【デレマス】ライラ「憧れの隣に」 (20)

アイドルマスターシンデレラガールズの二次創作です。


【デレステ】楓「ライラちゃんとお友達になりました」
【デレステ】楓「ライラちゃんとお友達になりました」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1531499549/)
この作品の続きとなっていますが、ライラさんと楓さんが仲良しとだけ把握していただければ大丈夫です。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1534516051

 今度のニュージェネレーションズのライブにライラさんとアキハさんがバックダンサーとして抜擢されました。

 出演できるのは数曲だけでございますが、なんどもアキハさんとレッスンを重ねていましたです。

 今はその最終調整としての合同レッスンが終わったところでございます。

 二時間近くダンスを続けて、ライラさんもうヘトヘトですね……トレーナーさんの終了の合図とともにへたり込んでしまいました。

 ウヅキさん達のパフォーマンスはすごいですね…… ライラさん、なんとかついていけましたけど、もう足に力が入らないです。

「大丈夫? ライラっち」

 ミオさんがそう言いながらタオルとスポーツドリンクを手渡してくださいました。

「ありがとうございますです」

 遠慮をする元気もありませんです。ミオさんの親切、ありがたく受け取ります。

 それから元気になるまでしばらく座り込んでいました。

「それじゃあライラ、晶葉、お疲れ様」

「ちゃんとストレッチしとかないと怪我しちゃいますからね」

 ニュージェネレーションズの三人は手早くストレッチを済ませてレッスンルームから出て行かれました。

「……やっぱり売れっ子のアイドルたちはすごいな」

 ライラさんと同じように肩で息をしていたアキハさんがいつの間にか隣にいらっしゃいました。

「私たちの何倍も動いて、その上で歌っているのにもう次の仕事先に移動だそうだ」

「……すごいですねー」

 あの人たちにはかなわない。そんな気持ちが素直に言葉に出ましたです。

「私たちもストレッチをして出ようか、次の利用者もいるだろうし」

 二人で重たい体を動かしながら体をほぐしました。それでもハアハアと荒い息が止まりませんねー。

 それからなんとか動けるまで回復して、シャワーを浴びましたです。

「ライラ、この後どうする? 私はラボに行くが……」

「ライラさんはもう少しだけ休憩しますですよ……」

 シャワールームの前でアキハさんと別れました。それから休憩所のソファーで冷たい麦茶を飲むことにしました。

 重たい体をふかふかのソファーに預けていると、ついウトウトしていますね……


 ライラさん眠気覚ましに、先ほどのレッスンを思い返してイメージトレーニングをしていましたです。

 ……かなり集中していたみたいです、気づいたら休憩所が少し賑やかになっていましたですよ。

 瞑っていた目を開けると、向かいのソファーにカエデさんが座っていましたです

 カエデさんは最近仲良くして頂いてるお方です。

 トップアイドルなのに物腰が柔らかで、話をニコニコしながら聞いてくれる優しい人でございますね。

 ライラさん、カエデさんのことを優しいお姉さんと慕っていますです。

 ハードなレッスンでこわばっていたお顔も、カエデさんを見ると緩んでしまいますねー

 カエデさんに先ほどのウヅキさんたちのことをお話したいです。

 ……でもカエデさん、ただいまはお隣におられるミズキさんとお話し中でございますねー。

お二人は真剣な眼差しでお話をしています。

いつもの優しいカエデさんの目が、今日は少し怖いです……


あまり強く感情を表に出さないカエデさんが、ときに身振りをしながら話し込んでいます。

今度のお二人でのライブについてお話しているみたいです。

いつもでしたら、遠くにカエデさんを見つけただけで駆け寄って行きますです。でも今は話しかけることもできませんでした。

それからしばらくしてお話に一段落がついたみたいです。

カエデさんがググッと伸びをして、首を回すとライラさんと目が合いましたです。

「あら、ライラちゃんこんにちは。 ライラちゃんもレッスンですか?」

カエデさんはいつもの優しい目にもどっていましたです。

「そうでございますねー」

お話したいことはたくさんあったのですが、なぜか言葉が喉に詰まって出てきませんでした。

「それでは、私たちはまだレッスンの続きがありますので。また今度おしゃべりましょうね」

そう言って、カエデさんたちはレッスン室へと行ってしまいましたです。

それからしばらく休憩してから、家に帰りましたです。

いつもならアキハさんのところにお手伝いにいったり、公園でおしゃべりして寄り道をしてから帰るのでございますが、今日はそのような気分ではございませんでした。


「ライラ、どうしましたか?」

メイドさんの声にハッとしました。夕ご飯のデザートにアイスを食べているときのことでございます。

食べかけのバニラアイスはいつの間にかほとんど溶けていましたです。

「アイス、溶けていますよ? 晩御飯のときも口数が少なかったですし、何かありましたか?」

メイドさんがライラさんの顔を覗き込んでいました。

その優しい瞳がまっすぐに見られなくて、メイドさんのお腹に顔を埋めて抱きつきましたです。

メイドさんは何も言わずに優しく頭を撫でてくれました。

それからゆっくり、ゆっくりと今日のことをお話しました。

ライラさんが見たことのないような表情をしていたカエデさんのことでございます。

たどたどしくて、まとまりの無いお話でございました。

それでもメイドさんは急かすこともなく、ライラさんが話し終えるまで抱きしめてくれました。

それからメイドさんがゆっくりと口を開きましたです。

「それは、嫉妬ですね。ジェラシーです」


「自分には向けてくれない感情を受け取っている瑞樹さんが羨ましい、楓さんに見てもらえない自分が悔しい」

「人間誰しもが思うことです」

「……こんな気持ちを持っているライラさんは悪い子ではございませんか……?」

「大丈夫。ライラはいい子です」

「もし、嫉妬が悪いことなら私も悪い子になってしまいます。ライラにそんなに思われている楓さんが私には羨ましいですから」

「ふふ、ライラさんメイドさんのことも大好きでございますよ」

「はい、私もライラのことが大好きです。両思いですね」

それから久しぶりにメイドさんと一緒にお風呂に入って、一緒のお布団でお休みしました。

次の朝起きたとき、ライラさんの心の中には一つの決心がありました。


今日はお仕事もレッスンも無いので、朝から学校に行く日でございます。

でもいつもよりも早く目が覚めました。

「おはようございますです」

「おはようございます、よく眠れましたか?」

メイドさんはお台所で朝ごはんとお弁当の準備をしていました。

ライラさんにはメイドさんに言わなければならないことがありました。

朝ごはんを食べながら、メイドさんに尋ねますです。

「もし、もしでございますが、ライラさん達がここにいることがパパにばれてしまったらどういたしますか?」

「そうですね…… そのときはライラに任せます」

「ライラが親方様のところに帰りたいのなら一緒に帰って一緒に叱られます。ライラが逃げたいのならどこにでもついて行きます」

「……ありがとうございますです」

「メイドとして当然の務めですから」


温かい朝ごはんを食べ終えて、少し早いですが家を出る準備をしました。

「今朝はお早いですね?」

「学校に行く前に事務所に寄るつもりでございますよー」

「そうですか。ではお気をつけて行ってらっしゃいませ」

ライラさんにはプロデューサー殿にも言わなければならないことがありました。

事務所に着くと、プロデューサー殿はもう机で仕事をしていましたです。

「おはようございますですよ」

「おはよう、ライラさん。……今日は学校じゃなかったのか?」

「そうでございますが、少しプロデューサー殿に相談したことがございましたので」

「今日の夕方お時間ございますか?」

「……少し待ってもらうことになるけどいいか?」

「はい、急なお話でございますのでライラさんは構いませんです」

「なら学校が終わったらここで待っていてくれ、用事が終わり次第行くから」

「……わざわざこんなことを言いに来るってことは大事な話なんだよな」

「はい、ライラさんにやりたいことができましたです」


 学校が終わって、事務所にまた戻ってきました。

 事務所にはナターリアさんがいましたです。レッスンまで事務所で時間を潰しているそうですので、一緒におしゃべりをしていました。

 しばらくすると、プロデューサー殿が帰ってきましたです。

 「ライラさんお待たせ、じゃあ面接室に行こうか」

 面接室。アイドルとプロデューサー殿が大切なお話をするところです。いつも賑やかな事務所とは違って静かな部屋でございます。

 事務所から面接室までは二人とも無言でした。ライラさんも少しだけ緊張していましたです。

 面接室に入って、黒い立派なソファーに座りますです。

 プロデューサー殿も二人分のコーヒーを淹れてからお向かいに座りました。

「それじゃあ聞かせてもらおうかな、ライラさんの大切な話」

 暖かくて、ちょっぴり苦いコーヒーを一口啜ってライラさんは話し始めますです。

「ライラさん、アイドルになりたいです」


 プロデューサー殿はキョトンとした顔をしていました。

「パパから隠れてアイドルをするのではなく、本気で、全力で、アイドルになりたいのでございます」

「……そういうことか」

 プロデューサー殿は難しい顔をして腕を組んで唸っていました。

「プロデューサーとして、その言葉は嬉しいよ」

「でも、それにリスクがあるのはライラさんにもわかっているよね?」

「お父様に本当にバレてしまったら、ライラさんは家に帰らせられるかもしれない。そのときはライラさんのメイドさんにも迷惑をかけてしまうかもしれないよ?」

 本当にプロデューサー殿はお人好しで、そしてアイドルのことをよく考えてくださる人でございます。

「たとえそうだとしても、やってみたいのです」

「メイドさんは、ライラさんに任せますと言ってくださいました」

「気持ちはよくわかったよ」

「じゃあ少し意地悪な質問をするよ」

 そう言ってプロデューサー殿はコーヒーを飲み干して言葉を続ける。


「もしライラさんが必死で頑張ってもトップアイドルに成れるかは分からない」

「もちろん僕は全力でバックアップするけど、アイドルの人気はその時の運にも影響するから」

「それでも構いませんです。ライラさんにはどうしても叶えたい目標ができましたです」

「じゃあその目標を聞かせてもらってもいいかな」

「……笑わないって約束してくださいますですか?」

「もちろん、大事なアイドルがそこまでして叶えたい夢を笑ったりしない。誓うよ」

 一度、二度と大きく深呼吸をして、それからプロデューサー殿の目をみて言いますです。


「カエデさんと同じステージに立ちたいのでございます。カエデさんの隣に並び立ちたいのです」

「カエデさんはライラさんの大切なお友達でございます」

「でもわたくしたちはライバルではありませんです」

「一緒に仲良くおしゃべりすることはできても、競い合うことはできませんです」

「それが本当に悔しくて、それをしておられるミズキさんや他のアイドルの方々が羨ましくて」

「たとえ今の生活を捨てることになっても、掴み取りたいと思いましたです」

 最後の方は少し涙声になりましたが、なんとか言い切ることができました。


「カエデさん…… 高垣楓さんか」

 プロデューサー殿は少し頭に手を当てて考えてから口を開きました。

「ライラさんは高垣さんのライブを見たことがありますか?」

「カエデさんのラジオやテレビの番組は見たことがありますが、ライブは見たことがございませんねー」

「高垣さんは、実際にファンの方と会えるライブを大事にしているアイドルで……」

「口で説明するよりも見た方が早いな、資料室から映像取ってくるから少し待ってて」

 小走りで出て行ったプロデューサー殿はすぐに戻ってきました。

 プロデューサー殿の手にあるカエデさんのライブのDVDはファンの方々の間で伝説とまで呼ばれてるそうです。

 映像が始まってからはあっという間でした。

 何万人も入れるような大きな会場のファン全員を虜にするパフォーマンス。

 ときに激しく、ときに優雅に歌って踊るカエデさんから目が離せませんでした。

 アンコールも終わり映像が途切れたときには、すでに窓の外は真っ暗になっていましたです。


「すごかったでございます……」

「そうだね、僕も見入ってしまった」

「でも、高垣さんと並び立つということは、ライラさんもこのレベルにならないといけないんだよ」

 比べなくてもわかるようなアイドルとしての格の差でございます。

 歌やダンスの練度も、アイドルとしても心構えも、なにもかも今のライラさんには足りませんです。

 でも一度決めた信念は折れませんでした。

「ライラさんでは、まだまだカエデさんには届きませんです」

「でも胸の奥の熱い感情が、ライラさんを動け、動けと急かしていますです」

「いまはただ、挑戦したい気持ちでいっぱいでございます」


 それからの日々は目まぐるしく過ぎて行きました。

 大きなオーディションをたくさん受けて、受けられる仕事は全部受けて、残った時間はレッスンに捧げました。

 アキハさんとラボで遊ぶのも、ナターリアさんとおしゃべりするのも、メイドさんと一緒にご飯を食べることも減りましたです。

 でも本当に充実した日々でございました。

 そんな月日が半年ほど経った頃、人気のテレビ番組にもたまに呼んでいただけるようになり、ついにライラさん単独でのライブ公演が決定いたしました。

 プロデューサー殿からお知らせを聞いてから、すぐにカエデさんに連絡をとりましたです。

 ライラさんのレッスンが終わった後に、カエデさんはカフェでお話しする時間をとってくださいました。

 レッスンが終わり、すぐにプロダクションのカフェに向いました。

 そこにはいつもの優しい笑顔のカエデさんがいましたです。


「カエデさん、お久しぶりでございます」

「ライラちゃん、遅くまでレッスンお疲れさまでした。何か甘いものでもいかかがですか」

 久しぶりに会ったカエデさんとのおしゃべりは止まりませんでした。

 お仕事のこと、同じアイドルとのこと、レッスンのこと、お話しできなかった間を全て埋めるように止まりませんでした。

 そんなおしゃべりが一段落したころ、カエデさんが少し目を伏せてからライラさんに尋ねました。

「ライラちゃん、おしゃべりするのも楽しいですけど、それが本当の目的ではないですよね……?」


「……はい、ライラさん、カエデさんに伝えたいことがありますです」

 この半年で少しはカエデさんに近づけたのでございますかね?

 ライラさんにはよくわりませんです。

 でも、自分の気持ちをカエデさんに伝えられる自身はつきましたです。

「ライラさんは、カエデさんを一番大きな目標であり、ライバルだと思っていますです」

「今はまだ届きませんです、でも必ずカエデさんの隣に並べるようなアイドルになりますです」

 そのとき、カエデさんの周りの空気が変わりました。

 あのときの、ミズキさんに向けられていたときと同じ目をしたカエデさんがそこにいました。

「そこまで言われたら、先輩として受けない訳にはいきませんね」

「でも私はイジワルなので待ってあげません、ライラちゃんを置いてどんどん先に進みます」

「それでも、追いついて隣まで来てくれますか?」

「カエデさんが何処にいても、たどり着いてみせますですよ」

以上です。前作共々読んでいてだければ幸いです。

このシリーズ…になってくれるのかな?好きです

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