【モバマス】星の叫び (6)
私は星を眺めてた。
何も無い、空の色。
特に好きなわけじゃない、けど何気なく眺めてしまう。
昔もこうやって眺めていたな、とふと思い出す。
独りだったあの時のことは、遠い昔の日に感じる。
何も無かった私は、ただただ何も言われないように生きてきた。
怒られることも無く、褒められることも無い。
いつも独りで、それが当たり前だった。
この空のようになんにも無かった。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1552392407
あるとしたのなら、キノコとヘビーメタル。
キノコは何だか……言葉に表せないけど、親近感が湧いて好き。ふひ。
ヘビーメタルは……何気なく回したラジオで流れてきた激音。
それが耳に残り、反響した。
何だか、私が求めているもののようで。
その歌が誰かの生きているという叫びに聞こえて、私はいつの間にかCD屋に足を運ぶようになった。
聴けば聴くほど、のめり込んで……。
誰もいない家では独りで叫ぶようになった。
誰に聞かせる訳でもなく、ただ叫んだ。
もしかしたらあの時の私は誰かにきいてほしかったのかも……しれない……
でも、ヘビメタは誰にも聞かせられなかったな……。
そもそも友達なんていなかったし……。
そんな時に見つけてくれたのが、プロデューサー。
キノコに例えたらベニテングタケぐらいだったのに、親友は見つけてくれて。
その上毎日お世話してくれて。
ボッチの私には日に当たったような眩しさで……。
ふひ、ちょ、ちょっと恥ずかしいな……。
でも親友と会ってから、色々と変わって。
親友以外のトモ……ダチ……もできた……。
ボノノちゃんや美玲ちゃん、まゆさんに幸子ちゃん、小梅ちゃん……。
いつの間にか片手でいっぱい数えられないほどトモダチが出来た……。
それに何より……私にヘビメタを歌わせてくれた。
親友はヘビメタをあまり知らなかったのに、ちゃんと私の話を聞いてくれて。
わからない所は皆に聞いて。
私にヘビメタを歌わせてくれた。
それが一番アイドルになって嬉しかった……かな……。
独りの家で歌ってた、ただの叫びを。
皆の前で歌わせてくれた。
私の存在を、叫ばせてくれた。
……、今見るとしたら恥ずかしくて録画したのを直接は見れない……。
でもこれだけは言える。
プロデューサー、ありがとう。って。
コンコン、と机の角を蹴る音がする。
大親友の仕事が終わったみたいだ。
「そろそろ帰るか」
「き、今日もCD屋に行くのか……?」
「そのつもり。ショウコ、おすすめをまたお願いしてもいいか?」
「わ、わかった……」
最近親友もヘビメタにハマってくれたらしく、CD屋に行くのがいつものことになっている。
ふ、ふひっ、ちょっとリア充っぽいな……。
「うわ、もう真っ暗だ」
「冬だと落ちるのも早いから……」
上を見上げると、暗闇の空。
何も無い、空の色。
「何もないな……」
「そうか?よく見ると星が見えるぞ」
「えっ」
目を凝らしてみると、キラキラと砂粒のように星がいくつも輝いていた。
「ほ、本当だ……」
「見えないけど、星は輝いているんだなぁ。」
何も無い空に見えたけど。
ちゃんと輝いていたんだな。
「プロデューサー」
「ん?何だ?」
「見つけてくれて、ありがとう……ふひ」
以上です。
輝子ちゃん難しいですね、読んでいただきありがとうございました。
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません