・1『サシャ「キスの味、私に教えてください」』(過去ログ倉庫行き)
2『サシャ「この味は、ウソをついてる味ですね」』(過去ログ倉庫行き)
3『サシャ「二人だけの、秘密の味です」』(過去ログ倉庫行き)
4『サシャ「とくと味あわせてあげましょう!」』
5『サシャ「同じ味を、知りたいですから」』
6『サシャ「味気なくなんかないですよ?」』
7『サシャ「……興味ないです」』
8『サシャ「味も匂いもたまりません!」』の続きです
・いつも通りネタバレなし&ご都合主義&展開です
—— 早朝 女子寮 ユミルたちの部屋
サシャ「……」ガサガサ
サシャ「……お菓子の袋」ポーイ
サシャ「……花柄はちょっと」ポーイ
サシャ「……お菓子の袋」ポーイ
サシャ「……お菓子の袋」ポーイ
サシャ「……お菓子の袋」ポーイ
サシャ「……」ガサガサ
サシャ「……うーん」
クリスタ「サシャ、そろそろ朝ご飯——って、わぁっ!」ガチャッ
サシャ「お帰りなさいクリスタ、朝の当番終わったんですか?」ガサガサ
クリスタ「うん、そうだけど……どうしたの? この紙袋の山」
サシャ「あー……すみません、今片付けますね」ガサガサ
クリスタ「ううん、大丈夫……でも何してるの? 朝早くからこんなに広げちゃって」
サシャ「……えと、借りた上着を返したいんですけど、手頃な袋がなくて」シュン
クリスタ「これは? ……うーん、ちっちゃいね」チマッ
サシャ「服が入るほど大きい袋って持ってないんですよ……街ではほとんどお菓子とか食べ物しか買いませんし……」シクシク
クリスタ「そういうことなら、私も何枚か持ってるからあげようか?」
サシャ「本当ですか!? ぜひお願いします!!」パァッ
クリスタ「うん、ちょっと待ってねー……」ゴソゴソ
クリスタ「はい、好きなのどうぞ!」バッサァ...
サシャ「……かなり溜め込んでますね。私も人のこと言えませんけど」
クリスタ「だって、お店の袋ってかわいい柄の多いから……///」エヘヘ
クリスタ「でもでもっ、これでもちゃんと定期的に捨ててるんだよ?」プンスカ
サシャ「あはは、わかってますよ。ええと……じゃあこれ、いただきます。シンプルですし」
クリスタ「チェック柄かぁ……うん、無難でいいんじゃないかな」
サシャ「……あの、袋をもらったついでに聞きたいことがあるんですけど」
クリスタ「んー? 何?」
サシャ「この上着、洗った方がいいと思います……?」オソルオソル
クリスタ「うーん……ハンカチとかなら洗って返すけど、上着はどうなんだろうね……?」
サシャ「たぶん予備は持ってると思うんですよね。でも、タイミング悪くてこれが最後の一着だったら、着替えがなくなって困るでしょうし」ウーン
クリスタ「勝手に洗うと嫌がる人もいるから、難しいよね……」ウーン
サシャ「けどこれ、ちょっと汗臭い気もするんですよねー……やっぱり洗った方がいいですかね……」ジーッ
クリスタ「………………嗅いだの?」
サシャ「!? ままままままままっさかぁーっ!」アタフタアタフタ
クリスタ「あはは、そうだよね。ごめんごめん。取り敢えず、今日返す前に聞いてみればいいんじゃないかな?」
サシャ「ですね、そうしますそうします」ゴソゴソ
クリスタ「借り物を返すなら、それだけじゃちょっと物足りないよね……ねえサシャ、余ってるお菓子ない?」
サシャ「お菓子ですか? いくつかありますけど」
クリスタ「じゃあ、さっきの小さい袋にお菓子何個か入れようか」
サシャ「えっ」
クリスタ「……」
サシャ「……」
クリスタ「……」
サシャ「……」
クリスタ「……入れようね?」ニコッ
サシャ「ぐっ……はい、わかりました……っ!」ググググ
サシャ「袋はよし、お菓子も入れた、上着も取り敢えず入れた」ユビオリ
クリスタ「あとは……そうだ、手紙も入れておこうよ!」ポンッ
サシャ「手紙……ですか?」キョトン
クリスタ「うん。もしかしたら本人に直接渡せないかもしれないし、忙しくて相手と話す暇もないかもしれないから」ゴソゴソ
サシャ「手紙、ですか……」ウーン
クリスタ「はいこれ、私の便せん分けてあげるね! 書き終わったらこっちの封筒に入れて?」
サシャ「……私、手紙って苦手なんですよね」ウーン
クリスタ「私も得意じゃないよ? ——でも、もらった人はただ単に返されるよりも、ずーっと喜ぶと思うなぁ」チラッ
サシャ「……じゃあ、がんばってみます」グヌヌ
クリスタ「うん! ——サシャの感謝の気持ち、届くといいね?」ニコッ
—— 朝 食堂付近の廊下
サシャ「……」ウロウロ
サシャ(ライナーがいない……上着洗ってもいいか聞こうと思ったんですけど……)ウロウロ
サシャ「……」ウロウロ
アニ「……さっきから何してるの? そろそろ座学の時間だよ」
サシャ「あ、おはようございますアニ。……ライナー見ませんでした?」
アニ「今日は見てないね。当番か何かじゃない?」
サシャ「そうですか……」シュン
アニ「……何かあったの?」
サシャ「少し用事です。昨日のことでちょっと」
アニ「昨日……」
サシャ「そうだ、またみんなで遊びましょうね!」
アニ「……暇だったらね」
サシャ「はい、暇な時で結構ですよ?」ニコニコ
アニ「……今日の特訓は、立体機動訓練の後ね」スタスタ...
サシャ「はい、お願いします!」
—— 午前 座学教室
サシャ(空き時間に洗った上着は夕方に乾くとして……あとは手紙ですね)ウーン
サシャ(これなら教官の出す課題の方が何倍も簡単ですよ……一体何を書いたらいいんでしょう……?)グヌヌ
サシャ(ミーナが講義中に回してる手紙とは違うことくらいは、私にだってわかりますが)ウーンウーン
サシャ(というか、便せんが大きすぎるんですよねー……)ピラッ
サシャ(えーっと、まず……手紙の書き出しってなんでしたっけ?)アレ?
サシャ(…………そもそもなんで手紙書くんでしたっけ?)アレッ?
サシャ(………………手紙ってなんでしたっけ)アレレー?
アルミン「サシャ、もうみんな次の教室行っちゃったよ? 何してるの?」ポン
サシャ「!! あ、アルミイイイイイン!」ダキッ
アルミン「うわっ! ……っとと、どうしたの? 講義中ずっと百面相してたけど……」
サシャ「私に手紙の書き方教えてくださぁい!! パァンさえもらえればなんでもしますから!!」
アルミン「いや、パンはいいけど……手紙って誰に出すの?」
サシャ「えっ? えーっとですね……それは……///」モジモジ
アルミン「言いにくいなら、どういう人に出すかだけ教えてくれる?」
サシャ「…………お世話になってる人です。とっても」モジモジ
アルミン「年上の人?」
サシャ「いいえ、違います」ブンブン
アルミン「それなら、サシャが思ったことをそのまま書けばいいんじゃないかな」
サシャ「それは、そうなんでしょうけど……」モジモジ
アルミン「?」
サシャ「その……自分の気持ちをそのまま出すのって、慣れてなくて……」モジモジ
アルミン「思ったこと全部じゃなくていいんだ。たった一言でも充分だよ」
サシャ「でも、便せんはこんなに大きいんですよ? これに一言だけ書くんですか?」ピラッ
アルミン「大丈夫だよ。一言でも、もらった相手は嬉しいと思うよ? だってそれはサシャの気持ちでしょ?」
サシャ「……私の気持ち、ですか」
アルミン「うん。真心のこもった手紙をもらって、喜ばない人なんていないよ」
サシャ「……本当に、そのままの気持ちを書いて、嬉しいって思ってもらえますかね?」
アルミン「むしろ本音が聞けて嬉しいって思うんじゃない? 普段そういう気持ちを出してないなら余計にさ」
サシャ「……じゃあ、そのまま書くことにします」カキカキ
アルミン「他に聞きたいことはある? 僕でよければ相談に乗るよ?」
サシャ「他にですか。——あの、それならライナーがどこにいるか知りませんか?」
アルミン「ライナー?」
サシャ「はい。朝から探してるんですけど見当たらなくて……」
アルミン「ライナーなら、今日は風邪で休みだよ?」
サシャ「……へ?」キョトン
—— アルミンの回想 早朝 男子寮
ライナー「……」ゼエゼエ
アルミン「顔が赤い」
ベルトルト「息が荒い」
エレン「どこからどう見ても風邪だな!」
ベルトルト「エレン、静かに」シーッ
エレン「わ、悪い」シュン
アルミン「原因は……やっぱり昨日の川遊びかな。きっと身体が冷えちゃったんだね」
エレン「一人だけ帰ってくるの遅かったもんなー。俺たち帰ってからすぐ風呂に行ったのに」
ベルトルト「夕食近くまでどこに行ってたんだい? ライナー」
ライナー「……ちょっとな」ゼエゼエ
アルミン(誤魔化した……ってことは、言えないところに行ってたのかな……?)
エレン「夏風邪は食って寝るのが一番って聞いたことがあるけどどうなんだ?」
アルミン「そうだね、夏風邪は特効薬がないからそれが一番いいよ。あと、汗をかいて治すっていうのはダメみたい」
ベルトルト「そうなんだ?」
アルミン「身体を温めて汗を出すと、今の時期は脱水症状を起こしやすいんだ。風邪を悪化させる原因にもなりかねないし」
ベルトルト「まるで体験してきたかのような口ぶりだね」
アルミン「気のせいだよ」
まってました!このシリーズ好きなんだよ。
芋女がただの芋女じゃない所がな!
ただ、わt、ユミルとクリスタも・・・///
ベルトルト「でも、これじゃあ訓練は無理だよね……」
アルミン「そうだね……今日はここでじっとしていたほうがいいと思うな」
ライナー「いや、今日は班長会議に立体機動の訓練があるからな。休むわけには——」ムクッ
アルミン「!? 待って、気持ちはわかるけど今日は休んだほうがいいよ!」
ベルトルト「アルミンの言うとおりだよ、いくらなんでもその体調じゃ無理だ!」
エレン「……」
ベルトルト「エレン、黙って見てないで止めてくれ!」
エレン「止めていいのか?」
アルミン「当たり前でしょ!」
エレン「……わかった」
エレン「なあライナー。本当に今日は休む気ないのか?」
ライナー「ああ、ない」ゼエゼエ
エレン「……」ニコッ
ライナー「? なんだ?」
エレン「——ふんっ!!」ズツキッ!!
ライナー「ぐおっ!?」ドゴッ!!
アルミン・ベルトルト「!?」
エレン「いってぇー……」ヒリヒリ サスサス
ライナー「 」バタンキュー
ベルトルト「らっ、ライナー!? 大丈夫!?」オロオロ
アルミン「エレン、何してるんだ君は!!」
エレン「だってよ、ライナーはこうでもしないと休まねえだろ?」サスサス
アルミン「それはそうかもしれないけど……!!」
ベルトルト「……いいよ、アルミン。エレンはライナーのことを思ってやったんだろ?」
アルミン「でも……!」
ベルトルト「それに……二人が言い争ってたら、ライナーなら止めに入ると思うから」チラッ
アルミン「あ……」
エレン「……」
ベルトルト「……取り敢えず、僕は医務官に連絡してくるよ」
エレン「……班長会議は、俺が行ってくる」
アルミン「……じゃあ僕は、座学のノートを取っておくね」
ベルトルト「二人とも、ありがとう。空き時間に僕が様子見に来るようにするけど、二人も手が空いたら見に来てもらえるかな?」
アルミン「うん、わかったよ」
エレン「その……ベルトルト、悪いな」シュン
ベルトルト「僕はいいよ。その代わり、後でライナーにも謝ってね?」
エレン「ああ、わかってる。ちゃんと謝るよ」
アルミン「——ってことがあったんだ」
サシャ「何というか、エレンらしい解決方法ですね……」
アルミン「気持ちを伝えるのが不器用なんだよね、エレンは。まあ、僕に言わせればミカサも不器用に見えるけど」
サシャ「ミカサもですか?」
アルミン「うん。エレンを心配しすぎて、自分の気持ちを伝え損ねちゃったりすることなんかしょっちゅうだよ?」
アルミン「だからね……気持ちを伝えるのが苦手なのは、サシャだけじゃないよ?」
サシャ「!」
アルミン「ね? だから大丈夫だよ」ニコッ
サシャ「…………ありがとうございます、アルミン」
アルミン「どういたしまして」
アルミン「そういえばサシャ。ミカサに聞いたんだけど、最近夜遅くまで勉強してるんだって? よかったら、昨日のスイカのお礼に今度勉強教えるよ」
サシャ「本当ですか!?」ガタッ
アルミン「うん。さすがに毎日ってわけにはいかないけど、それでもいいなら」
サシャ「いいですいいです充分です! アルミンがいれば百人力です! 神様ー!」バンザーイ!!
アルミン「か、神様はちょっと言い過ぎじゃないかなー……?」テレテレ
サシャ「いえいえ、アルミンのおかげで手紙も書き終わりましたしもういいことずくめですよ! 朝からずーっと悩んでたんですから!」
アルミン「…………ねえサシャ」
サシャ「なんですか?」
アルミン「講義中、手紙のことずっと考えてたの?」
サシャ「はい!」
アルミン「ノート取れた?」
サシャ「……」
アルミン「……サシャ?」
サシャ「アルミーン……」ジワッ
アルミン「あはは……後で僕のノート貸してあげるね?」クスッ
—— 午前中 対人格闘訓練
サシャ(本当だ、いない……)キョロキョロ
コニー「サシャ、余ってんなら俺と組もうぜー」
サシャ「いいですよ? まあ、今のコニーでは私に適わないでしょうけどね!」フーッ
コニー「ああ? ……そっか、お前最近アニと特訓してるもんな」
サシャ「? よく知ってますね?」キョトン
コニー「特訓なんてしねえ奴が特訓してたらそりゃ目につくだろ。——っと、話はいいからとっととやろうぜ。モタモタしてると教官が来ちまう」
サシャ「なら、最初に私がならず者をやります!」スッ
コニー「余裕かましてられんのも今のうちだ。——かかってこい!」
待ってた!
いつもありがとう!
サシャ「はっ!」シュッ!!
コニー「甘い!!」バシッ!
サシャ「!? 技のキレがいい……!?」ググググ
コニー「俺も最近エレンと特訓してんだよ! おらっ!」ヒュンッ
サシャ「ぐっ……!! 差は結局広がらず、ですか……?」ググググ
コニー「へへっ、そう簡単に抜かせねえよ……!」ググググ
サシャ「何言ってるんですか、抜いて見せますよそのうち……!」ググググ
コニー「させねえってば……! 食欲に負けたらみっともねえもんな……!」ググググ
サシャ「? 食欲って何の話ですか……?」ググググ
コニー「お前が最近頑張ってんのって、憲兵団でうまいメシ食うためなんだろ……!? 言われなくたってわかってるぜ……!」ググググ
あなたのライサシャが大好きだ!
サシャ「……いえ、違いますけど」
コニー「なんだ、違うのか?」
サシャ「理由は教えられませんけどね。コニーには秘密ですっ」プイッ
コニー「はぁ? ……まあ、別に教えてくれなくてもいいけどよ」
サシャ「? 追求されると思ってたんですが……しないんですか?」
コニー「しねえよ、どうせ聞いたところで覚えてらんねえもん俺」
サシャ「……コニーは悩みがなさそうでうらやましいです」ハァ
コニー「なっ……お前失礼だな!」プンスカ
サシャ「じゃああるんですか? 悩み」
コニー「……ねえけどよ」
サシャ「あはは、やっぱり」クスッ
コニー「なんだよ、そういうお前だってどうせ大した悩みじゃないんだろ!」
サシャ「むっ……失礼ですね! 私はどうやって借りた物を返すか考えてるんです!」
コニー「なんだ、やっぱり大したことねえじゃねえか」
サシャ「なら、コニーだったらどうします?」
コニー「シュッと行ってサッと置いてパッと帰ってくりゃいいだろ?」
サシャ「それができれば苦労しないんですよぅ……」ズーン
コニー「大体な、俺たちみたいな馬鹿は考えたって無駄なんだから、何も考えないほうがいいんだよ」
サシャ「でも、それで作戦間違えてたら意味ないと思います」
コニー「……」
サシャ「……」
コニー「……やるかこらぁっ!」バッ!
サシャ「望むところですっ!」ババッ!
—— 昼 食堂
サシャ(……やっぱりいない)キョロキョロ
サシャ(昼ご飯、ちゃんと食べたんですかね……)ボンヤリ
ジャン「おい、いつまで座ってんだ。食い終わったんならどけよ」
サシャ「いえ、まだ終わってませんよ?」
ジャン「あぁ? 目の前の空の食器はなんだ?」
サシャ「だってジャンからパァンをもらってません!」チョーダイ!
ジャン「やらねえよ。……もういいや、時間ねえし正面座るぞ」ドカッ
サシャ「強引ですねえ……そうだ、昨日はありがとうございました!」ペコッ
ジャン「昨日?」モグモグ
サシャ「スイカの皮運んでくれたんですよね? 本当はゴミの処理も私たちがやるはずだったんですけど……すみません、全部任せちゃって」シュン
ジャン「お前に礼なんか言われる筋合いねえって。俺はミカサのためにやったんだよ」
サシャ「……ジャンは本当にミカサ一筋ですね」クスッ
ジャン「馬鹿にしてんのか?」イラッ
サシャ「いえいえ、褒めてるんですよ?」ニコニコ
ジャン「調子狂うな……いいか? 俺は自分のことしか考えてないんだよ。他の奴らなんてどうでもいいんだ」
サシャ「じゃあそういうことにしといてあげますよー」モグモグ
ジャン「……おい、そのパンどこから持ってきた?」
サシャ「目の前からです」モグモグ
ジャン「この芋女ぁ……!!」ギロ...ッ
サシャ「まあまあ落ち着いてください、私はタダでもらおうだなんて思ってませんよ?」
ジャン「ああ?」
サシャ「今度またミカサたちと遊ぶことになったら、必ずジャンを誘います。——これでどうです?」
ジャン「……悪くねえ取引だな」
サシャ「でしょう?」モグモグ
ジャン「お互い自分のことしか考えてないから、これで手打ちにしようってか?」
サシャ「そういうことですそういうことです」コクコク
ジャン「……必ず誘えよ? 絶対だからな?」
サシャ「このパァンにかけて誓います、安心してください!」ニコッ
ジャン「まあ全部はやらねえけどな。残り返せ」ヒョイッ
サシャ「ああ……っ! 私のパァン!」ガーン
ジャン「俺のだっての」モグモグ
—— 夕方 アニとの特訓後 男子寮近くの通路
サシャ「……」ウロチョロウロチョロ
サシャ(上着が乾いたのはいいものの、どうやって渡しましょう……? できるだけ早めの方がいいですよね)ウロチョロウロチョロ
サシャ(ミカサに頼んで、中に侵入する道を教えてもらいましょうか……でもミカサにばっかり頼むってのは……)グヌヌ
マルコ「サシャ、何してるんだい?」
サシャ「? マルコこそ、何やってるんです? そろそろ夕食の時間ですけど、こんなところで散歩ですか?」
マルコ「ううん、これから班長会議なんだよ。今向かうところ」
サシャ「夕食返上なんですか? ……班長って大変なんですねぇ」
マルコ「後からちゃんと食べる時間はもらえるけどね」
マルコ「それで、サシャは何の用事? ここにいたってことは男子寮の誰かに用があるとか?」
サシャ「おお、鋭いですね……さすが頭がいい人は違いますね!」
マルコ「それは関係ないと思うけど……会議までまだ時間あるから、よかったら呼んできてあげようか? 昨日のお礼にさ」
サシャ「本当ですか? ……あ、でも」モジモジ
マルコ「? どうしたの? 言いづらい?」
サシャ「いえ、そうじゃなくて……ライナーに用事があるんですけど、今日って風邪で寝込んでるんですよね?」
マルコ「ライナーか……うーん、そうだね。それなら呼び出しはちょっと無理かもなぁ」ウーン
サシャ「ですよね……」ズーン
マルコ「よかったら、僕が代わりに用件伝えてこようか? 何か渡すものがあるならついでに渡してくるよ?」
サシャ「……いえ、直接話したいので、自分でなんとかします」
マルコ「そっか、じゃあ頑張って。……僕はそろそろ行くね?」
サシャ「はい、お話聞いてくれてありがとうございました! マルコも班長会議頑張ってくださいねー!」フリフリ
サシャ「よーし、私も頑張りましょう!」ギュッ
サシャ「それでは、まずは男子寮に——」ハッ!
サシャ(し、しまった……!! 中に入る手引きだけでもしてもらえばよかったです……!!)ガーン
サシャ(マルコは……背中すら見えません!! なんでですか足速すぎでしょう!!)ウロチョロウロチョロ
サシャ(やっぱり明日渡すしかないでしょうか……でも……)ウロチョロウロチョロ
ベルトルト「サシャ?」
サシャ「!! ベルトルト……」
ベルトルト「夕食の配膳もう始まってるよ? 行かないの?」
サシャ「……それ、ライナーの夕食ですか?」
ベルトルト「うん、そうだよ。病人食だからみんなより少し早めに作ってもらったんだ」
サシャ「……」
ベルトルト「……?」
サシャ「ベルトルトォッ! お願いします、一緒に部屋に連れてってくださいぃ!」ガバッ!!
ベルトルト「うわっ!! 待って待ってスープが零れる!!」
サシャ「あ、すみません」パッ
ベルトルト「ああ、びっくりした……一緒にってことは、ライナーに用事?」
サシャ「そうですそうです」コクコク
ベルトルト「その手に持ってる物を渡したいとか?」
サシャ「……頭がよくなると人の心が読めるんですか?」
ベルトルト「いや、それは違うと思うなぁ……」
ベルトルト「無理に男子寮に入ろうとしなくても、僕が渡しておくよ? 今は夕食の時間で人は少ないけど、サシャが帰るころには人が増えて抜け出すのも大変だろうし」
サシャ「……いえ、ベルトルトの気遣いはありがたいんですけど、これは自分で直接渡したいんです」
ベルトルト「でも、たぶんライナーはまだ寝てると思うよ? それでも行きたいの?」
サシャ「……はい」
ベルトルト「……わかった。じゃあついてきて」
サシャ「やったー! ありがとうございます、ベルトルト!」バンザーイ!!
ベルトルト「その代わり、僕が案内したのは他の人には秘密だよ? ライナーにもね」
サシャ「? はい、わかりました!」
—— 夕方 男子寮 エレンたちの部屋
ベルトルト「はい、ここだよ」ガチャッ
サシャ「はぁい、失礼しまーす……おおー」コソコソ
サシャ(……男子寮って、女子寮とちょっと匂い違いますね)クンクン
ベルトルト「あまり必要以上に見ないようにしてね、エレンとアルミンの部屋でもあるから」
サシャ「あっ、すみません……気をつけます」シュン
ベルトルト「ライナーは……やっぱりまだ寝てるね。——サシャ、この後何か用事ある?」
サシャ「いえ、特にありませんよ? ご飯を食べてお風呂に入るくらいです」
ベルトルト「なら、ちょっとライナーのこと見ててくれないかな。僕、いろいろやってこなくちゃいけないことがあるから」
サシャ「へっ? それって、ここに二人きりってことになるんじゃ……」
ベルトルト「椅子は勝手に座っていいから。それじゃあね」ガチャッ
サシャ「ちょっ、ベルトルト!?」
サシャ「行っちゃいました……頭がよくなると足も速くなるんですかねー……?」
サシャ(せっかく来たんですし……取り敢えず、顔だけは見ておきましょうかね)トコトコ
サシャ「失礼しまーす……」ヒョコッ
ライナー「……zzz」スースー
サシャ(本当に寝てますね……)
サシャ(でも、寝息は思ったより穏やかですね。顔色も悪くありませんし、これなら明日は大丈夫そうです)ホッ
サシャ(あ、額に乗せてあるタオル、乾いちゃってますね……)
サシャ(よいしょっと……)ギュー ジャバー
サシャ(絞り加減はこんな感じでいいですかね……起きませんようにー……)ソッ...
ライナー「……zzz」スースー
サシャ(よしよし。——それにしても寝相いいですね。全然動きませんよ?)ジーッ
サシャ(……)
サシャ(……///)ドキドキ
サシャ(寝顔、あまり見たら悪いですよね……///)プイッ
サシャ(うーん、待ってるだけって暇ですねー……エレンやアルミンはどこに行ったんでしょう?)キョロキョロ
サシャ(部屋の作りは女子寮とほとんど同じなんですね。前に夜中に来た時は、部屋の中まで見ませんでしたけど)キョロキョロ
サシャ(本が積んであるのはアルミンですかね。一番汚いのはエレンの机でしょうか。……一時期の私よりはキレイですが)グヌヌ
サシャ(ベルトルトは……整理整頓が行き届いてますね。物がなさ過ぎて逆に心配ですけど)
サシャ(それと……ライナーの、机……)チラッ
サシャ「……」
サシャ(……あんまり見なきゃいいんですよね?)
サシャ(……つまり、ちょっとだけならいいですよね?)ジーッ
サシャ(とはいっても、机の上には水の入ったタライと夕食のトレイでいっぱいいっぱいなんですけどねー……)ジーッ
サシャ(机の端に今日の座学の教科書が置いてありますね……なるほど、前日に準備しとくんですね。私も見習いましょう)マジマジ
サシャ(ん? 教科書の上に、何枚かプリントが載ってますね)ペラッ
サシャ(この班長会議って、マルコが言ってたのですかね……それに室長会議? こんなのあったんですか?)
サシャ(これの他に、いろんな当番があるんですよね。こんなに毎日やることいっぱいならそりゃ倒れますよ)ムー...
サシャ「……」チラッ
サシャ「……寝てますよね?」
サシャ(椅子は……いいや、床に座っちゃいましょう)ペタン
サシャ(よし……誰も来ませんよね?)スゥッ
サシャ「……そんなにいっぱい抱え込むから、風邪引いちゃうんですよ? わかってます?」プンスカ
サシャ「……あんまり溜め込んじゃダメですよ? 何かあったら、こんな風になる前にちゃんと私に話してくださいね? って前にも言ったはずなんですけどね」ムー...
サシャ「えーっと……あとは……」
サシャ「……やっぱり、ライナーがいないと物足りないっていうか……私も、その、寂しい、ので……」
サシャ「だから……早く元気になってくださいね?」
サシャ「……えへへ。聞こえてませんよね?」
サシャ「……」
サシャ「……聞こえて、ませんよね?」
サシャ「……」
サシャ「……あの」モジモジ
サシャ「……」
サシャ「……」モジモジ
サシャ「いつも……、その……」
サシャ「……」
サシャ「……」
サシャ「………………………………おおきに」ボソッ
サシャ「……」
サシャ「……〜〜!!///」カアアアアアアア
サシャ(うわぁっ、緊張したぁ……っ!!/// たった一言だけなのに……っ!!///)ドキドキ
サシャ(はっ、恥ずかしい……!!/// 誰も聞いてないのに恥ずかしい……っ!!///)ドキドキ
サシャ「……」チラッ
サシャ「……きっ、聞こえてませんよね?」ドキドキ
サシャ(顔が、熱い……)ドキドキ
サシャ(もう少しだけ……もう一言だけ……)スゥッ...
エレン「とらわれーたーくつじょくーはーはんげきーのーこうしーだー♪」ガチャッ
サシャ「!!」ビクッ!!
エレン「……何してんだ? サシャ」
サシャ「ゆっ、夕食をっ! 届けに来たんですっ!!」アワアワ
エレン「ふうん。なら仕方ないな」スタスタ...
サシャ(あっ、危なかった……ていうか仕方ないで済ましちゃうんですか……)ドキドキ
エレン「ライナーはまだ寝てるのか?」ヒョイッ
サシャ「はい、そうみたいです。あ、タオルはさっき濡らしておきましたよ」
エレン「おう、ありがとな。……うん、だいぶ顔色もいいな。これなら明日には元気になってるだろ」
サシャ「そうだ、アルミンに聞きましたよ。……病人に頭突きはないでしょう、頭突きは」ジトッ
エレン「うっ……俺だって反省してるよ。でも簡単には休まなそうだしさ、ライナーって」シュン
サシャ「ああ……そういうところありますよね。意思が固いっていうか」
エレン「そうそう。そうなったらきっとアルミンの説得も聞かないだろうし、あの時はああするしかなかったんだよ」
エレン「それに風邪は引きはじめが肝心だって、昔親父も言ってたしさー……」ムスッ
サシャ「……エレンなりにライナーを心配してやったんですよね、わかってますよ」クスッ
エレン「だよな! 俺悪くないよな!」
サシャ「頭突きはダメですけど」
エレン「……褒めて落とすなよ」シュン
サシャ「あはは、すみません。——でもライナーだって問題ですよ。熱出るまで頑張るなんて、人のこと馬鹿って言えませんよね!」プンスカ
エレン「そうだそうだ! 体調管理も兵士の仕事のうちだろ!」プンスカ
エレン「ライナーのばかー」
サシャ「ライナーのあほー」
ライナー「……zzz」スースー
エレン「……」
サシャ「……」
エレン「何やってんだろうな俺たち」
サシャ「ですね」
エレン「……」
サシャ「……」
エレン「……静かにするか」シーッ
サシャ「……そうですね」シーッ
エレン「……つまりさ、俺が言いたいのは、ライナーもたまにはゆっくり休めばいいんじゃねえかってことなんだよ」ボソボソ
サシャ「おや、意外ですね。エレンなら『兵士に休む暇なんてない!』って言うと思ったんですけど」ボソボソ
エレン「それはその通りなんだけどさ……だからって、体調崩すまで頑張るってのは違うだろ?」ボソボソ
エレン「適度に手を抜け、っていうのも違うか。なんて言えばいいんだろうなー、もうちょっと周りを頼ってくれてもいいんじゃねえの? っていうか……」ボソボソ
エレン「……あー、わっかんねえ! ——悪いな、俺こういうこと話すの慣れてないんだよ」ボリボリ
サシャ「いえ、大丈夫ですよ。なんとなくですけどわかりました」
エレン「本当に? すげえなサシャ」
サシャ「なんていうか、頼りになりすぎて逆に不安なんですよね」
エレン「でもおかしいよなーそれって。本当は俺たちが心配する必要なんかないはずなのにさ」
サシャ「まあその謎はそのうち改名するとして……あとはそうですね、色々背負い込みすぎっていう気がします」
エレン「うんうん。色々引き受けてくれるところは尊敬してるけどよ、なーんか見てて危なっかしいよなぁ」
サシャ「……お兄ちゃんとかいたら、こんな感じなんですかね?」
エレン「そうかもなー。俺、兄弟がいないからよくわかんないけど」
サシャ「横から見守る妹の気持ちも考えてほしいですよ、全く」プンスカ
エレン「そうだよな、弟の気持ちも考えろってんだよな」プンスカ
サシャ「そこで、私から提案なんですけど——今度、頑張るお兄ちゃんのために、息抜きに連れて行くってのいうのはどうですか?」
エレン「……おお、いいなそれ」
サシャ「しかもおいしいチーハン付き」
エレン「いいなそれ……!!」キラキラキラキラ
サシャ「だから、せめてこれ以上お兄ちゃんに心配かけないように、私たちは私たちで頑張りましょう?」ニコッ
エレン「そうだな……そうだよな! よし、頑張ろうぜ!」グッ!
サシャ「……エレン、静かに」シーッ
エレン「……悪い」シーッ
—— 夜 女子寮近くの廊下
サシャ(無事に抜け出せてよかったです。あとでエレンにお礼しないとですね)テクテク...
サシャ(そういえば……男の人の寝顔って、お父さん以外だとはじめて見ましたね……)
サシャ「……」テクテク...
サシャ(お父さんかぁ……)
サシャ「……」テクテク...
サシャ(今度、手紙でも書いてみましょうかね……)
—— 消灯時間前 男子寮 エレンたちの部屋
ライナー「……」パチッ ムクリ
アルミン「あ、起きたんだ。ライナー、おはよう……って時間でもないけど」
ライナー「……今何時だ?」
アルミン「消灯時間前だよ。昼に僕がご飯持ってきたんだけど、食べた覚えある?」
ライナー「全然ないな……というか起きた記憶がない」
アルミン「風邪のせいもあるだろうけど、それだけ疲れが溜まってたってことかもね。——ところで気分はどう? 熱は?」
ライナー「下がった。明日は出られる。……エレンとベルトルトは?」
アルミン「さっきお風呂に行ったよ。僕はこの本読んでから行くつもり」ペラッ
アルミン「それと、今日の講義のノートは僕が取っておいたよ。後で渡すね。班長会議はエレンが行ってくれたから、明日話を聞くといいよ」
ライナー「……悪いな、色々」
アルミン「これくらいお安いご用だよ。……そうだ、夕食は机の上に置いてあるから、食べられるなら食べたほうがいいと思うよ?」ペラッ
ライナー「ああ、そうする。……? この袋はなんだ?」ヒョイッ
アルミン「? 僕は知らないけど……枕元においてあったんならライナー宛じゃない? 開けてみたら?」
ライナー「……そうするか」ガサガサ
ライナー(上着……ということはサシャからか。アルミンが知らないってことは、エレンかベルトルトが持ってきたのか?)
ライナー(他に何か入ってるな……手紙と小さな紙袋?)ガサガサ
ライナー「……」
ライナー「……」ジーッ
ライナー「……」
アルミン「なんだった?」
ライナー「俺宛だった。貸した物が返ってきたみたいだ」
アルミン「へえ……何か貸してたの?」
ライナー「……ちょっとな」
アルミン「そっか、返ってきてよかったね?」ペラッ
ライナー「ああ……」
ライナー(小さい方の紙袋の中身は……飴か)
ライナー(まさか、サシャから食べ物をもらうなんてな……いや、そっちよりも)ペラッ
ライナー(これはサシャの字、だよな……?)ジーッ
『上着 ありがとうございました
いい匂いでした! サシャ』
ライナー「……匂い?」
おわり
終わりです。読んでくださった方&レスくださった方ありがとうございました!兵士がそんな簡単に風邪引くか?とか思ったけどまあ気にするな
風邪イベントに手料理はつきものなんですが、手料理編はじっくりやりたかったので今回はカットしました。こうして書きたいものがどんどこ増えていく……
貼るのに精一杯で途中で返事のレスができないんですが、途中レスは本当にいつも励みになってます!
というかこちらこそいつも読んでくださってありがとうございます……! もう読んでくれてる人みんな好きですありがとうありがとう
このシリーズの終わり方はもう決めてるんですが、途中経過はまだまだ妄想中なので、気長に付き合ってくださると嬉しいです。よろしくお願いします
乙乙
このシリーズはほんわかするゎー
乙!良かったー!
乙
乙!出来るなら終わらないでいつまでも続いて欲しい…
面白すぎる。こうなったら、訓練兵団後の戦士と兵士の葛藤もみたい。
結果は自由に改変していいんで
乙!
どこまでもついていきますよ
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