リヴァイ班「生還への分岐点」 (70)
どうにかしてリヴァイ班メンバーを生還させられないかを、
なるべくご都合主義にならない方法で考えてみます。
何番煎じかわかりませんので既存の作品と被っていたらすみません。
(考えることは皆同じかも・・・)
リヴァイ班よ永遠なれ!
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1379331366
アニメでペトラさんの死体が捨てられるとこ本当に辛い(;ω; )
第57回壁外調査。
あくまでも試験的な調査であり、短距離を行って帰ってくるだけのはずだった。
エレンに傷一つつけないという制約はあったにしても、
新兵が参加する作戦なら多かれ少なかれいつものことだ。
いつもよりも少ない犠牲で済めば良いと願っていたが、そう甘いものではなかった。
旧市街地を抜けていくらも進まない内に、早くもあちこちから信煙弾があがる。
巨人発見の赤、進路変更の緑、奇行種もしくは緊急を知らせる黒、黒、黒・・・・
左翼次列に奇行種が乱入、
続けて右翼初列が巨人の大群により壊滅的な打撃を受け、索敵の機能を失ったようだ。
間をおかずして右翼次列にも奇行種が侵入、右翼はさらなるダメージで壊滅状態。
最後の奇行種はどうやら私たちのすぐそばまで侵入を許したようだった。
「何てザマだ・・・」
兵長が吐き捨てるように呟く。
当初の目的通りならば右翼索敵が壊滅した時点で撤退してもおかしくない。
けれど進路は東を向いたまま、当初の目的である旧市街地への変更もない。
なぜ進路を変えないのだろう。
このままでは、巨大樹の森に突入することになる。
『行って帰るだけが目的なわけじゃないかもしれないな』
誰かの漏らした言葉が脳裏をよぎるのを頭を振って払いのける。
私は、私たちはリヴァイ兵長を信じると決めたのだ。
兵長の指示通りエレンを守りきる、それだけを考えていれば良い。
巨大樹の森が見えてくる。
エルヴィン団長からの「森に進入せよ」という伝達の通りに
森に向かい無言で馬を駆るリヴァイ兵長に、私たちも迷うことなく続く。
>>2
そんなことはさせません(キリッ
昼間でもなお暗い森に突入する。
木々の間から差している木漏れ日が美しい。
ここは5年前までは観光名所だった。
家族で、友人同士で、恋人同志で、楽しみ、安らぎ、癒される場所だった。
私も父さんや友達と良く来たものだった。
他のメンバーも過去のいつかの記憶を思い起こしていたのだろう、
どこか懐かしいような、寂しいような表情を一様に浮かべている。
ふと視線を感じて我に返ると、エレンが私達の顔を怪訝そうに見つめている。
いけない、短い間だったろうがすっかり自分たちの思いに囚われていた。
こんな時に何を呆けているのだと思われてしまったのだろう。
あわてて気を引き締め直す。
後方からなにか地響きが聞こえてくるのに気付いた。
あれは何だろう?巨人の足音のようだがずいぶんと早い。
もうすぐ後ろに迫っているようだ。
兵長が、いつもの落ち着いた低い声で指示する。
「剣を抜け」
自身も逆手で剣を抜いて構えながら、馬の速度を一気にあげた。
私たちも即座に剣を抜き、構え、馬を最速に移行する。
次の瞬間、地響きの正体がその姿を現した。
私たちの目に飛び込んできたのは、15メートル級と思われる巨人が、
ひとりの兵士を地面に叩きつける光景だった。
何人かの後方支援部隊が果敢に挑むが、その全てが女型に阻止され地に墜ちる。
しかしよく見ればその巨人は自分から攻撃をしていない。
攻撃の過程で人間を喰うこともしていない。
まるで身を守るための「防御」をしているようだった。
これは・・・まるで・・・・
恐ろしいほどの速さで追ってくるその巨人は、私達をねめつけるとエレンに目を止めた。
大きな目が見開かれ、まるで歓喜しているかのようにギラリと輝いた。
その巨人は視線をエレンにピタリと定めたまま、さらにスピードを上げた。
そういうことか、と私は(おそらくエレン以外のメンバーも)瞬時に理解した。
この巨人、おそらくエレンと同様に知性を持つであろう特殊巨人をおびき出すためにこそ、
今回の作戦は計画されたのだ、と。
エサはエレンであり、私たちはエレンの盾として選ばれたのだ、と。
なぜ私達に事前の説明がなかったのかはわからないが、
それがリヴァイ兵長の考えなら何か理由があるのだろう。
しかし早い。
囮ならばおそらく誘い込むべき場所がこの先に用意されているはずだが、
このままではいつ追いつかれるかわからない。
「兵長、追いつかれます!立体起動に移りましょう!」
兵長も同様に考えていたのだろう、後ろを見ながら立体機動に移ろうとする。
その時、第二陣の後方支援が追いついて攻撃を開始するのが見えた。
兵長はいつも以上に感情を表さない表情で、
剣の構えを解くと前に向き直り、最速を維持したまま走り続ける。
その巨人はまるで飛んでいる小虫でも払うかのようにたやすく攻撃を退け、
その都度、仲間の命は簡単に失われていく。
作戦なのだとわかっていても、怒りのあまり視界が赤みを帯びる。
ごめんなさい、ごめんなさい、と心の中でわび続ける。
エレンがなぜ戦わないのかと兵長に叫んでいる。
わかっている、あなた以上に私達だって苦しい、そして誰よりも辛いのは兵長だ。
今あなたには説明することはできないけれど、こうするのが最善の方法なのだから。
どうか兵長を、私たちを信じて。あなたの仲間を。
リヴァイ 生存戦略 SS
で、検索掛けると>>1にとっての驚愕の真実が…
----エレンが仲間を求めていることは知っていた。
母を喰われ、父を失い、幼馴染からも引き離されて、巨人として忌み嫌われて。
仲間といえるのはリヴァイ班の私たちしかいなかったエレン。
腕だけ巨人化したときの私たちの攻撃態勢に大きなショックを受けていたエレン。
だからこそ私たちは親指を噛みきり、仲間であることを身を持って示した。
信じていないのか?仲間じゃないのか?こういえば従ってくれるだろうと思った。
卑怯なやり方だっただろうがそれしか方法がなかった。
そして最後に兵長が実に効果的な言葉で後押しした。
「自分を信じるか、俺や仲間たちを信じるか、後悔しない方法を選べばいい 」
一見自由に選択させようとしているようにみえて、兵長はこう言っているのだ。
『仲間とともに進むのか、自由はあってもひとり孤独な道を進むのか、選べ』 と。
エレンがどちらを選択するのかは明白だった。
>>8
色んな考察あると思うからあえて他作品は読んでないのだが。
もしかしてそれ既に最高峰? つかそれ読んで黙れって感じ?
気にせず続けて
ありがとう
原作から逸脱しない方法だと「この手段」しか考えられないので・・・
高確率で被りそうで怖いのですが、とりあえず続けます
苦情来たり需要ないようなら潔く終わりますので
「・・・進みます!!!!」
エレンの意思を確認してうなずき、前に向き直った兵長が言った。
「お前ら、耳をふさげ!」
キィィィィィィイイイイン!
音響弾。間違いなく、仕掛けられた罠で待つ本隊への連絡。
エレンが巨人化すればこの作戦は失敗だっただろうし、
あまりに早く音響弾を打てば女型に気づかれる恐れがあった。
女型をギリギリまで引き付ける必要があったのだろう。
やはり兵長の判断は正しい、と確信する。
あとほんの一歩で追いつかれるほどの距離で、
通常の最速を越える速度で一気に駆け抜けたその直後、
団長の号令とともに無数の光の矢が女型の全身を貫いた。
今日はここまでにしときます
あ、リヴァイ班となっていますが語りは代表としてペトラさん視点です
では
焦るとダメですね
巨人が女型になっちゃってました・・・
続きます
兵長は最高速度を維持したまましばらく進み、
巨人が全く見えなくなってからようやく少しだけ速度を緩めた。
馬を進めながら兵長が指示する。
「このまま馬でもう少し距離を開けたら立体機動に移れ。
お前達も気づいただろうがあの巨人はエレンを狙ってる。
罠にはかかったが万一ってこともあるからな、エレンをなるべく
巨人から離れた場所に隠して待機してろ 」
エルドが提案する。
「エレンの役目が囮であるならもう用は済んだのではないですか。
安全な壁の中に一足先に戻すべきと考えますが・・・」
兵長は首を振った。
「いや、敵がひとりとは・・・あのクソ巨人一体とは限らねえし、
今この森周辺には巨人どもが大勢集まってやがるから
お前達といえども少人数で戻るのは危険だ。」
グンタが少しためらいがちに質問する。
「兵長の言われた万一の場合や、他に仲間がいて攻撃してきた場合は
どうしますか。」
あらかじめ考えていたかのように、兵長が淀みなく答える。
「煙弾を撃って知らせ、本隊へ合流しろ。俺もすぐにそちらへ向かう。
未知の敵だ、出来る限り交戦は避けろ。
これからこの森の中において特別作戦班の連絡用の煙弾は"赤"を使う。
間違えるなよ 」
なるほど。いまこの森の中にいるのは本隊と我々のみだから、
巨人発見を知らせる目的で赤の煙弾を使うケースはまずないだろう。
緑では待機している他の兵士が集まって来てしまう恐れがあるし、
黒は緊急事態を知らせる特別な煙弾なので不適切だ。
「他にはねえな?・・・では俺はいったん別行動をとる。
あとの指揮はエルドに任せる、俺の馬をたのんだぞ 」
兵長は馬上から立体機動に移ると今来た道を引き返して行った。
その姿はあっという間に遠ざかって行く。
_________
「そろそろいいだろう」
エルドが馬を止めた。
木々の間にそれぞれの馬を移動させ、突き出た枝にタズナを緩く括りつける。
緊急時に馬自身の力でふりほどけるように。
「さて…」とエルドが切り出した。
「兵長は待機場所を明確に指定していない。
それでだ、どこで待機すべきか俺なりに考えた。
立ち止まって説明している時間はない。悪いが俺を信じて付いてきてくれ」
エルドに何か考えがあるようだ。
いま私達を指揮すべきはエルドなのだから異論はない。
エルドは森を南から北に縦貫路から右手の木立に進路を変え、飛びながら切り出した。
「俺たちは、壁外調査の目的とリヴァイ兵長からの任務をわけて考えるべきだと思う。」
「俺達の任務はエレンを生きて壁内に帰すこと、だな」
と答えたグンタにエルドはうなずいた。
「そうだ。つまり兵団の作戦完遂後、可及的速やかに本隊に合流しなくてはならない。
残った兵士で築かれた陣形の中央広報にエレンを配置して守りながら帰還する」
「なるほどな。おいエレンどうすべきかわかるか?わからねえだろうな、
まだまだお前は俺の域には達していな…」
「つまりなるべく本隊の近くに居た方が良いってことね?」
オルオには悪いが時間が無いので無視させてもらう。
エルドの案は尤もだ、作戦が成功した場合には。でも…
「もし作戦が失敗したらどうするんです?例えばあの巨人が逃げ出すとか…
なるべく離れた場所に隠れて居た方がいいんじゃないでしょうか」
間違えた。
>エルドは森を南から北に縦貫路から右手の木立に進路を変え、飛びながら切り出した。
エルドは森を縦貫する太い路から、右手の木立に進路を変えて飛びながら切り出した。
エレンが遠慮がちに問う。
「いや、そうでもない。作戦が失敗したケースとして考えられるのは
巨人もしくは本体があの罠から逃れ、かつ、俺たちを追ってくることだが・・・」
エレンがごくりと唾を飲む。先ほどの巨人を思い出したのだろう。
「普通に考えれば、俺たちが逃げた方向へ追ってくるだろう、つまり
先ほどの路を北上した先だ 」
「あ・・・」
「さらに言うとその場合、敵は調査兵団の最強部隊を突破してきたことになる。」
「・・・・!」
そうだ。あの場には本隊のエルヴィン団長陣営、人類最強であるリヴァイ兵長と、
リヴァイ兵長に次ぐ実力者であるミケ分隊長、狂犬と呼ばれたこともある
ハンジ分隊長が揃っているのだ。
それらを突破してきたとなれば・・・・
「俺たちの実力では、まともに戦えばまず敵わないとみて間違いない。」
エルドが続けた。
「だから、いずれにしても俺たちは本隊の近くで待機していた方がいいんだ。
巨人または本体と戦うことになったとすれば、リヴァイ兵長やミケ分隊長が
いてくれる方がエレンの生存確率は格段に上がるだろうからな。」
エルドが進路をさらに右に変える。
本隊のいる中心部分と、他の隊の兵士が待機する森の外側の中間辺りを通過するようだ。
「今回俺たちに作戦の説明がなかったのは、誰が裏切り者なのかを
つかめていなかったからだと思う。
あの巨人以外にも仲間がいる可能性を考えれば、俺たちの移動を
本隊以外に見られるのは避けた方が無難だ。」
やはり指揮をを任されるだけはある、と感心する。
この短時間であれだけの断片的な情報からここまで組み立てるとは。
素直にそう思う。
「・・・・了解した。」
残るメンバーでうなずく。
遠回りをしているせいか、かなりの距離がある。
まだしばらくかかりそうと見て、オルオがエレンにちょっかいを出し始めた。
「そういやよ、さっきの罠見たか?エレン!クソ巨人を捕獲したんだぜ!
すげえだろ! あれが調査兵団の力だ!どうだ!わかったか!」
…いつも通りにうっとおしいが、今度ばかりは黙って聞いてやる。
巨人捕獲に関しては私自身も同じようにとても誇らしい気持ちだったから。
エルヴィン団長の頭脳、リヴァイ兵長を筆頭とした超精鋭の戦闘力をもってすれば、
知性を持つ巨人を制圧することすら可能なのだと思った。
そしてもう一つ嬉しかったのはエレンが私達を信じてくれたこと。
巨人に追われながら戦うべきと主張していたエレンの目を見たとき、
兵長の言う「化け物」の片鱗を見た気がした。
それでもエレンは私達を、仲間と進む道を「自身で」選択したのだ。
…ここまで考えて、兵長がエレンに選ばせたのはエレンだけでなく、
私達のためでもあったのかもしれないと、ふと思った。
この先何度もエレンの巨人化を間近で見るであろう特別作戦班の私たちこそが、
本当などエレンを信じることが出来るように。
改めてエレンを見る。
ホントすっげぇ・・すごかったです!と年相応の無邪気さで目を輝かせる姿に、
遠征前に私達を見送る、街の幼い子ども達が重なった。
…あの子達はこの森の美しさを知らないのだ。
遥か遠い地平線の広がりも、風にそよぐ広大な緑の大地も。
あの子たちのためにも、人類は何としても巨人を排除して本当の自由を
取り戻さなくてはならない。改めて意志を固める。
「……壁の中に戻るまでが壁外調査だからな!」
…まだ続いていた。
さすがにうんざり顔のエレンの横であからさまにため息をついてやる。
もちろんオルオにはカエルの面になんとやら、だが。
その時、遠くから、聞いたこともない不気味な叫び声が続けざまに上がり、
唐突に途切れて不自然な静けさが戻る。
この響きはどこかで聞いたことがある…いつだっただろうか。
父さんがいたような…
もーだめ、おやすみなさい・・・
期待してるよ
続きです
そうだ。
訓練兵団に入る前に父さんとこの森に来た。
何かの役にたつから、と武器の扱いを一通り教えてくれたのだ。
その時にきいた、追い詰められた獣の叫びだ。
あまりに悲痛な、心を引き裂くような声だったからよく覚えている。
ということは、あの巨人は今まさに息絶えようとしているのか。
それならば計画は無事成功したということになる。
やはり本隊近くで待機するのが正解だろう。
私たちは道を急いだ。
どこか遠くから地鳴りのような音が響いてきた。
左側・・・森の外側から? どんどんこちらへ近づいてくる。
これは――巨人の足音だ。 これだけの音を出すというのは・・・・
「いったん止まるぞ!巨大樹の上へ上がれ!」
緊迫した声でエルドが指示する。
巨人の届かない高さの枝上で様子をうかがう。
――見えてくるのはやはり巨人の群れ。10体ではきかないだろう。
通常集団行動をとらないはずの巨人が、捕食する人間もいないのに
一斉にどこかへ向かう異常な光景。
私たちに目もくれずに足下を走り過ぎる巨人たちを、皆あぜんとして見送る。
どこへ向かうのだろう、と考え、ハッと気づく。
この方向は・・・・巨人たちはリヴァイ兵長のいる、女型の巨人をとらえている場所に
まっすぐに向かっているのだ。
「エルド、兵長に早く知らせないと!」
同じように察したらしいエルドがうなずき、はからずも本来の目的通りとなってしまった
赤い煙弾を打ち上げる。
「・・・あれは何なんだ、クソ奇行種どものピクニックか?飯の時間ですよ~ってか?」
オルオのつぶやきをエルドが拾う。
「ピクニックかどうかは知らんが、奇行種ではないと思う。
エレンが二度巨人化した際、いずれも他の巨人は人間よりも
エレン巨人体に向かっていったと報告されている。
おそらく知性巨人には通常巨人を呼び寄せる"何か"があるんだろう。 」
先ほどの声。 追い詰められた獣の叫びと思ったのは間違いではなかったのか。
仲間を呼ぶ声 ・・・・助けを呼んだということだろうか。
もし他の巨人を操れるとしたら恐ろしいことだ。
・・・・兵長は、他の人たちは無事だろうか。
「俺たちはどうする、合流するのか? 」
「いや、ここでもうすこし様子を見る 」
そうだ、巨人が来ていること、私たちがここにいることはすでに伝えた。
兵長ならきっと気づいてくれているだろう。
おそらく今本隊が一番危険に晒されている。エレンを伴って行くのは危険だ。
兵長は必ず来てくれる。
それまではここで待機し、あらゆる事態に備えるのだ。
――――――――――
何が起こっているのかわからず焦りがつのる。
その時、右後方から緑の信煙弾が上がるのが見えた。
合流の合図だ。 でもなぜあんな場所から?
あそこは・・・そうだ、私たちの馬を繋いだ辺りだ。
森の入り口とは逆方向であり、どの部隊もいるはずのない場所。
「兵長、間違えてあっちに向かっちゃったんでしょうか? 」
「バカかテメエ、俺らの煙弾は赤だが? 兵長がそんな間違いするわけねえだろうが?」
――― 罠、か 。
無言で顔を見合わせる。
まだわからない。本当に仲間なのかもしれない。
もし敵だったとしてもこの広大な森でこちらの位置はわからないはずだ・・・・
・・・・・違う。
「さっき上げた赤い煙弾。 もし、あれに気づかれていたら・・・ 」
馬の付近に私たちがいないことを知り、あの煙弾を見ていたとしたら。
賢い敵ならば結びつけることはたやすいだろう。
「だな。 時間稼ぎのつもりで馬を置いてきたが、意味がなくなった。
エレン、すぐに俺たちから少し離れて隠れろ 」
「俺も一緒に・・・・!」
「気持ちはありがたいが、俺たちの使命はお前に傷ひとつつけないことだ。
立体機動で戦う限り、悪いがお前では足手まといだ。 」
「す、すみません 」
自分が不甲斐ないのだろう、悔しげにうなだれるエレンにエルドが表情を緩めて言った。
「俺たちが危なくなったら助けてくれよ、巨人の力でな 」
「頼りにしてるよ、人類の希望くん! 」とグンタ。
「その時は私たちをつぶさないようにお願いね!」
「けっ、そんなことには間違いなくならねぇだろうがな! 」
オルオは相変わらずだが、裏を返せば"自分が絶対に守る"と言っていることに
本人は気づいていないのがおかしい。
エレンの表情が少しだけ晴れる。
「・・は、はい!ご武運を!」
だが確かにオルオの言うようにそれはあってはならない事態であり最終手段なのだ。
気を引き締めて煙弾の上がった方向を見据え、臨戦態勢をとる。
本隊方向から撤退を意味する青い煙弾が上がった。
作戦は成功したのだろうか?
兵長が来る気配はない。
さきほどの巨人達はどうしただろう。
もしかして・・・まさか・・・わからない。いま考えても仕方ない。
もうすぐ本隊が戻ってくる、兵長も一緒に、きっと。
―――まだ、本隊は来ない。
『未知の敵だ、交戦は避けろ』
兵長はそう指示していたし、実際その通りだろう。
しかし本隊の状況がわからない。
先ほど行き過ぎた巨人の群れも戻ってくる気配がない。
いま本隊に戻るのは危険すぎる。
本隊の撤退を確認してから合流するのが最善だが、
本隊が戻ってくる気配も未だない。
敵が私たちの居所を知った可能性がある以上、ここから移動すべきだろうが、
そうすれば兵長も私たちを見つけることができなくなる。
もう煙弾を撃つことはできないのだから。
私たちは後にも先にも進むことができない状況に陥っていた。
兵長が赤の煙弾を確認していて、そして兵長が無事ならば、きっと来てくれるはずだ。
倒すことはできないまでも兵長が来るまで持ちこたえるしかない。
緊迫した中。 私たちが見据えた薄暗い森の奥から、ひとりの兵士が立体機動で
こちらに向かい滑空してくる。
小柄でキレのある動き・・・似ている、が違う、兵長ではない。
兵長ならばフードなどかぶらない。
兵長ならば人間に向ってブレードを構えることなどしない。
兵長ならば私たちに対してあんな殺気など纏わせない。
"リヴァイ班"の私たちの目を誤魔化せるものか。
「来たぞ!」
見破られていることを知ったその兵士は、私たちよりかなりの手前で滑空を止め、俯くような仕草をし・・・・
すさまじい閃光と、轟音とともに、先ほど見た女型の巨人へと一瞬で変異した。
ねむー
次回は女型との戦闘をお届けします・・・
楽しみに待ってます
ありがとうございます
続きです
やはり。さっき追ってきていた巨人だ、初めて見る女型の。
どうやってあの罠から逃れ、あの精鋭達の包囲から抜け出したのか?
・・・いや、巨人体のままで逃れたのならばそのままの姿で追ってくるだろう。
そして幾らなんでもあの精鋭中の精鋭達が誰ひとりとして追撃していないなどありえない。
きっと、さっき呼んだあのたくさんの巨人たちに兵団を襲撃させ、
その混乱の隙に巨人の体から抜け出したのに違いない。
だとすれば、この女型の巨人は必ずしも我が兵団の最強部隊と
一戦交え勝利してきたわけではないのだ。
――― 勝てる、かもしれない。
顔を見合わせる。緊張こそあれ、誰ひとり怯えてなどいない。
皆が自分を信じ、互いを信じ、兵長を信じている。
これが私たちの力の源だ。
エレンが適切な距離をとって隠れてくれたであろうことを信じ、
流れるように戦闘態勢に移る。
相手がだれであろうと変わらない。
私たちは今、自分たちにできる最善を尽くすだけだ。
追われていた時の後方部隊への攻撃を思い出す。
こいつはこちらの攻撃や軌道をかなり正確に読んでいた。
当然だろう・・・敵を倒すための技術を一から丁寧に、敵自身に教えていたのだから。
こいつのせいで今日一体何人の仲間が死んでいっただろう。
何人の意志をこの背に負っただろう。
激しい怒りがこみ上げる。捕獲など考えずに殺してしまいたい。
でも、兵団の目的は生きて捉えることなのだ。
仲間たちの犠牲を消して無駄にはすまい。
あの古城で何度も練習した、エレン巨人体からエレンを救出する手段。
あれを実践すればいいのだ。
(まさかリヴァイ兵長はここまで見越していたのだろうか?)
エレン相手では多少心は痛んだが、こいつには遠慮などいらない。
手足すべて切り取ったところでかまわない、生きてさえいれば。
落ち着いていつもの連携をとる。
今のメンバーでの序列はエルド、ついでグンタ。
( オルオは不満だろうが、討伐数がすべてではないのだ )
グンタが先発して女型巨人の正面から攻撃をしかける。
今まで相手にしてきた兵士とはスピードも動きも違うのがわかったのだろう、
振り払うというより確実に[ピーーー]勢いで反撃してくる。
心得たグンタが攻撃を受ける寸前で離脱し、女型がわずかにバランスを崩した隙を逃さずに
私とオルオが死角となった左右側面から最高速度で迫り、交差して両目を深く切り裂く。
間髪入れずに後ろに回り込んでいたエルドが項へ刃を振り下ろす。
ここまで3秒かかっていないだろう。
これで終わりだ。
キィン!!!!!
宙に舞ったのは予測していた巨人の血肉ではなく、白刃の煌めき。
――― 何が起こったのか・・・?
女型が背後を振り向きざま、攻撃したエルドの軌道上にすさまじい蹴りを放った。
>>1さん、メール欄にsagaって入れておいた方がいいですよ。
そうしないと「殺す」って書いても[ピーーー]って表示されてしまいますから。
>>1さん、メール欄にsagaって入れておいた方がいいですよ。
そうしないと「殺す」って書いても[ピーーー]って表示されてしまいますから。
ガイドにメール欄に「sage」って入れると伏字にならないとあったので
いつも入れてるんですがダメなんですよね・・・・っていま>>41さんの見たら
「sage sage」て入れるんですか
知らなかったです、ありがとうございました
テスト 「[ピーーー]」 「[ピーーー]」
あれ???
テスト「殺す」
>>40 再録
落ち着いていつもの連携をとる。
今のメンバーでの序列はエルド、ついでグンタ。
( オルオは不満だろうが、討伐数がすべてではないのだ )
グンタが先発して女型巨人の正面から攻撃をしかける。
今まで相手にしてきた兵士とはスピードも動きも違うのがわかったのだろう、
振り払うというより確実に殺す勢いで反撃してくる。
心得たグンタが攻撃を受ける寸前で離脱し、女型がわずかにバランスを崩した隙を逃さずに
私とオルオが死角となった左右側面から最高速度で迫り、交差して両目を深く切り裂く。
間髪入れずに後ろに回り込んでいたエルドが項へ刃を振り下ろす。
ここまで3秒かかっていないだろう。
これで終わりだ。
キィン!!!!!
宙に舞ったのは予測していた巨人の血肉ではなく、白刃の煌めき。
――― 何が起こったのか・・・?
女型が背後を振り向きざま、攻撃したエルドの軌道上にすさまじい蹴りを放った。
視力を失っているとは思えない、あまりにも正確な狙いに心臓が止まりかける。
攻撃が成功したルートであれば確実に直撃していた、だがエルドは何故か酷くバランスを崩して滞空し、
そのおかげで辛くも蹴りの範囲から逃れていた。
エルドは空中で即座に体制を立て直し、女型から大きく距離をとって戻ってくる。
こちらの追撃が無いと判断したのだろう、女型はそれ以上の攻撃はせずに
両手で項を覆い、大木に背中を預けて静止した。
両目からはシュウシュウと蒸気が上がっている。
「・・・刃が通らない 」
戻ってきたエルドが顔をしかめながら言う。
両手の刃は根元から折れていた。
衝撃で手首がしびれているようだ、もしこの刃が折れやすく設計されていなければ
骨に損傷を受けていたかもしれない。
「・・・鎧の巨人と同じ能力か・・・」
グンタの呟きにエルドがうなずく。
「どういうことだ?顔面は間違いなく削げたんだが?」
信じられないという顔でオルオが言う。
確かに両目を攻撃した際には通常巨人と同様に刃が沈んでいた。
「鎧は守備は鉄壁だが動きが遅い。
こいつは機動力を優先し、致命的な攻撃を受けた時だけ
体の一部を硬化させているんだろうな 」
何と言うやっかいな能力。
これでは中身を取り出すことも殺すことも不可能だ。
おそらく本隊もこの能力に手間取っているうち、巨人の群れに襲われたのだろう。
他の巨人を呼び寄せる叫び。
なぜか今は使おうとしない。
私たちは理解する、この女型の巨人はここで勝負をつけるつもりなのだと。
両目からは蒸気が上がり続けている。
あと数十秒もすれば再び視力を得るだろう。
最初と同じ攻撃はおそらくもう通用しない。
どうすれば良いのか。
思案していたエルドが決意したような表情で口を開く。
「―――エレンの力を使う。 」
無理だ、と思った。
エレン巨人体の実験は何度も立ち会ったが、まだその巨人の体を
人間体と同じレベルで使いこなすには至っていない。
対してこの女型の巨人は、まるでこれが本体であるかのように
100%その能力を出し切っているように見える。
出現から今までの動き、判断力、持久力をみれば、とてもエレン巨人体の
敵う相手ではなかった。
オルオが真向から反論する。
「今のあいつじゃ絶対にあの巨人には勝てねえだろ。
巨人同士の戦いに立体機動で援護するのも無理だ。
ここは俺たちが最期まで戦って時間を稼ぐべきだろうが。 」
私も同意見だった。
あの巨人がエレンと同じなら、巨人体で動ける時間は限られる。
もうかなり長い時間動いている上に巨人化も少なくとも2回目だから
そろそろ動けなくなってもおかしくない。
しかしグンタは言った。
「いや・・・オルオの言うようにエレンを基準に考えるべきじゃない。
あとどれくらい動けるのか未知数な上に、俺たちだって動ける時間は限りがある。
体力の問題だけじゃない、ガスが尽きる。 」
・・・忘れていた。ガスが尽きて飛べなくなれば、
私たちは猫の鼻先に転がる羽をもがれた鳥に等しいのだ。
「・・・・しかし珍しいな、いつも安全策を選択するお前から言い出すとは 」
笑いを含んだグンタの言葉に、女型に目を据えながらエルドが苦笑する。
「これが今できる最善策だからな。
・・・忘れたか、兵長に言われたことを。命を無駄に捨てるな、と。」
そうだ。時間切れで殺されるなど無駄死にでしかない。
いつも通りの方法で倒すことができないならば未知の力に賭けてみるべきだ。
「そうね。兵長達が合流してくれればさらに勝率が上がるわけだしね。」
「仕方ねえ、やってやるか。で、何か策はあんのか? 」
「まずは完全に動きを停止させる。行くぞ! 」
誰も何も言わんがちゃんと見てるし期待してるよ
いつもありがとうございます
励みになります
ダメですね・・どんなにがんばってもペトラさん死んじゃってるんだなって思ったら
偶然すごく切ないペトラさんのMMDみてかけなくなってしまった
ちょっと考えてどうするか決めます
>>53
お前が生かせば問題なかろうて
女型の双眼から立ち上る蒸気が薄れていく。
再生が完了するまでほぼ1分。これは通常巨人と変わらないらしい。
カッと見開かれた両眼が青く光る。
女型は左手で項を覆ったまま、もたれていた木を蹴って勢いをつけ向ってきた。
ボンベにまだガスが十分残っていることを確認し、迎え撃つ。
「兵長式で行け、わかってるな!」
立体機動の弱点。
それはこの先進的な武器の要でもあるワイヤーに他ならない。
引っ張られたまま進むのは確かに早く正確で楽だが、
そのワイヤーが命取りになることが多々あるのだ。
多くは高速で移動する味方同士や木の枝や鉄塔などに絡んでしまう事故だが、
一番怖いのは巨人につかまれてしまうケースだ。
ワイヤーはつながっている兵士の命を左右してしまう。
だから、立体機動を熟知しているリヴァイ兵長がワイヤーを使うのは、
目標を定めて目標もしくはその付近へ飛ぶスターターとしてのみ。
すぐに巻き取り、ガスを吹かして軌道修正し、体の捻りで加速をつけて攻撃する。
驚異的な身体能力をフルに使えばこそだが、それに近い方法を実践するよう
私たちも心がけて訓練を重ねてきている、勝手に「兵長式」と名付けて。
加えて攻撃の完全分業、これが私たちが調査兵団では比較的長らく生き延びている所以だ。
巨人の繰り出す攻撃を躱しながら四方向から煽る。
ほんのわずか体が固くなる、繰り出されるパンチ。
左足のつま先が地面に食い込む、後ろからの回し蹴り。
すべてが致死の攻撃であるが、よけてしまえば問題ない。
通常の巨人とは比較にならない速さと反射神経だった。
格闘術を身につけているのか、堂に入った構えから繰り出されるパンチや蹴りは
動きにまったく無駄がない。
だが巨体であるがゆえにどうしても大振りで、"人類最強"のスピードにはかなり劣る。
常日頃から最強の最速を見慣れている私たちにとって、巨人の攻撃は十分見切ることができた。
加えて、人間の格闘術を使う以上、動きの予測も十分可能だった。
動きを止めるギリギリ前まで巨人を翻弄し、できる限り体力を削いでおく、
というのがエルドの指示だ。
エレンの力は借りるが、彼を死なせないことが本来の任務であり、
出来る限り危険は排除しなくてはならないから。
――――――――――――
「ペトラ!」
オルオの怒声。
轟、と突き出された拳と、続けざまに放たれた蹴りをスレスレでかわし、
巻き起こった風圧で体がぶれるのをガスを吹かして何とか立て直す。
オルオが反対側から女型を攻撃し、私への追撃を阻止してくれた。
はぁ、はぁ、と肩で荒く息をする。
兵長より遅いといっても当たれば死に直結する攻撃を避け続けるのだから、
精神的にも体力的にもかなりの負担を強いられていた。
そろそろ限界が近い、と思ったとき、エルドが目配せで合図を送ってきた。
一瞬のアイコンタクトで全員がただちに理解する。
ここからが正念場だ、ガスも体力ももう残り少ない。
チャンスは一度きり。
休んだり停止すれば女型に過度な警戒をさせてしまう。
最後の力を振り絞り、いままでの流れの中で一気に本気の攻撃をしかける。
足の腱、脊髄、どちらが損壊しても一時的に動きを止められる。
エルドが女型の左脇から回り込んで脊椎を狙い、
グンタは右上から項を覆っている手首へ切りかかる。
ほぼ同時に私とオルオが足元の木にアンカーを打ち込んで背後へ軌道を変え、
足首の腱に刃を向ける。
ワイヤーをひっかけようとする足の蹴り、右手の振り下ろしは予測済みだ。
木にアンカーを打ち込んだ後、一気に巻き取る勢いで体を進めながらすぐにアンカーを抜き、
ガスを吹かして更に加速をつけて進みながら同時に進行方向へ再度アンカーを射出する。
立体機動の動きを熟知した女型がワイヤーをつかもうとするがすべて寸前で空振りする。
片手を塞がれた状態での4方向からの攻撃にさすがの女型も対応しきれず、
私とオルオによって両足の腱を切り裂かれ、しりもちをついた。
右手を地面につき体を支えた隙をついて、グンタが巨人の頭上を越え、
両手のブレードを女型の再生したばかりの両眼に再度叩き込んだ。
素早く戻ったエルドが私に言った。
「女型に気づかれないよう抜けてエレンを呼んできてくれ。
俺たちは左手の筋肉を落として、首を覆うものを無くしておく。」
ミスった。
> 俺たちは左手の筋肉を落として、首を覆うものを無くしておく。」
俺たちは両手の筋肉を落として、首を覆うものを無くしておく。」
女型はふたたび木を背にして俯き、両手で首を覆って沈黙した。
その体を蒸気が纏う。
回復までの時間は最初に確かめた。
もし再生力が巨人の体力と比例するならばもうすこし余裕があるのかもしれないが、
万全を期して最短の1分と考える。 その間に勝負を決めなければ。
私は気づかれないようそっと離脱してエレンを呼びに行った。
エレンはエルドの指示通り、ぎりぎり目の届く範囲内にうまく隠れていた。
「エレン、無事ね? 」
どこか茫然としたように戦闘を見つめていたエレンが、我にかえったように私を見た。
「ごめんねエレン、あなたの力を借りたいの 」
エレンの大きな目がさらに見開かれた。
その驚愕に近い表情に少しの違和感を覚えたが、
ここから見ている限りは私たちだけで十分女型を押しているように見えていたのだろうと納得する。
「は、はい、オレは何をすれば・・・? 」
一緒に戦いたいと言った時のような殺気はなかった。
エレンは冷静なのだと思った、これならば変異しても暴走はないだろう、と。
「巨人化してもらうことになるよ。 声を出さずについてきて、 あとはエルドの指示に従って 」
手短に伝え、緊張した面持ちでうなずいたエレンを伴ってすぐエルドのところへ向かう。
「クソ!また固まりやがって!」
オルオが忌々しげに叫び、それでもブレードをたたきつけている。
くだけた刃が宙にまばゆく散った。
「やめろオルオ、ブレードを無駄遣いするな!」
グンタが咎める。
・・・これは演技だ。 女型に私たちの作戦を、エレンの接近を気づかれないための。
まあ、オルオのことだ、9割本気で言っているんだろうけれど。
私達が着くなりエルドがエレンにささやいた。
「足の腱を切断して腕の筋肉を削り、目も潰して無力化してある。
すぐに巨人化して、女型の首をもぎ取ってくれ 」
「えっ・・・?! 」
その表情が怯えたように見えるのはなぜだろう。
「こいつは体の一部を硬化できるから項を削げないんだ。
首ごと千切りとるしかない。もうすぐ再生する、時間がない、すぐにやってくれ 」
「・・・は、はい! 」
どもりながら返事をして、エレンはいつものように親指の付け根を噛み切った。
全員で閃光と衝撃にそなえる。
・・・・・変異しない。
なぜ? よりによってこんな時に失敗する?
何やってやがる!と言いたげな顔でオルオが睨みつけた。
エレン自身も焦りを感じているのか、場所を変えて何度も噛み千切る。
巨人化の実験で、最初の頃に何度も見た痛々しい光景の再現。
傷口から鮮血が滴り落ちるが、それでも一部たりとも変異しない。
「な、なんでだよ・・・」
口の周りを血に染めたエレンが絞り出すようにつぶやく。
「どうしたの、エレン? 落ち着いて、大丈夫。 今までうまくいってたよね? 」
巨人化にはエレンの精神状態が大きくかかわっている。
焦らせてはいけない、私はできる限り穏やかに促してみる。
「わ、わかりません! どうしても巨人になれません! 」
目に涙をにじませ、エレンはパニックをおこしかけている。
様子を見ていたエルドはいつまでも待ちはしなかった。
失敗したと判断してこの作戦を切り捨て、次の作戦に移行する指示を出した。
「やむを得ない、全員で首周りを一斉に攻撃しろ。
これまでやつは一度に一部しか硬化できていない、うなじの皮を残して首を落とせ 」
エレンに頼んだことを私たち自身でやるということだ。
どこを硬化するかわからない上に、硬化した箇所を攻撃すれば
確実にブレードを破損してしまう。
先に首を落とすか、ブレードを全て失って敗北するか、一か八かの賭けだった。
残りわずかのガスを温存して使いながら、集中力をかき集めて切りかかる。
一撃目、エルド。 首右側面を攻撃し、深い傷が刻まれる。
二撃目、グンタ。 裏をかいてもう一度同じ個所を攻撃、さらに傷が深くなる。
三撃目、オルオ。 ふいをついて項を攻撃、硬化で防がれ、ブレードが砕け散る。
四撃目、私。 首正面を攻撃、刃が沈み、右の深い傷と繋がる。
体力はとっくに限界を超えていた。 全員気力だけで攻撃を続ける。
何度か硬化で防がれはしたものの、間を置かずに連続攻撃をしたせいか、
首の前面に、赤い三日月のような深い傷が口をあけた。
ギリギリやれるかもしれない、やるしかない、という希望と使命感が
限界を超えたボロボロの体を動かす。
俯く巨人からはまだ蒸気があがっている。 大丈夫だ、時間は、残されている。
エルドが首を支える筋肉に深い一撃を与えようとして加速した、その時。
俯いていた巨人がふいに顔をあげた。
顔にかぶさる薄汚れた金色の髪の、間から覗いた冷たい青光が、エルドをしっかり捉えた。
あの青い光は・・・目? なぜ? まだ1分たっていない。
それになぜか片方だけしか・・・
------- まさか、片目だけ、優先再生したというのか・・・?
そんな・・・・!
スローモーションで景色が流れる。
死の咢がエルドに向かってゆるやかに開かれ、ガチッと音をたてて勢いよく閉じた。
思わず反射的に閉じた目を、意志の力で無理矢理こじあける。
ガッチリと閉じられた女型の口には、エルドではなくワイヤーがくわえれていた。
ワイヤーのアンカー側の端にはエルド、射出した上方の端にはグンタ。
口が閉じてエルドがかみ砕かれる寸前、グンタはエルドにアンカーを射ちこんだのだ。
固い石の壁に突き刺さって人の体重を支えるアンカーを人体に直接撃てば
それだけで致命傷となる。
グンタはとっさの判断で超硬質ブレードを内包した刀身ボックスを狙い、
エルドを横に弾き飛ばした。
命はつないだが代償は大きかった。
加速した状態で勢いよく弾き飛ばされたエルドは巨人の歯こそ逃れたものの、
アンカーを射出するまもなく地面にたたきつけられた。
女型がワイヤーをくわえたまま首を大きく振りかぶったので、
グンタは大きく円を描いて同じように地面に激突した。
地面がやわらかい土であり、ふたりともかろうじて受け身をとったのはさすがだが、
衝撃の大きさにうずくまり、戦うどころかすぐに動ける状態ではなかった。
あとはオルオとふたりでやれるだけやるしかない。
「エレン、逃げなさい! 本隊に合流して、早く! 」
本隊がどうなっているのかわからないがここにいるよりはまだマシだ。
エレンに声だけかけ、あとは振り向かずに女型に向き直る。
女型が再生完了すれば、逃げても逃げなくても絶望的だ。
「オルオ!いくよ!」
「言われなくてもやるつもりだが?!」
兵長さながらの凶相で女型に目を据えていたオルオと連携し、
激しく振られる首を狙って攻撃する。
頭突きも大きく開いた口も脅威的でなかなか傷を与えられない。
やっとあたっても硬質化されて無駄にブレードを消費する。
オルオと併せてもブレードは残り3セットといったところか。
久しく感じたことのない感覚が背中を這い上り、冷や汗になって伝い落ちる。
でも最期まであきらめるつもりなどない。
たとえ私が死んでもオルオが戦うはずだ。
オルオが死んだなら兵長が戦ってくれる。
兵長が死んだら・・・(考えたくもないが)他の誰かが戦い続けるだろう。
こうして私たちは100年の間、命を、希望を、意志を継いできたのだから。
ダメかもしれないがもう一度眼を狙ってみようと思う。
足も腕も使えないなら攻撃は顔までは届くはずだ。
その後喰われてもかまわない、目さえつぶせれば。
ブレードを逆手に持ち替える。突き刺すにはこの方がいい。
まっすぐ飛ぶだけなら慣れない薬指でのトリガー操作も何とかできる。
「ペトラ何やってんだテメエ!」
何か気づいたらしいオルオが怒声を上げる。
今日何度目だろう?いつもは私が罵声を浴びせているのに、と場違いにも笑いが込み上げる。
「オルオ、もう一度眼をつぶすから!あとはお願い!」
オルオの返事はいつものように無視して、女型の後ろの木にアンカーを突き刺し
巻き取る勢いで一直線に女型の顔へ突っ込む。
加速するために再度ガスを吹かしてアンカーを射出しようとして・・・
シューという頼りない手ごたえとともにがくんと高度が下がる。
とうとう、ガスが、尽きた。
悔しさに視界が滲む。 最後に、何としても一矢報いたかったのに。
なすすべなく地面すれすれを滑空する私めがけて、
ついに足の再生を終えた女型がゆるりと立ち上がり、容赦なく飛び蹴りを放った。
圧倒的な質量が迫るのを睨みつける。自分の最期を見届けたい。
最後に兵長を思い浮かべ、すみません、と呟く。
その時、何かが私にぶつかり、蹴りの軌道から逸らした。
その何か・・・誰かは私を支えたまま、滑らかな動きで軽々と空中へ飛び上がる。
まさかオルオ?と驚いてその誰かを見つめ、呼吸が止まりかける。
「無駄死にするなと言ったはずだ、ペトラ。 無謀な攻撃は犬死と変わらねえぞ 」
「・・・すみません・・・ 」
思い浮かべた幻想の産物かと疑いながら、幻想と同じ言葉を繰り返す。
ひとりでは飛べない私をかかえて女型の攻撃を軽くかわしながら
すばやく周辺を確認し、おおよその状況を判断したらしい兵長が言った。
「状況はだいたいわかった。
お前はエレンとボンベと交換して動けるようにしておけ。
もうすぐ本隊が森を抜けてくる。 荷馬車にエレンと怪我人を載せて
すぐにこの森から抜けろ。退却だ 」
兵長の冷静な低い声をきいて、現実なのだと認識する。
やっぱり来てくれたのだ。
安堵のあまり泣きそうになる。
「へ、兵長はどうするんですか?!」
「俺はあの女型に用がある 」
「いくらなんでもひとりじゃ危険です、俺も手伝います!」
急いで合流してきたオルオが言うが、兵長は首を横に振る。
「お前のガスもどうせ残り少ねえだろう。
お前を抱えたまま女型と戦う方がよっぽど危険だ 」
「そ、それは・・・」
納得のいかなそうなオルオに、私をエレンのところまで運ぶように指示を出し、
早くしろと促して、兵長はひとり女型に向き直った。
その場を離れるとき、兵長がぞっとするような低音で女型に語りかけるのが聞こえた。
「よぉ、また会ったな、さっきの続きをしようじゃねえか 」
読んでくれている方、ありがとうございます
今日はここまで
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