僧侶の報告書 (43)
『勇者部隊潜入作戦報告書』
・作戦No472-5513
・××××.××.××~××××.××.××
・メンバー◾️◾️◾️.◾️◾️◾️.◾️◾️◾️計3名
作戦目標:ゲート解放
作戦方法:●●と●●の接触
結果:-----
経緯:所見を踏まえて“貴方”へ捧げます。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1547869677
レポート1 ー勇者ー
波の穏やかな海を進む船には、勇者、女魔法使い、戦士。
そして私、女僧侶の4人のみ。
スピード重視の中型の船だ、4人でもそんなに広く感じない。
皆、緊張して表情が硬い。しきりに勇者が明るく振る舞い、場を和まそうとするが…
やはりぎこちない。
それはそうだろう。これから始まる血まぐさな戦いを思えば、場が和むなんてことはない。
でも私も、勇者にならって愛想笑いを振りまく。彼の心遣いはその人柄の良さを表している。
彼の素晴らしいリーダーシップは、長く一緒に旅をした私は知っている。
魔王城に近づく船は穏やかそのもの。
この作戦には王都軍も陽動役として参加している。
王都軍を魔王城正面から侵攻させ、魔王軍を陽動。
手薄になった裏手の海から勇者パーティが侵入、魔王討伐。
これが最終決戦の作戦。
今頃魔王城前はとてつもない戦いになっているだろう。
でも、この時私は知っていた。
この陽動作戦が失敗に終わるのを。
船体に大きな衝撃が走ると、海から大量の魔物が現れた。
勇者の眼つきが鋭くなり、全員が流れるように戦闘体制へ移行する。
さすがに数え切れないほど一緒に戦った仲間だ、突発的なトラブルや奇襲にも慣れたもの。
私は一瞬驚きと戸惑いを装い、勇者の指示に従い魔物と戦う。
霧に紛れて魔王軍の船も多数現れる。
「待ち伏せされてる……」
あまりの敵の多さに、さすがに勇者も気がついた。
陽動を行った上での裏からの奇襲作戦。
敵に暴露てれば、袋叩きされるのはこちらの方だ。
「なんで作戦が暴露てる?!」
群がる魔物を焼き払いながら、女魔法使いが叫ぶ。
戦士はいつも通りの無表情だが、勇者には少し焦りと困惑の表情が見て取れる。
陽動作戦に参加した仲間が心配なのだろう。
魔王軍の正面から戦う陽動作戦。ただでさえ壊滅的な被害が予想されるのに、敵に暴露ているとなれば大被害は免れない。
勇者は甲板の敵を一掃すると船首から周りを見渡し、目を瞑り短く詠唱する。
ピリッと周囲の魔翌力が歪む。
光の魔法だ。
勇者の身体が直視出来ないほど光りだすと、無数の光源体が放たれる。
私は眩しさに目を背けていたが、気がつくと船の周りの敵は一掃されていた。
作戦序盤から火力全開。最終決戦だ、出し惜しみする必要はない。
「みんなっ!! いくぞっ!!」
勇者の雄叫びに皆気合いが入る。
××××.××.×× 09:50
魔王城裏手。
勇者パーティは魔王城へ進入。
「結界がなくなっている」
女魔法使いがぽつりと呟く。
「彼が上手くやってくれたんだ」
と勇者は微笑む。
別部隊が結界を解く手筈になっていた。問題なく城へ入ることが出来る。
「敵がいないですわっ」
私は間の抜けた明るい声を出すと、勇者は呆れたように微笑む。
「全くいない訳では無いと思う、ザコはいないだろうけど油断しないで」
「ひぃ……そ、そうですわね」
そんなことわかっている……が、天然美少女が私の表の顔だ。
勇者パーティへ潜り込む為に今日のこの日まで完璧に演じてきた。
無駄に怯え、綺麗事を並べ、愛想を振りまく。今では何も意識せず天然美少女を演じることができる。
このトボけた美少女を演じるのはこの日で最後だ。勇者パーティに潜入し1年半。
“貴方に与えられた任務”はこの最終決戦にて完了する。
長かった。
本当に永かった…
長過ぎた。
「あれは……?」
勇者の目線の先には、陽動作戦に参加した兵士が襲われていた。
助けましょうっ!と私が言い終わる前に勇者は動き出していた。
あっという間に光の魔法で敵を消滅させる。
人助けする時は後先考えない。
そうでなければ務まらないのだろうか、勇者というのは。
「君たち、怪我はないですか?」
「……!」
助けてやった二人の兵士は目を丸くしている。
まったくなんで、こんな城の内部にいるのか。陽動作戦は魔王城前に敵を引き付けるのが任務のはず。
「勇者様……」
「今回復しますわ」
怪我してる様子ではなかったが、私は僧侶として振舞った。兵士達はどう見てもレベルが低い。
おそらく魔王城内部の敵では瞬殺されるだろう。
勇者は当然のように、彼らを安全な所へ逃がそうと言った。
まあ、そうなる気がした。
勇者は人助けしてなんぼだ。
「ちょっと待てよ!」
兵士の一人が急に怒り出す。
勇者の為の陽動作戦で仲間が沢山死んだ。今更助けるってなんなんだっ!と。
こいつは志願して参加したわけじゃないのか。
捨て駒兵士達も事情があるのかもしれないが、実に面倒だ。
こいつらを置き去りにしたい。
「この作戦で、あんた達の為に何人の兵士が死んだと思ってんだ! 今更助けたいだと? ふざけんなよっ」
怒る兵士は身分をわきまえず怒鳴り散らす。
勝手言いやがって、こっちは今まで何回命賭けたと思ってんだ。
いわれのない罵倒を受けても勇者は笑顔で受け流す。
「貴方の言うことはもっともです。ちょっと話を聞いてください」
僕が説得すると小声でいうと、勇者は怒った兵士を連れて隣の部屋へ入っていった。
“勇者”というのは実に非効率的だと思う。
面倒ごとに首を突っ込み、分け隔てなく人助けをし、自己犠牲をする。
いったい何の得があってそんなことをするのだろう?
本当に理解に苦しむ。
求められなくても人を助け、悪を許さず、善を貫く。
理解できないからこそ凄いと思う。
私にはできない。
ただ……ひたむきな姿に好感を覚える。
彼はずっとこの調子だ。
彼らを騙し続け
一緒に戦った日々が
長かった旅が
勇者への情を生んでしまった。
任務が完了したとき、彼らは死ぬだろう。
これは裏切り以外の何ものでもない。
レポート2 ー貴方ー
××××.××.×× 11:33
魔王城3F 兵装準備室付近
「…………これから魔王と戦いが控えているというのに、兵士一人に足止めされてる場合じゃないと思うが?」
戻ってこない勇者に、戦士が珍しく口を開いた。
全く同感だが
「兵士さんも仲間が犠牲になって感情的になっているんじゃないでしょうか?」
とか言ってみたりした。
「…………戦いに犠牲は付き物だ」
「人の戦う理由はそれぞれ。何の為に命をかけるか?でしょ。私は勇者についてくよ」
女魔法使いは自分の問いに自分で即答した。
何の為に。
私は。
貴方の為に。
そう私は貴方の下僕。
私にとって貴方は主でありすべてだ。
私は…………この命を貴方に捧げた。
私は貴方の道具でしかない。
貴方が勇者を裏切れといえば裏切る。
それが恩返しだ。
覚えていますか?
貴方との出会い。
当時の北大陸の女王は、魔王軍に対抗するための魔法、兵器、兵士の開発を行っていた。
その研究所が幼いころ私が暮らしていた修道院の地下にあった。
物心ついた時から身寄りがない私は、当然のように被験者となった。
私の研究内容は魔法とは違う“力”を得る為の研究だった。
人間の魔翌力は魔族の足元にも及ばないと言われている。
ならば魔法とは違う力を身に付けらないだろうか?というのが、研究の始まり。
基本魔法属性とは違う力を引き出す実験。
何十時間も身体を固定され吊るされたり。
強い呪いをかけられ閉じこめられたり。
ゆっくりと切り刻まれたり。
すべて魔翌力を空にして行われた。
極限的な苦痛の中で魔翌力を使わず、人間の生存本能、回避能力、環境順応、潜在能力を引き出そうとした。
苦痛な日々に、私は姿形の無い皆の信仰する“神”に祈り続けた。
「神よ……ご加護を」
「神よ……お慈悲を」
「神よ……お助けください」
「神よ……我を守りたまえ」
「神よ……助けて」
「神よ……神よ……かみよ……カミヨ……」
耐え難い苦痛を受け続け、あの頃の私は一切の感情をなくした。
感情を殺さなければ耐えられなかった。
生まれた時から信仰してきた“神”は、祈っても何もしてくれなかった。
他にも沢山の被験者がいた。
人間を魔族の身体に改造する研究、死なない身体にする研究、人間の狂気を引き出す研究など。
そんな日々に終止符を打ってくれたのは、貴方だ。
修道院を襲撃し、被験者達を解放してくれた。
私は生き残った。
奇しくも実験の成果か特殊な力に目覚めていた。
念動力。
触れずに物を動かす力。
それが私の得た力だった。
しかし、その代償に私の心は死んでいた。
何も感じず何も考えられずなんの感情も生まない。
貴方は私を助け笑いかけた。
「お前の世界はひっくり返った。またやり直せ」
私は今まで信仰してきた神を捨て
貴方を「神」と呼ぶことにした。
貴方こそ神と呼ばれるにふさわしい。
すべてを操り、すべてを支配し、すべてを見通す。
神よ……
私が信じるのは貴方だけ。
私は貴方に与えられた任務を完遂してみせる。
……
「行こう、話はついたよ」
勇者が戻ってきた。怒ってた兵士は勇者の後ろで笑みを浮かべてる。
なんなんだ?
よくわからないが彼を説得したようだ。
「彼らを地下の転送魔法陣で脱出させる」
最上階の魔王を差し置いて、地下の魔方陣へ向かうこととなった。
見てるぜ
レポート3 ー任務ー
私には貴方に与えられた任務があります。
これは私が存在する意味であり、生きる目的です。
任務
「勇者部隊潜入作戦」
この作戦の目的は勇者の邪魔をすることでもなく、世界を滅ぼすことでもない。
“魔界へのゲートを開くこと”
これこそが最終目的。
××××.××.×× 11:58
魔王城B1 エントランス下通路
「敵だっ! 下がってくださいっ!」
立ちはだかる無数の魔族兵をあっさり蹴ちらす。
正直相手にならない。
雑魚兵士を後列へ下げ、敵を倒しながら地下の転送魔方陣を目指す。
魔王城付近は敵だらけなので、魔方陣で王都まで送り返すというわけだ。
たくさんいる兵士の、こいつら2人を助けて何になるのだろう。
そんなこと思いながらも勇者に従う。
「勇者様、それが聖剣ですか?」
雑魚兵士の1人が興味深そうに眺めている。
「そうですよ、とても神々しいと思いませんか?」
「こちらの剣は勇者様以外使うことができません、唯一魔王を倒せる剣とされております」
「これ手に入れるの苦労したんだから~」
聖剣は勇者にしか触れることが出来ない。だからこそ、私が勇者パーティに潜入することになったのだ。
私には触れなくても物を動かせる力がある。
聖剣を奪い取ることができる。
私の任務にはどうしても聖剣が必要なのだ。
聖剣と魔剣が交わる時、魔界へのゲートが開く。
魔界とは魔族の住む世界。
数十年前、魔族との戦争に負けそうになった人間は、魔界と人間界を繋ぐゲートを閉じた。
しかし、魔王と多数の魔王軍は人間界に取り残され結局戦争は終わらなかった。
最後の決戦で“聖剣”と“魔剣”が交わればゲートは開く。
勇者はこの事実を知らない。
聖剣は勇者しか触れることが出来ない。
勇者は疑いもせず聖剣を持ち、魔王討伐へ向かう。
魔界へのゲートが開いたとき、大量の魔族やモンスターがやってくるのだろう。
勇者達に勝ち目はない。
人間界も滅びてしまう。みんな死んでしまうかもしれない
でも
それまで
勇者を死なせる訳にはいかない。
ゲートを開く、それが貴方の望みなのだから。
レポート4ー躊躇いー
××××.××.×× 時刻不明
魔王城地下3F 階段付近
「勇者様、それが聖剣ですか?」
「ん?」
雑魚兵士……なぜさっきと同じ質問をする?
「えっと……」
勇者はポリポリと頭をかく。
雑魚兵士の目が虚ろだ。2人とも。なんだ?
ゴニョゴニョと何か言うと、後ろの兵士はパタリと倒れる。
「お、おい」
「ゆうしゃさま……ソレハセイケン……ZZZzzz……」
「どうしました?!」
倒れそうになる兵士を支える。
敵だっ!と女魔法使いが叫ぶと同時に辺りは黒い霧で包まれる。
全員が戦闘態勢をとるが、黒い霧で視界は完全に無くなっていく。敵の姿どころか1m先すら見えない。
「みんな気をつけて!」
勇者の声だけが響く。
互いの魔力を感じることができるので
見えなくても、何処にいるかは分かる。
敵はどこだ?
敵の魔力を感じない、近くにいないのか?
全員が感覚を研ぎ澄ませ、あたりを探る。
背後に邪悪な魔力。
戦士が敵に向かって動き出すと、私と女魔法使いは魔法で援護する。勇者も追撃に備える。
視界がなくても、私達は連携して戦える。
流れるように
まるで踊っているかのように
敵を倒すと、黒い霧は少しずつ晴れていく……勇者の姿を見てホッとする。
しかし雑魚兵士がいない。
何処かへ連れ去られたのか?
「あの二人は……」
様子がおかしかった、おそらく幻覚魔法か何かにかかっていただろう。
あのレベルでは私達とはぐれた時点で生存は絶望的だ。
皆それを察して、黙る。
勇者はおもむろに荷物からコインを取り出すと、真上に指で弾く。
キンッ
クルクルとコインは宙を舞い、重力に従い勇者の手元に落ちてくる。
お決まりの行動だ。
勇者は何かに迷うとコイントスで行動を決める。
今回は雑魚兵士を助けに行くか否か。
表なら助ける、裏なら見捨てる。そんなところだろう…
何処に連れ去られたかも分からない。正直助けるってのは無謀だ。
私は意識を集中させる。
念動力でコインを操り、裏が出るようにする。
頭の中でキィィっと耳鳴りのような音がした。
パチッとコインをキャッチして勇者は意思を固めた表情で言う。
「進もう」
勇者の提案に安堵する。やはり“裏が“彼らを見捨てて進む”だった。
結局私達は魔族の王のいる最上階へ向かう。
旅途中、こうして勇者の行動を操作した。
長かった旅を思い出す。
私達勇者パーティは聖剣を探し、世界を飛び回った。
勇者は私を信じた。
私の回復をアテにし無茶をする。
私がミスをするかもしれない。
私がやられるかもしれない。
私が裏切るかもしれない。
そんなことは一切想定してない。
文字通り命を張って私を信じた。
次第に私も勇者を頼るようになった。
勇者なら守ってくれる。
勇者なら倒してくれる。
勇者なら間違えない。
勇者だけではない。他の仲間も同じだ。
命を賭け合い…
信じ合うことで鋭い連携が生まれる。
裏の顔を持つ私だけど、信じてもらえることに嬉しさを感じた。
道具でしかなかった私に感情が戻った。少しだけ…
そして今、この最終決戦。
自分の任務とは別に勇者達を本気で仲間と思った。
それは本当だ。
仲間を信じ、助け合わなければここまで来れなかった。
最高のパーティで旅が出来たと思う。
それでも貴方から与えられた任務は、私の全てだ。
そう
私の生きる理由。
……。
私は勇者を
裏切る……
胸がモヤモヤっとした。
楽しい旅だった……人形と化した私は人間の愛を感じた。
魔界へのゲートが開いて、私のせいだと分かった時、みんなどんな風に責めるのだろうか。
いっそ勇者に殺されたい。
神よ……貴方の命令には逆らいません。
必ず任務を全うします。
だから……
だから……躊躇ってしまう私をお許しください。
「女僧侶……大丈夫かい?」
感情が表情にでてしまったのか、勇者に心配されてしまった。
私は笑顔を作り頷いた。
レポート5 ー想定外ー
××××.××.×× 15:30前後
魔王城最上階・空中庭園
数々の敵を倒したどり着いた最後のフロア。
最上階は城全体が見渡せる屋上庭園。
とても魔王の住処とは思えない花や樹々が植えられている。空は晴れ渡り……蒼い。
旅の途中、こんな快晴を何処かで見たな。
どこだったかな。
これから起こることに思考が逃避しているのか、脈絡のないことが頭を回る。
庭園の奥に初老の魔族が城下を見下ろしていた。
「魔王ッついに追い詰めたぞ」
振り返った魔族は、その名の通り魔族の王 だ。
「待っていたよ勇者」
フハハハッと高笑いが響く。
私達の鋭い視線を無視するようにまた城下に視線を戻す。
「すばらしいよのう……勇者よ。永きにわたった魔族と人間の戦争は終わるのじゃ」
「ああ、お前を倒して終わるんだよ」
「余はこの空中庭園で、この戦いをずっと見ていた。人間も魔族も自身の価値観・考えに従い、命を賭ける。なんと素晴らしく美しい光景じゃ」
「そうだ。善も悪もない。自らが信じた理由で戦うんだ」
「命を賭ける、これこそもっとも美しい」
この戦いで何人死んだだろう。そしてこれから何人死ぬのだろう。
「さぁ! 剣を抜けッ! 魔王」
勇者は聖剣を宿敵に向ける。
鋭い敵意を向けられた魔族の王は、魔剣を抜くとニヤリと笑う。
「始めよう」
この二つの剣が交わると、ゲートが開く。
これで
私の任務は完了する。
「行くぞッぉ」
「待てぇええええっ!!」
今まさに最後の戦いが始まろうとする瞬間に、それを遮る者が現れる。
彼は……はぐれた雑魚兵士。
「勇者っ! 聖剣で戦ってはダメだっ! 魔剣と交わるとゲートが開いてしまう!」
その場にいた全員が驚きを隠せなかった。
なぜあいつがここに?
なんでゲートのこと知っている?
雑魚兵士は勇者の元に駆け寄ると代わりの剣を差し出す。
「間に合った。勇者、聖剣は使うなよ」
チッと舌打ちが聞こえた。
「魔王……」
「邪魔が入った、これが土壇場に勇者を助ける奇跡ってやつかの」
雑魚兵士は事情を説明し、勇者から聖剣を受け取る。
聖剣に触れた?!
聖剣は勇者にしか触れられないはず。
奴も勇者だったのか?
雑魚兵士は傷一つない、全開の状態だ。ゲートのことを知っている人間は数少ない。
な、何者なんだ?こいつ……
どうすれば……?
勇者は宿敵と向き合う。
「さぁ……魔王。はじめよう」
新たな剣が光る。
おつ
読んでるよ
レポート6 ー念動力ー
ラストバトルは熾烈を極めた。
魔族の王は、やはり並ではない。弱肉強食の魔界でその頂点である。老体の身でありながら、スピード、魔力は、他の魔族の比にならない。
だが
聖剣をなくしても勇者は圧倒した。
どこから力が湧いてくるのか…今までに見たことのない集中力と魔力。
勇者の一撃が確実に勝利を近づける。
このまま勝利すれば……誰も私の裏切りには気が付かず、なかったことになるんじゃないだろうか?
そんなことが頭をよぎる。
「ぐあああああっ!」
「いける……お前を倒して、みんなで帰るんだっ!」
帰る……?
どこへ?
私には
帰る場所なんてないのに。
任務達成していないのに。
不足の事態では、私が聖剣を魔剣にぶつけることになっていた。
聖剣は勇者にしか触ることができない。
きっとこの瞬間の為に私は生かされた。
今が……
裏切りの時だ。
味方全員の支援魔法を解除し、念動力で全員の動きを止める。
後方にいる雑魚兵士に向かい合う。
聖剣は私がいただく。
突然のことに全員が驚き硬直し、魔王の攻撃に直撃してまう。
「きゃあああ」
「ぐあああっ」
「くっ……女僧侶さん?!」
後列で聖剣を守る雑魚兵士に手をかざす。
「う……な、なんだ?!」
雑魚兵士が持っていた聖剣は見えない力に引っ張られる。離すまいと両手で抱えるが、所詮は雑魚の力。
あっさり引き剥がす。
聖剣はそのまま中を浮き、私の元へ飛んでくる。
直接触れることはできない。
手元で浮遊させ、魔剣に向き合う。
勇者達の前で明らさまに念動力を使うのは初めてだ。皆声も出せず硬直している。
ごめんなさい
と、心の中で呟き…魔剣に向かい走り出す。
「うあああああっ!!」
ごめんなさい
ごめんなさい
ごめんなさい……勇者様。
魔王は一瞬驚きの表情を見せたが、すぐにニイッと笑うと魔剣を振り下ろした。
魔剣と聖剣がぶつかる。
キイィィィっと高い音がし、まばゆい光に包まれる。
次第にその光は強くなり、バリバリと電撃のような音がし、空間が歪む。
「フハハハハハハっ!」
呆然とする勇者を無視するかのように魔王の笑い声は響く。
魔王城空中庭園の上空には、直径10m以上はある黒い球体が現れる。
……いや、球体なのかどうかもわからない。
その球体に見えるものは、光の反射で見える「物」ではない。
遠近感がおかしい、その球体に奥行きがある。つまりは空に浮かぶ穴だ。
これがゲート。
この先に魔族達の故郷である魔界が広がってるのだ。
「感謝するぞ、勇者よ」
そう言い残し魔王はゲートへと消えていった。
私の任務は
完了した。
面白い
期待
まさかの続編
期待
レポート7 ー裏切り者ー
残された勇者パーティと私。
そうだ。私はもうパーティの一員ではない。
裏切ったんだ。
勇者達の顔が見れない。
きっとみんな私を非難の目で見ているだろう。
誰も一言も発せずバチバチとゲートとの広がる音だけが響く。
全員の動きは念動力で封じている。
このまま去ろう。
私は俯いたまま背を向け歩き出す。
「なっ……なんで……」
勇者の声が聞こえた。
何も答えるつもりはなかった。訳を話すことは禁じられている。
歯を食いしばり立ち去ろうと顔を上げた瞬間
目の前に剣士が立っていた。
瞬きする間もない刹那、剣士の手は私の喉元を掴む。
ギュゥっと引きちぎれるかと思う力で握られ、身体が浮く。息が出来ない。
「ぐぅ……」
「ハッ……面白れぇことになってんな」
遅れてきた剣士は笑う。
彼は結界を破壊する任務についていた別部隊。
自分の任務を終えて勇者を追いかけてきたのだろう。
「勇者よぉ、察するにこのペチャパイ僧侶が裏切った……いや、魔王に操られてる?」
動きを封じられた私はどうすることも出来ない。自然と涙が溢れた。
素で涙がでるなんて、まだ感情があることに驚く。
勇者達はどうするべきか話し合っている。
私が操られていないことなど、すぐにわかるだろう。
殺してほしい。
それだけが望み。
殺して。
殺して。
「僧侶さん……」
勇者を見る。
真っ直ぐな瞳。意外だった……その表情は非難でも悲しみでも怒りでもなく、仲間の身を案じているいつもの優しさ表情だった。
「……殺してください」
「このままでは人間の負けだ。俺は何があっても魔王を倒さなきゃいけない」
「殺してください……」
「勇者、無駄だよ。こいつは地上最悪の裏切りもんだ」
「剣士、黙っててくれ。彼女は仲間だ……信じるよ」
「ハッ」
剣士は私の首から手を離すと、睨みつける。
信じる?
私を?
なんでよ、殺してよ。
私は……
裏切り者だ。
裏切り。
そう、私は裏切り者。そして貴方の道具。
何か望むなんておこがましい。
勇者を見ると優しいいつもの表情。
「僧侶…キミも“アイツ”の差し金なんだろ?」
え?
レポート8 ー滅びー
勇者は妙に納得した表情で見つめてくる。
なんで?
勇者は知っていたの?
私の裏の顔を…
「キミはアイツの道具じゃない」
「…」
「その涙が何よりの証拠だ」
「……」
「知っていることを教えてくれ。キミの任務、ゲートとはなんだ?アイツの目的…話してくれ」
「…殺してください」
剣士は舌打ちすると、剣を抜き私に向ける。
「勇者よ、俺様がコイツを拷問してやる」
「まて剣士。彼女は仲間だ」
「寝ぼけてんのかっ?!この状況で何で信じられんだ?」
「だめだ。彼女に危害を加えることは許さない」
「コイツは敵だろうがっ!」
「敵じゃないっ!」
勇者と剣士の言い合いが続く。
やめて。
勇者、あなたは間違ってる。
紛れもなく私は敵なのだ。
私は話さない。たとえ拷問されても、殺されても。
「よし、じゃあ逆だな。おい裏切りもんよ、話さねぇっていうなら」
「俺様が勇者を殺す」
「な?!」
ドゴっと鈍い音。剣士は勇者にボディブローをかまし、うずくまる彼の手に剣を突き立てる。
「ぐああああっ」
「おめー勇者のことが好きだろ?俺様は殺れる男だ。知ってんだろ?目的のためには犠牲を厭わねぇ」
「---ッ」
「話せよ」
「私は…話せません。たとえ拷問されても。だから、殺してください」
「ハッ…それじゃ何も解決しねぇんだよっ」
剣士は勇者を蹴飛ばす。
勇者は抵抗しない。
なんで??!
「…」
「ぐぅ……僧侶、頼む話してくれ。仲間だろ?」
演技じゃない。本当にダメージを受けている。
勇者は自分で回復魔法が使える。でも使わない。
剣士が勇者を殺すなんてバカげてる。ありえない。
私に話させようと茶番を演じてるのだ。
「さぁ話せよっ」
剣士の眼には狂気が映る…。この男は殺る。
これまでの旅でもそうだった。
仲間や…民の犠牲を厭わない男。
「…」
「5」
剣士は楽しそうにカウントを始める。
「私を殺してください」
「だめだ、勇者を殺す。4ッ!」
剣士は勇者の顎を蹴り上げる。
「ぐはぁっ」
なんで避けないの?!
勇者だって黙って殺される訳がない。
勇者はペッと口から血を吐きながら言う。
「僧侶、たのむ」
「3」
無抵抗の勇者はジッと私を見つめる。
この瞳を私は知っている。
アイコンタクト。
その瞳が語るのは
信頼。
まさか、勇者はこのまま無抵抗に剣士に殺されるのを待っているというの?
なんで?
勇者は真っ直ぐ目を離さない。
信頼の眼差し。
そうか。
私が勇者を助けるために話すと信じている眼だ。
「2。ほら、勇者が死ぬぞ?」
「…僧侶」
剣士の剣が勇者の首元に近づく。
胸が締め付けられるのを感じ、そんな私を勇//.///.////////////////
////////
///
////////////////////////
////////言葉より瞳は////////した//////
私は
私は…
私は
勇者に死んでほしくない。
「1ッ!」
「ま、まって!」
神よ……お許しください。
「もう一度…」
「……聖剣と魔剣が交われば、再びゲートは閉じるはずです」
その言葉を聞いた勇者は安堵の表情を浮かべ、大きく息をつく。
任務や、ゲートについて説明すると勇者は「///りが/////////とポツリと私にだけ聞こえる声で言った。
勇者は回復魔法をかけてもらうと立ち上が////////////
////////
///////
////////////////か勇者」
「ああ……」
勇者と剣士はゲートへと消えてい////////////
////////
////
残された私はその場に///
////は//た////
////////////…貴/
/0///////////
滅び////…•
////////
////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
騎士団長「……」
騎士A「団長、読み終わりました?」
騎士団長「ええ。最後は破れていて解読できないわ」
騎士A「しょうがないですよ」
騎士S「世界が崩壊した今、それが残ってただけでも幸運だ」
騎士A「この世界がアンデットだらけになったのは、この僧侶のせい?」
騎士団長「……ちがう」
騎士達「……この報告書の神…僧侶の言う“貴方”って誰のことでしょう?」
騎士団長「アイツだ。この滅びた王都に報告書があるのが何よりの証拠」
騎士E「……ヴァルキリー団長。行きましょう、ここも安全ではない」
騎士団長「勇者はきっと生きている…」
騎士団長「アイツは私が倒す」
[僧侶の報告書 END]
女騎士「こんな勇者についてけねぇ」
女騎士「こんな勇者についていけねぇ」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1416212168/)
僧侶達の旅の話
兵士「勇者の為に死にたくねぇ」
兵士「勇者の為に死にたくねぇ」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1395806984/)
最終決戦の兵士目線の話
勇者「魔王倒したらやることねぇ」
勇者「魔王倒したらやることねぇ」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1426029854/)
最終決戦の後の話
魔王「ボクに魔王なんて出来るわけねぇ」
魔王「ボクに魔王なんて出来るわけねぇ」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1492129747/)
魔界側の話
ありがとうございました。
乙
いまいち流れがわからん
毎回最後が薄っぺらかったりワケわからん終わりかたで、失速完結するんだよなぁ……
途中までは期待感あるだけに、もやもやする
ラスト直前までは、そこそこ楽しませてはもらえました
おつ
30年前の「少年勇者」=現代の中央王都「国王」=僧侶の信奉する「貴方」=騎士団長が倒すべき「アイツ」かな?
騎士団長はおそらく「ついてけねぇ」の女騎士、騎士ASは「死にたくねぇ」の兵士AS
剣士(西勇者?)が聖剣拾ってゲート追っかけ魔王(先代?)を討つのが「やることねぇ」の冒頭
「やることねぇ」の聖剣士は王都勇者かな?そう考えるとだいたい話がつながると思うけど
マジだ
そう思って読むとそのとおりだな!「やることねぇ」にちらっと出てくる研究所?に騎士団長のエンブレムが蘇生アイテムって
女騎士が死ななかったのはそのおかげじゃね?
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません