ミナミの帝王 棋士の魂 (32)

ちょっと言葉が変なのはお許しを。
あと少し気分悪くされるかも。

大阪・ミナミ萬田事務所
「それじゃ萬田クン今回の分ね」

「はい、毎度あり」

「兄貴ただいま帰りました」

「これが噂の舎弟クンかぁ、気合い入っているねぇ…それじゃ10日後のこの時間かな、こっちに来る用事があるから、またね今度は一緒に人妻でもナンパしようよ。ナンバでナンパってね…ほなご機嫌よう」がちゃり

「兄貴、あのジジイ誰でっか?」

「ああ、会長や」

「へぇ、けったいな会長ですな」
複雑な駒組をした盤面の将棋盤だが萬田の玉は詰んでいる

「兄貴、あの会長と将棋してはったんですか?あれ、珍しい兄貴の負けやないですか?」

「そりゃ会長やからな」

「会長やと将棋強いんでっか?兄貴」

「日本将棋協会の会長やからな」

「へぇって、それ凄いんですか?」

「あの羽流さんがおる組織で、あの人も若い頃はタイトルぎょうさん取って、名人にもなった人や」

「へぇ…そんな人には見えませんでしたけどな。そんな人が何しに来はりました?」

「お前にはアノ凄さ分からんか…まあそりゃ、うちの事務所に来るんやからカネでんがな」

「会長はん、借金でっか?どえらい額とか?」

「ゴセンや」

「ゴセン万でっか…10日置きに500万でっか」

「ちゃうわ。ただのゴセンや」

「へ?ゴセン円って樋口さんでっか?」

「そうや」

「んなもん、会長はんなら直ぐに返せまっしゃろ」

「まあ十年近くジャンプのままや。まあ半分は遊び相手と息抜きかな、あとなんやかんや人間の繋がりやろな」
「へぇ、けったいな会長でんな」


米川さん、アンタ会長になる前からも、なってからも偉い人や思われて損得抜きに付き合える友達がおらんのかもしれませんなあ。
まあ、ワイくらいやったら何時でも遊び相手になりますわ。

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~~回想約10年前~~
百駄ヶ谷将棋館
「はいちょっとゴメンやっし」

「すみません、どちら様でしょうか?こちらより先は関係者様以外は入室禁止です」

「ワシも仕事やから、はいそうですかと帰られへんのや。後川っちゅう奨励会員がおるやろ?そいつに用があるんや」

「仮に後川がおりましてもアポの無い方は駄目です。対局中でしたら尚更お引き渡し出来ません」

「ほうテンゴ言いまんやな?でしたら100万はオタクが払ってくれるんか?」

「100万?」…

「どうしたの受付先で、お兄さんも大きな声出しちゃ駄目だよ、もう少し落ち着いて」

(このジジイやり手やな)(この、兄さんは本物だなあ)

「ここは私が受けるからね。後川は私の門下だよ。何か粗相したかね?」

「へぇ。後川さんがホステスに入れ込んでワシから100万借りましたんや。それを返す日になっても返させんので確実におる奨励会の定例日に来たんですわ」

「事務員さん、後川呼んできて。時間切れ?そんなもん関係なく負けで良いよ」

「萬田クンと言ったかな?とりあえず会議室へ」

会議室
「後川クン、お金借りたの?」

「米川先生すみません」

「借りたの?」

「はい、借りました」
「いくら?」

「100万です」

「水商売の女に?」

「はい、すみません」
「良いオンナだった?」

「少なくともボクは好きでした」

「ヤったの?」

「いえ…」

「なんで?」

「ホステスを辞めてたんです」

「情けないねぇ…いつも言ってるだろ?オンナにさせて下さいと頼む内は二流。オンナからさせて下さいと言わせなきゃ。100万もあれば、友達三人くらい呼ばせて楽しめただろうに情けないねぇ。愛人の1人も作れなかったのかい?」

萬田(なんちゅうジジイや…)

「萬田クンだね?それじゃ100万円渡すよこれで良いかな?
あ、後川クンは今日で破門ね。奨励会も辞めなさい」
「先生…」

「100万で愛人作れないヤツはプロ棋士になれないよ」

「分かりました…」

「じゃ出ていって。後の手続きはボクがやるから」

「はい…」去ろうとする

「後川…」

「はい」

「お前が必死なら、アマチュアからでもプロにはなれる。その時は師匠役だけはしてやるからな」

「し、失礼します」

……

……
「さてと、キミがミナミの萬田クンかあ。わざわざ千駄ヶ谷までねぇ。顔を気にする鬼というわけだ」

「いや、天下の米川先生に知っていただくほどのもんじゃありませんわ」

「なんだ、ボクを知ってるの?」

「そりゃ天下の米川先生でっせ」

「キミは金貸しだよね?もう現役も終わりで儲けも少ない老人が貸してくれって言ったらいくら都合つく」

「天下の米川先生なら上限いっぱいまで貸しまっせ」

「それじゃゴセンお願いして良いかな?」

「ゴセン万でっか?」
「いや、ゴセン。新渡戸、ゴセン円だよ」

「へい分かりました。では10日に1割になります」

「うん分かったよ。申し訳無いが仕事柄10日きっちりというわけにもいかないんだ。早かったり遅かったりするかもしれないけど、10日に一回は関西に行くからその際に事務所によらせてよ」

「10日後に1割でジャンプでも全額でも」

「良い様にさせてもらうよ」

~~~

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あやめ速報の誠意ある対応を待っております

掲載拒否云々は最後に

又渋いもんを、期待

~~現在~~
「おい竜一」

「へい兄貴」

「これから新幹線で東京やワレもついてこい」

「へい。兄貴、目的はなんでっか?」

「金主の藤澤保社長に挨拶と百駄ヶ谷の将棋館や」

「あの会長、とうとうゴセン円返せへん様になりましたんか?」

「いや、病気でな、あまり遠出したくないそうや」

「毎度の五百円の為でっか?」

「ど阿呆!米川会長に飛車落ちで月三回指していただいて五百円もらうなんて知らん人が聞いたら卒倒するで。ワイはもうゴセン円なんてもう回収する気はあらへんのや。もう人間的な繋がりしかあらへん」

「あんな下ネタジイサンが凄い人にはワシには見えませんわ」

「それはお前が足らんからや…ほな行くで竜一」

~~百駄ヶ谷~~

「米川先生お久しぶりやす」

「おうおう萬田クン。わざわざ済まんね」
(会長痩せはりましたなあ。髪の艶も落ちて…けど眼光の鋭さは変わりませんなあ)

「申し訳ないね。アソコのガンでね。やっぱり体力落ちちゃって。でもね、この前は人妻と出来たんだよ。嬉しいねぇ」

「御変わり無い様で、少し痩せはったんちゃいまっか?」

「頑張り過ぎたかね?おうおう舎弟クンも付き添いかい?相変わらず気合い入ってるねぇ。ボクももう少し若かったらやって見ようかな?そういえばね若手棋士の1人が似た様な髪型に紫の特攻服着てね対局したんだよ。しかも天下のMHKで。しかも負けてるんだから世話無いよね」
(無理して明るう振る舞ってますけど、調子悪そうでんな米川さん)

「舎弟クンも見るばっかりじゃつまらんでしょ?今日は対局は無いけど棋士の一人二人はいるだろ?私も応援するから対局してみないかい?」
言うやいなや受付に電話

『今日って誰かプロ棋士来てる?八段以上か有名な子………うん、亘辺明夫虎王と新浦クンか…新浦クンにね会長室に来る様に言ってくれない?うんいつもの会長のワガママ………うん、じゃよろしくね』

萬田「虎王じゃなく新浦先生でっか?」

「そう。知名度なら虎王だけどね。新浦クンの方が面白いからね」

(ワシ、何されるんやろ?兄貴に付き添ってプロ棋士先生といきなり指せって…)

コンコン「新浦です、失礼します」
(なんやヌボっとした兄さんやなあ。ホンマ強いんかいな。もしかしてワシでも勝てるかも)
(ほう、これが三浦八段か…テレビで見る物腰の割に芯の強そうな兄さんや。流石、米川先生は人を見る目がある)


(何だろうガラの悪そうな人が二人、1人は羽流先生みたいなオーラが…)

「新浦クンいきなり悪いね。この眼鏡かけた人が萬田クンって言うんだけど十年近く将棋を教えて来た弟子みたいなもんだよ」

「萬田です。よろしゅう」

「その弟子の舎弟クンだ。今日はね、この舎弟クンと対局してくれないかな?晩御飯はボクが持つから」

「対局ですか?明日、ボクはA級順位戦があるんですが…」

「何を言ってるんだいアマチュア相手に指したくらいで調子崩す様じゃ駄目だよ」

「ボクはね、名人戦の前日に女性と五局挿(注・誤字ではありません)したことがあるんだよ。アマチュアと指したくらいで駄目になる様じゃ駄目だ。会長命令だ舎弟クンと指しなさい」

(((むちゃくちゃなジジイだ)))

「さて駒割りだが平手(ハンデ無し)で良いかな?」

「会長はん!?流石にそれは無理ですわ。なんぼかハンデ頼んます」

「分かったよ。舎弟クンの香落ちで良いかい?」

「会長…私がハンデをもらうんですか?」

「え?なに?不服なの?新浦クン?こっちの舎弟クンが人生修羅場くぐってるでしょ?新浦クンはチャカとヤク見たことある?舎弟クンはある?」

「見たことあるわけ無いに決まってるじゃありませんか!」

「恥ずかしながら、ワシ…あります」

「大名人だった大矢先生は戦争経験があるし、新手一生の升井先生も戦争経験者。GHQ相手に喧嘩売ったんだよ?
じゃ、舎弟クンの飛車と角を落とそうか」

その後の話し会いの結果で新浦八段の飛車角が落とされる二枚落ちに落ち着きました。

「舎弟クンは二歩突っ切り定跡は分かるよね?」

「へえ」

「手に悩んだらボクが教えるし、助けるよ。それじゃ…お願いします」

「「よろしくお願いします」」

「萬田クン、定跡っていうのは美しいけど、もう分かってるから面白くない部分もあるよね」
パチンパチン

「人生も堅実な方が確かっていうことがありますからなあ」
パチンパチン

「萬田クンも堅実なんて望むの」

「出来るんでしたら、ワテも堅実な方が良かったですわ」
パチン

「ボクはそれなりに波乱万丈で良かったよ。子供のときに一家心中未遂は出来たし、朝ドラ女優は五人と対局したし、砂丘でヌード写真も撮ってもらった。あとは人間国宝か国民栄誉賞をもらうくらいかなあ…」
パチン

「会長はんならいけるんとちゃいますか。元気におればなんとかなりまっせ」

「どうかなあ。前立腺ガンは再発もあるしね…ボクは、初めて舎弟クンの将棋を見るけど、ちゃんと指せる様だね」

(え?棋力も知らない相手に平手で指させようとしたんですか!なんか怖い人達だしボクはどうなるんだろ…)

~~対局進んで~~
パチン
「定跡から離れて面白くなってきたね…舎弟クン、ここは一回受けに回ろうか」

「受けでっか…こんな手で」パチン

「お!やった」

~~
「舎弟クン、次の一手だけボクに指させてくれないかね?」

「会長はんが指しますんか?一手だけでっせ」

「新浦クンは、この手読んで無いでしょ?」
6三桂馬成!

「これなんでっか?」

「ん…あ、ああ」頭ポリポリ

「ほうら、新浦クンが悩みだした。いいかい舎弟クン、盤面をしっかり見るんだよ。女性のオマ●コを…関西じゃオメ●っていうんだっけ?そこを見る様に将棋盤を見るんだよ」
「オメ●でっか」ジー…

「そういえばさ、昔は将棋協会内に食堂があったんだよ。ボクがね「オバチャン、定食にオシンコつけてねオシンコだよ?一文字間違えちゃ駄目だからね」って言ったのさ…そうしたらある棋士が、「ここの食堂にオシルコはありませんよ」だってね。あん時は一本取られたなあ…」

「面白いこと言わはりますなあ」

「ところで舎弟クン、どうだい何か見えたかい?」

「会長はん、あきませんわ。ワシなんか勃ってきましたんや」

「ど阿呆!新浦先生と対局や言うのに、アソコおっ勃てるヤツがおるか!」

「萬田さん。違いますよ。舎弟クンは素晴らしい。私はね、全ての弟子に同じことを言ったけど、ちゃんと勃ったヤツはいなかったんだ。舎弟クンはね、この短い時間で心から真剣に盤面を見つめた。彼はね純粋なんだよ。彼こそボクの本物の弟子かもしれないね」

誤字…深い意味は無く実在の人物団体とは云々かんぬん
>>4
千駄ヶ谷→百駄ヶ谷
>>9
三浦八段→新浦八段

百駄率のせいで虎王戦挑戦権が……

>>14
ネタばらししないで…
ただ萬田はんが絡みますから……えぇ…はい

「我々がね無責任に猥談してる間に局面は難解だよね。いやあ面白いね。強い人同士も面白いけど、こういうハンデ戦で、強い方が喰らい付いたりミスを誘ったりする将棋はワクワクするね」

「駒落ち中終盤の華でんな」

「顔には大きく出てないけど新浦クン2・3手、間違えてるんだよ。舎弟クンがね自信満々に変な手指すから狂っちゃった」

「プロでもありますんやなあ」

「あるよ。自信満々に変な手を指すと相手が考え込んで自爆するんだよ。現役時代はよくやったけどね、そんなボクの指し方を泥々流ってい言うのは酷いよね。ホガラカ流とか呼んで欲しいもんだ」

「会長はんは卓越した実績がありますからな」

「それにしても、あれだ捻れてきたね。お互いに玉が危なそうで案外大丈夫かな一時間以上かかった大熱戦だけど近くの店屋がしまっちゃうよ」

「会長。申し訳ありませんが、この将棋はまだまだ面白くなりますから待っていただけませんか?」

「大丈夫だよ、新浦クン。キミみたいな将棋指しから将棋を奪う様なことはしないよ」

~~
一時間後
「負けました」

「兄貴やりましたで!」

「いやはや面白かった。詰みを三回見逃した舎弟クンだけど最後の長手順は間違え無いんだからね」

「そうでっか」

「はい、舎弟さんがここは桂馬で詰みです。次にここは飛車を切る順なんですが、これを読めたらプロです。まあ最後もアマチュアでは詰みを見つけるには難しいですね」

「なんやワシ、二人のプロから褒められてめっちゃ強い気がしてきましたわ」

「安心して良いよ。新浦クン相手に二枚落ちでこれだけ出来たら大丈夫……さてと食事に行こうか…萬田クン、今日はこっちに泊まって朝一で帰りなよ。新浦クンも一緒に泊まりなさい。食事も宿もボクが持つよ。ボクが知る限り、世界で一番良いオンナがいて、一番大好きな料理をご馳走するよ。それじゃ予約するかね」

「ご馳走になります」

「会長、ボク、明日、順位戦なんですが」
(無視して電話)


「予約したから。さあ行こうか」
竜一(あの会長が世界一言うオンナって、どんなんやろ…)

~~鷲ノ宮~~
「兄貴、なんや閑静な住宅街でんな」

「そりゃ、向かう場所が場所やからな」

「兄貴どこ行くか分かりますんか?」

「なんとなく…やけどな」

民家前
「最近流行りの隠れ家的な~とか誰かの家みたいなお店ってやつでっか?」

ピンポーン

「うん、ボクだよ。開けてくれ」

ガチャ
「ようこそいらっしゃいませ」

「(小声耳打ち気味に)兄貴、小綺麗ですけど普通のオバチャンでっせ」

「(小声)そりゃそうやろ」

「はじめまして。私、将棋協会でいつも会長にお世話になっております。新浦と言います。本日はいきなりお邪魔することになりまして、奥様申し訳ありません」

「お、奥様でっか?」

「あれ?ボク新浦クンに行ったっけ自宅に招待するって」

「会長はんは言っとりまへんな」

「萬田クンの反応見ると分かってたみたいだね。分からなかったのは舎弟クンだけか…」

「そりゃ、会長はんくらいの男か最高のオンナ・大好きな料理言うたら簡単に想像つきますわ」

「驚かすのは失敗だね、こりゃ。まあ、今日はボクの家でご馳走するし、ここに泊まっていきなさい」

~~米川邸~~
竜一「会長はん、この料理うまいでんなあ…」

「そうだろそうだろ…さて、新浦クン。今日、キミに萬田クンと会わせたの分かるかい?」

「会長の考えることはボクには分かりません」

「舎弟クンは?」

「会長はんの気紛れちゃいまっか?」

「それは半分正解!」

「さて、萬田サンは分かりますか?」

「ちょっとした顔合わせか。今後のことの含みってとこでっか」

「それも正解だね。さて、新浦クン。キミも40が見えてきた。今までもそれなりに実績はある。けど色々壁にはぶつかってるだろ?」

「はい」

「壁にぶつかった時はね、色々あるんだ。今までやってきたことを1から戻ってやる。今まで以上に真剣にやる。別の方法を探す。色々あるよ…新浦クンはやりそうに無いが他人のせいにする。言い訳に逃げる。戦うことを止めるとかね…あとは女性に溺れるとかかな、ははは………うん、けど、新浦クンは器用じゃない。今のままじゃ愚直にグルグル回りながら後ろに下がるだけだ」

「耳に痛いです」

「愚直も良い、優しいのも良いことだ。けど、羽流クンを見てごらん。カレはね、異業種に目を向けて、他の道の人から刺激を受けてる。ボクがどうこう言わなくてもやっていける。だから、ボクは新浦クンにとびきり面白い人物を用意したんだよ。多分、キミが一番出会わなそうな立派な人物をね」

「会長、そりゃ買いかぶりでっせ」

「まあ、それは新浦クンが判断することだ、食事して打ち解けてくれ」

「はあ……」

~~宴が進み~~
「ところで萬田さんも舎弟さんも関西の人みたいですが」

「へえ。関西、ミナミで事務所構えて仕事をさせていただいとります」

「失礼ですが職業は」

「大きな声じゃ言えませんが金融でんな」

「服装からも銀行とか大手には見えませんが」

「そうだす。大手からも銀行からも相手にされん様な人が相手ですわ」

「大変そうですね」

「借りたまま、どう逃げるか考える様な奴等が半分以上いまっからな。貸すワシも借りる相手も、堂々言えたカネちゃいまっからな」
「なんかまるで街金みたいな言い方ですね」

「その通りだす」

「ええ…萬田さんって街金なんですが、…内臓角膜とか売るんですか?」

「新浦さん……、ワシから借りてみたらよう分かりまっせ?」

「いえいえ遠慮します」

「本音を言えば新浦さんみたいな人が借りてくれるのが一番ありがたいだす」

「ボクなんて土地なんて無いですし、負けてしまえば就任激減する職業ですよ」

「ワシら街金は、相手を見ます。裏や担保、家族親戚おさえたりもします。でも、一番は信用だす。新浦さんアンタなら上限いっぱい保証人無しで貸しますわ」

「そんなに信用なりますか?」

「それなりに、人は見てきましたからなあ。心配は優し過ぎるくらいで、芯の強さは、そこの会長に負けへんちゃいまっか?」

「萬田クン。キミの見立ては間違ってるよ。ボクよりカレはね芯があるよ。まだまだ大きな花を咲かす男だとボクは信じている」

「ワシの目が信用ならんなら仕方ないだす。でもおたくらの会長はんが、ああいうんですから自信持ちなはれ」

「はあ……」

~~
その夜。萬田・米川二人きり
「萬田クン。今日はいきなり泊めさせて悪いね」

「いえ、こちらこそ良い経験させていただきました」

「ところでだ、ボクはねガンを患って、治療したりはしたが多分10年は厳しい。
次の会長、せめて外部理事を萬田クンやってくれないかな」

「なんぼ会長はんでも無理な相談でんなあ」

「そうだろうな。萬田クンは根っからの金融屋だ。けど、影から助けてくれないかな?ボクは連盟のためと色々した。個人としても色々した。し過ぎるくらいでね、死んだら地獄行きの人間で、ボクを知る人間の七割は喜ぶだろう。死んでからじゃ何も出来ない。けど、色々心配でね。まあ老婆心で外れれば良いんだが…

ああ、新浦。あれは良い男だろ」

「そうでんな。中々いない好人物ですわ」

「口下手で人間付き合いは上手くない。だから心配なんだ。」

「確かに、世渡りは上手そうには見えまへんな」

「けどね。将棋の情熱だけは天下一品だよ。将棋は才能も確かに必要だ。新浦には才能がある。それ以上に努力が出来る男だ。ボクはね、カレを尊敬してるんだよ」

「よう分かりまっせ」

「今日、もう1人居た亘辺虎王を呼ばなかった理由は分かるかい?カレはね、まだ挫折して考えるには少し若い。キミと会わせて学ばせるには、少し若いんだ。キミに会わせて大丈夫になるまでボクが生きていれば良いんだがなあ……」

「会長はん。病は気からだす。強気を無くしたらあきません。いつも強気に前へが米川哲学の1つちゃいまっか?」

「そうだよね。ただ不安なんだ。萬田クンの心に止めといてくれないかな?」

「分かりました。恩義ある会長はんのお願いだす。この萬田、いざとなったらやらせていただきます」

「頼んだよ……
ああ、あと新浦クンってあんな感じだけど実はねゴニョゴニョゴニョゴニョ」

「凄い人でんな」

「そうなんだよね」

~~帰りの新幹線~~
「なんか、どえらい出会いでしたな」

「まあ竜一も良い経験やろ」

「プロ棋士に勝ちましたからな。にしても、あの新浦はん活躍してはるんでっか?」

「お前、知らんのやな。あの人は羽流先生に名人戦に挑戦したり、羽流先生の順位戦連勝止めたりしとるんや……一番大きいのは羽流先生がタイトル独占した時に、その牙城を破ったんや…結局、タイトルはその1つだけやが、その後も安定してトップで活躍しとるで」

「あ!思い出しました。アポ無しでいくテレビの【電化少年】で女性タレントが求婚しとった相手が新浦はんでしたわ」

「そうや」

「凄い人でんな。そんな人でもタイトル一回だけでっか」

「半分以上はタイトルに挑戦も出来へんのや。タイトル一回でも超一流や…それに」

「それに?」

「いややめとこ」

「なんや兄貴疲れとりますな?」

「久々の東京さかいな」

会長はん。心配が心配のままで終わればええんどすけどなあ…なんかワシにも引っ掛かりが出来ましたわ。

>>20
就任激減→収入激減

~~数年後晩秋~~
萬田に電話
「はいどうも萬田だす」

『萬田クン、元気かい?米川だよ』

「お世話になっとります。今日はどんな用件でっか?」

『悪いけど、出来るだけ近い内にこちらに来られないかな?日時が分かると良いんだが』

「4日後の午後2時頃でしたら行けますが」

『悪いね、ボクさ入院になるんだ。今度ばかりは駄目そうだ』

「そんなに悪いでっか」

『ガンがね、再発してね』

「下手な慰めは要らん様ですな」

『覚悟はとうに、済んでるよ。本当は自宅か愛人の家で死にたいが、警察やらなんやら面倒だし迷惑かけるからね。
最期の入院だよ』

「分かりました」

『入院は4日後に性炉華病院にするから来てよ。[米川に会いに来た萬田や!]って言えば入れる様にしとくから。そうだ舎弟クンも連れてきてくれないかな?』

「分かりました」

『あとね萬田クン1つ真剣なお願いして良いかな?』

「なんなりと」

『どうせみんな良いもんをお見舞いに持ってくるんだよ。
高いだけの不味い果物より、百円もしない桃の缶詰を頼めないかな?あと、こっちでは手に入りにくいんだが、おむすびせんべえと塩っぱを頼むよ』

「分かりました。持っていかせてもらいます」

~~
「おい竜一。これから買い物行くさかい留守番頼むで」

「兄貴、買い物ならワシがいきまっせ」

「いや、これはワシが自分で買わなアカン買い物や。そん代わりに明後日東京行くさかい準備しといてくれ」

「東京でトラブルでっか?」

「いや、米川会長がな相当悪いそうや」

「あのジイサンが……
分かりました」

~~性炉華病院~~
受付
「すんません萬田と言いますが、米川会長に呼ばれて来ました」

「米川さんに頼まれております。萬田様ですね、四階特別室となっております」

「どうもありがとうございます」
~~特別室~~
コンコン
「どうも萬田です」

「きたきた、入って入って」

「失礼します…あ、先客おられましたんか…それじゃ少し待ちましょか?」

「いや構わんよ今日の目的なんだから入って入って」

「それでは、御言葉に甘えまして……」

竜一「あ!渓海浩二や」

「あれ?舎弟クンはカレを知ってるんだ。ボクは知らなかったのに」

「そりゃ会長はん、関西で将棋言うたら渓海さんですわ。ワシらガキん頃からの大スターでっせ」

(渓海ペコリ・萬田ペコリ)

「初めまして、ワタクシ将棋協会理事をしております渓海浩二と言います」

「初めましてワテは大阪で、しがない金融屋をしとります萬田です」

「はて……萬田…?」

「渓海クン。カレは金融屋だって言ったけど、ボクのね理事補佐をしてもらってたのさ。凄腕経営コンサルタントだからね。協会の定款に理事は個人で補佐を持てるだろ?」

「ああ、ありましたね。この方が会長の補佐ですか」

「そう
……さて、この凄腕補佐だが月いくらだか分かるかい?」

「想像つきませんね」

「なんと月・1500だよ。正確には10日に一回会って飛車落ちを指しつつ相談してもらって500だ」

「高いですね?」

「渓海クンでも高いかい?」

「ええ。月1500万は高いですよ」

「違う違う1500円。毎回500円玉一枚だよ」

「え、そうなんですか」

「そう。で、渓海クンにはね、引き継いで欲しいんだよ。今後カレに頼る時が来るんだ。ボクが死んだら」

「会長。まだまだ元気で無いと…」

「いや、いいんだ。ボクはじきに死ぬ。年内かな?多分持たない。そうしたら、協会会長はキミだ。だけど何かしらトラブルは起こるから、その時は萬田クンを相談相手に選んでくれないかね?
出来れば次の会長…多分…佐渡康己クンだろうが、カレまでは引き継いでやって欲しい。そこまではボクには死んでも責任があるから」

「分かりました。会長の頼みですから」

「あ、萬田クン。もしかしてその袋は?」

「会長はんの頼まれたモノだす」

「開けてくれんかね?」

「おむすびせんべえに塩っぱに桃缶って兄貴?」

「桃缶はともかく、あとの2つは懐かしいだろ渓海クン?ボクもね関西で対局した時に、塩っぱとかおむすびせんべえ出されてね。なんだか美味しいんだよ。関東だと探すのも大変だ。キミが持ってきた果物のセットは有難いけど、良いもんばかりじゃ飽きるからね。
今、1つ袋開けちゃおう。ほらみんな食べて渓海クンも舎弟クンも」

モグモグパクパク
「ああ、これですね。懐かしい。久しぶりに食べました。会長、萬田さん有難うございます」

「いやあ上手いね
話し変わるけどね、葬式だけど前からいってるけどあの世からインタビューとか出来ないかなあ…もしくは、1人千円で墓の文字か塔婆彫らせたり、会費制にして今から席次を決めとくとか。萬田クンを各銀行頭取と同じ席にするとかさ」

「流石にワシも困りまんなあ」

「内都のジイサンと有由のジイサンと嘉藤のジイサンを同席させてね。
式中に喧嘩始めたりしたら伝説の葬式の完全だ」

「流石にそれは無いかと。各先生方も落ち着かれましたし」

「嘉藤のヒーさんは喧嘩はしないだろうけど、全く落ち着いてないよ」

「それが、嘉藤先生の良いところですから」

「まあ、葬式のお願いはこれくらいにして、さてと渓海クン申し訳ないが今日は帰ってもらえるかな?」

「分かりました」

「すまないね、これから最期の悪巧みだから」

「会長、無理なさらず。萬田さんと…
ええ…」

「カレは舎弟クンで良いよ」

「…舎弟さんですか、私はこれで、失礼します」

ガチャ

~~
「萬田クンお土産、ワガママ言って悪いね」

「かまいまへん。考える手間が省けましたわ」

「さてと、萬田クン。萬田クンから見て渓海はどうだい?」

「初めてお会いしたから分かりませんが、誠実そうとちゃいまっか」

「ボクとキミだ。忌憚なく言ってくれたまえ」

「なら
まあ、善人かもしれまへんが、同時にボンボンでんな」

「そうなんだ。人は悪くない。人望もある、西の人間には影響が強い。けどね、組織で腹を括るタイプでなく、判断をしたり修羅場をくぐれるタイプじゃない。危機意識を常に持ち対処するのは難しいだろうね。平坦な時に、なだらかに行くならカレだ。だがなあ…」

「まあ誰も完璧ではおまへんからな」

「カレにさ、1つ協会トラブルの解決を頼んだのさ。
経験だと思ってね。けど、やることなすこと、てんで駄目。
善人はね悪人に対処出来ないし悪人のふりが出来ないんだ。
ボクなんかは悪人のふりが得意だけど…ふふふ…
一生懸命、渓海を育てたがあんまりだったなあ…けど、次は渓海か…」

「次におりませんか
適任が」

「相撲と一緒で強くないと尊敬されないの。
棚中は実績は無いわけじゃない。理事もしたし腹黒く色々出来るが息子を溺愛しててね。その辺りから人望は無い。
赤野は実績不足。能力はあるかなあ、少し素直過ぎるというかな。若い頃に周囲に虐められて少し偏屈だ、それに思い込みで走り過ぎる。バランスを取ってくれる人が横にいつつの参謀タイプだ。
志摩は兄貴肌なところもあるし働き者だが、幅広く目を広げて多角的に判断するところが無い。上に立ったら気付かない内に寵愛をして組織が駄目になる。
その同期達も政治に無関心かなあ…長村治クンは悪くないが、権力と距離を置いて堂々と渡り歩く、ちゃんとした野党タイプだ。
佐渡康己クンはまだ若い。あと15年くらいして羽流世代が着いたらなあ…」

「でも渓海はんでっか?」

「痛し痒しだねえ
この際、舎弟クン外部理事をやってくれないか?会長でもかまわんよ」

「無茶言わんで下さいよ」

「萬田クンはやってくれないだろ?」

「残念ですが、やりまへん」

「ああ、さっきの理事補佐はやってくれないかな?渓海と次の会長くらいまで。その次の会長はもうボクの手の及ぶ人間じゃないから頼むよ」

「会長はん。会長はんのお願いなら聞ける範囲は聞きますわ」

「ワガママついでだ、もし見切るなら、見切る時はスパッと将棋界を潰してくれんかな?」

「ええんでっか?ワシに潰せ言うたら徹底的でっせ」

「徹底的で良いよ。頼むよ萬田クン、舎弟クン

……
あと五年生きたいなあ。あと五年。五年後には同じこと言うだろうけどね…あははは」

これが半ば遺言になるとは思いませんでしたわ。

こっからどんなゲス野郎が出てくるのやら…

ごめんやっしゃー

イッキに書き上げますわ

忘れてたわ
仕上げる

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