麦端高校に通う、高校一年生である仲上眞一郎を取り巻く環境は、少々複雑だ。
酒蔵を営む家系のひとり息子であり、両親と3人で暮らしていた頃は至って平凡な暮らしをしていたのだが、一年前のある日、両親を亡くして身寄りが居なくなった湯浅比呂美と同居するようになってから、普通ではなくなった。
というのも、眞一郎は幼馴染とも呼べる比呂美のことを、密かに意識していたからだ。
長い艶やかな黒髪が特徴的な比呂美は美人であり、且つ成績優秀という才色兼備な優等生であるにもかかわらずそれを鼻にかけた様子もないところが周囲の好感を集め、眞一郎も周りと同じくそんな比呂美に好意を抱いていたのだ。
そんな存在と一つ屋根の下で暮らすことを、悪友である野伏三代吉はしきりに羨ましがっていたが、当事者からすると嬉しくもなんともない、というのが現状であり、現実だった。
「あ、おはよ」
「うん。おはよう、眞一郎くん」
朝起きて、顔を洗おうと洗面所の扉を開いた眞一郎は、先に顔を洗っていたらしいパジャマ姿の比呂美と出くわし、固まってしまった。
一緒に暮らしているからと言って、比呂美のパジャマ姿をいつも拝める関係性ではないので、眞一郎としては嬉しいやら、気まずいやら。
「ごめんなさい。洗面台、使っていいよ」
「い、いいよ。ゆっくり使えば」
「私はもう済んだから」
また、比呂美はごめんなさいと口にした。
それが堪らなく不憫に思えて、憤りを覚える。
他人の家の中で肩身の狭い思いをして、小さくなっている彼女を見るのが、眞一郎は辛かった。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1561904535
「……本当にいいのか?」
「うん。邪魔して、ごめんね」
また、比呂美が謝罪を口にした。
その責任の一端は、眞一郎にもあった。
こっちが変に遠慮するから彼女にも余計に遠慮させてしまうのだろうと思い、眞一郎はさっさと歯を磨いて顔を洗ってしまおうと、そう考えたのだが、これが結果的に大悪手だった。
ときに、朝の支度の際、歯を磨くのと顔を洗うので、どちらを優先するべきか考えてみよう。
顔を洗ってさっぱりしてから歯を磨くのも悪くないが、眞一郎としては効率を優先して先に歯を磨いてから、口元に付着した泡ごと顔を洗い流すやり方が幼い頃からの習慣であった。
どちらが良いとも悪いとも言えないのだが、イレギュラーのあったこの日の朝に限っては、先に顔から洗うべきだったと言わざるを得ない。
「ん?」
パクリと歯ブラシを咥えて、違和感を覚える。
なんだか、いつもと味が違うような。
すると、立ち去る間際の比呂美が気づいた。
「あっ……それ、洗顔の……」
「えっ?」
言われて手元を見ると、眞一郎の手には洗顔フォームが握られており、どうやら味の違いはそのせいで、自分が大失敗をしたのだと悟った。
「うげ!」
「ぷっ」
思わず吐き出すと、比呂美が噴き出した。
いつも家では物静かな彼女のその反応に呆気に取られていると、比呂美は思い出したように。
「……携帯」
「へっ?」
「ちょっと、待ってて」
慌てて自室へと向かった比呂美を呆然と見送り、そのまま言われた通り待っていると、携帯電話を持って戻ってきた彼女に写真を撮られた。
「リアルで間違える人、初めて見たから」
だから、記念に写真に収めたらしい。
眞一郎としては、恥ずかしいやら情けないやらで複雑な心境ではあったが、満足そうな比呂美を見ると、なんだか良いことをした気分になった。
眞一郎は知らないが、この時、比呂美が満足そうな表情を浮かべたのには別な理由もあった。
もちろん、レアなアクシデントを写真に収められたことに対する喜びもあるにはあるが、それ以上に、仲上眞一郎の写真を自分の携帯電話に保存することが出来たのが、嬉しかった。
そう、奇しくも彼と同じように。
湯浅比呂美もまた仲上眞一郎を意識していた。
しかし、その感情は表に出せないものであり。
とある事情から封印した、想いでもあった。
「あなた、どうかしたの?」
「えっ?」
場面は変わって、その日の放課後。
仲上眞一郎は石動乃絵と行動を共にしていた。
ひょんなことから知り合い、そして親密になった2人は毎日の日課として鶏に餌を与えている。
雷轟丸亡き後、一羽取り残された地べたの面倒を見ていると、不意に乃絵が尋ねてきた。
「……別に、どうもしないよ」
「嘘」
視線を逸らしながら返答する眞一郎の嘘を即座に看破した乃絵は彼の両頬に手を伸ばし、両手で挟み込んでこちらを向かせ、目を合わせた。
「あなたの瞳に、私が映っている」
「……顔が、近い」
「鼻の穴が、広がっている」
「や、やめろよ!」
じっと見つめられて、しげしげと観察されて。
そのあまりの気まずさや気恥ずかしさに居た堪れなくなった眞一郎が、乃絵の手を振り解く。
「何があったの?」
「だから、なんでもないって」
「湯浅比呂美ね?」
唐突に比呂美の名前を出されて、眞一郎が思わずギクリとすると、乃絵に胸ぐらを掴まれた。
「湯浅比呂美に、何をされたの?」
「……お前には、関係ないだろ」
ぶっきらぼうにそう言うと、変人と名高い石動乃絵は、思いも寄らぬことを、しでかした。
「なるほどね」
今朝あった出来事を話すと、乃絵は納得した。
意外にも、怒り狂う様子はなかった。
とはいえ、女というのは一見して腹の中で何を考えているのかよくわからない生き物であることを眞一郎はなんとなく理解しかけている。
しかし、それでもまだ高校1年生である未熟な彼は、女の勘の鋭さとその洞察力を侮っていた。
「……眞一郎の、お腹の中にも、あぶらむし」
「えっ?」
眞一郎は、思わず耳を疑った。
石動乃絵は今、なんと言った?
小さく囁いたその呟きは、まさに今の彼の腹部の現状を的確に捉えた詩的表現であり。
「しんいちろーのお尻の中にもあぶらむし~」
「やめてくれ!」
いつものメロディーに乗せられた、尻をくすぐるその歌詞に、眞一郎は過敏に反応した。
「やっぱり」
「やっぱりって……なんだよ」
「やっぱりあなた、お腹が痛いのね?」
何もかもを見抜かれた眞一郎は、否定することを諦め、返答の代わりにがっくりと項垂れた。
「ちゅっ」
「んなっ!?」
それは、一瞬の出来事であった。
極限まで接近し、今にも鼻先が触れ合いそうな距離にいた乃絵が、眞一郎の鼻先に触れた。
鼻と鼻が触れ合うのならば、まだ良かった。
しかし乃絵は、何を思ったか唇で触れてきた。
つまり、眞一郎の鼻先に、乃絵はキスをした。
「これでもう、関係ないとは言わせないわ」
「お、お前な……」
「私の気持ちは、これで伝わった筈よ」
石動乃絵の気持ち。
それは別段秘めたるものでもなんでもなく、常日頃から乃絵は眞一郎に好意を伝えていた。
眞一郎としては、その好意は乃絵が大事に飼育していた鶏であり雷轟丸と同じような、ペットに対するものとばかり思っていが、違かった。
変人との呼び声高い乃絵も鶏にキスはしない。
もし仮にしたとしても、人間に対するそれとはまるっきり意味合いは変わってくるだろう。
「私の気持ち、わかった?」
念を押しながらまたもや接近されて、その淡く色づいた桜色の嘴でまたもや鼻先を啄まれては堪らないと思った眞一郎は、何度も頷いた。
「わかった! わかったから離れてくれ!」
「それなら、洗いざらい、話して」
完全に主導権を奪い、まるでもう眞一郎の恋人にでもなったかのように乃絵は彼女面をして、彼氏の不貞を追求し、彼は白状したのだった。
申し訳ありません。
5レス目と6レス目の投稿の順序が逆でした。
お手数ですが、脳内で変換して頂けたらありがたいです。
それでは以下、続きです。
「ぷくく……洗顔フォームでお腹を壊すなんて」
「笑うなよ」
人の不幸を嘲笑う乃絵に、眞一郎は抗議した。
「ごめんなさい。でも、おかしくて……ぷぷっ」
謝りながらも、乃絵は肩を震わせながら笑う。
そんな彼女に腹が立たないと言えば嘘になるが、まるで子供のような笑みを浮かべる乃絵を見ていると、比呂美に笑われた時と同じように、なんだか良いことをした気分になってしまうのは、眞一郎がお人好しであるからだろう。
いつまでも、そんな乃絵の可愛らしい笑顔を見ていたいのはやまやまだが、そろそろ限界だ。
「悪い、少し席を外すぞ」
「ええ、いってらっしゃい」
言葉少なげに告げて、その場を離れる。
足早に向かうのは、飼育小屋から雑木林を抜けた先にある、外に設置された古びたトイレだ。
「ふぅ……間に合った」
眞一郎は安堵していた。
石動乃絵に便意を看破された時はどうなることかと思ったが、むしろその結果、自然な形で早めにトイレへと向かうことが出来たのはまさしく不幸中の幸いと言えよう。おかげで助かった。
すーぐそーこの、トイレに。
余裕を持って、たどり着き~。
漏らさずに済んだことに安心しきっていたら。
「すーぐそこーの、トイレは只今、故障中~」
すぐ後ろから、いつものメロディーに乗って。
「石動、乃絵……」
振り向くと乃絵がいて。
にっこりとこちらに笑みを向け。
先程と同じフレーズを、繰り返して。
「トイレは只今、故障中~」
トイレが只今故障中であることを告げられた。
「お前……知ってたのか?」
「ええ、知っていたわ」
なんでだよと、仲上眞一郎は思う。
知っていたなら、どうして。
教えてくれなかったんだと問い正すその前に。
「だって、見たかったから」
「えっ?」
「あなたが、飛ぶところ」
乃絵は、そんなわけのわからない説明をした。
「前にも言ったけれど、あなたは飛べるわ」
そう言われて、過去の記憶が蘇る。
乃絵は眞一郎が空高く飛べると信じていた。
だから、ことあるごとに飛べると言われた。
眞一郎としては、その意味を図りかねていて、まともに取り合ってはいなかったのだが。
ここに来て、その真意を明かされるなんて。
「私はあなたが飛ぶところを、見てみたい」
「乃絵……」
「それが見たくて……いいえ、そうじゃない」
自己否定して、乃絵は自らの望みを口にした。
「私はあなたに飛んで欲しくて、見送ったの」
乃絵は眞一郎に天空高く飛んで欲しかった。
だから、敢えて何も言わずに見送ったのだ。
全ては、眞一郎の為。というと、嘘になる。
ほんのちょっぴりだけ、乃絵の愉悦の為に。
故障したトイレへと向かう彼を、送り出した。
「……そんなこと、言われても」
「あなたなら出来るわ」
「無茶、言うなよ」
「大丈夫。自信を持ちなさい、仲上眞一郎」
「お前に、俺の何がわかるんだよ!?」
眞一郎には、乃絵の期待が重かった。
絵本作家を目指している彼は、つい先日、出版社から不採用の通知を受け取り、自信を失っていたのだ。夢も希望も、全て打ち砕かれた。
そんな自分が飛べる筈ないと、否定すると。
「心配しなくてもいいわ」
突然、乃絵に抱きしめられた。
「私もあなたと一緒に、飛んであげるから」
「へっ?」
それはどういう意味だろうと、首を傾げると。
「んっ……ふあっ」
「……えっ?」
足元に突如、琥珀色の水溜りが、出現した。
「乃絵、お前……」
「ごめんなさい。今の私には、これが精一杯」
石動乃絵は力なく笑い、謝罪を口にした。
彼女のスカートの裾からは水滴が溢れ落ちており、仲上眞一郎はようやく状況を把握した。
たった今、石動乃絵は、漏らしたのだと。
まるで鮮血のように滴り落ちる尿を見て。
それを拭いたいと、眞一郎は思った。
だが、全てを出し切った乃絵はもはや自分の足で立っていられずに崩れ落ち、慌てて支える。
「乃絵、しっかりしろ! 乃絵っ!?」
「私は、ここまで」
「何言ってるんだよ! 一緒に飛ぶんだろ!?」
ぐったりした様子の彼女に必死に呼びかける。
取り残された眞一郎は、迷子の気分だった。
心細くて、不安で、寂しくて、泣きそうだ。
ふと、幼い頃の比呂美との思い出が脳裏をよぎり、あの日、祭りの夜に眞一郎とはぐれて迷子になった時の彼女の気持ちがよくわかった。
「眞一郎」
「ん?」
「他の女のことを考えないで」
「……悪かったよ」
しみじみ回想に耽っていると、今にも意識を手放しそうだった乃絵がぱちりと目を開けて抗議してきたのを見て、意外と元気そうだなと思った。
「気を取り直して、続きよ」
「はいはい」
閑話休題。
気を取り直して、シリアスな場面を再開する。
存外、2人とも愉しんでいるのかもしれない。
「眞一郎……お願い、飛んで」
「ああ。わかったよ、乃絵」
眞一郎とて、男である。
今際の際の女の頼みも聞けず、何が花形か。
そう、仲上眞一郎は、祭りの花形である。
酒蔵の家系である仲上家の跡取り息子。
そんな肩書きはどうでもいい。
今はただの、ひとりの男として。
鼻の穴を目一杯広げ、花を咲かせてみせよう。
「ぬんっ」
腰を低く落とし笛太鼓の囃子に合わせる。
乃絵を抱きしめたまま、眞一郎は舞った。
それはまるで、天空を舞う、鶏のごとく。
ぶりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅぅ~!
澄み切った青空に、清々しい便の音が響いた。
「とても素晴らしかったわ」
「そりゃどうも」
乃絵の賞賛に素っ気なく返す眞一郎。
すっかり乗せられてしまった感が拭えない。
元気を取り戻した乃絵はスカートから体操服に穿き替えており、眞一郎もまたジャージ姿だ。
よりにもよって彼のクラスでは本日体育の授業がなく、学校に体操服を持って来ていなかったので、恥を忍んで友人である三代吉に借りた。
その際に事情を説明せざるを得なかったわけだが、恐らく共通の友人である安藤愛子、通称あいちゃんには筒抜けとなったであろう。
そんな憂鬱が溜息となって、口から漏れ出た。
「溜息なんて吐くのはやめなさい」
「お前はいいよな、今日体育があって」
乃絵の自前の体操服を羨み、また溜息を吐く。
「今度溜息を吐いたら、口を塞ぐから」
「口を塞ぐって、どうするつもりだよ」
「眞一郎は、どうして欲しい?」
石動乃絵は卑怯だと、眞一郎はつくづく思う。
微笑みながら、ペロリと舌で唇を湿らすあたり、わざとやっているとしか思えなかった。
だから彼はそれ以上溜息を漏らすのをやめた。
「しんちゃん、おかえりなさい」
「……ただいま」
あれから乃絵と別れて帰路に着き。
眞一郎が帰宅すると、必ず母親が出迎える。
彼の母、しをりは子煩悩であり、そんな母親を多感な年頃である息子は煩わしく思っていた。
「あら? しんちゃん、その格好……」
「なんだよ」
「下だけジャージなんて、どうかしたの?」
「別に……どうでもいいだろ」
過保護な母親に心配されることが1番むかつく難しい年頃のしんちゃんは、ろくに説明もせずにその場を離れて汚してしまった制服のズボンと下着を洗いに行こうとしたのだが、そこで彼の父である宗弘が、居間から顔を覗かせた。
「どうかしたのか?」
「あなた、しんちゃんが……」
「眞一郎、こっちに来なさい」
やたらと渋い声で呼ばれ、渋々、父に従った。
「それで眞一郎、何があったんだ?」
眞一郎の父、宗弘は寡黙な人だった。
かと言って厳格というわけでもなく、無論、厳しくないと言えば語弊があるが、母親のように小言を頻繁に口にするような父親ではなかった。
だからこれまで、色々と見逃してくれたことも多かった父なのだが、今日に限ってはいつもと違うようで、眞一郎は対応に困ってしまった。
「……ふむ」
目を泳がせる息子を見据えて。
その手に持った学生服のズボンに気づいた仲上宗弘は、野原ひろしのような声で、尋ねた。
「漏らしたのか?」
「えっ?」
思わず声をあげたのは、母、しをりだ。
夫と息子を、せわしなく交互に見やる。
しんちゃんが漏らすなんて信じられなかった。
「っ……!」
仲上眞一郎は、ひたすらに沈黙を貫いた。
奥歯を噛み締めて、恥辱に耐える。
そんな息子の様子を見て、全てを察した父は。
「フハッ!」
野原ひろしみたいな声で、愉悦を、漏らした。
「フハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
響き渡る、父、宗弘の哄笑。
眞一郎としをりは、呆然としていた。
よもやあの口数の少ない、寡黙な父が。
こんなにも高らかに、愉悦をぶちまけるとは。
「ッ……嗤うなよっ!」
我に返り侮辱されたことに怒り狂う眞一郎が吠えると、父も我に返ったらしく、哄笑を止め。
「すまん……つい、心が震えて、な」
野原ひろしみたいな声でそう言われて。
眞一郎は居ても立っても居られずに、走った。
最速で自分の部屋に駆け込み、鍵を締める。
「くそっ! 馬鹿に、しやがって……!」
眞一郎は、激怒していた。
しかし、胸の奥には別の感情もあって。
あの口数の少ない、寡黙な父親が。
心が震えたと口にした、あの瞬間に。
「フハッ!」
腹の底から湧き上った愉悦が、止められない。
「フハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
嗤いながら、眞一郎は勝ち誇る。
ざあまみろ。何故か、そんな感情が芽生える。
あの親父の心を震えさせてやったぞ。
しかし、そんな一時の快楽は長くは続かず。
「なにやってんだ!」
眞一郎は吠える。この世全ての不条理に対し。
「なにやってんだ俺は!!」
そして何より、自分自身の弱さを、叱咤した。
「眞一郎くん、やっぱりお腹壊したんだ……」
比呂美はそのやり取りの一部始終を、自室で耳を澄ませて一言一句漏らさずに聞いていた。
朝、彼が洗顔フォームを口にしたその時から、お腹を壊さないかどうか期待……もとい、心配していたのだが、その懸念は見事的中してしまった。
「フハッ!」
比呂美は愉悦を漏らし、眞一郎が漏らしたことを悦ぶ自分を恥じ入って、枕に顔を埋めた。
もしかしたら彼は兄妹かも知れないのに。
こんな感情を抱いたらダメだと自省しつつも。
もしそうであってもセーフなような気がして、ほんの少しだけ、気持ちが楽になった。
「フハハッ!!」
時同じく、三代吉から全てを聞かされた愛子も愉悦を漏らして、びびった三代吉が糞を漏らし。
「フハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
そして最後に、夜遅くにバイトから帰宅した石動乃絵の兄、石動純が全てを聞かされて愉悦を漏らし、石動乃絵がそんな兄を心底軽蔑した。
「畜生……畜生ッ!」
その夜、仲上眞一郎は、一睡も出来なかった。
世界から嗤われている気がして、悔しかった。
だから彼は絵本の続きを書くべく、筆を取る。
「いつか、絶対に……飛んでやるっ!!」
本物の、悔し涙を流しながら、空を飛ぶ為に。
【ture teardrop】
FIN
乙
久しぶりにリフレクティアでも聞くか……
うーんこの
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません