【モバマス】時子様の休日 (17)
時子(肉を串刺しに出来そうなヒールって中々無いものね…)
時子(靴屋を巡り続けて半日が潰れたわ)
時子(このままヒールが見つからなければせっかくの休日が台無しね…)
時子(…この豚の罪をどうやって裁いてやろうかしら…)
時子(…………)
時子(フフ…、お仕置きを考えてたら少し楽しくなってきたわね)
ガヤガヤ
ブサイークー! ブサイクー!
アハハー
時子(…?なにやら騒がしいわね)
時子(商店街の広場に人が集まってるわね)
時子(……)
時子(ステージの上でぴにゃ何とか云う着ぐるみの緑のブサイクが芸人もどきの司会者に弄られているようね)
時子(下らない…)
時子(それなりに盛り上がっているように見えるけど沸いてるのは前の方だけ)
時子(それ以外は、バカにした様な弄り方に白けた顔してるじゃない)
時子(白けるどころか泣きそうな顔をしてる子まで……!?)
穂乃香「……グスッ……グスッ……」
時子(あれは、綾瀬穂乃香……?)
時子(…確か、緑のブサイクが大好きらしいわね、あの子)
穂乃香「……ヒック……ヒック……」
時子(まったく何て顔してるのよ、アイドルがしていい顔じゃないわ)
穂乃香「……ぴにゃこら太ぁ……がんばって……」グスッ
時子(…………)
時子「…………チッ」
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ツカツカツカツカ
警備員「あの、ここから先は関係者いg…」
時子「アァン?」ギロッ
警備員「ど、どうぞ!」
時子「フン」
ツカツカツカツカ
司会者(…ハァ、売れてないとはいえ、お笑い畑の俺に司会なんてやらせんなよなぁ)
司会者(まぁいいや、テキトーにこいつイジッてればそれなりに受けるし、時間になるまでこのままいくか)
ツカツカツカツカ
時子「借りるわよ」ガシッ
司会者「え、アンタ何!?っていうか俺のマイク返s」
時子「アァン?」ギロッ
司会者「」
ザワザワ
エ、ナニ? ランニュウ?
穂乃香「と、時子さん!?」
トキコ?
トキコッテ、アイドルノトキコサマ?
ガヤガヤ
時子「ちょっと、それよこしなさい」
ぴにゃ「!?」
時子「さっさとよこしなさいって私が命令してるのよ!グズグズするなノロマ!」
ホ、ホンモノダー!
トキコサマー! トキコサマー!
ぴにゃの中の人(もう勘弁してくれよ、あのクソ司会者に縦笛を吹けとか無茶振りされて、)
ぴにゃ(この着ぐるみ、口のところ開いてねえんだぞ?)
ぴにゃ(その上時子様が乱入してくるなんて聞いてねえっての!)
ぴにゃ(俺はただのアルバイトだぞ?リアクション芸とか求めんなよ…!)
時子「…………チッ」
時子「よっぽど踏まれたいのかしら…?」
ぴにゃ「」ゾクッ
ぴにゃ「」ササッ
アハハー
ピニャコラタビビッテルー!
ピニャー、ソコカワレー!
時子「縦笛…ね」
時子「特別に私が吹いてみせるわ」
時子「アナタはマイクを持ってなさい」
ぴにゃ(ええっと、マイクを持つって普通に受け取るだけでいいのか?それとも何かリアクションした方がいいのか?)オロオロ
時子「…………チッ」
時子「私に縦笛を吹きながら自分で音を拾うとか大道芸人の真似事でもさせる気?」ギロッ
ぴにゃ「!」ササッ
時子「フン」
♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~
オオー
トキコサマカワイイー!
ワーワー!
時子「さあ、吹いてみなさい」ヒョイ
ぴにゃ「!?」
時子「アァン?この私が手本を見せたのよ?まさか吹かないつもり?」ギロッ
ぴにゃ(いやいや勘弁して下さいよぉ)
ぴにゃ(時子様が助けてくれたと思ったらクソ司会者以上の無茶振りだったよ…)オロオロ
ピニャー!チャントフケヨー!
ピニャー!ピニャー!
ぴにゃ(この状況で「吹けません」なんて出来ねえだろ…)オロオロ
時子「…………チッ」
ツカツカ
ぴにゃ(うわっ、時子様が迫って来た…!?)
時子「…私との間接キス、したくないのかしら?」ボソッ
ぴにゃ「!?」
ツカツカ
ぴにゃ(…そうだよ、さっきまで時子様はこの縦笛を吹いていた)
ぴにゃ(この縦笛には、時子様の、付きたてほやほやの…!)
ぴにゃ(着ぐるみなんて所詮は布!)グリグリグリグリ
ぴにゃ(やってやる!)グリグリグリグリ
ぴにゃ(ぶち破って!)グリグリグリグリ
ぴにゃ(時子様と!)グリグリグリグリ
ぴにゃ(間接キ、キスを!)グリグリグリグリ
アハハー!
ドウセフケナイダロー!
ヒッシスギー!
アハハー!
時子(司会者が作ったブサイクをバカにする空気)
時子(私としたことがまだ一掃できていなかったようね)チラッ
穂乃香「……ぴにゃこら太……」グスッ
時子「…………チッ」
ダンッ!!!!!!!!!!!!!!
時子「おだまりなさい!」ビキィ
シーン
穂乃香(す、すごい…)
穂乃香(時子さんが足を踏み鳴らして一睨みしただけで)
穂乃香(会場が静まり返った!)
時子「たしかに、縦笛の一本すら吹けないこのブサイクは無様よ」
穂乃香(ブサイクじゃないです!かわいいです!)
時子「けど、ブサイクはブサイクなりに頑張っている…」
時子「目標に向かってね」
時子「そういう時にかけるべきは、侮蔑の言葉なのかしら?」チラッ
穂乃香(時子さんがこっちを見た!?)
穂乃香(…うん、私がやるべき事は、泣きべそをかくことなんかじゃない…!)
穂乃香(私がやるべき事は…!)
穂乃香「ぴにゃこら太ー!がんばれー!」
穂乃香「がんばれー!!がんばれー!!!」
時子「アァン?声が小さいわね」
時子「もっと声を出しなさい!もっと、もっと、もっとよ!!」
ガンバレー! ガンバレー!!
ワーワー!!!
司会者(会場の盛り上がりが、俺が司会してた時と比べ物にならない…!)
司会者(盛り上がってるだけじゃない)
ガンバレー!! ガンバレー!!!
司会者(会場の一体感がハンパない!)
司会者(これが、アイドルの、時子様のステージ……!)
ワーワー!
ぴにゃ(会場の雰囲気が変わった!)グリグリグリグリ
ぴにゃ(これなら着ぐるみを少しばかり破いたって怒られねえだろ!)グリグリグリグリ
ぴにゃ(怒られてもやるけどな!)グリグリグリグリ
ブチブチッ!
ぴにゃ(よっしゃ!破けた!)
ぴにゃ(…落ち着け俺、目の前で時子様がお見本をお見せあそばされた以上、)スーハー
ぴにゃ(無様に吹くことは許されない)スーハー
ぴにゃ(幸い物がつかめるよう手の部分は薄くなってる)スーハー
ぴにゃ(きっちり吹いてみせるぜ!)キリッ
ぴにゃ(そしてなにより、時子様との、間接キス!)
♪~
オオー?
♪~♪~
オオー!
♪~♪~♪~♪~♪~♪~
ピニャー! ヨクガンバッター!
ピニャコラタ! カワイイヨ!
ワーワー!
時子「フン、まあまあね…」
ツカツカ
時子「残念だったわね、間接キスできなくて」ボソッ
ぴにゃ「?!」
時子「あれだけ熱心に布に擦り付ければ唾液なんて綺麗に拭き取られてるわよ?」ボソボソッ
ぴにゃ「」
時子「ククッ、まあ、豚としての素質はあるようね」ボソッ
ぴにゃ「」ゾクッ
時子「私のステージを見に来なさい」ボソッ
時子「今日以上の愉悦を」ボソッ
時子「与えてあげるわ」ボソッ
ぴにゃ「」ゾクゾクッ
時子「……縦笛をよこしなさい」
ぴにゃ「!」ササッ
ピニャコラタ、ヒザマズイタ!?
マジデソコカワレー!
時子「フン」
ツカツカツカツカ
時子「…返すわ」ヒョイ
司会者「え」
時子「そろそろ時間のハズよ」ボソッ
司会者「!」
時子「チッ、時間ぐらい把握しておきなさい」ボソッ
司会者「ハ、ハイッ」
司会者「えー、ちょうどお時間となりました!」
司会者「本日のゲストは、ぴにゃこら太と!」
司会者「アイドルの財前時子様でした!」
司会者「お二人?に大きな拍手を!」
時子「アァン?お二人ィ?」
司会者「え?」オロオロ
時子「あのブサイクとこの私が同列だとでも?」ビキィ
司会者「も、申し訳ございません!」
アハハハ!
シカイシャオコラレテルー!
シカイシャガンバレー!
司会者「えー、ぴにゃこら太に大きな拍手を!」
パチパチパチパチ!
カワイイヨー!!
司会者「時子様に!盛大な拍手を!」
パチパチパチパチ!!!
トキコサマー!
ボクモノノシッテクダサイ!!
ワーワー!!
司会者「えー、この後は、ぴにゃこら太とのツーショット会がございます!」
司会者「お並び頂いている間にお手持ちのスマホやカメラをご用意頂いて、順番にツーショットをお楽しみ下さい!」
司会者「本日は○○商店街にお越し頂き、誠にありがとうございました!」
………
……
…
時子「……」ジー
穂乃香&ぴにゃ キャッキャウフフッ
時子「……」ジー
司会者「あ、あの、時子様…」
時子「……」
司会者「……」
時子「チッ、発言を許可するわ」
司会者「あ、ありがとうございます!」
司会者「えー、このイベントの主催者からの伝言なのですが、」
司会者「ええと、時子様のご出演は、予定になかった事なので、」
司会者「その、誠に申し上げにくいのですが、」
司会者「ええと、その、ギャラは出せn」
時子「フン、この私がギャラ欲しさにここに来たとでも思っていて?」
司会者「めめめめ滅相もございません!」
時子「フン、ならこれ以上下らない言葉は吐かないで頂戴」
司会者「ハイッ」
時子(ギャラなら、もうもらってるわよ)ジー
穂乃香 ニコニコ
時子「……司会豚はお笑い芸人よね?」
司会者「は、はい!」
司会者「いやぁ、時子様がまさか僕のことをご存じだったとは!」
司会者「身に余る光栄d」
時子「知らないわよ」
司会者「」
時子「ブサイクの弄り方からそうだろうと判断しただけよ」
司会者「そう、ですか…まぁ、そうですよね…」
時子「司会豚、自分が司会をしている時の観客の反応、どう思って?」
司会者「ええと、それなりに受けてたと思いますが…」
時子「……」
司会者「ま、まぁ、会場全部を笑わせるってとこまではいきませんでしたけど、それなりには…」
時子「……」
司会者「ええと、時子様……?」
時子「フン、やはり気付いていなかったのね」ハァ
時子「泣いてる子がいたのよ」
司会者「え」
時子「笑いのツボなんて人それぞれ」
時子「笑わそうとして白けたり引かれたりしてもそれは罪じゃないわ」
時子「けど、お笑い芸人が観客を悲しませたら」
時子「それは罪なんじゃないかしらね」
司会者「……」
時子「何かを馬鹿にする事で笑いはとれるでしょうよ」
時子「馬鹿にして、見下して笑いたい欲求が人間にはあるから」
時子「…その馬鹿にされたものを愛している者を泣かしてまで、罪を背負ってまでして、」
時子「笑いをとる覚悟はあったのかしら?」
司会者「……いえ、ありません、でした」
時子「フン、そうでしょうとも。手を抜いてるのが丸分かりのステージだったわよ?」
司会者「」
時子「……そうね、私のステージを見に来ることを許可してあげるわ、司会豚」
司会者「!」
時子「この私のエクセレントなステージを見れば足りない頭でも少しは得るものがあるでしょうよ」
司会者「あ、ありがとうございます!」
時子「ククッ、私の機嫌が良くてよかったわね」
時子「本来なら私が直々に躾ける価値もないミジンコ以下の存在なのを、」
時子「この気分に免じて豚として扱ってやったのだからね」
司会者「アリガトウゴザイマス!アリガトウゴザイマス!」
………
……
…
時子(とんだところで時間を使ってしまったわね)
時子(気分は悪くないけど、ヒールが見つからないままなのは癪に障るわね)
時子(…事務所に寄って豚を鞭打ってから帰ろうかしら)
穂乃香「時子さーん!」タッタッタッタッ
時子「…」
穂乃香「良かった、追いつけた」ハァハァ
時子「…それで、何の用かしら?」
穂乃香「あ、はい!私、さっきのステージ見てました!」
時子「…ああ、そうなの」
穂乃香(あれ?目が合ったような気がしたんだけど…)
穂乃香「時子さん、素敵で、カッコよくて!」
穂乃香「それにステージの作り方も勉強になりました!」ニコニコ
時子「へぇ……?」
時子「穂乃香が豚の躾に興味を持つとは意外ね」
穂乃香「え?あ、いえ、そういう意味ではなくてですね」アセアセ
時子「ククッ、冗談よ、分かってるわ」
穂乃香「あはは……」
穂乃香「えっと、それに私、とっても嬉しかったんです!」
時子「嬉しいって、何がよ」
穂乃香「時子さんもぴにゃこら太が好きだったんですね!」
時子「」
時子「ちょっと待って頂戴。なんでそう思ったか聞かせて貰えるかしら」
穂乃香「だって時子さん、ステージでぴにゃこら太に抱き着きたそうにしてましたよね」
時子「」
時子(恐らくマイクに声が拾われないようにブサイクの耳元で囁いた時の事を言ってるのね)
時子「穂乃香、それはアナタの勘違いよ」
穂乃香「でも、2回も抱き着きたそうに…」
時子「勘違いだと言っているでしょう」
穂乃香「あ!」
時子「分かってくれたようね」
穂乃香「分かりました時子さん」
時子「良かったわ。素直な子は好きよ」
穂乃香「時子さんが実はぴにゃこら太が好きってバレたらイメージ崩れちゃいますよね」
時子「分かってないじゃない!」
穂乃香「分かりました。大丈夫です。絶対秘密にします」
時子「……好きになさい」
穂乃香「あ、御免なさい、長々と引き留めてしまって」
時子「フン、気にしてないわ」
穂乃香「では時子さん、またぴにゃこら太談義しましょうね」
時子「しないわよ!」
おしまい。
※)木場さんと法子と間中さんが見てます
好き
良き
すごく魅力的な時子様
よかった
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