キノエダ「俺は木の枝だ」 (3)
ある道の脇に植えられた木の先で、俺は風に揺られていた。
風がとてもきもちぃんだなあ
あ、どうも俺の名前はキノエダだ。
いつもたくさんの通行人のうえで風を起こして涼しくさせてんだ。
こんなふうにな!
上下に身を揺らして風を起こしてやると、通行人は涼しそうな顔をしながら通り過ぎる。
それはまるで温泉帰りの開放感に浸っているような顔だ。
あぁ、いやされるぅ、涼しい~、と。
「俺も涼しくさせてるんだぞ、キノエダ」
隣から声がするので見ると、そいつは口角をやや上げ、調子のいい顔で俺を見ていた。
こいつの名はコンソンだ。
茶色の胴体にところどころ黒い点が混じっており、奇妙にも枝先の頭の方はとんがり帽子を被ったように曲がった形をしている。ちなみに、俺よりも胴体が太くて長い。
「今日パ◯ツなにいろ?」
聞くと、コンソンは「お前のその手の話には付き合ってられん」とそっぽを向く。
「おい、Mr.コンソン!」俺はコンソンに呼びかけた。
今日は面白いことを思いついたんだよ。
コンソンは、何だ、と振り返る。いいか、聞いて驚け。
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「もっと体を揺らすと、大きな風が起こってさらに通行人を涼しくすることができるんだぜ」
「ほう、やってみろ」コンソンも興味深そうだ。いいぜ。よく見とけよ。
通行人が歩いてくるのが見えた。よし、お前に決めたぜ。もっと涼しい風をあててやる。
「いくぜ!」
俺は上下に揺らした。これが渾身の力だ。うぉぉぉぉぉ!
体を揺らすと、パキッと折れる音がした。
「アァ!…」
完
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