剣聖が鍛冶屋を営むようです (119)

このスレは剣聖と呼ばれる冒険者が鍛冶屋を経営するスレになります。安価、コンマを利用する安価スレになりますのでご了承ください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1708765018

遠い昔。生命力と魔力に満ちた大地が広がっていた時代。
ある神がヒトと呼ばれる種族を創った。それは後に人間と呼ばれた。
ある魔神も対抗し、同じくヒトを創った。それは後に魔族と呼ばれた。

神と魔神の仲はすこぶる悪く、些細なことで争い、憎み合っていた。
光、即ち生命を司る神と、闇、即ち死を司る魔神。
正反対の存在である二柱がお互いを忌み嫌うのは必然であり、そんな彼らが生み出した人類と魔族が対立するのも道理と言えよう。

お互いがお互いを見下し、罵り合う。そんな日々が続いたらどうなるかは言うまでもない。
当然のように戦争が始まり、大地が赫く染まるほどの血が流された。

どちらが真に優れたヒトか。どちらかが滅べば解るはずだと。
繰り返される侮蔑と嘲笑の果てに辿り着いた、優劣を決める手段。
それが絶滅戦争であり、そこに和解の選択肢は一切存在していなかった。

はずなのだが。どちらかが滅ぶまで終わらない戦争が、二人の犠牲によって、止まった。

人間の王子と魔族の姫君。決して交わるはずのない二人はお互いに惹かれ、そして結ばれることのない世界の不条理に嘆き、命を落とした。

何故二人が死んだのか。その顛末については定かではない。世界各地の伝承によって全く異なるのだ。
だが、その地域の風習に合わせ、先人の過ちを今を生きる子供たちに伝える。
その役割こそは不変であり先人の遺した教えを胸に、同じ過ちを繰り返さないように手を尽くす。

悲劇の主役たる王子の名は『アダム』。そして、姫君の名は『イヴ』。
この名前は、破滅に向かっていた世界に一石を投じ変革を為そうとした英雄として語り継がれている。

そして、現代に至る。人魔が手を取り共に歩む時代。
悲恋に終わった王子らが何よりも求め、手に入れることができなかった安穏とした世界。
そこにヒトは生きている。

ドラゴンを一刀のもとに斬り伏せた青年は、臓腑に溜まった息をゆっくりと吐く。
そのまま刃にこびり付いた血を拭い、長剣を鞘に納める。
王都有数の職人が手掛けた一振りなだけあって手に馴染む素晴らしい逸品だと、心中で謝辞を述べた。

これをプレゼントしてくれたギルドの職員には感謝している。
愛用していたS5に比べると幾分と性能…というより適性が違うので最高のパフォーマンスは発揮できていないが、普段使いには問題ない。
寧ろ代替品として使うには充分なくらいだ。

使い物にならなくなったS5を見て、親父は何と思うのだろうか。
そこまでの激戦を生き延びたのか、と感慨深く思うのか。
それとも、武器を粗末に扱いやがって野郎ぶっ殺してやる、と地獄で中指を立てているのだろうか。
ふと物思いに耽るも、彼の心情を知る機会など全く無かったのでどう思っているのかさっぱり分からない。

そんな無駄な時間は、馬車の運転手の声で中断された。

「ありがとうございます旅の方。まさかこんな場所で煉獄竜と遭遇するとは…」

乗客と愛馬を連れて避難していた運転手は、戦闘が終わったのを把握し戻ってきた。
手には氷魔法で冷却されたジュースが握られている。
せめてもの礼なのだろう。ありがたく頂戴しておいた。

少し前に季節外れの大雪で、火山近辺が凍りついたと聞いている。おそらくはそれで棲家を追われた逸れなのだろう。
人里近くで【煉獄竜プルガトルス】が目撃されることは滅多にないことだ。異常気象により発生したイレギュラーと見るのが妥当なところだ。

プルガトルスと交戦したのは、目的地である商業都市【コンスティア】を目視できる渓流地帯だ。
溶岩が流れ、熱気が立ち込める灼熱を好むプルガトルスが、このような場所に移り住む話なぞ聞いたことがない。

まあ、なんにせよ。死人が出ずに済んでよかった。本当によかった。
安堵のため息を漏らし、ジュースを一息に飲み干した。
優しい甘さとシュワシュワした炭酸が心地よい、爽やかな味だ。

「…しかし、プルガトルスをこんなあっさりと、しかも単騎で仕留めるとは随分と腕が立つようで。さぞ名のある冒険者なのでしょうな」

否定はしない。諸々の功績を評価され、特例上位クラスに認定された側としては、自身が無名だと宣うことはできなかった。
上位クラス、A級冒険者はそれなりの数いるのだが、特例上位クラス、S級冒険者ともなるとそうはいかない。

一国に二人いるかどうか、という程度に稀有な存在だ。
救国の英雄と呼ばれるほどの傑物でなければ土俵に上がれないのだから、さもあらんと言ったところだが。

かく言う自分も、それだけの名声を持っていることは自覚している。
今に至るまでに多すぎる物を喪ったが、後悔はしていない。
あの時の自分では変えられない運命をいくら嘆こうが意味はないのだから当たり前だ。
それに、その過去があったから今があるのだ。
今の自分を誇りに思っている以上、喪失に苦しんだ凄絶な過去も捨ててはならない大切なものである。

さて。そんな会話をしている間に、偶然同じ馬車を利用していた魔法使いが水魔法と風魔法を巧みに操り、プルガトルスによってグズグズに融解していた道路を整備する。
魔法使いがもの凄く頑張ったので、死んだ道路が最低限の機能を取り戻した。

荷物の点検を終えた運転手は乗客を再度乗せ、馬車を動かす。
移動を再開したのを確認し、ステラは満足気に口笛を吹きプルガトルスの死体を牽引する。
ギルドに引き渡せば相応の金銭に換金される。退屈だった道中での暇潰しの成果としては上々と言えるだろう。
コンスティアでの活動資金はかなり蓄えているが、労せずして資金を増やせたのだからホクホク顔になるのも仕方のないことである。

「おい。そこのあんた。あんただよおい。おーーい」

どこからともなく聞こえていた声が自分に向けられていることに気付き、口笛を中断して馬車を見上げる。
馬車から身を乗り出している商人は、ヒラヒラと手を振っていた。こちらも軽く会釈して答えておく。

「いくらなんでも上機嫌すぎだろ。ここまで大声出さないと気が付かないかね。…まあ、いいや。お前さんはコンスティアで何をする予定だい?入り用の物があれば安く売ってやろうと思ってな」

それはありがたいが、何故値引きしてくれるのだろうか。
気になったステラは問うも、あっけらかんとした様子で商人が答える。

「そりゃ、煉獄竜を仕留めた礼だよ。速攻で囮役になった上にキッチリ仕留めてくれたおかげで、こっちの商品の損害はゼロだ。出会した時は死ぬのだって覚悟してたんだから、これくらいするのは当たり前だろ?」

なるほど、得心がいった。であれば、利用しない手はない。
が、コンスティアに移住するにあたって何が必要になるか把握できていないので、ひとまず今は保留してもらうことにした。

「ほう、コンスティアに引っ越すのか。となると、商いにでも手を出すつもりかい?…いや、お前さんほどの実力者なら冒険者でもやっていけるか」

商人の最初の見立て通り、ステラは商売をしにここまで来た。とは言っても、商売に関するノウハウや大それた野望などといったものは何もない。
強いて商売を始める理由を言うなら、荼毘に付した親父たちの跡継ぎのため、と言うところか。

「ふむ。何やら込み入った事情がありそうだな。ここから先は訊かないでおくよ」

既に割り切ったことなので多少踏み込まれても気にしないのだが、商人の気遣いに感謝の言葉を返しておく。
商人と世間話をしていると、コンスティアの入り口である関所に到達した。

高さ23m、幅4mととんでもないスケールの大門であり、コンスティアの外郭を取り囲む石壁を繋いでいる。
同型の大門が南北に設置されており、東西には水路と歩行者用の小関所が設置されている。そちらは依頼を受けた冒険者専用の通路として開放されているようだ。

コンスティア全体の構造としては、平民、貧民の住む外郭区、商業施設が建ち並ぶ内郭区、そして、貴族や王族が住まい、執務を執り行う中枢区、と大別される。
中枢区に聳え立つ【コンスティア城】は荘厳な佇まいをしているが一般開放されている区画もあり、国民でもある程度立ち入りが自由だったりと、ここに暮らす以上関わる機会は何度かあるだろう。国王も大らかな人物だと聞いている。

大陸最大の国土を誇る大国【ケルローネ】。その首都たるコンスティア。ここでの暮らしが楽しみでならないステラは、朗らかに笑いプルガトルスの頭を撫でた。

関所で軽く審査を受けたステラは、ギルド職員にプルガトルスの処理を押し付けようと画策する。こんな重い荷物はさっさと手放すに限るのだ。
しかし、事がそう恙なく進むことはなく。ステラは目の前の光景にげんなりとしていた。

「ロードレア様ー!サインくださいー!!!」
「馬鹿お前抜け駆けすんな、順番待ちがいるんだぞ!」
「め、【滅龍の剣聖ステラ・ロードレア】ですわ…!まさか本物とご対面できるだなんて!結婚を前提としてお付きあべし!?」
「なぁに粉掛けようとしてんのよ!?そーいうのはアタシの役割でしょ!??ってかアンタそんなキャラじゃないでしょうが!!!」
「皆さんお静かに!おーしーずーかーにー!!!!!!」

プルガトルスの解体を依頼した際に普通に名乗ってしまったのが不味かった。
普段は適当な名前を使っているのだが、単独でプルガトルスを仕留めたことを怪しまれたので渋々本名を伝えた結果がこれである。
こういう時のために仮の身分を作っておけばよかった、と後悔するも後の祭り。
こんな大騒ぎでは換金どころの話ではない。ので、ちょっと野次馬連中には静かにしてもらうことにした。

冷めた表情のステラは加速魔法を発動し、長剣を鞘ごと振り回す。
秒間十六連打の兜割りが馬鹿騒ぎをしていた冒険者たちの脳天にお見舞いされ、爽快な打撃音がギルド中に響き渡る。
音を言葉にするならゴギガガガギゴゴンゴンゴン、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴカカカ、といったところか。

時間にして僅か三秒足らず。ギルド内の冒険者数十名を鎮圧するまでに要した時間だ。当然だが、誰一人として怪我人は出していない。
ちょっと記憶が飛んだりタンコブができたりする人は続出するだろうが、その程度は冒険者ならよくあることだ。
怪我の内に入らないから大丈夫だろう。たぶん。そういうことにしておこう。

ギルド内で発生した珍事はさておき、プルガトルスの換金を済ませたステラは、新居を購入するために不動産屋を訪れていた。
防犯の観点も鑑みて、店舗と自宅は併設する予定である。どうせ自分の荷物はそこまで無いのだから、多少狭かろうが問題は無いだろう。

「いらっしゃいませー!うちの物件はどれもオススメでございますですよー!!」

受付でニコニコと笑っている店員の身長はおそらく1m未満。
額に生えた小さな角と、背中から生えている蝙蝠の羽。以上の特徴から、この店員はインプの魔族だと思われる。
どこからどう見てもちんちくりんのお子ちゃまだが、これで立派な大人である。インプとはそういう魔族だ。

「本日はどのような物件をお探しですか?うちは(敷金礼金が無いから)安い!(契約まで)速い!(契約を取れたら飯が)美味い!をモットーにしておりますので、きっとご満足いただけますよ!」

どこぞの大衆食堂のようなキャッチコピーに苦笑しつつ、要望と予算を伝える。
安い速いまではまだ分かる。美味いについては意味が分からない。
美味い契約だということなのだろうか。それとも、成約時に何か美味しいご飯でももらえるのだろうか。
どちらにせよ意味が分からないことに変わりはないが。

「ふむふむ。店開きをしたくて物件探しをしている…と。お住まいはどちらに…あ、お店に住む予定なんですね。ちなみにどういったお店を開くご予定で?…なるほど鍛冶屋ですか。となると設備を整える必要もありますね。お客様に伝手はおありです?」

首を横に振って答える。コンスティアに来たのは今回が初めてだ。友人や仕事仲間がここに住んでいるとは聞いていない。

「かしこまりました!早速物件を下見に行きましょうか!予算の方も充分余裕があるみたいなので、時間がありましたら職人さんと話し合いの席を設けますよ」

随分と話が速い。速い安い美味いをモットーにしているだけはある。
色々と便宜を図ってくれるのはこちらとしても嬉しい話なので彼女の言葉に甘えることにしよう。
なあに。資金はたんまりとある。何か問題があれば札束でぶん殴れば良いのだ。
古来よりお金の暴力は全てを解決すると言われている。
それを言った本人は人の心お金では買えないことを見落としていたので愛の力を前に呆気なく沈んだが、大抵の問題はこれで解決するのは事実である。

店員に連れられ内郭区を歩くこと数分。人混みで溢れた大通りに繋がる脇道に二人はいた。
大通りほどの交通量は無いが、この脇道の交通量も中々のものである。人知れない名店があったりするのだろうか。

しかし、移動中にパンの焼ける良い匂いがしていたので空腹感が強まってしまった。
時計を見ると時刻は午後二時。昼飯には少し遅いが、食事をしてもいい時間だろう。物件探しが終わったら軽食でもつまむとしよう。

「着きましたよお客様!こちらの物件はお客様の要望にピッタリだと思うのですがいかがでしょう?」

そんなことを考えていると目的地に到着した。周囲は精肉店や魔法書店などさまざまなお店で固められている。
その中で一軒、【入居者募集中!】と書かれた看板が立てられている店がある。
外観は思いの外綺麗であり、店員の許可を得て中を拝見してみるがこちらも不潔感は無い。

「こちらは半年前に新築した鍛冶屋だったんですが、店主さんが趣味の採掘に向かったっきり音信不通となりまして。親族からの要望もあり引き払ってもらいました。一応、私が定期的に掃除をしているのでそんなに汚れてはないはずです」

なるほど。つまりは事故物件か。ステラの率直な感想に、店員は気まずそうに目を逸らした。

「…まーそういうことになりますかね?ここでお亡くなりになったわけじゃないのでそこまで言われたくはないと言いますか…。それに、遺体は見つかってないのでどこかで生きながらえてるかもしれませんし?」

困り顔で笑う店員を尻目に、内部の設備を確認する。金床や炉、鞴といった設備は完備されている。
店は二階建てになっており、二階に上がってみるとそちらはキッチンやベランダ、寝室や浴室と必要なものは一通り揃っていた。
空き部屋も一つあったので、何かしらに利用できそうだ。

「それで…えと、お客様のご希望通り、こちらを一年借用する場合は賃料として3000万コル必要になります。事故などで物件が損壊した場合はさらに料金をいただく予定ですが構いませんか?」

大丈夫だ、問題ない。ステラはペンで誓約書に名前を記入した。契約内容にはしっかり目を通しているので無問題である。

「やった、契約ゲット…!」

小さくガッツポーズをする店員に苦笑いしながら、使われた痕跡の少ない金床を撫でる。
オススメされた物件が鍛冶屋だったとは何の偶然か。親父たちの加護でもあったのだろうか。
不慮の事故により店仕舞いとなり、その役目を果たせなかった哀れな金床たち。
彼らが再び使われる日は、近い。

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先払いで賃貸料を支払ったステラは、速い安い美味いのキャッチコピーの意味を身をもって思い知らされていた。
こんな大きな買い物が即日契約で終わるなど正直普通とは思えない。先払いで即金払いしたのが余程効いたのだろうか。

そんなことを思いながら、肉汁たっぷりハンバーガーを頬張る。店員はさっさと帰ってしまったので、腹を満たすために食べ歩きの最中である。
商品が全て売り切れたのだろう。気になっていたパン屋は既に閉店していた。
名前は【どらごんべーかりー】。女性が書いたような文字に可愛らしいデコレーションがされている看板が特徴だ。
徹底的にディフォルメされたドラゴンが火を吹いてパンを作っているような絵が目を引く。これだけ見ればドラゴンにも愛嬌はあるのだが。

ステラはドラゴンが嫌いだ。とても嫌いだ。冗談抜きで大っっっっっっっ嫌いなのだ。
その理由は家族を皆殺しにされ、故郷を焼け野原にされたからという単純明快にして至極当然なもの。これで好きになれるわけがない。もしいたらその人間は気が狂っている。
とはいえ、ドラゴンは全て滅ぼすべきというほど蛮族極まる暴論を振りかざしているわけでもない。
人類に与するドラゴンがいるのも把握している。何なら雪山で遭難した時に助けてもらったことがある。
人類に害なす存在だったなら問答無用でぶち殺すだけ。ただそれだけの話だ。

ちなみに、故郷を焼き尽くしたドラゴンは他ならぬステラの手によって命を絶たれている。
S級冒険者として認定されたのも、その功績が評価されたからだ。ステラの全身に刻まれた火傷の痕も、件のドラゴンが原因である。

軽食を済ませたステラはゴミ箱に包み紙を放り込み、気ままに内郭区を散策する。
これから世話になる街だ。何があるか知っておくに越したことはない、と。

とりあえずは一年、この街で商売をして今後の展望を考える予定だ。
軌道に乗るならそれで良し。乗らずに店を畳まざるを得ない状況になったなら、親孝行はここまでだと冒険者稼業に専念する。
元々跡を継ぐとは言っていなかったのだ。姉や妹が後継者になる様子もなかった。一時の夢を見せてあげるだけありがたく思え、と誰にでもなく呟く。

跡継ぎを強制した覚えはない。勝手に人を悪魔みたいに言ったり地獄に落とすな、とゲンコツを受けた気がした。

雑貨店でカレンダーを購入したステラは、五月一日に星印を付ける。
この日が開店予定日であり、それまでに人員と商品を用意しなければならない。本日は四月七日だ。
まだ三週間も猶予はあるが、はっきり言ってステラは鍛造のことなど何一つ解らない。
家のことなど考えず、冒険者になることしか考えていなかったのだから当たり前だ。初等教育を終えた瞬間に故郷を飛び出したのが懐かしい。

他の人に話したら鍛冶屋の息子のくせに、と思われるかもしれないが、それほどまでに跡を継ぐのが嫌だった。より正確に言うなら、故郷に留まるのが嫌だったのだ。
誰が好き好んで和やかな風景だけが取り柄の田舎町に死ぬまで居なきゃならんのだ。俺は冒険者になって楽しんでやるぜ。と宣言してボコボコにされたのは一生忘れない。

ともかく、鍛冶屋を営むには何もかもが足りない現状、最優先事項は人員を集めることだろう。
物があっても人がいなければ何もできないのだ。人がいるなら何かしらをすることはできる。
幸い、金はまだそれなりの予算が残っている。改築費が不要になって助かった。

とはいえ、材料や従業員の給料にも充てることを考えれば、あまり贅沢はできないのだが。最悪依頼を受ければどうにかなるが、それは最終手段だ。
不動産屋に賃貸料を支払い、残った予算はおよそ600万コル。
数人を雇うには充分な予算だが、改築が必要になっていたらこの予算がどれだけ逼迫していたか。考えただけで頭が痛くなる。
ここからさらに材料費や給料で捻出しなければならないのだから尚更だ。

もっと見通しはきっちりしておくべきだったとほんの少し反省したステラは、カレンダーを壁に飾る。
窓から差し込む光が、ステラを明るく照らした。

ということでプロローグ終了です。次回で店員を雇った後に、店主活動を開始します。
それに伴い、店員を数名募集します。採用する人数は後の安価にもよりますが、最大四人です。
雇用時の費用などは後々決めますが、通常枠が10~20万コル、エリート枠が20~40万コルと思ってください。
通常枠のキャラクターに特に制限はありませんが、ズブの素人であることだけは固定となります。エリート枠は逆にそれなり以上の腕利き固定です。

エリート枠は専門教育や実務経験を積んでいるため、相応の能力を持ちます。
通常枠はそういったものがないので本人の地力のみの判定になります。
技術力の判定は投稿されたレスのコンマ二桁です。エリート枠はそれに+40されます。
技術力は今後武器を製作する際に利用します。

募集は明日の正午まで締切となります。質問等あれば書き込んでください。不定期になりますが回答します。

テンプレ

【名前】
【種族】
【性別】
【魔法属性】
【概要】

主人公紹介

【名前】ステラ・ロードレア
【種族】人間
【性別】男性
【魔法属性】身体強化魔法
【概要】
【滅龍の剣聖】の異名を持つ現役の特例上位クラス(S級)冒険者。
初等教育を修了したと同時に故郷を逃走。冒険者として名を挙げるも、家族と故郷をドラゴンの大群によって喪うこととなる。

彼も故郷を滅ぼした業火に身を焼かれており、全身の火傷痕はその名残。一応、負傷した時からはだいぶ回復しているらしい。
本人の性格はまあまあマトモ。しかし、S級冒険者は皆大なり小なり狂っていることで有名であり、ステラもまた例外ではない。

何をトチ狂ったのか、コンスティアで鍛冶屋を出店することになった。
親孝行のためだと本人は弁解しているが、既に手遅れなこと、所詮ただの自己満足であることは理解している。
が、それでも。形だけでも親孝行はしておきたかった。
自らを産み育ててくれたお礼をできずに、死に別れてしまったから。
自らを愛してくれたお礼を、自分なりにしたかったから。


【名前】ステラ専用ショートソード・スペシャル
【武器種】直剣
【攻撃力】不明
【耐久力】不明
【特殊能力】ステラの魔法性能強化
【概要】
ステラの父【スミス・ロードレア】が愛する馬鹿息子のためだけに、全身全霊を込めて鍛えた一振り。通称S5。
スミスが若かりし頃に入手した神器【不朽の双剣・アエテルヌス】を再鋳造し、直剣として無理矢理鍛え直しているため神器としての格を失い、ただ凄くタフで斬れ味のいい剣となってしまったが、それでも相当に優秀な武器だった。

母親は【再錬の剣】という無難な名前を提案したが、いつになくスミスがごり押ししてきた結果、このようなクソダサネーミングの剣になる。なお当の本人は至って真面目。

ステラと共に【龍帝撃滅戦】で獅子奮迅の活躍を見せるも、武器としての役目を終える。
ぶっきらぼうだった父の不器用な愛に気づいた時にはもう、何もかもが遅かった。

【名前】ネージュ
【種族】魔族
【性別】女
【魔法属性】物質生成
【概要】
小柄で真っ白な髪の謎の魔族。
ステラの店の近くに住み着いてた。
雪や砂糖、塩などの白い物を生成する魔法を使い、薬物なども生成出来る事からマフィアに狙われた事もある。

【名前】サンドラ・シュラーク
【種族】人間
【性別】女
【魔法属性】雷属性魔法
【概要】
コンスティアの有力貴族の娘で眩い金髪を持つ美少女。年齢は十代後半ほど。
無理矢理お見合いをさせられそうになった為、反射的に家を飛び出し、生活費その他諸々に困っていた所をステラの店の従業員募集の報せを見て応募した。
貴族育ちの為か態度は大きく、またそれに比例するかの様に胸もかなり大きい。
しかし言動や態度こそ傲慢ではあるものの根は真面目であり、自分の実力が言動や態度に見合う様に常に努力をかかさないという一面も持つ。

通常枠エリート枠ってどうやって決めるの?
こっちで指定しちゃっていいの?

一応エリート枠で
【名前】フィーユ・キャレル
【種族】人間
【性別】女性
【魔法属性】物体の遠隔操作
【概要】
頭頂部にアホ毛のある黒髪セミロングで丸眼鏡をかけた二十歳すぎのお姉さん
気弱であわてやすいが鍛冶のときは別人のようにキリッとしている
武具マニアが高じて鍛冶の道をえらんだ
武具の話になると興奮して周りが見えなくなることも
甘いものが好き

指定していただいて構いません。どちらかかパッと見分からない時は、設定からこちらで判断させていただきます。

【名前】リオルド・エステリア
【種族】人間
【性別】男性
【魔法属性】魔法金属錬成
【概要】二十代後半の男性
鍛えられた体躯を持ち、長身。赤髪短髪
明るいムードメーカー気質
ぱっと見軽い印象を受けるが、その実真面目で周りへの気配りが効くところもある

少年時代に冒険に憧れ冒険者をしていたが、芽が出ることなく引退
なしくずし的に鍛冶屋見習いとなったが、腐ることなく仕事に打ち込む
鍛冶の才能はあり、また鍛冶仕事が性に合っていたようで、数年で親方の技術をあらかた吸収してしまった
しかし親方の鍛冶屋がある日音信不通になってしまう
将来の独立のため、資金はコツコツと貯めていたが現時点で親方の店を買い取るまでの資金には足りなかった
そのことを悔やみながらも、今は自分の鍛冶屋を開くための資金を貯めている最中

どらごんべーかりーの娘に好意を抱いており、一途にアピールを続けている

【名前】キリル
【種族】人間
【性別】男
【魔法属性】磁力
【概要】
スラム街出身の孤児の少年。13歳。生意気な言動があったり多少ひねくれてはいるが、根は素直で優しく努力家。
身長140cm。小柄で華奢な体格やショートカットにしたサラサラの金髪、青い瞳、白い肌など。一見女の子に見える可愛らしい顔立ち。
身寄りもなく、他の孤児達と共に生きるためにヤクザの使い走りをしていたが、美少女のような姿に成長すると違法な娼館に売られそうになり逃走。普通に女の子が好きなのだ。
行く当ても無く野垂れ死ぬか売られるかというところに今回の募集を見て藁にもすがる思いで応募する。

ちなみに下半身は馬並みである。

【名前】コレット・ユースター
【種族】人間
【性別】女性
【魔法属性】治癒魔法
【概要】
18才
栗色の長い髪を持つ、あどけなさの残る少女
身長は平均的
人当たりが良く温和な性格

鍛冶のことは全く知らない
だが実家が魔法具や魔法薬を扱う店であり、幼い頃から手伝いをしてきたので、店舗経営やマーケティングに関する知識はそれなりに豊富
また魔法に関する知識もあり、治癒魔法を中心にある程度魔法が使える
料理上手

【名前】モニカ
【種族】人間と魔族のハーフ
【性別】女
【魔法属性】感覚操作
【概要】
前髪が長く目隠れ気味の緑髪をした少女。頭頂部に小さい角がある。10代後半の年齢だが、小柄な体格のため10代前半に見える。
物心がつく前に盗賊団に拾われて下っ端・雑用として扱われて、性格は自己評価が低く臆病。
盗賊団が解散した後は、魔法で自身の存在感を消したり相手の五感を封じたりして危険を回避しながら、薬草や鉱物等を採取してそれらを売ることで生計を立てていたが、やっぱり一人で活動するのは怖いので今回の募集に応募した。

ご協力いただきありがとうございました。このレスをもって締切です。
採用する人数を直下コンマで判定します。


1~3:一人
4~6:二人
7~9:三人
0、ゾロ目:四人

高く

三人まで雇用が決定しました。下記の候補から選出します。
二票先取したキャラクターをまず二名まで採用します。残りの一人は後ほどコンマ判定で選出です。
好きなキャラクターを一名記載してください。


A:ネージュ 技術力:48 雇用費:148000コル
B:サンドラ・シュラーク 技術力:45 雇用費:145000コル
C:フィーユ・キャレル(エリート) 技術力:126 雇用費:326000コル
D:リオルド・エステリア(エリート) 技術力:77 雇用費:277000コル
E:キリル 技術力:74 雇用費:174000コル
F:コレット・ユースター 技術力:88(ゾロ目ボーナス) 雇用費:144000コル
G:モニカ 技術力:21 雇用費:121000コル

F

E

G

B

自分のに投票して良いならG
自分のには不可ならC

人数少ないと思うので自分に投票も可です。

A

じゃあA

ネージュ、モニカの雇用が確定しました。最後の一人は直下コンマ判定です。

1、2:サンドラ・シュラーク 技術力:45 雇用費:145000コル
3、4:フィーユ・キャレル(エリート) 技術力:126 雇用費:326000コル
5、6:リオルド・エステリア(エリート) 技術力:77 雇用費:277000コル
7、8:キリル 技術力:74 雇用費:174000コル
9、0:コレット・ユースター 技術力:88(ゾロ目ボーナス) 雇用費:144000コル

技術力下から三人選ばれるとは意外

選ばれなかったキャラも出番あるのかな

三名の雇用が確定したところで、この世界での平均的な装備の性能を判定します。これがおおよその目安となります。
下4までのコンマを利用します。


【攻撃力】直下コンマ+50
【耐久力】下2コンマ+50
【特殊能力】なし
【値段】10000、下3コンマ×50、下4コンマ×50の合計値
【概要】
世界中で生産される標準装備の平均的な性能。鍛冶屋によって多少上下するが、概ね同じくらいになる。

はい

はい

うす

高く

嘘…この世界の武器、性能の割に高すぎ…?こちらが今後の武器製作の基準になります。

本編に取り掛かるのでお待ちください。ご協力ありがとうございました。


【名前】普通の武器
【武器種】色々
【攻撃力】58
【耐久力】58
【特殊能力】なし
【値段】16400コル
【概要】
世界中で生産される標準装備の平均的な性能。鍛冶屋によって多少上下するが、概ね同じくらいになる。

鍛冶屋が少ないのかはたまた……
おつ

現在の残金と従業員を纏めて出しておきます。

残金 6,000,000コル→5,586,000コル

【名前】ネージュ
【種族】魔族
【性別】女
【魔法属性】物質生成
【技術力】48
【基本給】74,000コル
【概要】
小柄で真っ白な髪の謎の魔族。
ステラの店の近くに住み着いてた。
雪や砂糖、塩などの白い物を生成する魔法を使い、薬物なども生成出来る事からマフィアに狙われた事もある。


【名前】サンドラ・シュラーク
【種族】人間
【性別】女
【魔法属性】雷属性魔法
【技術力】45
【基本給】72,500コル
【概要】
コンスティアの有力貴族の娘で眩い金髪を持つ美少女。年齢は十代後半ほど。
無理矢理お見合いをさせられそうになった為、反射的に家を飛び出し、生活費その他諸々に困っていた所をステラの店の従業員募集の報せを見て応募した。
貴族育ちの為か態度は大きく、またそれに比例するかの様に胸もかなり大きい。
しかし言動や態度こそ傲慢ではあるものの根は真面目であり、自分の実力が言動や態度に見合う様に常に努力をかかさないという一面も持つ。


【名前】モニカ
【種族】人間と魔族のハーフ
【性別】女
【魔法属性】感覚操作
【技術力】21
【基本給】60,500コル
【概要】
前髪が長く目隠れ気味の緑髪をした少女。頭頂部に小さい角がある。10代後半の年齢だが、小柄な体格のため10代前半に見える。
物心がつく前に盗賊団に拾われて下っ端・雑用として扱われて、性格は自己評価が低く臆病。
盗賊団が解散した後は、魔法で自身の存在感を消したり相手の五感を封じたりして危険を回避しながら、薬草や鉱物等を採取してそれらを売ることで生計を立てていたが、やっぱり一人で活動するのは怖いので今回の募集に応募した。

ネージュ編が書けたのでその分だけ。
安価で採用されなかった他のキャラクターは今後どこかで出てくるかもです。

誰も一人では生きられない、とは誰の言葉だったか。ふと、そんな言葉を思い出した。
一人でいることには慣れている。六年前に家族を喪い、故郷を燃え尽きた廃墟にされた時から、自分はずっと一人だ。
冒険者として働く中でパーティーを組むこともあれば、依頼人と親睦を深めることもあったので、繋がりは多少なりともある。
しかし、それはあくまでビジネスの関係だ。少なくともステラはそう認識している。

友人と言える者もいる。だが、彼らもまた冒険者。好きに生き、理不尽に死ぬ者。
骸を晒した者もいるし、行方の知れぬ者もいる。どこで何をしているのか。把握できているものは片手で数えるほどしかいない。

為すべきを為し、少し落ち着いたからなのだろうか。それとも、長い時間を掛け、ようやく気持ちの整理がついたのか。
気にならなかったはずの感覚が、今になって引っかかるようになった。

思考の沼に嵌まり込みペンが止まる。この調子では、外郭区の掲示板に貼るチラシ作りは捗りそうにない。
時計に視線を向けると、思いの外時間が経っていることに気づく。身体の疲れもそうだが、精神的な疲労も感じられた。
馬車に揺られ。ドラゴンを仕留め。新天地での物件探し。色々な神経を使ったのだろう。

今日は無理せず明日に備えることにしたステラは、食事をするために家を出る。遠くで雷の落ちる音が聞こえた。

ステラが黙々と作業をするリビングでは、雨音とペンの走る音だけが聞こえている。
店前の通りは雨の影響で人通りは皆無であり、先日は夜まで聞こえていた雑踏も今では何も聞こえない。雨足が強いのもあるだろうが。

作業を再開して数時間。何枚もの試作品がゴミ箱に消え、本人的には会心作のチラシが数枚できあがる。
一枚は店先に置くとして、残りは外郭区に掲示する予定だ。四苦八苦した甲斐もあって、壊滅的な出来ではないはずだ。
ステラ目線では普通のチラシに見えている。本人の美的感覚が世間とズレていると言われたらそれまでだが、まあ見れないものではないと思われる。

コンスティア城での手続きも行いたいので、早速チラシ掲示に向かうことにしたステラは傘と鞄を手に取る。

「ぶぅえっくしょい!!!」

ドアノブに手を掛けると同時に、勝手口付近から人の声が聞こえた。ステラの動きが止まり、視線が勝手口へと移る。
勝手口は鍵を掛けているので出入りができないようになっている。先日下見した際に少し散らかっていたが、あの店員が掃除をしていなかっただけだろうと考えて放置していた。
人が立ち入る場所でもないし、まだやることがある。掃除くらい後回しにしても問題ないことだ。

だが、人が住み着いているとなると話が変わってくる。これは不法占拠である。立派な犯罪だ。
悪いことをする奴には裁きを下さねばならぬ。ステラは激怒した。
かのならず者をコテンパンにして吊し上げ、その罪を白日の元に晒さねばならぬと決意した。
しかし、ステラも鬼ではない。やんごとなき事情があったならその時は多少の便宜を図ってやるつもりだ。そうでなければお察しである。

「ぴいいいーーーー!!!?!!」

箒を片手に装備したステラは鍵を開け、勝手口を力強く開ける。
と同時に、ならず者と思わしき人物の姿に毒気を抜かれることになる。

問答無用でぶちのめさなかった自分の善性に驚いた。これには全世界が号泣の後にスタンディングオベーションするに違いない。と、後にステラは語った。
これが、ステラとネージュの出会いである。

「ありがとうございます…」

全身ずぶ濡れのドブネズミ状態だった少女を家に入れ、タオルを放り投げる。
不法占拠の現行犯だった少女がお願いします殺さないでください、と泣き落としを図ったので、しばくにしばけなかったのだ。
もしその時に少女が殺意を出していたなら、その顔面に拳がめり込んでいただろう。

これではどちらが悪者か分かったものではない、とステラは辟易し、家の中で暖を取らせていた。

以上が事の顛末だ。本人はお情けを与えているつもりなのだが、傍目から見れば、犯罪者は間違いなくステラの方である。いいことをしているはずなのに解せない。

朝飯の残りを温め直し、少女に押し付ける。たまたまそういう気分だったので料理をしたのだが、うろ覚えのレシピ通りに作って失敗した物が少し残っていたのだ。
味の方はと言うと、食えなくはないが食いたくない、というレベルのもの。つまり不味い。
数年前に本屋で立ち読みした料理本のレシピが記憶に残っていたのだが、ガバガバでスカスカだった記憶を頼りに作った結果がこれだ。
元々昼飯に仕方なく食べる予定だったのだが、処分する手間が省けたのでこちらとしても大助かりである。

「わっ…これ、おいしい…」

だと言うのに、少女は美味そうに失敗作を食べていた。これにはステラも戦慄を覚えずにはいられなかった。
こんな物を美味いと感じるとは余程大変な食生活だったようだ。もしくは頭がパーになっているのか。
あんなとこに居た上に、みすぼらしい格好をしているのでおそらく前者なのだろうが。浮浪者と見て間違いないだろう。

「い、家に入れてくれた上にこんなに美味しい物まで…。ありがとうございます…ずずっ」

ずびずびと鼻を鳴らす少女は明らかに風邪を引いていた。頬も真っ赤であり、若干涙目になっている。
もしかしたら、風邪を引いているから馬鹿舌になっているのかもしれない。そうであってほしい。ステラは切実にそう思った。

「か、重ね重ねすみません…ずる。お水をもう一杯だけ…ずび、ください」

少女の懇願を蹴るのは簡単だがこれでヤケを起こして暴れられても困る。第一、ステラはそこまで畜生ではないのでそんな考えは持っていない。
水くらいならいくらでも飲め、とコップに水を汲み、少女の前に置いた。

少女はぺこぺこと頭を下げ、掌の白い粉を舐めて水を一気飲みする。つい先ほどまで掌には何も無かったはずだが気のせいだろうか。

「ご迷惑をお掛けしました。わ、私はこれで失礼するのでどうか、通報だけはしないでください。…その、これはお礼です。差し上げますので、見逃してください」

少女がおずおずとポケットから差し出したのは数個のパール。光に当てて注視するが、いずれも本物のように見える。

「ど、どれも本物です。お店で売ればそれなりの値段になるかと…」

なるだろう。内陸部ではまず手に入らない宝石だ。価値は相応にある。
しかし、何故そのような物を持っているのか。ステラは怪訝な視線を少女に向けた。

「…や、やっぱりそうなりますよね…」

怯える少女から感じ取れる僅かな敵意。それを感知した瞬間、身体は動いていた。

「ぐえっ!?」

加速魔法で背後に回ったステラは隠し持っていたナイフを奪い、そのまま地面に組み伏せる。
そして、首元に刃先を当てた。体格差のある相手だ。負ける道理はない。
空腹で力の出ない子供相手に大人気ないかもしれないが、少女が実力行使に出ようとしたのは事実である。
訴えるなら訴えてみやがれ。勝訴するのはこちらじゃい。と、ステラは鼻を鳴らした。

「私が…悪かったです…力、緩めてえ…ひぐ…ごめんなさい…ごめんなさいぃ…」

泣きが入り完全に戦意を喪失したところで、ステラは少女を解放する。
別に殺すつもりなどさらさら無かったステラとしては、泣かれるとは思ってなかったのだ。実際、ステラは殺意や敵意を欠片も抱いていなかった。ただ敵意に反射的に動いただけだ。

ステラは当初、少女が家裏に居た理由などを聞き取って、警告なりで済ませようとするつもりだった。
のだが、明らかに状況が悪化している。どうしてこうなったと、ステラは天を仰ぐも天井しか見えないし、少女はガチ泣きしている。

どうしようもないので少女が泣き止むまで待つことにしたが、少女が泣き止む頃には雨が上がっていた。

多少平静を取り戻したのか、少女は椅子にちょこんと座っている。その視線は怯えきっているが。
何故自分が極悪人みたいな扱いを受けているのか。心中で神にありったけの呪詛をぶち撒け、何があってあんなところにいたのか、とステラは質問した。

「…そ、その…。私の魔法は、ですね。色々な物を生み出せるんです。雪、とか。砂糖、とか。…あと、宝石やお薬も、です」

なるほど。それは面白い魔法だ。魔法の知見が深い人が聞いたら飛びつくだろう。

「わ、私は…。お母さんと二人で、他の街に住んでたんです…。でも、この魔法を知った悪い人に、襲われて。逃げて。それから…」

「…お母さんが、殺され、ちゃって…」

ネージュと名乗った少女は、俯いたまま涙ながらに語る。言葉の端々が震えており、鼻を啜る音も聞こえてきた。

だいたい事情は解った。ステラはネージュに一本の瓶を渡す。
これは魔法使いが服用するポーションで、精神安定の効能があるハーブが含まれている。
連戦で消耗した魔法使いが集中するために服用する物なのだが、三徹して頭がおかしくなった作家や小説家が冷静になろうと手を出すくらいにはちゃんと効果がある。

ネージュは栓を開け、一息にポーションを飲み干した。薬品臭い変な味だが、頑張って耐えたようだ。
瓶を返却したネージュが、申し訳なさそうに頭を下げる。
紆余曲折あったとはいえ、こうなったのは自分が原因だ。気にすることはないと、ステラは首を振る。

さて、ネージュの事情が解ったところでどうするか。ステラは頭を悩ませる。
ぶっちゃけ、ネージュを衛兵に引き渡してしょっ引くのは簡単なことだ。不法占拠していたのは事実なのだから、言い逃れはできまい。

だが、ここまで踏んだり蹴ったりな目に遭わせるのは流石に気が引けるものだ。
天涯孤独の身となった子供の末路など想像に難くない。自分のように大成するのは奇跡的としか言いようがないほどにレアケースなのだ。
行き場を無くした孤児が裏稼業に手を出し、使い潰されるのは珍しくないことだ。組織の尻尾切りに使われることだったよくある。

彼女も好き好んでこんなことをしているわけではないだろう。寄る辺が無いから仕方なくやっているわけであり、彼女がその気なら薬物を売り捌いて巨万の富を築くことだってできるはずだ。十中八九そうなる前に、マフィア連中に利用されて飼い殺しにされる哀れな末路を辿るだろうが。

面倒くさいことになったと、ステラは小さく笑う。とんだ厄ネタを掴まされたものだ。あの時無視して外郭区に行ってりゃよかった。
だが、まあ。首を突っ込んでしまったのは自分だ。自分がしでかしたことは自分でケリを付けるしかあるまい。それが大人というものだ。

ステラは徐に、一枚の書類を取り出した。魔力の込められたインクで書かれたそれは、【魔道の契約書】と呼ばれる物だ。
魔法使いが眷属との間に交わす契約魔法。それをより簡単に、誰とでも交わせるようにした物である。お値段は一枚1万コル。
従業員に夜逃げを繰り返された商人が痺れを切らし、親友に土下座して作ってもらったのが始まりとされる。
契約そのものに強制力は無いが、不履行した場合はペナルティで大変なことになる。人によっては普通に死んだりするので、結果的に契約を強制させている。
ステラが予め記入している内容は以下の通り。

1.ステラ・ロードレア(以下雇用主)と従業員との契約は一年更新とする。但し、やむを得ない事情がある際はその限りではない。
2.雇用主は従業員の身の安全を保証すること。但し、従業員の独断で重篤な傷害を負った際はその限りではない。
3.給料は毎月一日に支払うこと。勤務状況や実績に応じ、適宜昇給を行うこと。
4.雇用主は従業員に対して、過度な作業をさせないこと。また、労働内容を逸脱した行為の強制は禁ずる。

ざっくりとした内容だが、最低限必要なものが揃っているはずだ。
あまり縛りすぎるのもよくないので、これ以上書く予定は今のところない。必要になれば追加するが、ひとまずはこれで行くつもりだ。

契約書の内容が解るか問う。ネージュはじっくりとそれを読み込み、首を傾げた。文字が読めないのかもしれない。
ステラが代わりに内容を諳んじる。意味を理解したネージュが何故か、とんでもない勢いで壁際に逃げた。

「な、なんで私をそんなに助けてくれるんですか!?何が狙いなんですっ!?」

何が狙いだと訊かれても。店を開けようにも従業員が一人もいなくて困っているのだ。
一人分の採用の手間が省けるのだからやらない手は無い。彼女の力に頼らなくても金なんて働けばいくらでも稼げる。
まさか自分が変なことでもさせようと思っているのだろうか。契約内容にも記した通り、そんなことをしたらペナルティ待ったなしなのだが。

「え、ええぇ~…?それがついさっきまで私を組み伏せた人の言論…?もうわけわかんないよ…」

別に契約するのが嫌ならそう言えばいい。不法占拠の件は見逃してやるのだからそれでいいだろう。
一人で頑張って生きるといい。ゴミを漁るなり野垂れ死ぬなりお好きにどうぞという話だ。

「薄情…!いくらなんでも薄情すぎませんか…!?同じ人間とは思えないです!」

最大限の譲歩を疑った人がどの口が言っているのやら。こちらは既に契約書という形で誠意を見せている。
どう判断するかはそちらに委ねているというのに。
いったい自分に何を求めているのか。もしや、同情でもしてほしいのだろうか。同情で腹も膨れなければ金も手に入らないというのに。

「…もしかして、本当に私の面倒を見てくれるんですか?面倒くさいクソアマとか思ってません?」

ネージュが面倒くさいのは今更だ。このやり取りで分かりきっている。
多少面倒くさかろうと、仕事を手伝ってくれるなら採用を躊躇う必要などない。こちとら猫の手でも借りたい悲惨な状況なのだ。

「………」

そんなにじっと見られてもこちらが困る。これ以上何を質問されても答えは変わらない。いくら疑ったところで徒労に終わると思うが。
じっとりとした視線を向けること数秒。諦めたのか。それとも、踏ん切りが付いたのか。
ネージュはたどたどしい字で自分の名前を書いた。

「…変なことしたら逃げますからね。絶対逃げ出してやりますから!!ね!!!!!」

心配しなくてもそんなことはしないしできない。契約書の記述を忘れたのだろうか。
しかし、彼女の住居はどうしようか。少しの間考えるも、ステラの冴えた頭脳がすぐに解決策を思いつく。
身の安全を保証するなら同居するのが一番手っ取り早くて確実だ。昔とは違い、今の自分には力がある。故郷の二の舞にはならないはずだ。

「い、一緒に住むんですか!?一つ屋根の下で!?!?なら別の部屋を希望します!!!!!!!!!!」

喧しい同居人をあしらうステラの顔は、いつになく穏やかだった。
その理由は、従業員が増えただけではないだろう。きっと。

乙です

おつ
ネージュこいつ意外と強かだな?

書き溜めた分を投下します。他二人の加入はもう少しお待ちください。

ネージュを空き部屋に押し込んだステラは、気を取り直して外郭区へと向かう。
そんな乱暴な扱いでいいのかと疑問に思う人もいるかもしれないが問題ない。何故なら。

『あっ!この部屋暗いし荷物ばっかで狭くていい!安心する!!!』

当の本人がこの有様だからだ。いくら日陰者だとしても限度があるだろう。もしや魔族は皆こうなのか。まあ、本人がそれでいいなら放っておこう。

雨は止んだが地面はぬかるんでいる上に、曇天なのは変わらない。モタモタしていたらまた一雨降りかねない。
雨中の行軍は慣れっこだが、街の中でまでそうすることはない。雨に打たれて喜ぶような酔狂な人間ではないのだ。
念の為に傘を持参しているが、使う時が来ないでほしいものだと神様に祈る。祈りは聞き入れられなかったようで、雲行きが怪しくなってきた。

ステラはガッデムと無慈悲な神々に嘆き、足を速めた。
バチャバチャと泥が飛び散る音が耳を突く。ズボンの裾はきっと泥まみれになっているだろう。泥は落ちにくいので洗濯が大変だというのに。これだから雨の後は嫌いなのだ。

外郭区でのチラシ貼りを終えたと同時にまた土砂降りになったので、コンスティア城での手続きは諦めることにした。
今月中にやればいいものだから、気が向いた時にすればいいだろう。

帰り道で美味しそうなピザが売っていたので、晩飯用として何種類か購入する。
購入したのは【クワトロチーズとハチミツ香るスウィートピザ】、【サラミたっぷり満足ピザ】、【ガーリックエンペラーピザ】。
女の子受けしなさそうな味だらけだがネージュがどれだけ抗議しようとも美味ければ良かろうなのだと封殺するつもりだ。
そもそも金を出しているのは自分なので、文句を言われる筋合いはない。

「わぁ~!美味しい!さっきのステラさんのご飯がゴミに感じます!」

まとめ買いのサービスにもらったチキンナゲットをネージュにあげたのだが、こんな感想が返ってきた。
あまりにも失礼なネージュの物言いだが、正鵠を得ているので何も言い返せない。
断じてあれは食べ物ではない。火の通った食用生ゴミである。ゴミのようなではなくゴミそのものなのだ。そこら辺は絶対に履き違えてはならない。

ボロクソに言われた失敗作はともかく。ステラは熱々のピザを包丁で切り分ける。
焼き立てのピザからは湯気が立ち上り、切り離そうと生地を持てばチーズが伸びて匂いが鼻腔をくすぐる。これには期待せずにいられない。

「育ち盛りの子供にこそいっぱい食べさせるべきだと思ぎゃー!!!頭ががががが!!!!」

きちんと半分こにしたのに文句を垂れたガキンチョに手刀をぶち込み、ステラは満足ピザを齧る。
じっくりと焼き上げられた生地のパリパリモチモチとした食感。トマトソースの爽やかな酸味。チーズの濃厚なコク。そして、主役であるサラミの暴力的な旨味。
それらが順番に主張しては消えていく。まさに生地と具材の四重奏である。各々の味が喧嘩することなく調和している見事なマリアージュだ。
匠の技に舌鼓を打たずにはいられない。これは確かに万人が満足すること間違いない。なんならこれだけで生きていける気がする。

「………!!んぅ~!!!!!」

ネージュも気に入っているのだろう。満足ピザを口の中に放り込み、飲み込んだらすぐ次の切れ端に手を出している。
目に付いた物を片っ端から食べているようだ。今の彼女なら大食い選手権にも出れるかもしれない。

ネージュの皿が空っぽになると、キラキラとした視線がこちらに向けられる。わざとそれを無視して、ステラは自分の分を一つ食べた。

「………」

露骨に落ち込んだ。ネージュに犬耳と尻尾があったなら、さぞ力なく垂れているだろう。
罪悪感を抱かせるのが上手いものだと感心するステラだが、そんなものは俺には効かんとニヒルに笑った。性根を知っているのだから効くわけがない。

だが、まあ。その根性に免じて残りの満足ピザはくれてやろう。ステラはピザの乗った皿をネージュの前に置いた。

「………!!!」

瞬間、花が咲き誇るかのような満面の笑みを浮かべるネージュ。最初からそうしてくれればまだ可愛げがあるのだが。

続けてステラが手を付けたのはハチミツの甘い香りが漂うスウィートピザ。チーズの大地からこぼれ落ち、トロリと滴る黄金色のハチミツに思わず喉が鳴った。
スウィートピザを一切れ取り、具材の部分に齧り付く。チーズの持つ塩味とコクが、ハチミツの甘味を何倍にも増幅させる。

しょっぱい物と甘い物の組み合わせは最強だと誰かが言った。なるほど。その言葉には頷く他ない。
増幅されたハチミツの甘味はくどく感じる前に溢れんばかりのチーズによって相殺される。
一番甘く、それでいてしつこく感じないギリギリを攻めた完璧なバランス。ここに至るまでにどれほどの月日を費やしたのだろうか。
ピザ職人の努力と研鑽の日々に、ステラは無意識のうちに敬礼していた。

「おかわりお願いします!!!」

そんなものはない。ステラはネージュの要求を無慈悲に突っぱねる。

さて。最後のピザを頂こう、とステラは手を伸ばし、首を傾げることになる。
ガーリックエンペラーピザが無いのだ。一枚も見当たらない。残っているのは、まるで墓標のように皿に付いたガーリックソースだけである。
まさかと思い下手人に視線を向け、皿を指差す。ネージュはにっこりと微笑んで。

「ごちそうさまでしたっ!意外と良い人なんですね!」

と宣った。その後簀巻きにされて空き部屋にぶち込まれたのは言うまでもない。本人は嬉しそうにしていたので何故だか負けた気がした。

お待たせしました。書き溜めた分を投稿します。

【龍帝】マグニスタニア
【概要】
別名【終滅の焔】。大昔の文献に記される大陸規模の大災害【ゴエティアの火】を引き起こした張本人もとい張本龍。
これにより隆盛を極めていた古代文明【ゴエティア】は灰燼と化し、数々の悪名が世に轟くことになる。

【隷属の咆哮】と呼ばれる能力を持ち、マグニスタニアの咆哮を聴いたドラゴンは、同格未満であれば問答無用で従属する下僕となる。
この能力を使い無数のドラゴンを従えたマグニスタニアは、いつしか龍帝と呼ばれ人魔全てから畏れられる厄災となった。

手慰みに国を焼き滅ぼす日々が続く中、マグニスタニアはこの退屈な日常に終止符が打たれるのを望む。
強き者の到来を。願わくば、眩いばかりの高潔な精神を持った英雄に殺されたいと。

滅びの美学というものがある。強大な悪が滅びるのなら、それに相応しい役者と物語が必要だ。
この肉体が滅びるならば。下手人は人類史に名を残す勇者に。遍く吟遊詩人が英雄譚として語り継ぐ、拍手喝采で讃えられるような結末を迎えたいと。

しかし。龍帝の心を満たし、弑してみせたのは待ち望んでいた崇高な勇者ではなく、たった一人の復讐者だった。
その剣士は、龍を統べる皇帝としての誇りを。龍の頂点に立つものとしての自負を。完膚なきまでに叩き潰した。

龍帝は心より復讐者との邂逅を悔やみ、悦び、願う。
何故我々の種は違うのか。お互いが人、或いは龍であったなら、違う形で出逢えていただろうに。
強き者と出逢えてよかった。想定とは異なる物語になるが、悪行の限りを尽くした化け物の末路としては上出来だ。
再び生を受ける時があるならば。二度目は人として生まれたい。と。龍帝は静かに瞳を閉じる。

数多の文明を滅ぼした龍帝マグニスタニア。その結末は、呆気ないものだった。

世界から光が消え失せたと錯覚してしまうような暗闇の中。灰に覆われた廃墟に、一人の人間が立っていた。
人間の顔には痛ましい傷痕が刻まれており、その上から再度火を浴びせられたような生々しい火傷が主張している。
上半身にも同様の傷がある。常人ならとっくに死に至っている重傷だ。致命傷と呼ぶべきだろう。

そんな焼死体同然の風貌を晒している人間の手には、血と肉が焦げた上で刀身にこびり付いた一本の直剣が握られている。
もう限界が近いのかところどころ刃毀れしており、刀身には細かいヒビが入っている。

ふらふらとよろめく人間の視線は、暗闇の先へと向けられている。その様子からは想像できぬほどに強く、冷めた視線が。
暗闇から聴こえてくるのは生物の吐息と液体が滴る音だけ。
人間はゆっくりとその方向へ足を進める。どこまでも冷たい表情で。一歩ずつ。確実に。

人間が足を止め、見上げた先には。純白の鱗を赫で染め上げた、雄大な龍が横たわっていた。
凛々しき羽は根元から両断され、或いは歪にへし折られていた。二度と翔ぶことは叶わないだろう。もう未来など無いのだが。
龍は全身傷だらけの血みどろ状態。目を覆わんばかりのスプラッタな惨状。人間が人間なら龍も龍だった。お互いに瀕死状態である。

潰された片眼から滴る血が。全身から垂れ流される血が。大地を赫く染め上げる。
その中に倒れている無数の下僕の亡骸を一瞥した後に首をこちらへ向け口を開く。

『…最期に一つだけ問う。貴様の名を教えてくれ』

また超火力のブレスでも吐くのかと人間は身構えるも、龍の言葉に力が抜ける。
何故名前を教える必要があるのか。人間は無言で剣を向けるが、その真っ直ぐな眼差しにやがて、大きなため息を吐いた。

『ステラ・ロードレア…か。なるほど。記憶しておこう。しかし、惜しいな。貴様が龍だったなら。或いは…我が人だったなら。きっと素晴らしい出逢いになっていただろうに。…ああ。本当に惜しい。我がこのような感情を抱くことなど、終ぞ無かったのに。ソロモン王を喰らった時でさえ、心は躍らなかったのだがな』

故郷と家族を奪っておいてふざけたことを宣うものだ。これ以上世迷言を聴かせないでもらいたい。
剣を首元に当てるステラに、不満げに嘶いた龍は最期の言葉を遺す。

『我は暫しの間眠るとしよう。…ステラ。再び貴様と見える日を、我は楽しみにしているぞ』

勘弁してくれ。ステラは冷たく言い返し、龍の首を断ち切る。今際の際に、龍帝は笑っていた。

夜が明け、また朝が来る。起床したステラは顔を洗い寝癖を手櫛で整える。
朝から最悪な気分だ。何度同じ悪夢を見ればいいのやら。ステラは不機嫌な表情で歯を磨く。
毎度毎度性懲りも無く首を刈られに来ないでほしい。その過程で否応無しに負傷するのだが、当時感じた痛みがそのまま来るのだ。バチクソに痛くて発狂したくなる。
ただでさえ故郷が燃やされる悪夢を見ているのに、追加で悪夢を増やすのは勘弁してほしい。本当に。
呪(まじな)いの類は散々試したが効果は一切無し。施術者曰く、これは本人の精神面の問題なのでこれ以上の関与は不可能だそうだ。つまり、どうしようもないということだ。

「ほあよーございましゅ………」

ポケポケとした様子で部屋から出てきたのは寝癖が大爆発したネージュだった。女子力はどこかに忘れたらしい。
だらしない欠伸をしながら冷水を飲み、当たり前のように買い置きしていたハムを食べていた。図太いにも程がある。

ネージュは現在、倉庫代わりに利用していた空き部屋で暮らしている。
とりあえずで突っ込んだ荷物が大量にあるので狭くて暗いが、本人はそれが気に入っているようだ。雑魚寝なのも好印象らしい。

「…あれぇー?」

窓越しに外を見たネージュが首を傾げる。それに釣られて、ステラも視線を向けた。
通りの様子は特に普段と変わらない。いつも通り雑踏がうるさいだけだ。と思ったところで、ステラも首を傾げた。

賑やかな声とは裏腹に人が動いていない。何かを見物しているようにも感じる。真新しい物は何も無かった気がするのだが。
もしや、昨日のチラシを見て応募しに来てくれた人たちなのだろうか。だとしたら嬉しいことだ。
少しテンションの上がったステラは寝巻きから私服に着替え、店を出る。すると。

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「うおーっ!!!本物だぁ!!!!!」
「なんでS級冒険者が鍛冶屋なんてやろうとしてんだろ」
「さあ?金なんて死ぬほどあるだろうし暇潰しなんじゃない?」
「英雄の考えてることはわかんねーな」
「先日は邪魔が入りましたが今度こそ!私とけっコケーッッッ!?!???」
「だから馬鹿なことすんなってんでしょうが!キャラ崩壊が甚だしいわよ!?」

喧しい声が鼓膜を震わせる。これには上がったテンションが下がりに下がってマイナスだ。
冷やかしか。生憎、今はそういった手合いは求めていないのだが。暇な時なら相手してやってもいいが今は違う。目的があり、なんとかなれどうにかなれと地道に行動しているのだ。

まるで見世物小屋に入れられた気分だと、ステラは忌々しげに吐き捨てる。好奇の視線を浴びるのには慣れているが、今回は不快度が普段と桁違いに高かった。
チラシをせっせと作り貼ったのは働いてくれる人が欲しいからだ。冷やかし目的の馬の骨はお呼びでない。

まあ、多少の宣伝にはなったと割り切る方が精神衛生上よろしいか。ステラは母なる海のように寛大な慈悲の心を以って、彼らの罪を赦すことにした。
その高くもない命が惜しいなら笑っているうちに面接を受ける人以外はとっとと失せろ。にこやかな笑みを浮かべたステラの警告に聴衆は蜘蛛の子を散らしたように逃げ出し、先程まで人でごった返していた通りはものの数秒で閑散になった。

ステラは落胆のため息を吐き、店に戻ろうとする。どうせ大半が興味本位で来ただけだとは思ったが、まさか全員がこれとは。
有名になるのもいい事ばかりじゃないと改めて思わされた。いっそ顔と名前を変えてしまうか。

「いやちょっとお待ちなさい!せっかく勇気を出してここまで来たのに無視を決め込むのは失礼ではありません!?まさか、麗しき私(わたくし)の美貌が目に入らなかったとでも言いますの!?」

変身魔法の習得を真面目に検討し扉に手を掛けたところで後ろから呼び止められる。
いったい何用だこちらは気分が悪いんじゃいとジト目で振り向くと、そこには二人の少女がいた。二人ともチラシに添付しておいた申請用の書類を持っている。

どうやら自分の眼は節穴だったようだ。二人も応募者がいてくれたというのに見逃していたとは。
自分の無礼を詫びたステラは、扉を開けて中に入る。二人も続けて店に入った。

「つ、つまらない物ですが、どうぞ」

「お気遣いありがとうございます」
「い、いただきますぅ…」

ネージュが魔法で生成した牛乳を二人に振舞ってもらう。ネージュ印の新鮮ミルクである。魔力がある限り無限生産できるのでお値段は実質タダ。味はいたって普通の牛乳だ。

二人が牛乳を味わっている間に書類に目を通す。筆跡から二人の性格が滲み出ていた。
金糸のような美しい髪を靡かせるのは【サンドラ・シュラーク】。真面目というか、几帳面というか。彼女の文字はお手本とも言えるくらいに綺麗で、丁寧だった。

サンドラはコンスティアの有力貴族シュラーク家の御令嬢のようだ。蝶よ花よと愛でられ、不自由なく暮らしてきたのだろう。傲岸不遜とまではいかないが、態度がデカけりゃ乳もデカい。
随分と厚着をしているが、それでもお山の主張を抑えるには力不足のようだ。いったいどこまで成長するつもりなのだろうか。

「私の顔をじっと見て…どうなさいましたの?私の美しさに見惚れるのは構いませんが、時間は有限なもの。有効的に使っていただきたいですわね」

彼女の言うことは尤もである。ステラは軽く謝罪し本題へ入った。
まず大前提として。この面接を行う時点で二人の採用はほぼ確定している。余程のことが無い限り採用を見送ることはない。

「で、では…。私たちが採用されないような余程のことって、なんですか…?」

おずおずと手を挙げそんな質問をしてきたのは、身体が小さければ気も小さい、内気な少女【モニカ】だった。
彼女の書類を読むのには苦労した。なんせ、ぐにゃぐにゃとした汚い筆跡な上に無駄に小さな文字であれこれ書かれていたのだから、解読に苦労するのは当たり前の話だ。
彼女が記載した来歴を鵜呑みにするなら、独学で文字の読み書きを覚えたのだと推測できる。頑張った方だと褒めてやりたいくらいだ。

採用されないような余程のこと。それは、言ってしまえば単純なものだ。採用する価値が無い、と自分に思わせることだ。
正直に言うと、あまりにも濃密な思春期を過ごしたことで自分の評価基準はガバガバのユルユルである。多少やんちゃした程度なら平気でスルーする。減点するまでもない。
とりあえず彼女たちに言えることは、公序良俗に反しなければセーフというくらいか。

「それってわざわざ言う必要ありますの!?」

ある。失格条件を伏せたまま試験を始める馬鹿がどこにいるというのだ。ステラは真剣な表情で首を傾げた。

「え、なんですかその眼は…。私間違ったこと言ってませんよね…?法律に背くなんてこと、普通の人はしませんわよ?」

普通の人はしないだろう。そんなことをするまでもなく充実した生活を送っているのだから。
なら普通でない人はどうだろうか。生きるために手を汚す。汚さざるを得ない人がいるのは、彼女だって考えれば分かるはずだ。そこまでおつむが弱いわけではあるまい。

「…つまり。そういった…所謂訳ありの方々でも貴方は採用する…ということですわね?」

程度にもよるが、概ねそのつもりである。ステラはサンドラの言に首肯で返す。視界の端で、モニカが安堵したような気がした。

さて。それでは楽しい面談の始まりである。ステラは手始めに志望動機を尋ねた。正直に答えた方が高ポイントだとも伝えてある。

「恥ずかしながら私、少々世間知らずのきらいがありまして。人の上に立つ者として見聞を広めてくるよう父より言われたのです。そこで、まずは市井の者と同じ暮らしをして彼らと同じ目線に立つべきだと考えました。しかし、私は庶民の皆様のような雑務などはしたことがなく…。途方に暮れている私の前に【実務経験一切不要】、【未経験者大歓迎】と書かれたチラシがあったのでこれ幸いと思い志願いたしました」

嘘はいけません、とステラはにこやかに両断した。サンドラの凛々しい顔が固まる。
なら何故住所欄が空白なのかという話だ。シュラーク家の屋敷など有名だろうに。本人だってその自覚はあるはずだ。
それに、仕事がしたいなら親の伝手を利用して就職すればそれで事足りるだろう。ベストとまでは言えないがベターな選択肢だ。気兼ねなく仕事を学べるのだからやらない手はない。

「むぐ…」

図星だったのかサンドラは露骨に目を逸らした。まず間違いなく突っつかれる部分だというのに何も対策していなかったのだろうか。
サンドラの弁解は後に聴くとして。次はモニカの番だと視線を向けた。

undefined

「ひゃ、ひゃいっ!」

緊張しているのかモニカの声は裏返っていた。しかも何故か立ち上がった。別に立つ必要など微塵も無いのだが。サンドラも座っていた。
一瞬座ってもらうか考えるも、そっとしておいた方が面白そうなのでステラは放っておくことにした。

「わ、わたしはモニカ!じゅうななさいです!」

今度は片言だ。もう目も当てられない惨状だが絵面が面白いのでゴーサインを出す。いいぞもっとやれ。

「ちっちゃいころはとーぞくだんでざつようしてました!なのでせんたくとりょうりはとくいです!ぴっきんぐもできます!でもそれいがいはなにもできない役立たずなのでどうか見捨てないでくださいお願いします…」

途中で我に帰ったのだろう。ヤケクソ気味だった表情はどんどんと翳っていき、言い終わる頃には曇天のような曇り具合だった。
よく頑張りました。そんなモニカちゃんには花丸をあげましょう。ステラはモニカの勇気を讃えた。
だが、彼女の解答は不十分だ。志望動機がてんで分からない。恥ずかしさからか顔を隠すモニカに、ちゃんと何故募集に応じたのかを答えてほしい、と伝えた。

「…えっと。わ、私は遠く離れた山を縄張りにした盗賊団で、先述した通り雑用をしていたんですが…その。盗賊団が解散しちゃって、一人になったんです。物心が付く前からその盗賊団にお世話になってたので、頼れる人はいなくて…。薬草や鉱石を売って、なんとか今までやってきたんですけど…。一人でずっとやっていくのは、その、心細いから。助けてほしいなって思って、応募しました。…ご、ごめんなさい。下っ端とはいえ、盗賊風情が生意気というか、偉そうですよね。こんな私が、誰かの助けを得て生きようだなんて…」

別にそんなことはないだろう。物心が付く前に拾われたということは、彼女は捨て子、或いは何らかの事件や事故に巻き込まれて両親が死んだのだと想像がつく。
そんな天涯孤独の身となったモニカを紆余曲折あって盗賊団が拾い、雑用を押し付けていた。
彼女個人でどうにかできる範囲を遥かに超えている。どこでアクションを起こしても、当時の状況を脱することは不可能だっただろう。
それに他人を頼るのは誰しもが持ち得る権利である。誰も一人では生きられないのだ。
困った時、辛い時は他人を思う存分頼るといい。それを無下にするような性格の悪い人はここにはいないはずだ。

「あ…ありがとう…ございます…。えへへ…」

前髪に隠されたモニカの瞳が潤み、小さく微笑む。ステラは不覚にも可愛いと思ってしまった。
敢えて言うが、この可愛さは小動物的な可愛さである。なんとも庇護欲が掻き立てられる表情だ。全国各地の男性冒険者諸君もこの表情を見たらこの笑顔はなんとしても守護らねば…と思うこと間違いなし。
なんというかモニカが拾われた理由が心で理解できた気がする。

「…むう。この私を無視して盛り上がるなんていいご身分ですわね」

ステラがモニカに構うばっかりに放置されているサンドラはむくれていた。意外と愉快な一面があるようだ。

構い終わったステラは気を取り直して、サンドラの志望動機を訊くことにする。別に黙秘されても構わないが、理由が単純に気になるのだ。

「…貴方を騙そうとした私に全面的に非があります。ええ、包み隠さず全てをお教えしましょうとも。あまり愉快な話ではありませんがよろしくて?」

よろしい。

「では。…とは言っても、犬も食わないようなくだらない理由なんですけれど。【ケーファー家】はご存知?」

全く知らない。流れからして貴族だろうか。

「ええ。シュラーク家と比べればちっぽけな一族なのですが、数代前の当主が友人…本人曰くまぶだち?と手記に遺すほどに親交が深かったようで、今でもその繋がりは健在だったのです。私は一切面識がありませんけど。…ですが先週、父がケーファー家当主と酒席を設けた際に『子供もいい歳なんだから結婚とか考えないわけ?あれだったらうちの娘とお見合いさせるけど?』と宣ったらしく…」

酔った勢いで話が一気に進んでしまったのだろうか。貴族の方々も楽じゃないらしい。

「そういうことです…。ただのお見合い。されどお見合い。これで縁談が纏まるわけではありませんが、相手はどうやら相当乗り気のようでして…。…一生添い遂げる方ですもの。契りを結ぶ相手は私がこの眼(まなこ)で見定め、私の意志で選びたいと、幼子の頃から思っています。なので家出しました」

なるほど。であればこのままこの店に迎えるのは政争に巻き込まれる可能性もワンチャンあるようだ。サンドラの採用は見送ることにしよう。

「ちょいちょいちょーい!?今の流れでそれは人の心がありませんわ!貴方、滅龍の剣聖なんでしょう!?どうかお助けくださいまし!!!」

サンドラが焦りに焦ったところで、ステラは小さく笑う。今のは場を和ませるジョークである。落ち着きたまえ。

「ジョーク!?その割には凄い嫌そうな顔してましたわよ!??」

まあ嫌だし面倒くさいことになりそうだとげんなりしているのは事実だ。だが、龍帝とまた殺し合うのに比べれば赤子の手を捻るようなもの。
最悪、シュラーク家とケーファー家双方に歴史から抹消されたくなければサンドラに関与するなと警告すりゃいいのだ。
こうすれば余計なちょっかいは掛けられない。サンドラだって楽に生きれるだろう。

「ああ…特例上位クラスが皆狂ってるってそういう…」

ステラの楽しそうな表情を見たサンドラはそう呟き、頭を抱えた。

その後。二、三ほど質問をしたところでサンドラから質問が飛んできた。

「私も貴方に訊きたいことがありますの。構いませんわね?」

他者のプライバシーを侵害しない程度なら喜んで答えよう。どうぞお構いなく、と答えコーヒーを口に含んだ。

「感謝いたします。…では。ステラ・ロードレアと言えば【龍帝マグニスタニア】とその配下を単騎で打ち倒したとされる英雄。彼の者には、数百年の間に世界各地から拠出された莫大な報奨金が支払われたと存じます。一生豪遊したとて到底使い切れぬほどの金額です」

そういえばそんなものを貰った。ステラは微かに笑い、何を言いたいのか問う。

「つまり、この小さな鍛冶屋を建てることなど呼吸をするより容易いということです。設備だって最高級のものを取り揃えるのは造作もないでしょうに。なのに貴方は、その。金に物を言わせれば、他の店から職人を引き抜くことはしないで、私たちのような素人だろうと迎え入れようとしている。おかしいと思いませんか?」

なるほど。たしかにあの金があれば金貨袋パンチで人を恭順させるのは簡単だ。
だが、そんな金は無い。よしんば金があったとしてもそんな思考はしていなかっただろう。

「へ?使い切ったんですか?」

使い切った。一コル残らず使い切った。報奨金はすっからかんである。

「頭おかしいんですの?」

何やら誤解されている気がしたので、ステラは弁解することにした。
ステラが貰った報奨金だが、彼自身は一コルも手を付けていない。

なら何に使ったんじゃオラという話だが、使い道自体はいくらでもあった。龍帝によって壊滅した都市の復興資金である。
龍帝マグニスタニアは、滅龍の剣聖ステラ・ロードレアによって討伐された。ならば、龍帝がやらかしたことのツケを払うのは、龍帝を弑したステラがやるべきだ。少なくともステラはそうするべきだと考えていた。

龍帝が齎した目が眩むほどの損害。それを無視して遊び呆けるほどステラは図太くはなかった。ただそれだけの話だ。
自身も龍帝の被害者だという事実が大いに関係しているが、それは言わなくていいだろう。お涙頂戴するために言っているわけではないのだから。同情など要らぬ。

「…頭おかしいんですの???」

弁解を聞いた上で彼女にこう言われるのは予想していた。頭がおかしいと言われても仕方のないことだ。
ステラが言っていることは大量殺人犯を自分が殺してしまったからといって、被害者家族に代わりに贖罪しているのと同義だ。頭おかしい以外の感想は出てこないだろう。

まあ、聡いが故に本質を理解し率直な感想を言ったサンドラはともかくとして、頻りに頷いているネージュのご飯は抜きにしよう。そうしよう。強く決意したステラだった。
なお、気を遣っているのかモニカは優しい人なんですね、とお世辞を言っていた。余計なお世話である。

書き溜めたのはここまでです。次回の更新をお待ちください。それに伴い安価を二つ出しておきます。
一つは店名です。こちらは先着で三つまで募集し、最高コンマのものを採用します。
もう一つは次のレスに載せておきます。書き方の例は以下に書いておきます。


B モニカと食べ歩き
C どらごんべーかりーで買い物

4/9 昼 開店予定日 5/1

下2 何をしようか?

A:鍛造 従業員に武器を作ってもらいます。
B:交流 他のキャラクター一名と交流します。
C:散策 コンスティア内を散策します。新しい出会いがあるかもしれません。
D:購入 鍛造用の金属を購入します。ラスティ商会へと向かいます。

残金 6,000,000コル→5,586,000コル
材料 なし

【知人一覧】
ネージュ 技術力 48 信頼度 0 従業員
サンドラ・シュラーク 技術力 45 信頼度 0 従業員
モニカ 技術力 21 信頼度 0 従業員
ラスティ 信頼度 0 道中で出会った商人
リリカ 信頼度 0 不動産屋の店員

【散策候補】

どらごんべーかりー 街で人気のパン屋さん。
桃華薬堂 漢方と呼ばれる薬を取り扱う薬屋。冒険者向けの整骨院も兼任している。
ユースター魔法店 魔法書や魔法薬を取り扱う店。
ヤナギ工房 コンスティアでは有名な鍛冶屋。最近新しい弟子を迎えたらしい。
ラスティ商会 キャラバン隊を経営する商会。珍しい物も売っている。

店名 SSS(ステラズ-スミス-ショップ)
行動安価ならD

店名は>>86に一票

安価はB+Dでたまたま近くにいたモニカとラスティ商会で金属購入
記号1つのみならD

店名:ロードレア武具工房

念のため、もう1つ。実家がこういう名前でした、だとなお嬉しい。

行動については基本一つしか選べません。何かを選んだらそれ以外を放棄するペル○ナ的システムです。

小一時間ほどの面談が終わり、二人に二階で待つように指示を出す。二人は緊張した面持ちで階段を登っていった。

「あれ?さっき余程のことがなければ採用するって言ってませんでした?私が聴く限りいい人そうだったから、すぐ合格って伝えてあげた方が喜ぶと思いますよ?」

分かってないなあネージュちゃんは。やれやれと肩を竦めるステラに対し、ネージュは怪訝な表情を向けた。
彼女らには面談と言っているが、仮にも合否に関わる試験なのだからそれっぽくしたいのだ。
具体的には数分くらい放ったらかしにしておいて、厳正なる審査の結果採用とさせていただくことをここに報告します、とでも言う予定だ。

「うーん…私には何の意味があるかよくわかりません」

意味があるかについてはノーコメントだ。どういう受け取り方をするのかは彼女たち次第であるが故に。
だが。形だけとはいえ、二人は試験に合格した。自力で仕事を手に入れたのだ。
この経験が成功体験として二人の糧になれば幸いだと答える。

「なるほど。その優しさをちょっぴりでもいいので私にも分けてくれたらいいんですけどね」

変なことをおっしゃる。散々甘やかしてあげたではないか。人のピザを食べ尽くしたことを忘れたとは言わせない。
ステラの指摘にネージュは気まずそうに笑い、明後日の方向を向きながら口笛を吹いた。あまりにも分かりやすい反応に、ステラも思わず吹き出してしまう。
その反応を見たネージュは赤面し、ぽこぽことステラの胸を叩くがこれっぽっちも痛くはない。

さて。そんなほのぼのとしたひと時を過ごしステラたちは今、サンドラたちが待つリビングに繋がる扉の前に立っていた。

「ど、どうですか?変な顔になってませんか?」

ヒソヒソと囁くネージュの顔を見る。真面目そうな表情ではあるが、少し口角が上がっていた。つまりちょっとニヤけている。これでは緊張感などあったものではない。

「むむむ…。ステラさんはちゃんと真顔ですね。どうやってるんですか?」

故郷が滅ぼされた記憶を辿っているだけだと答える。なんですぐ重いことを言うんですかリアクションしづらいです、とネージュは渋面を作った。手っ取り早く真顔になるにはこれが一番というだけだが。

「だからやめてくださいって。…って、ちょっ…!まだ心の準備がっ…」

ネージュの苦言を右から左へ受け流し、ゆっくりと扉を開ける。中で待機していたサンドラたちの視線がこちらに勢いよく向いた。

二人の動揺は分かりやすかった。非常に分かりやすかった。ネージュとタメを張るレベルの分かりやすさだ。

モニカはソワソワと落ち着かない様子でこちらに視線を向けている。時折下を見ているが、何か行動していないと落ち着かないだけだと思われる。
対するサンドラはと言うと、威風堂々とした佇まいで髪を靡かせていた。白磁のような細い指から艶やかな金髪が流れている。
表情からも合格して当然という余裕がありありと感じられた。
だが足は震えている。それはもうガックガクに震えている。武者震いや貧乏ゆすりを通り越してもはや大地震である。

あまりの惨状に表情が崩れそうになるが、もっと他の使い方があったのではないかと投げやりに考えながら、冒険者生活で培った鋼の精神力で耐える。
無表情かつ絶対零度の眼差しを携えたステラの様子に、二人の動揺がより顕著になった。

「わ、私何か失言でもしましたかしら!?だとしたら謝りますのでご容赦を!!」
「やっぱり駄目ですよねそうですよねこんな私が人並みの生活をしようとしてごめんなさい…」

おかしい。ここまで怯えられるとは思っていなかったのだが。ステラは目の前の光景に困惑しながら表情を戻す。

「「ほっ…」」

虚無を感じさせる無表情が消え、二人は露骨に安堵の息を漏らした。
その分かりやすい態度に悪戯心が刺激されたステラは無表情と素面を交互に繰り返す。コロコロと表情を変える二人の様子はとても愉快であった。

「成功体験がどうのとか言っておいてなにやってるんですか」

ぺち、と後頭部を引っ叩かれる。ネージュの言う通り、ステラの奇行は趣旨を完全に逸脱していた。
過ちに気づいたステラは気をつけねばと猛省する。次はしないとは言ってない。

徐に鞄から取り出したのは例によって魔道の契約書。内容はネージュの物と同様である。
契約内容に問題や異議がなければサインをするように伝えてペンを渡す。
隅から隅まで読み込むサンドラをよそに、モニカは速攻で名前を書き込んだ。内容を理解しているのか心配だがサインした以上契約は絶対である。文句は言わせない。

「あの。この契約って緩すぎません?父が所有している物に比べたらかなり労働者側に有利な条項ばかりですわ…。何か裏があったりしますの?」

財閥だとか有力貴族のそれと一緒にされては困る。別に生殺与奪の権を奪い馬車馬の如く働かせるつもりで契約しているわけではないのだ。
あくまで従業員として働いてもらうためのものだ。忠誠を誓わせるためのものではないので、そこまで縛る必要は無い。
それに、サンドラの疑いは的外れにも程がある。もし裏があったとして、それを素直に言うかという話だ。
騙す予定だとバラす仕掛け人が何処にいるのだろうか。もしいたらその人間はとんだ大間抜けである。

「たしかに貴方のおっしゃる通りですわね。失礼いたしました」

ステラの説明を受けたサンドラは、なるほどと頷いてサインをする。ここに二人との契約は成立した。

なんやかんやあって従業員が三人になった。
当初は二人採用できれば御の字だと思っていたが、まさか三人も雇えるとは思わなんだ。
サイン済みの契約書を預かったステラは、嬉しそうにそれを鞄に仕舞い込む。時間が空いた時にネージュの分も含めて写しを取る予定だ。
そしてそれをギルドの金庫にぶち込む。この契約書が消滅したら契約そのものが無くなってしまうのだ。念には念を入れるべきだ。お互いのために。

さて。契約も終わったことだし、今後のために渡したい物がある。ネージュにも渡しそびれていたからちょうどいい。ステラはステラはそう言って麻袋を取り出した。

三人はステラの言葉に目をパチクリとさせる。麻袋を机に置くとゴトリと鳴った。喜んでくれればいいのだが。

「なんですかこれ。私にも渡したかったって言ってましたけど」

何と言われたら金としか言えない。より正確に言うなら手付金だろうか。
ネージュたちはこれからこのお店で働いてもらうわけだが、契約書に記載した通り給料日は毎月一日である。つまり、次の支払いは来月だ。
ネージュは言わずもがな、モニカやサンドラだって金に困っているはずだ。困窮していなければこんな仕事をやろうと思わないだろう。

契約は成立した。そしてこちらにはその契約を遵守する意志がある。それを理解、納得し、貢献してもらうための先行投資と思ってもらって差し支えない。

「…なるほど。話は分かりました。では何故金額が違うんです?」

特に理由はない。適当に金を突っ込んだからそれが原因だろう。

「そ、そうなんですね…。てっきり私のことを役立たずと思ってるから…その分を差し引いたんだと思ってました…」

面倒くさい子だなあモニカちゃんは。やれやれといった表情でステラはモニカの額を指で軽く押した。モニカの口から情けない声が漏れる。

別に自分のことを役立たずだの足手まといと卑下するのはモニカの勝手だ。本人の気質の問題なのでそれを止めるつもりはない。
ただ、モニカの評価と他人からの評価が必ずしも一致するわけではないことは理解してもらいたい。
それに、この金は期待の表れでもある。期待も信用もしていない相手に金を恵んでやるほど、ステラはお人よしではないのだ。

「…ありがとう、ございます。ご期待に応えられるよう頑張ります、から…。どうぞ末永くよろしくお願いします…」

何がどうしてそうなったか分からないがやる気になったならヨシ!ステラは目の前の現実から逃避した。

店は手に入れた。人も揃った。やることがないから親父の跡を継いでやろう大作戦は順調に進んでいる。
だがまだまだだ。もっと準備を進めないと。具体的には素材の備蓄や鍛造だ。
開店日までの間に商品となる武器を大量に作り上げなければならない。試作品も複数作って技術の向上を図る必要だってある。

となると、素材がとにかく必要になる。残った予算を全ブッパするのは論外だが、多少失敗してもいい程度には買い込んでおくべきだ。
ステラはそんな爆買いにお誂え向きの店を知っている。あの時煉獄竜を殺してよかった。

「あら、出掛けるのですね。では私も少し外出いたします」

外行きの私服に着替え鞄を取るステラを見て、サンドラも室内用のお高いスリッパからこれまた高級なブーツへと履き替える。
彼女が言うにはホテルに預けた荷物があるので荷運びのために引き取りに行くらしい。ついでにチップもいくらか包むそうだ。
ステラも手伝おうとしたがすげなく断られる結果に終わった。ホテルで待機している小間使いがいるし、そこまでしてもらうのは気が引けるそうだ。

ではこれからどこに住むのか訊ねると、ステラのお店だと返答が返ってくる。こちらは別に構わないがサンドラは平気なのだろうか。
ただでさえ実家の屋敷での優雅な生活からホテル住まいにランクダウンしているのに、さらにランクが下がったら嫌だと思うのだが。

「貴方からの給料ではホテル代を賄えませんもの。私だってそのあたりの分別は付きますわよ」

彼女なりに色々考えた結果らしい。ならこれ以上あれこれ言うのは無粋だろう。
人攫いとかの悪党に気を付けるよう警告し、ステラはサンドラと別れた。

余談だが、何故かやる気が凄いモニカは今後の炊事洗濯掃除といった家事諸々を担うつもりらしく、食材などを買いに一足先にネージュと出ていった。
やる気なのはいいことだが空回りしないか心配である。ネージュのフォローを期待しているがあれはあれで中々愉快な性格をしているから無駄かもしれない。

ステラが向かっているのはメモに記された住所。これはコンスティアに入る直前に商人から貰ったものだ。
ここで商売をしているから存分に使い潰してくれ、と言われたので遠慮なく使い倒すつもりである。

練乳、生クリーム、カスタードのみを包んで焼き上げたという【甘味の権化クレープ】を食べ終えると同時に目的地に到着した。
胃もたれしそうな破滅的甘さだが悪くはなかった。カロリーはどれくらいなのだろうか。想像しただけで腹回りが大きくなった気がする。

【ラスティ商会コンスティア支部】とだけ書かれた質素な看板とは裏腹に豪華絢爛な外観が目を引く。
しかし売り子のような人は見受けられない。商品が陳列されているわけでもなければ、カタログが置いてもいない。

これは一体全体どういうことだとステラは首を傾げる。もしや騙されたというのか。そんな悪意は感じられなかったのだが。
疑問に思ったステラはダメ元で突撃を敢行することにした。断られた時はその時どうすればいいか考えればいいだけである。

「すみませんお客様。こちらでは商品を販売しておりませんのでお引き取りを」

アポイントメントを取ろうと受付に物申しに行くもバッサリと切り捨てられる。取り付く島もない態度に思わず苦笑した。
しかし本当にここでは物品販売はしていないのか。ステラは落胆しながらここはラスティ商会とやらの事務所なのかもしれないと考える。
商会が経営している店舗は把握しているはずだ。何かしらの情報は欲しいと質問する。

「とは言われましても…。コンスティアでの我々の業務は問屋に近いのです。他国から商品を仕入れ、それをコンスティア内の各店に卸しているんですよ。業務提携しているなら毎月カタログを郵送しているのですが、そちらはお持ちではありませんか?」

七三分けにメガネ、キッチリとした身だしなみのスーツマンとお堅い印象を受ける男性の問いに首を振って答える。
持っている物と言えば商人から渡されたメモだけだ。
メモを男性に見せると、視線が若干揺れ動いた。

「…失礼。そちらのメモを一度預かってもよろしいですか?」

どうぞお構いなく。ステラは男性の要求を快諾し、メモを渡す。ポケットに突っ込んだ時に少しぐしゃぐしゃになったが別にいいだろう。

綺麗なお辞儀をした男性が階段を登っていく。

数分後、見知った顔が二階から降りてきた。

「はは、すまないな。とんだ無礼を働いた」

商人に誘導され応接室へ移動する。一目で上物と分かるご立派なソファー、溶岩洞窟の最深部でのみ採掘できる希少金属【アダマンチウム】を含有しているアダマンタイト鉱石、なんかよく分からないオブジェが視線を集める。よくこんな物を集めたものだとステラは感心した。

「物流をメインにしているとはいえ、腐っても商人だ。珍しい物は大枚を叩いてでも欲しくなるのが性ってもんでね」

気持ちはよく分かる。ステラも商人に大いに賛同した。ステラも仕事柄危険と財宝溢れるダンジョンや危険地帯へ幾度となく挑戦してきたし、凶暴な魔物を仕留めた後の剥ぎ取りタイムはワクワクしたものだ。
そしてレアな素材が出たら大半は宴会代に消えていった。冒険者はその場のノリで生きている。

「さて。自己紹介がまだだったな。本名は別にあるんだが、俺のことはラスティと呼んでくれ」

その名前を名乗る意味はあるのだろうか。センシティブな理由があるのなら深入りしないでおこう。

「いや別に本名を名乗ってもいいんだが、職場ではこの名前で通してるんだ。ラスティ商会のしきたり的なやつでな。支部長は皆ラスティって名前を襲名してんのよ。で、会合とかで他の支部長とかと一緒になる時は判別できるよう本名を使うって感じだ」

随分と回りくどいことをするものだ。この不出来な頭でどれだけ考えても、何の意味があるのか分からない。

「ま、そういうルールがあるから従ってるだけだ。あまり気にしなさんな」

ラスティは小さく笑いコーヒーを淹れる。何か要望があるか聞かれたので、ブラックのままでと頼む。
ちょっと前にとても甘いクレープを食べたのでお口直ししておきたいのだ。甘ったるさが口内に残っているのが気になってしょうがない。そんなものを食べたお前が悪い自業自得だろと言われればそれまでなのだが。
芳醇な香りが鼻をくすぐる。コーヒーは好んで飲まないのだが、これは美味い予感がした。実際に美味かった。

「喜んでくれたなら何より。では本題に入ろうか。お前さんは商品を買いに来てくれたんだろ?」

それ以外に理由は無い。でなければ足を運ばないだろう。

「そりゃそうか、失敬。とりあえず他の店に卸す分を除外して…今お前さんに売れるのはこれくらいかね」

ラスティが用意してくれたリストには煉獄竜の素材が入っていた。どうやらギルドに丸投げした分を買い取られたようだ。

「煉獄竜の素材はこの辺で手に入らないからな。それに、お手軽に炎耐性を付けられる素材として需要は相応だ。お前さんもその価値は解らんでもないだろ?」

異論は無いとステラは頷いた。この世界で最もポピュラーな属性攻撃と言えば炎…つまり火属性攻撃だ。
ドラゴンのブレスは言わずもがな、人類の扱う魔法でも火炎魔法は基本中の基本であり、まず最初に習得が推奨されるくらいに重要なポジションを占めている。
皆が使う便利なものであるが故に、対策の必要性は自ずと高くなる。人魔問わず普及しているからこそ容易にやられないようにしておく必要があるのだ。

とはいえ、煉獄竜は実際のところそこまで強いドラゴンではない。下の上、良くて中の下だ。
そのため素材として利用したところで、炎に対して無敵になれるかと言われたら無言で合掌する他ない。
あくまで火属性のダメージを軽減するのであって無効化はできない。気休めと言ってもいい。あればいいな程度の性能だ。

「炎を無効化しようとするなら、それこそマグニスタニアの素材をふんだんに使った重装鎧でもなけりゃ無理な話だ。…つっても、龍帝の素材が世に出回ったことは一度も無いんだが。どっかの王都に生首が保管されてるだけで、遺体は行方不明だしな」

ステラが討ち滅ぼした龍帝マグニスタニア。その遺体は灰都に埋められている。彼の龍が使役していた下僕共の亡骸と共に。それがステラのできるせめてもの手向けだった。
まあマグニスタニアの素材を巡って大変なことになる予感があったのが関係しているが言う必要はないだろう。

しかし、あの龍の素材を使った装備がどれほどの性能なのか気にせずにはいられない。
あの時少しでも剥ぎ取っておくべきだったと、ステラは遅まきながら後悔した。

下2 何を買おうか?

残金 5,586,000コル
材料 なし

商品リスト

汎用金属 効果 なし 価格 7500コル 在庫 100個
ミスリルインゴット 効果 耐久力+20、聖属性付与 価格 30000コル 在庫 20個
【限定品】煉獄竜素材セット 攻撃力及び耐久力+25、火属性付与、火属性耐性微強化 価格 80000コル 在庫 4個 
氷華のヘアピン 価格 10000コル 在庫 2個
グリフォンの羽ペン 価格 10000コル 在庫 1個

上の安価とは別に冒険者を三名ほど募集します。テンプレは以前のものをお使いください。
S級冒険者も可ですが、【どこかしらの人格が破綻している】、【人類に対し多大な貢献をした】ことが絶対条件です。

買い物の安価は予算内で収まる範囲なら好きに購入できるので、一つのレスに買いたい物を全て入れてください。今後も同様のやり方でいく予定です。

kskついでに冒険者案を投下。採用されるかな?

【名前】ズーラ・ガンター
【種族】魔族
【性別】男
【魔法属性】死
【概要】
死の属性を操り人々の死期を見抜いてはそれを覆すことで知られる【嘘つき告死天使】の異名を持つS級冒険者で、主に強力な魔物を素材とした新薬の開発や新種の薬草の発見・難病の克服などで人類に貢献した人物。
一見すると医者にしか見えない功績だが新薬になるならば如何に強力な魔物だろうと討ち果たすため紛れもなくネジがぶっ飛んだS級冒険者の一人である。
非常に高い能力を持つが容姿と性癖が壊滅的なのが難点。
長剣を武器にしたバーコードハゲの中年男性。ビール腹。3対6枚の黒く立派な翼。レンズが大きく四角い眼鏡。
翼だけは見事なため、翼が本体という扱いを受けることも。
男女問わず可愛い者なら「イケる」ド変態でR板的な能力も高い(コンマ換算で最低85以上)。しかも可愛い者が相手ならドMにもドSにもなる筋金入り。
性癖にさえ関わらなければ(相手が可愛くなければ)紳士的に対応するし真面目に仕事したりとS級冒険者としてはわりとまともな部類。
性癖が高じて恵まれない子ども達を大々的に支援しており、現在は一線を退き下心を隠そうともせずに手取り足取り後進の育成に励んでいる。

親しい仲の人物からは「ズラさん」と呼ばれる。時おりどもったり語尾を伸ばしたり、「デュフフフ」や(ニチャァと笑ったり、「ですぞ」とか「ござる」とかそんな口調のキャラ。

汎用金属 30
ミスリルインゴット 10
煉獄竜素材セット、氷華のヘアピン 2ずつ
グリフォンの羽ペン 1

ついでにキャラ案

【名前】ルーナ・クリスティア
【種族】人間
【性別】女性
【魔法属性】結界
【概要】十九歳、茶髪のポニーテールの少女
身長は平均より少し高い程度
明るく穏やかな性格、ややツッコミ気質なところあり
かなりの料理上手

A級冒険者でも上位の実力を持つ

彼女の魔法属性の結界は、高次元による断絶を作り出す
結界内の環境や状態、何を通すか通さないか等、ある程度彼女の意思によって操作可能
ただし生命体に直接影響を及ぼすことは不可
また、結界による切断などある程度応用もできる
この結界により、ドラゴンの大群から都市を守り通す、結界内の環境を操作できることの応用で流行り病の特効薬作成に寄与したりと、大きな功績も挙げている
S級になれないのは、単純に能力が足りないのか、はたまた実績が届かないのか、それ以外の理由かは不明
一部ではまともだからS級なれないのでは? とか言われていたりする

【名前】グルガ
【種族】人間
【性別】男
【魔法属性】魔法は苦手でほとんど使えない
【概要】黒髪を後ろでまとめた目つきの鋭い男
とても筋骨隆々で魔族と勘違いされるほど体格のいいA級冒険者、まだ17歳
根は善人だが精神的にとても不器用で必要最低限しか喋らない寡黙な性格
それに加えてその見た目もあって人々からは恐れられているが本人はめげずに世のため人のため働いている
とても力が強く異常に体が丈夫。単純なパワーだけならS級レベルではないかとも言われる
体が大きいせいで装備品は全て特注になってしまうのが悩み

【名前】ミリア
【種族】人間
【性別】女
【魔法属性】変身
【概要】淡い金髪の女性 年齢17
とある国の王族の娘だったが、一族が竜の呪いを受けた事で滅びた
一人だけ命辛々逃亡するも、呪いによって半人半竜になる事がある
普段は自身の魔翌力で抑え込んでいるが、気を抜くと変身してしまう
身分を隠しながら、呪いを断つための冒険をしている

【名前】ブラッド・バスカヴィル
【種族】人間
【性別】男
【魔法属性】血液
【概要】血の様に鮮やかな赤髪をした20代前半ほどの男性。左目に眼帯をしており、鼻には戦いで出来たと思しき横一文字の傷がある。
性格は一言でいうと戦闘狂であり、荒っぽい言動と相手が強者と見るや片っ端から噛みついていくその姿から、周りからは狂犬の異名で呼ばれている。
本人はただ単に強い奴と戦いたいという理由だけで魔物などを狩りまくっていたのだが、それによって救われた者たちがいる事もまた事実であり、それ
が功績として認められた事で気が付けばS級冒険者となっていた。
彼が使う血液魔法は文字通り自らの血液を操る魔法であり、血の剣を作り出したり血の弾丸を飛ばしたりする事が可能である。
自身の血液を扱うため体力の消耗が激しいが、相手に触れている時に限り、その相手の血を手のひらを通して吸血する事も可能。
これにより体力や魔翌力を回復する事が出来るが、当然血が流れていない無機物系の魔物やアンデッドには無効である。

ラスティが迅速かつ丁寧にリストアップしてくれた簡易版商品カタログには、単価と分配可能な在庫数、そしてその商品に対する簡素な注釈が付けられている。
誇大広告が欠片も見当たらないシンプルなものであり、とても見やすくて好感が持てる。
本人が言うには、聴き心地の良い文句を並び立てて人を騙し、それで多大な利益を得たとしても、いつかはその報いを受ける。何事も手堅く真摯にやっていくのが一番らしい。
切った張ったを繰り返しその場のノリで生きていく一冒険者としては耳が痛いありがたいお話だ。ご高説は勘弁してくれ。切実にそう思った。

材料のページに目を通す。鍛造に用いられる一般的な金属類の他には、寒冷地の地下でよく産出するミスリルが記載されていた。
ミスリル。聖銀とも呼ばれるそれは、名前が示す通りに神聖を宿す。摂理に反した存在である不死種(アンデッド)に対し特攻を持ち、聖職者や聖騎士(パラディン)の装備に用いられる素材だ。
職業柄不死種との戦闘に携わる彼らには欠かせない物であり、ミスリルの精製技術が確立して以降殲滅効率と安全性が劇的に向上した。
強度も鉄等より高く、神聖云々を抜きにしてもそれなり以上の装備に使用されるのは珍しくない。より強力な装備を求める時には力不足となり他の材質を使うことになるが。

どうせ試行錯誤するのだから買い込んでおいて損は無い。お試しとしてさまざまな素材を買い揃えておこう。
慣れた手つきでメモを書きページをめくる。贈答品のページに差し掛かったところで、珍しい物が載っていたのでページをめくる手が止まった。

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貴族に差し入れしても恥ずかしくない高級品が記載されているページの中で、ステラの目を引いたのは氷華のヘアピンとグリフォンの羽根ペン。

氷華のヘアピンは、ケルローネから遠く離れた【ルナライト凍原】と呼ばれる場所に群生する【氷晶薔薇】という花をモチーフにした、職人が水晶を削り出して製作した髪留めである。
氷晶薔薇は脆く崩れやすいので保存に向かず、実物は現地で確認する他ないのでここまで精巧に作るのは至難の業だ。本物同然というか本物より綺麗かもしれない。このヘアピンを手がけた職人の腕前が窺える。

しかし、本当に良くできている。以前見た氷晶薔薇の花園を彷彿とさせる美しさだ。あの時は思わずビューティフォー…と柄にもなく呟いてしまった。懐かしい記憶だ。
あの時は大変だった。異変調査のために知らない人たちと即席パーティを組み意気揚々とルナライト凍原に繰り出したものの、雪崩に巻き込まれた上に魔物の大群に襲撃され、全滅を避けるために苦肉の策として殿を務めたのは記憶に新しい。
孤軍奮闘の甲斐あって異変の原因だった魔物の大群は殲滅できたが、その結果見事に迷ってしまい遭難したのだ。

戦闘による負傷で大量出血するわ傷の治療に魔力を必死に回したせいで体力が底を突くわ凍傷で指先や足が黒くなるわこの状況でルナライト凍原を縄張りにしているドラゴンと遭遇するわで死を覚悟したのだが、どうやら天命は自分にあったようでドラゴンに保護されたのだ。今思い出しても意味が分からない。

ドラゴンの寝床も一面凍結しており尋常じゃない寒さではあったのだが風雪を凌げるだけ外に居るよりマシであり、何より食事には困らなかった。
二週間は自前の保存食で賄うもすぐに無くなり、その後の二週間はドラゴンが拾ってきた木の実やドラゴンが狩ってきた魔物の肉で飢えを凌ぐ毎日。
防寒対策を万全にした上に保存食もかなりの量持参していたのだが、吹雪が止むまでの一カ月間を耐え忍ぶには足りず最終的にドラゴンの厚意に甘えることになったのは恥ずかしい話だ。

その後はドラゴンズハウスで休養を取ったことでやむなく切断した手指や足が再生し、天候も回復したところで近くの村へと移動した。名残惜しそうにこちらを見ていたドラゴンの顔が印象的だった。

村に帰還したステラはまず最初にギルドに顔を出したのだが、既に死亡届が受理されていたらしく大いに揉めた。
一カ月の間音沙汰無しだったから死亡したと判断されるのは仕方のない話なのだろうが、救援依頼も出さずに即死亡届を提出するのは見切りが早すぎるし薄情にも程がある。これには流石にちょっと傷ついた。ヤケ酒でベロンベロンに酔っ払ったのはあの時が初めてだ。
ちなみに件のパーティとはその一件以来一度も再開したことは無い。もう過ぎたことだとこちらは気にしていないのだがせめて一言くらい欲しいものだ。

グリフォンの羽根ペンは名前の通り、グリフォンから抜け落ちた羽根を加工したペンである。こんなこと説明するまでもないだろうが。
グリフォンの強靭かつ巨大な肉体を飛翔させる大翼。それを構成する羽根は軽やかな手触りで、それでいてちょっとやそっとの衝撃では折れない頑強さを持つ。
ペンナイフで手入れしなくとも十年は快適な書き心地を維持できるとまで言われており、コンスティア国王もこの品を愛用していたりする。

余談だがグリフォンの羽根ペンが高価な理由として、飛行能力を持つので捕獲や狩猟が難しいこと、そもそもの生息数が少ないこと、捕獲や狩猟をする際に羽根がダメになりやすいこと等が挙げられる。
ステラは気付かれる前に神速首チョンパできるので伝手さえあれば羽根ペンの大量生産が可能なのだが、金儲けのために生態系を破壊する予定は今のところ無いので世界からグリフォンが消える悲劇は起きていない。

予算と相談し買いたい物を見繕ったステラは、ラスティにメモを渡す。内容を確認したラスティは満足げに頷いた。

「毎度あり。手荷物になるから商品は店に送っとくよ。今後も購入日の翌朝に届くよう手しとくからご贔屓に頼む。…っと。住所もそうだが、店名を訊いてなかったな。部下に後ほど運ばせるから教えておきたいんだ。どんな名前だい?」

名前。名前か。そういえば何も考えていなかった。本来は他の三人と話し合って決める予定だったから、未定でも仕方のないことなのだが。
そういえば親父が経営していた店は【ロードレア武具工房】という名前だったか。ラスティには参考までに伝えておく。

「なるほど。となるとお前さんは鍛冶屋を開くつもりなのか。…まあ、いいんじゃないか?あんたのネームバリューはなかなかのもんだ。剣聖の営む鍛冶屋ってのも話題になるだろうしな」

だが、親父の店名をただ継ぐだけというのも味気ない。店を経営するのは自分なのだから、好きにさせてもらおう。
ステラは数秒の間熟慮し、満足げに頷いてチラシ裏に店名を記載した。
【ステラズ-スミス-ショップ】。略してSSS。我ながら悪くない。隠しきれないセンスがキラリと光るいい名前だ。これには地獄の親父も感涙していること間違いなし。

「えぇ…。その名前でやっちゃうのか…。本人が良いならそれでいいか。解った。じゃあそこに荷物は運んでおくよ」

半ば投げやりになったラスティに、ステラは微笑で答える。彼とは楽しくやっていけそうな気がする。
たまにはこういった付き合いを増やすのも悪くない。暇な時にまた来ると告げると、ラスティは軽く手を振って部屋を後にした。

☆は昼、★は夜に選択できる行動です。散策先はいただいたキャラ安価等を参考に随時増えていきます。設定をまとめ終えたが増えたりもします。
また、外郭区を散策する、中枢区でチラシを配る等の選択肢に無い行動もある程度は可能です。その際は散策を選んだ上でその内容を記載してください。

4/9 夜 

下2 何をしようか?

☆A:鍛造 従業員に武器を作ってもらいます。
☆★B:交流 他のキャラクター一名と交流します。
☆★C:散策 コンスティア内を散策します。新しい出会いがあるかもしれません。
☆D:購入 鍛造用の金属等を購入します。ラスティ商会へと向かいます。

残金 5,586,000コル→ 4,871,000コル
材料 

汎用金属 効果 なし 価格 7500コル 在庫 30個
ミスリルインゴット 効果 耐久力+20、聖属性付与 価格 30000コル 在庫 10個
煉獄竜素材セット 攻撃力及び耐久力+25、火属性付与、火属性耐性微強化 価格 80000コル 在庫 2個 
氷華のヘアピン 価格 10000コル 在庫 2個
グリフォンの羽根ペン 価格 10000コル 在庫 1個

【知人一覧】
ネージュ 技術力 48 信頼度 0 従業員
サンドラ・シュラーク 技術力 45 信頼度 0 従業員
モニカ 技術力 21 信頼度 0 従業員
ラスティ 信頼度 0 ラスティ商会の支部長
リリカ 信頼度 0 不動産屋の店員

【散策候補】

☆どらごんべーかりー 街で人気のパン屋さん。
☆★桃華薬堂 漢方と呼ばれる薬を取り扱う薬屋。冒険者向けの整骨院も兼任している。
☆★ユースター魔法店 魔法書や魔法薬を取り扱う店。
☆ヤナギ工房 コンスティアでは有名な鍛冶屋。最近新しい弟子を迎えたらしい。
☆ラスティ商会 キャラバン隊を経営する商会。珍しい物も売っている。
☆★スワローズ・ネスト ギルド内に併設されている酒場。年中無休で営業中。

ksk
安価ならBサンドラ

乙です
Bモニカ

B、Cは誰と何をするか、どこで何をするかも併記してくださると助かります。
>>89に書いていることに少し補足です。複数の行動を同時には行えませんが、交流のロケーションとして散策候補等に向かうことは可能です。
例えばネージュとヤナギ工房を視察する、サンドラとギルドに顔を出す等です。この場合はロケーションとして選ばれた場所のイベントは進みません。

↓1 モニカと何をしようか?

更新に今気づきました

>>117の内容はモニカとユースター魔法店に行ってみるでお願いします

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