グラーフ「あぁ・・・アトミラール・・・アトミラール・・・・・・」 (63)

グラーフ「アトミラール、コーヒーを淹れたぞ」コト

提督「あぁ、ありがとう」スッ

提督「毎回悪いな? 無理はしていないか?」

グラーフ「無理などしていない」

グラーフ「私はアトミラールに飲んでもらいたいからコーヒーを淹れるんだ」

グラーフ「私の生き甲斐の1つだ」

提督「ははっ、それは嬉しいな」ニコ



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提督「俺もお前の淹れてくれるコーヒーが大好きなんだ」

提督「何だろうか・・・味も良いが、温かさがあるんだ」

提督「いつ飲んでも、落ち着く味だ」

提督「グラーフ、お前にしか淹れられない味だ」

グラーフ「フフッ・・・そうか、私にしか作られない味・・・か」

グラーフ「そう言ってもらえると、私も嬉しいものだ」

グラーフ「アトミラール、他には何かしてほしいことはあるか?」

提督「いや、大丈夫だ」

提督「お前は充分過ぎる程によく尽くしてくれているよ」

提督「俺は本当に良い妻を持ったものだ・・・」

グラーフ「そ、そうか・・・///」

提督「さぁ、もう夜も遅い」

提督「お前はもう寝なさい」

グラーフ「し、しかし・・・」

提督「大丈夫だ、俺もあと少ししたら眠るさ」

グラーフ「わかった、そろそろ寝るとしよう」

グラーフ「アトミラール、Gute Nacht」

グラーフ「(あぁ・・・毎日が幸せだ・・・)」

グラーフ「(アトミラールと結婚して、まさかここまでやってくるとは・・・)」

グラーフ「(アトミラールの秘書艦を務め、見事深海棲艦の撃滅に成功し)」

グラーフ「(娘ができ、私は初めて家族というものが出来た)」

グラーフ「(娘ももう小学生になった・・・)」

グラーフ「(時が経つというのは、本当にあっという間だ・・・)」

グラーフ「(いつかやってくるであろう人生の終わりまで、まだまだ時間はある)」

グラーフ「(有限なれど、その間にたくさん良い思い出を作ろう・・・)」

グラーフ「(そうだ・・・無意味な時間など過ごしたくもない・・・)」

グラーフ「(しかし、私も立派な母親になったのか)」

グラーフ「(忌々しい過去の記憶・・・未完成に終わり、放置され続けた・・・)」

グラーフ「(あの記憶だけは決して忘れることが出来なかった)」

グラーフ「(結果として私は軍を辞め、専業主婦となった)」

グラーフ「(艦娘として生まれ変わり、そしてこの世に誕生し)」

グラーフ「(数々の仲間達と戦い・・・私はたくさんの思いを知ることが出来た)」

グラーフ「(皆は今頃、どうしているのだろうか・・・)」

グラーフ「(私は今、凄く幸せだ・・・)」

グラーフ「(あぁそうだ・・・幸せ・・・幸せなんだ・・・)」

グラーフ「(アトミラール・・・貴方はこれまで一体どれ程の幸せを私にくれたのか)」

グラーフ「(アトミラール・・・貴方はこれから一体どれ程の幸せを私にくれるのか)」

グラーフ「(アトミラール・・・あぁアトミラール・・・)」

グラーフ「(私と結婚してくれてありがとう)」

グラーフ「(私という存在を喜んでくれてありがとう)」

グラーフ「(私の傍にいてくれてありがとう)」

グラーフ「(私を家族にしてくれてありがとう)」

グラーフ「(・・・・・・あぁ、最近はいつもこんなことばかり考えてしまう)」

グラーフ「(アトミラール、愛している・・・)」

提督「」ガチャ

提督「ん? グラーフ、まだ起きていたのか」

グラーフ「あぁ、アトミラールとその・・・一緒に寝たいから・・・///」

提督「もう遅い時間だというのに・・・グラーフは変わらないな」

提督「お前がまだ艦娘だった頃も、お前は決まって執務室の外で待っていたな」

グラーフ「あぁ・・・夜遅くまで執務をしているアトミラールを見てしまっては」

グラーフ「自分1人が寝るなんてことは出来なかったんだ」

グラーフ「それは今も同じだ、だが私は大丈夫だ」

グラーフ「少しでも多く・・・貴方の傍にいたい///」

提督「グラーフ・・・」スッ

グラーフ「あっ・・・///」ビクッ

提督「俺も・・・お前と結婚出来て、本当に幸せだよ」

提督「娘ももうあんなに大きくなったが、お前は変わらず美しい」ナデナデ

グラーフ「ん・・・///」

提督「ふふ・・・昔からこうやって頭を撫でられるのが好きだったな」

提督「まるで背の高い娘のようだ・・・」

グラーフ「む・・・わ、私は甘えん坊なんかではない」

提督「はは、可愛らしく見栄を張るところも変わっていない」

グラーフ「・・・・・・///」

提督「さぁ、グラーフ・・・寝ようか?」

グラーフ「・・・・・・」

グラーフ「」ツンツン

提督「ん? どうした?」

グラーフ「・・・・・・///」ジー

提督「・・・どうしたんだ?」ニコ

グラーフ「・・・わかっている癖に///」

提督「・・・・・・グラーフ」チュ

グラーフ「ん・・・」





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――






―― 翌朝 ――


ぐらーふ「おはよう・・・」

提督「あぁおはよう、ぐらーふ」

グラーフ「おはよう」

ぐらーふ「う~ん・・・」ポー

提督「何だ、まだ眠いのか? ぐらーふ」

ぐらーふ「うん・・・何か昨日の夜、大きな声が聞こえたような気がして・・・」

提督「!?」ビクッ

グラーフ「!?///」ビクッ

ぐらーふ「何だろう・・・『なーぐーっ! んふーっ!』みたいな声が聞こe」

提督「お、おやおやそれはそれは妙な声だねぇ?」アセッ

グラーフ「(しまった・・・どうしても声が抑えられないんだ・・・///)」

ぐらーふ「でも多分気の所為だよね・・・ん?」ジー

グラーフ「・・・? どうしたんだぐらーふ?」

ぐらーふ「お母さん、首のところ虫にでも刺されたの?」

グラーフ「!?///」ビクッ

グラーフ「あ、あーあーんんっ! そうかもしれないな!///」

ぐらーふ「?」

グラーフ「さ、さぁ早くご飯を食べるんだ」

ぐらーふ「うん」

ぐらーふ「ごちそうさま、じゃあ行ってきます」

提督「あぁ、行ってらっしゃい」

グラーフ「行ってらっしゃい」

提督「・・・・・・」

グラーフ「・・・・・・」

提督「・・・声が大きい」ボソ

グラーフ「なっ!? アトミラールこそ私の首にキスマークを!」

提督「・・・・・・」

グラーフ「・・・・・・」

提督「・・・今度からは気をつけようか」

グラーフ「わ、わかった・・・」

提督「・・・で、では俺も行ってくる///」スッ

グラーフ「い、行ってらっしゃい///」

グラーフ「(何てことだ・・・朝からまた疼いてきてしまった・・・///)」

グラーフ「(アトミラールも夜は遅いというのに・・・また甘えてしまった・・・)」

グラーフ「(気をつけなければ・・・)」

グラーフ「(この時間はアトミラールは家にいない)」

グラーフ「(アトミラールは未だあの鎮守府の指揮官を務めている)」

グラーフ「(と言っても、戦争はもう終わったのだから概ね警備ということか)」

グラーフ「(そういえば、赤城や加賀達は艦娘として残ったな・・・)」

グラーフ「(赤城達は、アトミラールと一緒に仕事をしているのか)」

グラーフ「(そうか・・・アトミラールと・・・一緒に・・・)」

グラーフ「(思えば私とアトミラールの後押しをしてくれたのも赤城だったな)」

グラーフ「(赤城は・・・元気だろうか?)」

グラーフ「(アトミラールはあいつは食い過ぎだと言ってはいるが・・・)」

グラーフ「(色々と世話になったな、赤城には・・・)」



―― 寝室 ――


グラーフ「ふぅ・・・あとは夕食の支度をするだけだな」

グラーフ「それまで時間があるが・・・何をしようか?」

グラーフ「・・・寝よう」

グラーフ「(昨日はいつにも増して激しかったからな・・・///)」

グラーフ「(しっかりと睡眠も取らないとな///)」スッ

グラーフ「・・・・・・」

グラーフ「・・・・・・・・・」

グラーフ「・・・・・・ンフーッ」ZZZ…





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




グラーフ『・・・・・・』

グラーフ『・・・フフフ』グシャ

グラーフ『あぁ、アトミラール・・・早く帰ってきてくれ・・・』ガシャーン

グラーフ『部屋で暴れれば気も収まるかと思えば、私が怪我をするだけだった・・・』パリン

グラーフ『気力もないが、早く手当しなければ・・・・・・いや』

グラーフ『そうだ・・・この傷を見たら、アトミラールはきっと・・・』

グラーフ『きっと・・・凄く心配してくれるはずだ・・・フフフ・・・』

グラーフ『あぁ、きっとそうに違いない・・・』

グラーフ『あぁ・・・アトミラール、早く帰ってきてくれ・・・』

グラーフ『もっと私を見てくれ・・・』





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




グラーフ「・・・!!」ガバッ

グラーフ「・・・・・・」

グラーフ「(今のは・・・夢か?)」

グラーフ「(はぁ・・・嫌な夢だったな・・・)」

グラーフ「(本当に何だったんだアレは・・・)」

グラーフ「(私は・・・あの鎮守府の、自室で何をしていた・・・?)」

グラーフ「(まさか・・・いや、あのようなことをした覚えはない)」

グラーフ「(そうだ・・・全く、全く身に覚えのないことだ・・・)」

グラーフ「(所詮は悪夢だ・・・気にしないようにしよう)」

グラーフ「・・・さて、夕食の支度をしよう」スッ



―― 食卓 ――


グラーフ「」モグモグ

ぐらーふ「あ、これ凄く美味しい!」

グラーフ「そうか? それは良かった」ニコ

グラーフ「作った甲斐があるというものだ」

グラーフ「何せ、私にしか作れない味だからな」ニコニコ

提督「そうだな、お前の作る料理は何でも美味しいよ」

提督「な? 母さんは凄いよな? ぐらーふ」ナデナデ

ぐらーふ「うん! お母さん美人だし、料理も上手で優しいから大好き!」

提督「あっはは、そうだそうだ、そうだとも」ニコニコ

グラーフ「フフッ・・・」

ぐらーふ「・・・あ、そうだ」

ぐらーふ「お母さんは何でお父さんのことをアトミラールって言うの?」

グラーフ「ん? あぁ、そういえば・・・そうだな」

ぐらーふ「アトミラールって、どういう意味なの?」

グラーフ「私は以前艦娘として軍にいただろう?」

グラーフ「アトミラールは当時、私の上官だったんだ」

グラーフ「私もドイツ出身で、ドイツ語で呼ぶようにしていたんだ」

グラーフ「いつの間にか定着してしまってな・・・」

ぐらーふ「ふーん・・・」

提督「おぉグラーフよ・・・お前にとって、俺はまだただの上官に過ぎないのかい?」

グラーフ「いや・・・貴方は私の大切な夫だ」

グラーフ「その・・・この呼び方が本当に好きで・・・安心してな?」

提督「そうかそうか・・・まぁ、俺もその方が違和感がないし、特に構わんさ」

グラーフ「う・・・」

グラーフ「・・・・・・」

提督「ん? どうしたグラーフ?」

グラーフ「・・・その、私は可愛げが無い女だろう?」

グラーフ「こういうとき、どういう顔をしたら良いのかわからないんだ・・・」シュン

提督「・・・・・・」

提督「そんなことはないさ、グラーフ」

提督「寧ろ、皆お前のことが可愛いと思っているよ」ニコ

提督「なぁぐらーふ? 母さんは可愛いよな?」

ぐらーふ「うん! お母さん凄く可愛いよ!」

グラーフ「・・・そ、そうか///」

提督「お前は愛嬌たっぷりの素敵な妻だ、もっと自分に自信を持って良いぞ?」ナデナデ

グラーフ「アトミラール・・・」

提督「グラーフ・・・」

ぐらーふ「(あ、これ・・・またイチャイチャするパターンだ・・・)」モグモグ



―― 寝室 ――


グラーフ「(あぁ・・・今日も幸せな1日だった・・・)」

グラーフ「(しかし・・・確かにぐらーふの言った通り)」

グラーフ「(何故私は未だにアトミラールと呼ぶのだろうか・・・?)」

グラーフ「(それで慣れてしまった・・・というよりは)」

グラーフ「(何故かそう呼ばなくてはならない気がして・・・)」

グラーフ「(・・・・・・)」

グラーフ「(・・・まぁ、特に気にするようなことでもないか)」

グラーフ「」チラッ

提督「」…ZZZ

グラーフ「・・・・・・」

グラーフ「(今日はアトミラールが先に眠ってしまったな・・・)」

グラーフ「(私も早く寝るとしよう・・・)」

グラーフ「・・・・・・」

グラーフ「・・・・・・・・・」

グラーフ「・・・・・・ナーグー」…ZZZ





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





グラーフ『ハハ・・・何だって? 私がアトミラールに依存している?』

グラーフ『冗談は止めてくれ赤城、そんな訳ないじゃないか・・・』

グラーフ『なぁ、そうだろうアトミラール・・・?』

グラーフ『もっと私に頼ってくれて構わないんだ・・・』

グラーフ『私に至らない点はないか? もしあったのなら必ず直すから・・・』

グラーフ『あぁ・・・っ!? アトミラール!!』

グラーフ『待ってくれ! 1人にしないでくれっ!!』

グラーフ『1人に・・・しないで・・・・・・』





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





グラーフ「うわああぁぁぁっ!?」ガバッ

グラーフ「はぁ・・・はぁ・・・!!」

グラーフ「(また悪夢か・・・何て夢だ・・・)」

グラーフ「(今日は思ったよりも疲れていたのだろうか・・・?)」

グラーフ「(はぁ・・・本当に・・・嫌な夢だった・・・)」

提督「・・・ん・・・グラーフ? 大丈夫か?」

グラーフ「あぁ、アトミラール・・・少し魘されただけだ、心配ない」

提督「本当に大丈夫か?」

グラーフ「私は大丈夫だ、それより起こしてしまってすまないな・・・」

提督「・・・グラーフ」ギュッ

グラーフ「あ・・・」

提督「ほら、俺はここにいるから、傍にいるから」

提督「安心して眠りなさい、な?」

グラーフ「アトミラール・・・すまない・・・」

提督「良いんだ、グラーフ」

提督「また、おやすみ」

グラーフ「あぁ・・・」

グラーフ「(・・・・・・)」

グラーフ「(アトミラールは優しいな・・・)」

グラーフ「(あぁそうだ、アトミラールはいつだって優しかった・・・)」

グラーフ「(本当に嬉しい・・・何て居心地が良いのだろう・・・)」

グラーフ「(私だけの・・・アトミラール・・・)」



―― 数ヶ月後 ――


提督「グラーフ・・・大丈夫か?」

グラーフ「アトミラール・・・私は・・・大丈夫だ・・・」

提督「決して無理だけはしないでくれよ?」

提督「さぁ、食器は俺が洗おう、お前は少し休んでおきなさい」

グラーフ「しかし・・・それは私の仕事・・・」

提督「良いんだよグラーフ、台所に男が立って悪いことなんてないんだ」

提督「お前は少し疲れているんだ・・・夜に魘されるのもきっとそれが原因だ」

提督「俺もなるべく手伝うから、早く元気になってくれ、な?」ナデナデ

グラーフ「アトミラール・・・」

提督「いつも家のことを任せっきりにしてすまないな・・・」

提督「これは俺の落ち度だ・・・すまないな、グラーフ・・・」

グラーフ「アトミラールは何も悪くない・・・私は大丈夫だ」

グラーフ「(あぁ・・・あぁ・・・・・・)」

グラーフ「(アトミラールは何て優しい人なのだろうか・・・)」

グラーフ「(全てにおいて、私の思い描いた通りにしてくれる・・・)」

グラーフ「(幸せだ・・・あぁ幸せだ・・・)」

グラーフ「(それにしても・・・あの悪夢は本当に何なのだろうか・・・?)」

グラーフ「(この数ヶ月、しばしば悪夢に魘されるようになってしまった・・・)」

グラーフ「(アトミラールに心配をかけさせてはならない・・・)」

グラーフ「(しっかりしなくては・・・私は足手纏いなんかではない)」

グラーフ「(もっとアトミラールの役に立つ、立派な妻でなくてはならないんだ・・・)」

グラーフ「(ぐらーふにも心配をかけられないしな・・・)」

グラーフ「(短期間の間、睡眠薬を服用することになったが・・・)」

グラーフ「(この錠剤・・・何だ・・・? 何か・・・違和感が・・・?)」

ハルシオン『』

グラーフ「(・・・? 何だ・・・何故・・・?)」

グラーフ「(私は・・・この薬を知っている気がする・・・)」

グラーフ「(何故だ・・・? 一体何故・・・?)」

グラーフ「(・・・・・・)」

グラーフ「(・・・しかし、これを飲めば多少はマシになる)」

グラーフ「(あの悪夢は・・・妙にリアリティーがあって洒落にならない・・・)」

グラーフ「(まるで現実と混ざり合わされてしまうかのような錯覚にさえ陥ってしまう・・・)」

グラーフ「(本当に止めてもらいたいものだ・・・)」

グラーフ「(何故・・・何故あんな内容なのだ・・・)」

グラーフ「(私は幸せだというのに・・・私は母親、妻、そして家族なんだ・・・)」

グラーフ「(そうだ・・・気をしっかり持たなくては・・・)」





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




赤城『提督! 私のお肉を取らないで下さいよ!』

提督『お前が全部食べようとするからじゃないか!』

加賀『隙有、です』シュッ

提督『あぁっ!?』

翔鶴『スキ焼だけに・・・ぷっwwwww』ショショショ

加賀『翔鶴、急に部屋の温度が下降したわね、鼻からネギを食べなさい』ズボッ

翔鶴『ふぉっ!?』キュポッ

翔鶴『・・・・・・』モグモグ

瑞鶴『本当に食べちゃったよ翔鶴姉wwwww』

赤城『ちょwwwwwwwwww』ピクピク

提督『あっはははは!! 巧緻性に優れているんだな翔鶴は!』










グラーフ『 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 』




グラーフ『アトミラール・・・? アトミラール・・・』

グラーフ『何処にいるんだ・・・? アトミラール・・・』

グラーフ『うっ・・・うぅ・・・っ!』グスッ

グラーフ『うあああああぁぁぁぁぁぁんっ!!』ポロポロ

赤城『あぁ・・・またグラーフさんが・・・』

提督『グラーフすまない、少し工廠の方に行っていたんだ』

提督『俺はここにいるから、な? 泣き止んでくれ』ギュッ

グラーフ『アトミラール・・・アトミラール・・・!!』ギュッ

赤城『・・・・・・』

赤城『提督・・・少しグラーフさんを甘やかし過ぎです!』

提督『しかしそうは言ってもだなぁ・・・?』

提督『うーむ・・・どうしたものか・・・』

赤城『・・・私の気持ちも少しは考えて下さいよ』ボソッ

提督『ん? 何か言ったか?』

赤城『いえ・・・何でもありません』










グラーフ『 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 』




グラーフ『(赤城が・・・我が物顔で執務室に居座っている・・・)』

グラーフ『(アトミラールは最近赤城に構ってばかりだ・・・)』

グラーフ『(何故だ・・・? 私はこんなにもアトミラールを愛しているというのに・・・)』

グラーフ『(見捨てないでくれ・・・頼む・・・アトミラール・・・)』

グラーフ『(私は・・・アトミラールがいないと・・・いないと・・・・・・)』

グラーフ『(私は赤城に嫉妬しているのだろうか? それとも・・・)』

グラーフ『(妙な対抗心を抱いている・・・? バカな・・・)』

グラーフ『(皆・・・皆大切な仲間じゃないか・・・)』





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




グラーフ「・・・・・・」

グラーフ「(これは・・・本当に夢なのか・・・?)」

グラーフ「(どちらが現実で、どちらが夢なのか・・・)」

グラーフ「(・・・フフッ、馬鹿馬鹿しい)」

グラーフ「(こんなことを考えるくらいなら、早く体調を整えなくては・・・)」

グラーフ「(そうだ・・・良いじゃないか、こんなこと・・・どうだって・・・)」

グラーフ「(私は幸せなんだ・・・それで良いじゃないか・・・)」

グラーフ「(ただの夢・・・くだらない夢だ・・・どうでも良いんだ・・・)」

グラーフ「(フフ・・・フフフフフ・・・・・・)」

提督「グラーフ、最近はどうだ?」

グラーフ「あぁ、私は大丈夫だ、心配ない」

提督「そうか・・・」

グラーフ「・・・・・・」

グラーフ「・・・アトミラール」

提督「ん?」

グラーフ「・・・過去に、アトミラールを見る私の双眸が」

グラーフ「頼もしい上官に対するそれではなくなったのは・・・」

グラーフ「一体いつからだろうか・・・?」

提督「え・・・?」

グラーフ「私は・・・崇敬と情愛の狭間でいつも惑っていた・・・」

グラーフ「どちらにも振り切りかねなくて、でも・・・」

グラーフ「そのどちらも、私にとっては心地良いものだった・・・」

提督「グ、グラーフ・・・?」

グラーフ「それは今も変わらないんだ・・・」

グラーフ「いつだったか・・・アトミラールは私にこう言ったな?」

グラーフ「まるで大きな娘のようだと・・・」

提督「あ、あぁ・・・」

グラーフ「しかし、私は確かにアトミラールの妻なんだ」

グラーフ「私を可愛がってくれるのはアトミラール、貴方だけだ」

グラーフ「極端に言えば、私にとってどちらであろうと良いんだ」

グラーフ「どちらにしても、幸せじゃないか・・・」

グラーフ「なぁ・・・そうだろう・・・? 私のアトミラール・・・」ニコ

提督「グ、グラーフ・・・? どうしたんだ一体・・・?」

グラーフ「・・・・・・」

グラーフ「・・・すまない、急にこんな変なことを言ってしまって」

グラーフ「なに、最近些か妙な夢を見るようになって、少し昔を思い出しただけだ」

グラーフ「その夢というのも・・・本当に馬鹿げたものだ」

グラーフ「私にだって・・・現実と夢との区別くらい・・・出来るんだ・・・」ボソッ

グラーフ「そうだ・・・今が現実だ・・・幸せな・・・家庭・・・」ブツブツ

提督「ほ、本当に大丈夫かグラーフ? もしかして気分が優れないのk」

グラーフ「 ア ト ミ ラ ー ル 」

提督「ど、どうした・・・?」

グラーフ「・・・私には、帰るところがここしかないんだ」

グラーフ「昔も、私の帰るべきところは鎮守府ではなく、貴方の傍だけだった」

グラーフ「居場所をくれて・・・本当にありがとう、アトミラール・・・」ギュッ

グラーフ「私は・・・今、本当に幸せなんだ・・・」

提督「グラーフ・・・」

グラーフ「ふと気がつけば一番言っている言葉は『アトミラール』・・・」

グラーフ「何年経とうと、私の貴方への愛は薄れたことがない・・・」

グラーフ「最初は空母、そして今は妻としての存在価値を認めてくれた人だから・・・」

グラーフ「私にとって、アトミラールこそ全てだと思っている・・・」

グラーフ「もちろん、ぐらーふ・・・私の娘もだ・・・」

提督「・・・本当に、どうしたんだ? グラーフ」

グラーフ「私もたまにはこんなことを考えるときもある」

グラーフ「家族・・・温かさ・・・大切な人・・・愛情・・・」

グラーフ「実に哲学的なことかもしれないが、こうやって何度も考えていくうちに」

グラーフ「もっと・・・もっと沢山の大切なことに気がつくことが出来る・・・」

グラーフ「それもアトミラール・・・貴方がいるからだ・・・」

グラーフ「全て貴方のおかげなんだ・・・」

提督「グラーフ・・・」ギュッ

グラーフ「あぁアトミラール・・・愛している・・・」

グラーフ「ずっと・・・ずっと愛している・・・」

グラーフ「(ずっと私の傍にいてくれ・・・・・・)」



―― ショッピングモール ――


提督「たまにはこういうのも良いだろう? グラーフ」

グラーフ「あぁ、丁度ぐらーふに新しい服を買ってあげたかったところだしな」

ぐらーふ「見て見て! どうかな?」

グラーフ「あぁ、凄く可愛いな」ニコ

ぐらーふ「そう? えへへ・・・///」

提督「おぉっ! 可愛いじゃないかぐらーふ!」

提督「将来良いお嫁さんになるぞこれは!」ナデナデ

ぐらーふ「私、お父さんと結婚したいな!」

提督「ははっ、それは嬉しいなぁ~!」

グラーフ「・・・・・・」

グラーフ「(・・・・・・そんな)」

グラーフ「(いや・・・そんな馬鹿な・・・)」

グラーフ「(私は今・・・ぐらーふに嫉妬した・・・?)」

グラーフ「(まさか・・・そんな・・・)」

ぐらーふ「お母さんどうしたの?」





グラーフ「」ギロ





ぐらーふ「!?」ビクッ

ぐらーふ「お母さん・・・? どうしたの・・・?」

グラーフ「あ・・・いやなに、ぐらーふがあまりにも可愛いからな?」

グラーフ「つい見惚れてしまったんだ」ナデナデ

ぐらーふ「私そんなに可愛い? 嬉しいなぁ・・・///」

グラーフ「・・・・・・」

グラーフ「(・・・初めはそれ程性別など意識しなかった)」

グラーフ「(女物よりも、男物の服を着せていた方が逆に可愛らしかった・・・)」

グラーフ「(だが・・・少しずつ女の体になって・・・私に似てきて・・・)」

グラーフ「(まるで・・・もう1人の自分・・・いや、他人にアトミラールを・・・)」

グラーフ「(アトミラールを取られてしまうような気がして・・・?)」

グラーフ「(・・・? 私は何を言っているんだ・・・?)」

グラーフ「(ぐらーふは私の可愛い娘じゃないか・・・)」

グラーフ「(アトミラールの愛情を一身に受けているぐらーふに・・・)」

グラーフ「(私はかつて、どのような目を向けていた・・・?)」

グラーフ「(ぐらーふが生まれたとき、良く頑張ってくれたと・・・アトミラールが私に気遣っているのを見て・・・)」

グラーフ「(私は・・・私は何を思った・・・? 何に芽生えたんだ・・・?)」

グラーフ「(嘘だ・・・そんなはずはない・・・そうだ・・・そんなはずは・・・)」





グラーフ「 ( そ ん な の ・ ・ ・ 私 じ ゃ な い ・ ・ ・ ・ ・ ・ ) 」





グラーフ「(!!)」ハッ

グラーフ「(・・・・・・)」

グラーフ「(・・・・・・・・・)」

グラーフ「(・・・・・・ハハッ)」

グラーフ「(そうだ・・・何故気づかなかったのだろうか・・・?)」

グラーフ「(あぁ・・・私じゃないんだ・・・)」

グラーフ「( “ 今 ” の私は・・・私ではない・・・)」

グラーフ「(今の私は・・・・・・)」

提督「グラーフ、どうしたんd」

提督「!!」

提督「・・・・・・」

グラーフ「・・・・・・」

グラーフ「・・・アトミラール」

グラーフ「家に帰ったら・・・大切な話がある・・・」

提督「・・・・・・」

提督「・・・わかった」



―― 自宅 ――


提督「・・・・・・」

グラーフ「・・・・・・」

提督「・・・気づいたのか」

グラーフ「・・・あぁ」

提督「そう・・・か・・・」

提督「・・・・・・」

グラーフ「・・・・・・」

グラーフ「・・・アトミラール」

グラーフ「すまなかった・・・そして」





グラーフ「 A u f W I e d e r s e h e n . . . アトミラール・・・・・・」





グラーフ「私は・・・確かに貴方を愛していた・・・」

グラーフ「申し訳なかったでは済まないことはわかっている・・・でも」

グラーフ「私に愛情を与えてくれて・・・ありがとう」

グラーフ「私はこれから・・・現実に戻る」

グラーフ「そして・・・やるべきことをしなくてはならない」

提督「・・・・・・」

グラーフ「あぁ、アトミラール・・・最期に、その顔をよく見せてくれ・・・」スッ

グラーフ「もう・・・二度と見ることが出来ない・・・その顔を・・・」

グラーフ「あぁ・・・アトミラール・・・」

グラーフ「愛していた・・・・・・」










――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




面白い
続きは?

グラーフ「・・・・・・」

グラーフ「・・・・・・・・・」

グラーフ「・・・・・・・・・・・・」

グラーフ「・・・」スッ

VR『』

グラーフ「・・・・・・」

グラーフ「・・・そうか」

グラーフ「これが・・・” 愛情 “ というものか・・・・・・」

グラーフ「何て・・・温かいものなんだ・・・・・・」ポロポロ

憲兵「・・・・・・」

憲兵「・・・これにて、艦娘による殺人罪・・・初の犯罪に対する」

憲兵「最期の認知行動療法の一貫、『VRによる教育プログラム』を終了します」

グラーフ「あぁ・・・あぁ・・・・・・っ!!」ポロポロ

グラーフ「(そうだ・・・初めからわかっていたんだ・・・)」

グラーフ「(幸せな結婚生活など・・・私が体験していたものではない・・・)」

グラーフ「(アトミラールは・・・赤城と結婚し、娘を授かったんだ・・・)」

グラーフ「(このVRにおける生活は・・・かつて、赤城が体験していたもの・・・)」

グラーフ「(そして・・・悪夢の正体は・・・かつての私そのものだったんだ・・・)」

グラーフ「(私はあの鎮守府にいた頃から愛に飢え、アトミラールに依存して・・・)」

グラーフ「(赤城との結婚をどうしても認められなかった私は・・・)」

グラーフ「(私は・・・・・・)」

グラーフ「(アトミラールと結婚した赤城に嫉妬し)」

グラーフ「(アトミラールと赤城との間に授かった娘に嫉妬し)」

グラーフ「(その感情が徐々に殺意へと変貌していき・・・)」

グラーフ「(そして・・・アトミラールを私だけのものにしたくなって・・・)」

グラーフ「(そして私は・・・私はあの日・・・・・・)」





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




赤城『』ドクドク

あかぎ『』ドクドク

提督『赤城・・・! あかぎ・・・!!』ワナワナ

提督『うわああああぁぁぁぁぁぁぁっ!?』

グラーフ『ハハ・・・・・・アハハハハハハハハハ!!』

グラーフ『これでアトミラールは私のものだ・・・あぁ、そうだとも!』

グラーフ『愛情は奪って得るものだ! 最初からこうすれば良かったんだ!』

提督『グラーフ!! お前は・・・お前は何てことをしてくれたんだ!!』ガシッ

提督『この・・・人殺しめ!! 化け物めぇっ!!』ポロポロ

グラーフ『・・・・・・』

グラーフ『・・・どうしてアトミラールはこんなに私を酷い目に合わせるんだ』ボソ

提督『何っ!?』

グラーフ『そうだ・・・私が味わった、かつての孤独と・・・』

グラーフ『腐れコミュニスト共から辱められた苦痛の記憶を・・・』

グラーフ『アトミラールにも知ってもらおう・・・!!』ニヤ

提督『ひっ!?』ビクッ

グラーフ『そうすれば・・・私はアトミラールがいるだけで・・・!』ガシッ

提督『うぐぅっ!?』

グラーフ『どれ程幸せで!!』ググッ

グラーフ『居ないだけでどれ程苦しいのか!!』グググッ

グラーフ『分かって貰える!! あぁ、そうに違いない!!』ミシッ

グラーフ『そうだろうアトミラール!!』ジャリッ










バキッ!!!!










提督『』

グラーフ『・・・?』

グラーフ『アトミラール・・・?』

提督『』゜




グラーフ『アトミ・・・ラール・・・・・・?』

グラーフ『・・・・・・』

グラーフ『・・・・・・あ』

グラーフ『あ・・・! あぁ・・・っ!?』





グラーフ『 ア゛ア゛ア゛ア ア ア ア ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ッ ! ! ! ? 』











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グラーフ「(私は・・・アトミラールを殺してしまったんだ・・・)」

グラーフ「(赤城も・・・娘も・・・この手で・・・)」

グラーフ「(・・・・・・)」

グラーフ「(・・・私が艦としてこの世に生まれてきたのは間違いだったのかもしれない)」

グラーフ「(私が艦娘として生まれてきたのは間違いだったのかもしれない)」

グラーフ「(私が歩んできた道は間違っていたんだ・・・)」

グラーフ「(私は・・・私は・・・・・・)」

憲兵「・・・では、こちらへ」スッ

グラーフ「・・・はい」

グラーフ「(・・・・・・)」

グラーフ「(・・・ただ、最期のワガママを言わせてくれ、アトミラール)」

グラーフ「(もし・・・もし私が・・・違う人生を送っていたら)」

グラーフ「(もしかしたら・・・違う結末になったのかもしれない)」

グラーフ「(貴方の傍にいて、貴方を支えることが出来る・・・)」

グラーフ「(そんな存在に・・・私はなっていたのかもしれない・・・)」

グラーフ「(その可能性だけはせめて・・・否定しないでくれ・・・)」

グラーフ「(・・・・・・)」

グラーフ「(あぁ・・・アトミラール・・・)」





グラーフ「 ( ア ト ミ ラ ー ル ・ ・ ・ ・ ・ ・ ) 」

























――― 終 ―――



ハイライト提督久し振り

グラちゃん・・

次は幸せになるお話にしてあげてください



内容は違うが、ジェイコブスラダーを思い出した

おつ
たまにはこういうのも良い

昔世にも奇妙な物語かなにかで見たなこの話
中々面白かった乙!

カメントツの漫画で似たようなの読んだな

加害者に罪の重さや暖かい心を教え込んでから処刑するって最高だな。日本もいずれこうしよう。

これ系の最高傑作は小路啓之のLovelyだと思ってる

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2018年02月12日 (月) 13:37:51   ID: wqwS8k1H

これは鬱になる・・・救いようがない・・・

2 :  SS好きの774さん   2018年02月13日 (火) 01:21:03   ID: K-tgNRqE

あっまーーーい!後味にがーーい!!!

3 :  SS好きの774さん   2018年02月19日 (月) 00:01:15   ID: pZI5_nnA

ティルピッツ「…………。」

4 :  SS好きの774さん   2018年05月09日 (水) 22:55:14   ID: jROEXoFT

世にも奇妙な物語りを思い出した

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