村人「ま、魔物が襲ってきたぞぉ!」 俺「ふむ、ならば銃で撃ち殺せばいいのでは?」 (381)

村人A「そ、そうか!その手があったか!」

村人B「よし、倉庫からライフルを持って来い!全部撃ち殺すぞ!!」

村人たち『『おーーーーーーーーーーッッ!!!!』』

ガサガサッ

ゴブリン「ガァ……!!」

村人C「! さ、早速来やがった!!」

村人A「撃ち殺せ!!二度とこの村に踏み入れない様に徹底的に潰せぇッ!!」ドドドドドドッ!!

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1622406647

ゴブリンA「ガァ!?」ドサッ

ゴブリンB「グギャァ!!?」ブシャア!!

村人C「よ、よし効いてるぞ!」

村人B「だが敵の数が多過ぎる……!」

村人A「くっ…俺さん、何か良い案はないか!?」

俺「ふむ、バズーカで一掃すれば良いのでは?」

村人A「!! その手があった! おいみんな、倉庫からバズーカを持ってこい!!」

ドガァアアアアアアアアアアアアンッッ!!!!!

ゴブリンたち『『『ゴギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!??』』』

ドサドサドサッ

村人B「はぁ、はぁ……一時はどうなる事やらと思ったが」

村人C「流石俺さんだ!あんたが来てくれて本当に良かった!!」

村人A「今日は宴だな! っと、だが酒の量が足りないな……とはいえもう夕刻だし、都市まで行くのはリスクが高過ぎる………」

俺「ふむ、醸造すれば良いのでは?」

村人A「その手があったか!!!!」

村人C「すげえや俺さん!! すぐに醸造機で酒作ってくるぜ!!」ダダダダダッ

~数ヶ月後~


村人C「よっ若村長!」

村人B「似合ってるな」

村長「はは……まあ俺が村長になれたのも殆ど俺さんのお陰だけどな」

俺「ふむ、まだ公務が残っているのでは?」

村長「おっといけない、確かにそうだったな」

村人B「なら俺たちは邪魔だな、さっさと出t…」

村人D「大変だ!役人の野郎が来やがった!!」ガラッ

村長「なにっ!?」

村人B「待て、確か納税はあと半月後じゃ……」

村人D「よ、予定が早まったらしい! なんでも王が他国に戦争を仕掛けようとしていて、その為の軍資金を調達する為だとか……」

村長「………」

村人C「……どうすんだ、村長?」

村長「ともかく行くしかない。俺さん、着いてきて貰えるか」

役人「はあ? まだ全員払い切れる態勢じゃないィィィィ??」

村長「その通りだ。あと十日あれば全村民が納税出来るだろうが、これだけ早いと数世帯は遅れが出る。ゆえに、そちらの要求は呑めない」

役人「……土人が。粋がってんじゃねえぞ」

ボォッッ!!!!

村人D「ひぇっ…」

役人「オレぁ王立魔導学園を卒業し3年間魔導騎士団に所属してたキャリアがある。てめぇらが納税するしねえは勝手だけどよ、オレのノルマに響くにゃ響くんだわ。………村一個潰したとこで、誰も分かんねえんだぞ?」

村長「………っ!」

役人「おうビビってんなおい? いや良いんだよそれが正常だっての。な、だからよ、怖いんならさっさと納税してくれや? 何もオレは各人がそれぞれ出せっつってる訳じゃねえのよ、てめぇのポケットマネーで支払いしてくれても額面上は一緒だし構わねえんだ」

村長「……………」

役人「ああ、出すならはよ出してくれよ? 導火線は刻々と燃えていってるんだぜ?」ボォォォ....

村長「………分か」

俺「ふむ、払えば良いのでは?」

村長「えっ?」

村人C「……どういうこった、俺さん?」

俺「ふむ、あれを見れば良いのでは?」スッ

ゴブリンの培養管×5000「」

村人B「………? あれがどうし」

役人「!? あ、ありゃ全部ゴブリンか!!?」

村人D「えっ……?」

役人「っおいてめぇ、あのゴブリン全部魔石取ってねえんだろうな!?」ズイッ

村長「ま、魔石?」

役人「その様子なら取ってねえみてえだな……! よし、あれ全部オレに寄越せ! したら今回どころかこの先半年は取り立てに来ねえでやる」

村長「な、なに……?」

村人B「………いや、いつだったか聞いた事がある。全ての魔物の体内には大なり小なり魔石という資源物質が存在していて、それは王都にある研究施設でエネルギー変換する事で別の汎用エネルギーと化すと」

役人「その通りだ。んでここにあるゴブリン分なら……そうさな、おおよそ60万Gになる。てめぇらが毎月払うのが10万だから、今回除いて半年分取り立てる必要がなくなんだよ」

村長「そ、そうなのか……!」

村人C「…いいのかよ、んな事俺らに教えて? 俺らは搾取対象なんじゃねえのか?」

役人「オレだって別にイラつきゃしなかったら悪事を為そうとまでは思わねえよ。だいたいここまで来んのは来んので交通費が別途かかんだ、節約出来るならそれに越したことはねえ」

村人B「………」

村長「……そうか。その言葉、信じて良いんだな?」

役人「勝手にしろや。ま、何にせよそこの野郎に感謝するこったな」スタスタ

村長「………今回も俺さんに助けられたな」

村人B「俺さんには毎度毎度頭が下がるよ」

村人D「す、凄いな俺さんの機転は…」

村人C「まあ、こんな辺鄙な村に居るのがもったいねえ人材だよなぁ」

村長「余計な発言は置いとくが、本当に俺さんには感謝しているよ。これからも宜しく頼む!」グッ

俺「ふむ、まあ当然なのでは」グッ

~3年後~


役人「おう向こうの新聞だ、買えや」バサッ

村人C「オメーもなんか馴れ馴れしくなってきたな……」

役人「良いじゃねえか、役人と仲良いってのは得だぜ? てめぇらも意地張ってねーで仲良くしよーぜ、な?な?」

村人B「数年前に俺たちを皆殺しにしようとしたのにか?」ハァ

役人「細かい事ァ気にすんじゃねって、だいたいてめぇらんとこの酒を王都に売り出してやって免税させてんのはドコの誰よ? オレだろ? 十分返すもんは返したっての」

村長「まあ、ブランド化させてくれたのには感謝しているけどな」ザッ

俺「」ザッ

村人C「おっ村長、俺さん!」

役人「おー暇んなったのか! 新聞買えよ新聞」

村長「お前の私益になるから嫌なんだがな……」スッ

役人「ほい毎度! おらよ」バサッ

村長「はあ……ん?」

村人B「どうした?」

村長「いや……みんな、手元の新聞の2面を見てくれ」

村人C「どれどれ……はぁ!?」

役人「あ?1面と裏しか見てなかったなそうい……あ?」

村人B「………これは、本当なのか」

村長「………。王国が、近日中に開戦の可能性……」

役人「バカな……有り得ねえ、今の王都は十分潤ってる。やるにしたって経済制裁くれぇだ、わざわざ戦争やって死人を増やすなんざ馬鹿げてるぜ」

村長「………俺さん、この村も何か備えるべきか? 考えを聞きたい」

俺「ふむ、砦を作っては?」

村長「砦か……作る事自体は数時間で可能だが、ただの砦を作っても敵国兵が侵入してきた時に普通に突破される気も」

俺「ふむ、迎撃ミサイルや中近距離用バリスタを備えては?」

村長「なるほど……!!」

役人「ほう……考えやがったな?」

村人C「確かに迎撃物を設置すれば相手も近づけねえな!」

村人B「いや待て、砦の外から攻められたらどうする? 搦手には正直村の兵力だけではどうする事も出来ないぞ」

俺「ふむ、村の外周を全て鋼鉄の壁で囲めば良いのでは?」

村長「それだ!! 流石俺さんだ、今すぐに建ててこよう!!」

村人B「既に考慮済みだったか……よし、俺も微力ながら手伝おう!」

村人「俺も行くぜ!!」

役人「……悪ィがオレは王都に戻るぜ。事の真偽を確かめなくちゃなんねえからな」ザッ

~4日後~


パカラッパカラッ!

役人「ハァハァ……おいてめぇら、ここ開けろ!!」

村人D「あれは……おい、どうする!?」

村人C「開けてやれ!何か情報を持ってきてるかもしれない!」

ガララララ...ガシャアンッ!

役人「おう、大変だ!今日遂に王国が帝国と戦争を開始しやがった!」

村人C「マジか……! 俺さん、すまねぇが村長たち呼んできてくれ! 集会所に集まるぞ!!」

俺「」コク タタタッ

~集会所~


村長「そうか、遂に戦争を……」

村人C「魔王や魔物の脅威もあるってのによ……人類同士争ったって何の益があるんだよ、クソが」

村人B「取り敢えず防衛機構は完成しているが、これからどうするんだ?」

役人「つってもまあ、どうもこうもねえだろ。別にてめぇらは兵隊じゃねえ、これまで通り土いじって酒作って暮らせば良いと思うけどな」

村長「目下は役人の奴の言う通りだ。これまで通り危機があれば対処するが、なければ特に動きたくはない。変に村民を動かしてもストレスになるだけだし、何より女子供には“戦争”を意識させたくないからな…」

村人C「そういえば、今王都はどうなってんだ?」

役人「知らね。ただ開戦には都民全員賛意を表してやがってるぜ? 全員狂った見てーにワーワー騒いでやがった、自分が死ぬかもしんねってのに何が面白いんだかな」

俺「ふむ、交易も停止せざるを得ないのでは?」

村長「そういえばそうだな……悪いが役人、暫く酒の取引は中止させてくれ」

役人「そもそももうオレ王都帰んねーから。あんなやべーとこ終戦しねえ限り戻りたくねえよ、真っ先に狙われっだろ敵国の首都なんか」

村人B「………お前、公務員だろ?」

役人「そっすね、で?」

村長「……まあ良い。当座の話は纏まったし、一旦ここは解散しよう」

……………
………


ザッザッザッザッ...


俺「」パチ

役人「………てめぇも気付いたか?」

俺「」コク

役人「大軍だなこりゃ。万は超えてるかもしんねえ」

俺「ふむ、皆を起こすべきでは?」ボソッ

役人「そうだな、男手だけは起こしとこうや」

村人D「んん……? こんな深夜に何の話だ?」

村長「………何となく察しは付くが」

役人「たぶん、帝国兵が夜通しで王都か大都市辺りに向かってやがる。でこの村ん近くを通過してる」

村人B「何故分かる?」

村人C「うんにゃ、よぉく耳澄ませろ。確かに聞こえるぜ、足音がな……」

俺「ふむ、櫓に登って詳細を確認すべきでは?」

村長「ああ、こちらに近付いているとかであれば不味い」

村人C「よし、ここは俺が行くぜ。これでもガキんちょの頃は村一番の野生児で通ってたかんな、視力はお前らよか良い」

村長「いいのか?」

村人C「俺は大飯食らいだかんな、こういう時くらいは率先して役に立たせてくれよ」

村人B「無理はするなよ……確か魔法の一種に感知魔法というのがある、相手に感づかれたら弩辺りで蜂の巣だぞ」

役人「一応妨害魔法付与させとく……が、オレもかなりブランクがある。精々無効化出来ても中級下位辺りの魔法までだと思っとけ」パァァ...

村人C「おう。…じゃ、行ってくるぜ」

グッ グッ グッ ズイッ

村人C(敵軍影はっと……)キョロキョロ

村人C(…………)

村人C(!)


帝国兵『』ザッザッザッザッ

帝国兵『』ザッザッザッザッ

帝国兵『』ザッザッザッザッ

帝国兵『』ザッザッザッザッ

帝国兵『』ザッザッザッザッ


村人C「…………」

スッ

ソロリ

ソロリ...

ガチャ

村長「! 帰ってきたか……!」

村人D「ど、どうだった?」

村人C「……ぶっちゃけやべーぞあの数は。王国軍がどんくらいかは知らねぇけど、都市の2つ3つくらいなら余裕で陥せるぜ」

村人B「おおよそで良い、数はどの程度だ?」

村人C「5万、あるいはそれ以上。あとこっちには向かってきてなかったぜ」

村長「そうか……いや、本当に良かった。ありがとうな、調べてきてくれて」

役人「……王都の常駐騎士団も同数くれえだな。とはいえ都市それぞれは1万以下だ、練度にもよるがまともにぶつかり合えば王国は大ダメージを受けっだろな」

俺「ふむ、この後は趨勢を見守るだけでは?」

村人B「そうなるな。別に俺たちに出来る事がある訳でもないし、そも王国自体命を捨ててまで守る気概もないしな…」

村長「もうすぐ冬だし、積雪対策にも傾注しなくてはならないのもある。この村は山間部にあるから吹雪けばその影響がダイレクトに表れやすいのがキツいな」

村人C「屋根にめちゃくちゃ積もっちまうのはなあ……それ以外はなんだかんだどうとでもなるんだけどよ」

俺「ふむ、屋根全てにカイロを敷けば良いのでは?」

村長「積雪対策も完了したところで今年の冬は特にやる事がなくなってしまったな……」

役人「まあ、心配し過ぎてもしょうがねえわな。戦争終了まで待ちの姿勢で居るっきゃねえ」

村人B「とはいえ、どれだけ続くかな……あまり長引かなければ良いんだが」

~1年後~


村人B「お前もなんというか、ここの住民が板に付いてきたな」

役人「そりゃ丸一年ここで過ごしてんだからそうなっだろ」

村人B「しかし戦争もどれだけ続くのか…たまに来る商人は未だに継戦状態としか話してくれないし、いまいち状況が分からない」

俺「」スッ

村人B「ん?」

役人「アレは……噂をすればってヤツか」

商人「ふう…」

役人「おうオッサン、何してんだ?」

商人「ん?あなたがたは……」

村人B「ここの村民です」

商人「ああ、こちらの……いえ休憩してましてね、明明後日辺りには帝国着かなきゃならないんで大変ですよ」

役人「帝国だぁ? ンでだよ」

商人「え、何でって………あぁまあ、商人じゃなければ分かりませんか。最近帝国が王都を陥としたらしいんですよ、界隈内では有名です」

役人「はっ?」

村人B「な……!?」

役人「それ、マジで言ってんのか?」

商人「大マジですよ、だから戦勝国の帝国に行って先に身の安全を確保しておきたいなと思ってる訳です」

村人B「………これは」ボソッ

商人「皆さんも国外脱出考えたほうがいいですよ? 幸いこの村は豊かそうですし、今すぐに十分な飲食料を持って逃げれば大丈夫でしょう」

役人「王国は確実に負けたっつう事か?」

商人「確実かは、分かんないですけど。でも王都が陥ちたって事はそういう事でしょう? ……と、そろそろ宿探さなきゃですのでこれにて失礼しますね。では」

村長「確かなんだな?」

村人B「言伝だ、正確性には欠ける……けれど、否定するソースもない」

俺「ふむ、テレビで確認すれば良いのでは?」

村長「おお、その手があったな! よし、早速テレビを付けよう」ピッ

TV『速報です! 現在まで続いていた王国と帝国の戦争ですが、首都陥落と複数都市の占拠を受け王国側が降伏を宣言しました! 速報です、王国と帝国の戦争が終了し王国が降伏、帝国の勝利に終わりました!!』

村人C「こりゃマジだな…」

村人B「しかし、戦争というのは1年少しで終わる様なものなんだな」

役人「王もアホだな……何もしなけりゃ経済大国になれたってのに調子乗って国力落として、挙句敗戦しちゃ無能どこっか基地外だろうよ」

村長「領土拡大はされているのか? 不安だな……」

村人C「へ? 何で」

村人B「この村も拡大された領土に入っていたら厄介だろ? 所詮は単なるいち農村だし万が一という程度だが、帝国からの接触も有り得るという事なのだから」

村長「………。何も無いと、いいんだけどな」

~半年後~


帝国兵長「………な、なんだこの砦は?」

帝国兵「この村の防衛機構の模様です。迎撃兵器等が設置されております」

帝国兵長「村? ならここが目的地という事か?」

帝国兵「その通りです。醸造技術に長け高い防衛能力を特徴としている農村との事でしたので、こちらしか有り得ぬかと」

帝国兵長「……ま、まあ良い。入るか」

コンコンッ

帝国兵長「あー……元王国国民の諸君、我々は帝国兵だ。王国との和解条約により領土の一部を割譲された結果、この村もその範疇にある事が分かった。従って以降の納税対象の変更についてなど諸々の説明をせねばならない、開門を願いたい」

……………。

ガララララ...

帝国兵長「………おお?」

村長「………」

俺「」

帝国兵長「お前さんが村長か?」

村長「いかにも。先程仰られた事についてお話しましょう、集会所の方に来て頂きたい」

帝国兵長「……若いな」

村長「よく言われますよ…さあ、こちらへ」スタスタ

俺「」スタスタ

帝国兵長(………こいつは誰だ?)

帝国兵長「……という事だ」

村長「つまり税率は王国時代と大差ないと?」

帝国兵長「それに加えてこちらは帝国から見て辺境だ、特産品の定期献上も不要になる。代わりに帝国兵の常駐もないが……」

村長「そちらに関しては問題ありません」

帝国兵長「そうか。まあ、あの砦があればそうだろうな」

村長「では話は終わりという事で」

帝国兵長「だな。いや、円滑に話を進められて助かった」

村長「こちらこそ。馬車を手配しておきましょう、帝都行きで?」

帝国兵長「ああいや、他の村にも行かねばならないからな。手配するなら……そうだな、この村は酒が名産品なんだろう? 酒が欲しいね」

村長「ああ、もちろん良いですとも。というか最近交易をストップしていましたので余り気味なんですよ、どんどん貰って行って下さい」

帝国兵長「ハハ、そりゃ嬉しいな」

帝国兵「兵長、そろそろ時間です」

帝国兵長「おっと、もうか。ではな」

村長「な、なんとか乗り切った……」

村人C「はっは、やるじゃねぇか! ちゃんと村長やれてたぜ!」

村人B「対等に交渉出来ていたな。非常に頼もしかったぞ」

役人「まあ、こうなりゃしばらくは動乱も何もねえだろ。また元の平和な時代が続く筈だ」

村長「そうなると嬉しいな。魔王も最近は息を潜めているという話だし、俺さんや皆の力があればこの村は安泰を貫けるだろう」

村人C「んじゃ早速一杯呷ろうぜ!今日は平和記念日だ!」

役人「てめぇの一杯は”いっぱい“だろーが」

村長「まあいいじゃないか、今日くらい俺も弾けるぞ? さ、俺さんも一緒に呑……」

俺「ふむ、既に酒瓶は大量にあるのでは?」ズラッ

村長「俺さんはああ見えて抜け目がないな……」ハハ

村人B「俺さんも楽しみにしていたって事か。何だか嬉しいな」

村人C「うっしゃ今日はここで呑むぞォ!! 呑んで呑んで呑んで呑みまくろうやァ!!」

ワイワイ

ガヤガヤ...

~50年後~


俺「」

村長「……そんな顔しなさるな、俺さん。儂ゃ十分生きたよ」

俺「」

村長「…………。あいつらも逝って、役人も逝って、残ったのは俺さんと儂だけだ」

俺「」

村長「5人で過ごした日々は、ほんとうに楽しかった」

村長「儂は、今日が峠じゃろう。けれど、儂が言える事、教えられる事は全て息子に伝えてある……特に『クズになるな』、という事をな」

俺「」

村長「………俺さんは、変わらんな。髪の色も、雰囲気も……見た目も」

俺「」

村長「儂もな、莫迦じゃあない。俺さんが『特別』な人だというのは分かっておった」

村長「けれど、俺さんは自分の特異性をひけらかさなかった。優秀さを嵩に着て誰かをいじめたりもしなかったし、いつも皆を立てていた」

村長「儂は思ったよ。俺さんは特別なだけではない、誰かの為に思いやれる人間なんだとね」

村長「これだけ良い人を儂は、知らなかった。……俺さんの様に何でも出来て、それでいて人の為に生きられる人間は、この世の中には数えるほどしかいないじゃろう」

村長「だからね、儂は死が怖くないよ。俺さんさえ居れば、全てが上手くいくのが分かっているからな」ニカッ

俺「」

村長「………」

村長「いや、それでもひとつだけ、怖い事があった」

俺「」

村長「……もう5人で過ごせる日々はないという事が、怖くて、嫌で、悲しくて………」



村長「辛い、なぁ………」



俺「」

ガチャ

息子「………親父は、どうなったんだ?」

俺「」フルフル

息子「…………。そうか」

息子「……いや、分かってた事だ。人はいつか死ぬし、それを避ける事は出来ないものな」

息子「俺さん」

俺「」

息子「おれ、村長になるよ。……でも1人じゃ何をやるにも限界がある。どうかおれを、傍で支えてくれないか?」

俺「」

息子「………」

俺「」スタスタ

息子「………?」

俺「ふむ、さっさと公務に取り掛かるのでは?」

息子「……! あ、ああ!」タタッ

~1年後~


息子「魔物が?」

村人「ええ、最近凶暴化してるっぽいんですよね……村内に入ってきそうなのはバリスタで殺せるんですけど、村外だとそうも行かなくて」

息子「確かライフルやマシンガンの類いがあったろ。それで掃討出来ないのか?」

村人「最近あいつら逃げる事を学習してますからね…ヒットアンドアウェイというのですか、一度攻撃してきたらすぐ身を隠すんですよ。厄介極まりない」

息子「そうか……分かった、対策を考えておく」

村人「頼みましたよ、新村長」

息子「…って、話なんだが」

俺「ふむ、マイクロ波兵器を使えば良いのでは?」

息子「マイクロ波兵器?」


息子「へぇ……そういうのもあるのか。でもこんなの村になくないか?」

俺「」スッ

息子「ん?倉庫?……もしかして倉庫にあるのか?」

俺「」コク

~倉庫~


電磁波兵器「」

息子「おお……これがマイクロ波兵器か! 親父の言ってた通りだ、確かに俺さんに訊けば最適解を出してくれるな!」

俺「」グッ

息子「よし、早急に砦の上部に設置しよう! 施工の方は大工連中に頼めば良いもんな」

俺「」コクコク

大工「……っと、こんなもんですかい?」

息子「いいんじゃないか? これなら事前に数分程度照射しておけば魔物の動きを止められると思う」

俺「」パチパチ

大工「ガハハ、村長や俺さんに褒められたら大工冥利に尽きますわい! んじゃ、またなんかあればいつでも呼んでくだせえ!」

息子「ああ、その時は頼むぜ!」

???「いや、困るっての……」

息子「ん?」

帝国兵「今日は休暇で来てるんだ、無理なものは無理だっつの」

幼女「でもでも!」

帝国兵「でもじゃないんだよ、いい加減しつこいとちんちん突っ込んで黙らすぞガキ!」

息子「どうした、何かあったのか?」

帝国兵「え? ああ、村長殿ですか。いやはや、どうもこの娘がですね……」

幼女「パパ、ひとりで兎狩りに行ってから帰って来ないの! 森はみんなで行かなくちゃ危ないんでしょ? だから早く助けに行かないとパパが……!!」

息子「一人で……!? 一体何故…」

幼女「……たぶんわたしが今日誕生日だからかもしんない。だから、わたしを驚かそうと思って、わかんないようにひとりで………」

息子「そういう事か……悪い俺さん、武器を調達して貰えるか? あと貴方も、動けるのなら動いて貰いたい。報酬は払うぞ」

帝国兵「…幾らです?」

息子「3500Gでどうだ?」

帝国兵「………まあいいでしょう。それなら旅行分ペイ出来ますし」

息子「おれは人手を集めてくる、君はおうちで待っていてくれ。必ずパパは連れ帰ってみせるからな」

幼女「うん……」

ガサガサッ

ゴブリンたち『『ガァ……!!』』

息子「斉射ぁ!!」

村人「っ!」ドドドドドドッ!!

俺「」ドドドドドドッ!!

ゴブリンA「グギッ!?」ブシャアッ!!

ゴブリンD「ギギッ!」サッ

ゴブリンH「ギィッ!!」ササッ

息子「……本当に学習してるな」

村人「とはいえ、当たりさえすれば殺せはします。その点では安心出来ると思いますね」

帝国兵「………これ、自分の出番はないんじゃないですか?」

息子「取り敢えず兎の生息地に進もう。確か西側方面だったな」

村人「はい」

ザッザッザッ...

息子「………?」スンスン

帝国兵「む……この臭いは」

息子「ああ、帝国兵殿も気付いたか? これ、一体何の…」

帝国兵「血です。恐らくは、大量の獣や魔物の」

息子「………!」

帝国兵「注意して下さい。ここまで臭うという事、ここが山間部の森林である事……2点を考慮する限り、『ヌシ』が居る可能性があります」

村人「………。マイクロ波、あの娘のお父さんが居るにしても照射すれば良かったですね」

ザッザッザッザッ

俺「」ピタッ

帝国兵「………」ピタッ

息子「………どうした?」

帝国兵「よく目を凝らして下さい。あの辺り……大木の辺りです」ボソッ

息子「」ジッ


地竜「zzz...」


息子「ッ……!!?」

帝国兵「竜種です……体色から鑑みるに地竜でしょうか。魔法は使いませんが、筋力は物凄いですよ」

息子「……銃は効くのか?」

帝国兵「バズーカなら確実に効くでしょうが、ライフルやマシンガンでは時間が掛かるかと。だからと言って剣に魔法を付与して斬りかかっても無駄ですが」

息子「………」

帝国兵「それに」チラ

村人「! あ、あれは……」

幼女父「」

息子「っ、遅かったか!」

帝国兵「顔面が潰れて目玉やら脳ミソやらが飛び出てますね……残念ながら、死んでいるでしょう」

息子「くっ…俺さん、何か良い案はないか?」

俺「ふむ、放水ホースを使えば良いのでは?」

息子「放水ホース? な、なぜ? 一応井戸に繋いで持ってきたには持ってきたが……」

帝国兵「いや、それは有効ですよ。地竜は上位の龍種になると鱗が完全防御能力を獲得しますが、その前のままでは乾燥していないと硬度を保てずむしろ蒟蒻の様にふにゃふにゃになります。そこに銃弾をブチ込めば討伐は容易です、地竜が雨の日は現れない事の所以ですね」

息子「そ、そうなのか!?」

帝国兵「ただ注意すべきは、鱗が柔くなるだけで筋力自体に変わりはないという事です。銃で遠距離攻撃を続ける分には結構ですが、近距離まで詰め寄られると一撃で死ねますよ」

息子「……そ、そうか。気を付けてやらないといけないな」

村人「……待って下さい。ここは一旦村に戻り、早馬で帝国に連絡をし救援を待つべきでは? 死人が出る可能性もあるんですよ」

息子「…いや、それは得策ではない。これ以上森に居座られて動物や村民を殺されても困る。何より何もせず帰ってきたら、あの娘に会わせる顔がないよ」

帝国兵「自分もそれに賛成ですね。それに竜殺しを達成すれば国から褒賞を戴けます。放水ホースがあって銃も充分に揃っている今、何もやらないというのは考えられない」

村人「………村長がそう言うならやりますが」

息子「悪いな、埋め合わせはちゃんと考えておくぜ。……俺さん、作戦立案を頼めるか?」

俺「ふむ、包囲陣で行くべきなのでは?」

帝国兵「単純ですが狙いが分散しやすいので良いですね。とはいえ放水役はやや危険ですが」

息子「それはおれがやろう。流石にみんなに啖呵切っといて貢献しないのはどうかと思うしな」

村人「え、いや……でも村長は村長でしょう、そんなリスキーな事は」

息子「大丈夫。その分、みんな1秒でも早く地竜を殺せる様に上手く命中させてくれ」

村人「………分かりました」

息子「じゃあ分散するぞ、地竜に気付かれない様にゆっくり動いてくれ」

帝国兵「位置の把握はどうするのです?」

俺「ふむ、LINEで確認すれば良いのでは?」

村人「そうですね、ただバイブレーションじゃなく音量に切り替えて0にしとく様にしましょう」

息子「よし、行くぞ」

サッ サッ サッ...

地竜「zzzzz......」


息子@村長『各自、位置についたか?』

俺『👍』

村人@低浮上『はい』

てーこくへー『着きました。』

息子@村長『おけ、じゃあ今から放水する、構えとけよ』

俺『👍』

村人@低浮上『りょです』

てーこくへー『了解。』

息子「っ、けぇ!!」

ブシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!

地竜「………!!?」ビクッ!

息子「おおおおおおおおおおおおおお!!!!」

帝国兵「斉射ぁッ!!」ドドドドドドッ!!

村人「く………!!」ドドドドドドッ!!

俺「」ドドドドドドッ!!

地竜「グガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!???」


ビリビリ...


村人「ぐっ、み、耳が……!」ドドドドドドッ!!

帝国兵「怯むな!! 目を逸らさず撃ち損じぬ様集中して下さいッ!!」ドドドドドドッ!!

俺「」ドドドドドドッ!!

地竜「グゥ……ガァアアアアアア!!」バサッ!!

村人「飛んだっ!?」ドドドドドドッ!!

帝国兵「悪足掻きか……!? 照準、逸らさないで下さい!!」ドドドドドドッ!!

地竜「グァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」ギュオオオオッッ!!

帝国兵「………斉射止め、退避!!」バッ!

村人「う、うおおっ」バッ!


息子「良くやった、みんな!!」

息子(………が、)

息子(放水ホースってのはこんなに重いのか、ふざけんな畜生………!!)ギリッ

息子(腕が……どんどん痺れてくる………!!)クラ...

息子「!!!」ガシッ

息子(これ以上、保たない………!!)

息子(まずい……辛い、ヤバい、キツい、痛い……もう無理だ………!!)

地竜「グゥゥゥ………!!!!」

息子(…………もう、諦め……)


村長『いいか、クズにだけはなるなよ。クズになればその名の通り『屑』になるが……クズにさえならなければ、何度だってやり直せるんだからな!』


息子「…………!!!!」

息子(……そうだ………!!)

息子「ここでやめたら………単なるクズだろうがぁあああああああああああああああああああ!!!!!」ブシュゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッッ!!!!!

地竜「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア………!!!??」


グラッ...


ドサァッッ!!

帝国兵「………。対象、沈黙」

村人「……ま、まさか」

帝国兵「我々の勝利です。勝ったんですよ、皆さんね」

息子「………よ、良かったぁ」クラッ

俺「」ガシッ

息子「あ、俺さん…」

俺「」グッ

息子「へ、へへ……」

幼女「………」

息子「……という事なんだ。本当に、すまな」

幼女「あやまらないで。パパも悪いのは……事実だもん」

息子「………だけど、」

幼女「でもね? でも、わたし冒険者になるよ。冒険者になって、ひとりでも生きていける力をつけてみたい。……パパみたいに無茶するひとを、増やしたくないから」

息子「……そうか」

幼女「だから、都会の方に行ってきます。いつか、つよくなったら、またこの村に戻ってきたいと思うんだ」

息子「………そうか…………」

息子「強いな、あの子は」

俺「」コク

息子「あの年齢ならおれの事をぶん殴ったり、癇癪起こすだけ起こして泣き喚くのが当然だよ。俺もあのメンタリティは見習わないとな」

俺「」

息子「……それと俺さん、今回もありがとう。あの帝国兵の人が帝国側に竜殺しの件を報告するらしいから、多分助成金なり褒賞金なりが増えるよ。この村がまた一歩豊かになるんだ」

息子「まあ、俺さんはすごい人だから感謝なんてされ慣れてるかもしれないけど……それでも言わせてもらう、ありがとうな」

俺「」グッ

~2年後~


息子「ほ、本当か!?」

帝国兵長「ええ、遂に通りましたよ。これで村から“町”になりますね、と言ってもまあ小さな宿場町扱いですが」

息子「ハハ……なんだろ、めちゃくちゃ嬉しいや」

帝国兵長「自分も3500Gとボーナス200万Gの上に昇級まであるとは思いませんでしたよ。ま、またたまに休暇に来たりしますのでその際は宜しくお願いしますね」

息子「ああ、もちろん! 」

息子「なあ俺さん聞いたかっ!?」

俺「ふむ、宿場町の事なのでは?」

息子「そうそう! これから居酒屋と宿屋と娯楽施設に飲食店、民間訓練場に書店や町役場も増設して本格的に宿場町としてやってこうと思ってるんだ! ……と言いたいとこなんだけど、元が村だからいかんせん場所が足りないんだよな。どうすりゃいいかな、俺さん?」

俺「ふむ、掘削機を用意すれば良いのでは?」

息子「掘削機? どういう事だ?」

俺「」カキカキ チョイチョイ

息子「?」ズイッ

息子「………! な、なるほど! 地下を利用するのか!」

俺「ふむ、空も利用するべきなのでは?」

息子「高層ビルを建てるって事か! それで中に詰め込めばいいんだな!?」

俺「」コクコク

息子「俺さんやっぱあんた天才だ!思い立ったが吉日だ、すぐに取り掛かるぞ!!」ダダッ

大工「ふう……こんなもんですかねぇ? 急拵えになっちまいましたが」

高層ビル「」

息子「問題ないぞ、良くやった! 給金は親方に渡しといたから受け取っといてくれ!」

大工「おお、どうも。そんじゃこれにて失礼しますわ」スタスタ

息子「いやあ、しかし凄いなあ。この高さに地下分もあるし、するってえとどれくらいあんのかねこれ……」ピコン

息子「ん?LINE?」

俺「」ピコン

息子「あ、俺さんにも来てんのか。なんだろうな」スイッスイッ

帝国公式アカウント『【速報】帝国陸軍が魔王の領域の2都市を奪還しました。我が帝国の士の輝ける栄光はこれより、永劫に語り継がれてゆくことでしょう』

息子「ああ、対魔王軍の…最近は帝国や連邦、王国に公国に都市国家の幾つかが対魔王共同戦線を張ってるんだっけか。まあこんだけの戦力に攻撃されれば流石に魔王軍もキツいよな……」

俺「」コク

息子「とはいっても魔王軍は魔物を使って人類を攻撃したりしてたからな、自業自得といえるかもしれない」

町人「町長、新築ビルの件なんですが~!」

息子「ん? ああ分かった、今行く! じゃあ俺さん、行ってくるよ」

俺「」グッ


………
……………


息子「あー、あの書類ドコやったっけか……」ガサゴソ

コンコン

息子「うん? どうぞ」

ガチャ

帝国兵「町長殿ですか?」

息子「ああ、そうだが……帝国兵の方がどうしてこの場に?」

帝国兵「いえ、少しお頼み事が……」

帝国兵長「そちらは自分の方から説明しましょう」スッ

息子「あ、兵長殿」

帝国兵「へ、兵長? なな、何故ここに?」

帝国兵長「まあ何でもいいだろう? …で、今回の件なんですが。数日前の速報、見ましたよね?」

息子「ああ、2都市奪還の件か?」

帝国兵長「それです。実は1都市目は完全に帝国軍のみで掃討したのでよかったのですが、2都市目が連邦が戦っていたところを終盤に帝国が参戦して勝利を奪取した形になっていましてね……少し揉めているんですよ」

息子「……それで?」

帝国兵長「直截的に言いましょう。戦争とまでは行きませんが、紛争状態になり掛けています」

息子「………」

帝国兵長「はっきり言ってこちらの武器は剣や槍、弩といった古典的なモノでしかありません。それに魔法を付与して一定の威力増幅を叶えているだけです。対して」

息子「いや、言いたい事は何となくわかった。……狙いは、武器類の供出か」

帝国兵長「貴方は聡明だ。その通りです」ニィ

息子「この町のライフルやマシンガン、バズーカやミサイルは他国にない技術だからな……想像は容易だよ」

帝国兵長「なれば、自分を通して交易許可を頂きたい。自分を通せば癒着が出来ますし、自分の立場が上になればこの町及び貴方に対して最大限の協力が可能です。……どうです? 自分と手を組みませんか」

息子「………」

息子「結論から言えば、OKだ」

帝国兵長「」ニタァ

息子「ただ」

帝国兵長「……ただ?」

息子「まず、交易に際してこの町の名を無闇に出さない事。紛争終了の為にここを狙われたら溜まったもんじゃない」

帝国兵長「そうなると名誉上は自分だけが得をする事になりますが?」

息子「構わない。そっちも、融通する時はしてくれるんだろ? それで十分だ」

帝国兵長「それなら諒解です。他には?」

息子「今回の紛争だけでなく常に紛争や戦争が起こった場合、この町を防衛する為の人員を割く事。幾ら武器が豊富でも、町民の身の安全はなるたけ担保されていて欲しい」

帝国兵長「すぐには出来ませんね。今回の武器提供が終了して上に自分が認められたら可能だと思いますが」

息子「それで良い」

帝国兵長「……貴方も案外黒いですね。これ、仮想敵国とはいえ相手国の人民を殺す事を幇助していますよ? 地竜を殺した時は、わりと熱い正義漢かと思ったのですがね」

息子「おれは正義側の人間のつもりだよ。この町の事、この町に住まう人の事を毎日考えている。ただ世の中、清純な事だけで回っちゃいない……なにより、兵長殿だって真っ黒だろ?」

帝国兵長「まあ、そうですね。……いつお渡し可能で?」

息子「別に今日でも良い。倉庫にライフルだけでも30000丁は眠ってるからな」

帝国兵長「そ、そうですか。 …おい、今日の馬車の残り台数調べてこい」ボソッ

帝国兵「あ、はい!」タタッ

帝国兵長「そういえばこれ、あの俺という方には伝えるんですか?」

息子「もちろんだ。俺さんは……否定するかもしれないが、どうにか説得してみせるよ」

帝国兵長「さいですか。まあ、そちらは自分の干渉出来る部分でないので頑張って下さい」

息子「ああ」

息子(………町の発展は少なくとも、町の人間の幸福にはなる。そしてその為の手段や利益が増えるなら、おれのやってる事は……クズ、じゃない筈だ)

~町長邸~


息子「………という事なんだ」

俺「」

息子(………どう出る? 俺さん)

俺「ふむ、悪くないのでは?」

息子「えっ?」

俺「」コテン?

息子「え、いや、なんかこう倫理的にアレだとか、色々……」

俺「ふむ、お前が正しいと思ったのならそれは正しいのでは?」

息子「………おれは、親父の言っていた……クズになっちまった、とも言えるかもしれないだろ?」

俺「ふむ、先代とお前の理念は違うのでは? 先代の正義とお前の正義の根本は性質が違うだけで、最大限自分の守れる存在を守るという点は同じなのでは?」

息子「………俺さん」

俺「ふむ、あまり気にする必要はないのでは? 気にし過ぎてもハゲるだけでは?」

息子「…………」

息子「……はは」

息子「そうかもな。おれも、おれの守りたい奴らを守る為に頑張ってるんだ」

息子「そもそも貧富の差がある時点で、おれたちが頑張った結果蹴落とされる奴も居るんだ……ああ本当だ、気にし過ぎてもダメだよな」

息子「…でもさ、俺さん。おれ、どこかで道を踏み外すかもしれないだろ。今回は……自分の中では正義だと思ってるし、納得しちゃってるけど、いつか本格的に間違える時もあると思う。そん時はどうか、直接ダメだ!って言って欲しいんだ」

息子「頼めるか?」

俺「」

俺「」グッ!

息子「俺さん……ありがとな」


息子(……正直、まだ吹っ切れないけど。俺さんも居るんだ、いつかおれもおれ自身に向き合える時が来るだろう)

息子(その時が早く来る事を、願おう)

~20年後~


帝国中将「お互い老けましたねえ」

息子「ああ。……戦争の進捗はどうなっているんだ?」

帝国中将「依然圧倒的ですよ、当町産の武器は現文明の3歩は先を行っています。鹵獲されども解析なんざ出来やしませんし、最近は敵の魔力に反応して自動破壊される術式も開発しましたからね。出来てもモドキでしょうね」

息子「圧倒的というのは総合的にとかではなく、全方面にという事か?」

帝国中将「そうですよ。王国と都市国家連合は壊滅、連邦と合衆国と魔王軍は虫の息、精々海を隔てている共和国が頑張っているくらいじゃないですか?同じ環境の合衆国があれの時点で時間の問題ですけど」

息子「そうか……」

帝国中将「しかし貴方も無欲ですね、なんだかんだこちらにまだひとつも頼み事してないじゃないですか? 交易による莫大な利益を免税や医療費控除、社会保障に使っているのもそうですが、肝心要の発展もあまり進めていない様ですし」

息子「特に危機もないしな……それに、急に発展させても町民が環境変化に着いていけないのは分かっているからな。遅々としているくらいが丁度いい」

帝国中将「そうですか。じゃあ今日はこの辺で、ここ風俗ありましたっけ?」

息子「入り口から左にある高層ビルの七階奥辺りに店舗が密集している、好きに選べ」

帝国中将「ありがとうございます、早速ちんちん扱かれてきますね」スタスタ ガチャッ

息子「はぁ……」

スタスタスタ

息子「ん? おお、俺さんか」

俺「」ヨッ

スッ

息子「酒か。どうも」

俺「」ヨッコラセ

息子「大陸も変わったな……今や帝国がこの大陸世界全土を統べようか、という所まで来ている」

俺「」

息子「それに生産場も帝都にある訳ではないからな……スパイが来ても作成図なぞ無いし、普通に感知魔法で捕まって何の成果も無くお縄という結果になっている」

俺「」

息子「俺さんのお陰であるのはわかっているが……町長だからかね、なんだか自分が世界を変えてしまった様な気がするよ………無論、いいベクトルにではなくね」

息子「………。いや、湿っぽい話は止そうか。酒呑んでる時に気分暗くしても、な」

俺「」スッ

息子「? …ああ……」

息子「乾杯」

コツン

~帝都~


大臣A「大蔵の方は前年比9.6%増、比例して軍事費も上がる形となるな」

大臣B「にしても中将くん、君は凄いな。何処からアレだけの物を仕入れてくるんだ?」

帝国中将「軍務大臣に聞いてください」

大臣B「その軍務大臣は私だろうが……」

大臣C「さて帝様、如何いたしますかな? 先に共和国を潰しておくか、生意気にも同盟を組んだ合衆国と連邦を潰すか」

帝「………」

帝「魔王軍は、相手にしないのか?」

大臣A「失礼ながら帝様、魔王軍は人類共通の敵です。従って最後まで生かしておけば敵国全てのフラストレーションとなりましょう、今潰滅させるべきものではないかと」

帝「…………。大臣よ、今一度考えてくれ。我々は、人類は……争う必要があるのか?」

帝国大将「」ハァ...

官僚「」ヤレヤレ

大臣B「……帝様、何度も申し上げております通り帝国は現在人口爆発を起こしております。もはや総人口は20年前の10倍、5億人です。これら全てを余裕をもって収容するには、戦争による併呑しか有り得ぬのですよ」

帝「……対話の道は、」

大臣C「皆無です。合衆国や共和国は我々を人種的に差別しておりますし、王国の人間も同様でした。相手から蔑視してくる様な状況でこちらが対話すべきとはどういう事です? 対話というものは互いへの正しき理解があって初めて成立するものですぞ」

帝「………」

大臣A「……今日も帝様はお熱が出ておられる様だ。休養させてはどうか?」

大臣B「異議なし」

大臣C「賛成ですな」

帝「待て、余は……!」

近衛兵『』ザッザッザッ

大臣A「連れて行け」

スッ

近衛兵『』ザッザッザッ

帝国大将「……ふん。だからあのような小娘、列席させる事自体無駄だというに」ボソッ

他帝国中将「しきたりだから仕方ないんじゃないですか。邪魔なら今みたいにどっか行かせば良いのですし」ボソッ

帝国中将(相変わらず可愛くて勃起してしまった……)ボッキッキ


大臣C「………では、同盟そのものではなく連邦のみを叩くので?」

大臣B「が、妥当だろう。合衆国まで行くのはコストが掛かる」

大臣A「確かにな」

……………
………

息子「これは?」

帝国中将「バズーカの弾の大量発注書ですね。威力が高いのでかなり消費するんですよ」

息子「なるほど。分かった、すぐ手配しよう」

帝国中将「どうも。あと、新聞です」バサッ

息子「ん……む!? これは…」

帝国中将「1面にデカデカと載ってますね、『帝国政府、連邦への侵攻を計画中。遂に大国陥落か』。まあ今の帝国の力なら陥落なんて当然ですが」

息子「………」

帝国中将「おや、どうしたんですか顔悪くして? まさか良心の呵責に苛まれてるとかですか?」

息子「……長年付き合って来たんだ、分かっているだろう」

帝国中将「まあそうですね。でも貴方は一度悪魔に魂を売っちゃったんですよ? それならもう貫徹するしかないでしょう」

息子「……………」

帝国中将「まあ、悩むのは勝手ですからいつまでも悩んでていいと思いますけどね。悩まないよりは悩んだ方がのちの決定がより正確に下せるんです。だったらモヤついた事は沢山考えて考えて、考え抜いた末に対処すれば少しは納得して出来ると思いますよ? ズッ友からのアドバイスです」

息子「ああ。………ああ、そうだな……」

~3年後~


帝国中将「もう共和国も連邦も合衆国も全部攻略してしまいましたね。6、7割はこの町のお陰ですよ、ははは」

息子「そういえばお前は、ずっと敬語をやめないな。立場的にはもうおれは、下の下も良いところなのに」

帝国中将「自分にも義理って奴はありますよ。いつだったか町長殿が仰られた長年の付き合いって奴ですか、それも関係してはいますね」

息子「そうか…あとは魔王軍だけだな、自信の程はどうなんだ?」

帝国中将「もう9割9分8厘くらいは制圧済みですし余裕かと。あとは魔王城と城下町を浄化するだけですね、じょうかだけに。ふふ」

息子「……まあ、頑張れよ。死なない様にな」

帝国中将「最後の大仕事くらいは頑張りますよ……久し振りに暴れてやりましょうかね」ニィ


………
……………


火龍「」

巨人「」

オークキング「」

大蛇「」


帝国兵『』チャキッ!

帝国兵『』チャキッ!

帝国兵『』チャキッ!

帝国兵『』チャキッ!

帝国大将A「魔王よ、既に勝敗は決した。残るは貴様だけだ」


魔王「………」

帝国大将B「この屍山血河が築かれるまで耐え切った事には敬意を表そう……しかし帝国はそれを尚上回る。如何に貴様が魔族の王と言われる程の力を持てど、数と技術の前には無力なのだ」

帝国中将(数の暴力過ぎて見てられなかったんだがな)


魔王「……………我は」

魔王「我は、確かに亡びる。だが」スッ


帝国大将A「………む?」


ヴゥンッ!!


帝国大将B「! 総員、魔導術式準備!! 究極防禦式展ッ……」

パチンッ

帝国大将A「………は?」

帝国大将B「………な?」


魔王「…………」

グラッ

ドサッ


帝国大将A「い、今のは……?」

帝国中将「………」

帝国中将「………いや、これは、まさか」

クルッ!!


………
……………


俺「」ピク

スタスタ

チョンチョン

息子「? なんだ、俺さん」

俺「」スッ

息子「外? ………」



ゴォオオオオオオオオオオオオオオオ...!!!!

息子「………は? な、なんだあれは……隕石か!?」

俺「ふむ、核シェルターに避難すべきなのでは?」

息子「っ、すぐに建造しなければ! 1時間あれば足りるか……? いやそんな予測は後だ、俺さん手伝ってくれ!!」

俺「」コクッ


タタタタタッ...

ワーーーーーーー!!
コワイヨーーーー!!
ヒェエエエエエエエエエエ!!?


息子「順番に、順番に入って下さい!中には1億年分の飲食料に外部ビル群と変わらない施設が備わっています!WiFiもエリアごとに備え付けです!!順番ごとに入って下さい!!」


町人A「は、はやく俺を中に入れろォ!!」

町人B「お願いしますっ娘だけでも先に……!!」

町人C「押すんじゃねェ殺すぞ!!?」

町人D「なんだとテメェ死にてえのかァ!!?」


息子(ぐっ、誘導が難しい……!)

ォォォォ...!!


息子「………っ!」

息子(音が間近に聞こえてきた……! この速度だと……もって10分弱!!)

息子「皆さん、どうか理性を保って聴いてください!! 我先にと避難するのはおやめ下さい!! そうすればそうするだけ時間が延びてしまいます!! どうか皆さん、皆さん自身の為にも考えて避難して下さい!!!」

ワーワー!!

ウワァアアアアアアアアアア!!

息子「くっ、ダメか………!!」

スッ

息子「!」

俺「ふむ、拡声器を使えばいいのでは?」

息子「俺さん……良いのか!? 並ばなくて…」

俺「ふむ、お前を置き去りにして生き残ったって意味はないのでは?」

息子「…………ッッ!!!」

グッ

息子(俺さん……あなたは………やはり、凄いよ)

カチッ

息子『皆さん!!動きながらでも良い、どうか聴いて下さい!!!』


ビリビリビリィッッ

町人A「う、うわぁ!? 耳が……」

町人D「な、なんだってんだ……!?」

息子『皆さん、隕石の衝突まで恐らく……あと8分あるかないか!! その中で皆さんが採るべき行動は何ですか!? 争う事か!? 蹴落とし合う事か!? ………違うだろうッ!!!』

息子『“みんなで生き残る事”!! それが皆さんが為すべき事で、皆さんが求める結果なんじゃないのか!!!??』


シーーーーーン...


町人B「……それは」

町人E「確かに………」

息子『おれは……おれは、町長だ! この町を管理し、潤わせ、発展させる事が義務だ! ……もちろんそれだけに時には皆さんを罰したり、条例で拘束したりもした……けど、おれのやった事全ては、私益や保身の為なんかじゃなかった! 常に皆さんを……この町の事を考えてやった事だ!!!』

息子『親父が死んで、村時代からこの町の事を考えて考えて、考え続けていたんだ……だからおれは、皆さんが無為に死ぬなんて許せないし、そんな事が許容される方が間違っていると思う!!』

息子『だから……だから皆さん!! どうかおれの最期の我儘を聞いてくれ………!!』


町人たち『…………』


拡声器「」ガチャンッ!

息子「おれは、皆さんに死んで欲しくないっっ!! だからっ、どうか、どうか………っ、全員、おれの為に、生き残ってくれ!! お願いしますッッ!!!!」ズザァッ!!



町人A「町長………」

町人F「あの小童が……よう、大きくなりおって」ウルッ

町人R「そうだ……町長は確かにあたしらに尽くしてくれた」

町人K「今度は、オレたちが報いる番なんだ……!」


ザッザッザッザッ...

俺「」ポンッ

息子「………」ガバッ...

息子(……みんな、ちゃんと並んでくれている)

息子(……そうか………)

息子「みんなおれの気持ちを、解ってくれたんだな……」

俺「」コクッ


………
……………

町民たち「狭いっての!!」「押すな押すな押すな!!」「漏れる!漏れちゃう!!」「前めちゃくちゃ空いてんじゃねえか!?進めよぉ!!」「先頭がクソデブで無理なんだよ!!」「何でデブが一番前いってんだよ!!」



俺「」

息子「………もう入り切れないな」

俺「」チラ

息子「いや、おれを除いてという話だ。最後の入れそうなスペースは……俺さんが使うべきだ」

俺「ふむ、お前は町長なのでは?」

息子「ははは……確かにおれは町長だが、俺さんはおれ以上に大事な人間だからな」

俺「ふむ、なら犯罪者を一人抜」ビッ

息子「俺さん、それ以上は言わないでくれ。おれは犯罪者だって1人の町民だと思っている……町長たるおれがそれを軽視するような事は出来ない」

ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォ!!!!!!


俺「」ジッ

息子「……良いんだよ俺さん。おれはね、結局帝国の大戦を導いた人間だ……分かっていたんだよ、自分が既に善人ぶったクズだって事を」

息子「中将殿とは良い関係になれたし、町はそれなりに豊かになったが……それとは別に、おれの成した事は罪なき人々を殺す事と同義だ。けれど、もう死んだ命は甦らないし、だからと言ってのうのうと生き続けるなんて………おれの心が許しやしないんだよ」

息子「だから、ほら。俺さんは生きてくれ。そして……おれに、贖罪を果たさせてくれよ」

俺「ふむ、逃げているだけでは? 生きて罪を贖うという形もあるのでは?」

息子「逃げ、なんだろうな。生きて罪を精算するってやり方も………まあ、あるんだろうな。でもな」

ドンッ

俺「」クラッ

ギュムッ

息子「時間、ないみたいだ」ニコッ

ガチャン





ドッゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッッッ

ピコン

帝国臨時アカウント『【速報】帝国東部に隕石が衝突、帝都含む一部都市・町村が消滅』

ピコン

帝国臨時アカウント『帝は別荘で静養されており無事を確認、宰相含む全大臣は死亡を確認』

ピコン

帝国臨時アカウント『帝国は事実上、滅亡しました』

~1年後~


乞食「め、飯を……飯をお恵みくだされぇ………」

麻薬中毒者「ゲヘッゲヘッゲヘッ、イヒ、イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ」

キチガイ「くっ……地球、膣内に射精すぞ!!!!」ドビュッ ベチャ!

死体「」プーン...



俺「」スタスタ

???「あ、あの……」

俺「」クルッ

剣士「その服……えとっ、お母さんの故郷の◯◯村の方じゃないですか? あ、いや、お母さんが出てったあと町になったんだっけ」

俺「」コク

剣士「あ、やっぱり! あの、お母さんそちらに行ってないですか? 最近帝都跡方面も行ってみたんですけど、見つからなくって」

俺「」

俺「」スイッスイッ スッ

剣士「………この、荒地は?」

俺「」

剣士「…………」

剣士「まさか」

俺「」コクリ

剣士「……そう、ですか。……じゃあ、お母さんは、ほんとに………」

俺「」

剣士「………あ、はは。いや、知りたい事は分かったので良いですよ。もうすっかり世紀末になってしまいましたね、お互い死なない様に、頑張っ、て……」クラリ

ガシッ

剣士「あ……」

俺「」グイッ

トコトコ

剣士「……このまま連れてって、えっちする、って事ですか?」

俺「」フルフル

剣士「そうです、か……あの、じゃあ、何処に?」

俺「」クイッ

~宿屋~


剣士「……ごめんなさい。実はその、あの隕石衝突直前お母さんと別れちゃって……それで私、衝突の瞬間には帝都の西部方面に居て。って事は、やっぱりお母さん、もう………って事なのかな、って。それで、私……」

俺「ふむ、お母さんとは25年程前に10歳辺りだった者なのでは?」

剣士「(は、初めて喋った)………た、確かに去年で34だって言ってました。もしかして、面識があるんですか?」

俺「」コク

剣士「そ、そうなんですね! あのあの、じゃあお母さんが行きそうな場所の心当たりとかありませんか!? 私、お母さんとほんとに会いたいんです! じょ、情報なら何でも良いんですっ、お願いしますっ!!」ガバッ

俺「ふむ、魔王討伐メンバーに居たのでは?」

剣士「魔王討伐メンバー……?」

俺「」スイッスイッ スッ

ニコニコ大百科『魔王討伐メンバー(まおうとうばつめんばー)とは; 魔王討伐メンバーとは、魔王城(↗︎)を攻略し魔王(↗︎)を討伐した帝国軍(↗︎)精鋭部隊及び一部の在野募集者の集まりである。後者に関しては単なる民間人という事ではなく、高名な冒険者や実力のある冒険者(↗︎)で構成されていた。魔王の死後は隕石の影響(↗︎)ですぐに散り散りになった。以下、参加した帝国軍の中尉(↗︎)以上と募集者全員の名を記載する……』

剣士「か、貸してくださいっ!!」

俺「」スッ

スイーーーーーーーーーッ...

……

◯◯ “龍殺し”。幼少の頃竜に父を殺され、強くなりたいと願う事となる。25歳の時、女性冒険者のみで構成されたパーティ(↗︎)9人のみで龍を討伐する。世界最強の女性冒険者TOP300(↗︎)において最高163位に選ばれた。現在合衆国首都にて活動中との情報あり。

剣士「…………!! あ、あった……!」

俺「ふむ、生きている模様なのでは?」

剣士「そ、そうっぽいですね! あのほんと、ほんとに助かりました! ありがとうございますっ!!」ペコッ

俺「」ブイ

スタスタ

剣士「えっ、あれ? あの、宿代…」

俺「」グッ

ガチャン

俺「」スタスタ


ドンッ


モヒカン「ってーなコラ……おいゴラテメェ何しとんじゃゴラァ!!?」

俺「」...ペコッ

モヒカン「あ?なんじゃそら、頭下げるだけでこのオレ様が許すとでも思ってんのかゴラァ!!!?」

俺「」ジッ

モヒカン「チッ……テメェの目ぇ気に食わねえなァ。おうゴラテメェ、普段なら10000発ぶん殴って肉塊にするだけで済ましてやっとこだがよ、テメェだけは50000発ぶん殴って肉塊ハンバーグn」ザシュッッ!!

モヒカン「………あ?」

俺「」ピク

ブシュウウウウウウウウウッッ

モヒカン「は……? なん、オレ、頭……ずり落ち…………て?」ズルッ

ブチャアッ!!

俺「」クルッ


剣士「あー良かったぁ、お兄さん大丈夫ですかっ!? 急に出ていくからびっくりしたんですよー」

休憩でぅ

~喫茶店~


剣士「えっと、あのですね……その、さっきのお礼がしたくって。私お金も持ってないし……その、そういう事もちょっとまだ未経験なのでお断りなんですけど、腕は立ちます! ……人殺すのは慣れてるんでそっち方面でも良いんです、何かお礼出来ませんか?」

俺「ふむ、まずは自己紹介からなのでは?」

剣士「あっそうですね! えっと私剣士って言います、お兄さんは…」

俺「ふむ、俺で良いのでは?」

剣士「俺さん、っていうんですね! えとえとお若いですよねっ、もしかしてあんまり歳変わらないとか……?」

俺「」サァ?

剣士「非公開ですか……あはは、まだ好感度が足りないってとこですかね」

俺「」スイスイッ スッ

剣士「ん? え、えと?」

俺「ふむ、俺の目的地はここなんでは」

剣士「合衆国……首都を、少し過ぎたところ? ほ、殆ど同じじゃないですか!」

俺「」コク

剣士「そそ、それならあの、私を護衛に出来ませんか!? もちろんお給金はいらないです、ただ出来ればその、お母さんがいそうな所を通って欲しいなぁ~って……」

俺「」コク

剣士「お、俺さん………!! あ、貴方が神ですか!!!」

~広場~


剣士「えーっとですね、確か合衆国への道は山岳部を越えるルートと港から行くルートで別れてたと思います! ただ海上経路は海賊や海の魔物で溢れてるので、多少は慣れ親しんでる山岳部ルートから行った方が安全だと思います!!」

剣士「あ、っていうか俺さん武器持ってますか? ないんなら私の短剣貸しますけど…」

俺「」ガチャ

剣士「こ、これって帝国軍が使ってたライフル銃じゃないですか!? な、なんでこんなの持ってるんですか!!?」

俺「」サァ?

剣士「そ、それも非公開ですか。割と真面目に気になるので早く好感度上げて訊いてみたいですね…」

剣士(てゆーかこれ本物なら、護衛要らないんじゃ……いやいや、そ、それでも1人旅よりは2人の方が心強いよね! うんそう思っとこ、私!)

トコトコ

剣士「へぇ、お母さんとはそういう形で会ったんですね! …ん? いやいやでも待って下さい、それ歳が合わない様な……」

ガサッ!

剣士「」チャキッ!

俺「」カチャ

野盗A「ほぉ……なかなか観察力高ェじゃねえか」

野盗B「ガキ2人と思って余裕だと思ったが……こりゃ多少面倒かもしんねえな?」

野盗C「へ、いつも通りかかりゃ良いだけだ。さっさとやっちまおう、ぜ!!」バッ!!

野盗A「あが……が…………」

野盗B「ひ、ぎぃ………」ビクビク

剣士「えっとじゃあ……貴方で良いです」グイッ

野盗C「ひっ」

剣士「あの、この辺の地図持ってませんか? あったらお金は取らないであげますよー」

野盗C「もももってねえ!! お、俺らは連邦から来た流れの盗賊なんだよ!!」

剣士「そうですかぁ」ベゴッ

野盗C「がふっ」ダラン

剣士「あ、幾らありましたっ?」

俺「ふむ、1000G程度なのでは?」チャリン

剣士「私は500Gくらいなので、3人で500Gずつ持ってたって事になるんですかね? ……というか野盗ってすっごく汚いんですよね、はやく川でも見つけておてて洗いたいです……」

俺「」コクコク

剣士「それと地図がないので整地されてない場所に出たら一定方向を決めて歩かないとダメですね。途中で商人さんとかと会えれば、写しでも貰えると思うんですけど……この世紀末、商人さんもあんまり居ないですもんねぇ…」

俺「」スイスイッ スッ

剣士「え? ……あ、Googleマップ! た、確かにその手がありました!! 何で気づかなかったんだろ……」ガサゴソ

俺「」チョンチョン バッテン

剣士「へ? あっ、充電切れたら確かにあうとですもんね。確かにこういう峠越えみたいな場合は交互に使った方が良いかもですね!」ポンッ

俺「ふむ、では準備も整ったので行くべきでは?」

剣士「そですね! じゃあれっつらご、です!!」

~夜~


剣士「ふぁぁ……」

俺「」ポンッ

剣士「んぁ? あ、そろそろ交代の時間ですもんね……じゃあ遠慮なく寝させてもらいます、おやすみなさいぃ………」グテリ

俺「」ファサッ

剣士「むにゃむにゃ……」

俺「」

俺「」ボーーー...



息子『時間、ないみたいだ』ニコッ



俺「」


ギリッ


……………
………

チュンチュン


剣士「ふぁれ………?」パチクリ

剣士「…………」

剣士「……えっ、こ、私の交代次4時じゃ……!?」ガバッ

俺「」ヨッ

剣士「え、あ、おはようございます……って俺さんずっと起きてたんですか!?」

俺「」コク

剣士「そんな……遠慮せず言ってくれれば良かったのに」

俺「ふむ、それより朝餉が出来ているのでは?」

剣士「えっ? ……な、何ですかこの茶色いの? 明らかにうん……」

俺「ふむ、何処からどう見てもただの薬膳料理では?」

剣士「………。いや、よくよく嗅げば良い匂いしますし、ほんとに普通の食べ物なのかも……えーいままよ!」パクッ

剣士(あ、おいし…)モグモグ

剣士「ねぇ俺さん、あれなんていうんですか!? 見た目はちょっとうん……ですけど、味も香りも一級品ですよ!! 帝都辺りで流行ってたものですか!!?」

俺「」サァ?

剣士「それくらい好感度関係なく教えてくれたっていいじゃないですかぁ!!」プクー!

俺「」...ピタ

剣士「んへっ? え、何かありました?」

俺「」ジッ

商人「ひぃいいい!こ、殺せ!早く殺せぇ!!」

護衛冒険者「黙ってろ!今必死で戦っt」

オーク「ゴァァ!!!」ドゴォ!!

護衛冒険者「ぶふぉッ!!?」ドサァッッ!

商人「ひ、ひぇえええええええええええええっっ!!!??」

剣士「あー……どうしますか? その、個人的には干渉せずに待ってから身剥ぎがいいと思いますけど」

俺「」コクッ

剣士「あはは、俺さんはちゃんとこういうとこ分かってくれるので好きです。たまに居ますからねー、こんな時代でも夢見る人って……」


ウワァアアアアアアアアアアアアア!!!??

商人「」

護衛冒険者「」

剣士「あぁ……傷口は直視しない様にして下さいね、色々と……えっと、垂れてますから」

俺「」コク

ガサゴソ...

剣士「んと、そちらどうでしたか?」

俺「」ス

剣士「携帯食料と魔石ですか。後者は非常時の換金用ぽいですね、大きさがだいたい2000Gくらいのそれですし。あとは……あ、その剣質悪いです。捨てて良いですよ」

俺「」ポイッ

剣士「ちなみに私は宝石数点と魔石1万G分、幾らかのドライフルーツや携帯調味料をゲットしました! 結構いい感じの収穫ですねっ」フンス


………
……………

剣士「うー……そろそろ夕刻ですねぇ、どうしますか? もう野宿しますか?」

俺「ふむ、もう少しで下山先の町に着くのでは?」スッ

剣士「あ、確かに。じゃあちょっと早めに行きますかっ、また俺さんに負担掛けさせる訳にもいかないですしね!」

タッタッタッ...

~宿場町~


剣士「はぁぁ~~~~、ぎりっぎり夜になる前に着けましたねぇ、宿……」グデーン

俺「ふむ、チェックインは俺に任せてお前は休養すべきでは?」

剣士「申し訳ないけどお任せしますぅ~……」ヨロヨロ

俺「」フリフリ

滅茶苦茶面白い

長編でも大歓迎

コケコッコーーーーーーー!!


剣士「おっはよーございますっっ!!」ビシッ!

俺「」ヨッ

剣士「今日も快晴で気持ちがいいですね! 何時ごろ出ますか?」

俺「ふむ、10時ごろが良いのでは?」

剣士「じゃあそうしましょ! ご飯食べたら私は替えのお洋服買ってくるので、門のとこで待ち合わせでお願いしますね!」

俺「」グッ

剣士「そういえばこの先、確か比較的治安が良くて景気も良い都市があるんですよね! お母さんに会う事も大事ですけれど、正直ちょっぴり観光とかしてみたくなっちゃいますよね……えへへ」テクテク

俺「ふむ、ならば観光すれば良いのでは?」

剣士「へっ!? え、でも……俺さんの目的って、時間とか…」

俺「」フリフリ

剣士「…そ、そうですか? あの、じゃあ……ちょっと観光気分味わっちゃいましょっか、ふへへ」ニマニマ

~1ヶ月後~


剣士「着きましたぁっ!! ここが前紹介してたとこです!! 海もあってお店もいっぱいあって、このご時世じゃ女の子にとっては天国みたいな場所ですよっ!!」ピョンピョンッ

俺「」スタスタ

剣士「………え? え、ちょ、俺さんどこいくんですか!?」

俺「」キョトン?

剣士「いやいや俺さんも一緒に居なくちゃダメですよっ! 1人じゃ流石につまんないかもですし、それに女の子1人にするのはだめ……ってゆーか私がかわいそーじゃないですか!!」

俺「ふむ、女性の買い物は長いのでは?」

剣士「いやまあそれはそうかもしんないですけど!! ……と、とにかく着いてきて下さいよっ!! 寂しいじゃないですか1人って!!!」

俺「」...コクッ

おっさん「焼き鳥売ってるよーー!! 二度漬けオッケーだよーーーー!!」

おばちゃん「さあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!! 獲りたて新鮮なお魚がたっぷりあるわよ~~!!」

ガキ「大麻売ってまーす! 地域最安値ですよー!!今が買い時でーーーす!! 」


剣士「わぁ……ほんとにお店がいっぱいですね! どれもこれも普通の街じゃ見かけない様なものばっかりですっ!!」

俺「」ムシャムシャ

剣士「て俺さんもうなんか食べてるんですかっ!? 早過ぎですよ!!」

俺「ふむ、もしかすると欲しいのでは?」ホイ

剣士「え、い、良いんですか? …じゃああの、遠慮なく」パクッ


………
……………


剣士「た、食べ過ぎました……今日は動けましぇん………うぷっ」

俺「」スリスリ

剣士「ど、どうも……あぁ、手当たり次第食べてたのがまずかったんですかね……申し訳ないんですけど、今日はちょっとお休みを………」

俺「」コク

~ホテル~


剣士「じゃあ私はちょっと本でも見ながら横になってますので……俺さんはこれからどうするんですか?」

俺「ふむ、適当に散歩するのでは」

剣士「そですか。まぁ、なんだかんだ言ってあれだけ賑やかなら1人で散歩するだけでも面白いと思います! 楽しんでって下さいねっ」

俺「」グッ

スタスタ ガチャン

俺「」

プルルルル...

ピッ

元帝国中将『貴方ですか。今回も来るんですか?』

俺「ふむ、来ないというのは考えられないのでは?」

元帝国中将『そうですか。まあ、来てくれるのならそれは嬉しいんですけど』

元帝国中将『ただそれとは別に、今度の個体に限っては殺人歴が皆無です。先代より村や町の長の傍で仕えてきた貴方です、汚い部分は数多く見てきたのでしょうけど……今回は、本当の意味で手を汚す事となります。それを理解した上で参画するのですか?』

俺「」コクッ

元帝国中将『今相槌打ちました? あぁいえ、沈黙だろうが肯定の証ですよね。……目標は既にお伝えした通り、合衆国首都からやや北上した所に潜伏しています。既に”子どもたち“は我々で5体ほど殺しましたが…今回は混血なのでね、今までに前例がない。万全には万全を期すべきです』

元帝国中将『………貴方も私も、同じ者の手により町長殿という友を喪った者です。やるからには、必ずや仕留めましょう』

元帝国中将『魔王の子どもたちを、ね』

俺「」...コクリ

~翌日~


剣士「今日こそはちゃーんと観光しましょう! お互い食べ過ぎはめっですよ? 昨日の私みたくなったらあうとですからねっ!!」ビシッ!

俺「」コクコク

剣士「そんじゃ行きましょう! どこから行きますか!? やっぱり海ですかね!? あ、あと動物園もあるみたいですよ!! 帝国の瓦解以降魔物だけになっちゃったみたいですけど、それでもみんな従順で人を襲わないらしいですってっ! ねね俺さん、はやく回りましょ!!」グイグイ

俺「ふむ、少しゆっくり行くべきでは?」ズルズル

剣士「何言ってんですか、今日は観光名所もお店も何もかも全部回りますよっ! ほら時間は有限なんですっ、早歩きで行きましょう!!」グイグイ

俺「」ヤレヤレ

~動物園~


タタタタタッ...ピタ!

剣士「あーーっあれ!あれ見てください!! 俺さんあれかわいくないですかっ!? 」

彡(゚)(゚)「おん?」

俺「」フルフル

剣士「そうですか! 私もなんかずっと見てたらむしろ気味悪くなってきました。やっぱりキモいですね!」

彡;(゚)(゚)「!?」

剣士「あ、でもあっち見てください!あっちのはほんとにかわいいですよっ!!」ダダダッ

彡;(゚)(゚)「き、キモい……ワイキモいんか??」

~露天商通り~


剣士「俺さんこっち見て下さい!! このナイフカッコ良くないですかっ!? 機能性も見た目も凄く良くってサイコーですよ!!!」パァァ

露天商「おっ、嬢ちゃんいい目してるね! それねぇ、実は知り合いの鍛冶屋が打ったもんなんだ。………というのも例の隕石事件で逝っちまいやがってね、誰か買ってくれねぇかなと思ってたところでなぁ」

剣士「そうなんですか……あの、じゃあ私買いま」

俺「」ジャラッ

剣士「あ、俺さん……」

露天商「…ほぉ。いや嬢ちゃん、そのあんちゃんに買わせてあげな。それでプレゼントとして貰ってやると良い」ス

剣士「い、良いんですか? 俺さん」

俺「」コクッ スッ

剣士「………っ、ありがとうございます、俺さんっ!!」

~海~


剣士「俺さーん!こっちですよーーー!!」タタタッ

俺「」タッタッタッ

剣士「海にぃ~~~~、だぁ~~~~~いぶっっ!!!!!」バシャーーーーンッ!!

俺「」バシャーーンッ

剣士「ぷはっ………ぶっふっ、俺さん口にカニ付いてますよ! カニ!」

俺「ぴゅみゅ、ゆっへはいへはやふほるへひはろへは?」

剣士「あっははははははははは!!! カニ、カニぃ、っははははははははははは!!!」


………
……………


剣士「あー……楽しかったですねぇ。なんだか童心に帰った様な気分です」

俺「ふむ、荷物の量が多過ぎるのでは?」ドッサリ

剣士「まあ私も持ってるから良いじゃないですか。それにしても……ほんと、今日は楽しかったです! 俺さんと旅出来て本当に良かったと思います! 改めて、あの日の幸運に感謝しなくっちゃですね!!」ニッ

俺「」

俺「」フッ

剣士「あ! 今俺さん初めて笑った! 笑ったでしょ今!! 笑いましたよね!!?」

俺「」サァ?

剣士「絶対笑った!! 笑いましたよ今見たもん私!! にやってした!! ちょっぴり口角が吊り上がってましたよ!!!」


ゼッタイワラッテターーーーーー!!

フム、ソレハオマエノサッカクナノデハ?

チガウモーーーーーーーーン!!

……

~2ヶ月後~


剣士「やっぱり高い馬車は快適ですねー、お尻痛くならないのは素直に嬉しいですっ」

俺「ふむ、次の都市まであと数時間で着くのでは?」スイッ

剣士「あ、そうですね。次は…おお、首都の中継都市です! ここを越えればもう首都ですね! 一月前に合衆国入りしたばかりなのに速いですねぇ」

俺「」コクコク

剣士「ここらへんで私は剣の更新でもしたいと思ってますけど、俺さんは何か予定とかありますか? なければ一泊してそのまま通過しちゃいますけど…」

俺「」フルフル

剣士「そですか! じゃあぱぱっと通り過ぎちゃいましょう!」

~都市内~


剣士「すぴーーーーーーー…………」


元帝国中将『ああ、もう中継都市に入ったんですね。でしたら到着までもう1週間弱と言ったところですか?』

俺「ふむ、その辺りなのでは?」

元帝国中将『意外と速いですね。まあこちらもちょうど成員を集め終えたところです。みな大小の差はあれど高い実力を持つ者たちですよ……決行はきっかり1週間後の日にしたいのですが、可能ですか?』

俺「」コク

元帝国中将『頼みましたよ』

ブツッ

ザーーーーーーーッッ...


剣士「今日は雨ですかー……鍛錬はあんまり出来ないかなぁ」ハァ

俺「ふむ、自重トレーニングをすればいいのでは?」

剣士「まあ今日はそうなりますよね。馬車の中なんで、その辺が限界になりますし」

剣士「……あ、そいえばそろそろちょっとくらい教えてくれてもいいんじゃないですか? 俺さん、わざわざ首都じゃなくて外れたところに行く理由って何なんですか?」

俺「」

俺「ふむ、知り合いがそこにいるからでは」

剣士「知り合い……? 俺さん、帝国の生まれですよね? なのに合衆国に知り合いが居たんですか?」

俺「」コク

剣士「へぇ…交友関係広いんですね俺さん! 俺さん結構寡黙な方だからあんましお友達居ないかと思ってましたっ、てへへ……」

俺「」ジトッ

剣士「………そ、そんな目で見ないで下さいよ! ご、ごめんなさいって、ね? ねっ」

……………
………

~森~


パチパチ...

剣士「………」

俺「」

剣士「時間的には、明日でお別れなんですよね」

俺「」コク

剣士「……この3ヶ月間、楽しかったですね」

俺「」コク

剣士「俺さん……私ね、今までこんなに楽しく過ごしたこと、なかったんですよ」

剣士「昔からお母さんは放任主義で、毎日近くの訓練所に通わされて。もちろんご飯は3食作ってくれたし、遊ぶ時はしっかり遊んでくれたんですけど……それでも、触れ合いの時間って言うんですか、そういうのが私、足りなくって」

剣士「たった3ヶ月。たったの100日足らずです。…私には、この100日足らずの日々が、黄金の様に輝いて見えました」

クルッ

剣士「……俺さん、あのっ!」

俺「ふむ、相手はよく考えて選んだ方がいいのでは?」

剣士「…………」

俺「」

剣士「………私の為を思って言ってくれてるのは分かってます。でも、言うだけなら自由じゃないですか。私、本当に俺さんには感謝してるんですっ」

俺「ふむ、感謝とそれは違うのでは?」

剣士「……俺さんは………私のこと、嫌いですか?」

俺「」フルフル

剣士「だ、だったらっ」

俺「ふむ、お前はまだまだ若いのでは? それゆえに、事物を正しく見れないという事が多々あるのでは?」

剣士「間違ってません。俺さんは絶対、いい人です。断言できます」

俺「ふむ、過ごした日々が短すぎるのでは? 正常な判断が出来ていない可能性の方が高いのでは?」

剣士「………」

剣士「わかりました。……でも、それなら、」


バッ




チュッ

俺「」

剣士「………これくらいは、許して下さい」

俺「」

剣士「……私はもう満足しましたので、俺さんは先に寝て良いですよ」

俺「」

俺「」コクッ

剣士「…………」

剣士「…………」

剣士「これ……フラれちゃった、って事だよね………」

剣士「あはは………」

剣士「あは……は…………」ポロッ

剣士「……………ぅ……っふ……うぅ……」ポロポロポロ...

チュンチュン


俺「」ス

剣士「……これ、なんですか? 手帳?」

俺「ふむ、お前はカレーの作り方を知りたがっていたはずでは?」

剣士「カレー……? …………」

剣士「あっ、あの時からちょくちょく出してくれてたあのうん……みたいな薬膳料理ですかっ!?」

俺「」コクコク

剣士「…はは……昨日のあれがあったっていうのに、これですか……いやまあ、もちろん嬉しいには嬉しいんですけど」

俺「ふむ、カレー以外にも俺の作れる物数種が記載されているのでは?」

剣士「あっほんとだ……わ、このオムライスっていうの美味しそうですねっ」

俺「ふむ、それとあのナイフを俺だと思って持っておくと良いのでは?」

剣士「…………。俺さん」

俺「」ザッ

剣士「あっ……」

俺「」チョイチョイ

剣士「…………」

剣士「……ええ。今、行きますっ!」

~首都~


変態「おっぱいまんこまんこちんこ!!ヘイ!!おっぱいまんこまんこちんこォ!!!!」

狂人「おまんこしょっぱッぴィィィィーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!???? 舐めたらホッケッキョーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!!!! ズッコンバッコンズッコンバッコンチンゲッ!マンゲッ!!」

(´;ω;`)「俺はハゲじゃねぇ……俺はハゲじゃねぇんだッッ!!!!!」


剣士「こ、こっちもかなり荒れてますね……」

俺「」コク

剣士「……いつ、別れますか? その、出来ればもっと一緒に居たいん、ですけど…」

俺「ふむ、せめてお前のお母さんと会うまでは一緒に居てあげるべきでは?」

剣士「!! 俺さんっ……」パァァッ

俺「ふむ、取り敢えずまずは首都内の冒険者が集う所から潰していくべきでは?」

剣士「あ、そうですね! お母さんお酒が好きだったし、おっきなバーや人気のバーとかに居るかもしれません!」

俺「ふむ、とはいえまずは冒険者ギルドから向かうべきでは?」

剣士「そですね! じゃあ早速向かいましょうか!」


剣士(………お母さん、いきなりは会わないでくれると嬉しいな)

~ギルド~


受付嬢「確かに彼女はこの都市で活動していると思いますが……申し訳ありません、ギルド内には居ないですね」

剣士「(ほっ……)あの、でも何時間前に見たとか何日前に見たとかは分かりますか?」

受付嬢「履歴を照合します、少々お待ちを………ああありました、2日前にコボルトの定期駆除作戦に参加した模様です」

剣士「その後どこに行ったとかは……?」

受付嬢「それに関しては不明ですが……ただ彼女はよく訓練場や酒場に居ます。その方面を当たってみるのは如何でしょうか?」

剣士「酒場の方は予想通りですけど、訓練場ですか……先に訓練場を一番大きな所から順々に行きましょうか? 居酒屋さんやバーは数が多過ぎて辛いでしょうし…」

俺「」ピクッ

俺「」クルッ

剣士「? 俺さん、どうかs」


ガキィンッッ!!!!


傭兵「………てめえ、何故あたしの娘とここに居る?」

俺「」ギギギギギッ...!!

剣士「!? お、お母さんっ……!!?」

傭兵「おう愛娘、大丈夫だったか? 待ってろよ、今すぐこいつの素っ首刎ねて殺」

剣士「ま、待ってよ!! その人は、俺さんは悪い人じゃないよっ!! 私をここまで連れてきてくれたんだよっ!!!」

傭兵「なに……?」

俺「」ジッ

傭兵「………」


スッ

傭兵「あんた、どっかで会った事あるな。どこだったかは忘れたが……だいぶ昔の気がするぜ」

俺「ふむ、故郷の村の事を思い出すと良いのでは?」

傭兵「…………」

傭兵「………! 村長に付き従ってた、アイツか。見た目が変わってねえから一瞬ビビったぞ」

剣士「あ、ほんとに会った事あったんだ……」

剣士(ていうか、そしたらつまり何歳なの俺さん……?)

傭兵「…うん、娘も無理矢理言わされてるとかもなさそうだしあたしがミスっちまったっぽいな。いや失敬失敬、マジ悪かった」タハハ

俺「」グッ

傭兵「おっ心広いなあんた。将来大成するぜ……ってしてるかもう」

傭兵「ッと、それと娘よ」クルッ

剣士「あ、はい……?」

ダキッ

剣士「あ……」

傭兵「悪かったな、今まで探してやれなくて。本当に、ごめんな」

剣士「…………うん」グスッ


……………
………

傭兵「……なるほどな。したらあんたはここで別れる形になると?」

俺「」コクッ

剣士「…………」

傭兵「……ん~~??」

傭兵「…ああ、そういう! ハッハッハ、残念だったな娘よ! この人ぁ少なくともあたしがクソガキの頃から村で重役張ってたヤツだぜ、確実に既婚者だろーよ! 諦めとけ!」ガッハッハ

剣士「え………う、嘘? 嘘ですよね、そんな事言ってな…」

俺「ふむ、俺は一度も結婚していると言っていないのでは」

剣士「あ、で、ですよね? はは……」ホッ

傭兵「えっ結婚してねぇの? マジ? 意外なんだが……」

俺「」スッ

剣士「!」

傭兵「ん? もう行くのか? 急ぎの用でもあるってか?」

俺「」コクッ

傭兵「そか。じゃここでお別れだな」

剣士「………」

傭兵「お? どうした娘よ、ンな顔して。告んのか? ん?」

剣士「………ううん、もう言う事は言ったから」

傭兵「おお、そーなのか。じゃあ気持ちよく送り上げてやんねーとな」

剣士「うん」

トコトコ

剣士「俺さん」

俺「」

剣士「………」フゥ

剣士「……ありがとうっ!」

俺「」

俺「」グッッ!!

剣士「……行っちゃった」

傭兵「しゃあねえわな。ま男なんて星の数以上ある訳だ、そう気にするこたねーよ」

剣士「でも……」

傭兵「だぁーらウジウジすんな! お前の見た目は一級品だ、それは親のあたしが保証する! でもな、世の中にはどう足掻いても手に入んねえ男も存在する。ただそれは必ずしも容姿やガタイの良いヤツとは限んねえし、当然これは女にも言える」

傭兵「合わなかっただけなんだよ、お前は。それか向こうの見る目がなかったか。そんだけだ」

剣士「……………」

傭兵「手に入んねえもん見て焦がれたって意味はねえ。それよかやるべきは、現状自分が成長出来る部分を伸ばすこった。そうすりゃもっといい男が寄ってくるかもしんねえし、あの男も振り向いてくれるかもしんねえぞ?」

剣士「そう、かな」

傭兵「そうなんだよ。…つーか飯でも食わねえか? あたしまだ昼食ってねんだよ、久し振りに親娘二人で食おうぜ、な!」

剣士「……あ、いやちょっと待って、お母さんそういえば何で合衆国にずっと居たの? 私が帝国領にいるの、知ってたよね?」

傭兵「ん、ああ……それがなぁ、知り合いにどうしてもって誘われてよ。幾つかちょっとでけぇ依頼受けなくちゃなんなかったんだ、ふるさとにも関係してたしな。で、それが済んだらちゃーんと探しに行こうと思ってたんだぜ?」

剣士「えっと、その大きな依頼って?」

傭兵「あー……言っていいのかこれ? いやまあ家族だから良いか、つーのもさ……」

~テント群~


元帝国中将「お待ちしてましたよ。……相変わらず、若々しい風貌ですね」

俺「ふむ、まだ少ないのでは?」

元帝国中将「普段は首都で過ごして貰ってますから。ここでずっと過ごすのも退屈でしょう」

元帝国中将「あと俺さん、弾先に買っても良いですかね? 可能なら点検めんどいんでライフルと拳銃の方の交換もお願いしたいんですが」

俺「」ガチャガチャッ スッ

元帝国中将「どうも。弾は…」

俺「」スッ

元帝国中将「ありがとうございます。いやあ、それにしても世の中もだいぶ変わってしまいましたねえ」ガチャコンッ

元帝国中将「帝国以外が全て死に体の状況だったのを、最後の最後魔王の魔法で首脳部をやられ帝国すらブチ壊されたんですからね。世紀末になるのも当然と言えば当然ですか」

元帝国中将「まあ、腕力に物言わせてそこいらの幼女を衆人環視の中強姦出来る様にもなったので単に悪化しただけとは言いませんけど。……いやもちろん町長殿が殺された事の方がデカいですからね、それ込みでも魔王に感謝なんかしませんよ?」

俺「ふむ、お前結構クズなのでは?」

元帝国中将「分かりきってた事でしょうに。というか自分は確か、ファーストコンタクトが金と引き換えに地竜を討伐するとかそんな形だったでしょう? だいぶ昔からクズだったって事ですね」

俺「」ハァ

元帝国中将「そうため息なんかつかないでくださいよ。……ああそうそう、これメンバーの数と名前です。作戦内容等もそちらの用紙に記載してあるので、よく読み込んでおいて下さいね」スッ

俺「」コク

元帝国中将「それでは自分は失礼しますよ。もう40半ばですからね、最近体にガタがきてて本当にきついですよ……」スタスタ

俺「」ペラ


作戦参加者;
重戦士
ハゲ
……


デブ
傭兵
弓士


……


俺「」

俺「」ペラ

~決行日~


元帝国中将「さて、全員集まったか? ……よし、欠ける事なく全員集合している様だな」


傭兵「……あんた」

俺「」ヨッ

傭兵「そこそこ腕は立つと思ったけどよ……まさかこんな危険な作戦に参加するとはなあ。あの子、お前が死んだって知れば悲しむぜ?」

俺「」

傭兵「は、死なんて微塵も考えてねぇって顔だな。ま良いんじゃねえの、そういうヤツのが生き残る事も多々ある」

元帝国中将「……ではこれより、作戦内容の再説明を行う。手元の用紙を見て欲しい」ペラ


俺「」ペラ

傭兵「」ペラッ


元帝国中将「今回行うのは洋館への急襲だ。非常に強い結界が張ってある為に普段こそ侵入出来ないが、ここに集まった70余名の内29人が魔術師、更にその内12名が高名な実力者だ。30近くの高密度の魔法攻撃を喰らえば、流石の魔王の子の張った結界とて崩壊するだろう」

(´・ω・`)「質問。敵戦力はどの程度よ?」

元帝国中将「魔王の子とそれらを護らんとする準四天王クラスが2体、あとは有象無象が40以上。魔力感知で得た情報なので精度は保証しない、最低限この程度であると思ってくれ」

筋肉男「うーむ、その準四天王程度っていうのはよく分からんな。どれくらいの実力なんだ?」

元帝国中将「亜龍と龍の境目程度だと思えば良い。非常に厄介だがこの場に集っている者たちならば対処は出来る程度のはずだ」

フード男「……報酬については確と払えるのだろうな?」

元帝国中将「無論だ、我々にはスポンサーが付いている。この混沌の時代を生き残る程の富豪たちだ、金を出し惜しむという事はないだろう」

フード男「ふん、ならば良い」

元帝国中将「他に質疑等ないか? ………なければ突入時の行動内容を説明するが、まず各自先程配られたアサルトライフルとスマートフォンを肌身離さず持っていてくれ。前者は魔法を込められる人間は込めて攻撃する事、後者は所持していない人間の為に一応配給しておく事とする。ちなみに通信料金は来月分までしか払っていないので留意しておく様に」

元帝国中将「では本旨に移る、最初は結界を破壊する為の人員29人と万が一の為の入り口-結界付近を見張る役8人を配置。残りの35+α人で洋館内に侵入、うち気配察知に長けた者5人が斥候役を務めて貰う。ただし敵が既に臨戦態勢であり、布陣を何らかの形で展開していた場合は総員攻撃を開始する事。魔術師の仕事は他の人員に遠距離攻撃手段がある為に結界破壊で終えても良いが、当然やる気があるのなら以後の作戦に加わっても良い」

元帝国中将「とはいえ重傷を負ってもその場で治療される訳ではない事を理解しておけ。制圧がなによりも最優先だ、戦闘可能人員が殺傷問わず15を切らない限りこちらが退却する事はない。…洋館内は感知魔法での空間把握によると3階建てに30程度の空間が点在する事が判明している、どの階も10室構成だ。地下の存在も考慮し1階のみ最低15人配置とするが、2、3階は10人程度で探索を行え。会敵した場合は臨機応変に対応、不味いと思えば素直に助けを求めろ。作戦に支障を来たさず目的を遂行する事を第一に考えてくれ。ここまでで質問は?」

重戦士「結界付近の見張りが多過ぎる気がするが?」

元帝国中将「洋館周辺は別個に魔物が出現する事に加え既に夕刻である事、精鋭揃いとはいえあの質の結界を破壊するとなれば疲労する者も居る事も予想される。そう言った者の警護の意味でも8人は多くはないと言える筈だ。他にはあるか?」

シーン...

元帝国中将「そうか。では突入を開始する……各員の幸運を祈るぞ」

ザッザッザッ...


元帝国中将「ああ俺さん、貴方と自分は3階ですよ」ボソッ

俺「ふむ、3階が“居る”可能性が高いからでは?」

元帝国中将「その通りです。1、2階は恐らく下級魔族が待ち構えてるだけでしょう、どうせ狙うなら魔王の子ども本人、いえ本体ですからね。情報も混血という事くらいしか流通していませんが、他の子どもの様に自身のテリトリーを広げると言った様子もないので雑魚の部類でしょう。油断は出来ませんが、警戒し過ぎて消極的な展開にする程の相手ではないですよ」

俺「」コク

元帝国中将「他所に危害こそ加えてはいませんが、我々にとってはあの魔王の子というだけで『敵』ですからね。申し訳ありませんが、死んでもらいましょう」ニィィ

元帝国中将「では魔術師諸君、頼む」

黒衣女「魔王の血族め、あなたたちのせいで私の商売上がったりよ……!! 我が黒焔にて滅びなさい!!」ギュオッ!!

精神異常者「ブツブツブツブツブツ...」ズズズ

学徒「もう少しでボクが学園首席になる筈だったんだ!! それをあのクソ魔王は邪魔しやがった!! 絶対に……絶対に許さないぞぉッッ!!!!」ッドォオオオオオオオッッ!!!!

令嬢「魔族など穢らわしいだけよ。さっさと死に絶えなさい」キィィィンッ...


ヒュオオオオッ!!
ズドォンッ!!
ッゴォッッッ!!
ドガァッ!!
パァンッ!!
ガギギギッ!!
ヒュインッッ!!
ドゴォオオオオンッッッ!!!

シュウウウウウ...


ピキッ
ピキピキッ


バキィイイインッ!!


元帝国中将「……結界が、開いた」

傭兵「よおおおし、行くぞぉおおおおおおおお!!!!」

料理人「40年育ててきたわしの鍋が猛威を振るう時がきたわい……!!」

デブ「餅は餅屋」ニチャア

筋肉男「我が筋肉……亡き妻の為に捧ぐ!!」

バタァンッッ!!


軽戦士「」ガチャッ キョロキョロ

フード男「敵影確認出来ず。このまま進むぞ?」

元帝国中将「ああ。ここで1階担当は別れてくれ、上階担当は斥候を前に進むぞ」

シュタタタタタッ...

俺「」ピクッ

元帝国中将「! 伏せろ!!」

バッ


ヒュンッ ドゴォンッッ!!

吸血鬼A「ちっ、人間め……なかなかやる」

吸血鬼B「お嬢様は必ずお守りするぞ! 決して、王統を………魔王様の血を絶やしてはならぬ!!」

鎖鎌使い「うるせぇ死ねッ!!」ブンッ!!

吸血鬼A「お前が死ね!!」ッドォン!!

鎖鎌使い「ぼぎョえっ!!?」ブシュウッ!!

元帝国中将「! 死者が出た! 総員警戒域を上げろッ!!」

俺「」スッ ズドォンッ!!

吸血鬼B「がはっ!?」ドチャッ!


吸血鬼A「!? おい、おm」

傭兵「余所見してる暇なんざねぇぞッ!!」ドヂュンッ!!

吸血鬼A「ぐぁァ!? ば、ばか……な………!」ドサッ

(´・ω・`)「2人だけかな?」

元帝国中将「いや、」


バサッ! バサバサバサッ!!


吸血鬼C「よくも同志を……!!」

吸血鬼D「………殺す」ギロッ

吸血鬼E「地獄の苦しみを味わって死ね……」


元帝国中将「……悪いが2階組に任すぞ?」

重戦士「あいわかった」ガシャン

弓士「気をつけて下さいねー」

~3階~


元帝国中将「ふん」ザシュ!!

吸血鬼K「う……ぐ………」

傭兵「こうしてみると人間と大差ねぇな、吸血鬼もよ……」

吸血鬼N「ゆ、許し……」ズバァッ!!

ドサドサッ


俺「ふむ、この先に居るのでは?」

(´・ω・`;)「この先、すげー魔力感じる……十中八九居るわこれ」

精神異常者「ブツブツブツブツブツ...」

元帝国中将「………突入するぞ。全員、準備は良いか」

俺「」コクッ

呪術師「」コクッ

元帝国中将「…………」グッ


ギィィィィ...

魔王娘「…………」

元帝国中将「……お前が、魔王の子か?」

魔王娘「そうだね」

元帝国中将「ならば、悪いがここで死んで貰う。最期に何か言いたい事があればその程度は聞こう」

魔王娘「そっか。じゃあひとつだけ、言わせて貰いたいのだけどさ」

魔王娘「わたしは、人間に害を与えたかな?」

元帝国中将「………」

魔王娘「もちろんお父様は殺しまくったろうね。先祖の方々もそうだろうし、他の魔族や魔物だってそうだろうけど。ただね、わたしは生を受けて……人間のお母様のもとで生まれてさ、ただひとつだけ守り続けた事があるんだ」

魔王娘「『人を害すな』。お母様がわたしに遺してくれた言葉だよ」

元帝国中将「それで?」

魔王娘「いや、だからさ。今までは守り続けてきたんだ。吸血鬼なのに人間の血を吸わず、動物や魔物の血を吸ったりさ。部下にもそれを徹底させて、絶対に人間に近付かない様にもしたよ。結界も張って向こうから干渉出来ない様にもした」

魔王娘「なのに、これだ。わたしが魔王の血統だからって理由で不当に攻め込み、部下も殺し、全てをめちゃくちゃにした。君たち、人間が」

元帝国中将「………」チャキッ

魔王娘「ふざけてるよね。わたしたちは、何もしていないよね。……わたし、もう、我慢しなくて良いよね?」

ズズズズズ...!!

元帝国中将「魔術師は総員自身に魔導障壁を展開!! 残りは敵の攻撃に備えよ!!」バッ!

精神異常者「」ヴゥン!

呪術師「………!」ヴゥン!

(´・ω・`;;)「」ジャキッ!

傭兵「……えげつねぇな、これ」グッッ

魔王娘「ねぇ、だからさ………わたしも、復讐して良いよね?」

パチンッ

ヴンッ ヴンッ ヴンッ


元帝国中将「! 魔弾だ、避けろッ!!」


魔王娘「」スッ

ヒュンッ ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンッ!!


傭兵「っちィ!!」バッ!

軽戦士「ぐがぁっ!?」ドシュッ!

俺「」サッ

フード男「っぎゃッ」ブシャッ!!

元帝国中将「アサルトライフルを構えろ!! 撃ち殺せ!!!」

俺「」ドドドドドドドドッ!!

料理人「鍋もクソもないわい! ありゃ正真正銘単なるバケモンじゃァ!!!」ドドドドドドドドッ!!


魔王娘「ウザいなぁ……」パチンッ

グググッ...

カランッ カランッ

呪術師「!? バカな……空間魔法の使い手だと!!?」


魔王娘「そんな大層なものじゃなくて、風魔法の高等応用だよ」パチンッ

傭兵(次はなんだってんだ……!?)

キランッ

狩人「………?」

ピシュンッ

(´・ω・`;)「………」

(´・ω・`;;)「………え」

ドサッ

元帝国中将「……今のは」

魔王娘「次は火魔法と光魔法を複合利用して風魔法で速度強化、更に独自の術式構成で微調整を施しただけの単なるレーザービームだよ。……まさか、これを恐れる程度でわたしに挑んできた訳じゃあるまいね?」

元帝国中将(…………)

元帝国中将「俺さん」ボソッ

俺「」チラ

元帝国中将「はっきり言って、あの少女……やはり『弱い』です。確かに魔法のレパートリーは厄介ですが、内に入り込みさえすれば容易に殺せると思います。少なくとも自分の実力なら」

俺「」

元帝国中将「しかし自分も指揮や味方の被弾阻止でかなり忙しい、動き回りながら作戦立案は現実的ではありません。そこで、」

俺「ふむ、まずはアサルトライフルで牽制をすれば良いのでは?」

元帝国中将「…ほう。既に作戦があると?」

俺「」コク

元帝国中将「ならば貴方にすべて委ねましょう。わかっていると思いますが我々が魔王の子と会敵しているという事は下の階に準四天王格が居るという事です、指揮能力が十全でない中で下の者たちを呼ぶのは酷というか、無理ですよ」

俺「」コクッ

元帝国中将「なら町長殿の右腕たる俺さんの事だ、大丈夫でしょう。任せますよ……総員、アサルトライフルを再度構えよ!! 弾幕を展開しろ!!」

精神異常者「」ドドドドドドドドッ!!

傭兵「めんどくせえヤツだぜ……!」ドドドドドドドドッ!!


魔王娘「無駄だと言っているのに」パチンッ

グググググッ

カランッ カランッ カランッ...

元帝国中将「諦めるな! 弾が尽きるまでとにかく撃て!! 相手も弾を防いでいる間は攻撃が出来ない、魔力もいずれ枯渇するだろう! それを狙え!!」

魔王娘「………ばーか」


俺「」スタスタ

スイッスイッ スイッ

プルルルルル...

ピッ

オペレーター『はいジャパネットたかたです!』

俺「ふむ、確か無人ステルス爆撃機が数機残っているのでは?」

オペレーター『そうですね、在庫まだ残っていますよ! お値段なんと12億9800万Gです!』

俺「ふむ、買いなのでは」

オペレーター『購入ありがとうございます! 速達にいたしますか、普通にいたしますか?』

俺「ふむ、速達しかないのでは」

オペレーター『了解しました! では今すぐ機体ごと出荷致しますね~!』ピッ


...ォォォォォ......

俺「」クルッ

ドドドドドドドドッ!!


魔王娘「……いつまで撃ち続けるのさ? 確かにわたしの魔力は減っていっているけれど、そちらの方も弾数は有限のはずだが」

元帝国中将「………」

魔王娘「ああ、それしか採る手段がないという事だったりするのかな。だとしたら哀れだね、お父様の子を討つという名分の為に無意味な領域まで踏み込み過ぎた結果、自分たちが自滅するっていうんだからね」

元帝国中将「………む?」ピコン


元帝国中将「グループLINE? ……もしや」

俺『ふむ、一旦全員洋館の外に逃げるべきなのでは?』


元帝国中将「……は?」


傭兵@一児のママ『意味わからん』

🥩いきなりステーキ大社長👨‍🍳🥩『お前さん逃げるんか❗️😡』

ちゅーじょー『どういう事ですか。説明をお願いします。』

俺『🪟』


元帝国中将「窓?」チラ




無人ステルス爆撃機「」ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!

傭兵「」クルッ

呪術師「」クルッ

狩人「」クルッ

料理人「」クルッ

精神異常者「」クルッ

元帝国中将「」クルッ


ダダダダダダダダダダッ!!!!

魔王娘「…………は?」

ピコン


執事『何故か人間どもが逃げていきます・・・』


魔王娘「………」

魔王娘「え、いや、まさか、勝ったってk」



ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッ!!!!!!



魔王娘(…………え………?)


ヂィッ

狩人「………な、なんだあれは?」

俺「ふむ、無人ステルス爆撃機なのでは?」

重戦士「なんと……あんなものが投入されれば、銃以上に戦争の歴史を塗り替える事になるぞ………!!!?」

黒衣女「な、なによ今の…大規模爆破魔法?」

傭兵「や、館が跡形もねえぞ……なあこれ、死んだのか? 魔王のガキも」

令嬢「生命反応は皆無よ。おそらく死んだ、でしょうね」

元帝国中将「」チョイチョイ

俺「」スタスタ

元帝国中将「……あんな物があるなら先に教えてくれれば良かったじゃないですか?」ボソッ

俺「ふむ、無闇やたらに使えば世界中が更地になるのでは?」

元帝国中将「いやまあそれはそうですけど…まあ良いです、ともかくありがとうございます。自分たちが活躍する機会は、結局ないままで終わりましたが」

元帝国中将「…………」

元帝国中将「とりあえず、首都に戻りますか。スポンサーの方々にも報告しなくてはいけませんし、死者の遺族の方にも色々やらなくてはならないですしね。それにまだ子どもたちは残っていますし………俺さんは諸々が終わった後、どうするんですか?」

俺「ふむ、しばらく当てもなく世界を回るだけでは」

元帝国中将「そうですか。自分は魔王の子どもたちを征伐し終えたら……そうですね、極悪犯罪者にでもなりますかね。彼との義理が切れればあとは、自分も自由に生きて良いと思いますし。普段はちんちんがイライラしてしょうがないんですよ」

俺「」...ヤレヤレ

元帝国中将「俺さんも一緒にやりますか? どうせ今回で黒く染まってしまったんですし、あの爆撃機があればレイプ以外にも何でも出来ますよ」

俺「」フルフル

元帝国中将「まあそうでしょうね、いや分かってましたよ。貴方は出来る事こそ超人じみてたり機転が利いたりしますが、メンタルは常人側ですからね。多少ワルくても、大きく堕ちる事はないというところですか」

俺「」

元帝国中将「ともかく、帰りましょうか。……ああそうだ、今日は居酒屋行きませんか? 昔の話を肴に呑みましょうよ」

俺「ふむ、それは良いのでは?」


ザッザッザッ...

チーズ休憩丼

チート持ち(なのか?)の主人公が一人いても世の中ままならねぇな

なんで書き溜めてそうなのに一気に投下しないんだ?

1にだって事情はあるだろ…書き貯めてたら全部一気に吐き出さなきゃいかんルールなんてないぞ

~17年後~


少女「ねぇママ、こっちこっち!」

剣士「こーら、そんなに慌てないの。ママは逃げないんだからゆっくり行きましょ」

少女「えー? まぁ別にいいけどさぁ……あてっ」ドンッ

剣士「あ、すみませんうちの娘が……えっ?」

俺「」ペコリ

スタスタ...

剣士「………」ポカーン

少女「……マ、ママ?」

剣士「……はっ!?」

ダダダダダッ!!

ガシッ!

剣士「ちょ、ちょ、あの、すみません! 貴方は……俺さん、ですよねっ!?」

俺「」サァ?

剣士「その肩のすくめ方覚えてますよ!! お、俺さんなんでこんなところに居るんですか!!?」

少女「えっと、ねぇ、その人ママの知り合い?」

剣士「知り合い……っていうかなんというか……なんだろ、初恋の人って言いますか何と言いますかぁ……えとえと、あの……」

俺「ふむ、口調が戻ってるのでは?」

剣士「あ、これは……ってやっぱ俺さんで合ってるじゃないですかぁ!!」

少女(ママが敬語使うとこ久し振りに見た……)

……………
………

剣士「……そうですね、最近は各国景気も回復してきてますからね。私も首都に住んで、今は夫とお母さんと娘の4人で一緒に暮らしてます」

俺「ふむ、やはり良い相手と出会えたのでは?」

剣士「結果的には………そうですけど。でも俺さんも十分魅力的だと思いますよ? これは心底から思ってる事です、ほんとです! いつまでもお若いですし気配りも出来ますし、真面目に相手探せば絶対良い人が見つかりますよっ!!」

少女「むっちゃ力説するねママー」

剣士「……言い忘れてたけど、パパには内緒だからね。この人と会った事」

少女「なんで?」

剣士「チョコアイス2個買ったげるから」

少女「いえすまいさー!」ピシッ!

剣士「ところで俺さん、最近何してるんですか? お母さん曰くなんか俺さん想像よりやばい人だから普通の生き方はしてないとか言ってましたけど……」

俺「ふむ、世界旅行の様なものでは?」

剣士「せ、世界旅行ですか? 俺さんらしいというかなんというか……っていうと、今回も旅行のついででここには立ち寄った、みたいな?」

俺「」コクコク

剣士「はぁ……なんだか羨ましいですね、自由って」

剣士「あ、かなり話し込んじゃいましたね……ええと、今日は楽しかったです! 久し振りに俺さんと話せてよかったです、ほんとに!」

俺「」グッ

剣士「また機会があれば是非寄ってくださいね! 待ってますよ!」フリフリ

少女「ばいばーーーーーい!!」フリフリ

俺「」フリフリ



剣士(………夫にも、内緒ですけど。今も持ってますよ、俺さんの買ってくれたナイフ)ニッ

ナイフ「」キランッ

~草原~


俺「」トコトコ

俺「」

俺「」クルッ

俺「ふむ、出てくるべきでは?」ガチャッ


???「…………いつから気付いていた?」

俺「ふむ、首都外に出た時には尾け始めていたのでは?」

???「……………」


スッ

上級冒険者「流石は長きを生きる化け物か。この程度の気配遮断は見破れるという事だ」

俺「」コテン?

上級冒険者「惚けるな、お前が少なくとも100年以上前から存在しているというのは分かっている」

俺「」

上級冒険者「………俺は依頼でお前を拘束する為に来た。その依頼人が漏らした事だ」

シャキン!

上級冒険者「大人しく従えば何もしない。が、抵抗するのなら多少痛い目を見てもらう」

俺「」

バッ!

上級冒険者「…阿呆め」シュタッ!

ッキィンッ!!

上級冒険者「ふん!」ヒュオッ!

俺「」サッ パァンッ!!

上級冒険者「」フッ ズバッ!!

俺「」キィンッ!

上級冒険者(!? 俺の速度に反応出来るとは……)

俺「」カチャッ ドォンッ!

上級冒険者「ぐっ……!?」ブシュッ...!

俺「」ッドォン!!

上級冒険者「がっ!!?」ドサッ

俺「ふむ、終わりでは?」カチャッ

上級冒険者(………一か八か!)ゴウッ!

俺「」バッ

俺「」ベキィ!!

上級冒険者「ご、ばぁッ……!?」ベチャッ!

俺「」ゲシッ

上級冒険者「っぐ……!」

上級冒険者(……強い………!)

上級冒険者「………」

俺「」

上級冒険者(………。どうせ死ぬのなら…)

上級冒険者「華々しく、散ってやる!!」ヴゥン!

俺「」ピクッ

上級冒険者「俺ともども死ぬが良い………!!」キィィィンッ...



ドォオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!

シュウウウウウ......


俺「」

俺「」チラッ

上級冒険者「」

俺「」

俺「」スタスタ

~???~


プルルルルル...


外科医「………」

ピッ

外科医「死にましたか。前評判とは裏腹に使えませんね」

外科医(とはいえ事実性の補強にはなりましたか。100年前の記録にすら出でる謎の人物……俺、その実力はとこしえを生きるだけはあると)

ガチャッ

助手「先生紅茶でーす!」

外科医「うん? ああ、どうも」カチャ

外科医(ま、金だけはたんまりとあります。さっさと次の者を送り込んでおきますか)ズズ...

……………
………

俺「」グダー


パカラッパカラッ...


御者「…うおっ!? あ、あんた何してるんだ? こんなとこで」ビクッ

俺「ふむ、どう考えても休憩しているだけでは?」

御者「いや休憩以前に全身ボロボロじゃねーか……駄賃払えるんなら街まで送ってやろうか? 病院行った方が良いぞ」

俺「ふむ、大丈夫なのでは?」

御者「そ、そうか? いや、でも……」

???「どうしたのですか?」ガチャ

御者「あ、いえその、そこに人が倒れていまして」

???「人が? ……そうですか、ならば私がもう1人分お支払いしましょう」

御者「え、あ、でしたら………おいそこの、この方が乗せてくれるってよ。遠慮なく乗ってったらどうだ」

俺「」チラッ


帝「まあ、酷い傷……お金の当てはありますか? わたくし簡単な回復魔法なら修めておりますから、応急処置くらいは致しますわ」

パカラッパカラッ

帝「……一応これで殆ど塞がったかと思われます。ただ内出血や深い傷までは完全に治し切れたとは言えません、外傷だけが消えた形となります。必ず病院等には行ってくださいね」

俺「ふむ、回復魔法は良家の者しか習得出来ない筈では?」

帝「良家……そうですね、良家といえば良家の生まれなのでしょう、わたくしは。…とはいえもう尋常の人です、今は田舎町でしがない花屋を営む日々ですわ」

帝「あ、先ほどもお訊きしましたがお金の当てはございますか? なければお怪我の治療費くらいはお出し致しますが……」

俺「」ジャラッ

帝「その様子だと宜しい様ですね。安心しました」ニコッ

~田舎町~


御者「着きましたー、こちらでお降り下さーい!」

帝「ではわたくしはこの辺で。しっかり養生なさって下さいね」

俺「」コク

クルッ

スタスタ

帝ちゃんって……某アリスソフトの懐かしのエロゲを思い出したよ

若医者「驚きましたね……相当高位の回復魔法が掛けられている、下手したら皇族や王族が修得するレベルの」

若医者「もしかしたら先程会ったとおっしゃられた人は、やんごとなき方かもしれませんよ。……正直こちらが施せる事は特にないですね、診療代を頂くのが憚られるほどだ」

若医者「とはいえ一応言っておきますと、組織の再生促進には食物が要ります。特に肉、蛋白質を含むものがいいですね。それらをこの1ヶ月ほどは意識して摂ると良いのではないでしょうか」

俺「」コク

スタッ

ジャラッ

若医者「どうも。良い旅を」

俺「」フリフリ

ガチャ

トコトコ


...ザッ ザッ

俺「」チラッ

俺「ふむ、わりに速いのでは?」


冒険者A「あぁ? 何言ってやがるこいつ」

冒険者B「いや、気付いているのかもしれないぞ? それか前任の奴が言ってしまったか」

冒険者A「あー、可能性としちゃ有り得るな」

冒険者C「とりまやっちまわん? 時間惜しいわ」

冒険者B「そうだな。という事で理由は知らんが、依頼主がお前を引っ捕らえろと言っている。こちらは7人だ、無駄な抵抗はやめた方が賢明と思うが?」

冒険者D「別に抵抗しても良いけどなァ。他の奴が死ねば俺の金が増えるしよ」

俺「」カチャッ

冒険者E「あらら、刃向かっちゃうんですか」

冒険者C「うっわバカ過ぎ、7対1で勝てる訳ねーじゃん」

冒険者A「ま、そう言っちまったからには自分の言葉に責任持てよな。……んじゃ行くぜェ!!」バッッ!!

冒険者C「」

冒険者D「」

冒険者E「」


冒険者A「ゆっゆ、ゆ、許し………!」

俺「ふむ、そもそも俺は先程何も言っていなかったのでは?」ズドォンッ!!

冒険者A「ギュピぇッ」ブシャッッ!!!

ドチャッ


冒険者B「ば、ばかな……!!」

冒険者F「ひ……ひぃいいいいいいいいいいいいいっ!!?」ダダダダダッ!!

冒険者G「うわぁああああああああああああああああ!!!!」ダダダダダッ!!

冒険者B「お、おい!?」

俺「」パァン!! パァンッ!!

冒険者F「あぎぇっ」ドサッ

冒険者G「ぐひッ」ドサッ

俺「ふむ、もう残っているのはお前1人なのでは?」カチャ

冒険者B「………!!」

冒険者B「…ま、待て。言おう、依頼主の情報を」

俺「」

スッ

冒険者B「………奴は医者だ。お前を拘束させる為に俺たちを派遣した。新王国郵便を利用して依頼書を出していた様だから、恐らく王国人と思われる」

俺「ふむ、俺を拘束しても特に意味はないのでは?」

冒険者B「先にも言ったが理由は知らん……俺たちは単なる雇われだ」

俺「」

俺「」クイッ

冒険者B「……いいのか?」

俺「」コク

冒険者B「そうか。……礼にもう一つ情報を与えよう、スマホを出せ」

俺「」スッ

冒険者B「ふるふるするぞ。LINEのアカウントを交換してくれ」フルフル

俺「」フルフル

ピコン

冒険者B「俺は一応こいつらのリーダー格だったからな、実は連絡権が与えられていた。奴の名前はそのアカウント名そのままの『外科医』だろう。今後に役立ててくれ」

俺「」グッ

冒険者B「ではな。殺そうとした身で言うのもなんだが……すまなかった」

ザッザッザッ...

俺「」スイッスイッ


アカウント名;外科医

一言コメント;お医者さんです。外科領域担当。国際信州学院大学医学部医学科卒。ツイ垢→@IamD0ct0r


俺「」ピッ

俺「」スタスタ...

~1ヶ月後~


助手「先生紅茶です! あんまり根詰め過ぎない様にして下さいね~」

外科医「どうも。……ふむ。この動き、どうやら気付かれた可能性が高いですね」ペラ

外科医(流石に王国内部に侵入されたのは厄介ですね。これまでの失敗は許容範囲でしたが、ここからは用心しなければならないでしょうか)

外科医「ですがまあ、こういった障害があればこそ解剖時の満足感も巨きくなるというものです。艱難も一種のテイストとして楽しみましょうか」

外科医(…しかし、なんだか最近は調子が悪いですね。そろそろ四十路ですし、老化の所為でしょうか)

~新王国大都市~


ワイワイ

ガヤガヤ


ドカタ「……でよぉ!」

酔っ払い「ギャハハ、くそおもしれぇなそれぇ!」

ドカタ「あぁでもよぉ……おん?」


俺「」キョロキョロ

ノッシノッシ

ドカタ「おうあんちゃんどうした、なんか困ってんのか??」

俺「」クルッ

酔っ払い「おっ? どうしたどうした、なんかあったかぁ?」

ドカタ「悩みがあるんなら言ってみろよ! 暇だし特別に聞いてやるぜぇ、ガハハ!!」

俺「ふむ、この都市には闇病院などがあったりするのでは?」

ドカタ「闇病院……??」

酔っ払い「ああそういやよぉ、聞いた事あるぜ! 確か商店街突き抜けたトコっによ、ヤミ医者がやってる病院があるんだと! で、確かそこの医者がマッドサイエンティスト?ドクター?だかで犯罪者御用達状態になってるってな!! ギャハハ!!」

ドカタ「おぉんじゃ確実にそこじゃねぇかぁ!!? ……お? いやあんちゃんなんでそんなトコ行くんだ??」

俺「ふむ、なんとなくとでも思えば良いのでは?」

酔っ払い「ギャハハハ、なんとなくか!!」

ドカタ「まー人間たまにはなんとなく闇病院行きたい日もあるわな!!」

ドカタ&酔っ払い『ギャッハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!』ゲラゲラ

俺「」スタスタ

~路地裏~


ッキィンッ!! ズバッ! ザシュッ!!


暗殺者A「いい加減にっ……往ねぇい!」ブォン!

俺「」フッ

暗殺者B「背後か!」ヒュッ!

俺「」ダァンッ!

キンッ!

暗殺者B「! 暗器を銃弾で撃ち落とすだと……!?」

俺「」ドンドォンッ!

暗殺者A「くっ、うゥ!?」カッ、キィン!

俺「」ガチャッ ダダダダダダダダッ!!

暗殺者B「がっ、あががががががががッ!!?」ブシュウウ!!

暗殺者A「あ、兄者ぁ!?」

俺「」ポイッ ガチャガチャッ

暗殺者A「に、二丁拳銃………っぐ、兄者の仇ぃいいいいいいいいいいい!!!!」ドォッ!!

俺「」バッ

ダダァン!

ズバッ!!

俺「」

暗殺者A「…………」

ツーーー...

俺「」ポタ、ポタ...

暗殺者A「………………」

ガクッ

暗殺者A「浅手に……終わったか………!」ブシャアァッ!!

ドチャッ!!

外科医「彼等もやられましたか。かなり金が掛かったのですが」

外科医(…それにしても)

外科医「……どうも、今日は特に調子が悪いですね。私としたことが、病でも患ったのでしょうか?」

外科医「………」

外科医(逃げますか。普段なら私も魔法で対処出来たでしょうが、この状態だと一方的に殺されかねないですね。道具は鉗子やメス等必要最低限のみ持って行)サクッ

外科医「………な、に?」

グラッ

トサッ


助手「バカですねー先生。いっつも素直にあたしの入れた紅茶を飲むんですから、衰弱させるのなんて簡単でしたよ」

外科医「……な………」

助手「あ、ちなみにあたし人間じゃないですよ。実はー……」シュウウウウ...

悪魔少女「………アクマ、でしたぁ! いやぁ~、医者みたいな上流階級は回復魔法教えてくれるし寄生すると便利だね! 感謝感謝! お給与もうまうまだし♪」

外科医「き、みは………!」

悪魔少女「あぁ重ね重ね言うけど、回復魔法を教えてくれた事はほんとに感謝してるよん! 魔族やってたらフツーのはともかく高度なのはみんな知らないんで教えてくれないかんねぇ、先生はあたしのキチョーな糧となってくれたワケ! あいらぶせんせーべりべりだいしゅき♪って感じ!」

外科医「く………!」キィィィン!

悪魔少女「あ、それ無駄だよー」

バチッ!

外科医「………!?」

悪魔少女「診察に支障が出ない程度に魔力量を制限させちゃいました☆ あたしの使ったクスリ心身衰弱と魔力枯渇の効果があるかんね、この時の為に絶対抵抗出来ない様にしといたんだよ! ねね、すごいでしょ?」

外科医「…………」

悪魔少女「と、ゆーことで先生用済みねー。来世で魔族にでも転生してきたら、まあ部下くらいにはしたげるよん」スゥウウウ...

外科医「……! や、め」

悪魔少女「死んどけ、糞袋」

グジュリッ!! グチャッ、グチュ、ブシュッ、ドヂュンッッ!!

ポトッ


肉塊「」

悪魔少女「はーやったやった。上級回復魔法に一部の人間の魔法も覚えたし、これで次期魔王選でもご主人様の役に立てるかな? そろそろ旧魔王領に戻らないとなぁ」ガチャッ

悪魔少女「………んー?」クルリ

俺「」

俺「」チラ

肉塊「」ピクッ ピクッ

俺「」チラ

悪魔少女「………」

悪魔少女「あ、先生がなんか言ってた人? ごめんねぇ、先生ならもー殺しちゃったんだ☆ 聞いた感じあんまり仲良さそうじゃなかったしぃ………別に、問題ないよね?」ニヤ

俺「」

俺「」コク

悪魔少女「ありゃ、意外と話が分かる感じ? 人間にもアタマ悪くないのがいるんだねぇ~」

俺「ふむ、さすがに俺が例外なだけでは?」

悪魔少女「まあそれもそっかな。フツーの人間は魔、即、斬ってな感じだもんね」

悪魔少女「じゃ、あたし消えますから。そこそこ急いでるし」バサッ

俺「」コクッ

悪魔少女「じゃね、変人さん」バッ!

バサッ バサッ バサッ...

俺「」

肉塊「」ピクッ ピクッ

俺「」クルッ

ガチャ

バタン

~8年後~


農民A「はぁ……最近は不作だっぺねぇ」

農民B「こういう時は俺さん呼べばいいんでねが?」

農民A「俺……? 誰だべそれ」

農民B「最近この辺に住み始めたあんちゃんだべ。色々教えてくれっかんなあ、おらも近所もみんな大助かりだべよ!」

農民A「へぇ~?! そらいい、おらも世話になるっぺか!」

コンコン

農民B「俺さんいるっぺか~?」

ガラッ

俺「」コテン?

農民B「おぉいたいた、このあんちゃんが俺さんだべ!」

農民A「はぇ~? なんじゃまだ若いっぺなあ……」

農民B「んで、何困っとるんだっぺか? 不作だったっぺか?」

農民A「おぉそれがな、近頃作物が育たんくてなぁ。別に土壌を変えたワケでもなし、さっぱり理由が分からんのだべ。俺さん、ていうんだっぺか? なんぞ解決策とかあるもんかぁね?」

俺「ふむ、この栄養剤を使えばいいのでは?」スッ

農民A「な、なんだべかこの小筒は?」

農民B「おお、そりゃおらも飢饉ん時ん為の予備に貰ったっぺ! たしか俺さん、作物を育て易くする薬品だって言ってたっぺなあ」

農民A「や、薬品だべか……大丈夫だべか? 少し不安だべ」

俺「ふむ、栄養剤は農薬とは違うので安心して良いのでは?」

農民B「その通りだべ! 農薬は作物に直接化学物質を散布する事によって虫害等を防ぐ代わりに人体に影響のある物質を付着させるっぺが、栄養剤はその名の通り植物の成長を促進させる働きのあるものだべ! 従って内包されるのは単純に栄養だけだべから、作物に特段異常を発生させる事もなければ味を変化させると言った事もないべ! 安心するといいと思うべよ」

農民A「お、おぉ??」

農民B「という事で俺さんにお礼を言ったらすぐ栄養剤を差しに向かうべよ! 不作はすぐに解決せんといかんからな!」

農民A「……よ、よく分からんべが貰ったからには試してみるべ! ありがとだべ、俺さん!」タタタッ

俺「」フリフリ

~数ヶ月後~


農民A「俺さんのおかげで早速芽が出揃ったべ!本当に感謝だべ!!」

俺「ふむ、別に大した事はしていないのでは?」

農民C「そんな事ないべ!俺さんおらたちみぃ~んなを助けてくれたっぺ!!」

農民B「やっぱし俺さんしか勝たんっぺよ!!」

農民D「俺さんはこの村の英雄だべぇ~~~~!!」

ワイワイガヤガヤ...

ピク...

ザッ

ザッ

ザッ

ザッ...

ガサッ


ザッ!

巨熊「グゥウウウウウウウウウウウウウウウウ…………!!!!!!」

農民D「ひ!? あ、あれは……」

俺「」コテン?

農民A「や、山の奥に住んどる大熊だべ! こ、この時期はまだ来んはずだったんじゃ……!!」ガタガタブルブル

農民B「と、とにかく逃げるしかないっぺ!! ややヤツは一通り暴れたら去っていくべ、だからまずは逃げっ」

巨熊「ゥゥゥ………グゥアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」ドゴォオオオオオオオオオンッッ!!!!!

農民C「ひっ……ひぃいいいいいいいいいいいい!!!??」ジョンジョバァーーーーー!!!!

俺「ふむ、射殺すれば良いのでは?」

農民D「む、無理だっぺ! 銃なんて持っとらんし撃ってる間に殺さ……!!」

俺「」スッ

農民A「え……こ、これは?」

農民B「短機関銃……だべか?」

巨熊「ゴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!!!」ダダダダダッ!!!!

農民C「ちちちち近付いて来たべぇ!!?」

農民A「………!!」

俺「ふむ、早く殺さねば自分が殺されるのでは?」

農民B「ででっで、でも……」

農民D「お、おらたちに出来るわけが……」

農民A「………い、いや! おらぁ、やるっぺ!!」ガチャッ!

農民C「お、おめ正気だべかぁ!!?」

農民A「やらなきゃ自分が死ぬんだべ!おらぁ、かかさまの遺してくれた畑の為にも、支え続けてくれとる嫁ン為にも………ここで死ぬわけにゃあ、いかんのだべぇええええええええええ!!!!」ドドドドドドドドッ!!

巨熊「! ギッ、グオォッ……!!?」ブシュッ!!

農民D「き、効いとる……!?」

農民B「………く、熊がなんぼのもんだべぇっ!! お、おらだって気持ちはおんなじだぁ!! 魔物でもないんだべ、恐れるこたぁないべぇ!!!!」ドドドドドドドドッ!!

農民D「……ち、ちくしょぉ!! こうなったらヤケクソじゃああああああああ!!!!」ドドドドドドドドッ!!

農民C「う、うう、うわあああああああああああああああ!!!!」ドドドドドドドドッ!!

俺「」ドドドドドドドドッ!!

巨熊「グ、グッ、グゥウウウウウウ………アァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」ダダダダダッ!!!!

ダダダダダッ...

ダダッ...ドスン、ドスン、ドスン...

...グラッ

ドォォォンッ!!

農民A「か……勝った?」

農民B「………勝った……」

農民C「こ、ころ、殺した……あの巨熊を………」

農民D「おらたちが……やったんだべ………」

俺「」コクッ

農民A「や、や……っ、」


農民たち『やったぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!』


農民B「今日は熊鍋じゃあ!!」

農民D「お、おら他ん村のヤツも集めてくるっぺ!!」タタッ

農民A「俺さんのお陰だべ……俺さんが後押ししてくれなかったら、おらたちみんな死んでたかもしれないべ!」

農民C「ありがたやぁ……ありがたやぁ………」スリスリ

俺「」フルフル

農民B「そう謙遜なさらんで良いっぺ、俺さんはやっぱりこの村の英雄だっぺ!!」

農民A「………。そういやぁこの村、まだ村長おらんかったっぺなぁ?」

農民B「あぁ、んだんだ」

農民C「し、したら……俺さんを村長にするってぇのはどうだっぺか?」

農民B「おお、良い考えなんでねか!? 」

俺「」ピク


村長『俺さん、ありがとうな。これからも5人でずっと、困難を乗り越えていこう』ニッ


息子『俺さん……おれのやり方は、間違ってなかったよな?』


俺「」

俺「ふむ、俺はまだ数ヶ月しか住んでいないのだから適切ではないのでは?」

農民A「いんや、期間なんぞ関係ないべ! おらたちみんな俺さんの人柄ぁ分かっとる!」

農民B「村の誰もが俺さんのこたぁ尊敬しとるべな!」

農民C「おら、文句言うヤツぁ居ないと思うべよ?」

俺「ふむ、本当に俺しか候補が居ないのか考えてみるべきでは?」

農民B「あぁそれは安心してくれていいべよ! みんなあったま悪ぃかんなあ、渉外活動? とか、なんたら管理とかってのが出来なくて立候補してないんだべ!」タハハ

農民A「という事で、村ん中でいっちゃんあたまぁ良い俺さんがなってくれたら大助かりなんだべ! もちろん強制はせんけど、前向きに考えてくれると嬉しいべよ!」

俺「」...コク

農民B「んじゃあ熊鍋作りにいっか! 女手も呼んでくるべ、他のヤツぁ大熊運ぶん手伝っとくれっぺ!!」

球形の表面積の公式を言おうとしたけど高校数学とか忘れてしまったので休憩します

何故球が高校数学?と思って調べたらH23までは公立の数Ⅰの指導要領に入ってたんだな

最初の村の興亡は終わり、世紀末も終わり、外科医は決着をつける前に死に……一本筋の物語ではなく歴史が淡々と進む感じ

ふむ、なんとなくアンタの文の感じは覚えがあるな処刑人だったこともあるのでは?

これで2作目なんで違うと思います


………
……………


俺『』ポカーン

役人『よォ、久し振りじゃねェか』

村人C『ガッハッハ! 俺さんがんなマヌケ面晒すなんて珍しい事もあるもんだなぁ!!』

村人B『村長や息子くんだと思ったか? 残念、俺たちだ』ニヤ

俺『………ふむ、どうやって』

村人B『まず前提として言っておくと、この世界は“夢”だ。全ては現在睡眠中の俺さんの深層心理が作り出した世界であって、現実ではない』

村人B『故にここで起きる事は現実には一切影響しないし、全ては俺さんの脳内で進行された事となる。それ以上でもそれ以下でもない。……と、言っておこう』

役人『つっても夢っつーのには異世界と繋がる力があるとか言われてっかんな、もしかしたらオレらと会ってんのもある種の現実かもしんねェぜ? あの世と繋がれば会えるっちゃ会えっかんな、ククク』

村人C『ま、解釈の方は俺さんの方に任せるとするけどよ。……なんで俺らが出てきたか、分かるか?』

俺『』......コク

役人『ま、そりゃ分かっか。そうだ、今度はてめぇ自身が“村長”になるかもしんねーからだ』

村人B『お節介かもしれないが……取り敢えず、俺たちの伝えたい事を伝えに来たんだ。それを聞いて感じた事を参考に、村長になるかどうかを考えてくれれば幸いに思う』

村人C『ほんじゃ俺から言うぜ。まず俺さん………実はな、俺はあんたが村長になろうがならなかろうが、どっちでも良いと思ってる!』

俺『ふむ、本当はどうでも良いのでは?』フッ

村人C『な訳あるかっての! いやな、いい意味で言ってんだぜ俺は? というのも俺さん、何やろうがそれなりに器用にこなせるじゃねえか』

俺『ふむ、そんな事はないのでは』

村人C『あんの。交易の時だってそう、あいつの側でアドバイスしてた時もそう、村に危機がやってきた時もそう。俺さんはいっつも、正しい事を言ってくれたんだ』

村人C『だから俺たちは楽しく生きられたし、村もあいつのガキんちょの代で町になるまで成長出来た………言っとくけどな? 俺さん自覚してるか分からんけどよ、村から町になるってのはすげー事なんだ。で、それに一役買った人間なんざ、どう考えてもすげー奴な訳だ』

村人C『俺さん、これからはしばらく腰落ち着かせようと思ってんだろ? だからこんな農村に来た。けど農民たちを先導して、リーダーシップを示しちまった。だから村の奴らが言う様に村長になるのも良いと思うぜ、明らかに的確だわな』

村人C『だが、村長にならずとも俺さんには色々な道がある! 実力もあるからな、この村専属の冒険者になるも良し、銃火器を売って商人になるも良し、ガキんちょに教えてたみたいに勉強を教える様な人間になっても良いだろうよ!』

村人C『そう、あんたにゃ無限の可能性があんだ! なんでも出来て、なんでも目指せる! そして誰かの役に必ず立てる!そう、必ずだ! だったら村長っつーひとつの道に縛られずとも良いだろ? どうせ役に立てんだから、自分のやりたい事やったって良いじゃねえか。……ま、要するによ、』

村人C『自由に生きろ、ってこった! 面白おかしく楽しく生きてよ、後悔しない人生を歩んでほしい!! それが、俺の伝えたかった事だ。……あとはもう何も言わねえ、俺さんの意思できっかり決めてくれ』

俺『』

俺『』コクッ

村人B『次は俺だ………とその前に、俺さんは運命という物を信じるか?』

俺『ふむ、あまりよく考えた事はないのでは』

村人B『はは、そうか。実はな、俺は理詰めで物事を考えるタイプなんだが……運命だけは、信じているんだ』

村人B『デジャヴとか世界何分前仮説とかそういった話をするつもりはない。オカルティックというよりはもっと現実的で、紐帯の存在する話をしようと思っている。出来るだけシンプルにな』

村人B『俺さん、今回の状況……“似ている”と思わないか?』

俺『』...コク

村人B『俺さんもそう思ってくれているか、なら話は更に早くなる。そう、俺たちの暮らしていた場所も”農村“だった。そして当時数ヶ月前に何処からともなく現れた俺さんを頼りにしていたのも、今回の彼らの状況と一致する。挙句は“巨熊”という脅威が“ゴブリン”という脅威と重なっている』

村人B『そう、微妙に似ているんだ。決定的に違うのは、村長の座が空席という事だけ……つまり、あいつが居ない事だけだ』

村人B『もちろん科学的根拠などは一切ない。というか出しようがない。だが俺はこれを、一種の運命と捉えた』

村人B『先述した様にこれはオカルト的なそれではない。ただ、俺には偶然にも状況が一致した様に見えた。他の誰でもない、俺さんを従来と同様のスポットを当てた形としてな』

村人B『………いや。運命というよりかは、俺自身が興味を持っているだけなのかもしれない。こうまで似通った状況を経た結果、村長というポストに俺さんが座る。この状況に、どうしようもなく興味を駆り立てられている自分がいる。ワクワクする自分がいるんだよ』

村人B『だから……そうだな、婉曲化させずに言うべきか。俺は、俺さんが村長となった世界を見てみたい。もう共に生きる事は出来ないが、それでも……この世界から、俺さんの村長としての生き様を見届けてみたい。そんな一心が、心の奥底に芽生えているんだ』

村人B『俺も彼ら同様、強制する気はない。だが、できるならば……あいつの居ない時代で、あいつの代わりを務めた俺さんがどうなるか。その先にある未来を、見せてくれると嬉しい。……俺の話は終わりだ、あとは役人の話を聞いてやってくれ』

俺『』...コクリ

役人『次ぁオレか。つーか最後だな? んじゃ最後なりにキレーに締め括ってやっとっすっか』

俺『ふむ、お前が綺麗に締め括るなど出来ないのでは?』

役人『いきなり辛辣だなてめぇ……なんか性格悪くなったか? いーけどよ』

役人『ま、本題入るか。オレもそいつみてぇにシンプルだ、まずてめぇは“何“だ?』

俺『ふむ、説明が足りないのでは?』

役人『いんだよこれで。ほら単純に考えて単純に答えろ、思った事を言やァいい』

俺『ふむ、人間、なのでは?』

役人『そ。てめぇは人間なんだよ俺。んでオレの話もそこを突くだけになる』

役人『てめぇはよ、別に聖人君子とかそんなんじゃあねえ。単に出来る事が多いだけでメンタリティはそんじょそこらの一般人となんら変わりゃしねえ訳だ』

役人『人並みにムカつくヤツはぶっ飛ばしてえと思うし、人並みに殺してえヤツは殺してえと思う。時には理不尽に誰かをブチ殺した事もあんじゃねぇか?』

俺「」...コクッ

役人『だろォな。ウン十年過ごしてきたんだ、てめぇのやる事なんざ手に取るように分かる』

役人『てめぇは確かに出来る事は多い。“特別な力“があったりもすんだろ? けどよ、出来る事が幾らあっても人格には大きな差はねえ訳だ。知能指数300超のヤツが必ずしも超人的な人格を持つと思うか?世界を支配した独裁者は?あらゆる魔法を極めたヤツは?地上最強の人間は?』

役に『答えはノーだ。そんな絶対はねえ。いかに一定の分野に優れてて、更にそれが人類の限界を数次元分超えてようが、それが人格を同位階に引き上げる道理はねえ。多少影響は与えるかもしれねぇがな』

役人『おんなじだ。てめぇは言うほど大した目で見られる様なヤツじゃあねえし、手放しでてめぇを崇拝する様なヤツぁ単にてめぇの事を理解してねーだけだ。ま、生きてる年数が違ぇからその辺は仕方ねぇかもしれねぇがな』

俺『』

役人『だがな』

役人『だからっててめぇは、悪そのものな訳じゃねえ。好きなヤツは人並みに助けようとするし、友情や義理にはしっかり従う心もある。余程じゃなきゃ悪人を許す心も持ってるし、深慮が出来ねぇバカって訳でもねぇ』

役人『てめぇはな、良くも悪くも”人間“なんだよ。人間の価値観で全てを行使し、人間として行動しているだけの単なる”人間“、それがてめぇだ。オレは村長になれなるなの話はする気はねぇ、そこの筋肉バカと違ってマジでどうでも良いかんな』

村人C『筋肉バカて』

役人『ただ、覚えとけ。もしくは自覚しろ。てめぇは所詮人間でしかねぇ。オレみてぇな根はクズのゴミとは違う、あいつみてぇな根は善人のフツーのヤツ気取ったのとも違う、言うなれば全値が平均値のザ・人間。それだけ理解して生きろ』

役人『そーすりゃ少なくとも間違える可能性は下がっだろ? 過度に自分が踏み込むべきでない領域に踏み込まなくなるし、マジのクソになりかけた時に踏み止まれる。全てニュートラルを基準にして行動出来んだ』

役人『んで、オレの話はほぼこんだけな。特に含蓄もなし、いい話もなし。ただ、”行き過ぎるな“。そんなもんだ』

役人『ま、何になろうが勝手だ。この世はオープンワールドで、人生には無尽の可能性と選択肢がある。そン中から無難で、けどプラスになる選択肢を選んで生き延びていく。そうやって目の前に進んできゃいんだよ』

俺『……ふむ、お前にしてはやけに親身になって考えているのでは?』ニヤ

役人『は、それ言うならてめぇもキメェニヤつき顔浮かべてんだろが』

パァァ...

俺『』ピクッ

村人B『………時間か』

俺『ふむ、そろそろ目覚めるという事なのでは?』

村人C『だろうな。……短時間とはいえ、久し振りに話せて楽しかったぜ俺さん!』

役人『ちなみになんであの2人がいねェのか、分かるか?』

俺『』フルフル

役人『「自分たちが会うべきはもっと後だろうから」、だとよ』

村人C『はは、いつ聞いてもかっこつけてんな』

村人B『とはいえ、翻って言えばいつかあの2人とも同じ形で会う事になるだろう……おっと、夢という形でな』

村人C『…今度こそマジでお別れって事だな』

役人『暫くはこっち来んじゃねえぞ? あんな事言ったあいつらがカワイソ過ぎるぜ』

俺『』コク

パァァァァッ...

村人B『……では』

村人C『おう』

役人『ああ』


四人『『またな!』』

ガバッ!!


俺「」

俺「」チラ


シーン......


俺「」

グッッ

~1週間後~


農民A「ほんじゃあ新たな村長の誕生を祝ってぇ~~~!!」

農民B「けんぺぇ~~~~~い!!!!」

農民C&D『かんぱ~~~~~い!!!!』カチーン!

俺「」カチン

ワイノワイノ

俺「」ペコリ

隣村農民「へぇ~、このにいちゃんが村長を!?」

隣々村村長「わっかいのぉ~~……大丈夫なんか?」ボソッ

老爺「ふぉっふぉっふぉ、まあ見とりんしゃい。この人ぁ本物じゃて」

隣々村村長「そうかぁ? あんさんが言うんなら間違いはないと思うがのぉ……」

隣村村長「まあ、お手並み拝見と行こうではありませんか」フッ

……………
………

~1年後~


隣村村長「……では、とどのつまり?」

俺「ふむ、こちらの納税をそちらが一部負担する代わりに芋・青菜類を提供するという形が最善なのでは?」

隣村村長「…そうですね。結局その形が一番いいかもしれません」

俺「ふむ、ではこの様な形で終了という事で良いのでは?」

隣村村長「分かりました。納税の件と、都市部方面行き道路の整備はこちらが請け負っておきます」

俺「」コクッ

~隣村~


隣々村村長「んじゃあ茸類はそういう事で…と、そういやぁ例の新村長、上手くやっとるらしいのぉ?」

隣村村長「そうですね……いえ、本当に驚きましたよ。初めこそ拙かった部分も散見されたが、今や普通に『村長』になっている」

隣々村村長「じゃのぉ。評判が悪いという噂もきかんし、ありゃ正しく本物かもしれんなぁ」

隣村村長「ですね。それにあの村も以前までは特徴のない村でしたが、この頃は建築から整地作業、並びに治水作業に精力的になっています。出生率も上がったとの事です」

隣々村村長「うむ。明確に成長しとるな、あの村は」

隣村村長「これからは本格的にあの村に注目した方がいいかもしれませんね……」

~村内~


トンテンカン

農民A「おーーーい! そっち頼むっぺぇ!!」

農民B「どれ運べばいいっぺかぁーーー!!」

農民A「そっちの四角い木材を頼むべーーーーー!!」

ザックザック...

農民C「ふう……こんなもんだっぺか?」

農民D「うーん、もうちぃっとやるべきじゃないっぺか?」

農民C「そうかぁ? んじゃもうひとがんばりするっぺな!」


俺「」ジーッ

スタスタ

農民A「んん? おお、俺さん! もう仕事は終わったっぺか?」

農民B「お疲れ様だべ!」

俺「ふむ、俺も手伝うべきでは?」

農民A「とんでもないべ! 俺さんも書類仕事で疲れてるべ? 無理にやる必要はないべ!!」

俺「」フルフル

ガシッ

農民B「お、俺さん……良いっぺか??」

俺「ふむ、書類仕事だけでは体も鈍るのでは?」

農民B「俺さん……やっぱり俺さんが村長になって良かったべぇ!!」ブワッ

農民A「そんじゃ一緒に運ぶべ! そんで今日はおらの嫁が羊肉で野菜シチューを作るべよ!! 俺さんもご相伴に預かってくれだべ!!」

俺「」コクコク

農民B「……俺さんの方が目上なんだからご相伴に預かってくれは日本語的に違うっぺよ?」ボソッ

農民A「へっ? に、日本語ってなんだべ?」


………
……………


農民A「これで全員分の新築が完成したべ~!!」

農民D「俺さんのお陰だっぺなぁ!!」

俺「」フルフル

農民B「そう謙遜する事もないべ!俺さんはほんと良く頑張ったべよ!!」

タッタッタッ

農民C「俺さ~ん、お客様が来てるっぺよ~~!!」

俺「」コテン?

元帝国中将「どうも」

俺「ふむ、世紀の犯罪者がそう易々と出歩いてはいけないのでは?」

元帝国中将「こんな老人を見て特級指名手配犯と思う輩などいませんよ。……さて、お互い7人目を殺して以来ですね」

俺「」コク

元帝国中将「ご存知の通り、自分は残りの魔王の子が居ない事を確認したので犯罪者になった訳ですが……まあ、最近はちんちんも衰えてきましてねえ」

俺「」ハァ

元帝国中将「いやふざけた話ではないのですよ。幼女や少女を犯す為に磨き続けた剣の腕ですが、些か磨き過ぎたようですね……もう、比肩する相手も居ない」

元帝国中将「ちんちんは萎びれ純粋に実力面での相手も居ないとなれば、あとは隠居しか道はないでしょう。………という事でこちら村長になられた事のご祝儀です、多分7000万Gくらい入ってますかね? それと引き換えにとでも思って、ここで住まわせてくれませんか?」ドンッ

俺「ふむ、別に金は要らないがここでは窮屈なのでは?」

元帝国中将「窮屈くらいがちょうど良いんですよ、世俗離れにはね。それと金の方はどうか受け取って下さい、これは自分の最低限の礼儀みたいなものですから」

俺「」...ジャララッ

元帝国中将「それで良いんです。ではこれから何十年かお世話になりますね、村長殿」ニヤ

~3年後~


農民D「みんなぁ~~~~! つ、ついに産まれてくれたっぺよぉぉぉ~~~~~~!!!」ビエーン!!

赤ん坊「ぅ~………」

農民B「おお、やったべな!!」

俺「ふむ、おめでたいのでは?」パチパチ

農民A「嫁さん頑張ったなあ!! ほれ、粥だべ!! しっかりそしゃく?して食べるべ!!」

嫁さん「あらま、ありがとうごぜえますだぁ」ニコリ

農民C「あっはっは、これでみーんな子供出来たって事になるべな~!!」

農民A「うんにゃ、それは違うべ!! 俺さんが……俺さんが出来とらんべ!!」

俺「」ピクッ

農民B「あぁ、そういやそうだべなぁ」

農民D「俺さん、結婚はしないだべか? 俺さんとなら村の女手でも諸手をあげてくれると思うべよ!!」

農民C「結婚は良いべよ~!! 毎朝嫁のうんまい飯も食えるし、愛する子どもも出来る!! 毎日が輝いて見えるべ!!」

農民A「時期は好きにすれば良いと思うだべが、いつか必ず結婚くらいはしとくべきだと思うべよ! これは人生経験うんぬんというよか、俺さんの遺伝子がこの世に遺らねぇと勿体ねえだべ! 俺さんみたいな偉大な人の種こそが後世に残っていかなきゃならないんだべ!!」

農民B「まあ前向きに考えてくれると嬉しいべな! 俺さんが結婚すれば、そんだけで村民みんな安心するはずだべよ!」

俺「」...コク

……………
………

俺「」スタスタ

シュバッ!

俺「!」ッキキィンッ!!

元帝国中将「おお、流石に衰えませんか。不意の一撃を防がれたのはショックですが」

俺「ふむ、何か用なのでは?」

元帝国中将「いえ別に。ただ見掛けたのでやってみただけです」

俺「」...ヤレヤレ

元帝国中将「……ほう、結婚の事を話していたと?」

俺「」コク

元帝国中将「まあ、その辺については助言できる事はないですねえ。自分は犯した女の数こそ多いですが、結婚する前に捨てたか殺したかのどちらかですので」

俺「」ジトッ

元帝国中将「といっても、深く考え過ぎなくても良いんじゃないですか? 時期が来たら『あっこいつ犯したいな』とか思う女性が現れる筈ですよ。自然とね」

俺「」

元帝国中将「さて、私は行きますが。俺さ……いえ村長殿、既に知っておりますか?」

俺「」コテン?

元帝国中将「そうですか。最近景気回復後の安定が続いたからか、戦争の機運が高まっているそうですよ。既存国家は当然として新国家の神皇国、学園都市国家も例外ではありません。何処かが争いを始めれば、新王国も流れに乗らざるを得ないでしょうね」

俺「ふむ、それは新聞社や週刊誌の販促誘導なのでは?」

元帝国中将「ところがどっこいそうでもないのですね。数年前、自分がとある貴族令嬢をレイプしに某公爵邸に侵入した時見掛けた文書に興味深い事が書かれていたのですよ」

元帝国中将「もちろん詳細は覚えていないので朧げなのですが、そこには“共和国に不当な経済制裁を行われた為に条約を一部破棄した”だとか“神皇国の宗教団体を取り締まったら自国籍の人間を拘束された”とか……まあ要するに、戦争とまでは行かずとも紛争の近因としてなら成立するであろう事が羅列されていました」

元帝国中将「ここから考えるに、戦争が行われるというのもまるきり嘘とは思えないのですよね。この村は比較的王都とは離れていますが、旧王都とはかなり近いです。旧王都もそれなりの騎士団を保有しておりますので、戦時はついでにとここも攻撃される可能性が低くはないです。町長殿のお父上が建てたと言われるあの町の砦の様な、少なくとも中規模魔法攻撃くらいなら防げる防衛機構は造るべきだと思いますね」

俺「」コク

元帝国中将「では今度こそ行きますね。山菜でも取りに行ってきます」

俺「」フリフリ

~1年半後~


ザーーーー...

農民A「ふぁぁ……今日は暇だっぺねえ」

農民D「雨だからだべね。別におらたちご本とか読めるわけじゃなし、晴耕雨読もクソもないべな」

俺「」ペラッ、ペラ...

農民B「でも俺さんはなんか読んでるべ。よくわからんけど凄いべ」

農民C「そもそも何でみんなおらの家に集まってるんだべ??」

農民A「まあ良いでねが、それよかs」ガラララッ!!

王国兵「こちらに居られましたか、村長殿!」

俺「」ピク

農民C「わ、な、なんだべか?」

王国兵「こちらの手紙をお読み下さい、王国政府からのお達しです! ……受け取りましたね、では失礼します!」ガラッ

農民D「なんだったっぺか今の」

農民B「ともかくその手紙読んでみるべ! なんか面白そうだべ!!」

俺「」コク

ピリッ スッ

農民B「えーとなになに……『我が新王国に生きるすべての国民へ。これより新王国は学園都市国家と開戦をする運びとなった。ついては、戦時中に於ける食料・武器の確保と非常時の徴兵準備を各市町村で行って欲しい。なお戦時中は税の取り立てを行わない事とする』………」

農民C「………えっ?」

農民A「せ……戦争………?」

農民D「戦争が、起きるっぺか……?」


俺「」



グシャッ

スタスタ

農民D「お、俺さん何処行くっぺか?」

俺「ふむ、急ピッチで砦と村周縁の外壁を建造しなければならないのでは?」

農民A「そ、そうだべな……村を守る為に、おらたちも動かないといけないべ」

農民B「とっというかヨメや息子にもこの事伝えなきゃだべ!!」

農民C「お、おらも村のみんなに伝えてくるべ~~!!」ダダダッ

エッセ、ホイセ!
カンカンカン!!
ヨイショ、コラショ、ドッコイショ!!


農民A「そっちの壁頼むべー!! おらぁ鉄扉の補強すっぺ!!」

農民D「頼んだっぺ~~!!」



隣村村長『なるほど……そちらにも来ましたか、例の手紙が』

俺「」コク

隣村村長『………。いや、こればかりは仕方がない。我々もできる限り協力し合いましょう、互いの村民の為に』

俺「」コクリ ピッ

ザッ

元帝国中将「もう建造に取り掛かっているのですか。早いですね」

俺「」クルッ

元帝国中将「こんにちは。学園都市国家と争うのだそうですね」

俺「」コク

元帝国中将「学園都市国家は18歳以下の男女によって構成される国家です。19歳以上は特例もしくは研究職としての滞在しか認められておらず、その若さゆえに非常に好戦的で成長著しい国家といえます。主に魔法や学問に強く戦闘も魔法を中心にしてくるでしょう」

俺「ふむ、もしや入国経験があるのでは?」

元帝国中将「当然あります。15年以上前でしょうかね? 建国時に学徒議員を何人か犯しました。いえほんとキツくて気持ちよかったですよ、瑞々しさ溢れる膣内を堪能出来ました。まあ抵抗されたので全員殺したのですが」

俺「」ハァ

元帝国中将「なんですかその目? もうやってないんだからいいじゃないですか」

俺「ふむ、そういう問題じゃないのでは?」

農民B「俺さん終わったべ~~! 迎撃ミサイルとバリスタもしっかり付けてあるべ!!」

農民C「ほ、ほんとにこれで良いんだべか、俺さん?」

俺「」グッ

元帝国中将「ほう、完成しましたか。……懐かしいですねえ、あの町の砦と殆ど同じだ」

俺「」コクコク

元帝国中将「これなら万が一攻撃されても村は大丈夫かもしれませんね。まあ、一番良いのは何もされない事なんですが」

~数ヶ月後~


TV『……次のニュースです。先日開戦が決定した新王国と学園都市国家に続き、合衆国と共和国の開戦も決定されました。他にも様々な国家・組織が戦闘を行っており、これは人類史上稀に見る世紀の世界大戦となる見通しを………』

農民A「遂に、始まっちまったっぺ……」

農民B「田んぼと家族だけが心配だべな……」

農民C「で、でもあの砦があれば大丈夫だべ! おら昨日壁ぶん殴ってみたっけんど、逆におらの拳が折れかけたべ!」

農民D「おめバカだべか??」

俺「」チラ

シーーーーン...

俺「」

俺「」フゥ

農民B「…俺さん、どうしただべか? 気分悪いだべか?」

俺「」フルフル

農民A「でも気持ちはわかるべ……いつ攻撃か来るか心配でならんべよ」

農民D「いうても、流石に今日明日は来ないんじゃないべか? 距離的にも無理があると思うっぺよ」

農民C「だと、良いんだっぺが………」

~翌々日未明~



...ッドォオオオオオオオオオオオンッッ!!!!!



俺「」ガバッ!

ガチャッ


ダダダダダッ!

シュタッ

元帝国中将「起きてましたか。わざわざ起こしに行く必要はなかったですね」

俺「ふむ、状況は?」

元帝国中将「焦ってちょっとフレーズ崩れてますよ……大丈夫です、まだ一撃目ですから。音の割に被害は皆無です、砦の表面が温まった程度でしょう」

俺「ふむ、取り敢えず女子供、老人を集めて」

元帝国中将「予め建設しておいたシェルターに入れておく、必要がありますね」

農民A「大丈夫、大丈夫だっぺよ! おらぁ死なん、なんたって天下無敵の俺さんが先導してくれるんだからな! 2人とも、静かにここで待ってるっぺよ!!」

嫁「………死ぬんでねえべよっ!」

坊主「おっとう……絶対生き残るっぺよ!! 絶対だぞ!!」

農民D「……これで全員、入っただべか?」

農民C「たぶん、そう思うべ」

農民B「俺さん、すぐに砦に行って応戦するべ!! いまだに攻撃も続いとるべ、いかに堅牢でも何もしなくちゃマズイっぺよ!!」

俺「」コクッ!


ダダダダダッ...

学徒兵A「砦を突破しろ! 食料を奪え!!」

学徒兵B「死ねェ王国の猿どもがぁ!!」ドガァン!!

学徒兵C「なによあの町砦かったいわね!! なんかムカつくわ!!」


農民C「ま、魔法がズコバコ撃たれてるべ……」

農民D「どどど、どうやって浮いてるべかあいつら??」

農民A「お、恐れちゃダメだっぺ!! バリスタで撃ち落とすべぇ!!」

ズドォン! ズドォンッ!

学徒兵B「うぎッ!?」ブシュ!

学徒兵D「あぎゃァ!!?」ドスッ!!

学徒兵A「!? 反撃に転じてきたか……!」

学徒兵C「猿の癖に調子乗んじゃ、ないわよっ!!」キィィィンッ ヒュオッ!!

農民D「ほげっ!?」ザシュウッ!!

農民A「!!? お、おいしっかりするっぺ!!」

農民D「あ……ぉ、ぁ……」ガクッ

農民B「お、おい…………おいっ!!?」

俺「」...ギリッ!

ガチャッ ガチャッ!

ドドドドドドドドドドドドッッ!!!!

学徒兵A「がはぁっ!!?」ブシュッブシュッブシュウッ!!

学徒兵C「ひぁッ!?」ブシュッグジュッ!!

学徒兵E「オゴッ!?!?」パァンッ!!


農民C「………ちッ、ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」ズドォンッ!

農民B「ゆ、ゆ、許さねぇ………許さねぇべええええええええええええええええええ!!!!」ズドォンッ!

農民A「………クソがぁあああああああああああああああああああああ!!!!???」ズドォンッ! ズドォンッ!

学徒兵F「ひ……ひぃいいいいいいい!!」パチンッ

パキパキパキッ...ヒュンッ!!

農民B「が!!?」ザクッ!

農民A「!? こ、氷の矢……!!?」

俺「」ガバッ!

農民B「うぎ………ッ、お、俺さん………おらなんかにゃ構わず、奴らを……奴らを………!!」ドクドク...

俺「」...ギュッ!

クルッ

ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッッ!!!!!!!

学徒兵長「なに? ある村だけが落とせない?」

学徒兵G「はい。異常にしぶとく、また比例して被害も甚大となっております。このままでは方面軍の3~5%程度を失う可能性も…」

学徒兵長「ふむ……別にそこは重要拠点となる場所でもないのだな?」

学徒兵G「食糧は多い様ですが……あとは砦が有効利用出来るかというところでしょうか」

学徒兵長「そうか、なら退かせろ。ただし最後の最後で大規模魔法でも撃たせてやれ、ただ単に撤退させるだけでは士気の低下に繋がるだろう。軍人といえど我々は所詮ガキだからな、ストレスは適宜発散させる必要がある」

学徒兵G「了解です。では、その旨伝えに向かいます」スゥッ ヒュウウウウッ...

学徒兵長(………とはいえ初っ端で50~100を失ったというのは幸先が悪いな。王国の人間を舐めていたか)

学徒兵長(だがまあ、初陣となればこんなものかもしれないな。致命的ではない、気を落とさずにとにかく旧王都に進軍を……)

ゾクッ

学徒兵長「………!!?」クルッ


コッ、コッ、コッ...




元帝国中将「やあ」ニタア

農民C「クソッ、クソッ、クソぉッ!! いつになったら……いつになったらこの地獄は終わるんだベぇ!!?」ズドォンッ!

農民A「泣き言言ってんじゃねェべ!! おらたちは……おらたちは絶対に、勝たなきゃいけないんだべぇえええええええええええええええ!!!!」ズドォンッ!

俺「」ドドドドドドドドドドッッ!!!


学徒兵H「なんなんだよあいつら……!? 単なる農民の癖に、おれたち軍人相手にここまで粘るなんて………!」

学徒兵I「ねぇ指揮系統どうなってるの!? こんなところ相手してたってもう無駄よ、進軍した方が合理的だわ!!」

ヒュオッ!

学徒兵G「兵長からの伝言だっ、撤退して良いとのことだ! ただ各自、大規模魔法でも撃ってやれとも言われた! ……一発でかいのをぶちかましてやれ!!」

学徒兵H「っち、しょうがねえ……爆破魔法撃ったら撤退だ!!」キュイイインッ

学徒兵J「最後のすかしっぺだ!喰らいやがれクソザルどもが!!」ズォォ...!!

俺「」ピクッ

農民A「な、なんだべありゃ………!!?」

農民C「げ、迎撃ミサイルの方を使うべ!! あいつらごと吹き飛ばさんとヤバいべ!!」


学徒兵J「さァ死に絶えろッ、猿人がぁあああああああああああああッッ!!!!!」

学徒兵K「滅べぇええええええええええええええええ!!!!!」

学徒兵G「微力ながら俺もっ、手伝わせてもらうぞっ!!」

ズォオオオオオオオッ!!
ギュルルルルルル!!
ヒュオオオオオオオオッッ
ヴゥウウウウウウウンッ!!
シュォオオオオオオオッッッ
ゴォオオオオオオオオオオ!!!

農民C「げ、迎撃ミサイル発射ァ!!」ポチッ

ガチャンッ ウィーーーン...

......ズドォォンッッ!!!!!


ゴオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!

ドォオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!


ドッガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッ!!!!!!


モクモクモク...

農民A「ゲホッ、ゲホッ……ぐっ、ど、どうなったべ………!?」

農民C「と、とりあえず無事みたいだべ……!!」

俺「」...ギロッ



学徒兵K「な……い、生きてる、だって!?」

学徒兵H「………う、うそだろ?」

学徒兵I「私たちの渾身の魔法が……!?」

学徒兵J「む、無効化された………!?」

学徒兵G「……くっ、とにかく撤退だ! 結果は結果だ、割り切るしかない!!」

学徒兵L「ば、化け物どもめ……!」

スゥッ スゥッ スゥッ

ヒュオオオオオオオオオオオオッッ...

農民A「………え、て、撤退していくべ……?」

農民C「………勝ったべか、おらたち?」

俺「」...コク

農民A「…………」

農民C「…………ほんとに、勝ったべか。でも」

農民A「んだ………」チラ

農民B「」

農民D「」

農民A「こんな勝利……なんも嬉しくないべよ………」

~森~


学徒兵G「兵長、ただいま戻りま……っ!?」シュタッ

学徒兵長の生首「」

学徒兵I「………へ、兵長?」

学徒兵K「な、いったいどうして………!?」

ザシュザシュザシュザシュザシュッ!!!!!

学徒兵J「……あ………?」

学徒兵L「なん………?」


ドサドサドサドサッ

元帝国中将「弱いな。消耗していたとはいえこれで一国の軍隊か」ヌゥッ

元帝国中将(……これだけでは足りないな。陰茎こそ萎え衰えたが、ヒトを斬り殺すのは………未だに愉しい)ニィィィ


クルリ


元帝国中将「………西に数多の気配を感じるな」

元帝国中将「………狩るか」ニタァ

~翌日~


TV『速報です! 新王国軍と学園都市国家軍による戦争ですが、旧王都方面軍が半壊状態との情報が入りました! 原因は明らかになっておりません! 繰り返します、旧王都方面軍が半壊状態になっている模様です!! 原因は現在明らかになっておりません!! 繰り返します、………』


俺「」

農民A「…………」

農民C「…………」

スタッ

農民C「……俺さん、どこに行くだべか?」

俺「ふむ、彼らの遺族に土下座するしかないのでは?」

農民A「………俺さんは頑張ったべよ。実際殆ど無傷なのはこの村だけで、他の村はすべて壊滅して作物も根刮ぎ奪い取られたと聞いてるべ」

俺「ふむ、他がどうであれ俺が無能な事には変わりがないのでは?」

農民C「…………」

農民A「………おらは、正直に言うべ。今のおらには、俺さんをヨイショする気力もないっぺよ」

農民A「……でも………俺さんが無能なら、おらたちなんてもっと無能だべ。ゴミだべ。カスだべ。………それだけは、言えると思うべ」

俺「」...フルフル

農民C「……いや、実際その通りだと思うべよ。おらたちは……無力だべ………」

俺「」

農民C「……おら、俺さんが土下座しに行くってんなら、付いてくべよ。俺さんだけに責任を背負わせるわけにはいかないっぺ」スッ

農民A「………そうだべ、な。おらも行くべ、俺さん。おらがあのクソガキどもを1人でも多く撃ち殺してれば、事態は変わってたかもしれないんだべ」スッ

俺「」

俺「」コク

農民C「………じゃあ、行くべよ」ガラッ

農民A「はは……俺さん、痛くないっぺか?」

農民C「顔、アザだらけになっちまっただなあ……」

俺「」コクリ

農民A「まあ、でも……」

農民C「怒って当然、だべよ。寧ろおらは、刺されるくらいは覚悟してたっぺ」

農民A「…………おら、しばらく元気出ねえや。今日はここでお別れにするっぺ」

農民C「んだな……。じゃあ2人とも、また明日な……」

スタスタ...

9K

スッ

元帝国中将「酷い傷ですねえ、村長殿。貴方とあろう方が負傷する訳はないでしょうし、大方死者の遺族に殴られたとかでしょうか」

俺「」チラ...

元帝国中将「目に生気も籠ってませんね。まあでも、戦争ってこんなものですよ」ドッコイセ

俺「」

元帝国中将「ニュース見ました? なんだか方面軍の半分を殺ってしまったみたいですね、自分が。殺し終えた時はだいたい1000人くらい相手したか?と思っていたのですがいざ開けてみれば3000人弱ですよ。自分でもビックリです」

元帝国中将「ただそのお陰で新王国側が現在優勢になっている様ですね。技術力と魔法力は学園都市に分がありますが、代わりに単純武力と数はこちらが上ですからね。ちょうど総合的に互角でも少しでも崩れるとああなるという訳です」

元帝国中将「………本当に元気がないですね。今日は休みますか?」

俺「」コク

元帝国中将「そうですか。ならなるべく早く快復して下さいね。自分も話し相手が居ないとつまらないですから」スタスタ

俺「」

スッ

トコトコ...

~1年後~


姉「こっちだよ~!」

弟「待ってよ姉ちゃ~~ん!!」

ニート農民「おら働きたくねぇべ……」

農民父「良いから働くべ! タダ飯食らいを置いとく理由はないだべよ!!」

ニート農民「お、横暴だべーーーーー!!」

ワイノワイノ



農民A「……ようやく復興が出来てきたべな」

農民C「だべな。少なくとも表面上は……活気を取り戻した様にも、見えるべ」

俺「」コク...

農民A「とはいえ、1年程度じゃ全員が全員傷が癒えたわけじゃあないべ。なんならおらもその中に入るくらいだべ……」

農民C「なあ、俺さん……これからどうするっぺか? テレビはもう王国の勝利は確定とか騒いでっけど……」

俺「」...グッ

俺「ふむ、当座の目標はまず以前よりも生産・生活を高水準に上げる事なのでは?」

農民A「生産……作物とかをって事だべか?」

俺「」コク

農民A「出来るっぺかね……隣村もはす向かいの奥の集落も、隣の隣の村もみーんな学園都市にやられたっぺ。前みたいに不足作物の共有や共同作業が出来ないから、キツいと思うべ………」

俺「ふむ、それでもやるしかないのでは? でなければ、彼らの死も無駄になるのでは?」

農民A「………。そうだべな。アイツらの人生は、生き様は無駄じゃないっぺ。それを証明する為に目指すっていうのは、おらも賛成だべ」

農民C「おらもだ。そういう事なら、なんだかやる気も湧いてくるべ……!」グッ

農民A「………よし!! 俺さん、今すぐに取り掛かるべ! 何年掛かるかは分からんべ……俺さんにも相当迷惑かけるかもしんねえ! でも、アイツらの為にも! おらたちが今、立ち上がらなければいけない時だと思うっぺ!!」

農民C「俺さん、やるべよ! この村の未来を……おらたちが、取り戻していくんだべ!!」

俺「」コクッ!!

~20年後~


ドンチャンドンチャン♪


綿飴屋「おいし~~~~いわたあめはいかがか~~~~いっ!!?」

アイス屋「氷菓子~っ! 氷菓子売ってますよ~~~~っっ!!」

射的屋「手前でアメちゃん、真ん中ので当村産スナイパーライフル、奥のでなんとPS5をゲットだよぉ~~~~っっ!! ちなみに一番奥のを当てたらな、な、なんと! おじさんの金の玉が貰えちゃうぞ~~~~~!!!??」

射的屋ガキ「お父さんが自費で買ったただの金塊なので安心して下さーい!」



農民C「ここも変わったっぺなあ……こんなデカい祭りが出来る村なんて、たぶん大陸でも一握りだべよ」

俺「ふむ、子どもさんのサポートに向かうべきなのでは?」

農民C「うんにゃ、あの子自身が祭りの運営を執り仕切りたいって吐いてみせたんだべ。それをおらがとやかく言うのは違うべよ」

俺「ふむ、お前も変わったのでは?」

農民C「そうだべか? はは、病気でアイツも死んでからっぺかなぁ……なんだかこう、心に甘えが消えた気がするべ」

農民C「…………」

農民C「………なあ、俺さん」

俺「」

農民C「本当におらが次の村長で良いんだっぺか?」

俺「」コク

農民C「そうだべか。……まぁ、俺さんが言うんなら大丈夫だっぺな。今まで俺さんが言う事に間違いは………うん、なかったっぺ」

俺「」

農民C「それに、明日発つんだったっぺか。嫁探しだったべな? 確か」

俺「ふむ、そんな事一度も言っていないのでは?」ジトッ

農民C「いい加減結婚すりゃあ良いのになぁ……んまあ冗談は置いといて、このままじゃ村が自分に依存しそうだから辞めて出て行くってのも凄いっぺなあ。つっても二十数年もやりゃあ誰にだろうが依存して当然だと思うけんどな、はは……」

農民C「……………。俺さん」

俺「」

農民C「たまには戻ってきてほしいべ。……昔から何度も何度も言ってるっぺが、ここは俺さんの故郷じゃあない。でも、おらたちはみんな俺さんを家族だと思ってんだべ」

農民C「所詮ここは田舎村だべ。祭りが開ける様になっても変わらん、来る意味なんて皆無も同然だべよ。……でもな、もし俺さんも、おらたちを家族だと思ってくれてるんなら………」

ガシッ!

俺「ふむ、ここも確かに俺の“故郷”なのでは?」

農民C「っ、俺さん………!!」グスッ

農民C「よ、よぉしっ! 村長はおらに任せるべ!! 俺さんも安心して明日出て行くといいべっ!! ………だどもっ、出来れば今年も一回は帰ってきて欲しいべ!!」

俺「」コクコク

農民C「……じゃあ。一足早いけんどっ!」

ガシッ!

農民C「いってらっしゃいだべ、俺さん!」ニカッ!

俺「」コクッ!

~翌朝~


俺「」スタスタ

ザッ

元帝国中将「おはようございます、俺さん」

俺「」

俺「」カチャ...

元帝国中将「………よく、お気付きになられた。貴方の察する通りですよ」

俺「ふむ、お前と俺は友の筈では?」

元帝国中将「そうですね。だが、だからこそ自分に引導を渡して頂きたい。もはや孫と祖父ほどにかけ離れた姿で言うのも何ですがね」

俺「ふむ、まだ寿命はあるのでは?」

元帝国中将「自分は色褪せた日々を生きる気はないんですよ。これからの人生に有意義な事があるとは思えません。なれば、ここで確かめたい。どちらが、“上”なのかを」

俺「」...ガチャ、ガチャッ

元帝国中将「嬉しいですよ。……二丁ライフルは、貴方の一番得意な戦闘スタイルでしたね」

元帝国中将「自分も貴方も変わった。自分は女に興味も無くなり、貴方は例の戦争以降芯が生えた様に見える」パチンッ

ズルッ...ズルッ...

俺「」

元帝国中将「だが、互いにそれ以前の事が心根、生き方、あるいは力に根付いている。自分なら女に、貴方なら村長……というよりは、長に」

乞食女「あ……ぁ………あ…………」ズルッ...

元帝国中将「」ヌチュ


ズブリュッッッ!!!!!


乞食女「あぇ……っ?」グリンッ

ドサッ

元帝国中将「魔刀、“雌桜”。人間非人間問わず、雌の膣を『鞘』とし、抜刀から時間を経らねば経らぬほどその妖力を維持する呪いの刀です。……常日頃野盗やら魔物やら斬っていたら、いつの間にか魔力を宿していましたよ」

元帝国中将「さあ、時間も惜しい。さっさと済ませましょう。最期の戦いを、ね」チャキッ

俺「」スチャ...



ヒュンッ!!

ゴウッ!!

元帝国中将「ッはァ!!!!」ズバァッッッ!!!!!

俺「っ」サッ



ッドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッッッッ!!!!!!!!



元帝国中将「間髪入れずに行きます、よッッ!!!!」

ドヒュンッ!

俺「」バッ!

ドドドドドドドドドドドドッッ!!!!

元帝国中将「」ガキキキキキキキンッ!

クルッ

ッバン!!

ヒュオオオオオオオオオオオオッッ

元帝国中将「ふゥうううううううううううッッ………だァりゃァ!!!!!」ザンッ!!!

俺「」サッ

ブォオオオッ!!

俺「………!」グラッ

元帝国中将「」ズダンッ!

ザシュッッ!!!!

ブシュッ...!!

俺「………っぐ!」

元帝国中将「」ヌジュッッ

ゴォッ!!

俺「く、っ」ゴロンッ

ザンッッ!!!

元帝国中将「………ほう、今のを避けますか」ググッ......ズボッ!

俺「」チャカッ

ズドドドドドドドドッ!!

元帝国中将「」サッ サッ ヒュンッ ピョンッ サッ

ドッ!!

俺「」キッ

ダッ!

ドドドドドドドドドドドッッ!!!!

元帝国中将「」ズバズバズバズバズバズバッッ!!!

俺「!」

元帝国中将「」ヴンッ!

俺「」キョロッ キョロッ

元帝国中将「」シュンッッ

俺「!?」クルッ

元帝国中将「」ヒュオッ

俺「………ふッ!」ヒュンッ


ッッギィイイインッ!!

タッ

タッ


俺「」ドクドク...

元帝国中将「………今のところは自分が優勢の様ですね。老爺になろうとも、っは、貴方の様な上位人類とも、戦えはする、という事でしょうか……はぁ、はぁ」

俺「ふむ、その割には息切れをしている様なのでは?」

元帝国中将「はは、いや、それは仕方がないでしょう。なんて言ったって自分、もう90ですからね……」ヨロッ

元帝国中将「………っと。ああ、本格的に動けなくなりそうだ………申し訳ありませんが、」

ヴンッ!

ガキィンッ!!

俺「」グググググ...!!!

元帝国中将「短期決戦で行かせて貰います、よッ!!」ジャキッ ゴウッ!!

俺「!」サッ

元帝国中将「ゥおらァッ!!」ドスッ!! グヂュリッッ!!!!

俺「か、は……!?」

元帝国中将「ッふふ、捕まえました、よォ!!!!」ギュルリッ!!

俺「………っう、ぐぅううううう………!!?」ブシュウウウウウウッ!!

元帝国中将「うぉァあああああああああああああああああッッッ!!!!!」ドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッドスッ!!

俺「が、ぐっ、ごぉっ……!!?」ブシュッドプッブジュッ

元帝国中将「ぃイィいぃイィイやァああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!」ドチュンッッッッ!!!!!!!

俺「っぐッ、がぁああああああああああああああああああ!!!!!????」

ブシャアアアアアアアアアアアアッッ!!!!!!

元帝国中将「」ニタァァッッ

ズッ、バァッッッ!!!!!

俺「うがぁああああああああああああああああああああああっっ!!!!!????」ブシュッ、ベチャアッッ!!

ドサァッ!

俺「………あ、が………っ!」ベシャッ!

元帝国中将「ふぅーーーーッ、ふぅーーーーッ、ふぅーーーーーーッ………」

ズル...ズル......

ザッ...

元帝国中将「自分のォ………勝ち……です、ねぇッ………!!」ニタァァ

ヒュンッ


ザクッッ!!!!

俺「………!」

元帝国中将「…………」

クラ...

ドサリ

元帝国中将「……はは。最後の最後で、体力が尽きてしまいました」

元帝国中将「ああ、いや……体力だけではないですね。意識も薄まって来ました」

俺「ふ、む………おまえ…………、バカ、なのでは………?」ハァ、ハァ...

元帝国中将「でしょうね……バカなんでしょうよ……自分は………」

元帝国中将「…………」

元帝国中将「お礼を、言っておきましょうか………」

元帝国中将「正々堂々勝負してくれて、ありがとうございます………」

元帝国中将「貴方なら本来、あの無人ステルス機を使えば自分など数撃で殺せていた……ここはただの荒地です、味方を巻き込む心配もなかったのにもかかわらず………」

元帝国中将「だが、貴方はついにそうせず……自分の最期に向き合ってくれた………」

元帝国中将「………………」

元帝国中将「自分はですね………初め貴方を、町長殿の腰巾着辺りにしか思っていなかったのですよ…………」

元帝国中将「ですがね……町長殿の右腕として、活躍する貴方を見て………そんな蔑視は、いつの間にか消えていた…………」

元帝国中将「まさか………ここまで深く関わるとは…………思わなかったんですがねえ………」フフ

俺「」ハァハァ...

元帝国中将「……自分は………彼の嫌う、彼の対局にある、クズでした………彼をこちらへ引き摺り込み………彼に良心の呵責を生じさせていた…………」

元帝国中将「わかっていたんですよ………町長殿が自身を…………『クズ』と捉えているのではないかとね………」

元帝国中将「だが…………私は……………それを無視し………………」

元帝国中将「同じ位階に……………貶めた……………自らの名誉………………ため…………………」

元帝国中将「どうしよ………ない……………自分は………………クズだ……………………」

元帝国中将「だが………………それでも…………………町長…………あな……………会え……………………後悔は…………………………な………………」

元帝国中将「もうし……………い…………………責め………………然………………れど…………………」

元帝国中将「………つだけ………………………いたい…………………」




元帝国中将「……………………あり……………と……………………」




ガクッ


俺「」

俺「」ヨロヨロ...

ガシッ

ガシッ


元帝国中将「」

乞食女「」


ズルッ、ズルッ、ズルッ......

~墓地~


フード俺「」

クルッ

墓守「あの」

俺「」チラ

墓守「男の人の方、もしかして、あの大悪人の…」

俺「」フルフル

墓守「………。そう、ですか」

墓守「……私は墓守です、死者の墓は一律に扱います。生前、どんな事をしていたとしても」

墓守「そのふたりの墓は任せて下さい。私が責任をもって、生涯世話をしましょう」

俺「」コク

……………
………

俺「」スタスタ

ピコン

俺「」ピタ

スイッ

新王国政府公式アカウント『【記念】今日は学園都市が新王国領に併合された日です! 今や王国随一の学術都市として知られる学園都市ですが、当時は学徒内閣を中心に二院制を採用した立派な国家でした。また当時と現在の18歳以下の男女の数は一切変わっておらず、非常に珍しい都市として世界的に有名となっています!』

俺「」 ピッ

スタスタ...

Steam(PC)架空戦争略奪
マルチサバイバルゲーム
『ラスト』シーズン7・第3話

『RUST. #23(衛門参加)
手加減無しで加藤純一王国を作る。2日目』
(21:18~放送開始)

https://www.youtube.com/watch?v=sC3mHB9MKWM

期待してたけどエタか

普通に好きだったよ

未完だけど面白かったよ

SS速報避難所
https://jbbs.shitaraba.net/internet/20196/

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