【安価】祖父『孫が働き始め結婚し子供ができたら遺産5億円を渡してください』 (37)


短くさらっと終わるつもりです


弁護士「とのことです」

「は? 」

弁護士「との、遺言です」

「……は? 」



どこにそんな金があったのだとか
そんな遺言に拘束力があるのかだとか
そういった知らされて当然の情報は何も無く
弁護士と名乗る人物は一個人の一大事を羽毛か何かの様に扱って
ただペラペラの書類を数枚残し、去っていったのだった




……

………



俺はまぁ、何というか、無職だ
働く意欲なんぞ全くと言っていい程存在しない

爺様とはそこそこ仲の良い関係だったと思う
けれどそれはお互い捻くれた人間だったからこその関係だったのだ
今になって、そう年が明けて葬儀その他諸々が粛々と処理された今になって思う

「はぁ……でもあの爺様の遺言だしなぁ」

できれば、俺が苦労も苦しみも得ないでだが、成し遂げてやりたい
俺にもそれくらいの良心はまだ残っていたみたいだった
久し振りに、少しだけ身体に力が入った


真面目に働き遺言を守ろうか
それとも誰かと結託して遺産だけぱぱっと手に入れてしまおうか

人間は死ぬ瞬間の心持ちで禍福を〆る
爺様が常々口にしていた言葉である

爺様はさぞ愉快な気分であの世に逝ったのだろう

何にせよ、俺に分かるのはこの穴だらけの遺言はひとえに爺様らしいものだ、ということだけ



「さて、どうするかな……? 」



そもそも“ 俺 ”のスペックは? ↓2


例)その他ルックスでもなんでもどうぞ

・有名大出身→ 過労で退職からのニート
・清算ないじめ→ 中学校卒業から十年続くヒキニート
・FXだけで億万長者となった不労所得ニート
・何もできない何もしない真性クソニート

対人恐怖症

有名大出身

凄惨ないじめ


俺「どうするか、といってもな」

ニート引き篭もり無職の俺に彼女なんぞいるはずも無い。

一応は有名大を出て一流と呼ばれる企業に就職したまではよかった
そこまでは友達に自慢できたし、親戚の覚えも大変目出度いものだったのだ

けれどそこからの落下は早く、また急激で
肥溜めの様な環境に蠢く腐り切った上司ども
他人を蹴落とすことしか考えない同期や先輩ども
取引先にだってまともな人間はいなかった

その上残業に次ぐ残業。さらに次ぐ残業という袋小路
気付けば俺は一年足らずでその会社を辞めていた
一度も入院しなかったのが逆に怖い、医者にそこまで言われた激務を伊達では無い



「…………仕事をするにしてもあぁいうのは勘弁だな、マジで」



で、連絡を取れる女友達ないし知り合いは


いる? いない? いるなら何人くらい? ↓1

いる50人ぐらい


「いやでも待てよ? 結婚くらいなら割に余裕に感じる俺がいる」



思考を纏めるためにスマホを取り出し、連鎖的に様々な事柄が思い浮かぶ
それなりに順風満帆だった学生時代
思い出は記憶だけではなく、スマホのフォルダにもしっかり記録されていた

男友達と馬鹿なことをして飲み歩いたりもした
女友達と下らない話をして笑い合ったりもした
雑多な友達と雑多な遊びを楽しんでいたのだ、あの頃は



「あの頃の友達なら連絡取れるな。Lineもイケるだろうし」



というかご近所さんやら高校生時代によく行った店のお姉さん
果ては社会人なりたての頃に仲良くなった多様な友人知人がいる気がする


というか人によっては俺の近況も知らないわけで
さらっと就職するなりお話してみるなりですぱっと終わりそうだ

よし、いけるいける。ちょっと頑張れば第二のニート人生である



「…………ざっと五十人はいるな、余裕で」



スマホの連絡先やら直に会いに行ける知人やらなんやら
数えてみればあら不思議
何故今までニートなんぞしていたのか逆に分からなくなる



「取り敢えず……めぼしいのは……」



どんな人たち? ↓1~3

お名前から職業、ルックス、年齢、趣味なんでもどうぞ
取り敢えず三人募集

影山 雫 (かげやましずく)大学生
小柄で華奢だが胸は大きいオドオドした雰囲気
20

読書 小説執筆

如月 結 高校生16歳
おっとりとした巨乳の美少女、親が破産して莫大な借金を背負っている

名前:伊神 奈津(いがみ なつ)
職業:小学校教師
外見:黒髪セミロング。身長160cm、可愛らしくも凜とした雰囲気の女性
年齢:24
趣味:合気道、料理、ピアノ


「めぼしい……ってのはさすがに失礼か。
んんっ、何とは無しに仲がよくてなんとかなりそうな人、これでいこう」



Lineの履歴で比較的上の方、つまり新しいトークを眺めてみると、一人目

伊神 奈津

確か今は小学校の教師をしているはずの二十四歳
同じ大学を出て方やニート、方や聖職とは天と地にも程がある
ただ彼女の方も時々連絡してきていたくらいだし印象は悪くないはずだし、
あの可愛いらしいながらも凛とした雰囲気を考えればお嫁さん候補としては悪くない
時に尻を叩いて、時に健気に存分に働かされる気がする
寧ろこちらからお願いする立場な気もするがそこは考えない
自信の無い人間に付き合ってくれる程優しいとは限らないのだから


「いいぞ、いいぞその調子だ俺」



それからあの可愛らしさを思い出していると連想が

如月 結

彼女が小さい頃はよく遊んだ近所に住む女の子だ
俺の年齢から逆算すれば丁度高校一年生だろうか
多少犯罪的なことを除けば彼女もまた素晴らしい
おっとりとして多少危なっかしいもののそれもまた彼女の美点ですらある
年齢と性格に不釣り合いな巨乳もまぁ、うん。頑張ってあげたくなるところ。色々と。
噂によると最近親が破産した所為で莫大な借金を背負っているとかいないとか
真の愛が駄目でも打算と契約で何とかなりそうな状況は非常にありがたい


「あれ、これ上手くいけば爺様の遺言様々な状況なんじゃ……」



更にそこから連想してもう一人。連想した種が魅力的なおっぱいなのは許してほしい

影山 雫

二十歳を過ぎたばかりの大学生
彼女なら犯罪的な年齢差でも無いし
学生との結婚はあまり好意的には見られないだろうがまだなんとかなる
読書好きが高じて小説の執筆が趣味な辺りはすっかりインドアな俺ともいい相性だろう
ニートとはいっても並の人間よりは読書もしていたわけで
小柄で華奢な体躯にあのおっぱい、更にオドオドと引っ込み思案気味
これまたお嫁さん像としては素晴らしいものがある


「まぁ……これくらいかな、取り敢えず」



影山 雫
如月 結
伊神 奈津



一通り考えてみてアプローチを掛けてみようと思えたのはこの三人
他に候補がいないわけでもないが、今はいい

さすがに何人も、何十人もの女性から選ぶ程傲慢ではない
そもそも結婚相手を選ぶ、という気持ちの時点で傲慢な気もするが、忘れることにする



「まぁ、これから努力すればいいだろ。金なら暫くは遊んで暮らせる程渡せるし」



取らぬ狸のなんとやら、に陥らないことが条件ではあるが、それも良し


「さて……そうと決まれば」



連絡、してみようか
三人とも一応連絡先は分かるしやろうと思えば実際に会いに行くこともできる

理想であれば何も悟られずに再会するのが望ましい
まさか開口一番金とニート生活の為に結婚してくれ、
なんて頼むわけにもいかない

平静を装いデートを重ね簡単な職を見つけつつ、
できれば一年くらいで結婚ないし婚約したいものだが……



↓ 2

Lineにしろ電話にしろ誰にどんな連絡をしてみる?
複数人にでもだいじょーぶ

踏み台

ライン 3人に


「まぁ……適当に送ってみるかな」



雫や結なら働いているわけでもないし会うこと自体は簡単そうに思える
だがそう易々と女の子が釣れると思うのも不味い気がする

まずはそう、遊びや飲みの誘いなんかではなくて、探りを入れてみよう



『久し振りー! 最近どう? 』

『俺はちょっと悲しいことあってさ……』



急にごめん、誰かと話したくなって^ ^

などと繋げるのは自重した
勝手な意見だが人間誰しも他人の話より自分の話である
だからどんな間柄でも何かを話の接ぎ穂として、
相手の言葉から会話を展開していくものだ
それが上手くいく関係を気が合う、仲が良いと言う、はず、たぶん



「だからまぁつまり、相手次第だなこれ」



ヘタレと罵られるのはちょっと仕方無い
けれどこの瞬間までニートを、いや厳密に言えば今もニートな俺にはこれで限界である



『どうしたの? 』とか『何々? 』とか『久し振りだねー(笑)』などと返してほしい
というか俺が何か話したいと思ってLINEをしたと純粋に思ってほしい
がっついている、なんてこの段階で相手には分からないはずではあるが……

片瀬雛 18歳
13歳の時に自動車事故で両親が死亡し
遠縁である主人公の祖父が後見人となっていた
現在はリオデジャネイロ郊外の修道院に身を預けている


ピロリン! ピロリン! ピロリン!



「はっや! はっや何これ! 送ったばっかだよ俺! 」



これが現代人か、などと黄昏れ風に気取ることさえできない即行である
もしかして彼女たちは暇なのか、などと年中暇な俺さえ思う



「とはいえちゃんと返信来る辺りブロックはされてなかったか。よかったよかった」



これで既読無視ならまだしも未読無視などされた日には心が折れる
その辺の高級風俗嬢に仔細話して結婚してしまいそうな程落ちる
雑魚メンタルから更に弱くなった俺には分かる

レスの前にはリロード
これ絶対


「えーっと……」



とはいえアホ面でスマホを握り締めているわけにもいかない
折角の素早い返信なのだからこちらもそれなりに早く返信せねば



雫『お久し振りです! 私は最近もいつも通り本読んで時々書いて……』

雫『何かあったんですか? 』




結『お久し振りです。最近はあまり会っていませんでしたね』

結『知ってるかもしれませんけどわたしもちょっと色々……』



奈津『久し振りー! あたしはちっちゃい子の行動から目が離せなくて大変!
仕方無いことだしそれはそれで楽しいんだけどちょーっと疲れてるかなー?
合気も最近はまともにできてないし料理も時短とか……
ピアノは子供たちと弾いたりしてるんだけどね! 』

奈津『で、何かあったの? 』

>>23
外見的特徴が全く無かった

身長は160cm程度
ブロンドの長髪、色白
体型は華奢
多分に日本人受けする西洋ハーフ的な外見
父親:ドイツ系ブラジル人、母親:日本人

遺産は5000億円くらいからスタートでも良いような気がする

後出しジャンケン


三者三様、実に返信に困る内容ばかりである

俺と年齢が近いからか伊神の返信は少々長いもの
訊かれたことに対して全て答えようというか、
メール感覚や会話感覚が抜けていない気がする

結は結で寧ろ自分の話を聞いてほしい感がある
短い返答も現代っ子故なのか自身を取り巻く状況故の暗さなのかが分かりにくい
あまり酷い状況だとは思いたくないが

そしてこの時点では雫の返信が一番返信しやすい
軽く近況を返しつつすぐにこちらのことを考えている
読書で培われた察し力の賜物だろうか



「……うーん、と」


「……時間ならあるし。話聞いて聞かれて繰り返してればなんとかなるだろ」



もう既に億劫になっているとかそういうのは全然無い、これっぽっちも
三人同時はさすがにやめておくべきだったかなんてことも無い、絶対

だが多少返信が遅れてしまうのは許してもらわなければ
なんてったってこちらはニート、無職である
ちょっと動いただけで疲れる、そういうものなのだ



「まぁ、相手はそれ知らないんだけどな、そもそも」



とはいえ上手くやり切らなければならない
このLINEには俺の人生が、なんなら相手の人生が掛かっているのだ
生半可な気持ちではやり切れないだろう

飲み物と菓子を用意して、ベッドに横になって
臨戦態勢で事に臨まなければ、勝ち抜けない



そうして俺の婚活(?)は幕を開けたのだった




……

………



「…………眠い」



あの怒涛のLINEトークから一夜明け
一夜というかもう既に明けてからも続いていたあれから数時間

無職の特権に胡座をかいて昼まで寝てしまったが問題無い
久々の労働、という様な達成感と充足感が実に心地良い
睡眠を犠牲にし、久方振りに脳と精神を酷使した甲斐は、あったのだ

三人ともの事情はあれどうやら俺に対して悪い印象は無いらしい
来週はそれぞれ別の日に二人で出掛けることがあっさり決まってしまった

三者三様場所も時間も何もかも違うがそこは気合でなんとかしよう
これで相手の話を聞くのが辛くなかったのは不幸中の幸いだろうか



「でも色々考えて疲れたし……もうちょっと寝よ」



来週のことは来週考える、それでいいのだ


↓2

来週の初デート(?)はまず誰が先でどこに?


それからすみません、寝ます
よければまたお付き合いお願いします
ありがとうございました

雫 映画館

伊神 オーケストラのコンサート

>>34かな?これは

来ない

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