――おしゃれなカフェ――
<からんころん
北条加蓮「うー、寒ぅ……」
加蓮「さて、藍子はっと――」チラ
加蓮「ん?」
(ちょっと向こうの席)
高森藍子「そうなんですか~。そんなカフェが……。行ってみなきゃっ」
<はい! 超おすすめです!
<ちょっと遠いですけどね。面白かったですよ
加蓮「……。……藍子のヤツめ。私がちょっと遅れたからって他の子と仲良くして! 誰よその女! いや知ってるけど」
加蓮「……こういうの、見慣れてるからなんとも思わないや」
加蓮「さてとっ」
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レンアイカフェテラスシリーズ第94話です。
<過去作一覧>
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「最初にカフェで会った時のこと」
~中略~
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「じいっと見つめるカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「思い浮かべるカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「冬の始まりのカフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「お互いを待つカフェで」
加蓮「いつもの席……って、藍子、カバンだけ置いてってるし。相変わらず無用心だなぁ」スワリ
加蓮「すみませーんっ。コーヒーお願いします。いつもの感じでー」
加蓮「? どしたの店員さん。そんな不思議そうな顔で――」
加蓮「あぁ藍子?」チラ
<そうですね~。最近は、少し北の方に探しに行っているんです。例えばこの辺りの――
<北の方は、まだ行ってなアッ
<……あっ。コイツまた死んだ。藍子さんがちょっと近づいただけなのに
加蓮「ふふっ。とられちゃったみたい。……ほら、いつ気付いてくれるかな、的な?」
加蓮「まーまー。イタズラじゃないからっ。すぐに私に気付いてくれない藍子だって悪いんだしー?」
加蓮「……。……で、店員さんはなんで微妙に落ち込んでんの?」
加蓮「あぁ、藍子が色んなカフェに行った話を延々してたから……。それはドンマイ」
加蓮「……でも聞こえてくる話が楽しそうで悩む? ……うん、悩めばいいんじゃないの?」
<はっ! ね、ねえ! 今夢の中で藍子さんと会った! 藍子さんとギャアアアアア!
<ひゃ
<……すみません。コイツが本当にすみません
加蓮「あーあ。また藍子ちゃんやらかしてるー」
加蓮「……ね? ここから見てるのって面白いでしょ?」
加蓮「って、店員さんにとってはいつもの話か。私達のこと、いつも見ててくれてるもんね」
加蓮「……そうだよねー。店員さん、私達のこと見守ってくれてるんだよね」
加蓮「いつもありがとね、店員さん。……あー、変なとこ結構見せてるかもしれないけど。あと迷惑もいっぱいかけちゃったけど。でもなんか、いつもの場所にいつもの人がいてくれるとホッとするし」
加蓮「それにこのカフェのこと、大好きだよ。私も、それに藍子も」
加蓮「……あ。早歩きで行っちゃった」
加蓮「あれ? これ私もやらかした?」
加蓮「……」チラ
<おーい、戻ってきたかー? 現実見れてるかー?
<う、うん。ええと……ここここんにちは藍子さん!
<はい、こんにちは
加蓮「このやりとりも何回もやってんだろーなー。ツッコミ役の子、すごい呆れた顔してる」
加蓮「……今さらだけどあっちの子の名前なんて言うんだろ。今度聞いてみよ」
<……。
<藍子さん? ……あの、いいんすか――
<ふふっ。……それで、もう1箇所のカフェのこと、教えてくれるかな?
<は、はひ! ええええと、あれ、あれどこだっけっ
加蓮「なんかあれ半分わざとやってない? ぐい、って顔近づけるヤツ。あの子の反応楽しんでない?」
加蓮「藍子はそういうこと狙ってできる子じゃない……って思ってるけど、なーんか加蓮ちゃんの真似とかしてるっぽいし?」
加蓮「……1人でいる時に自分のこと加蓮ちゃんって呼ぶの、痛いからやめとこ」
<はいこれ。藍子さんと会った時に教えるんだーってはりきってメモってたでしょ
<そ、そうでした!
<私にまで敬語なんかいっ
<ふんふん……。すっごくわかりやすくまとめているんですね♪
<わぁ……。ほめられたぁ……! げへへ……
<……さすがにその笑いはやめな?
加蓮「……? ……っと、店員さんだー。コーヒーありがとー」
加蓮「ふふっ。そうなんだ。藍子、まだ気付いてくれなくてさ。すっかり振られちゃった」
加蓮「……ん? いいよ、別に気遣ってくれなくて。他にお客さんもいるんだし――って、いなかった」
加蓮「……」
加蓮「……そういえば店員さん、私がいない時に同じ感じで藍子と話すことあるんだっけ?」
加蓮「あはは。何話していいか分かんないね、こういうの。藍子はすごいなぁ」
加蓮「ほら、私って結構人見知りな方だし?」
加蓮「……何その、何言ってんだコイツみたいな顔。ホントだからね?」
<藍子さんのお話も聞かせてください!
<私のお話? そうですね~。それでは、この前久しぶりに猫カフェに行った時のお話を――
<はわ~
<はわ~
加蓮「ふうっ。コーヒーおいし……♪」
加蓮「んー……っ。ふー」
加蓮「ずず……」
加蓮「ちょっと疲れてるのかなぁ、私。だからこそカフェなんだけどね」
加蓮「……あ。今の、ちょっとカフェマスターっぽくなかった?」
加蓮「ふふふ。藍子には負けてられないもんねー♪」
<そこで店員さんと、常連さんの方かな? のお話に、耳を傾けてみたんです。そうすると、地元のお話や、近くのお店のことを――
<はわ~
<はわ~
加蓮「こういう話……毎日の日常? 的なのってさ、藍子、握手会で来てくれたファンにやってるんだよね」
加蓮「えーあれ贔屓じゃない? あの子達、一応藍子のファンってポジションなんだし?」
加蓮「これってスキャンダルだよね。高森藍子、贔屓にしているファンがいる!」
加蓮「うーん。もうちょっといいタイトルないかな? モバP(以下「P」)さんに聞いてみよっと」ポチポチ
<いつの間にか、お話している方の周りに、猫さんがいっぱい集まってきて――
<はわ~
<はわ~
加蓮「何言ってんだお前って返された」ブスー
加蓮「……」チラ
加蓮「……さすがにここまで気付かれてないのおかしくない?」
加蓮「え、あれ絶対気付いてるよね? なんか一瞬こっち見た気がするし……」
加蓮「……気付かれた上で無視されてる、とか……?」
加蓮「それか、とりあえずするところまで話しちゃおうとか」
加蓮「だ、だよね? 話が盛り上がって抜けるに抜けられないとか、そーいうのだよね!」
加蓮「うんうん。藍子っておばちゃんみたいなとこあるから。お母さんもよくそういう風になるしー」
加蓮「……」
加蓮「……私、藍子になんかしたっけ……?」
<猫さんは、1匹1匹、違うリボンがついていたんです。こんなにちっちゃくて、それがとっても可愛くて♪
<はわ~
<はわ~
加蓮「…………」
加蓮「……」スクッ
加蓮「藍子ー? 盛り上がってるとこ悪いんだけどさ、」
藍子「それから――あっ、加蓮ちゃん♪ こんにちは」
加蓮「こんにちは。……じゃなくてっ。アンタね、いつになったら私が来たことに」
藍子「加蓮ちゃん、やっと来てくれたっ」
加蓮「気付いて――……あ?」
<はわ~……あ、加蓮さん!
<はわ~……っとと。こんにちは
加蓮「あ、うん。どうも。……で? 藍子ちゃん?」
藍子「?」
加蓮「? じゃなくて。やっと来てくれた、って――」
藍子「うふふっ♪ 加蓮ちゃんが来てくれていたことは、実は気が付いていたんです」
藍子「だけど、あえてここから動かないでいて……加蓮ちゃんがいつ、こっちに来てくれるかな? って。楽しみにしていました」
加蓮「…………」
<あはは、これはしてやられましたね
<???
藍子「でも、待っている間にお話に夢中になってしまっていて……。もうっ。加蓮ちゃんが、なかなか来てくれないから」
加蓮「……べっつにー? 藍子ちゃんが楽しそーだから? 邪魔したら悪いかなーって思っただけだけどー?」
藍子「そんな。遠慮なんてしなくていいんですよ~」
加蓮「通じてないし……!」
藍子「そういえば、加蓮ちゃん。ちらっと見ただけですけれど、店員さんとも仲良くお喋りしていましたよね」
藍子「何をお話していたんですか? あとで教えてくださいっ」
加蓮「…………」
加蓮「……。一応、一応ね? 言っとくけど」
藍子「はい」
加蓮「藍子。気付いてはいたからね? 藍子が気付いてることに」
藍子「私が気付いていることに、気付いていた、ですか?」
加蓮「そ。藍子が私に気付いてるんだろうなーってこと、私は気付いてたからね?」
藍子「なるほど~。やっぱり、お見通しなんですね」
加蓮「途中で一瞬だけこっち見てたでしょ。あれで藍子が気付かない訳ないもん」
藍子「バレちゃってましたっ」
加蓮「そこまで企んでたとは気付かなかったけどね」
加蓮「……で」チラ
加蓮「そういう訳だから。藍子は返してもらうから。ごめんね?」
<あ、はい! すみません!
<こっちこそ、なんかすみません
藍子「カフェのお話、また今度しましょうね~」フリフリ
……。
…………。
>>12 申し訳ございません。1行目の藍子のセリフ後半を修正させてください。
誤:~店員さんとも仲良くお喋りしていましたよね」
正:~店員さんとも仲良くお話ししていましたよね」
藍子「すみませ~んっ。あ、店員さんっ」
加蓮「やっほー。久しぶりー」
藍子「久しぶり?」
加蓮「久しぶり」
藍子「……? じゃあ、私も。店員さん、おひさしぶりですっ」
加蓮「何言ってんの藍子。何日か前に来たばっかりでしょ?」
藍子「あれっ!?」
加蓮「くくっ。ちょっとだけ仕返しー♪ ……店員さんは相変わらず私を睨むんだね?」
藍子「もうっ。私は、ホットココアでお願いします。加蓮ちゃんは?」
加蓮「私はいいや。さっきコーヒー飲んだばっかりだし」
藍子「では、加蓮ちゃんの分はまたあとで。はい、お願いしますっ」
加蓮「……」チラ
<~♪
<……なんでそんなにニコニコしてんの……って、あー
藍子「♪」フリフリ
加蓮「ファンサービス旺盛だねー」
藍子「ほら、加蓮ちゃんもっ」
加蓮「私はいいよ。……改めて言うけど。気付いてたんだからね?」
藍子「分かっていますよ」
加蓮「ホントに?」
藍子「分かってますってばっ」
加蓮「むぅ……」
加蓮「なんかさっきは急かしたみたいになっちゃったけど、話したいならもうちょっと話してきてもいいんだよ?」
藍子「ん~……」
加蓮「実際、カフェの話とか盛り上がってたみたいだし」
加蓮「あーでも、今度は私も同席するけどね。藍子をとられるのはやだし?」
藍子「それもいいですけれど、今はやめておきます」
加蓮「へぇ? いいんだ」
藍子「はい、いいんです。なんていうのかな……。この距離を大切にしたいな、って」
加蓮「アイドルとして特定のファンには肩入れしすぎない、とか? ……それはちょっと手遅れじゃない?」
藍子「あはは……。確かにそれもありますけれど、それだけではなくて」
藍子「カフェは、みなさんの場所です。でも同時に、それぞれの時間が流れる場所でもありますから」
藍子「ときどき、さっきみたいに、共通の話題で盛り上がったり、ご飯のお話で盛り上がったり。ご一緒することもあるけれど。それでも、お互いが過ごす時間はお互い尊重したいなぁって」
藍子「……ほら、私も。加蓮ちゃんと過ごす時間は、大切にしたいからっ」
加蓮「嬉しいこと言ってくれるねー?」
藍子「えへ♪」
藍子「あと……」
加蓮「あと?」
藍子「……こ、こうして手を振ってあげて、それに応えてもらうってこと、これまで生きてきた中で、ぜんぜんなかったことで……。そのぉ……」
加蓮「楽しくなってきちゃった?」
藍子「わ、私だってアイドルやっていいって言ったの、加蓮ちゃんだもんっ」
加蓮「あははっ。別に悪いって言ってないって」
加蓮「ステージの上から手を振ったり、SNSで返信をしたり、あとは……ファンレターのお返し?」
藍子「ラジオでも、よくお返事をするんですけれど、あの時間もすっごく楽しくてっ」
藍子「あっ。お返事したら、それにまたお返事を頂いたこともあるんです!」
藍子「あまり特定のファンの方と長く続けてしまうのはよくないと、Pさんから注意されちゃうこともありますけれど……」
加蓮「あー……。まぁ、あの子達とはほら。友達ってことで?」
藍子「……はいっ。友だちということで、許してもらっちゃいましょう。加蓮ちゃんも、内緒にしてくださいね?」
加蓮「はいはい。……藍子の弱みゲットー」
藍子「聞こえてます」ジトー
加蓮「たはは」
藍子「私を応援してくれる方と、そうやってお互いに受け止めあうのが、私、大好きなんです♪」
加蓮「分かるっ。なんかアイドルって感じだよねー」
藍子「うんうんっ」
加蓮「いや、むしろお姫様の気持ち?」
藍子「お姫さま?」
加蓮「周りのみんなが自分に目を向けてくれて、色んなこと言ってくれて。で、私が手を振ったら答えてくれるの。それってちょっとお姫様みたいじゃない?」
加蓮「……って、私らしくないっか」アハハ
藍子「う~ん。……ちょっぴり加蓮ちゃんらしくないかも?」
加蓮「む」
藍子「でも、そんな加蓮ちゃんがいてもいいと思いますよ。お姫さまの加蓮ちゃん。ぴったりな役っ」
加蓮「今度Pさんに頼んでみたいって顔?」
藍子「ば、ばれちゃうのが早いですね。相変わらず……」
加蓮「藍子がわかりやすいだけだよ?」
加蓮「お姫様ってさ、別に役でやりたい訳じゃなくて、今の自分がそういう感じなのがいいなぁって……。ちょっと今さらだけどね」
藍子「手を振ったら振り返してくれることが、こんなに楽しいなんて……アイドルになる前は、想像もしていませんでした」
加蓮「ホントだよね」
藍子「ふふっ。……♪」フリフリ
<アッ
<はわ~……って違う! しかもまた死んでるし! おーい、戻ってこーい
加蓮「……やりすぎるのには気をつけなさい?」
藍子「あ、あははは……」
□ ■ □ ■ □
藍子「ずず……」
藍子「ふうっ。ごちそうさまでしたっ」
加蓮「そして即座にやってくる店員さん。見計らってたでしょー」
藍子「……たまたま、ですか? ええと、そんなに必死に否定されなくても大丈夫ですよ……? 加蓮ちゃんの、いつもの冗談ですから」
加蓮「店員さん、まだまだだねー」
藍子「こらっ」
加蓮「カップだけじゃなくて、窓際の置物を取り替えに? へー……」チラ
藍子「確かに、もう銀杏の季節ではなくなっているかもしれませんね……」
加蓮「だね。……藍子、そういうのやっぱ目聡く気付いてくるよね」
藍子「加蓮ちゃんの衣装の小物がちょっぴり変わったことにも、ばっちり気付いてますよ~?」
加蓮「へー? それ結構ファンのみんなからも気付かれてなかったのに」
藍子「そうなんですか?」
加蓮「うん。ま、気付いてるけど言わないみたいなヤツかもしれないけど。女心、分かってないなー」
藍子「本当は、気付いてほしいんですよね♪」
加蓮「……」ベシ
藍子「いたいっ」
加蓮「自覚してるけど改めて言われるのはなんかムカつくっ」
加蓮「さっきのお姫様の話じゃないけどさ。どれくらいまでの変化なら気付くかって試してみるの、面白そうじゃない?」
藍子「間違い探しみたいな感じですか? 何か所変わったでしょうっ、みたいな」
加蓮「ちょっと違うかなぁ。毎回1つだけ何か変えて、どこまで気付いてもらえるか」
藍子「ふんふん」
加蓮「って言っても最初からやりすぎるとアレだから、まずは……」
藍子「わかりやすいところからやりましょう。加蓮ちゃんと言えば……」
加蓮「髪型?」
藍子「はい♪ 今なら、Pさんだけではなくて……世界中の方が、気付いてくれますよ」
加蓮「世界中はさすがに言い過ぎだって。で、次は……衣装の色とか」
藍子「せっかくなので、パッションな色にしたいですね。ううん、キュートな色の方がいいのかな?」
加蓮「ブルーをスカイカラーにしてみるとかじゃ駄目?」
藍子「それは、ちょっと難易度が上がってしまうような……? 最初は、簡単なところからやるんですよね?」
加蓮「そだね。じゃー次からは中級編!」
藍子「髪型、衣装と来たら……靴、とかでしょうか?」
加蓮「あー、それは難易度高いよ」
藍子「高すぎるかな?」
加蓮「いけるいける。じゃあその時は、藍子が靴を選んでくれるってことで」
藍子「わ、私が選ぶんですか。緊張しちゃいますね……。靴の次は?」
加蓮「リボンと髪飾り。こういうのは一気にいきたいよねっ」
藍子「同じ髪型なのに、髪飾りだけが違う加蓮ちゃん。見つけた人は嬉しくなっちゃいます」
加蓮「最後はメイクとか? もうここまで来たら分かる人にしか分かんないよね」
藍子「メイクに詳しい方が、じ~、って見て、ようやく分かるくらいかも?」
加蓮「照明の当たるカットでバレやすいかもしれないけど、こういうのって分かってもらえた方が嬉しいよね」
藍子「そうですね~」
加蓮「あ、でも逆に"なんでバレたの!?"ってなって悔しくなったりするかも」
藍子「次は、もっとばれないように、でも気付いてもらえるように工夫しましょ?」
加蓮「さらっと難しいこと言うねぇ?」
加蓮「んー……。でもさ、なんかこういうの、ちょっとセコくない? っていうか、面白そうだけどちょっと嫌かも」
藍子「?」
加蓮「毎回どこか違う私のステージ。どこが違うでしょう? 的なのって、企画にしたら受けそうだけどさ……」
加蓮「そしたらステージを見てくれる人が、私じゃなくて私の変化を探すことになるじゃん」
加蓮「それってなんかやだなーって。それよりは……歌、聴いてほしいから。それに私の外見だけじゃなくて、私そのものを見てほしいから……」
藍子「……」
加蓮「……言ってること、分かってくれる?」
藍子「あ、はい。分かりますよ。……確かにそうかも? って。納得しちゃっていました」
加蓮「よかった。……でしょ?」
藍子「LIVEステージは、ファッションショーや、グッズの紹介ではありませんもんね」
加蓮「逆にそういう場でやったら、ファッションの方に目を向けてくれなくなるよね」
藍子「難しいですね……。加蓮ちゃんの違うところ探し」
加蓮「むしろさ。藍子が最初に言った間違え探しの方がいいかも」
藍子「間違い探しのほう」
加蓮「SNSとかでアップして、で次の日にもアップして。どこが違うでしょー? みたいな」
藍子「あっ、それ面白そう♪ それなら最初から間違え探しって分かっているから、大丈夫ですよね」
加蓮「どうせなら藍子も一緒にやる?」
藍子「私も?」
加蓮「一緒に自撮りツーショットを2日連続でアップして、どっちのどこが違うでしょー? みたいな」
加蓮「私は同じだけど、藍子のアクセサリが違う! とか、藍子は同じだけど加蓮ちゃんのネイルが違う! みたいなの。ね、絶対面白いよ!」
藍子「ふふ。加蓮ちゃん、すごく楽しそう……♪」
藍子「いいですよ。やりましょう、間違え探し♪」
加蓮「どんなのがあるかな。やっぱり髪型?」
藍子「誰が見ても、あっ、ここ違う! ってなっちゃうようなものも、面白いかもしれませんね」
加蓮「お団子頭だった藍子ちゃんが次の日にはポニーテールに! みたいな?」
藍子「そうそうっ」
加蓮「じゃあその次は思いっきり難しくしちゃおう。加蓮ちゃんのルージュの色が微妙に違う! くらいの」
藍子「気が付いてくれる方、いるかな?」
加蓮「気付かなかったらネタバラシして、また次のを撮ろうよ」
藍子「そうですねっ」
加蓮「……な、なんかうずうずしてきた。早速1枚撮っとかない?」
藍子「ここでですか? じゃあ……あっ。撮る前に、もう1枚の、間違え探しの方。どこを変えるか決めておかないといけませんね」
加蓮「あー。そう考えると撮るのって難し……いや、それは撮った後でいいんじゃない?」
藍子「写真を見ながら決めても大丈夫、かな?」
加蓮「ってことで。じゃあ早速」
加蓮「藍子ー、お邪魔するよー。なんてっ」(藍子の隣に座る)
藍子「わ」
加蓮「スマフォを取り出し、て――」チラ
加蓮「……」
藍子「……あ、あはは」
加蓮「……そういえばこうして隣に座るの、久しぶりなんだっけ?」
藍子「カフェ巡りをしていた頃は、よく……。でも、最近はいつも……向かいですもんね」
加蓮「だよねー……」
加蓮「……」
藍子「……」
加蓮「……写真! 写真撮るって話でしょ。ほらっ」
藍子「……そ、そうでしたよね。うん。撮りましょうっ」
加蓮「じゃあ――ってこら! くっつきすぎっ。ツーショットだからってそこまでくっついてこなくても――」
藍子「せっかく撮るんですからくっつきましょうっ。ほら、加蓮ちゃんっ。えい!」
加蓮「だからひっつきすぎっ、ああもう! 一応ここ、他にも人いるんだから!」
<
<……コイツの死にどころがよく分からない……
(撮り終えた後、加蓮と藍子はまた向かい合うよう座り直しました)
……。
…………。
加蓮「…………」ゲッソリ
藍子「…………あ、あはは」
加蓮「……自撮りにこんな疲れたの初めてなんだけど」
藍子「……お疲れさまです、加蓮ちゃん」
加蓮「原因アンタでしょ!」ペシ
藍子「いたいっ」
加蓮「とりあえず撮れたから、間違い探しにする場所を考えよっか」
藍子「はい、加蓮ちゃん。これ、撮れた写真」ズイ
加蓮「おー。……なんか私のスマフォのより綺麗に映ってない? 藍子が撮ったから?」
藍子「たぶん、最近スマートフォンを替えたからだと思いますよ~」
加蓮「マジ? いいなぁ。私もそうしよ」
加蓮「……」ジー
藍子「どこを変えようかなぁ……。……加蓮ちゃん?」
加蓮「……や、なんだろ。写真って不思議だなぁ、って」
藍子「不思議?」
加蓮「何が不思議とかじゃなくて……。ずっと見てられるんだよね」
加蓮「前に……何だったっけ。テレビだったかな?」
加蓮「美術館の絵とか芸術品をずっと見てられる人! みたいな紹介をしてたの」
藍子「そんな方がいらっしゃるんですね……」
加蓮「それ聞いた時には、何その退屈なの、ってかヤラセでしょ、なんて思ってたけど……なんか気持ち、分かったかも」
加蓮「……」(写真を見る)
加蓮「んー」(藍子を見る)
加蓮「……」(写真を見る)
加蓮「……藍子は藍子なんだけど、なんか違うね。なにが違うんだろ……」
加蓮「どっちもずっと見てられるけど、ちょっと違っていて……面白いなぁ」
加蓮「今まで撮ることはいっぱいあったけど、写真をこんなに真面目に見たこと、なかったっけ……。アルバムの写真とかも、全部こんな感じなのかなぁ」
加蓮「改めて見たことなんてなかったけど、帰ったら探してみよっかな。そっか。写真って、こんな感じなんだ……」
藍子「……♪」
加蓮「…………何」
藍子「わっ。う、ううん。加蓮ちゃんが楽しそうだなあって。それだけですよ?」
加蓮「絶対それだけじゃなかったでしょ今の! ほら、何考えてたの? 加蓮ちゃんを鼻で笑ってたの? ん?」ズイ
藍子「そんなことしてませんっ」
藍子「その……あの、加蓮ちゃんが写真にも興味を持ってくれたみたいで嬉しいなぁ、って。それだけです!」
加蓮「……?」
藍子「ほら、カフェに、お散歩。それから、カメラと写真も」
藍子「加蓮ちゃんが私の好きなもの、どんどん好きになってくれて……それをこうして、目の前で見られること……すっごく嬉しいな、って♪」
加蓮「……あははっ。そういえばそうだね」
加蓮「じゃあ藍子を見習って、次から藍子への差し入れはぜんぶポテトにしちゃおっかな?」
藍子「せ、せめて飲み物と一緒にでお願いします。レッスンの後にポテトだけは……その、ちょっと」
加蓮「写真さー。これ、そのままアップしてみていい?」
藍子「え? 間違い探しのお話は……?」
加蓮「間違い探しはこれアップした後で考えてもいいでしょ。変えた方の写真は今すぐアップする訳じゃないんだし」
加蓮「って、2つ横に並べた方がいい?」
藍子「う~ん……。それでもいいですけれど、やっぱり2日使ってで投稿しませんか?」
藍子「そうした方が、加蓮ちゃんのファンも明日を楽しみに待ってくれますから♪」
加蓮「そっか。藍子ちゃんもなかなか小悪魔だねー?」
藍子「くすっ。加蓮ちゃんが教えてくれたことですよ?」
加蓮「またすぐ私のせいにする」
藍子「じゃあ、この写真はそのまま投稿してしまいますね。アプリを選んで――」
加蓮「……っ、まって!」
藍子「え?」
加蓮「あー、えと、その……。ち、ちょっとだけ!」
藍子「はあ。分かりました」
加蓮「そのー、えっとー……」
藍子「……撮り直しますか?」
加蓮「そうじゃなくて! なんだろ……。分かんないけどちょっとだけ! 心の準備!」
藍子「……???」
藍子「加蓮ちゃん、普段からこういう写真いっぱい投稿しているハズなのに――」
藍子「でも、うんっ。じゃあ、加蓮ちゃんが投稿したくなった時で」
藍子「はい。スマートフォン、テーブルの上に置いておきますね」スッ
加蓮「……ごめんね?」
藍子「ううんっ」フルフル
加蓮「……」
藍子「……」
加蓮「……」
藍子「……」
加蓮「……ん。おっけ。アップしよ」
藍子「は~い」ポチポチ
藍子「はい、できました♪」
加蓮「ありがと……」
藍子「でも、急にどうしたんですか? このまま見せたいって言ったり、やっぱりやめるって言ったり」
加蓮「んー。……自分でもちょっと分かんない。ただ、なんか急にざわってなっちゃった」
藍子「ざわざわって?」
加蓮「ざわざわって。心が」
加蓮「さっき写真って凄いんだって気付いたからかな……。それを人に見てもらうのが、怖く……」
加蓮「怖いってほどじゃないや。でもなんだろ。よく分かんないけど、ざわっとしたの」
藍子「……よく分かんないけれど、なんとなく嫌だ、って思うこと、たまにありますよ」
加蓮「ある?」
藍子「はい。そういう気持ちって、すべて説明しなくても、伝わっているなら大丈夫っ」
加蓮「いや今回伝わってないじゃん……」
藍子「そういえばそうですね。でも、たぶん大丈夫です」
加蓮「……まあ、藍子が大丈夫って言うなら」
加蓮「……」
加蓮「……あ、そっか」
加蓮「今なんかすとんって落ちてきた。見られるってこと意識しすぎてるんだ。私」
藍子「見られることを、意識しすぎた……?」
加蓮「お姫様の話をしてた時から引っかかってさ。みんなが見てくれる、みんなに見てもらえるってこと……それって凄く嬉しいし、昔の私が望んでたことでもあるんだけどさ」
加蓮「いざそうなると……慣れない、ってほどじゃないけど、たまーに変になるって感じ」
加蓮「……ホントにいつも思ってることじゃないんだよ?」
加蓮「今日だけ、なんとなく。ね。藍子がいるからかな?」
藍子「それだとまるで、私のせいみたい……?」
加蓮「藍子のせいだー」
藍子「うぅ。ごめんなさい~」
加蓮「罰として、私がそれに慣れるまでここで一緒にいなさい」
藍子「……はいっ」
藍子「あっ。さっき投稿した写真、いっぱい見てもらえてます。コメントも送ってもらえました!」
藍子「間違い探しをする、って書いたから、明日の写真も楽しみにしてもらえていますよ」
藍子「ほら、加蓮ちゃ――……急にそっぽを向かなくてもいいじゃないですかっ」
加蓮「な、慣れるまで一緒にいろって今言ったばっかじゃん! 馬鹿!」
藍子「慣れるために、ほら。加蓮ちゃん。ほらっ。誰も悪いことなんて書いていませんから!」グイグイ
加蓮「わーもう待って、待ってって! 待ちなさいって……! もう!」
【おしまい】
【追記】
タイトルに消し忘れが生じてしまっていたようです。正しくは、
北条加蓮「藍子と」高森藍子「ちょっぴりもどかしい日のカフェで」
です。
大変申し訳ございません。また、このお話をまとめて頂けるのであれば、タイトルの表記はこちらでお願いします。
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