西城樹里「温もり」 (7)

アイドルマスターシャイニーカラーズ 西城樹里のSSです

見覚えのある体育館。そしてアタシが持っているのはバスケットボール。

……あぁ、またあの夢だ。

あまり思い出したくないのに、無意識に引き出された記憶が容赦なく襲い掛かる。

夢の中のアタシはバカ正直に、ゴールとなるリングを見つめていた。

……まだ右足の怪我も完治していないのに、レギュラーの座が欲しいからって無理しやがって。

……やめろ。ボールを投げるな。

この後どうなったかはよく覚えている。

もう何度夢で見たことか。

……。

…………?

なんだろう、いつもと違うような……。

……何かすごく、温かくて……安心する。

……。

「…………っ……」


すっかり見慣れた天井。ここは事務所の休憩室だ。

意識が徐々にハッキリしてくる。


「あー……また寝ちまったのか」


いつのまにかソファで眠ってしまっていた。

今日のダンスレッスンはキツかったからなぁ……、想像以上に疲れていたのかもしれねーな。

それにしてもあんな夢を見ちまうなんて。

ま、最後まで見せられなかったから良かったけどさ。


「……ん?」


とにかく起きよう、と体を動かしたらすぐ横にプロデューサーの顔が。

ソファに突っ伏して寝てる……。

しかもアタシの手を握りながら……。

…………は?

……手?

はぁぁぁぁぁっ!?

「な、ななななな!?!?」


頭の整理がつかない。ついでに体も動かない。

どうしてプロデューサーがこんな近くにいるんだ!?

そしてなんで寝てるんだよ!!……あ、アタシの手を……握って……!


「なに……やってんだよプロデューサー……」


自分の顔が真っ赤になっているのは見なくてもわかる。

こんなに……男に手を強く握られたのは初めてだ。

ちょっと痛いけど、すごく温かい。


「温かいって…………あぁ、そっか」


さっき見てた夢の途中、温かさを感じたのはプロデューサーに手を握られたからか。


「またアンタに心配かけて……助けてもらっちまったんだな」

数週間前、アタシはプロデューサーに自分の過去を打ち明けた。

バスケをやってた頃に怪我をしたこと。それが原因で荒んでしまったこと。

するとプロデューサーは今まで以上に過保護になりやがった。

今のこの状況だって、寝ているアタシを心配して寄り添っていたら自分まで寝てしまったって流れだろう。


「プロデューサー、もう心配はいらねーよ。アタシは大丈夫だからさ」


あの頃の記憶は今になっても消えることはない。

でも、段々と嫌なものではなくなってきている。

あの苦い経験があったからこそ、今のアイドルのアタシがいるんだって……少しずつ思えてきてるんだ。


「これからもっと頑張って立派なアイドルを目指すよ。だからアンタも、この手をずっと離さないでくれよな! 絶対だぜ!」


応えるように、寝ているプロデューサーが笑顔を見せてくれた気がした。


…………この後、部屋に入ってきたユニットの仲間たちに散々冷やかされたのは別の話

終わりです。

樹里True達成できて嬉しかったので書かせてもらいました。

依頼だしてきます。

とても素晴らしい

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