやか「誰がお前なんかに!」


普通ならありがたい申し出だけど、コイツにだけは借りを作りたくない。


杏子「…気に入らねーな。せっかく手伝ってやるって言ってんのによ」

さやか「あたしはマミさんみたいな魔法少女になるんだ。アンタとは違う!」

杏子「マミねぇ……あんな甘っちょろい考え方してるから、現実逃避してヒキヲタになっちまうんだよ」


コイツ……マミさんのことを!


杏子「いいぜ。協力し合う気がねーなら、あのボウヤを潰して、アンタをGSにしてやるよ」

さやか「させるかッ!」


振り下ろした全力の一撃。でも、片手で持った槍に簡単に止められてしまう。


力の差は歴然だけど、こんなこと言われて引き下がるわけにはいかない!

杏子「その程度で勝負しようってのかい?」

さやか「懐に飛び込めばこっちが有利!」

杏子「だから甘いんだよ」

さやか「なっ…!」


杏子の槍が、蛇のようにくねくねと曲がったかと思うと、次の瞬間、あたしの身体は壁に叩きつけられた。


さやか「た、多節棍…?」

杏子「立ちな。身の程ってやつを教えてやるぜ」


あたしは負けない……負けるもんか!


まどか「さやかちゃん待って!」

杏子「…なんだテメェは」

さやか「まどか!?アンタなんでここに?」

まどか「QBが教えてくれたの。さやかちゃんが危ないって」


どうせなら、マミさんを連れて来て欲しかったなー。

杏子「すっこんでな。これはあたしとコイツの問題だ」

まどか「同じ魔法少女なのに……どうして戦うの?」

さやか「…下がっててまどか、コイツはマミさんを侮辱した。絶対に許せない!」


あたしは再び斬りかかるけど、杏子にいいようにあしらわれ、傷だけが増えていく。


まどか「QBお願い!二人を止めてよ!」

QB「それは不可能だ。魔法少女同士の争いは、魔法少女にしか止められない。資格を得るためには、君が契約するしかないよ」

まどか「あ、それはお断りだから」


この淫獣、まだ諦めてなかったのか。


杏子「そろそろ限界か?回復ができなくなってるな」

まどか「もうやめて!これ以上さやかちゃんを傷つけないで!」

杏子「そうは言っても、そいつはまだやる気だぜ」

さやか「アンタなんかに……この街は渡さない!」


ここで折れたら、あたしまでマミさんの努力を否定することになる。


あたしが、マミさんを守るんだ!

まどか「ダメだよさやかちゃん……こんなの絶対おかしいよ」

さやか「まどか!?」


足元を震わせながら、あたしと杏子の間に入るまどか。


杏子「なんだ?邪魔するならアンタも一緒に潰すぜ?」

さやか「やめろ!まどかに手を出すな!」

まどか「わたしだって、止めることくらいできるんだよ?」

杏子「おもしれぇ、やってみな!」


槍を構えて迫る杏子。あたしが立たなきゃまどかまで…!


まどか「ほむらちゃん!わたしの脱ぎたてパンツあげるから助けて!」

さやか、杏子「「ハァ?」」


まどか、今なんて言った?

ほむら「契約は成立よ」

杏子「なっ…」


どこからともなく現れた変態が、左手の盾で杏子の槍を受ける。


まどか「ウェヘヘ……きっと来てくれるって思ってたよ」

ほむら「無茶をするわね」

さやか「最初っからそれが狙いだったでしょ」


コイツも同じ……まどかのためとか言いながら、自分のことしか考えてない…!


変態は倒れているあたしに向けて、GSを投げつけた。


ほむら「使いなさい。美樹さやか」

さやか「情けをかけようっていうの?ふざけないで!」

ほむら「あなたはまだ、何も成し遂げてないわ。せめて願いが叶うその時まで、泥を啜り、屈辱を味わってでも生き延びなさい」


…何も言い返せない。あたしはまだ、恭介の手を治せていない。マミさんを、まどかを守れていない。


ここで死んだら、何もかもが無駄になる…


あたしは黙って、GSで魔力を回復させた。


ほむら「さあまどか、報酬をお願い」

まどか「う、うん…」


下着を脱いで、変態に手渡すまどか。あたしなんかのために、また…


杏子「なあ、そろそろ帰っていいか?」


杏子は呆れた顔をして呟く。

さやか「ごめんまどか……あたし、魔法少女なのに、まどかに守られてばかりで……」

まどか「いいんだよ。なんにもできないわたしでも、さやかちゃんの役に立てるんだって思ったら、それはとっても嬉しいなって」

さやか「でも、そのせいでまどかがノーパンに…」

まどか「ティヒッ、実はもしもの時を考えて二重に……あれ?」


急にキョドりだすまどか。まさかはいてない?


まどか「嘘……そんなことって……」

ほむら「あなたの考えを見抜けない私じゃないわ。報酬は確かにもらったわよ」


誇らしげに、二枚の下着を掲げる変態……なんてヤツ!


まどか「せ、せめて一枚は返して欲しいかなーなんて」

ほむら「あなたをベッド以外で辱めるつもりはないわ。これをはきなさい」


変態はポケットから取り出した、別の下着をまどかに渡す。これって確か、以前にかぶってたやつじゃ…


まどか「うう……微妙に湿ってるよ」

さやか「まどか、早く新しいの買いに行こう。妊娠しちゃうわ」


あたしはまどかの手を引き、急いでその場から離れていった。

杏子「おいほむら、あんな感じで良かったのか?」

ほむら「上出来よ。美樹さやかは素直じゃないから、無理矢理でも鍛えないと」


杏子(しかし、下着に釣られるとか…コイツは一体、何を考えているんだ?)


杏子「アンタの趣味をとやかく言うつもりはねーけど、ほどほどにしておけよ」

ほむら「私とまどかは、深い絆で結ばれてるから大丈夫よ。それより、あなたを嫌われ役にしてしまったけど…」

杏子「いいさ。アイツを見てると昔を思い出してさ……あたしもあんな風に、夢と希望を持ってたんだよな」

ほむら「まだ遅くはないわ」

杏子「今さら戻れねーよ。それよりアイツが……さやかがどこまで行けるか、見届けたいんだ」

ほむら「上条恭介との性的な意味で?」

杏子「黙れ変態」

翌日


まどか「お願いさやかちゃん、マミさんを助けて!」

さやか「落ち着いてまどか、どうしたの?」

まどか「マミさんのSG、もう限界なの…」


自宅に引きこもり、ネトゲ廃人になっちゃったマミさん。


話によると、寝る間も惜しんで夢中になっているため、SGがかなり濁っているらしい。


まどか「いくら言っても、狩りの約束の方が大事だって」

さやか「しょうがない人ねー」

まどか「ほむらちゃんだと、またパンツとか要求されそうだし、頼れるのはさやかちゃんしかいなくて…」


そりゃ賢明だわ。


さやか「わかった、じゃあ一緒にマミさんのとこ行こっか」

まどか「うん、ありがとうさやかちゃん!」

久しぶりに会ったマミさんは、満面の笑みであたしを迎えてくれた。


マミ「ついにやる気になってくれたのね!ちゃんと美樹さん用のアカウントも取ってあるのよ!」

さやか「いや、ゲームしに来たんじゃなくて…」

マミ「そうなの?でもせっかくだから、ゆっくり見学していってね」


ボサボサの髪で、ペットボトルの紅茶をラッパ飲みし、コンビニのケーキを手づかみで食べるマミさん。


あの、お洒落に人一倍気を遣っていた姿は、どこにもない。


まどか「マミさん、魔女退治行きませんか?このままじゃダメですよ」

マミ「鹿目さんは魔女のダンジョンに行きたいの?まだLVが足りないと思うけど…」


会話が全てネトゲ基準になってる……末期的だ。


さやか「うっわ、これヤバいよマミさん。SG濁りまくってるじゃん」

マミ「ちょっと寝不足なだけだから、大丈夫よ」

さやか「いや、寝ても浄化されないって」


どうしよう……普通に説得しても、聞く耳持ちそうにないなぁ。


考えてる間にもマミさんは5台のPCを立ち上げ、テーマ曲に合わせながら回転し、超高速でキーボードを操作している。なんというチート級の能力。


さやか「すっげー、さすがはマミさん…」

まどか「さやかちゃん、感心してる場合じゃないよ」

マミ「ふふっ、頼りにされてる分、頑張らないとね」

さやか「でもこれって、魔法使ってるからだよね?もし魔力が切れたら、みんなはどうするのかな?」

マミ「……!」


マミさんの手が一瞬止まった。ここが狙い所かな?

さやか「マミさんなら魔法ナシでも活躍できそうだけど、サポート欲しがってる人はたくさんいるよね」

マミ「美樹さん……何が言いたいのかしら?」

さやか「GS、取りに行こうよ。あたしも手伝うからさ」


キーボードを叩きながらも、考え込むマミさん。手ごたえアリね。


マミ「私、いつの間にか、自分の足元が見えなくなっていたのね」

さやか「マミさん…」

マミ「いいわ、行きましょう美樹さん」

まどか「やったねさやかちゃん!」

さやか「イエース!」


良かった……これで魔女になったマミさんを倒さなきゃならない、なんてことは無くなりそうだ。


まどか「それじゃわたし、部屋のお掃除しておきますね」

マミ「そ、そんなことまでさせられないわ」

まどか「いいんです。わたし、マミさんの役に立ちたいんです」

マミ「ごめんね……やっぱり私、ダメな子だ。もっとしっかりしなきゃね」


ついにマミさんが復活への第一歩を踏み出した。見てなさい杏子、それに変態!

さやか「あたしが魔女を探すから、マミさんはついてきて」

マミ「すっかり魔法少女らしくなったわね」

さやか「いやー、まだまだだって」


マミさんと一緒に戦えば、きっと大きくLVアップできる。


この形が本来あるべき姿なんだ。この街を守るのはあたしたちなんだ!


さやか「…反応があった!」

マミ「光り方に注意して。こっちね」


あれ?こっちの方角って…


さやか「ここは…」

マミ「美樹さん、急ぎましょう」


あたしたちがたどり着いたのは、いつも通っている場所、恭介の病院だった。


さやか「こんなとこにいたなんて……あたしが、恭介に甘えて休んでたから……」


壁に突き刺さり、怪しげな光を放つGS。あたしは魔法少女に変身し、準備を整える。


さやか「マミさん、早く!」


だけどマミさんは変身もせず、GSを引っこ抜いたかと思うと、そのまま自分のSGにコツン、と当てた。


さやか「マミさん?」

マミ「これで良し。あと、QBに回収してもらってね」


マミさんのSGは、綺麗な輝きを取り戻していた。


マミ「さあ、早く戻ってみんなと狩りに行かないと……ティロ・フィナーレ!(帰宅)」

さやか「えーと…」


大砲に乗って、飛んでいくマミさん。


あたしは一人、穢れでいっぱいになったGSを握りしめ、呆然と立ち尽くす。


さやか「…わけがわからないよ」

約束の三日後、あたしは恭介の病院に行く前に、屋上に暁美ほむらを呼び出した。


さやか「ねえ変態、ちょっとGSわけてくれない?」

ほむら「…美樹さやか。あなた自分の言ってることがわかってるの?」

さやか「もちろん、タダとは言わないよ」

ほむら「お金でやり取りできるものじゃないわ。魔法少女の命を繋ぐものなのよ」


まあそうだよね。だけどあたしには、とっておきのアイテムがある。


ほむら「あなたに、まどかの生パンに匹敵するブツを用意できるのかしら?」

さやか「これでどう?」


あたしが取り出したのは、一枚の写真。


ほむら「これは…!」


よし、いい反応。


まどかのパンチラ程度じゃ、この変態が納得しないのはわかってる。


当然、それを遥かに上回る代物だ。

ほむら「いいわ、GS2つでどうかしら?」

さやか「安すぎる。5つは欲しいところね」

ほむら「無茶言わないで。たかが写真一枚じゃない」

さやか「これが超レアだってこと、わかってるんでしょ」

ほむら「…お願い、今は3つしか手元にないの」

さやか「OK、3つで取引成立ね」


あたしは写真と引き換えに、GSを受け取る。


かつて、まどかとふざけて撮った写真。


今となっては痛ノート級の黒歴史。


ほむら「ふふふ……これさえあれば、私はあと10年は戦える!」


ごめんねまどか……あたしは悪魔に魂を売り渡しちゃった。


寝巻き姿に、トロンとした目付きでベッドに横たわり、片手を伸ばして誘惑ポーズをとるまどかの写真。


おそらく、二度と手に入ることはないだろう…

変態からGSをせしめたあたしは、そのまま病院へとやってきた。


さやか「さあ、今日で一気に治しちゃうよー!」

恭介「うん、お願いするよさやか」


皮肉にも、杏子にブチのめされたおかげで、あたしのLVは急成長している。


魔力も十分、ようやく最初の願いが叶いそうだ。


恭介「でも、ちょっと惜しい気もするな」

さやか「何が?」

恭介「もし治らなかったら、さやかがずっと僕の面倒を見てくれるんだろ?」

さやか「バ…ッ、バカ言ってんじゃないわよ!」

恭介「あははっ、冗談だって」


恭介って、こんな冗談言う奴だったかな?


さやか「恭介、強く祈って。その想いが魔法になるんだよ」

恭介「わかった」


恭介(僕は……さやかの胸を揉みたい!腕じゃなく、この手のひらで、あの胸の感触を味わいたいんだ!)

あたしの魔力が、急速に消耗していくのを感じる。


でも平気。GSだってあるんだよ。


さやか「恭介……どう?」

恭介「…動く、完全に動くよ!すごいよさやか!」


やった、ついにあたしの願いが奇跡を起こせたんだ!


恭介「さやかに……お礼をしなくちゃね」

さやか「えっ?」


恭介は優しい目をして、治ったばかりの手であたしの頬に触れる。


お礼ってもしかして…


恭介「さやか…」

さやか「恭介…」


あたしと恭介の距離が縮まっていく。お互いの吐息がかかるほどに…


医者「…ゴホン、済まんが後がつかえているのでね。先に診察をさせてくれるかリア充ども」

恭介「あ…」

さやか「し、失礼しました!」


このクソジジイ……いーとこだったのに!


医者「まあそれだけ元気なら、明日にでも退院できそうだな。爆発しやがれ」

恭介「ホントですか!?」

医者「うむ、若さとはすごいものだな。まさかこれほどの回復を見せるとは……さっさと出て行け」

さやか「つーか、いちいち本音出さないでよ」

看護士「ごめんね、先生は奥さんとうまくいってないらしいの。私への慰謝料も早く払ってほしいわ…」


こんな病院、潰れてしまえ。

杏子「何がどうなってやがる……アイツ、メチャクチャ強くなってるじゃねーか」

ほむら「美樹さやかは経験によって成長する。それは戦いだけじゃなく、人生のイベントにおいても同様よ」

杏子「あのボウヤとイイことあった、ってことか?」

ほむら「さあね……それは邪推よ、杏子」


身体が軽い。あたしはたった一人で魔女を圧倒する。


さやか「あっはははは!コイツを仕止めるのはあたし!絶望なんてする必要ない!これからは利子を取り戻すんだ!もう何も怖くない!」


杏子「ホントに大丈夫か?円環フラグまで立ててやがるけど」

ほむら「まどかさえ無事ならいいのよ。ああまどか……いつか私の目の前で、このポーズをとってね……」

杏子「お前が導かれてしまえ」

そして恭介が退院し、元気に登校してきた日。


あたしは仁美に誘われて、いつものファーストフード店に来ていた。


仁美「実は私、ずっと前から上条恭介君のことを、お慕いしてましたの」

さやか「切り出し早っ!」

仁美「あなたは、本当の気持ちと向き合えますか?」

さやか「うーん、仁美には悪いんだけどさ、あたしと恭介には積み重ねてきた歴史がある、って言うか…」

仁美「ず、随分と自信がおありなんですね」


少し前のあたしだったら、動揺していたかもしれない。


だけど、魔法少女として実力をつけた今は、全然平気。


あたしはもう、誰にも負ける気がしない!


さやか「あたしは恭介のこと、信じてるからね」

仁美「何だか人が変わったよう……さやかさんでしたら、私も諦めがつきますわ」

さやか「…仁美?」

仁美「私は明日、自分の気持ちに決着をつけるため、告白しようと思います」

さやか「そっか…」

仁美「その後は、私のやけ食いに付き合ってくださいね。もちろんまどかさんやほむらさんも誘って」

さやか「まどかはともかく、暁美ほむらはいらないかな?」

仁美「さやかさん、そんないじわるを言ってはいけませんよ」


…仁美もじきに、アイツの正体がわかる時が来るよ。


あたしは仁美と別れ、また魔女退治へと出かけていく。


大丈夫、あたしが仁美の涙も受け止めてあげるから…

翌日


恭介「うん、OKだよ」

仁美「え?」

さやか(なん…だと…)

まどか(嘘…そんなのってないよ…)

杏子(マジかよ…)

ほむら(ああ、まどかの髪の匂い…クンカクンカ)


仁美に頼まれて、こっそり見守っていたあたしたちは、とんでもない状況を目の当たりにした。


恭介「君の告白、受けさせてもらうよ」

仁美「あ、えっと…でも、さやかさんは…」

恭介「さやかは僕にとっても親友だよ。ケガが治ったことも、誰よりも喜んでくれたし、きっと祝福してくれるよ」

仁美「そ、そうですか…」


恭介の予想外の返事に、オロオロする仁美。


どういうこと…?だってあの時、恭介はあたしにキスしようとしてくれたじゃない…


恭介(モテ期到来ィィ!さやかをキープしつつ本命ゲット!うまくやればお友達のロリっ娘まどかちゃんや、噂の美人転校生、暁美さんまでイケるかも…)


仁美は複雑な表情をしながらも、恭介と共に立ち去っていっちゃった。

さやか「まどか……仁美に恭介を取られちゃったよぉ…」

まどか「さやかちゃん…」


泣き崩れるあたしを、まどかが抱き締めてくれる。


ほむら「美樹さやか!私の前でまどかにハグしてもらうとはいい度胸ね!」

杏子「少しは空気嫁、バカ野郎」


全てがうまく行くと思ってた。魔女も一人で倒せるようになった。恭介に想いが通じたはずだった。


さやか「杏子……前に言ってたよね?あたしが魔女になったら、アンタにGSあげるよ……」

杏子「ふざけんじゃねえ!男をNTRされたくらいで人生粗末にすんな!殺すぞ!」

まどか「杏子ちゃん、それ矛盾してるよ」

杏子「あたしが……あのボウヤの手足をヘシ折ってやる。もう一度、アンタなしではいられない身体にしてやる!」

さやか「ダメ……そんなのあたしが許さない……」


杏子の優しさが沁み入る。だけど、それは余計に惨めさを感じさせた。

さやか「ごめん、ちょっと一人にしてくれるかな」

まどか「そんなのダメだよ。一人だと、悪いことばっかり考えちゃうよ」

さやか「大丈夫、頭冷やすだけだから。あたしは、何のために戦うのか、見つめなおしてみる」


あたしはアテもなく、フラフラと歩いていく。


まどか「ほむらちゃん、なんとかならないの?」

ほむら「志筑仁美を亡き者にしておくべきだったわ…」

杏子「おいコラ」

ほむら「冗談よ。まどか、あなたは他のことを考えず、巴マミを立ち直らせることに集中して」

まどか「でもさやかちゃんが…」

ほむら「美樹さやかは杏子に任せればいいわ。まどか、私を信じて」

まどか「う、うん…」

杏子「アンタも働けよ」

さやか「恭介の奴!恭介の奴!恭介の奴!」


あたしはたまたまそこにいたQBに、何度も何度も剣を振り下ろす。


QB「つくづく人間という生き物は、八つ当たりが好きなんだね。僕には理解できないよ」

さやか「アンタはサポートが仕事でしょ!黙って憂さ晴らしに付き合え!」

QB「きゅっぷい☆」


杏子「おいおい、冷やすどころかカッカしてるじゃねーか」

さやか「杏子…」


追いかけてきてくれた杏子の顔を見て、あたしはホッとした気持ちになる。


ああ、やっぱりそうなんだ…


さやか「あたし、アンタに散々ひどいこと言っておいて、結局同じだった……自分に見返りが欲しかったんだ……」

杏子「それでいーじゃん。何も悪くなんかねーよ」


今だってそうだ。あたしの気持ちをわかってくれる、同じ魔法少女の杏子に来て欲しかったんだ。

さやか「…よし、だったらそれで貫いてやる!偽善者ぶるのはもうやめた!」

杏子「ハァ?」

さやか「マミさんだって仲間が、友達が欲しかったから、あたしたちの面倒を見てくれてた。そう思えばいいんだ!」

杏子「おい、さやか…」


杏子やあの変態もそうだ。みんな自分のために魔法を使ってるんだ。


さやか「杏子、ありがとう。アンタのおかげで、自分の甘さがわかったよ」

杏子「そ、そうだな、あたしたちは正義の味方だ!助けてやったから感謝しろー!ってな」

さやか「ぷっ…くくっ…」

杏子「なんだよ?何笑ってんだ」

さやか「あーっはっはっは!いやー、やっぱアンタ最高だわー」

杏子「テメェ…」

さやか「勘違いしないでよ。からかったんじゃないから」


杏子が答えを教えてくれた。バカなあたしが気付かなかっただけ。


あたしは、自分が満足する戦いをすればいいんだ!


さやか「見滝原市の平和は、魔法少女スーパーさやかちゃんが、ガンガン守りまくっちゃいますからねー!」

杏子(なんなんだよ、この感情の相転移は……失恋を経験して、メンタルまで強くなったってのか?)

さらに次の日。開き直ったあたしは、恭介と仁美のデート現場の追跡を始めた。


杏子「おい、スーパーさやかとやら?テメェ何考えてやがる」

さやか「これも平和活動だって。親友の二人が、ちゃんと健全なお付き合いをするか、確かめなきゃ」

杏子「ただのデバガメじゃねーか」


…これはあたしの最後の心残り。二人が本当に幸せになるなら、その時は潔く諦めよう。


ほむら「目標はベンチに座ったわ。仕掛けるとすればここね」

杏子「…いたのかアンタ」

さやか「そりゃピーピングほむらだもん。当然でしょ」

ほむら「変なアダ名をつけないで」

まどか「そう?なんだか可愛い響きだと思うけど」

ほむら「…今度、英語の勉強を見てあげるわ」


話してる間にも、恭介が次の行動に移る。

恭介「ね、仁美ちゃん」

仁美「あ…」


仁美の頬に優しく触れる恭介。あの野郎、あたしの時と同じパターン使いやがって!


ほむら「なるほど、これであなたも騙されたのね」

さやか「黙れ」

まどか「ま、まだ仁美ちゃんも騙されるって決まったわけじゃ…」


恭介(イケる!このまま一気に…!)

仁美「き、恭介君!?」


頬に触れていた手はいつの間にか肩に、空いた方の手は仁美の胸にかかっていた。


仁美「そ、それはまだいけませんの!」

恭介「じゅってぃーむ…」

仁美「きゃあぁぁぁ!」


制止も聞かず、仁美を押し倒そうとする恭介。あのバカ…!


ほむら「レッドアラート、緊急事態よ!」

杏子「エロガキが……正体現しやがった!」


どこからともなく、Credens justitiam(マミさんのテーマ)が聞こえてくる。

さやか「恭介ェェ!」

恭介「さ、さやか!?」


いち早く飛び出したあたしは、なぜか手に持っていた消火器を、恭介の顔面に叩き込んだ。


仁美「さや…か、さん?」

さやか「大丈夫?魔法少女スーパーさやかちゃんが、いたいけな少女を守りに来ました!」

仁美「ひぐっ、うぇぇ~ん、さやかさぁぁん…」

恭介「さ、さやか、僕は…」

杏子「ウゼェんだよ!」


何か言おうとしていた恭介を、杏子が槍の柄で殴って黙らせる。


さやか「行こ、仁美。約束したでしょ」

仁美「約束?」

さやか「いつもの店でやけ食い。とことん付き合うよ」

仁美「は、はいっ!あ、その前に……えいっ!」


仁美は仰向けに倒れている恭介に、打ち下ろし式の腹パンを決める。


杏子「へへっ、いいパンチじゃん」

仁美「あの、こちらの方は?」

さやか「歩きながら紹介するわ。杏子、アンタも行くでしょ?」

杏子「そうだな、今日はパーッと騒ごうぜ」

恭介「ごふっ、ぐぇぇぇ…ぼ、僕に何が起こったの…」

まどか「みんなやりすぎじゃない?こんなのあんまりだよ」

恭介「まどかちゃん……君は優しいね。僕にはもう、君しかいない…」


そう言ってまどかの手を取る恭介。コイツ、全然懲りてない!


まどか「…あのね上条君、わたしも一通りのこと、全部知ってるんだよ?」

恭介「え?」

まどか「ティロ・フィナーレ!」


マミさん直伝の拳がめり込む。まどかも結構容赦ないねー。


ほむら「上条恭介、あなたには感謝してるわ。人畜無害に見えても、男はみんなケダモノだってことを、まどかに教えることができた…」

恭介「た、助けて…」

ほむら「これはほんのお礼よ」



チッ、チッ、チッ、チッ…



あたしたちが恭介の再入院の知らせを聞いたのは、それから少し後のことだった。

さやか「ねえまどか、最近マミさんの様子はどう?」

まどか「さやかちゃんのおかげで、少しずつ社会復帰に近づいてるよ」


あれからマミさんは魔力を節約し、部屋の掃除や、身だしなみにも気を配るようになったらしい。


まどか「時間が取れるようになったから、自分でご飯も作ってるんだって」

さやか「一時、宅配寿司やコンビニ弁当やピザの空箱でいっぱいだったもんねー」


そのうち学校にも来るかな?早くネトゲ依存をやめてくれたらいいけど…


さやか「そういえばマミさん、お金とかどうしてるの?中学生だし、バイトもできないよね」

まどか「えっと、わたしはよくわからないんだけど、RMTで生活費は十分あるんだって」

さやか「…ちょっと待って。まさかマミさんが時間取れるようになったのって?」

まどか「マミさんすごいんだよ!BOTっていう魔法を使って、PCを触らなくても狩りができるようにしたの!」

さやか「それ魔法じゃねえ!」


こりゃヤバイ。あたしはまどかの手を取り、マミさんの家に向かって走り出した。

まどか「さ、さやかちゃん、RMTってなんなの?BOTが魔法じゃないって…」

さやか「説明はあと!合鍵出して!」


マミさんの家に着いたとき、部屋の中から銃声が聞こえた。


まどか「ひっ…!」

さやか「まどかはあたしの後ろに!入るよ!」


あたしが靴を脱ぐ手間も惜しんで部屋に飛び込むと、丁度マミさんが2台、3台と、PCに向けて発砲しているところだった。


さやか「マミさんストップ!」

マミ「離して!もうみんな壊すしかないじゃない!」


あたしは錯乱するマミさんを、縛り上げて取り押さえる。


まどか「い、一体何があったんですか…?」

マミ「えぐっ…えぐっ…」


マミさんは泣きじゃくって答えない。間に合わなかったか…

あたしが唯一生き残ったPCを見ると、そこにはゲームの運営会社からのお知らせが届いていた。


まどか「規約違反…?アカウント凍結…?これ、どういうことなの?」

ほむら「RMTとはリアルマネートレーディング。ゲームマネーやアイテムを、現金で取引することよ」

さやか「アンタいつの間に…」

ほむら「私より早いとは、あなたも成長したわね」

さやか「感心してる場合じゃないでしょ!」


BOTはそのまま、ロボットプログラムによる自動操作のこと。どちらもゲームのバランスを崩す、違反行為だ。


ほむら「巴マミのキャラは全て消滅。ゲームマネーもアイテムも没収されることになるわ」

まどか「そんな……もうマミさんはネトゲできないの!?」

さやか「一からやり直しってこと。同じ過ちをしなければ大丈夫だけど…」


普通ならともかく、ネトゲに生活の大半を捧げていたマミさん。


数週間の苦労がパーになったのは同情するけど、PC破壊するほどとはねー。


マミ「もういや……QBに裏切られ、新たな居場所も無くしちゃった……」

ほむら「規約は知っていたのでしょう?なら、自業自得ね」

まどか「そんな言い方やめてよ!」

ほむら「目に焼き付けておきなさい。ネトゲ廃人になるって、こういうことよ」


極端な例だと思うけど……でもマズったなー、これでマミさんの復活は遠のいちゃった。

マミ「私、またひとりぼっち…」

まどか「マミさんはぼっちなんかじゃないですよ」

さやか「まどか?」


まどかは優しく、マミさんの肩に手を置く。


まどか「わたしのアカウントが、アイテムがあります。これでやり直しましょう」

マミ「だ、だけどそれは鹿目さんの…!」

まどか「全部、マミさんからもらった物じゃないですか」

マミ「…いいの?私、LV1よ?なんにもできない、弱いキャラになったのよ?」

まどか「マミさんがわたしを育ててくれたように、今度はわたしがマミさんを育ててあげます。ネトゲの面白さを教えてくれたのは、他の誰でもない、マミさんだから…」


大丈夫かな?まどかまでのめり込まなきゃいいけど…


マミ「本当に……弱い私と一緒に戦ってくれるの?そばにいてくれるの?」

まどか「はい、わたしなんかで良かったら…」

マミ「ぐすっ……ネトゲ同盟、再結成ね」

まどか「ただし、ゲームは一日一時間。ちゃんと学校にも行くこと。魔法少女としての生活に戻ることが条件ですよ?」

マミ「うんっ、鹿目さんの言う通りにするわ!」


うまく乗せた……暁美ほむらがまどかに任せっきりにしたのは、正解だったみたいね。

ほむら「美樹さやか。ちょっといいかしら?」

さやか「なに?」


マミさんが落ち着きを取り戻した後、暁美ほむらがあたしを部屋の外へ連れ出した。


ほむら「巴マミはまだ戦力に入れられないわ。ワルプルギスの夜と戦うのは、実質私たち三人ということを覚悟しておいて」

さやか「そんなに手強い相手なの?いろいろと知ってるみたいだけど」

ほむら「…今のあなたになら、私の正体を話してもいいわね」

さやか「正体?」


そこから暁美ほむらは、自分のことを話してくれた。


何度も時間を遡って、まどかとの出会いをやり直していること。


あたしやマミさんたちが死ぬところを、何度も見てきたこと。


ワルプルギスの夜と繰り返し戦っても、まどかを救えなかったこと…

さやか「なるほどねー、あたしへの素っ気無い態度は、そういうわけだったのか」

ほむら「ごめんなさい。冷酷にならなければ、心が耐えられなかったの…」

さやか「いいよ。理由がわかって、ちょっとスッキリした」


ほむらの奴、あたしには想像もつかないほどの、辛い日々を送ってきたんだな…


ほむら「まどかへの変態行為も、心の安らぎを得るため……わかってくれるわね?」

さやか「…ごめん、それだけは理解できない」

ほむら「冷たいわね。過去にはあなたと、まどかの下着を奪い合ったこともあるというのに」

さやか「知るかバカ!」


なんにせよ、わだかまりは解けた。


杏子の優しさを、ほむらの苦しみを知り、自分の戦う目的も見つけた。


あとはラスボスを倒すだけ!


さやか「ワルプルギスの夜なんか、このあたしがガツンとやっつけちゃうんだから!」

ほむら「…ガツンとやるんじゃなかったの?」

さやか「うるさいっての」


ワルプルギスとの最終決戦に挑んだあたしたちは、早々にフルボッコの憂き目に遭っていた。


ほむら「だからあなたは突撃バカって言われるのよ!」

さやか「あたしのダメージの半分は、アンタの仕業でしょうが!」

杏子「騒いでねーで早く援護しろ!このボンクラ!」


ほむらは真っ先にやられて瓦礫の中。


あたしも爆発や銃撃に巻き込まれて、魔力の大半を失い、杏子がどうにか一人で使い魔を撃退している。


ワルプルギスの夜は上を向くどころか、余裕でケラケラと笑っていた。

さやか「杏子!このバカを引っ張り出すまで、もう少し耐えて!」

杏子「畜生……割に合わねーぞ、こんな化けモン!」


あたしもほむらもGSを使い切った。杏子もどこまで持つかわからない。


ほむら「奴に通常兵器が効かない以上、戦い方は変えられないわ」

さやか「アンタが使い魔を引き受けるのはいいけど、ちゃんと狙いなよ」

ほむら「杏子は私の動きを見てかわしてるわ。あなたが自爆してるんじゃない!」

さやか「だったら援護なんかいらない!あたしは一人で戦う!」

ほむら「勝手にしなさい!」


杏子「頼むよ神様、こんな人生だったんだ……一度くらい幸せな夢、見させてよ……」


次々と死亡フラグを立てるあたしたち。


ほむらが絶望的な戦いだ、って言ってたのがよくわかるけど、諦めることはできない。


まどか……マミさん……あたしに最後の力を貸して…!

杏子「かはっ…!」

さやか「杏子!」


直撃を受けた杏子が倒れる。あたしはすぐに駆けつけ、回復魔法を使った。


杏子「バカ野郎!魔法は自分のために使えって言ってるだろ!」

さやか「放っておけるわけないでしょ!」

杏子「どこまでも甘っちょろいことを…」


杏子は残っていたGSを、あたしに手渡す。


さやか「杏子…?」

杏子「あとはあたしに任せて……アンタたちは戻りな」

さやか「杏子、何言ってるの?」

杏子「まどかも仁美もいい子たちだな……あたしも、もっと早くに出会いたかったよ……」


杏子の魔力が、SGに集まっていく。まさか!?

さやか「杏子!待って!」

杏子「噂の、円環の女神とかいう奴のツラを拝んでくるよ。ウェヒヒッ、とかふざけた笑い方するらしいな」

さやか「きょうこぉぉぉ!!!」


ワルプルギス目がけて飛び上がる杏子。もう、あたしには何もできないの?


ほむら「その必要はないわ」

さやか「ほむら!?」


相討ち覚悟で突っ込もうとする杏子を、ほむらが捕まえる。


杏子「なっ…テメェ、邪魔すんじゃねえ!」

ほむら「落ち着いて耳を澄ませなさい。聞こえるでしょう?」

杏子「あん?」


これは……恭介を始末した時にも流れていた曲……


本家、Credens justitiam!?

マミ「ティロ・フィナーレ!」

杏子「マミ!?」

さやか「マミさん!」


絶妙のタイミングで登場したマミさん。


その必殺技は使い魔を蹴散らし、ワルプルギスの夜に大きなダメージを与えた。


まどか「みんな、大丈夫?」

ほむら「まどか!?あなたまでどうしてここに?」

まどか「マミさんを止めようと思ったんだけど…」


止める?むしろ来てくれて、大助かりなんだけど。


マミ「アイツが……私の貴重な一時間を奪ったのね!」

杏子「ハァ?」

さやか「ちょっとまどか、一時間ってまさか…」

まどか「うん。ゲーム中に停電しちゃったから、マミさんキレちゃったの」

ほむら「避難もせずに何をしてるのよ」

杏子「停電って……そういやさっきほむらが、高圧線の鉄塔を爆…ムグッ!」


ほむらは四次元ポケットから取り出したタイ焼きを、杏子の口に押し込む。


マミ「暁美さんが……何ですって?」

さやか「う…」

まどか「目が怖いよ」

ほむら「な、なんでもないわ。奴が私を狙った時に、鉄塔を倒したようね」

マミ「わかったわ。私があの魔女を、跡形もなく消してあげる!」


再びワルプルギスに向かっていくマミさん。凄まじい殺気だ。


ほむら(殺される……私の仕業ってバレたら絶対殺される!)


杏子「なあほむら、タイ焼きもう一つくれよ」

ほむら「こんな時に何を言っているの?」

杏子「口止め料ってやつさ」

ほむら「…五つで良かったかしら?」


思いがけず、ほむらの弱みを握っちゃった。あたしも今度、何か要求してやろう。

ワル夜「キャヒッ、キャヒヒヒッ」


マミさんの一撃で上を向き、本気になったワルプルギスの夜。


以前、QBが言ってたように、あたしがマミさんに追いつくのはまだまだ先の話みたいね。


マミ「…覚悟はいいかしら?」

ワル夜「キャヒッ!?ヒィィーッ!」

杏子「おい、アイツ…」

さやか「逃げた?」

ほむら「冗談でしょ!?」


マミさんに背を向け、全力で逃げ出すワルプルギスの夜。魔女でも怖がるのか。


マミ「逃げられると思ってるの!」

杏子「あたしらも行くぞ!」

さやか「ほむら、まどかをお願いね!」


あとは一方的なリンチ。戦意を喪失したワルプルさんは、あたしたちの攻撃の前に、なすすべもなく消滅していった。

さやか「いやー爽快爽快、気分いいわー」

杏子「全くだな」


激戦から数日、あたしたちはいつものファーストフード店に集まっていた。


ほむら「あなたたちには、本当に感謝しているわ」

杏子「なんだよ気持ち悪いな」

さやか「そうねー、いつもみたいに憎まれ口叩いてくれないと、調子狂うわ」

ほむら「…とてもカッコよかったわ。最後の一撃、エターナルオメガスラッシュ(笑)」

杏子「くくっ、やめろよバカ、腹いてえだろ」

さやか「やっぱアンタ、黙ってて」


静かに微笑むほむら。コイツのこんな顔、初めて見るわね。


気が遠くなるほど繰り返し、ようやく手に入れた平和な生活。


言葉には出さなくても、その喜びがあたしにも伝わってくる。

さやか「しっかし、まどか遅いなー」

杏子「マミの奴がダダこねてるんじゃねーか?」

ほむら「ありえるわね。あと5分、ゲームさせてー!とか」

さやか「あははっ、とても街の救世主とは思えないわ」


しばらくの間、談笑に花を咲かせていると、ようやくまどかとマミさんが到着した。



なぜか、二人で腕を組みながら。



さやか「まどか……マミさん……それって…?」

まどか「さやかちゃん。わたし、マミさんとお付き合いすることにしたの」

杏子「へー。そりゃ良かったじゃん」

マミ「ありがとう、佐倉さん」

さやか「…えーと、ほむら?」



ほむら( ゚д゚ )



大丈夫?息してる?

さやか「また急な話じゃない」

まどか「わたし、わかったの。マミさんには誰か、支えてあげる人が必要なんだって」


あー確かに。まどかのおかげで立ち直れそうだもんね。


マミ「鹿目さんがそばにいてくれるなら……私、もう何も怖くない!」

まどか「わたしも……マミさんといれば、もっと自分に自信が持てる!」

ほむら「まどか!そいつの言うことに耳を貸しちゃ…」

マミ「大好きよ。鹿目さん」

まどか「わたしもです。マミさん」



ほむら「ダメぇぇぇぇぇ!!!」



ほむらが暴れだしたせいで、店を追い出されたあたしたち。


まどかとマミさんは、ほむらに目もくれず、そのまま二人でデートに出かけていった。

杏子「さやかはあれでいいのか?」

さやか「うん。それが二人のためになりそうだし、この変態に凌辱されるより遥かにマシだわ」

杏子「違いねえ」

ほむら「嘘よ……こんな現実、認めない……」

さやか「ちょい待ち。アンタ、何するつもり?」


あたしは絶望の中、変身したほむらの腕を捕まえる。


ほむら「離して!もう一度過去に戻るの!」

さやか「バカ言ってんじゃないわよ!アンタは今までの苦労を台無しにする気!?」

杏子「冗談じゃねーぞコラ。まどかが欲しけりゃNTRすればいいじゃん」

ほむら「まどかの純潔は私のもの!巴マミなんかに汚されるくらいなら!」

さやか「この処女厨が!いい加減に…!」


カチッ


「あ…」


発動する時間魔法。


ほむらと取っ組み合っていたあたしは、巻き添えをくって一緒に過去へと飛ばされてしまった。

さやか「…どうすんのよバカ」

ほむら「運命を受け入れなさい。美樹さやか」

さやか「ふざけんじゃないわよ!アンタのせいでしょうが!」

ほむら「考えてもみて?あなたももう一度、上条恭介とやり直すチャンスなのよ?」


コイツ……戻った途端、冷静になりやがって!


さやか「あんなエロ猿、こっちから願い下げよ!」

ほむら「なら好きになさい。でも、まどかを守るのは私たちの共通目的。協力してくれるわね?」

さやか「アンタをブッ殺してまどかを守る!」



再び繰り返される世界。あたしたちは、今度こそ幸せになれるのかな…?



さやか「魔法少女スーパーさやかちゃん。完結よ!」

乙!
キャラ崩壊もここまでぶっとぶと楽しすぎたwwwwww
別の話も期待してるよ

乙でした。

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