バイト「正社員にしてくれるんですか!?」上司「いや、聖社員だ」 (22)

バイト「あのー……」

上司「なんだね?」

バイト「近いうちに正社員に格上げしてくれるって話、どうなったんですか?」

上司(またか……)

上司「ああ、あれね……もうちょっと待ってくれたまえ」

バイト「ずっと、“もうちょっと待ってくれ”じゃないですか!」

バイト「いっときますけど、働ける場所はなにもここだけじゃないんですよ?」

バイト「あまりに引き伸ばすようなら、辞めることも考えますよ?」

上司(うーむ、バイト如きのくせに図に乗りよって)

上司(しかし、今うちは人手不足だし、辞めさせるわけにはいかん……どうすれば……)

上司(そうだ!)

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上司「分かった、君の望みを叶えてやろう」

バイト「えっ、ってことは……正社員にしてくれるんですか!?」

上司「いや、聖社員だ」

上司「“聖なる社員”……君をそれにしてやろう」

バイト「な、なんですかそれ?」

上司「詳しいことはおいおい説明するが、通常の正社員より格上ということだけは間違いない」

バイト「ホ、ホントですか!? やったぁ! ありがとうございます!」

バイト「これで来月からは、俺は時給ではなく月給で雇ってもらえると……?」

上司「いや、時給のままだ」

バイト「じゃあ、時給がぐんと上がるってことですか?」

上司「いや、据え置きだ」

バイト「へ!?」

バイト「それって、今までとなにも変わらないんじゃ……」

上司「何をいっている」

上司「聖なる社員……聖社員とは、そういうものなのだ!」

バイト「そ、そうなんですか!」

上司「たった今から君は聖社員だ」

上司「正社員と同等……いや、それ以上の働きぶりを期待しているよ」ニコッ

バイト「は、はいっ!」

バイト「よーし、頑張るぞ!」



聖社員「今日から俺は“聖社員”だ!!!」シャキーン



上司「…………」

……

上司「あー、君」

聖社員「なんでしょう?」

上司「明日はいつもより二時間早く出勤してくれたまえ」

聖社員「いや、それはちょっと……こっちにも都合が……」

上司「聖社員ならば、文句一ついわず従うものだよ」

聖社員「!」ハッ

聖社員「そ、そうですね! 失礼しました! 二時間といわず、三時間早く出勤します!」

部下「今日残業頼みたいんだけど」

聖社員「分かりました。だけど、残業代はつけさせてもらいますよ」

部下「いや、それはやめてくれ。今、人件費削減しなきゃならないから」

聖社員「しなきゃならないから……って。そんな理不尽な話はないでしょう!」

部下「お前は俺たち正社員より格上の、聖社員なんだろ?」

部下「だったら頼むよ」

聖社員「!」ビビビッ

聖社員「そうでした! きっちりサービス残業させていただきます!」

上司「明日、休みだけど出てきてくれたまえ」

聖社員「はいっ!」



部下「この仕事、代わりにやっといて」

聖社員「分かりましたっ!」



上司「少し時給を下げさせてもらうが、いいかね?」

聖社員「喜んで!」



部下「今度がっつり有給取るから、俺の代わりに出勤してくれ」

聖社員「承知しました!」

上司「……ぷっ、くっくっく……」

部下「ふふふっ……」

部下「あいつ、バカですよねえ!? まだ自分が利用されてるって気づいてない!」

上司「ああ、聖なる社員とはよくいったものだよ。まさに雇う側にとっては聖人だ」

上司「時給も今や、最低賃金以下になってるのに、文句一ついわないのだからな」

部下「いやぁ~、実に都合のいい奴隷が手に入りましたね!」

部下「今日もあいつをバンバンこき使ってやりますよ!」

上司「ああ、使ってやりたまえ。なにしろ使ってやる方が喜ぶんだからな……」ニヤッ

部下「しっかし、気になることが一つあるんですけど」

上司「なんだね?」

部下「近頃、あいつを見てると――」



聖社員『おはようございます! 今日も皆さまに奉仕します!』キラキラ…



部下「妙に体がキラキラしてるっていうか、光り輝いてるっていうか……」

上司「気のせいだろう。仕事のしすぎで汗をかいて、そう見えるだけさ」

部下「そ、そうですよね!」

ところが――

監督官「あのー、もしもし」

上司「はい?」

監督官「私は労働基準監督署の者ですが」

上司「え!?」

上司「あの……うちの会社になにか……?」

監督官「こちらが、アルバイト社員に不当な労働を強いているという情報が入りましてね」

監督官「一度調査させて頂きたいと思って、訪問したのですよ」

上司「!!!」

上司「な、な、なにをおっしゃる……」

上司「根も葉もない……噂話に違いありませんよ……ハハ」

監督官「それを確認するのが、我々の仕事ですから」

上司「ハ、ハハ……なるほど……」



ボソボソ… ヒソヒソ…

上司「ま、まずい! 非常にまずいぞ! なんでこんなことになった!?」

部下「あのバイト、最近やたら体じゅうが光ってて目立つんで」

部下「それで気になったおせっかいが、密告しやがったんじゃ……」

上司「まずいことになったなぁ……」

上司「こき使っただけならともかく、最低賃金以下で働かせてたことがバレたら」

上司「我々は終わりだ……!」

部下「我々って、なんで俺を巻き込むんですか!」

部下「元はといえば、あなたが“聖社員にしてやる”なんていわなきゃ……!」

上司「君だって散々利用してただろうが! 彼に仕事任せて一週間くらい休んだり!」

上司「…………」

部下「…………」

上司「ああ……もうオシマイだ……」ガクッ

部下「これも天罰ですかねえ……」

監督官「な、なんだと!?」





上司(あ、早くもバレたみたい)

部下(終わった……)

監督官「なにをいってるんだ、あなたは!?」

聖社員「ですから、私は自分がやりたくて、自分の意志で、会社に奉仕しているのです」

聖社員「それを貴方のような方に、とやかく言われる筋合いはありません」

監督官「し、しかし……調査した結果、あなたの労働量に対して、賃金があまりにも少なすぎる!」

監督官「これはなんとしても是正しないと……」

聖社員「不要です」

聖社員「なぜなら、私は聖なる社員……聖社員なのですから」キラキラキラ…

監督官(ま、眩しい……! いや、それだけじゃない!)

聖社員「…………」フワー…

監督官(こいつ、宙に浮いてるッ! ――どうなってるんだ!?)

聖社員「もし、これ以上私や当社に文句をつけるのならば」

聖社員「争いは好みませんが、実力行使も致し方ありません」

聖社員「聖雷(ホーリー・サンダー)!!!」ピカッ



ズガガガガァンッ!!!



監督官「うわわわぁぁぁぁぁっ!」

聖社員「今の私は国家と戦っても勝利できる武力があるのです。それをお忘れなきよう……」

監督官「ひっ……!」

監督官「し、失礼しましたぁぁぁぁぁっ!!!」タタタタタッ



上司「…………」

部下「…………」

上司「あ、あの……聖社員様」

聖社員「なにか?」

上司「なぜ、愚かな我らを助けて下さったのですか?」

部下「我々は貴方を利用していたのに……!」

聖社員「貴方がたの邪心にはとうに気づいておりました」

聖社員「しかし、私は聖社員。それを咎めることなど致しません」

聖社員「私はこれまでも、そしてこれからも、聖社員であり続けます……」

上司「おおっ……!」

部下「ああっ……!」

上司「お、お願いがございます!」

聖社員「なんでしょうか?」

上司「私も! 私めも! ぜひとも“聖社員”に……!」

聖社員「よろしいでしょう。私から聖なるオーラを授けましょう」パァァァ…

上司「あああっ……!」

部下「あ、あの私も!」

聖社員「構いませんよ。望む者は拒まず、です」パァァァ…

部下「なんと神々しく……なんと温かな、光……!」

聖社員「これからも共に働きましょう……同志よ」

上司「聖社員様……!」

部下「我々は貴方に、身も心も全てを捧げます……!」

……

聖上司「今日も早朝から深夜まで働こう!」

聖部下「はいっ!」

聖上司「この体になってからは、いくら働いても疲れないよ!」

聖部下「ええ、三日三晩寝なくても食べなくてもへっちゃらです!」

聖上司「働いて働いて働きまくって、もっと同志を増やすのだ!」

聖部下「聖社員様の教えを人々に伝えましょう!」



聖社員「さぁ、皆さまも私のもとに集い、共に歩もうではありませんか」キラキラキラキラキラ…

聖社員「究極なる奉仕者“聖社員”の道を……」







― 完 ―

なんだこれ

わからんがセンスは感じた

こうやって教祖になっていくんだな

どういうことなの……

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