魔王「見事であったぞ勇者。女神の加護を受けているとはいえ、人間ごときが我を打ち倒すとはな」
魔王「だが、我は破壊神の使徒『魔王』。何百年、何千年かかろうが必ずや復活を果たし」
魔王「今度こそ、人類を滅ぼしてくれる」
魔王「人間どもよ、束の間の平和を楽しむがいい」
魔王「ふはははははははは」
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~~~
魔王「ふあぁ~よく寝た」
側近「復活おめでとうございます」
魔王「おう、留守中何事もなかったか」
側近「ええ、虫唾が走るほどの平和っぷりです」
魔王「うむ。―――で、我の復活にはどれぐらい時間がかかった? 体感的には1000年ぐらいかな?」
側近「僅か100年でございます」
魔王「100年!? うわぁ~もう少し眠れたなあ。でももう目が覚めちゃったし仕方ないか」
側近(復活って、そんな俗的な感じなのか)
魔王「よっしゃ気分一新、今度こそ勇者を倒して世界征服やりとげるぞ」
魔王「それで、側近よ。我の復活にあわせて、今代の勇者が生まれたはずだ」
魔王「さっそく、調べ上げてこい」
側近「いえ、魔王様」
魔王「どうした?」
側近「前回、魔王様を倒した勇者がまだ存命です」
魔王「はあ? 人間の寿命なんて50年かそこらだろ、勇者何歳だよ」
側近「117歳になります」
魔王「つまり、我は当時17のガキに負けたのか……いや、それはよい」
魔王「生きているなら倒すまで。勇者さえ倒してしまえば、何の憂いもなく仕事がすすむぞ」
~~~
勇者(117歳)「……ふがふが」
魔王「久しいな勇者よ。まさか老人ホームにいようとは思いもしなかったぞ」
勇者「おや、どなた様かの?」
魔王「人類の敵の顔を見忘れたか?」
勇者「おお! 魔王か……」ゲホッゲッホ
魔王「これ、慌てるな。背中をさすってやる」サスサス
勇者「敵なのにすまんの」
魔王「しかし、お前は長生きだな。どういう理屈だ?」
勇者「ワシにもわからん」
魔王「女神の加護によるものだろうか?」
勇者「……やはりそうかな」
魔王「どうした、元気がないな」
勇者「いや、女神さまには感謝して居るが長生きは辛い」
魔王「なんだと? 何故だ、長生きは普通喜ばれるものではないのか」
勇者「そうでもないさ。妻も、愛人も、親友も、共に旅した連中はみんな先に逝ってしまった」
魔王「……それは、魔法使いと僧侶と戦士のことか? なかなかハッスルしたもんだな」
勇者「ひょっひょっひょ、長い人生そういうこともあろう」
勇者「我が子も、孫も既に死んでしまった。まあ曾孫と玄孫達、新たに一族が増えていくのは嬉しいが」
勇者「今のワシは、時代に老いて行かれた出涸らしでしかない。それがどうしようもなく寂しいのじゃ」
魔王「……ならば、我が殺してやろう」
勇者「それは……嬉しいのう。そうか、ワシもようやく[ピーーー]るのか」
魔王「望むのならば、苦しみなく一瞬で逝かせてやるが」
勇者「それには及ばぬさ。ワシは仮にも勇者、破壊神の使途に立ち向かわずして何が勇者か」
魔王「そうか、ならば前回の戦いの続きと行こうではないか! いくぞ勇者!」
勇者「応っ!」
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魔王「くそじじいが!!! 前より強くなってるじゃねえか!!!」
勇者「―――ほっほっほ。肉体は衰えど、精神は年月を経ることで豊かに強くなっていく」
勇者「すなわち、精神力に依存する魔翌力は衰えるどころが増しているということじゃ」
魔王「うそつけ! 魔法だけじゃなく体さばきも異常だったぞ!」
勇者「魔法で肉体を強化したまでよ……」
魔王「畜生……身体が崩れ始めた」
魔王「同じ相手に二度も破れるとは、こんな屈辱はないぞ……」
勇者「ふふふ、そう嘆くな。しかし楽しかった。実に楽しかった」
勇者「今夜はぐっすり眠れそうじゃ―――」スウッ
魔王「……ああそうか、いや勇者。我が敗北した理由がわかったぞ」
魔王「そういえば我、100年しか眠ってなかったんだ。思い返せば体が、すごい重かった」
魔王「それどころか頭も重くてな、目もしょぼしょぼでよく見えてなかった」
魔王「あ~、しっかり睡眠とれてればなぁ~我の圧勝だったのになぁ~」
魔王「ん……勇者?」
魔王「眠っているのか?」
魔王「―――そうか、ようやく逝ったのか」
魔王「ならば、此度は引き分けだ……決して我の敗北ではない」
魔王「世界征服は成しえなかったが、何百年、何千年かかろうが我は必ずや復活を果たし」
魔王「今度こそ、人類を滅ぼしてくれる」
魔王「人間どもよ、束の間の平和を楽しむがいい」
魔王「ふはははははははは……」
魔王「―――おやすみ、勇者」
―――
おわり
―――
おやすみ
おやすみ
幸せな老後
乙
まさか寝てないアピールとはなw
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