柚「赤点コースまっしぐら」 (26)
柚「2月の終わりは待ちに待った期末テストの時期! さあプロデューサーサン! 勉強の時間だよーっ!」バ-ン!
P「よし頑張れよ。俺は帰って『ベヨネッタ』を遊び尽くーーー」
柚「待ったァ」ガシッ
P「離せや」
柚「お願いします! プロデューサーサンッ! 勉強を教えてつかぁさい!」ビッ!
P「角度45度の美しい礼だ」
柚「来週テストでなりふり構ってられないからね! 恥は捨てるし、手段も選ばないッ!」カッ!
P「ほほう、そいつは殊勝な心意気だ。だが残念。この休日はセクシー眼鏡美女を堪能すると心に決めているんだ。そうとわかればさぁ手を離せ柑橘系」ペシッ
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柚「美少女ならここにもいるから~! 堪能していいから~!」ガシ-
P「眼鏡がない」
柚「かけるよ!」スチャ
P「鼻眼鏡じゃねーか!」
柚「ボンジュール。ふはははは!」
P「帰る」
柚「待ってェッ!」ガシ-
P「待たないよ。今回は勉強をしなかった自分を恨みながら補修を受けてきなさいな」
柚「嫌だァ! 補習でレッスンに遅れるとトレーナーさんに睨まれるんだもん! 氷のように冷たい目で『舐めているのか?』って睨まれるんだもん! その後、すっごい厳しいんだもん!」
P「人生には厳しさもまた必要なのだよ」
柚「ひーん! 人生イージーモードがいいよォ! 補習は嫌だよー!」
P「…ったく」
柚「!」
柚「教えてくれるんだねありがとうございます! 相変わらずプロデューサーは柚に甘っちょろいなぁもうっ! ははははは!」
P「お疲れ様でした」
柚「今の嘘ッ! 嘘ッ! 嘘だからァ!」ガシ-!
P「次はないと思え」
柚「ウッス!」ピッ
柚「…で、教えてくれるんだよね♪」コロリ
P「いやいや俺は教えないよ」
柚「え?」
P「代わりに勉強の鬼を紹介してあげようと思ってな」
柚「何それ怖い」
ピポパポ...トゥルルルル...ピ!
P「あ、俺だけど。かくかくじかじか。赤点必至のぱっつんボブに勉強教えてあげてくれない?」
(しばらくして)
美波「というわけで私が勉強を見ます! よろしくね。柚ちゃん!」カッ!
柚「お~、まさかの美波チャン。よろしくお願いしまーす♪」パチパチ
P「後は頼むよ美波」
美波「ええ、任せてください。部活も勉強も特にやることがなく暇を持て余した春休みの大学生の力を存分に発揮してみせましょう!」グッ
柚「暇なんだ」
美波「暇なの」
P「学生なら『この時期に金ためるかー』ってバイトしそうなもんだけど」
美波「アルバイトをする必要がないくらいにはお金を稼いでますから♪」ゲヘヘヘ
P「笑い方が下衆ゥ」
美波「さて…冗談や和やかムードはここまでにして…やりましょうか!」カッ!
柚「お手柔らかにね♪」
美波「アァンッ?」ゴゴゴゴ
柚「いま美波チャンの口から飛び出したとは思えないドスの効いた声が」
P「『バイクのエンジンをふかせた音』みたいだったな」
美波「柚ちゃん…テスト勉強を舐めてはいけませんよ?」ゴゴゴゴ
柚「あ、いえ。舐めてはいませんが、赤点を回避しつつ楽しくやれたらいいカナー…と」
美波「うふふふ…舐め腐ってますね♪ 楽しくやるは結構。柚ちゃんのポリシーだもの…それは否定しないわ」
柚「舐め腐る」
美波「でも、世の中には鬼の形相で血反吐を吐きながら、眠気と倦怠感と遊びたい欲求に闘いながら前に進まなければ獲得しえないものもあるのよ…それが成績ッ!」カッ!
柚「え、これ待って。プロデューサーサン」
P「美波はああ見えて『キャプテン』や『アイシールド21』みたいな泥臭い根性漫画が大好きなんだ」
美波「『ドラゴン桜』も好きですよ」
柚「なるほど」
美波「さあ! なまっちょろい考えを排除して、徹底的にしごいてやります! 覚悟してね柚ちゃん!」カッ!
柚「助けてェェェ!」
ズリズリズリ...
イャァァァァァァ!!
P「よし。無事に連れていかれたな」
P「ゲームやるか!」カッ!
(しばらくして・事務所地下室)
あずき「で、どうしてあずきも連れてこられたのかな? しかも椅子にぐるぐる縄で縛られて拘束されてるし」ガシ-ン!
柚「やっぱり旅は道連れだよねー」ガシ-ン!
あずき「もしかして。柚ちゃんのせい?」
柚「そんなことないよ。アタシ1人が地獄の勉強会に参加させられそうになってたから『赤点候補の心当たりが他にもいます!』って美波チャンに伝えただけだよ」
あずき「喜多見ィ!」
柚「ははははは! 柚だけ辛い目にあってたまるものか! あずきチャンも道連れだァ!」
あずき「畜生ォ! ちなみに穂乃香ちゃんと忍ちゃんは?」
柚「言わずもがな彼女たちは成績優秀です」
あずき「嫌だァ! 離してェ! あずきだってそんなに成績悪いわけじゃないからッ! 赤点だって1つか2つしか取らないからァ!」ジタバタ
柚「あずきチャン。きっとそれは『成績悪い』方に分類されると思うんだ」
あずき「ひーん! こんなところで死にたくないよー!」
柚「大丈夫、大丈夫。厳しいって言っても美波チャンだもん。流石に人死が出るようなことには…」
ゴトリ
柚「あ、『モーニングスター』が天井から落ちてきた」
あずき「殺る気満々だァァァァァ!」
【モーニングスター】
別名・モルゲンシュテルン。棒の先っぽに鎖と棘のついた鉄球が付けられた棍棒の一種。鉄球が「星」に見えることから付けられた名前。もう見るからに「武器」。武器以外の用途がまるで見つからない程度には凶悪な形状をしている。日本のゲームではバイキングや僧侶のような屈強な男、あるいはアンバランスなデザインが映えるためかシスターが笑顔でぶん回してている。
カチャ
美波「まったくもう。静かにしてください。2人とも」プンスカ
柚「御意」
あずき「美波さん助けてください」
美波「ええ、もちろん。私はあずきちゃんのことも決して見捨てませんよ♪」グッ!
あずき「そうじゃないんだよー!」
美波「まったくもう騒がしいですね。柚ちゃんを見習ってください。静かにしてていい子ですから」
柚「アタシは暴れても嘆いても現状は一切変わらないという虚しさに気付いたんだよ」フッ
あずき「諦めの境地に達してるだけじゃない!?」
美波「これを学習性無気力と言います。法則性なくマウスに電気ショックを与えていると『抵抗しても無駄』ということを学習して、負の刺激から逃れる努力を一切しなくなるんですね♪」
あずき「笑顔で説明することじゃない!」
美波「ちなみにテストには出ませんから。心理学の分野なので」
あずき「実例を交えながら説明してくれたから脳にすんなり入ってきちゃったよ。美波さんのドス黒い笑顔と共にもう二度と忘れられないよ」
あずき「うぅ…突然拉致されて嫌いな勉強をやらされるなんて…アイドル生活が始まって1番苦しい展開かも…」
美波「大丈夫ですよ。人間の脳というのは柔軟ですから。『嫌』なことも『好き』に変えられるんです」
あずき「…勉強も好きになれるの?」
美波「ええ、もちろん」
柚「柚も好きになれるならなりたいなー」
美波「よく言いましたね♪」ジャラリ
あずき「あ、モーニングスターを装備した」
柚「先行きがすっごく不安だよ」
美波「さあ…始めますよ! お勉強大作戦です!」フォンフォンフォンフォンフォン!
あずき「それあずきの台詞」
柚「ていうか。なんでモーニングスターを振り回し始めたの!? 勉強と関係なくない!?」
美波「細かいことは気にしないの! 筆記用具を持ちなさい!」カッ!
柚「」
あずき「」
イャァァァァァァッ!!
(数日後)
美波「…ふふふ。こんなものかしら♪」
柚「ありをりはべりいまそかり」キリッ
あずき「水兵リーベ僕の船」キリッ
美波「2人ともよく頑張りましたね」
柚「ふっふっふっ! 柚チャンにかかれば義務教育程度の学習内容なんてチョチョイのチョイなんだよ!」バ-ン!
あずき「高校は義務教育じゃないよ柚ちゃん!」
柚「なんですと!」ガ-ン!
あずき「…まあでも。これだけやれば期末テストで赤点を取るようなことはないだろうね。辛かったけどやってよかったよ。お勉強大作戦♪」
柚「そうだねー。ありがとうございました。美波先生っ!」ピッ!
あずき「ありがとうございましたっ!」ピッ!
美波「まだお礼は早いわ。これからが本番よ」
柚・あずき「「はい?」」
美波「先生。どうぞ」パチッ
テクテクテク...カチャ
文香「どうも…先生です」ド-ン
柚「あ、こんにちは。文香さん」
あずき「こんにちは。文香さん…ってどうして白衣を着て『博士帽』を頭に被っているのかな?」
文香「これには深い訳があるのです…通常、私の持つ『文香スペック』は100万程度なのですが…白衣と博士帽により3倍の『文香スペック』を発揮できるのです」キラ-ン
あずき「何を言っているのか全然わからないよっ!?」
柚「ていうか文香スペックって何っ!?」
文香「さらに…美波さんと私の力を合わせて2倍…最後に2倍の回転を加えて12倍となり…1200万の『文香スペック』を発揮できるのです…」ド-ン!
あずき「あずきの知らない概念がポンポン飛び出してくるゥ」
柚「ていうか、どこかで聞いたことあるかと思ったら『ウォーズマン理論』だよこれ!」
【ウォーズマン理論】
両手を合わせて200万パワー。いつもより2倍高く飛んで400万パワー。さらに普段の3倍回転を加えて1200万パワー。これによりウォーズマンの力がバッファローマンの力を上回ることに成功した。考えるな感じろ。
美波「要するにね。文香さんにもお勉強を手伝ってもらうことにしたのよ」
文香「私のことは鷺沢先生と呼んでください…」クワ-
柚「えー…と、もう勉強は十分カナー…なんて♪」
あずき「そ、そうそう。お開きにして息抜き大作戦とかがいいと思うなー♪」
美波「ハァン?」ゴゴゴゴ
文香「何をおっしゃっているのですか…?」ゴゴゴ
柚「ちょ」
あずき「ま」
美波「私はプロデューサーさんと約束したんですよ…『柚ちゃんの成績を必ずあげてみせる』と」カッ!
文香「そうです…それに…春休みだというのに私の生活が読書漬けだけなのはあまりにも寂しいではありませんか…」シュ-ン
あずき「文香さんはやることがないから来たんだね!?」
柚「美波先生。勉強会に参加するのはあずきチャンだけでいいと思います。柚はもう赤点回避が余裕です」キリッ
あずき「人を売るなァ!」
美波「…そうね。約束したのは柚ちゃんだけだもの。あずきちゃんは開放してもいいかしら」シュルシュル
柚「え? ひどくない?」
あずき「あ、解いてもらえた」パラリ
美波「元々、柚ちゃんだけの約束だもの。あずきちゃんは今度のテストは問題なさそうだしね。でも、勉強はサボっちゃ駄目よ?」
あずき「はーい! 穂乃香ちゃんと忍ちゃんと遊んでこよー!」スタタタタタタ
柚「この裏切り者ォォォ!」
あずき「へへん。置いてきぼり大作戦だよ! ていうか自業自得っ! 自業自得だよっ!」スタコラスタコラ
柚「待ってェ! あずきちゃーーーーん! 寂しいよォォォォォ!」
パタン
柚「ヘグッ…見捨てられた…」
美波「さあ!」カッ!
文香「始めましょうか…」クワ-
柚「」
モウイヤァァァァァァァ!!
(1週間後)
柚「エジプトはナイルのたまもの」キラ-ン
美波「仕上がったわね」
文香「そうですね…」
美波「模擬試験は何点だったかしら?」
文香「国数英化現社の5科目600満点(数学200点満点)中…350点…半数が赤点だった惨状からすると素晴らしい成長と言えるでしょう…過去の傾向から全体順位110/200は堅いかと…」
美波「半端ね。100位は切りたいわ。テストまではあと何日あるかしら?」
文香「3日ほど…」
美波「3日、ね。まだ伸ばせるわ」
柚「待ってェェェ! もう脳ミソパンクする! パンクしちゃうから開放してェェェ!」ジタバタ
美波「柚ちゃん。いい子だから大人しくしててね~♪」ガシッ!
柚「これ絶対S! 勉強うんぬんの話じゃなくてSゥ! 人が辛そうにしているのを見て愉しむタイプの人種だァ!」
文香「そんなことありませんよ…美波さんは難関を乗り越えた人間の目の前に、さらに大きな難関を与えて…人が絶望する瞬間を見るのが好きなだけです…」
柚「チクショウ! Sどころの話じゃなかった! 魔王だぁぁぁぁぁぁっ!」
美波「さぁ…頑張りましょう♪」グッ
文香「やったりましょう…」クワ-
柚「」
(テスト当日)
キ-ンコ-ンカ-ンコ-ン
ハジメ-
教師「(今回のテストは赤点追試の子がたくさん出るんだろうなぁ。1年の総復習的な面があって範囲は広いし)」
柚「…」カリカリカリ
教師「(お、喜多見か。この子は下手をすれば3、4教科赤点になりかねな…って、すごい勢いで問題を解いていってるぞ…!?)」
柚「…」カリカリカリ
教師「(ほほう。そこに引っかからなかったか、この日のために相当勉強してきたようだ…)」ホロリ
教師「(この時期になると急に成績が伸びる子が出てくるからな…もしかしたら喜多見も目覚めたのかもしれん…)」
柚「(赤点は嫌だ赤点は嫌だ赤点は嫌だ美波チャンが怖い赤点は嫌だ美波チャンが怖い)」カリカリカリ
教師「(努力は必ず報われる…いい結果になるのを信じているぞ、喜多見…!)」グッ!
(全日程終了)
柚「」プシュ-
穂乃香「…大丈夫でしょうか。柚ちゃん?」
忍「ほら。食玩に付いてた『ラムネ』あげるから元気出して」
スッ...ポリポリポリ
柚「ンマー」
あずき「お疲れ様。手応えはどうだったの?」
柚「…人生で1番の自信がある!」グッ!
あずき「おー!」
忍「ふふ。それなら結果が楽しみだね」
柚「これで報われなかったら2度と勉強なんてしない…間違ったこの世の中を破壊するよ…」クテ-ン
あずき「新たな魔王が誕生してる!」
カチャ
美波「テスト終わったのね。柚ちゃん」
柚「ヒィッ! 美波先生!」ビクッ
柚「ま、まさか…テスト直後も勉強を…?」ガクブル
美波「…」スッ
柚「!」ビクッ
ポン...ヨシヨシ
柚「…へ?」
美波「頑張った後はご褒美よ…みんなでご飯を食べに行きましょう。私がご馳走するわ」ニコリ
柚「せ、先生…!」ジ-ン
文香「よく頑張りました…柚ちゃん」ギュッ
柚「ふ、文香先生…」ジーン
文香「私の鬼のような授業によく付いてこれましたね…」ヨシヨシ
柚「…文香先生は美波先生の隣で『キン肉マン』読んでただけだよね?」
文香「…はて?」
カチャ
P「お疲れー。どうだったよ?」
柚「はんっ」プイ-
P「そっぽを向かれてしまった」
柚「柚のことをほったらかしにする人なんて知りませんー」プ-
美波「柚ちゃん。テスト勉強の問題を用意してくれていたのはプロデューサーさんよ?」
柚「へ?」
P「悪いな。時間がなかったからプリントだけ美波に渡して授業してもらったんだ」
P「…勉強見てやれなくてすまないな。柚」
柚「プロデューサーサン…」
P「いや、いいんだ。お礼なんて」
柚「いや違うよ。時間がないって、ゲームやってたからだよね?」
P「やっぱ覚えてたか」
柚「ゴルァ!」ギャ-!
P「んだよ! プリントは用意してやっただろうがっ!」ギャ-!
柚「寂しかったでしょー!」ギャ-!
P「知るかァ!」ギャ-!
穂乃香「仲良いですねー」
美波「忍ちゃん、穂乃香ちゃん、あずきちゃん。先に行ってましょう」
忍「アタシたちもいいんですか?」
穂乃香「何もお手伝いはしてませんが」
美波「いいのよ。私はテスト前に死ぬ気で勉強する子より、普段から頑張ってる子の方が偉いと思うもの。だからご褒美よ」
あずき「耳が痛いよぉ」
忍「あはは。やったね」
文香「…私はデラックスパンケーキが食べたいです」ド-ン
穂乃香「文香さんはマイペースですね」
(後日)
柚「…」
P「お、柚。テスト返ってきたんだろ? 点数はどうだったんだー?」
柚「!」ビクッ
P「…ん?」
柚「あ、あの…点数は悪くなかったんだけどね? 他の要素がアレといいますか…」
P「…簡潔に説明せよ」
柚「…はい」ピラッ
【名前書き忘れ】バ-ン!
P「oh。何教科?」
柚「2教科です…」
P「バッキャロォ」
柚「さ、幸い…合計点数を0点にするような無慈悲なことはしないでくれるそうですが…今回の件を戒めにするよう…補習に参加しろ、と」ビクビク
P「は?」
柚「サーセン! 補習決定ですッ!」バッ!
P「…」
ポピパピ...トゥルルルル...ピッ!
P「あ、もしもし。美波?」
柚「それはもう嫌だァァァァァ!」ギャ-!
終わり
以上です
お読みいただきありがとうございました
書くたびに文香がフリーダムになっていってる気がします。フレちゃんといい勝負
夕美も出ると思ったんだけどなぁ
とりあえず柚に、いちごカレー南蛮を食べさせてくる
おつ
すばらでした
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