「ボクのお尻を舐めて」
「嫌だ」
幼馴染のボクっ娘のお願いを突っぱねる。
すると、目に涙を浮かべて、叩いてきた。
力がないから全然痛くないけど、鬱陶しい。
「どうして舐めてくれないのさ!?」
「どうして舐めないといけないんだ?」
「特別な関係になりたいからだよ!」
「普通の関係で俺は充分だ」
特別というよりも、特殊な関係になっちまう。
「……あまりボクを怒らせない方がいい」
「不登校のヒキニートに何が出来るんだよ」
「ああっ!? 今、言っちゃいけないこと言った! 謝ってよ! ボクはすごく傷ついた!!」
かつて、不登校だった、現在ヒキニート。
そのことをこいつはとても気にしていた。
ガン泣きで、ギャンギャン吠える幼馴染に。
俺は嗜虐心を刺激されて、更に責め立てる。
「誰が謝るか。謝って欲しけりゃ働け」
「絶対嫌だね! ボクは一生養って貰うんだ!」
「養うって、誰が?」
「君に決まってるだろ!? ボクの旦那様なんだから、もっとお姫様みたいに扱えよっ!!」
いつから旦那になったんだ。そんなことより。
「だったら、お姫様らしくしてろ」
「ぐぬっ」
ぐうの音も出ずに黙り込む姿は、可愛かった。
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「君は本当にボクのことが好きなのかい?」
「まあ、それなりに」
「それなりじゃあ、困るんだよ」
「なんで困るんだ?」
「だって、いつ捨てられるかわからないし」
こいつなりに、色々と悩んでいるらしい。
「捨てないよ」
「ほんと?」
「ああ、本当だ」
「じゃあ、ボクのお尻を……」
「舐めないからな」
甘やかすと、すぐこれだ。ため息が溢れる。
「呆れないでよ」
「呆れさせるな」
「そんなつもりはなかったんだ」
「じゃあ、どんなつもりだったんだ?」
「お尻を舐めさせれば奴隷に出来ると思って」
「最低だな」
本当にロクでもない。奴隷なんてお断りだ。
「そう悪い話ではないよ?」
「極悪としか思えないぞ」
「ボクは寛大だから奴隷に差別なんてしない」
「それなら、そもそも人を奴隷にするな」
「重要なのは、契約であり、主従関係だよ」
「ブラックな匂いがプンプンする」
「に、匂いなんて……もう、気が早いなぁ」
「変な妄想を膨らませるな!」
俺の幼馴染は妄想癖を患っていてタチが悪い。
「ともかく!」
「なんだよ」
「言うこと聞かないと大変なことになるよ!」
腰に手をやって威圧しているつもりらしいが。
いかんせん、背が低すぎて、全く迫力がない。
チビで童顔を学校でからかわれて、不登校に。
以来、定職にも就かずにヒキニートとなった。
可哀想だと、思う。だから、放っておけない。
同情ではなく、心配なのだ。なんとかしたい。
だから俺は、なるべく甘やかさずに、接する。
「ヒキニートが偉そうなこと言うな」
「ああっ!? またヒキニートって言った!」
「事実だろ?」
「違うもん! ボクは専業主婦だもん!」
「主婦なめんな。お前と一緒にするな」
全世界の専業主婦に、深々と謝罪するべきだ。
「ぐぬぬ……今に見てろよぉ」
「さっさと俺を見返してみろよ」
「だったら、望み通りにしてやるよ!」
そう言って、ペチッと、地団駄を踏んだ。
いつもの癇癪だと、そう思っていた。
その裸足の小さな足が、何をもたらすかなど。
この時の俺には、まったく想像出来なかった。
『続いてのニュースです……』
場面は変わって、翌日の早朝。
俺は会社に出社するべく身支度を整えていた。
顔を洗い、着替え、歯磨きをしている最中に。
TVから、気になるニュースが、伝えられた。
『巨大な足跡が田園で発見されました』
ポタリと、歯ブラシを床に落とす。
巨大な足跡の映像が、映し出された。
丁度、田んぼ一丁分の、大きな足跡。
たぶん、風が何かで起きた自然現象だろう。
そうは思うが、どうしても気になった。
なので、出社する前に幼馴染の家に寄った。
「あ、やっと来た。もう、遅いよ旦那様」
まるで待ち構えていたかのようにハグされた。
「お前、ニュース見たか?」
「見なくてもわかるよ。足跡のことでしょ?」
「……アレは、お前の仕業か?」
「さあ、どうだろうね? わっかんない」
無邪気な笑顔で首を傾げる幼馴染に詰問する。
「とぼけんな。確信犯だろ?」
「まだ田植えは始まってないから平気さ」
「そういう問題じゃないだろ!」
人様の田んぼになんてことをと、叱ろうにも。
「そもそも、ボクがやったって証拠がある?」
「ぐぬっ」
証拠なんて、あるわけない。非科学すぎる。
「ふふん! どう? すごい力でしょ?」
「どういう仕組みなんだ?」
「さあ?」
「さあって、わからないのか?」
「少なくとも、理屈や理論では解明不能だね」
たしかに、説明など出来ない。それはまるで。
「魔法とか、超能力の類だとボクは思ってる」
魔法とか超能力を使えるようになったらしい。
「とにかく、大人しくしてろ」
「ボクに命令すんな」
力を持った幼馴染は、俺に反抗してきた。
「頼むから、大人しくしててくれ」
「頼み方がなってないね」
「……どうしろって言うんだよ?」
「お尻を舐めて」
やはり、それか。予想通りの最悪な展開だ。
「……舐めれば良いのか?」
「うん。ふやけるくらいにね」
「……わかった」
これ以上、被害を出さない為に、俺は従った。
「その目が気に入らないな」
「あ?」
「嫌々舐められても困る」
脅迫した癖に、今更、何を言ってやがんだ。
「お前が舐めろって言ったんだろ?」
「嫌々舐めろとは言ってない」
「じゃあ、どうすりゃいいんだよ」
「ボクのお尻を愛して」
無理難題に無理難題を重ねられても、困る。
「そんなことを言われても困る」
「ボクのこと、愛してないの?」
そんな、不安そうな顔で、聞くなよ。
「……愛してるよ」
「ほんと?」
「ああ、本当だ」
「だったら、お尻も愛してくれるよね?」
どうだろう。自信はない。そんな経験ないし。
「軽く、キスするだけでもいいから」
「舐めなくていいのか?」
「うん……たぶん、ボクが耐えられないし」
「出来もしないことを言うなよ」
「う、うるさいなぁ! ペシャンコにするよ!」
「それだけは勘弁してくれ」
「じゃあ、黙ってキスして! ほら、早く!」
ペロンと尻を出して、こちらに向ける幼馴染。
染みひとつない、純白のお尻だった。
もとより色白だったが、透けそうな白さだ。
「……綺麗だな」
「ふぇっ!? な、なにを言ってるのさ!?」
「今、ピクッてなったぞ」
「み、見るなぁ!」
「見ないで、どうやってキスすんだよ」
「目を瞑ればいいだろ!?」
「嫌だ」
目を閉じるつもりはない。勿体ないからな。
「君って、本当に不思議だよね」
「ん? なんだよ、突然」
「だって、ボクみたいなのに構ってさ……」
たまに弱気になるのは、本当にズルイと思う。
「好きでやってんだから、気にするな」
「でも、正直、めんどくさいでしょ?」
「ああ。すげーめんどくさい」
「それなのに、なんで……?」
「好きだから」
俺は、幼馴染のことが好きだった。
チビで童顔なところも。
頭がおかしいところも。
女の弱さを隠して一人称がボクなところも。
わがままなところも。
泣き虫なところも。
変な力に目覚めて調子に乗ってるところも。
「だから、尻にキスするくらい、平気だ」
そう言ってちゅっとキスすると、ビクついた。
「ひゃんっ!?」
自分でやれって言っておいて変な声出すなよ。
「もっとか?」
「へ? あ、うん……よろしくお願いしましゅ」
ご要望に沿って、何度も尻にキスをする。
ちらりと時計を見ると、完全に遅刻だった。
まあ、いいさ。世界の存亡の方が大切だ。
「んっ……あっ……そんなとこまで」
「嫌なのか?」
「い、嫌じゃないけど……汚いよぅ」
「汚くなんかない」
たぶん、そう言って欲しかったのだろう。
「んあっ……好きぃ……だいしゅきぃ」
「俺も大好きだ」
「もっと、愛して……ボクを、愛して」
「愛してる。だからお前も、俺を愛せ」
「ふぁっ……愛してる……愛してるよぅ」
「じゃあ、この世界のことも、愛してやれ」
ふやけるくらい愛してから、俺はそう諭した。
「んっ……考えとく」
「約束だぞ?」
「わかったから……お尻、もっとして」
「ああ、任せろ」
結局、この日、俺は会社を休むことにした。
「もう! やりすぎだよ!」
「悦んでただろ?」
「漏らすくらいしなくてもいいじゃん!」
少々やり過ぎてしまい、怒らせてしまった。
「罰として洗濯手伝ってよ!」
「何をすればいいんだ?」
「パンパンってシワを伸ばして!」
従順にパンパンと、パンツのシワを伸ばすと。
「ん。あとはボクが畳むから」
「お、おう……」
「どうかした?」
「なんだか、嫁さんみたいだなと思って」
「な、何を言ってんだよ! 恥ずかしいなぁ!」
照れながらもパンツを畳む幼馴染の生尻を。
「それっ!」
「キャンッ!?」
「フハッ!」
パンパン叩いて、愉悦に浸り、哄笑した。
「フハハハハッ!!」
「らめぇぇえええっ!?!!」
「フハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
ちょっとだけ、尻の魅力がわかった気がした。
『夕方のニュースの時間です……』
気がつくと、日が傾いていて、夕暮れ時。
会社を休んだ俺はその日、幼馴染と過ごした。
一日中、パンツを穿くことのなかった生尻を。
なんとなく撫でつつぼんやりTVに目をやると。
『山の奥で、巨大な手の跡がみつかりました』
木々をなぎ倒して、くっきり浮かび上がる。
巨大な、手のひらの跡が、映し出されて。
俺は、そっと、TVの電源を、切った。
「あーあ。いけないんだ」
「ふ、不可抗力だ」
「一緒に世界をぶっ壊しちゃおうか?」
「遠慮しとく」
「ええー! なんでさ!?」
「俺はわりと、幸せだから」
ひょんなことから、おかしな力を得た俺が。
その力を振るうことは、恐らくないだろう。
ただし、世界が俺の嫁さんを泣かすならば。
「お前がどうしてもと言うなら、ぶっ壊す」
「……ボクだって、幸せだよ」
「それならひとまず、見逃してやろうぜ」
「うんっ!」
幼馴染が幸せなうちは世界は存続するだろう。
【尻は世界を救う!】
FIN
異能力系を書こうと思って書いたらとんでもないものが出来上がってしまい、長らくお蔵入りとなっていた作品なのですが、たまにはこんな風にわかりやすくて馬鹿馬鹿しい物語も悪くないかなと思い、投稿しました。
愉しんで頂けたら、幸いです。
これは予想外
おつおつ
これはいいお尻
まーたおまえか
おつおつ
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