ベルトルト「見ている」(52)
山奥の村にて
アニ「何見てるの?二人して」
ベルトルト「蟻の行列ー」
ライナー「同じくー」
アニ「ふうん……」
※単行本11巻くらいまでのネタバレ有り
アリアリアリアリ…
アニ「…面白い?」
ベルトルト「うん!」
ライナー「うーん俺はあんまり…」
ベルトルト「えーー?」
ベルトルト「こんなに小さい体で、こんなに大きな荷物運んでるんだよ!」
ベルトルト「しかも、スピードが落ちないんだよ!凄いよ!」
ライナー「凄いけどさーうーーん」
アニ「地味だよ」
ライナー「お前はっきり言い過ぎだろ」
アニ「地味でつまんない。違う遊びしよ」
ベルトルト「違う遊びって?」
アニ「愛憎おままごと」
ライナー「やだよ!!それ絶対お前が勝つんだもん!!!」
アニ「今回は嫁姑編だよ」
ライナー「どうせ結果同じだろ!!」
ベルトルト「おままごとなのに勝ち負けがあるの?」
アニ「人生みたいなもんだよ」
ベルトルト「アニは難しい遊びするんだね…」
アニ「女の子は難しいもんなんだよ。ほら配役決めるから立って」
ライナー「へいへいっと……」
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
ライナー「何見てんだ二人して」
ベルトルト「カマキリの卵」
アニ「しょわしょわしてて、きもっち悪いねー」
ライナー「文句言うなら見るなよ…」
アニ「しかしクセになる気持ち悪さ」
ベルトルト「カマキリの卵って子沢山の象徴ってお母さんが言ってたな」
アニ「毎年大発生するもんねー」
ライナー「イナゴみてえに食えるわけでも無いのに、大発生すんなって話だよな」
アニ「ねー。あーイナゴの佃煮食べたい」
ライナー「もうすぐ収穫の時期だから、好きなだけ捕獲できるな」
ベルトルト「…これお母さんにお土産で持ってってあげよ」
アニ「良いの?ウチで生まれちゃうかもよ?」
ライナー「よしとけよ」
ベルトルト「え?うーーん…で、でも僕弟欲しいし…」
アニ「…じゃ、やばそうになったら駆除するんだね。手伝ったげるからさ」
ベルトルト「うん!」
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
ベリック「…何見てんだ?三人して」
ベルトルト「でっかい蛾…」
ライナー「枯葉かと思ったら羽ばたいて心底びっくりした…」
アニ「羽もぎたい」
ライナー「やめて」
ベリック「うーわ、ほんとでっかいな。片羽が手のひらくらいの大きさだぞ」
ベルトルト「蛾って、胴体がモフモフしてて、触覚がみょんみょんしてて可愛い」
ライナー「擬音で例えるなよ……そんな可愛いかあ?意識したことねえ」
アニ「可愛いかなあ?ちょうちょの方が……あーでもちょうちょは口が気持ち悪いからなー」
ベリック「…そいつ弱ってるな」
ベルトルト「うん、そうなんだ」
ベリック「どうする?場所移してやるか?」
ベルトルト「ううん」
ベルトルト「死ぬの見てる」
ベリック「…………そっか」
ベルトルト「うん」
ライナー「可愛いか?ブツブツ…」
アニ「うーんよく見ると可愛いような気がしてきたようなしてこないような…ブツブツ」
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
アニ「ベルトルト!見るんじゃないよそんなもの!」
ベルトルト「えー?別に良いじゃないか…」
アニ「良かないよ!な、何でカメムシなんか見てるんだ!!」
ライナー「つくづくお前って物好きだよなあ」
ベルトルト「触らない限り臭いなんて振り撒かないから平気だよ。アニも見てごらんよ」
アニ「ヤダ!絶対ヤダ!!」
ライナー「じいちゃんに聞いたんだけどよ、カメムシってリューマチの薬になるらしいぞ」
アニ「聞いてないだろそんなこと!!!」
ベルトルト「リューマチ……?それってライナー、カメムシをお薬用に加工するってこと?」
アニ「何興味持ってんだあんたも!!」
ライナー「さーー?そこまでは聞いてねえな。もしかしたら生噛りするかもな」
ベルトルト「うわーー」
アニ「あああああ拒否してるのに口の中がぁぁぁ」
ライナー「俺が言いたいのはなアニ、どんな嫌われ者にも役目はきっちりあるってことだ」
アニ「それをカメムシの話題で伝えてこなくても良いだろ!!!」
ベルトルト「あはは…」
アニ「笑ってんじゃないよあんたも!」
ベルトルト「ご、ごめん」
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
カナカナカナカナ……
カナカナカナカナ……
ベルトルト「………」
ライナー「…なあ」
カナカナカナカナ……
カナカナカナカナ……
ベルトルト「………」
ライナー「ベルトルト、もう家に帰ろう。暗くなる……」
カナカナカナカナ……
カナカナカナカナ……
ベルトルト「………」
ライナー「巨人化の練習はもう終わっただろ?…明日また続きだ」
カナカナカナカナ……
カナカナカナカナ……
ベルトルト「………」
ライナー「……ベルトルト…」
カナカナカナカナ……
カナカナカナカナ……
ベルトルト「見ている」
ライナー「え?」
ベルトルト「こっちを見ている」
カナカナカナカナ……
カナカナカナカナ……
ベルトルト「セミたちが、僕をじっと」
ライナー「…見てねえよ。鳴くのに精一杯で」
カナカナカナカナ……
カナカナカナカナ……
ベルトルト「化け物を見るような眼で、じっと見ている」
ライナー「………」
カナカナカナカナ……
カナカナカナカナ……
ベルトルト「………」
ライナー「………」
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
アニ「……そろそろ、だね」
ライナー「…手順をもう一度確認するか」
ベルトルト「僕が壁を壊して」
ライナー「俺が門を破壊」
アニ「私が巨人呼び寄せる」
ライナー「…行くか」
アニ「…うん」
ベルトルト「………」
ライナー「ベルトルト?何を見てる?」
ベルトルト「蟻の行列……」
ライナー「またそんなもん見てるのか」
アニ「好きだねあんたも」
ベルトルト「………自分よりずっと大きなセミの死体を楽々と担いでる…」
アニ「力持ちだね」
ライナー「働きもんだな」
ベルトルト「どっちだろうね」
アニ「え?」
ベルトルト「僕たちは蟻かな?セミかな?」
ライナー「…………」
ベルトルト「前さ言ってたよね、ライナー。どんな嫌われ者にも役目はきっちりあるって」
ライナー「…ああ」
アニ「…」
ベルトルト「それって壁の中の人間達もなんだね」
ベルトルト「僕らみたいな子供にも、壁を壊すって役目があるけど」
ベルトルト「この中の人間たちにも役目はあるってことだよね」
ベルトルト「どんな役目だろう…でも、どうせ分からないね…」
アニ「……ホラ、行くよ」
ベルトルト「じゃあ、やるよ…」
アニ「うん…」
ライナー「おう…」
ガブッ カッ……
***「巨人だ!」
***「うわああああ!!!」
***「お母さぁあああああん!」
ベルトルト(見ている)
ベルトルト(人間達が、じっと)
ベルトルト(化け物を見るような眼で、じっと見ている)
……ドガッ!
おしまい
見てたよ
終末感があっていいね乙
面白かったー
乙
また貴様か
この雰囲気すごい好き
乙
あなただと思った。乙。
かーらーすー、の人かな?
なんにせよ良かった。
乙
ああ、からすの人か、同郷三人組だからじゃない?
良い…
乙
お前さんの書くものには寂寥感があるからな
いや、違う、独特の癖があるんだよ
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません